説明

インクジェット記録媒体及びその製造方法

【課題】印字部の画像濃度が高く、長時間のオゾン暴露でも印字画像の退色や変色が生じにくい耐オゾン性に優れたインクジェット記録媒体を得る。
【解決手段】アルミニウム化合物とマグネシウム化合物の中和反応などによって形成されたアルミニウム−マグネシウム複合水酸化物で被覆されたアルミナ水和物(3)をインク受容層(1)中、または/及び、支持体(2)中に含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録媒体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録等に用いるインクジェット記録媒体には、インク吸収速度や画像の鮮明さを向上させること、記録した画像の退色や変色の発生を低減すること、が求められている。このような中で、インクジェット記録媒体のインク受容層に、複数の無機顔料を複合化して用いることが知られている。
【0003】
特許文献1(特開平09−234948号公報)では、アルミナとシリカの複合粒子であるアルミノシリケートを用いてインク受容層を形成したインクジェット記録媒体が提案されている。また、特許文献2(特開2001−278614号公報)では、シリカ微粉の少なくとも一部を、等電点が3以上の他の酸化物で被覆したシリカ粉体を用いたインクジェット記録媒体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−234948号公報
【特許文献2】特開2001−278614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、本発明者らの検討によれば、特許文献1、2に記載のインクジェット記録媒体は、インク定着性や耐水性は良好であるものの、耐オゾン性や耐光性などの画像堅牢性は十分ではなかった。この理由は、インク受容層に用いる無機微粒子を複合化して活性度を高くしているために、定着した色材成分をさらに分解してしまうことによるものであると考えられる。このように、従来の無機顔料の複合化方法では、色材の定着性と画像保存性はトレードオフの関係にあり、色材の定着性と耐オゾン性等の画像保存性の両立は困難であるという課題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、良好な画像濃度及び耐オゾン性を有する画像を得ることができるインクジェット記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、表面の少なくとも一部がアルミニウム−マグネシウム複合水酸化物で被覆されたアルミナ水和物を含有する、インクジェット記録媒体に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、長時間、オゾンに暴露されても、画像の退色や変色を小さくすることができる。また、染料インクで印字した画像の濃度が高く鮮明な画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のインクジェット記録媒体の一例を示す断面図である。
【図2】本発明のインクジェット記録媒体の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の被覆アルミナ水和物の一例を示すX線回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。
インクジェット記録媒体は、表面の少なくとも一部がアルミニウム−マグネシウム複合水酸化物で被覆されたアルミナ水和物を含有する。なお、以下、「表面の少なくとも一部がアルミニウム−マグネシウム複合水酸化物で被覆されたアルミナ水和物」を、「被覆アルミナ水和物」と記載する場合がある。
【0011】
この被覆アルミナ水和物は、インクジェット記録媒体を構成する一部の層又は全部の層に含まれている。例えば、インクジェット記録媒体として、支持体と、支持体上に設けたインク受容層を有するものを挙げることができる。このインクジェット記録媒体では、下記のような構成(a)〜(c)とすることができる。
(a)支持体中にのみ被覆アルミナ水和物を含有するインクジェット記録媒体。
(b)インク受容層中にのみ被覆アルミナ水和物を含有するインクジェット記録媒体。
(c)支持体とインク受容層中に被覆アルミナ水和物を含有するするインクジェット記録媒体。
【0012】
また、上記(a)〜(c)以外に、支持体のみからなり、支持体中に被覆アルミナ水和物を含有したインクジェット記録媒体を挙げることができる。
【0013】
このように被覆アルミナ水和物を、支持体中、インク受容層中、又は支持体とインク受容層の両方の中に、含有することによって、良好な画像濃度、優れた耐オゾン性を有するインクジェット記録媒体を得ることができる。また、被覆アルミナ水和物は、表面被覆した部分のアルミナ水和物からの脱離性を良好なものにすることができる。
【0014】
この被覆アルミナ水和物中のアルミニウム−マグネシウム複合水酸化物は、X線回折法(CuのKα線)で分析した際に、下記回折角度2θの中に、少なくとも2つのピークが現れる物質を示す。このピークとしては、下記角度のピークを挙げることができ、この角度ピークはそれぞれ、各角度の右側に記載した被覆アルミナ水和物の結晶面に対応する。
10°近傍 (006)面
22°近傍 (0012)面
32°近傍 (024)面。
【0015】
図1は、本発明のインクジェット記録媒体の一例の形態を示す断面図である。図1に示すように、インクジェット記録媒体は、支持体2上にインク受容層1が形成されている。インク受容層1は、被覆アルミナ水和物3と、図示していないバインダーにより形成されている。
