説明

インクジェット記録媒体および画像記録方法

【課題】発生するカールの方向を一定に維持することが可能で走行性に優れたインクジェット記録媒体を提供する。
【解決手段】支持体と、前記支持体の両面に配置され、無機微粒子および水溶性樹脂を含むインク受容層と、前記インク受容層の少なくとも一方と前記支持体との間に配置され、無機質の層状化合物を含むアンダーコート層と、を備えるインクジェット記録媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録媒体および画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインクジェットプリンターの高解像度化に伴い、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得ることも可能になってきており、このようなハード(装置)の進歩に伴って、インクジェット記録媒体も各種開発されてきている。
このインクジェット記録媒体に要求される特性としては高品位な画像を記録できることに加えて、変形し難いことや、走行性が良好であること等が挙げられる。
【0003】
上記に関連して、広い温湿度範囲でカールを抑制することを目的として、記録媒体のバックコート層やアンダーコート層に層状化合物を含有させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、感熱記録層の裏面に層状化合物を含むアンダーコート層とインク受容層とを設けた記録媒体が知られており、感熱記録後のカールを抑制することができるとされている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらにインクジェット記録ヘッドを備えた画像形成装置を用いて、記録媒体に画像を形成する画像形成方法では、記録ヘッドの真下に記録媒体を搬送し、画像を形成する。
かかる画像形成方法においては、ヘッド面と記録媒体との距離が不均一であると描画が変形してしまう。最悪の場合には、記録ヘッドと記録媒体とが接触して、記録ヘッドの破損や記録媒体のJAMが発生することが考えられる。このため、記録媒体の形状を矯正することが従来から行われてきている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−330483号公報
【特許文献2】特開2004−82525号公報
【特許文献3】特開2006−232500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、支持体の両面にインク受容層を設けた記録媒体を用いて、両面に画像を記録する場合、記録媒体に生じるカールの方向が、一方の面に記録した画像に応じて変化することがあり、そのため記録媒体の形状補正が十分にできずに記録媒体の走行性に問題が生じる場合があった。
本発明は、発生するカールの方向を一定に維持することが可能で走行性に優れたインクジェット記録媒体および画像記録方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 支持体と、前記支持体の両面に配置され、無機微粒子および水溶性樹脂を含むインク受容層と、前記インク受容層の少なくとも一方と前記支持体との間に配置され、無機質の層状化合物を含むアンダーコート層と、を備えるインクジェット記録媒体。
<2> 前記無機質の層状化合物は、アスペクト比が50以上である前記<1>に記載のインクジェット記録媒体。
<3> 前記無機質の層状化合物は、合成雲母である前記<1>または<2>に記載のインクジェット記録媒体。
<4> 前記アンダーコート層は、前記支持体の両面に配置されている前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
【0008】
<5> 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体を、搬送路に吸着しつつ搬送する第1の吸着搬送工程と、前記搬送路に吸着されたインクジェット記録媒体上に、インクジェット方式でインクを付与して画像を記録する第1のインク付与工程と、前記画像が記録されたインクジェット記録媒体を、画像が記録された面が内側を向く凹形状にカール方向を矯正するカール矯正工程と、前記カール方向が矯正されたインクジェット記録媒体を、画像が記録された面と前記搬送路とが対向するように前記搬送路に吸着しつつ搬送する第2の吸着搬送工程と、前記搬送路に吸着されたインクジェット記録媒体の画像が記録されていない面上に、インクジェット方式でインクを付与して画像を記録する第2のインク付与工程と、を有する画像記録方法。
【0009】
<6> 前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体を、搬送路に吸着しつつ搬送する第1の吸着搬送工程と、前記搬送路に吸着されたインクジェット記録媒体上に、インクジェット方式でインクを付与して画像を記録する第1のインク付与工程と、前記画像が記録されたインクジェット記録媒体における前記画像の少なくとも搬送方向下流側を切断し、所定サイズに成形する切断成形工程と、前記成形されたインクジェット記録媒体からインク成分の少なくとも一部を乾燥除去する乾燥除去工程と、前記乾燥除去後のインクジェット記録媒体を、画像が記録された面が内側を向く凹形状にカール方向を矯正するカール矯正工程と、前記カール方向が矯正されたインクジェット記録媒体を、画像が記録された面と前記搬送路とが対向するように前記搬送路に吸着しつつ搬送する第2の吸着搬送工程と、前記搬送路に吸着されたインクジェット記録媒体の画像が記録されていない面上に、インクジェット方式でインクを付与して画像を記録する第2のインク付与工程と、前記搬送路に吸着されたインクジェット記録媒体の画像が記録されていない面上に、インクジェット方式でインクを付与して画像を記録する第2のインク付与工程と、を有する画像記録方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発生するカールの方向を一定に維持することが可能で走行性に優れたインクジェット記録媒体および画像記録方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る画像形成装置の構成を示す側面図である。
【図2】実施形態に係る吸着搬送部の構成を示す斜視図である。
【図3】実施形態に係る吸着搬送部の構成を示す断面図である。
【図4】評価に使用した印画パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のインクジェット記録媒体は、支持体と、前記支持体の両面に配置され、無機微粒子および水溶性樹脂を含むインク受容層と、前記インク受容層の少なくとも一方と前記支持体との間に配置され、無機質の層状化合物を含むアンダーコート層とを備える。
かかる構成により、一方のインク受容層に画像を記録した後でもカールの方向を予め与えたカール方向と同一の方向に維持することができる。これにより画像が記録された面とは逆の面に画像を記録する前におけるカール方向の反転処理を容易に行なうことができ、走行性が向上する。
前記予め与えたカール方向とは、画像記録を行なう前にインクジェット記録媒体に対して与えるカールの方向を意味し、後述する画像記録方法において、搬送路に対して凸にカールする方向であることが好ましい。
また本発明のインクジェット記録媒体は、ロール状の形態であってもシート状の形態であってもよい。例えば、後述する画像記録方法に適用する場合、印画速度の観点からロール状の形態であることが好ましい。
【0013】
[アンダーコート層]
本発明におけるアンダーコート層は、無機質の層状化合物の少なくとも1種を含み、必要に応じて水溶性樹脂の少なくとも1種とその他の成分とを含んで構成される。
