説明

インクジェット記録媒体及びその製造方法

【課題】インク受理層中に低鹸化度で高重合度のポリビニルアルコールを含む場合であっても塗工液が発泡し難く、インク受理層のクラックを抑制すると共に、塗工面の微小な模様を低減し、操業性が良好なインクジェット記録媒体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】支持体上に、顔料とバインダーと消泡剤とを含むインク受理層用塗工液を塗布、乾燥してなるインク受理層が形成されているインクジェット記録媒体であって、前記バインダーは、鹸化度85〜95%、重合度2000以上4000以下のポリビニルアルコールであり、前記消泡剤は疎水性シリカを含有するインクジェット記録媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録方式により印字を行うインクジェット記録媒体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式に用いる記録媒体は、いわゆる上質紙・PPC用紙に似た風合いの普通紙タイプのものと、インク受理層を有することが明らかにわかる塗工紙タイプのものに大別される。さらに塗工紙タイプの記録媒体は、インク受理層に光沢を有するグロスタイプと、光沢を有さないマットタイプとに大別される。特に、従来の銀塩写真に匹敵する光沢を有するインクジェット記録媒体においては、品質要求が厳しく、技術開発が活発に行われている。
【0003】
光沢インクジェット記録媒体に要求される品質特性としては、光沢感が高く、さらにインク乾燥速度が速いこと、印字濃度が高いこと、インクの溢れや滲みがなく吸収性に優れていること等が挙げられ、特にシート上にひび割れ(クラック)がないことが重要である。
【0004】
このクラックの解決には幾つかの方法がある。例えば、特許文献1には、インク受理層として、擬ベーマイトと、重合度及び鹸化度が所定範囲にあるポリビニルアルコールとを、所定の割合で含有するものを用いると、クラックの発生を抑制できることが開示されている。
また、特許文献2には、少なくとも親水性バインダー、平均粒径100nm以下の無機微粒子、カチオン性ポリマー及び消泡剤を含有するインク受理層を設けることで、クラック等の皮膜の欠陥を低減することが開示されている。ここで、消泡剤としては、一般的なシリコーン系化合物等が例示され、親水性バインダーとしては平均重合度2000以上で鹸化度80〜100%のポリビニルアルコールが例示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−254813号公報
【特許文献2】特開平11−277877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された重合度及び鹸化度のポリビニルアルコールは、インク受理層のクラックを有効に防止できるものの、このようなポリビニルアルコールを配合した塗工液は泡が発生しやすく、操業性に問題を生じると共に、インク受理層の表面性が劣るという問題がある。
ここで、インク受理層の表面性の劣化は、インク受理層の塗工時に塗工液が局所的かつ不規則に泡立つために、塗工面に部分的な光沢ムラである微小な模様(パターン)が生じるという現象であり、クラックのような巨視的な凹状欠陥とは異なる。特にインク受理層をキャスト仕上げして光沢度を高くした場合、光沢ムラが目立つようになるので上記した微小なパターンが顕著に発生する。
また、特許文献2に記載された消泡剤は、ポリビニルアルコールを含有する塗工液の泡立ちの抑制効果が充分ではなく、やはり上記したインク受理層の表面性の劣化が生じ易い。
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、インク受理層中に低鹸化度で高重合度のポリビニルアルコールを含む場合であっても塗工液が発泡し難く、インク受理層のクラックを抑制すると共に、塗工面の微小な模様を低減し、操業性が良好なインクジェット記録媒体及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らの検討によると、疎水性シリカを含有する消泡剤をインク受理層用塗工液に配合することで、低鹸化度で高重合度のポリビニルアルコールを塗工液中に含む場合であっても塗工液が発泡し難く、塗工面の微小な模様を低減し、操業性が良好となることが判明した。又、インク受理層のクラックの発生は、低鹸化度で高重合度のポリビニルアルコールを用いることで抑制できる。
すなわち、本発明のインクジェット記録媒体は、支持体上に、顔料とバインダーと消泡剤とを含むインク受理層用塗工液を塗布、乾燥してなるインク受理層が形成されているインクジェット記録媒体であって、前記バインダーは、鹸化度85〜95%、重合度2000以上4000以下のポリビニルアルコールを含み、前記消泡剤は疎水性シリカを含有する。
【0009】
前記疎水性シリカの平均粒子径が1μm以下であることが好ましく、前記インク受理層がキャストコート層であることが好ましい。
【0010】