【0016】
図2は、本発明のインクジェット記録媒体の別の一例の形態を示す断面図である。図2のインクジェット記録媒体では、支持体2は主としてセルロールパルプ5から形成されている。セルロースパルプ5はパルプ繊維間に隙間6が存在している。この隙間の中に、被覆アルミナ水和物3を含んでいる。
【0017】
また、図には示していないが、支持体とインク受容層の両方の中に、被覆アルミナ水和物を含んでいても良い。
【0018】
以下に、推定ではあるが、本発明のインクジェット記録媒体が被覆アルミナ水和物を含有することにより奏する効果を説明する。
図1のインクジェット記録媒体に記録を行うと、インク受容層1上に着弾したインク液滴は、インク受容層1中の細孔4を通ってインク受容層1の内部に浸透する。この浸透過程において、インク中の色材成分は細孔4を形成している被覆アルミナ水和物3の表面に定着する。
【0019】
この被覆アルミナ水和物3は、アルミナ水和物とアルミニウム−マグネシウム複合水酸化物の両方の性質を有する。このため、アルミナ水和物の優れた吸着性との相乗作用により、アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物の化学的吸着作用や触媒作用を最大限に発揮させることができる。従って、被覆アルミナ水和物全体として、非常に優れた吸着作用や触媒作用を有することができる。
【0020】
この結果、被覆アルミナ水和物はその優れた吸着作用によって、インクの色材成分の定着性を高めることができ、インクジェット記録媒体の印字物の画像濃度を向上させることができる。
【0021】
また、一般的に、オゾンや光によって発生したラジカルが、インクの色材成分と反応することにより、印字画像の退色、変色が起こる。この被覆アルミナ水和物3は、オゾンガスや光照射によって発生したラジカル生成物を、その化学吸着作用及び触媒作用によって効率良く分解することができる。この結果、被覆アルミナ水和物に定着した色材成分が、ラジカルによる分解反応を受けることを防止することができ、良好な耐オゾン性を達成することができる。
【0022】
このように、本発明では、被覆アルミナ水和物が、アルミナ水和物とアルミニウム−マグネシウム複合水酸化物の両方の性質を有するため、発色性、耐オゾン性を両立させたインクジェット記録媒体とすることができる。
【0023】
更に、被覆アルミナ水和物は、その表面の被覆部分が安定しているため、酸による分解や機械的な破壊が起こりにくくなっている。この結果、被覆アルミナ水和物から、被覆部分であるアルミニウム−マグネシウム複合水酸化物が剥離しにくくなっている。
【0024】
この一つ目の理由は、アルミナ水和物と、その表面を被覆しているアルミニウム−マグネシウム複合水酸化物の間の化学結合が強いため、酸に溶解しないようになっているためである。また、二つ目の理由は、アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物がアルミナを含むことによって、アルミナ水和物の表面との間に化学結合ができ、アルミナ水和物表面と被覆部分の密着力が強くなっているためである。
【0025】
なお、上記説明では、図1のインクジェット記録媒体を例に挙げて、効果を説明した。しかし、発色性の向上と耐オゾン性の両立、及び被覆部分のアルミナ水和物からの脱離の防止等の効果は、被覆アルミナ水和物によるものである。従って、支持体中に被覆アルミナ水和物を含有するインクジェット記録媒体、及び支持体とインク受容層中に被覆アルミナ水和物を含有するインクジェット記録媒体であっても、図1と同様の効果を奏することができる。
【0026】
例えば、図2のインクジェット記録媒体上に印字されたインクは、セルロースパルプ5の繊維表面を伝わって支持体中に拡散および浸透する。この支持体を形成しているセルロースパルプ5の繊維間の隙間6には、被覆アルミナ水和物3が存在している。色材成分は、この被覆アルミナ水和物3に効率よく定着するため、良好な画像濃度を達成することができる。また、被覆アルミナ水和物の優れた化学吸着作用及び触媒作用によって、良好な耐オゾン性を達成することができる。更に、この被覆アルミナ水和物は、被覆部分のアルミナ水和物からの脱離の防止効果を有する。
【0027】
以下に、インクジェット記録媒体を構成する各構成材料等について更に詳細に説明する。
【0028】
(被覆アルミナ水和物)
被覆アルミナ水和物は、アルミナ水和物粒子の表面が、アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物で被覆されたものである。この被覆アルミナ水和物は、アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物により表面被覆されているが、アルミナ水和物の細孔構造が残っている。このようにアルミナ水和物の部分に細孔構造が残っているため、被覆アルミナ水和物は、被覆無しのアルミナ水和物と同等の細孔半径と細孔容積を有している。
【0029】
アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物は、ハイドロタルサイト類似またはスピネルなどの構造のものを用いても良いし、非晶質状態のものを用いても良い。アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物により、アルミナ水和物表面が部分的に被覆されていても良いし、全面的に被覆されていても良い。アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物におけるアルミニウムとマグネシウムの比率は原子数換算で90:10−10:90が好ましい。
【0030】