インク受容層の少なくとも一方と支持体との間に、無機質の層状化合物を含むアンダーコート層を配置することで、予め与えたカールの方向を、記録媒体の片面に任意の画像が記録された後にも維持することができる。これは、例えば、アンダーコート層が層状化合物を含むことによって、層の弾性率および強度が増すために、予め与えたカール方向を維持することができると考えることができる。
【0014】
本発明においてアンダーコート層は後述するインク受容層と支持体との間に配置される。本発明においては支持体の一方の面側にのみ配置されていても、両面に配置されていてもよいが、両面に配置されていることが好ましい。さらにアンダーコート層が支持体の一方の面側にのみ配置される場合、最初に画像が記録される面側とは逆の面側に配置されていることが好ましい。
かかる態様であることでカール方向の維持性がより良好になる。
【0015】
(層状化合物)
無機質の層状化合物としては特に制限なく、公知の層状化合物を用いることができる。例えば、下記一般式(1)
A(B,C)2−310(OH,F,O) …(1)
〔式中、AはK、Na又はCaを表し、B及びCは、それぞれ独立にFe(II)、Fe(III)、Mn、Al、Mg、Vを表す。DはSi、Alを表す。〕
で表される雲母群、3MgO・4SiO・HOで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウム、カオリンなどが挙げられる。
【0016】
前記一般式(1)で表される雲母群において、天然雲母として、例えば白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母、鱗雲母等が挙げられ、合成雲母として、フッ素金雲母KMg(AlSi10)F、カリ四ケイ素雲母KMg2.5(Si10)F等の非膨潤性雲母、及びNaテトラシリシックマイカNaMg2.5(Si10)F、Na若しくはLiテニオライト(Na,Li)MgLi(Si10)F、モンモリオナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/3Mg2/3Li1/3(Si410)F2等の膨潤性雲母が挙げられる。更に、合成スメクタイトも有用である。
本発明においては、前記層状化合物の中でも、水膨潤性の合成雲母が好ましく、水膨潤性のフッ素系合成雲母が特に好ましい。
【0017】
前記無機質の層状化合物のアスペクト比としては、50以上であることが好ましく、200以上がより好ましく、500以上がさらに好ましい。該アスペクト比が、50以上であることでカールの方向をより効果的に維持することができる。ここで、アスペクト比とは、層状化合物の粒子の長径に対する厚さの比である。
【0018】
また、前記無機質の層状化合物の粒子径としては、その平均長径が0.3〜100μmであることが好ましく、0.5〜50μmであることがより好ましく、1〜10μmであることが特に好ましい。
該層状化合物の平均の厚さとしては、0.1μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.01μm以下が特に好ましい。
本発明において無機質の層状化合物は1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
アンダーコート層中における無機質の層状化合物の含有量としては、カール方向の維持性の観点から、アンダーコート層の全固形分に対して1.5〜50質量%であることが好ましく、2.5〜35質量%であることがより好ましい。
またアンダーコート層が水溶性樹脂を含む場合、無機質の層状化合物の含有量としては、水溶性樹脂100質量部に対して、3〜30質量部が好ましく、5〜20質量部がより好ましい。無機質の層状化合物の含有量を前記範囲内とすることで、カール方向の維持性や、塗布性等の製造適性が良好となる。
【0020】
本発明におけるアンダーコート層は、水溶性樹脂の少なくとも1種を含むことが好ましい。これによりカール方向の維持性がより向上する。水溶性樹脂の具体例としては、後述のインク受容層における水溶性樹脂と同様のものを挙げることができ、好ましい態様も同様である。
【0021】
またアンダーコート層は無機顔料の少なくとも1種をさらに含むことができる。無機顔料の含有量を適宜調整することにより、カール方向の維持性をより効果的に向上することができる。無機顔料としては、特に制限はないが、例えば、タルク、ロウ石、ケイソウ土、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、リトボン、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、焼成石コウ、シリカ、炭酸マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、炭酸バリウム、硫酸バリウム等が挙げられる。
【0022】
前記無機顔料の含有量としては、水溶性樹脂100質量部に対して、30〜500質量部が好ましく、50〜300質量部がより好ましい。
また、前記無機顔料の粒径(体積平均粒径)としては、0.1〜2.0μmが好ましく、0.2〜1.0μmがより好ましい。
【0023】
アンダーコート層は、本発明の効果を損なわない範囲で、金属石鹸、ワックス、耐水化剤、界面活性剤等のその他の成分を含有していてもよい。アンダーコート層が含むことができるその他の成分としては、インク受容層におけるその他の成分と同様である。
【0024】
アンダーコート層の層厚としては、カール方向の維持性の観点から、0.3〜6μmが好ましく、0.5〜3μmがより好ましい。
【0025】
[インク受容層]
(無機微粒子)
インク受容層は、無機微粒子(以下、「微粒子」ともいう)の少なくとも1種を含有する。
無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、アルミナ微粒子、ベーマイト、擬ベーマイト等を挙げることができる。中でも、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子、擬ベーマイトが好ましく、特に気相法シリカ微粒子が好ましい。
【0026】
シリカ微粒子は、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性及び保持の効率が高く、また屈折率が低いので、適切な微小粒子径まで分散を行なえばインク受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性が得られるという利点がある。この様にインク受容層が透明であるということは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録用媒体に適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性及び光沢度を得る観点より重要である。
【0027】
無機微粒子の粒子径は、得られたインクジェット記録媒体のインク受容層を電子顕微鏡により観察して測定される際の粒径をいう。
インク受容層を電子顕微鏡により観察して測定される無機微粒子の粒子径としては、5nm以上45nm以下が好ましく、5nm以上35nm以下がより好ましく、特に10nm以上30nm以下が好ましい。該粒子径が5nm以上45nm以下であると、ブロンジングや光沢といった性能を悪化させることなく、高濃度な記録画像を得ることができ、さらに印画直後からの色相変化を高度に抑制することができる。
【0028】
無機微粒子の平均一次粒子径としては、20nm以下が好ましく、15nm以下がより好ましく、特に10nm以下が好ましい。該平均一次粒子径が20nm以下であると、インク吸収特性を効果的に向上させることができ、また同時にインク受容層表面の光沢性をも高めることができる。