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法は、支持体上に、顔料とバインダーと消泡剤とを含むインク受理層用塗工液を塗布、乾燥してインク受理層を形成するインクジェット記録媒体の製造方法であって、前記バインダーは、鹸化度85〜95%、重合度2000以上4000以下のポリビニルアルコールを含み、前記消泡剤は疎水性シリカを含有する。
【0011】
前記顔料と前記消泡剤と水とを混合した後に、前記ポリビニルアルコールを添加して前記インク受理層用塗工液を調製することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インク受理層中に低鹸化度で高重合度のポリビニルアルコールを含む場合であっても塗工液が発泡し難く、インク受理層のクラックを抑制すると共に、塗工面の微小な模様を低減し、操業性が良好なインクジェット記録媒体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態に係るインクジェット記録媒体は、顔料と、バインダーとして鹸化度85〜95%、重合度2000以上4000以下のポリビニルアルコールと、疎水性シリカを含有する消泡剤とを含むインク受理層用塗工液を塗布、乾燥してなるインク受理層を、支持体上に形成してなる。
【0014】
(支持体)
本発明に使用される支持体は、シート状のものであればいずれのものを用いることが可能であるが、後述するカレンダー処理やキャストコート処理に好適である透気性を有するものが好ましい。例えば塗工紙、未塗工紙等の紙を、支持体に好適に用いることができる。紙の主成分はパルプと内添填料である。パルプとしては通常公知のパルプであればいずれのものを使用することができる。例えば、化学パルプとして広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹晒亜硫酸パルプ、広葉樹未晒亜硫酸パルプ、針葉樹晒亜硫酸パルプ、針葉樹未晒亜硫酸パルプ、木材、綿、麻、じん皮等の繊維原料を化学的に処理して作製されたパルプなどを使用できる。また、木材やチップを機械的にパルプ化したグランドウッドパルプ、木材やチップに薬液を染み込ませた後に機械的にパルプ化したケミメカニカルパルプ、及び、チップをやや軟らかくなるまで蒸解した後にリファイナーでパルプ化したサーモメカニカルパルプ等も使用できる。
【0015】
また、古紙を原料とするパルプ、すなわち、製本、印刷工場、断裁所等において発生する裁落、損紙、幅落しした上白、特白、中白、白損等の未印刷古紙;印刷やコピーが施された上質紙、上質コート紙等の上質印刷古紙;水性インク、油性インク、鉛筆などで筆記された古紙;印刷された上質紙、上質コート紙、中質紙、中質コート紙等のチラシを含む新聞古紙;中質紙、中質コート紙、更紙等の古紙等を離解して得られるパルプを使用することもできる。インクジェット用紙には高白色度で地合に優れるLBKPを使用することが好ましい。
【0016】
またパルプは、漂白することにより高白色とすることができる。パルプの漂白方法としては、元素状塩素、次亜塩素酸塩、二酸化塩素、酸素、過酸化水素、苛性ソーダ等の薬品の組合せにより漂白する塩素漂白法、二酸化塩素を使用する漂白方法(ECF)、塩素化合物を一切使用せずに、オゾン/過酸化水素等を主に使用して漂白する方法(TCF)といった方法がある。このうち塩素漂白法からなる有機塩素化合物負荷が環境に悪影響を与える恐れがあることから、ECFやTCFといった方法で漂白することが好ましい。またECFでは、二酸化塩素はリグニンと選択的に反応するため、セルロースに損傷を与えずにパルプの白色度を高めることができるので、さらに好ましい。
【0017】
抄紙適性、強度、平滑性、地合の均一性等といった紙の諸特性等を向上させるため、上記したパルプは、ダブルディスクリファイナー等の叩解機により叩解される。叩解の程度は、カナディアン スタンダード フリーネス(C.S.F.)で250ml〜550ml程度の通常の範囲で目的に応じて選択することが出来る。前記パルプのpHは、酸性、中性、アルカリ性のいずれでもよい。
叩解されたパルプスラリーは、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、または、丸網抄紙機等の単層抄き抄紙機、又はこれらを任意に組み合わせた多層抄き抄紙機により抄紙され、支持体を得ることができる。この際、通常抄紙に際して用いられるパルプスラリーに、分散助剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、サイズ剤、インク定着剤、耐水化剤、pH調節剤、染料、有色顔料、及び蛍光増白剤等を添加することが可能である。
【0018】
また、支持体の不透明度、白色度向上を目的とし、支持体に填料を添加(内添)してもよい。内添填料は、例えばクレー、カオリン、タルク、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の白色顔料を使用できるが、高白色度を得やすいことから炭酸カルシウム、特に軽質炭酸カルシウムが好ましい。