被覆アルミナ水和物の粒子径は、一次粒子径で5nm以上、30nm以下が好ましい。上記範囲内であれば比表面積が十分に大きく取れるため、インクジェット記録媒体における色材成分の定着および耐水性が良好になる。また、インク受容層を形成したインクジェット記録媒体の場合には、透明性を高くすることができる。
【0031】
被覆アルミナ水和物の製造方法は、アルミナ水和物の細孔構造を維持できる方法であれば特に制限はないが、例えば、以下3つの方法を挙げることができる。以下の方法は、必要に応じて1種類または2種類以上を自由に選択して用いることができる。
【0032】
(1)第1の方法は、アルミナ水和物表面でのマグネシウム化合物との固液反応による組替え反応によって、被覆アルミナ水和物を製造する方法である。この方法ではまず、マグネシウム化合物を含む溶液中にアルミナ水和物を添加する。この後、この溶液中にアルミナを溶解させながら、水酸化マグネシウムを析出させることによってアルミナ表面を被覆させる。なお、必要に応じてさらに加熱処理を行うことも可能である。
【0033】
この方法では、アルミナ水和物表面において、アルミナの溶解とアルミニム−マグネシウム複合水酸化物の生成が同時に進行する。アルミナ水和物表面の活性の高い部分は溶解し易いため、アルミナ水和物表面のうち、この活性度が高い部分がアルミニウム−マグネシウム複合水酸化物で被覆され易くなる。
【0034】
また、この方法は、アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物の結合状態を安定化できる、アルミナ水和物表面とアルミニウム−マグネシウム複合水酸化物の結合が強固な被覆が可能である、等の利点を有する。更に、アルミナ水和物の強い酸点の量を選択的に低減することもできる。
【0035】
(2)第2の方法は、アルミニウム化合物とマグネシウム化合物の中和反応によって被覆アルミナ水和物を製造する方法である。この方法ではまず、アルミニウム化合物とマグネシウム化合物を含有する水溶液中にアルミナ水和物を添加する。この後、この溶液のpHを変化させることにより、アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物を析出させてアルミナ水和物表面を被覆する。
【0036】
なお、必要に応じて、尿素化合物のようにアンモニアを発生させる化合物を、水溶液中に加えてから加熱処理を行うことも可能である。また、ゾル・ゲル反応や共沈法を用いることも可能である。更に、必要に応じてさらに加熱処理を行うことも可能である。
【0037】
この方法では、水溶液に添加するマグネシウム化合物、アルミナ化合物の量を制御することによって両者の組成比を精密に制御することができる、という利点がある。また、水溶液のpH調整の条件によって、アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物の結晶構造や物性値を制御することができる。
【0038】
(3)第3の方法は、アルミナ水和物とマグネシウム酸化物またはマグネシウム水酸化物の機械的エネルギーによる複合化反応を用いて、被覆アルミナ水和物を製造する方法である。この機械的エネルギーとしては、高速せん断雰囲気下での乾式撹拌や衝撃粉砕場中でのメカノケミカル反応を用いることができる。この方法では、機械的な方法で簡便に被覆アルミナ水和物を形成することができる、という利点がある。なお、必要に応じて、さらに加熱処理を行うことも可能である。
【0039】
上記(1)〜(3)の方法等で得られた、被覆アルミナ水和物は、必要に応じて、粗大粒子の除去や粉砕処理を行って粒子径を揃えることができる。また、得られたアルミニウム−マグネシウム複合水酸化物の細孔容積を高くするために、米国特許5531976号明細書に記載されたゲル化剤を用いることもできる。この場合、ゲル化剤と被覆アルミナ水和物を加熱しながら混合する方法が好ましく、乾式法と湿式法のどちらでも用いることができる。好ましいゲル化剤は、硝酸アルミニウム、硝酸マグネシウムなどの水溶性の金属塩である。
【0040】
(インク受容層の構成材料)
インクジェット記録媒体は、インク受容層を有することができる。このインク受容層中には被覆アルミナ水和物を添加することができる。この場合、インク受容層を構成する主材料は、被覆アルミナ水和物及びバインダーである。
【0041】
バインダーとしては、下記に挙げる水溶性高分子の中から自由に選択することができる。例えば、ポリビニルアルコール又はその変性体(カチオン変性、アニオン変性、シラノール変性)、澱粉又はその変性体(酸化、エーテル化)、ゼラチン又はその変性体、カゼイン又はその変性体、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、SBRラテックス、NBRラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系共重合体ラテックス、官能基変性重合体ラテックス、エチレンー酢酸ビニル系共重合体等のビニル系共重合体ラテックス、水性ウレタン系重合体、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸又はその共重合体、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体等を用いることが好ましい。これらのバインダーは、単独で或いは複数種を混合して用いることができる。
【0042】
被覆アルミナ水和物とバインダーの混合比は、被覆アルミナ水和物100質量部に対して、バインダーを5から70質量部とすることが好ましい。バインダー量を5質量部よりも多くすることにより、インク受容層の機械的強度を向上させて、クラックや粉落ちの発生を防止することができる。バインダー量を70質量部以下とすることにより、インク受容層のインク吸収性を向上させることができる。