特にシリカ微粒子は、その表面にシラノール基を有し、該シラノール基の水素結合により粒子同士が付着し易いため、また該シラノール基と水溶性樹脂を介した粒子同士の付着効果のため、上記の様に平均一次粒子径が20nm以下の場合にはインク受容層の空隙率が大きく、透明性の高い構造を形成することができ、インク吸収特性を効果的に向上させることができる。
【0029】
一般にシリカ微粒子は、通常その製造法により湿式法粒子と乾式法(気相法)粒子とに大別される。上記湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させ凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、気相法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流である。
【0030】
気相法シリカ(気相法によって得られた無水シリカ微粒子)は、上記含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を示すが、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が5〜8個/nmと多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易く、一方、気相法シリカの場合には、微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nmと少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
本発明においては、上記乾式法で得られる気相法シリカ微粒子(無水シリカ)が好ましく、更に微粒子表面におけるシラノール基の密度が2〜3個/nmであるシリカ微粒子が好ましい。
【0031】
(水溶性樹脂)
インク受容層は、水溶性樹脂の少なくとも1種を含有する。なお、水溶性樹脂とは、常温(25℃)下で水100gに対する溶解度が10g以上である樹脂をいう。
【0032】
水溶性樹脂としては、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシ基を有する樹脂であるポリビニルアルコール系樹脂〔ポリビニルアルコール(PVA)、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等〕、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸ヒドラジド等〕等が挙げられる。また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる
上記の中でも、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、特にポリビニルアルコールが好ましい。
【0033】
水溶性樹脂のインク受容層中における含有量としては、含有量の過少による、膜強度の低下や乾燥時のひび割れを防止し、かつ含有量の過多によって、該空隙が樹脂により塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、インク受容層の全固形分質量に対して、9〜40質量%が好ましく、12〜33質量%がより好ましい。
なお、インク受容層を主に構成する水溶性樹脂と後述する無機微粒子とは、それぞれ単一素材であってもよいし、複数素材の混合系であってもよい。
【0034】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ひび割れ防止の観点から、数平均重合度が1800以上が好ましく、2000以上がより好ましい。また、シリカ微粒子と組み合わせる場合には、透明性の観点から水溶性樹脂の種類が重要となる。特に無水シリカを用いる場合、水溶性樹脂としてポリビニルアルコール系樹脂を用いるのが好ましく、中でも鹸化度70〜99%のポリビニルアルコール系樹脂がより好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂としては、前記具体例の誘導体も含まれ、ポリビニルアルコール系樹脂は1種単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基とシリカ微粒子表面のシラノール基とが水素結合を形成して、シリカ微粒子の二次粒子を鎖単位とする三次元網目構造を形成し易くする。この様な三次元網目構造の形成によって、空隙率の高い多孔質構造のインク受容層を形成し得ると考えられる。
インクジェット記録用媒体において、上述のようにして得られた多孔質のインク受容層は、毛細管現象によって急速にインクを吸収し、インク滲みのない真円性の良好なドットを形成することができる。
【0036】
(無機微粒子と水溶性樹脂との含有比(PB比))
無機微粒子(好ましくはシリカ微粒子;x)と水溶性樹脂(y)との含有比〔PB比(x/y)=水溶性樹脂1質量部に対する無機微粒子の質量〕は、インク受容層の膜構造にも大きな影響を与える。すなわち、PB比が大きくなると、空隙率や細孔容積、表面積(単位質量当り)が大きくなる。
具体的には、インクジェット記録媒体は、インクジェットプリンターの搬送系を通過する際応力が加わることがあり、インク受容層は充分な膜強度を有していることが必要である。さらに、シート状に裁断加工する場合、インク受容層の割れ及び剥がれ等を防止する上でも、インク受容層には充分な膜強度が必要である。そのため、PB比(x/y)としては、インク受容層の硬度を高くする観点から5.5以下であることが好ましい。また更には、5.3以下であることがより好ましく、5.15以下であることが特に好ましい。
また、特に限定されるものではないが、空隙が樹脂によって塞がれ易くなり、空隙率が減少することでインク吸収性が低下するのを防止する観点から、PB比は1.5以上であることが好ましく、更に、インクジェットプリンターで高速インク吸収性をも確保する観点からは2以上であることが好ましい。
【0037】
例えば、平均一次粒子径が20nm以下の無水シリカ微粒子と水溶性樹脂とをPB比(x/y)が2〜5.5で水溶液中に完全に分散した塗布液を支持体上に塗布し、該塗布層を乾燥した場合、シリカ微粒子の二次粒子を鎖単位とする三次元網目構造が形成され、平均細孔径が30nm以下、空隙率が50%〜80%、細孔比容積0.5ml/g以上、比表面積が100m/g以上の、透光性の多孔質膜を容易に形成することができる。
【0038】
(架橋剤)
インク受容層は、水溶性樹脂を架橋し得る架橋剤の少なくとも1種を含有することが好ましい。この架橋剤を含むことにより、前記水溶性樹脂が架橋され、硬化された多孔質層が得られる。
架橋剤は、1種単独でも2種以上を組合せて用いてもよい
本発明におけるインク受容層は、前記水溶性樹脂を架橋する観点から、架橋剤を少なくとも1種含有することが好ましい。
本発明における架橋剤としては、例えば、特開2008−246988号公報の段落番号[0127]〜[0129]に記載の架橋剤を挙げることができ、好ましい態様も同様である。
【0039】
架橋剤は、インク受容層を形成する際に、インク受容層用塗布液中及び/又はインク受容層の隣接層を形成するための塗布液中に添加してもよく、あるいは予め架橋剤を含む塗布液を塗布した支持体上に、上記インク受容層用塗布液を塗布する、又は架橋剤非含有のインク受容層用塗布液を塗布し乾燥後に架橋剤溶液をオーバーコートする等してインク受容層に架橋剤を供給することができる。好ましくは、製造効率の観点から、インク受容層用塗布液又はこの隣接層形成用の塗布液中に架橋剤を添加し、インク受容層の形成と同時に架橋剤を供給するのが好ましい。特に、画像の印画濃度及び光沢感の向上の観点より、インク受容層用塗布液に含有するのが好ましい。また、インク受容層用塗布液中の架橋剤の濃度としては、0.05〜10質量%が好ましく、0.1〜7質量%がより好ましい。
【0040】