また、上記支持体には、水溶性高分子添加剤、帯電防止剤、吸湿性物質、顔料、pH調整剤、染料、蛍光増白剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤をはじめとする各種の添加剤を含有する液を、タブサイズ、サイズプレス、ゲートロールコーター又はフィルムトランスファーコーター等でオンマシン又はオフマシンで塗工することが可能である。
上記の方法で作成された支持体は、その後の工程にある塗工性の点から、ステキヒトサイズ度は5秒以上であることが好ましいが、50秒以上である場合は後述する塗工層(インク受理層)の浸透を最小限に抑えることができるので、さらに好ましい。
【0019】
(インク受理層の顔料)
インク受理層の顔料としては、インクの吸収性付与、光沢性付与、紙支持体の被覆のため、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、擬ベーマイト、炭酸カルシウム、カオリン、チタンといった塗工顔料を使用することができる。この中でもシリカ、アルミナといった多孔質の顔料はインク吸収性に優れるので好ましい。またインク受理層に光沢を付与する場合、光沢発現のため、コロイダルシリカやコロイダルアルミナのような平均粒子径100nm以下の微粒子顔料を含むことが好ましい。本発明では上述した顔料を単独又は混合して使用することができる。
【0020】
(インク受理層のバインダー)
インク受理層のバインダーは、インク受理層の強度を確保し、記録時のインク溶媒の吸収性及びインク受理層の透明性を確保し、さらにインク受理層のクラックを防止するため、鹸化度85〜95%、重合度2000以上4000以下のポリビニルアルコールを含有する。
ポリビニルアルコールの鹸化度が95%以下であるとインク受理層のクラックが減少する。この理由は、鹸化度が低いほどポリビニルアルコールを含む層の柔軟性が高まるためと考えられる。一方、ポリビニルアルコールの鹸化度が85%未満であると、鹸化度が100%に近い完全鹸化ポリビニルアルコールと比較し、塗工液が発泡しやすくなる。これは、鹸化度が低いポリビニルアルコールの分子中には親水性基と疎水性基とが存在するため、ポリビニルアルコール水溶液の表面張力が低くなり、泡の膜を形成しやすくなるためと考えられる。これらのことから、ポリビニルアルコールの鹸化度を85〜95%とする。
また、ポリビニルアルコールの重合度が2000以上であると、塗膜(インク受理層)の強度が向上しインク受理層表面にクラック(ひび)が発生しにくくなる。一方、重合度が4000を超えると、ポリビニルアルコールを配合した塗工液の粘度が上昇し、流動性が悪くなるため塗工液が泡立ち、塗工後の塗工紙に微小な模様(パターン)が生じて面感を悪化させる。これらのことから、ポリビニルアルコールの重合度を2000以上4000以下とする。
【0021】
インク受理層中で、ポリビニルアルコールの配合割合は顔料100重量部に対して5〜50重量部であるのが好ましい。これは、インク受理層中のポリビニルアルコールの配合割合が50重量部を超えるとインク吸収性に劣り、5重量部未満であると塗工層の強度が劣る傾向にあるからである。
また、ポリビニルアルコールと同様の溶解が可能であれば、シリル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコールの誘導体を使用してもよい。
【0022】
インク受理層に使用するバインダーとして、ポリビニルアルコールに加え、ポリビニルアルコール以外のバインダーを併用しても良い。これらのバインダーとしては、例えば、澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;カゼイン;ゼラチン;大豆タンパク;スチレン−アクリル樹脂及びその誘導体;スチレン−ブタジエン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂及びこれらの誘導体;等を使用することができる。これらを1種または複数種混合してポリビニルアルコールと併用することができる。
なお、ポリビニルアルコール以外のバインダーを併用する場合であっても、インク受理層のバインダー全体に対し、ポリビニルアルコールの含有割合が50質量%を超えることが好ましい。勿論、インク受理層のバインダーがポリビニルアルコールのみからなっていてもよい。
【0023】
(消泡剤)
インク受理層塗工液は、疎水性シリカを含んだ消泡剤を含む。ここで「疎水性」とは、水との接触角が90°以上であることを意味し、親水性シリカの表面をエステル化、エーテル化などの化学反応によって疎水化することにより、疎水性シリカを得ることができる。
この疎水性シリカを、ポリエーテル類、金属石鹸、鉱物油、植物油のうちいずれか一つ、又は複数の分散溶媒に分散した溶液を消泡剤として用いることができる。
【0024】
一般に、塗工液を用いてロールコーターで塗工を行う場合、その構造上、泡が発生して塗工液中に取り込まれやすい。これは、ロール間隙を塗工液が通過する時に、泡が発生するためである。そして、鹸化度が95%を超え、又は重合度が2000未満のポリビニルアルコールを配合した塗工液の場合は、ほとんど発泡しないか、発泡してもすぐに泡が消滅し、または支持体上に塗工後に塗工液がレベリングするため、操業性を阻害しない。一方、本発明で用いる、低鹸化度、高重合度の(鹸化度85〜95%、重合度2000以上4000以下の)ポリビニルアルコールを含有する塗工液の場合、ロールコーターのロール部分等で泡が多量に発生するため、塗工後も塗工液がレベリングせず、泡が消えずに塗工液中に残留する。