【0043】
インク受容層にはさらに、必要に応じてカチオン性ポリマーを添加することができる。好ましいカチオン性ポリマーとしては、例えば、4級アンモニウム塩、ポリアミン、アルキルアミン、ハロゲン化第4級アンモニウム塩、カチオン性ウレタン樹脂、変性PVA、アミン・エピクロルヒドリン重付加体、ジハライド・ジアミン重付加体、ポリアミジン、ビニル(共)重合体、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリメタクリロイルオキシエチル−β−ヒドロキシエチルジメチルアンモニウムクロライド、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン及びその誘導体、ポリアミド−ポリアミン樹脂、カチオン化でんぷん、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、ジメチル−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩重合物、ポリアミジン、ポリビニルアミン、ジシアン系カオチン樹脂、ポリアミン系カオチン樹脂、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリンアンモニウムクロリド−SO2共重合物、ジアリルアミン塩−SO2共重合物、第4級アンモニウム塩基置換アルキル基をエステル部分に有する(メタ)アクリレート含有ポリマー、第4級アンモニウム塩基置換アルキル基を有するスチリル型ポリマー、ポリアミド系樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン系樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン系樹脂等の材料の中から適宜に選択して用いることができる。
【0044】
上記したインク受容層や表面層の構成材料に、更に、分散剤、増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、流動性変性剤、界面活性剤、消泡剤、耐水化剤、抑泡剤、離型剤等を、必要に応じて添加することも可能である。また、発泡剤、浸透剤、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤を添加することもできる。
【0045】
(インク受容層の形成方法)
支持体上にインク受容層を形成する方法としては、バインダー及びその他の添加剤等からなる水分散液を作り、該水分散液を塗工機で支持体上に塗布、乾燥する方法を用いることができる。また、インク受容層中に被覆アルミナ水和物を添加する場合には、水分散液中に更に被覆アルミナ水和物を含有させる。
【0046】
この際に用いる塗工方法としては、一般に用いられているブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーターブラッシュコーター、カーテンコーター、バーコーター、グラビアコーター、スプレー装置等による塗工技術を採用することができる。
【0047】
水分散液の塗布量は、乾燥固形分換算で、5g/m2以上、30g/m2以下であれば、インク吸収性とコックリングの発生の抑制を満足することができる。より好ましい塗布量の範囲は、7g/m2以上、20g/m2以下である。この範囲内であれば、インク受容層の表面強度を強くすることができる。又、必要に応じてインク受容層形成後に、カレンダーロール等を用いてインク受容層の表面平滑性を良くすることも可能である。
【0048】
(支持体の構成材料)
支持体としては、適度のサイジングを施した紙、無サイズ紙、ポリエチレン等を用いたレジンコート紙などの紙類、熱可塑性フィルムのようなシート状物質及び布帛が使用でき、特に制限はない。熱可塑性フィルムの場合はポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリカーボネートなどの透明フィルムを用いることができる。また、無機粒子の充填または微細な発泡による不透明化したシートを用いることもできる。これらの中でも、セルロースパルプから形成された紙が最も好ましい。
【0049】
このセルロースパルプとしては例えば、広葉樹材及び針葉樹材から得られるサルファイトパルプ(SP)、アルカリパルプ(AP)、クラフトパルプ(KP)等の化学(ケミカル)パルプや、セミケミカルパルプ、セミメカニカルパルプ、機械(メカニカル)パルプ等、更には、脱墨された二次繊維である古紙パルプが使用可能である。これらは単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0050】
また、パルプは、未漂白パルプ、漂白パルプの区別、及び叩解、未叩解の区別なく使用可能である。先に述べたように叩解又、セルロースパルプとしては、非木材パルプである、草、葉、靱皮、種毛等の繊維、例えば、藁、竹、麻、バガス、エスパルト、ケナフ、楮、三椏、コットンリンター等のパルプも使用できる。
【0051】
支持体の材料には、嵩高性セルロース繊維、マーセル化されたセルロース、フラッフ化セルロース及びサーモメカニカルパルプ等の機械パルプ等からなる群から選択される少なくとも1種を添加して用いることができる。これらのパルプは、上記セルロースパルプと併用して使用することができる。これらのパルプの添加によって、得られるインクジェット記録媒体のインク吸収速度、インク吸収量を向上させることができる。
【0052】