例えば、以下のようにして好適に架橋剤を付与することができる。ここでは、ホウ素化合物を例に説明する。すなわち、
インク受容層がインク受容層用塗布液を塗布した塗布層を架橋硬化させた層である場合、該架橋硬化は、(1)塗布液を塗布して塗布層を形成すると同時、(2)塗布液を塗布して形成される塗布層の乾燥塗中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれかの時に、pHが7.1以上の塩基性溶液を前記塗布層に付与することにより行なわれる。架橋剤であるホウ素化合物は、上記の塗布液及び塩基性溶液の少なくとも一方に含有させればよい。
【0041】
(媒染剤)
インク受容層は、媒染剤の少なくとも1種を含有することが好ましく、画像の経時滲み及び耐水性をより向上させることができる。
媒染剤としては、カチオン性ポリマー(カチオン性媒染剤)等の有機媒染剤、及び水溶性金属化合物等の無機媒染剤が好ましい。カチオン性媒染剤としては、カチオン性の官能基として、第1級〜第3級アミノ基、又は第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好適に用いられるが、カチオン性の非ポリマー媒染剤も使用することができる。
【0042】
前記ポリマー媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基およびその塩、又は第4級アンモニウム塩基を有する単量体(媒染剤モノマー)の単独重合体や、該媒染剤モノマーと他の単量体(非媒染剤モノマー)との共重合体又は縮重合体として得られるものが好ましい。また、これらのポリマー媒染剤は、水溶性ポリマー又は水分散性ラテックス粒子のいずれの形態でも使用できる。
前記媒染剤モノマーおよびカチオン性ポリマーの具体例としては、例えば特開2008−246988号公報の段落番号[0024]〜[0031]に記載のものを挙げることができる。
また無機媒染剤の具体例としては、例えば特開2008−246988号公報の段落番号[0130]〜[0137]に記載のものを挙げることができる。
【0043】
上記の媒染剤をインク受容層に添加する場合の添加量としては、0.01〜5g/mが好ましい。
【0044】
(その他の成分)
インク受容層は、必要に応じて、各種の紫外線吸収剤、酸化防止剤、一重項酸素クエンチャー等の褪色性防止剤を含んでいてもよい。これらを含有することにより、インクの劣化を抑制することができる。
その他の成分としては、特開2005−14593号公報中の段落番号0088〜0117に記載されている成分や、特開2006−321176号公報中の段落番号0138〜0155に記載されている成分等を、適宜選択して用いることができる。
【0045】
前記インク受容層の層厚としては、インクジェット記録の場合では、液滴を全て吸収するだけの吸収容量をもつ必要があるため、層中の空隙率との関連で決定する必要がある。例えば、インク量が8nL/mmで、空隙率が60%の場合であれば、層厚が約15μm以上の膜が必要となる。
この点を考慮すると、インク受容層の層厚としては、10〜50μmが好ましい。
【0046】
また、インク受容層の細孔径は、メジアン径で0.005〜0.030μmが好ましく、0.01〜0.025μmがより好ましい。
前記空隙率及び細孔メジアン径は、水銀ポロシメーター((株)島津製作所製の商品名「ボアサイザー9320−PC2」)を用いて測定することができる。
【0047】
また、インク受容層は、透明性に優れていることが好ましいが、その目安としては、インク受容層を透明フイルム支持体上に形成したときのヘイズ値が、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
前記ヘイズ値は、ヘイズメーター(HGM−2DP:スガ試験機(株))を用いて測定することができる。
【0048】
[支持体]
本発明のインクジェット記録媒体における支持体は、限定されるものではないが、画像記録に伴うカール等の変形が抑制される点で水非浸透性支持体が好ましい。ここで、「水非浸透性」とは、水を吸収しないか、又は水の吸収量が0.3g/m以下である性質をいう。
【0049】
〜水非浸透性支持体〜
本発明において、水非浸透性支持体表面の光沢度は特に限定はないが、高光沢支持体、低光沢支持体どちらを用いても、半光沢品の作製が可能になり、支持体の選択の幅を広げる観点からは、40%以上であることが好ましく、45%以上95%以下であることがより好ましく、50%以上85%以下であることがより好ましい。更に、水非浸透性支持体両面の光沢度とも前記範囲であることが特に好ましい。
【0050】
本発明に用いることができる支持体としては、例えば、特開2008−246988号公報の段落番号[0139]〜[0155]に記載の支持体を挙げることができ、中でも、ポリオレフィン被覆紙を好ましく用いることができる。
【0051】
[インクジェット記録媒体の製造方法]
本発明のインクジェット記録媒体は、支持体の両面に、インク受容層をそれぞれ形成することができ、インク受容層の少なくとも一方と支持体の間にアンダーコート層を形成することができる方法であれば、いずれの方法で製造されてもよい。
例えば、水非浸透性支持体の少なくとも一方の面上に、アンダーコート層用塗布液を用いてアンダーコート層を形成する工程と、少なくとも一方の面上にアンダーコート層が形成された水非浸透性支持体の両面にインク受容層用塗布液を用いてインク受容層を形成する工程とを有する作製方法、水非浸透性支持体の一方の面上に、アンダーコート層用塗布液とインク受容層用塗布液とを重層塗布(同時重層塗布)してアンダーコート層とインク受容層を形成する工程と、アンダーコート層とインク受容層とが形成されていない水非浸透性支持体の面上に、インク受容層用塗布液を用いてインク受容層を形成する工程とを有する作製方法、水非浸透性支持体の一方の面上に、アンダーコート層用塗布液とインク受容層用塗布液とを重層塗布してアンダーコート層とインク受容層を形成する工程と、アンダーコート層とインク受容層とが形成されていない水非浸透性支持体の面上に、他方の面側と同様にしてアンダーコート層とインク受容層とを形成する工程とを有する作製方法等を挙げることができる。
【0052】
アンダーコート層およびインク受容層用塗布液の塗布は、公知の塗布装置を用いて行なうことができる。
1層ごとの逐次塗布は、例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、リバースコーター等の塗布方法が好ましい。また、同時重層塗布としては、例えば、スライドビードコーター、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター等の塗布方法を挙げることができる。
【0053】
[画像記録方法]
本発明の画像記録方法においては、前記インクジェット記録媒体を搬送路に吸着して、搬送路と対向する面とは逆の面側にインクジェット方式でインクを付与して画像を記録する。前記インクジェット記録媒体はカール方向の維持性が良好であることから、搬送路への吸着が効率よく行なわれ、走行性に優れた画像記録が可能になる。
記録時にインクを打滴する方法としては、連続的にインク滴を吐出して画像に応じて滴を偏向させて着弾させることにより記録する方法や、画像に必要な領域にのみインクを吐出するいわゆるオンデマンド方式を呼ばれる方法などいずれの方法を選択してもよい。オンデマンド方式は、例えば、圧電素子等を用いて構造体の変形によりインク圧を発生させて吐出する方式、又は熱エネルギーによる気化に伴なう膨張により発生する圧力で吐出する方式のいずれであってもよい。また、電界により吐出制御する方式であってもよい。
【0054】
インク吐出用のノズル等については、特に制限はないが、複数のノズル列を有するヘッドユニットを備えたヘッド、あるいは画像(インクジェット記録媒体)の幅と同等以上の長さのいわゆるフルラインヘッドなどを用いた高速記録を行なう場合に、本発明の効果がより奏される点で好ましい。