【0025】
塗工液が過度に発泡すると、見かけの塗工液粘度が増大して塗工ロールコーターの塗工性を低下させ、ロールコーターの最適運転条件の変動を引き起こす。又、このような塗工液で塗工すると、塗工量むらの発生や、インク受理層の表面性を低下させる。
ここで、インク受理層の表面性の劣化は、インク受理層の塗工時に塗工液が局所的かつ不規則に泡立つために、塗工面に部分的な光沢ムラである微小な模様(パターン)が生じるという現象であり、クラックのような巨視的な凹状欠陥とは異なる。特にインク受理層をキャスト仕上げして光沢度を高くした場合、光沢ムラが目立つようになるので上記した微小なパターンが顕著に発生する。
そこで、疎水性シリカを含んだ消泡剤をインク受理層塗工液に含有させることにより、低鹸化度で高重合度のポリビニルアルコールを塗工液中に含む場合であっても塗工液が発泡し難く、上記した問題を軽減することができる。又、インク受理層のクラックの発生は、低鹸化度で高重合度のポリビニルアルコールを用いることで抑制できる。
【0026】
上述した疎水性シリカは、ポリエーテルや鉱物油や植物油を泡表面まで運搬するキャリアの役割をも果たす。これらの油を吸着した疎水性シリカは、泡膜上に分散し、泡膜の表面張力を急激かつ局部的に低下させる。その結果泡膜は不安定になり、破泡が促進されると考えられる。この、局部的な表面張力低下の効果は、疎水性シリカを含んだ消泡剤が持つ特徴的な効果のひとつであり、アセチレングリコール系、シリコーン系オルガノシロキサン白色鉱油、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル等の、疎水性シリカを含まない消泡剤には顕著に見られない効果である。局部的な表面張力低下を示すことが疎水性シリカを含んだ消泡剤が顕著な消泡効果を示す主な理由と考えられる。
【0027】
上述した疎水性シリカの平均粒子径が小さい程、消泡効果が増大するので好ましい。疎水性シリカの平均粒子径は0.1μm〜5μmであることが好ましく、0.1μm〜1μmのものがさらに好ましい。これは微粒子であるほど、同一量当たりの疎水性シリカの粒子数が多く、発泡した塗工液中での破泡の頻度が増すためと考えられ、また、高粘度の塗工液溶液中で疎水性シリカ粒子が比較的自由に運動できるためと考えられる。
消泡剤中の疎水性シリカの平均粒子径は、以下の操作によって測定することができる。まず、疎水性シリカを含む消泡剤にアセトンを加え、10,000rpmの回転数で遠心分離を行い、上澄みを取り除く。この作業を3回繰り返し、沈殿物をイソプロピルアルコールに溶かし、この溶液をレーザー回折法によって測定する。
【0028】
疎水性シリカは消泡剤中に0.1質量%〜10質量%含有されることが好ましく、0.5質量%〜5質量%含有されることがさらに好ましい。
【0029】
このような疎水性シリカを含有する消泡剤としては、例えば、SNデフォーマー480、SNデフォーマー777、ノプコDEF122−NS、SN−1X4033、SN−1X4034:サンノプコ株式会社製、オルフィンAF104:日信化学株式会社製などが商業的に入手できる。また、特開2005−270890号公報や特開2005−279565号公報に記載された消泡剤を用いることもできる。
特開2005−270890号公報に記載された消泡剤は、疎水性シリカ、アミド及び炭化水素油を含有してなり、炭化水素油中のアロマ成分の含有量が1〜6重量%、ナフテン成分の含有量が25〜35重量%、パラフィン成分の含有量が59〜74重量%である。さらにポリオキシアルキレン化合物を含んでもよい。
特開2005−279565号公報に記載された消泡剤は、アロマ成分の含有量(重量%)が6〜15、ナフテン成分の含有量(重量%)が20〜35、パラフィン成分の含有量(重量%)が50〜74である炭化水素油、(メタ)アクリレートポリマー及び疎水性シリカを含有する。
【0030】
(その他の助剤)
また、インク受理層用塗工液には、増粘剤、消泡剤、抑泡剤、顔料分散剤、離型剤、発泡剤、pH調整剤、表面サイズ剤、着色染料、着色顔料、蛍光染料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定化剤、防腐剤、インク定着剤、耐水化剤、界面活性剤、湿潤紙力増強剤、保水剤等を、必要に応じて適宜添加してもよい。
このうち、インク定着剤としては以下に述べるカチオン性高分子を使用することが好ましい。カチオン性高分子としては一級アミン、二級アミン、三級アミン、四級アンモニウム塩、環状アミンおよびこれらの高分子を単量体としたものが挙げられる。具体的にはビニルイミン、アルキルアミン、アルキレンアミン、ビニルアミン、アリルアミン、脂環式アミン、ジアルキルアミノアルキルアクリレート、ジアリルジアルキルアンモニウム塩、アクリルアミド、アミドアミン、アミジンなどのカチオン性高分子を単量体として使用する高分子化合物である。以上に述べたカチオン性高分子の製造方法は、特開平6−92012号、特開平6−240154号、特開平9−87561号、特開平10−81065号、特開平10−152544号の各公報に記載されている。