上記のセルロースパルプと共に軽叩解セルロースパルプを用いることもできる。本明細書において、軽叩解セルロースパルプとは、木材などのチップから作った化学パルプに叩解処理をあまり行っていないパルプのことである。この軽叩解セルロースパルプは、叩解処理によって生じるフィブリルがあまり発生していないため、吸収性および嵩高性に優れている。軽叩解セルロースパルプとしては例えば、特開平10−77595号公報に記載されているものを用いることができる。また、軽叩解セルロースパルプとして好ましいのはカナダ標準濾水度550ml以上のパルプである。
【0053】
更に、上記したセルロースパルプに加えて、微細フィブリル化セルロース、結晶化セルロース、広葉樹又は針葉樹を原料とする硫酸塩パルプ、亜硫酸塩パルプ、ソーダパルプ、ヘミセルラーゼ処理パルプ及び酵素処理化学パルプ等からなる群から選ばれる少なくとも1種を添加して用いることもできる。これらのパルプの添加によって、インクジェット記録媒体表面の平滑性向上や、地合いが良くなるといった効果を奏することができる。
【0054】
支持体を構成するセルロースパルプに、必要に応じて填料を加えることができる。例えば、填料としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム等の白色顔料、シリカまたはシリケート、珪酸化合物などのシリカ系材料を用いることができる。
【0055】
填料の形状は球状、塊形、針形など各種形状のものを用いることができる。セルロースパルプとの相互作用を小さくするために比表面積は20m2/g以上の多孔質填料を用いることができる。
【0056】
填料の添加量は灰分換算で支持体全体の5質量%以上、20質量%以下が好ましい。填料の添加量が多くなると白色度、不透明度が高くなるので好ましいが、20質量%以下とすることによって紙粉の発生量を抑制することができる。また、5質量%以上とすることによって、白色度を大きくすることができる。なお、多孔質填料の添加量は灰分換算で示した。灰分の測定はJIS P8128に従って行うことができる。
【0057】
この支持体中には、被覆アルミナ水和物を添加することができる。この被覆アルミナ水和物の添加量は、支持体全体の5質量%以上、20質量%以下が好ましい。また、10質量%以上であれば印刷物の画像濃度を高くすることが可能である。
【0058】
支持体中には、被覆アルミナ水和物と上記填料を併用して使用することも可能である。この場合、添加量は、被覆アルミナ水和物と上記填料を合わせて5質量%以上、20質量%以下に調整することが好ましい。
【0059】
支持体の坪量としては、坪量が少な過ぎてインクジェット記録媒体が極端に薄くならないような坪量であれば特に制限はない。例えば、坪量が10g/m2以上、200g/m2以下の範囲であれば、プリンター等で印字する場合の搬送性の点で好ましい。更に好ましい範囲は、坪量が20g/m2以上、150g/m2以下の範囲のものである。この範囲内とすれば、紙の折り曲げ強度が高くならず、高強度のインクジェット記録媒体とすることができる。
【0060】
(支持体の製造方法)
支持体の製造方法には、一般的に用いられている紙の製造方法を適用することができる。例えば、支持体は、支持体の材料(支持体中に被覆アルミナ水和物を添加する場合は、支持体の材料と被覆アルミナ水和物を混合した材料)を抄紙することにより、製造する。抄紙装置としては従来から用いられている長網抄紙機、丸網抄紙機、円胴、ツインワイヤー等から選択して用いることが出来る。
【0061】
また、通常の紙の製造方法で行われるサイズプレス工程を用いて、支持体上に被覆アルミナ水和物を含有する溶液を塗工することも可能である。この塗工には、一般的な塗工方法を選択して用いることができる。例えば、ゲートロールコーター、サイズプレス、バーコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター等の塗工方法を使用できる。また、ブラッシュコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、スプレー装置等による塗工技術を用いることができる。また、支持体は、カレンダー処理、熱カレンダー処理やスーパーカレンダー処理を行って表面を平滑にすることができる。
【0062】
(インクジェット記録媒体の記録に使用可能なインク)
インクジェット記録媒体を用いた画像形成方法では、インクの液滴を記録媒体が備えるインク受容層の表面に付与して印字を行なう。この場合、インクとしては、主として、色剤(染料若しくは顔料)、水溶性有機溶剤及び水を含むものが利用できる。
【0063】
染料としては、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食用色素等に代表される水溶性染料を用いることが好ましいが、特に限定されない。上記インクジェット記録媒体との組み合わせで、定着性、発色性、鮮明性、安定性、耐光性、その他の要求される性能を満たす画像を与えるものであれば、いずれの染料も使用することができる。
【0064】
顔料としては、カーボンブラック等を用いることができる。この場合に顔料インクを調製する方法としては、顔料と分散剤を併用する方法、自己分散型顔料を用いる方法、顔料をマイクロカプセル化する方法等を用いることが可能である。
【0065】
水溶性染料は、一般に水、又は水と水溶性有機溶剤からなる溶媒中に溶解して使用するものであるが、これらの溶媒成分や、上記顔料を分散させる溶媒としては、好ましくは水と水溶性の各種有機溶剤等との混合物を使用する。この際、インク中の水分含有量が、20質量%以上、90質量%以下の範囲内となるように調整することが好ましい。
【0066】