【0055】
本発明のインクジェット記録方法の好ましい実施形態を図1〜図3を参照して具体的に説明する。本実施形態では、記録媒体のカール方向を反転(デカール)させるデカール部を有する反転搬送経路を設け、インクジェット記録媒体の片方の面側(好ましくは、ロール状態における外側の面)への画像記録後、デカールしてから記録媒体を反転させて再び同じ搬送路、画像形成手段にて、画像が記録された面とは逆の面側に画像記録するものである。
【0056】
図1に示すように、画像記録装置10は、インクジェット記録媒体(以下、「記録用紙」ともいう)に画像を記録する画像記録部12を備えている。画像記録部12は、記録用紙に向けてインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド14と、インクジェット記録ヘッド14を保持するキャリッジ16とを備えている。本実施形態では、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の4色で画像を記録するカラー式の画像記録装置10として説明するが、モノクロ式の画像記録装置であっても適用可能であり、さらにR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)等の他色を用いて記録してもよい。
【0057】
また、画像記録装置10は、長尺状(ロール状)の記録用紙の画像部後端(搬送される記録用紙に記録された画像の搬送方向下流側)を切断する後端カッター17と、記録用紙のインクジェット記録ヘッド14により画像が記録された面側に乾燥風を送給してインク滴を固化させるドライヤー18と、記録用紙を画像毎に切断するカッター20と、記録用紙をインクジェット記録ヘッド14、後端カッター17、ドライヤー18、カッター20へ順次搬送するメイン搬送経路22と、を備えている。なお、図1では、カッター20には2枚の刃を描いているが、刃の枚数は1枚であってもよい。
【0058】
メイン搬送経路22には、記録用紙を水平方向へ搬送する水平部分22Aが設けられている。この水平部分22Aには、インクジェット記録ヘッド14による画像形成位置、後端カッター17によるカット位置、及びドライヤー18による乾燥風の送給位置が順に配置されている。また、水平部分22Aには、インクジェット記録ヘッド14による画像記録の処理速度に応じて記録用紙を搬送するための複数のローラ対23Aが設けられている。
【0059】
また、メイン搬送経路22は、水平方向に搬送される記録用紙の搬送方向を上側に所定の曲率でU字状に変更すると共に、記録用紙を湾曲させる変更湾曲部22Bが設けられている。この変更湾曲部22Bには、カッター20による切断の処理速度に応じて記録用紙を搬送するための複数のローラ対23Bが設けられている。変更湾曲部22Bは、記録用紙の搬送を一時的に滞留させて記録用紙を外側に湾曲させることにより記録用紙を一時的に保持することが可能とされている。本実施形態では、記録用紙の搬送方向が最初に変わる部分で記録用紙の搬送を一時的に滞留させる。変更湾曲部22Bには、記録可能な最大画像で1枚分の記録用紙が保持されて記録用紙が外側に湾曲した位置に記録用紙を検出する用紙センサ80が設けられている。用紙センサ80は、例えば、発光素子80Aと受光素子80Bが対向されて構成され、受光素子80Bで発光素子80Aからの光が記録用紙によって遮断されたことを検知することにより、記録用紙を検出する。
変更湾曲部22Bを通過した記録用紙はカッター20に搬送され、画像毎に切断される。カッター20で画像毎に切断された記録用紙Pは、複数のローラ対23Cによる搬送によりスイッチバック収納部70に一旦収納された後に、搬送方向が反転されて排紙口72からトレイ73へ排出される。
【0060】
また、画像記録装置10は、両面記録用の反転搬送経路74を備えている。反転搬送経路74は、ローラ対74Aを設けて構成されている。インクジェット記録ヘッド14により片面に画像が記録された記録用紙は、反転搬送経路74に搬送され、反転搬送経路74で表裏が反転されて再びメイン搬送経路22に送給される。これにより、記録用紙の両面に画像を記録することが可能とされている。また、反転搬送経路74には、インクジェット記録ヘッド14により片面に画像が記録された記録用紙のカール方向を反転処理(デカール処理)するデカール搬送部38を備えており、記録用紙の画像が記録された面が内側を向く凹形状にカール方向を矯正する。デカール搬送部38は、画像が記録されて上面(記録面)が凸にカールした記録用紙にデカール処理を行なって、反転搬送経路74において上面を凹にカールさせる。その後、反転搬送経路74で表裏反転して再びメイン搬送経路22に抜けると、メイン搬送経路22に対して凸にカールした状態になる。
【0061】
メイン搬送経路22のローラ対23A及び反転搬送経路74のローラ対74Aはモータ82Aから駆動伝達経路84Aを介して伝達された駆動力によって回転駆動し、変更湾曲部22Bのローラ対23Bはモータ82Bから駆動伝達経路84Bを介して伝達された駆動力によって回転駆動する。すなわち、本実施の形態では、ローラ対23A及びローラ対74Aを駆動させる駆動源及び駆動伝達経路とローラ対23Bを駆動させる駆動源及び駆動伝達経路を別々としている。
【0062】
また、画像記録装置10は、シート状の記録用紙PSを給紙するシート式給紙部24と、長尺状の記録用紙を給紙する第1ロール式給紙部26及び第2ロール式給紙部28とを備えている。シート式給紙部24は、記録用紙の上面側が大気開放面側となるように記録用紙を収容する給紙カセット25を備えている。
【0063】
給紙カセット25は、例えば、内部の仕切り部材等の位置を調整することによってサイズの異なるシート状の記録用紙PSが収納可能とされている。給紙カセット25には、収納されたシート状の記録用紙PSのサイズを検出するための複数のメカニカルスイッチ(不図示。)が設けられている。この複数のメカニカルスイッチは、収納されたシート状の記録用紙PSに当接されることにより、当該シート状の記録用紙PSのサイズに応じてオン、オフ状態の組み合わせが変わるように配置されており、各メカニカルスイッチのオン、オフ状態の組み合わせに応じて収納されている記録用紙PSのサイズを検出することができる。
【0064】
第1ロール式給紙部26及び第2ロール式給紙部28は、例えば、102mm〜254mmの間で幅の異なる長尺状の記録用紙をロール状に巻回したロール状記録用紙27が収納可能とされている。第1ロール式給紙部26及び第2ロール式給紙部28にも、収納されたシート状のロール状記録用紙27の幅を検出するための複数のメカニカルスイッチ(不図示。)が設けられている。さらに、第1ロール式給紙部26及び第2ロール式給紙部28には、ロール状記録用紙27の厚さに基づいて記録用紙の残量を検出する残量センサ29がそれぞれ設けられている。なお、ロール状記録用紙27の重さに基づいて記録用紙の残量を検出するようにしてもよい。
【0065】
画像記録装置10は、シート式給紙部24から送り出されたシート状の記録用紙PSを搬送するシート搬送部30と、第1ロール式給紙部26から巻き出された長尺状の記録用紙PR1を搬送する第1ロール搬送部32と、第2ロール式給紙部28から巻き出された長尺状の記録用紙PR2を搬送する第2ロール搬送部34と、を備えている(以下、説明の都合上、記録用紙PS、PR1、PR2の総称を記録用紙Pと記載して説明する)。
【0066】
また、画像記録装置10は、シート式給紙部24、第1ロール式給紙部26、第2ロール式給紙部28、及び反転搬送経路74からの記録用紙Pをメイン搬送経路22に送給する副走査ローラ40を備えている。シート状の記録用紙PS、長尺状の記録用紙PR1、長尺状の記録用紙PR2は、選択的に副走査ローラ40を介してメイン搬送経路22に搬送される。