【0031】
インク受理層の塗工量は、片面当たり、固形分換算で3〜50g/mであることが好ましいが、紙粉を削減するためには塗工量が少ないことが好ましく3〜30g/mであることがさらに好ましい。
本発明において、インク受理層の塗工量を多く必要とする場合には、インク受理層を多層にすることも可能である。又、インクジェット記録媒体のインク吸収性を向上させるため、支持体とインク受理層の間にアンダーコート層を設けてもよい。アンダーコート層はインク受理層と同一の構成でもよく、異なる構成でもよい。また、インク受理層を設けた面と反対の支持体面に、インク吸収性、筆記性、プリンター印字適性、その他各種機能を有するバックコート層をさらに設けてもよい。
インク受理層以外の上記各塗工層に使用するバインダーはポリビニルアルコールに限られるものではなく、以下のバインダーを適宜使用することができる。例えば、澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;カゼイン;ゼラチン;大豆タンパク;スチレン−アクリル樹脂及びその誘導体;スチレン−ブタジエン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂及びこれらの誘導体;等を用いることができる。
【0032】
(インク受理層の形成)
支持体上にインク受理層用塗工液を塗布する方法としては、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ブラッシュコーター、キスコーター、スクイズコーター、カーテンコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、ゲートロールコーター、ショートドウェルコーター、サイズプレス等の公知の塗工機をオンマシン、又はオフマシンで用いた塗工方法の中から適宜選択することができる。
また、塗工層の乾燥方法は特に限定されないが、蒸気加熱ヒーター、ガスヒーター、赤外線ヒーター、電気ヒーター、熱風加熱ヒーター、マイクロウェーブ、シリンダードライヤーなどを使用することができる。
また、光沢性を付与するため、インク受理層を形成した後にマシンカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー装置で表面処理することが可能であるが、後述するキャストコート法を適用することが好ましい。
【0033】
インク受理層用塗工液中の上記各成分の混合順序は特に限定されないが、顔料と消泡剤と水とを混合して顔料分散液を作製した後に、ポリビニルアルコールを添加してインク受理層用塗工液を調製すると、泡の発生を抑制できる点で好ましい。また、塗工液を塗工する直前に消泡剤を塗工液に混合する場合、消泡剤の添加量が少なくても発生した泡を速やかに消すことができる点で好ましい。
【0034】
(キャストコート法)
インク受理層に高い光沢性を付与するため、インク受理層をキャストコート法で設けてもよい。
キャストコート法としては、上述したインク受理層用塗工液を支持体上に塗工して塗工層を設け、塗工層を鏡面仕上げした加熱ドラムに圧着して光沢仕上げする方法であり、この光沢仕上げされた塗工層が高光沢なインク受理層となる。
【0035】
キャストコート法としては、(1)塗工層が湿潤状態にある間に、鏡面仕上げした加熱ドラムに塗工層を圧着して乾燥するウェットキャスト法(直接法)、(2)湿潤状態の塗工層を一旦乾燥又は半乾燥した後に再湿潤液により膨潤可塑化させ、鏡面仕上げした加熱ドラムに塗工層を圧着し乾燥するリウェット法、(3)湿潤状態の塗工層を凝固液で凝固処理し、ゲル状態にして、鏡面仕上げした加熱ドラムに塗工層を圧着し乾燥するゲル化キャスト法(凝固法)、の3種類がある。各方法の原理は、湿潤状態の塗工層を鏡面仕上げの面に押し当てて、塗工層表面に光沢を付与するという点では同一である。加熱ドラムに圧着する際の塗工層は、湿潤状態であっても乾燥状態であってもよいが、特に湿潤状態とした場合には鏡面仕上げ面を写し取りやすく、塗工層表面の微小な凹凸を少なくすることができるので、得られたインク受理層に銀塩写真並の光沢感を付与させ易くなる。
また、いずれのキャストコート法においても、塗工層が加熱ドラムに直接圧着し乾燥することから、乾燥時に発生する蒸気が鏡面と反対の支持対面から抜ける必要があるため、支持体は透気性を有するものであることが好ましい。
【0036】
(凝固法)