上記有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール等の炭素数が1から4の範囲のアルキルアルコール類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、アセトン等のケトン又はケトンアルコール類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール等のアルキレン基が2から6個の炭素数を含むアルキレングリコール類、グリセリン、エチレングリコールメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類等が挙げられ、これらから選択された1種、或いは2種以上を選択して組合せて用いることができる。
【0067】
これらの多くの有機溶剤の中でも、特にジエチレングリコール等の多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類を用いることが好ましい。多価アルコール類は、インク中の水が蒸発し、水溶性染料が析出することに基づくノズルの目詰まり減少を防止するための潤滑剤としての効果が大きいため、特に好ましい。
【0068】
インク中には可溶化剤を加えることもできる。代表的な可溶化剤としては、含窒素複素環式ケトン類が挙げられるが、その目的とする作用は、水溶性染料の溶媒に対する溶解性を飛躍的に向上させることにある。例えば、N−メチル−2−ピロリドン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましく用いられる。更に、インクの特性の改善のために、粘度調整剤、界面活性剤、表面張力調整剤、pH調整剤、比抵抗調整剤等の添加剤を加えて用いることもできる。
【0069】
(画像形成方法)
インクジェット記録媒体に、上記インクを付与して画像形成を行なう方法としては、インクジェット記録方法が好適である。インクジェット記録方法としては、インクを微細孔(ノズル)より効果的に離脱させて、インクジェット記録媒体にインクを付与し得る方法であればいかなる方法でもよい。これらの中でも特に、特開昭54−59936号公報に記載されている方法が好ましい。この方法では、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット方式である。
【実施例】
【0070】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。なお、下記実施例は、本発明のより一層の深い理解のために示される具体例であって、本発明は、これらの具体例に何ら限定されるものではない。
先ず、実施例及び比較例のインクジェット記録媒体に印字物を形成する具体的な方法、及び、得られた印字物についての評価方法は、下記の通りである。
【0071】
(1)インクジェット記録媒体の測定
1.被覆アルミナ水和物のX線回折
粉末X線回折装置(D8 ADVANCE、商品名、ブルッカー社製)を用いて、被覆アルミナ水和物に対してX線回折分析を行った。
【0072】
2.被覆アルミナ水和物の表面被覆部(アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物の部分)の結合強度
3質量%の硝酸水溶液中に、被覆アルミナ水和物を添加して20質量%の分散液を作成する。この分散液を、ホモミキサー(T.K.ロボミックス、プライミクス社製)で8000回転/分で3時間、撹拌する。次に、撹拌後の分散液の粘度をT型粘度計で測定する。この際、ベーマイト構造のアルミナ水和物(HP14、商品名、サソール社製)を基準サンプルとして、粘度の増加が10%以内であれば○、30%以内であれば△、100%以上は×とした。
【0073】
アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物の被覆の結合強度が弱い場合には、硝酸水溶液に分散した時に、被覆アルミナ水和物の表面被覆部が溶解して溶媒中に溶け出す。この場合、この溶け出した成分はマグネシウム塩またはアルミニウム塩となっているので、被覆アルミナ水和物に作用して分散液の粘度の増加が大きくなる。一方、アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物の被覆の結合強度が強い場合には、分散液への溶解量が少ないため、分散液の粘度の増加も小さくなる。このため、被覆アルミナ水和物分散液を攪拌後に、その粘度の増加割合を調べることにより、被覆アルミナ水和物の表面被覆部の結合強度を評価することができる。
【0074】
(2)印字物の測定
上記で得られた印字物に対する諸物性の測定及び評価は、下記の要領で行なった。
【0075】
1.印刷装置
インクジェットプリンター(E−520、エプソン社製)を記録装置として用いて、インクジェット記録媒体に印字を行った。
【0076】
2.インク吸収性
イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各インクを均等に用いてインクジェット記録媒体にベタ印字した。印字直後のインクジェット記録媒体表面のインク乾燥状態を指で触って評価した。単色でのベタ印字のインク量を100%とした。そして、インク量250%でインクが指に付着しないものを◎、インク量200%でインクが指に付着しないものを○、インク量150%でインクが指に付着しないものを△、インクが指に付着するものを×とした。
【0077】
3.画像濃度
インクジェット記録媒体に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各インクの単色ベタ印字を行った。そして、それぞれのインクで印字した画像の画像濃度を反射濃度計(Spectolino、Gretag社製)で測定した。
【0078】