【0067】
なお、記録用紙Pは、支持体の両面にインク受容層を有し、インク受容層の少なくとも一方と支持体の間に、無機質の層状化合物を含むアンダーコート層が設けられたロール状のインクジェット記録媒体である。このインクジェット記録媒体の詳細については既述した通りであるが、本実施形態の画像記録装置を用いて記録を行なうことにより、一方の面に画像が記録された際に発生するカールの方向性が一定の状態に維持されるため、より安定して画像の記録が行なえる。
例えば一般に用いられるフォトプリント用の用紙では、吸水性のシリカ粒子を含有するコーティング層が両面に形成されているため、記録用紙の片面で乾燥が進むと、この片面側のコーティング層が収縮し、この片面が凹面をなすようにカールする。また、普通紙の場合でも同様に、片面が大気面と接すると、この片面の乾燥が進んで紙繊維の収縮が進み、この片面が凹面をなすようにカールする。また、近年フォトブック用に両面に吸水性のシリカ粒子を含有するコーティング層を有する用紙についても同様の特性を持つ。さらに、ロール状記録用紙27の場合、ロール状に巻回されているため、巻回された内側が凹となるようにカールする。そこで、メイン搬送経路22には、インクジェット記録ヘッド14による画像形成位置に搬送される記録用紙の平面性を確保しつつ記録用紙とインクジェット記録ヘッド14との距離を一定に保つため、吸着搬送部42が設けられている。この吸着搬送部42は、副走査ローラ40から搬出された記録用紙Pを吸着しつつ、画像記録部12で画像が記録される領域(すなわちインクジェット記録ヘッド14の直下)に吸着搬送するようになっている。
【0068】
(吸着搬送部の機構)
図2には、吸着搬送部42の構成を示す斜視図が示されており、図3には吸着搬送部42の幅方向の断面図が示されている。
吸着搬送部42は、上側にメイン搬送経路22を形成すると共に記録用紙Pの幅方向に対して2つの空気室(チャンバー)48A、48Bを形成する空気室形成部材50と、空気室48A、48Bにそれぞれ対応して設けられ負圧吸引を行なう2つの吸引ファン52A、52Bと、を備えている。
【0069】
空気室形成部材50は、記録用紙Pの幅方向に対する幅が、本画像記録装置10で使用可能な記録用紙Pの最大幅よりも大きく形成されており、メイン搬送経路22を形成する上面に空気室48とメイン搬送経路22の上側とを連通させるための多数の吸引孔49が配置されている。また、空気室形成部材50の底側には、吸引ファン52A、52Bがそれぞれ空気室48A、48Bと連通するように、開口62A、62Bが形成されている。
【0070】
記録用紙Pは、幅方向の一端が空気室形成部材50の幅方向一端となるように吸着搬送部42に搬送される。
【0071】
画像を記録する場合、メイン搬送経路22には、シート状の記録用紙PS、長尺状の記録用紙PR1、長尺状の記録用紙PR2から選択的に画像形成対象とする記録用紙Pが搬送される。吸着搬送部42では、図2に示すように、記録用紙Pの幅方向の一端が空気室形成部材50の幅方向一端となるように搬送される。記録用紙Pは、吸着搬送部42からの吸着力が作用していない場合、メイン搬送経路22に対して若干凸となる向きにカールしている。
【0072】
画像が記録された記録用紙Pには、ドライヤー18からの温風が当てられ、インク滴を固化させる。また、長尺状の記録用紙PR1及び長尺状の記録用紙PR2は、後端カッター17で後端がカットされる。後端カッター17及びドライヤー18を通過した記録用紙Pは、変更湾曲部22Bに搬送されて外側に湾曲することにより変更湾曲部22Bに一時的に保持される。このとき、変更湾曲部22Bに保持された記録用紙Pが最大画像で1枚分となり、用紙センサ80で記録用紙Pが検出された場合、図示しない搬送制御部を介してモータを制御し、ローラ対23Bを回転駆動させることにより、記録用紙Pを画像1枚分だけ搬送させ、図示しないカッター制御部を介してカッター20を制御して画像毎に記録用紙Pを切断する。画像毎に切断された記録用紙Pは、スイッチバック収納部70に一旦収納された後に搬送方向が反転されて排紙口72からトレイ73へ排出される。
【0073】
一方、記録用紙Pの両面に画像を形成する場合には、はじめに記録用紙をメイン搬送経路においてロール状態における内側から吸着しつつ搬送し(第1の吸着搬送工程)、吸着された記録用紙のロール状態における外側のインク受容層にインクジェット方式でインクを吐出して画像を記録した後(第1のインク付与工程)、後端カッター17及びドライヤー18を通過した記録用紙Pの搬送方向が逆方向に切り換えられ、反転搬送経路74に搬送される。このとき、インク滴に含まれる溶媒が記録用紙PSのインク受容層に吸収され、記録用紙PSの上面側が下面側よりも吸湿して伸長する。このため、記録用紙PSには、上面側に更に凸となるようにカールする力が作用する。また、記録用紙Pは、後端カッター17により少なくとも画像の搬送方向下流側が切断され、所定サイズに成形され、ドライヤー18により記録媒体中のインク成分の少なくとも一部が乾燥除去される(乾燥除去工程)。反転搬送経路74では、記録用紙PSをデカール搬送部38でデカール処理し、記録面側が内側を向く凹形状にカール方向を矯正する(カール矯正工程)。このように、デカール搬送部38でデカール処理された記録用紙PSは、カール方向が反転する。すなわち、デカール搬送部38から搬出された状態では、記録用紙PSは反転搬送経路74に対して凹、すなわちこの反転搬送経路74を通って反転されて再びメイン搬送経路22に送られたときには、メイン搬送経路22に対して凸にカールすることになる。したがって、一方の面(好ましくは、ロール状態における外側の面)のインク受容層に記録した後の2回目の画像記録、すなわち他方の面(好ましくは、ロール状態における内側の面)のインク受容層への画像記録でメイン搬送経路22を記録用紙PSが搬送される際、画像が記録された面とメイン搬送経路とが対向するように、1回目の画像記録のときと同様、記録用紙PSは搬送経路形状に沿った形状にされて搬送され(第2の吸着搬送工程)、先端がメイン搬送経路22から浮き上がることがない。そして、画像が記録されていない面のインク受容層に、インクジェット方式でインクを付与して画像が記録される(第2のインク付与工程)。
【0074】
また、本実施形態においては、画像記録部12による画像形成位置に記録用紙Pの幅方向に対して複数並んで、記録用紙Pの搬送面に吸引孔49が形成された2つの空気室48A、48B、及び空気室48A、48Bにそれぞれ対応して負圧吸引する2つの吸引ファン52A、52Bを設けて、画像形成対象とする記録用紙Pの幅に応じて動作させる吸引ファン52の数を制御するという簡単な機構で複数の幅の記録用紙Pに対して良好な画像を形成することができる。
【0075】
上記の実施形態では、変更湾曲部22Bに用紙センサ80を設けて1枚分の記録用紙を保持されたか否かを検出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ローラ対23Aによる記録用紙Pの搬送距離とローラ対23Bによる記録用紙Pの搬送距離との差を求め、搬送距離の差から保持された記録用紙の長さを検出するようにしてもよい。また、上記の実施形態では吸着搬送部42として記録用紙Pの幅方向に対して2つの空気室48A、48Bと空気室48A、48Bにそれぞれ対応して2つの吸引ファン52A、52Bを設けた場合について説明したが、2以上設けて、記録用紙Pの幅が広いほど動作させる吸引ファンの数を多くする制御を行なうようにしてもよい。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0077】
[実施例1]
≪インクジェット記録媒体の作製≫
<樹脂被覆された支持体の作製>
アカシアからなるLBKP50部及びアスペンからなるLBKP50部をそれぞれディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlに叩解し、パルプスラリーを調製した。