次に、凝固法を用いる場合について説明する。この方法は、上記キャストコート法において、上記塗工層を塗布後、未乾燥の塗工層を凝固液によってゲル化させてから、加熱した鏡面仕上げ面に圧着、乾燥するものである。凝固液を塗布する際に塗工層が乾燥状態であると鏡面ドラム表面を写し取ることが難しく、得られたインク受理層表面に微小な凹凸が多くなり、銀塩写真並の光沢感を得にくい。凝固液としては、湿潤状態の塗工層中の水系結着剤を凝固する作用を持つもの、例えば、蟻酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、塩酸、硫酸等のカルシウム、亜鉛、マグネシウム等の各種の塩の溶液が用いられる。本発明においては、水系バインダーとしてポリビニルアルコールを用いるので、凝固液としてホウ酸とホウ酸塩とを含有する液を用いることが好ましい。ホウ酸とホウ酸塩とを混合して用いることにより、凝固時の塗工層固さを適度なものとすることが容易となり、キャストコート層に良好な光沢感を付与できる。
【0037】
又、上記塗工液および/または凝固液には、必要に応じて離型剤を添加することができる。離型剤の融点は90〜150℃であることが好ましく、特に95〜120℃であることが好ましい。上記の温度範囲においては、離型剤の融点が鏡面仕上げ面の温度とほぼ同等であるため、離型剤としての能力が最大限に発揮される。離型剤は上記特性を有していれば特に限定されるものではないが、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸若しくはその塩類、又はポリエチレンワックス、レシチンなどが好ましく、ポリエチレンワックスを用いることがさらに好ましい。
【0038】
また凝固液には上記した離型剤や、カチオン物質の他に顔料、増粘剤、顔料分散剤、発泡剤、pH調整剤、表面サイズ剤、着色染料、着色顔料、蛍光染料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定化剤、防腐剤、耐水化剤、インク定着剤、界面活性剤、湿潤紙力増強剤、保水剤等を、本発明の効果を損なわない範囲内で適宜添加することができる。特に、キャストコート層用塗工液と相溶性が悪く、塗工液中に配合できない薬剤であっても、凝固液中に配合することで最終的にキャストコート層にこの薬剤を付与させることができる。凝固液のイオン性は特に限定されるものではない。また凝固液を塗布する方法としてはロール、スプレー、カーテン方式等があげられるが、特に限定されない。
【0039】
(リウェット法)
リウェット法では、上記キャストコート層を塗工する際、あらかじめ乾燥機で乾燥を行い、その後リウェット液(再湿潤液)により再湿潤した塗工層を加熱した鏡面仕上げ面に圧着し乾燥することにより、キャストコート層を形成し、その表面に光沢を付与する。リウェット液は、上記離型剤を主成分とする水性液から成る。リウェット液の主な作用は、この液の大部分を占める水により乾燥塗被層の上層部分を湿潤可塑化することにある。リウェット液には上記離型剤やカチオン物質の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、蛍光染料、染料、コロイド状顔料、界面活性剤などを添加してもよい。又、必要に応じて顔料分散剤、保水剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、着色剤、耐水化剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、等をリウェット液に適宜添加することができる。なお、リウェット液のイオン性は特に限定されるものではない。特に、キャストコート層用塗工液と相溶性が悪く配合できない薬剤であっても、リウェット液中に配合することで最終的にキャストコート層にこの薬剤を付与させることができる。またリウェット液を塗布する方法としてはロール、スプレー、カーテン方式等があげられるが、特に限定されない。
【0040】
<実施例>
以下に、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は、特に明示しない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。
【実施例1】
【0041】
叩解度350mlの広葉樹晒クラフトパルプ(L−BKP)100部からなるパルプスラリーに対し、炭酸カルシウム10部、硫酸アルミニウム1.0部、合成サイズ剤0.15部、及び歩留向上剤0.02部を添加し、抄紙機で抄紙した。抄紙の際、5%のデンプンと0.2%の表面サイズ剤(AKD)溶液を紙の両面に片面当り固形分で2.5g/mとなるように塗布し、坪量170g/m2の支持体を得た。支持体のステキヒトサイズ度は200secであった。
【0042】
支持体の片面に、バーコーターを用いて以下に記すインク受理層用塗工液を20g/m塗工し、塗工した層が湿潤状態にある間に、以下に記す凝固液を塗工層に塗布して塗工層を凝固させた。次いで、プレスロールを介して加熱された鏡面仕上げ面に塗工層を圧着して鏡面を写し取り、インクジェット記録媒体を得た。
(インク受理層用塗工液)
コロイダルシリカ(クォートロンPL−2:扶桑化学工業株式会社製)50部と、沈降法シリカ(ファインシールX−37:株式会社トクヤマ製)50部を配合した顔料スラリーに、粒径0.5μmの疎水性シリカを含む消泡剤(SN1X 4033:サンノプコ株式会社製)を0.1部配合し、次いでバインダーとして以下のポリビニルアルコール溶液を、ポリビニルアルコールが固形分で10部となるように加え、さらに離型剤(メイカテックスHP50:明成化学工業社製)を2部配合して濃度24%のインク受理層用塗工液を調製した。