4.耐オゾン性
イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の単色で印字デューティを調整して画像濃度が1.0となるように、インクジェット記録媒体に印字した。オゾン試験装置を用いて、印字後のインクジェット記録媒体を、温度23℃、湿度50%RH、オゾン濃度2.5ppmの条件で160時間、暴露した。オゾン暴露前後に、インクジェット記録媒体の画像濃度を測定して下記式から画像濃度の残存率を求めた。
画像濃度の残存率(%)=オゾン暴露後の画像濃度/オゾン暴露前の画像濃度×100。
【0079】
<実施例1>
ベーマイト構造のアルミナ水和物(HP14、商品名、サソール社製)を10g、秤取した。質量濃度17%塩化マグネシウム水溶液100ml中に上記アルミナ水和物を加えてから、室温にて3時間、放置した。次に、この溶液中に28質量%アンモニア水35.7mlを添加した。この溶液のpHは9.6であった。
【0080】
この溶液をガラス瓶に入れてから40℃の恒温槽中で16時間、ボールミルで撹拌し、白色の生成物を得た。この生成物を十分、水洗してから100℃で10分間、乾燥して実施例1の被覆アルミナ水和物を得た。この被覆アルミナ水和物の粉末X線回折の測定結果を図3に示す。図3から分かるように、アルミナ水和物のピークの他に、○印で示すようにアルミニウム−マグネシウム複合水酸化物に対応する新たなピークが観察された。
【0081】
実施例1の被覆アルミナ水和物をイオン交換水に分散させて20質量%の分散液を得た。次に、ポリビニルアルコール(PVA117、商品名、クラレ社製)の10質量%水溶液を準備した。上記の被覆アルミナ水和物分散液と、ポリビニルアルコール水溶液を、乾燥固形分質量比で100:10の割合で、ホモミキサー(T.K.ロボミックス、プライミクス社製)で8000回転/分で、30分間、撹拌して混合分散液を得た。
【0082】
この混合分散液を、厚み100μmの透明PETフィルム(東レ社製、ルミラー、商品名;支持体)上に、ワイヤーバーで塗工した。分散液が塗布されたPETフィルムをオーブン(ヤマト科学社製)に入れて、温度100℃で30分間、加熱・乾燥して厚さ30μmのインク受容層が形成されたインクジェット記録媒体を得た。このインク受容層の物性、印字特性をそれぞれ上記方法で測定した。
【0083】
<実施例2>
実施例1の被覆アルミナ水和物を、600℃で3時間、加熱して実施例2の被覆アルミナ水和物を得た。実施例1の被覆アルミナ水和物の代わりに実施例2の被覆アルミナ水和物を用いて、実施例2のインクジェット記録媒体を得た。次に、インク受容層の物性、印字特性をそれぞれ上記の方法で測定した。
【0084】
<実施例3>
ベーマイト構造のアルミナ水和物(HP14、商品名、サソール社製)と水酸化マグネシウム(キシダ化学)を原子比Al:Mgが2:1となるように混合し、2リットルの水と共にプロペラ撹拌器で5分間、撹拌して分散させた。次に、ジルコニア製粉砕メディアからなる媒体撹拌ミル(ダイノーミル)を用いて、撹拌翼回転数4200rpmで20時間、粉砕を行い、アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物の結晶形態に転化させた。この条件は、媒体にかかる加速度が重力加速度の760倍となる。次に、150℃で10分間、乾燥して実施例3の被覆アルミナ水和物を得た。
【0085】
実施例1の被覆アルミナ水和物の代わりに、実施例3の被覆アルミナ水和物を用いて実施例3のインクジェット記録媒体を得た。次に、インク受容層の物性、印字特性をそれぞれ上記の方法で測定した。
【0086】
<実施例4>
実施例3の被覆アルミナ水和物を、1000℃で5時間、加熱して実施例4の被覆アルミナ水和物を得た。実施例1の被覆アルミナ水和物の代わりに、実施例4の被覆アルミナ水和物を用いて、実施例4のインクジェット記録媒体を得た。次に、インク受容層の物性、印字特性をそれぞれ上記の方法で測定した。
【0087】
<実施例5>
ベーマイト構造のアルミナ水和物(HP14、商品名、サソール社製)をイオン交換水に分散して固形分濃度10質量%の分散液を100g、作成した。この分散液を撹拌しながら、濃度5質量%の塩化アルミニウム水溶液を10g、濃度5質量%の炭酸マグネシウム水溶液を10g、添加した。分散液のpHが9になるまで炭酸マグネシウム水溶液をさらに滴下した。
【0088】
2時間、常温で撹拌後、固形分をろ過、洗浄して不純物を除去した。次に、実施例1と同じように乾燥して、実施例5の被覆アルミナ水和物を得た。実施例1の被覆アルミナ水和物の代わりに、実施例5の被覆アルミナ水和物を用いて、実施例5のインクジェット記録媒体を得た。次に、インク受容層の物性、印字特性をそれぞれ上記の方法で測定した。
【0089】
<実施例6>
実施例5の被覆アルミナ水和物を、600℃で3時間、加熱して実施例6の被覆アルミナ水和物を得た。実施例1の被覆アルミナ水和物の代わりに、実施例6の被覆アルミナ水和物を用いて、実施例6のインクジェット記録媒体を得た。次に、インク受容層の物性、印字特性をそれぞれ上記の方法で測定した。
【0090】
<実施例7>
カナダ標準濾水度380mlの広葉樹さらしクラフトパルプ60質量部と、カナダ標準濾水度420mlのLBKP20質量部を原料パルプとした。前記原料パルプ100質量部に対して、実施例1の被覆アルミナ水和物を10質量部、アルキルケテンダイマー(AKD)内添サイズ剤を0.1質量、混合して抄紙原料とした。
【0091】
前記抄紙原料を用い、長網抄紙機を使用して、坪量100g/m2に調整、抄紙をして基紙を得た。さらに、金属ロールとD硬度が85°である樹脂ロールからなるスーパーカレンダーを用い、抄紙後の基紙を金属ロール温度70℃、線圧200Kg/cmで表面を平滑化してインクジェット記録媒体を得た。次に、インク受容層の物性、印字特性をそれぞれ上記の方法で測定した。