次いで、前記で得られたパルプスラリーに、対パルプ当たり、カチオン性デンプン(日本NSC製 CAT0304L)1.3%、アニオン性ポリアクリルアミド(星光化学製 ポリアクロンST−13)0.15%、アルキルケテンダイマー(荒川化学製 サイズパインK)0.29%、エポキシ化ベヘン酸アミド0.29%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン(荒川化学製 アラフィックス100)0.32%を加えた後、消泡剤0.12%を加えた。
【0078】
前記のようにして調製したパルプスラリーを長網抄紙機で抄紙し、ウェッブのフェルト面をドラムドライヤーシリンダーにドライヤーカンバスを介して押し当てて乾燥する工程において、ドライヤーカンバスの引張り力を1.6Kg/cmに設定して乾燥を行った後、サイズプレスにて原紙の両面にポリビニルアルコール((株)クラレ製 KL−118)を1g/m塗布して乾燥し、カレンダー処理を行った。なお、原紙の坪量は157g/mで抄造し、厚さ157μmの原紙(基紙)を得た。
【0079】
得られた基紙の一方の面にコロナ放電処理を施し、該一方の面側に、10質量%の酸化チタンを有する密度0.93g/cmのポリエチレンを、24g/mになるように溶融押出機を用いて320℃で押し出しコーティングした。
引き続き、他方の面にもコロナ放電処理を施し、該他方の面側に、10質量%の酸化チタンを有する密度0.93g/cmのポリエチレンを、24g/mになるように溶融押出機を用いて320℃で押し出しコーティングした。
以上より、原紙の両面がポリエチレンで被覆されたポリエチレン樹脂被覆紙(樹脂被覆された支持体)を得た。
【0080】
<アンダーコート層用塗布液の調製>
平板状カオリンクレイ分散液(Capim DG、70%分散液、(株)イメリスミネラルズジャパン製、ブラジル1級カオリン、アスペクト比=11、平均粒子径(平均長径)=1.15μm)に水を加え、平板状カオリンクレイ濃度が5%となるようにした。得られた分散液40部を、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(日本合成化学工業製、ゴーセファイマーZ−100)の10%水溶液100部に添加し、30分間攪拌した。更に塗布直前に硬膜剤として2,3−ヒドロキシ−5メチル−1,4ジオキサンを0.5部添加して、アンダーコート層用塗布液Aを得た。
【0081】
<アンダーコート層の形成>
上記で得られた樹脂被覆された支持体の一方の面にコロナ放電処理を行った後、該一方の面に、アンダーコート層用塗布液を、乾燥後の固形分塗布量が3g/mとなるようにエクストルージョンダイコーターで塗布、乾燥して、支持体上の片面にアンダーコート層を形成した。
【0082】
<インク受容層用塗布液の調製>
下記組成に示した、(1)気相法シリカ微粒子と、(2)イオン交換水と、(3)「シャロールDC−902P」と、(4)「ZA−30」と、を混合し、液液衝突型分散機(アルティマイザー、スギノマシン社製)を用いて分散させた後、得られた分散液を45℃に加熱し20時間保持した。その後、分散液に(5)ホウ酸と、(6)ポリビニルアルコール溶解液と、(7)カチオン変性ポリウレタンと、を30℃で加え、インク受容層用塗布液を調製した。
シリカ微粒子と水溶性樹脂との質量比(PB比=(1):(6))は、4.9:1であり、塗布液のpHは、3.4で酸性を示した。
〜インク受容層用塗布液の組成〜
(1)気相法シリカ微粒子(無機微粒子) … 8.9部
(AEROSIL300SF75、日本アエロジル(株)製)
(2)イオン交換水 … 47.3部
(3)「シャロールDC−902P」(51.5%水溶液) … 0.78部
(分散剤、含窒素有機カチオンポリマー、第一工業製薬(株)製)
(4)「ZA−30」 … 0.48部
(第一稀元素化学工業(株)製、酢酸ジルコニル)
(5)ホウ酸(7.5%水溶液) … 4.38部
(6)ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)溶解液 … 26.0部
(7)カチオン変性ポリウレタン … 1.8部
(スーパーフレックス650−5(25%溶液)、第一工業製薬(株)製)
【0083】
〜ポリビニルアルコール溶解液の組成〜
・PVA235 … 1.81部
(ポリビニルアルコール、(株)クラレ製)
・イオン交換水 … 23.04部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル … 0.55部
(ブチセノール20P:協和発酵ケミカル(株))
・エマルゲン109P … 0.6部
(界面活性剤、花王(株)製)
【0084】
<インク受容層の形成>
上記で得られた片面にアンダーコート層が設けられた支持体のアンダーコート層が設けられた面に、以下のようにして、インク受容層用塗布液をエクストルージョンダイコーターにて塗布して塗布層を形成した。
具体的には、インク受容層用塗布液を150g/mで、下記インライン液を10g/mの速度(塗布量)でインライン混合した後、支持体に塗布した。
【0085】
〜 インライン液の組成 〜
(1)アルファイン83(大明化学工業株式会社製) ・・・ 2.0部
(2)イオン交換水 ・・・ 7.8部
(3)ハイマックスSC−507 ・・・ 0.2部
(ジメチルアミン・エピクロロヒドリン重縮合物、ハイモ(株)製)
【0086】
上記塗布により形成された塗布層を、熱風乾燥機にて80℃で(風速3〜8m/秒)で塗布層の固形分濃度が36%になるまで乾燥させた。この塗布層は、この間は恒率乾燥速度を示した。その直後、下記組成の塩基性化合物を含む液に3秒間浸漬して上記塗布層上にその13g/mを付着させ、更に72℃下で10分間乾燥させ(乾燥工程)、樹脂被覆された支持体の一方の面にインク受容層を形成した。
【0087】
〜 塩基性化合物を含む液の組成 〜
(1)ホウ酸 … 0.65部
(2)炭酸アンモニウム(1級:関東化学(株)製) … 5.0部
(3)イオン交換水 … 88.35部
(4)ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤) … 6.0部
(花王(株)製「エマルゲン109P」(10%水溶液)、HLB値13.6)
【0088】
引き続き、上記樹脂被覆された支持体の他方の面にコロナ放電処理を施し、アンダーコート層を形成せずに、上記一方の面と同様の方法により、他方の面にインク受容層のみを形成してインクジェット記録媒体を作製した。これを所定のロール形状(152mm幅×100m巻)となるようにスリット加工して外径3インチの紙管に巻き取り、ロール状のインクジェット記録媒体を作製した。この際、アンダーコート層を有しないインク受容層が形成された面が内側(ロール芯側)になるように巻き取って、ロール状のインクジェット記録媒体を作製した。
以上により、樹脂被覆された支持体の両面に、インク受容層がそれぞれ形成され、ロール状態における外側の面のインク受容層と支持体との間にアンダーコート層が配置されたロール状のインクジェット記録媒体1(インク受容層の層厚(片面当たり)は29μm)を作製した。
【0089】
<実施例2>
実施例1において、支持体の両面にインク受容層を設けてインクジェット記録媒体を作製した後のスリット加工および巻き取りを、アンダーコート層を有しないインク受容層が形成された面が、ロール状態における外側となるように巻き取った以外は実施例1と同様にして、ロール状のインクジェット記録媒体2を作製した。
【0090】
<実施例3>
実施例1において、支持体の両面にアンダーコート層を設けたこと以外は実施例1と同様にして、ロール状のインクジェット記録媒体3を作製した。
【0091】
<実施例4〜6>