(ポリビニルアルコール溶液)
鹸化度88%、重合度3500の部分鹸化ポリビニルアルコール粉体(PVA−235:株式会社クラレ製)を水に添加した。常温で10分間攪拌した後、水蒸気と混合することによりポリビニルアルコール溶液を95℃まで加熱し、その後120分攪拌し、ポリビニルアルコール濃度が9%となるようにポリビニルアルコール溶液を調製した。
(凝固液)
(ホウ砂/ホウ酸)で表される配合比が2で、ホウ砂をNa24で換算し、ホウ酸をH3BOで換算した時の濃度を4%とし、離型剤(メイカテックスHP50:明成化学工業社製)0.25%、浸透剤(パイオニンD−3120−W:竹本油脂株式会社製の商品名)0.5%、及びpH調整剤としてクエン酸0.25%を配合して凝固液を調製した。
【実施例2】
【0043】
インク受理層用塗工液中の上記消泡剤の配合量を0.2部に変更したこと以外は実施例1とまったく同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【実施例3】
【0044】
インク受理層用塗工液中の上記消泡剤の配合量を0.5部に変更したこと以外は実施例1とまったく同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【実施例4】
【0045】
インク受理層用塗工液中の消泡剤の種類を、粒径0.7μmの疎水性シリカを含む消泡剤(SN1X 4034:サンノプコ株式会社製)に変更したこと以外は実施例2とまったく同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【実施例5】
【0046】
インク受理層用塗工液中の消泡剤の種類を、粒径1.8μmの疎水性シリカを含む消泡剤(DF−480:サンノプコ株式会社製)に変更したこと以外は実施例3とまったく同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【実施例6】
【0047】
インク受理層用塗工液中のポリビニルアルコールの種類を、鹸化度88%、重合度2400の部分鹸化ポリビニルアルコール(PVA−224:株式会社クラレ製)に変更したこと以外は実施例2とまったく同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【0048】
<比較例1>
インク受理層用塗工液中に消泡剤を配合しなかったこと以外は実施例1とまったく同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【0049】
<比較例2>
インク受理層用塗工液中の消泡剤の種類を、疎水性シリカを含まずアセチレングリコールを含有する消泡剤(サーフィノール104E:日信化学工業株式会社製)に変更したこと以外は実施例2とまったく同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【0050】
<比較例3>
インク受理層用塗工液中の消泡剤の種類を、疎水性シリカを含まずオルガノポリシロキサンを含有する消泡剤(サーフィノールDF−58:日信化学工業株式会社製)に変更したこと以外は実施例2とまったく同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【0051】
<比較例4>
インク受理層用塗工液中の消泡剤の種類を、疎水性シリカを含まずポリオキシエチレン高級アルコールエーテルを含有する消泡剤(エマルゲン707:花王株式会社製)に変更したこと以外は実施例2とまったく同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【0052】
<比較例5>
インク受理層用塗工液中の消泡剤の種類を、疎水性シリカを含まずポリオキシアルキレングリコールエーテル(ジオール型)を含有する消泡剤(パイオニンK−17:竹本油脂株式会社製)に変更したこと以外は実施例2とまったく同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【0053】
<比較例6>
インク受理層用塗工液中のポリビニルアルコールの種類を、鹸化度95%、重合度1700の部分鹸化ポリビニルアルコール(PVA−617:株式会社クラレ製)に変更したこと以外は比較例5とまったく同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【0054】
<評価方法>
各実施例及び比較例の塗工時に用いたインク受理層用塗工液、および得られたインクジェット記録媒体について、以下の方法で評価した。
1)消泡効果(塗工液密度)
調製後のインク受理層用塗工液の密度を測定した。○、△であれば実用上問題がないが、×であれば液中に泡が多く残っていることを示す。
○:密度が0.80g/mL以上
△:密度が0.80g/mL以上0.60g/mL未満
×:密度が0.60g/mL未満
【0055】
2)インク受理層表面の微小な模様(パターン)の有無
インク受理層表面の微小な模様(パターン)を目視で評価した。○、△であれば実用上問題がない。なお、微小な模様(パターン)は、以下のクラックのような凹状の欠陥ではなく、一見平坦な表面における部分的な光沢ムラとして判定することができる。