【0092】
<比較例1>
実施例1の被覆アルミナ水和物の代わりに、ベーマイト構造のアルミナ水和物(HP14、商品名、サソール社製)を用いて、比較例1のインクジェット記録媒体を得た。次に、インク受容層の物性、印字特性をそれぞれ上記の方法で測定した。
【0093】
【表1】

【0094】
表1に示すように、被覆アルミナ水和物を含有するインクジェット記録媒体に関する実施例1−7は、比較例1よりも耐オゾン性が良好なことが分かる。また、実施例1−7のインクジェット記録媒体は高い画像濃度を有していることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の少なくとも一部がアルミニウム−マグネシウム複合水酸化物で被覆されたアルミナ水和物を含有する、インクジェット記録媒体。
【請求項2】
支持体と、
前記支持体上に、前記アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物で表面被覆されたアルミナ水和物とバインダーとを含有するインク受容層と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項3】
前記アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物で表面被覆されたアルミナ水和物を含有する支持体を有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項4】
前記アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物で表面被覆されたアルミナ水和物を含有する支持体と、
前記支持体上に、前記アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物で表面被覆されたアルミナ水和物とバインダーとを含有するインク受容層と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項5】
前記アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物で表面被覆されたアルミナ水和物は、マグネシウム化合物によるアルミナ水和物表面の組替え反応によって形成されたものである請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項6】
前記アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物で表面被覆されたアルミナ水和物は、アルミナ水和物とマグネシウム化合物の機械的エネルギーによる複合化反応によって形成されたものである請求項1から5のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項7】
前記アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物で表面被覆されたアルミナ水和物は、アルミニウム化合物とマグネシウム化合物の中和反応によって形成されたものである請求項1から6のいずれか1項に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項8】
(1)表面の少なくとも一部がアルミニウム−マグネシウム複合水酸化物で被覆されたアルミナ水和物を準備する工程と、
(2)支持体と前記支持体上にインク受容層とを有するインクジェット記録媒体を形成する工程であって、前記支持体、前記インク受容層、又は前記支持体とインク受容層の両方の中に、前記アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物で表面被覆されたアルミナ水和物を含有するインクジェット記録媒体を形成する工程と、
を有するインクジェット記録媒体の製造方法。
【請求項9】
前記工程(1)は、
マグネシウム化合物により、アルミナ水和物表面の組替え反応を行うことにより、前記アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物で表面被覆されたアルミナ水和物を形成する工程を有することを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
【請求項10】
前記工程(1)は、
アルミナ水和物とマグネシウム化合物の機械的エネルギーによる複合化反応を行うことにより、前記アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物で表面被覆されたアルミナ水和物を形成する工程を有することを特徴とする請求項8又は9に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。
【請求項11】
前記工程(1)は、
アルミニウム化合物とマグネシウム化合物の中和反応を行うことにより、前記アルミニウム−マグネシウム複合水酸化物で表面被覆されたアルミナ水和物を形成する工程を有することを特徴とする請求項8から10の何れか1項に記載のインクジェット記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−733(P2011−733A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143403(P2009−143403)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】