実施例1〜実施例3におけるアンダーコート層用塗布液の調製において、平板状カオリンクレイ分散液としてCapim DGの代わりに、Contour1500((株)イメリスミネラルズジャパン製、エンジニアードカオリン、アスペクト比=59、平均粒子径(平均長径)=2.5μm、70%分散液)を用いたこと以外は、実施例1〜実施例3と同様にして、ロール状のインクジェット記録媒体4〜6をそれぞれ作製した。
【0092】
<実施例7〜9>
実施例1〜実施例3におけるアンダーコート層用塗布液の調製において、平板状カオリンクレイ分散液の代わりに、水膨潤性のフッ素系合成雲母の分散液(コープケミカル(株)製、ソマシフMEB、アスペクト比=1000、平均粒子径(平均長径)=2.0μm、8%分散液)を用いたこと以外は、実施例1〜実施例3と同様にして、ロール状のインクジェット記録媒体7〜9をそれぞれ作製した。
【0093】
<比較例1>
実施例1において、アンダーコート層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、ロール状のインクジェット記録媒体C1を作製した。
【0094】
<搬送性評価>
−画像の記録−
得られたロール状記録用紙を、評価用ロールサンプルとして図1に示す画像記録装置に装填し、23℃、30%RHの環境下でグレーのベタ画像の濃度調整を行なった。濃度調整は、濃度計(X−rite 310TR)でのビジュアル反射濃度が1.5±0.1になるように、画像データの階調値を調整することにより行なった。このとき、記録前及び記録直後のインクジェット記録シートの重さ[g]を精密天秤で測定し、インク受容層に着滴したインクの量が12g/mであることを確認した。なお、画像記録装置の構造の詳細については既述の通りであり、また、画像を記録するインクには、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)4色のフロンティアドライミニラボDL410用インク(富士フイルム(株)製)を用いた。
【0095】
次いで、上記で得たロール状記録用紙を、あらかじめ23℃、30%RHの環境下で1晩放置して調温・調湿した後、はじめにロール状態における外側の面(オモテ面)上に設けられたインク受容層の全面(縁なしプリント設定)に、平均搬送速度1000mm/minにて図4に示す36種の画像パターンを任意の順に、各画像パターン毎にそれぞれ10枚連続記録し、その後、70℃の風をあてて10秒秒間の乾燥処理を施し、各画像パターンの記録・乾燥終了の度ごとに画像の後部(すなわち記録用紙における画像パターンの下流側)を所定位置でカットした。その後、1種の画像パターンが記録された記録用紙を逆搬送し、逆搬送して送給された反転搬送経路にてデカール処理を施した。このデカール処理により記録用紙のカール方向が反転され、反転搬送経路に対して凹形状となるように矯正される。このとき、記録開始から1つの画像パターンの記録(10枚)が終了するまでに要した時間は120秒であった。続いて、画像の記録終了後10秒以内に、画像が記録されていない面(ウラ面)上に設けられたインク受容層に、同様にして図4に示す画像パターンを10枚連続記録した。その後、画像パターン毎に記録用紙をカットした。
図4に示す36種の画像パターンを両面に記録する前後での記録用紙の搬送性を目視にて確認し、下記の評価基準にしたがって評価した。
〜評価基準〜
A:全パターン良好に搬送した。
B:吸着不良による紙詰まり、端部インク汚れ付着等の搬送不良が1パターン以上2パターン以下であった。
C:吸着不良による紙詰まり、端部インク汚れ付着等の搬送不良が3パターン以上4パターン以下であった。
D:吸着不良による紙詰まり、端部インク汚れ付着等の搬送不良が5パターン以上6パターン以下であった。
E:吸着不良による紙詰まり、端部インク汚れ付着等の搬送不良が7パターン以上であった。
【0096】
【表1】

【0097】
表1から、本発明のインクジェット記録媒体を用いることで、両面インクジェット記録における搬送不良の発生が抑制されたことが分かる。すなわち本発明のインクジェット記録媒体は走行性に優れることが分かる。
【符号の説明】
【0098】
10・・・画像記録装置
12・・・画像記録部
27・・・ロール状記録用紙(ロール状記録媒体)
29・・・残量センサ(残量検出手段)
38・・・デカール搬送部(デカール部)
42・・・吸着搬送部(吸着手段)
48A,48B・・・空気室
49・・・吸引孔
52A,52B・・・吸引ファン
74・・・反転搬送経路
P,PS,PR1,PR2・・・記録用紙(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
前記支持体の両面に配置され、無機微粒子および水溶性樹脂を含むインク受容層と、
前記インク受容層の少なくとも一方と前記支持体との間に配置され、無機質の層状化合物を含むアンダーコート層と、
を備えるインクジェット記録媒体。
【請求項2】
前記無機質の層状化合物は、アスペクト比が50以上である請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項3】
前記無機質の層状化合物は、合成雲母である請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項4】
前記アンダーコート層は、前記支持体の両面に配置されている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体を、搬送路に吸着しつつ搬送する第1の吸着搬送工程と、
前記搬送路に吸着されたインクジェット記録媒体上に、インクジェット方式でインクを付与して画像を記録する第1のインク付与工程と、
前記画像が記録されたインクジェット記録媒体を、画像が記録された面が内側を向く凹形状にカール方向を矯正するカール矯正工程と、
前記カール方向が矯正されたインクジェット記録媒体を、画像が記録された面と前記搬送路とが対向するように前記搬送路に吸着しつつ搬送する第2の吸着搬送工程と、
前記搬送路に吸着されたインクジェット記録媒体の画像が記録されていない面上に、インクジェット方式でインクを付与して画像を記録する第2のインク付与工程と、
を有する画像記録方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体を、搬送路に吸着しつつ搬送する第1の吸着搬送工程と、
前記搬送路に吸着されたインクジェット記録媒体上に、インクジェット方式でインクを付与して画像を記録する第1のインク付与工程と、
前記画像が記録されたインクジェット記録媒体における前記画像の少なくとも搬送方向下流側を切断し、所定サイズに成形する切断成形工程と、
前記成形されたインクジェット記録媒体からインク成分の少なくとも一部を乾燥除去する乾燥除去工程と、
前記乾燥除去後のインクジェット記録媒体を、画像が記録された面が内側を向く凹形状にカール方向を矯正するカール矯正工程と、
前記カール方向が矯正されたインクジェット記録媒体を、画像が記録された面と前記搬送路とが対向するように前記搬送路に吸着しつつ搬送する第2の吸着搬送工程と、
前記搬送路に吸着されたインクジェット記録媒体の画像が記録されていない面上に、インクジェット方式でインクを付与して画像を記録する第2のインク付与工程と、
前記搬送路に吸着されたインクジェット記録媒体の画像が記録されていない面上に、インクジェット方式でインクを付与して画像を記録する第2のインク付与工程と
を有する画像記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−234776(P2010−234776A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88246(P2009−88246)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】