○:表面が均一でパターンがない。
△:表面に微小のパターンが認められるが、場所によって光沢感にバラツキが無い。
×:表面にパターンが認められ、場所によって光沢感にバラツキがある。
【0056】
3)インク受理層表面のクラックの有無
インク受理層表面のクラックを目視で評価した。○、△であれば実用上問題がない。なお、クラックは、上記した模様(パターン)より大きな割れであり、目視により線状の凹部として判定することができる。
○:表面にクラックが無く、良好な面である
△:表面に部分的にわずかにクラックが認められる。
×:表面の全面に多数クラックが認められる。
【0057】
4)光沢度
インクジェット記録媒体を温度23℃、相対湿度50%の雰囲気で24時間放置して、JISP8142に基づいて75°光沢度を測定、JIS Z 8741に基づいて20°光沢度を測定した。キャストコート法により製造されるインクジェット記録媒体の光沢度としては、75°光沢度が70%以上であれば実用上問題ない。また、20°光沢度が高いほど光沢感が高く優れており、27%以上であれば実用上問題ない。
なお、比較例1〜5の場合、インク受理層表面に上記した微小な模様(パターン)が生じたため、場所によって光沢度のバラツキが大きく、有意な光沢度の値が得られなかった。
【0058】
得られた結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1から明らかなように、各実施例の場合、低鹸化度で重合度が大きな(鹸化度85〜95%、重合度2000以上4000以下の)ポリビニルアルコールを使用したにもかかわらず、塗工液の消泡効果が発揮され、操業性に優れていることがわかる。また、インク受理層表面に微小な模様(パターン)とクラックが少なく、外観に優れていることがわかる。
【0061】
なお、インク受理層用塗工液中の顔料100部に対する消泡剤の量が0.2部未満である実施例1の場合、他の実施例に比べて消泡効果が若干低く、インク受理層表面の微小な模様(パターン)が若干多かった。このことより、インク受理層用塗工液中の顔料100部に対する消泡剤の量を0.2部以上とすることが好ましいことがわかる。
又、消泡剤に含まれる疎水性シリカの平均粒子径が1μmを超える実施例5の場合、他の実施例に比べて消泡効果が若干低く、インク受理層表面の微小な模様(パターン)が若干多かった。このことより、消泡剤に含まれる疎水性シリカの平均粒子径を1μm以下とすることが好ましいことがわかる。
又、インク受理層用塗工液中のポリビニルアルコールの重合度が3500未満である実施例6の場合、他の実施例に比べてインク受理層表面のクラックが若干多かった。このことより、インク受理層用塗工液中のポリビニルアルコールの重合度を3500以上とすることが好ましいことがわかる。
【0062】
一方、塗工液に消泡剤を添加しなかった比較例1の場合、塗工液中の発泡を抑えられずに操業性が劣り、インク受理層表面に微小な模様(パターン)が生じた。
又、疎水性シリカを含まない消泡剤を使用した比較例2〜5の場合も、塗工液中の発泡を抑えられずに操業性が劣り、インク受理層表面に微小な模様(パターン)が生じた。
疎水性シリカを含まない消泡剤を使用し、高鹸化度で重合度が小さな(鹸化度95%を超え、重合度2000未満の)ポリビニルアルコールを使用した比較例6の場合、消泡効果は認められたが、インク受理層表面にクラックが多く、外観が劣化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、顔料とバインダーと消泡剤とを含むインク受理層用塗工液を塗布、乾燥してなるインク受理層が形成されているインクジェット記録媒体であって、前記バインダーは、鹸化度85〜95%、重合度2000以上4000以下のポリビニルアルコールを含み、前記消泡剤は疎水性シリカを含有するインクジェット記録媒体。
【請求項2】
前記疎水性シリカの平均粒子径が1μm以下である請求項1に記載されたインクジェット記録媒体。
【請求項3】
前記インク受理層がキャストコート層である請求項1または2に記載されたインクジェット記録媒体。
【請求項4】
支持体上に、顔料とバインダーと消泡剤とを含むインク受理層用塗工液を塗布、乾燥してインク受理層を形成するインクジェット記録媒体の製造方法であって、前記バインダーは、鹸化度85〜95%、重合度2000以上4000以下のポリビニルアルコールを含み、前記消泡剤は疎水性シリカを含有するインクジェット記録媒体の製造方法。
【請求項5】
前記顔料と前記消泡剤と水とを混合した後に、前記ポリビニルアルコールを添加して前記インク受理層用塗工液を調製する請求項4に記載されたインクジェット記録媒体の製造方法。

【公開番号】特開2009−234005(P2009−234005A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82644(P2008−82644)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】