説明

インクジェット記録媒体用支持体及びインクジェット記録媒体

【課題】本発明は、インクジェットプリンタで印字した際に、波打ち(コックリング)が少ないインクジェット記録媒体用支持体、及びそれを用いたインクジェット記録媒体を提供することにある。
【解決手段】主成分がセルロースパルプである支持体の少なくとも一方の面に、N−メチルモルホリンN−オキシドを含む処理液で表面処理を施したことを特徴とするインクジェット記録媒体用支持体、及びそれを用いたインクジェット記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録媒体用支持体及びインクジェット記録媒体に関し、更に詳しくは、インクジェットプリンタで印字した際に、波打ち(コックリング)が少ないインクジェット記録媒体用支持体、及びそれを用いたインクジェット記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタやプロッタの目ざましい進歩により、フルカラーでしかも高精細な画像が容易に得られるようになってきた。
【0003】
インクジェット記録方式は、種々の作動原理によりインクの微小液滴を飛翔させて紙等の記録媒体に付着させ、画像・文字等の記録を行うものである。インクジェットプリンタやプロッタはコンピュータにより作成した文字や各種図形等の画像情報のハードコピー作成装置として、種々の用途において近年急速に普及している。特に多色インクジェット方式により形成されるカラー画像は製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画に比較しても遜色のない記録を得ることが可能であり、更に作成部数が少ない用途においては、印刷技術や写真技術よりも安価で済むことから広く応用されている。
【0004】
一方、インクジェットプリンタのインクの溶媒としては水が主溶媒として使われることが多く、インク中の溶媒がセルロースパルプを主成分とする支持体に浸透すると、パルプ繊維が膨張し、それにより記録媒体の寸法が変化し、波打ち(コックリング)が発生する。また、コックリングはインクジェットプリンタのヘッドが記録媒体に接触して印字障害や故障を招く恐れがあるだけでなく、インク滴の着弾精度が悪くなり画質の低下も招く。
【0005】
コックリングを抑える方法としては、例えば紙と合成樹脂フィルムを貼り合わせた支持体を用いる方法(例えば、特許文献1〜3参照)、支持体である紙に多価アルコールの脂肪酸エステル等を含有させ、パルプ繊維間の結合を阻害させる方法(例えば、特許文献4参照)、セルロースの架橋剤を表面に塗工する方法(例えば、特許文献5参照)、活性珪酸を支持体である紙に添加するか表面に塗工してパルプ繊維の膨張や収縮を抑える方法(例えば、特許文献6〜7参照)などが提案されている。しかしながら、いずれの方法もインク吸収性が阻害されるか、コックリングの抑制効果の小さいものであり、インク吸収性を阻害させることなくコックリングを少なくすることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−258409号公報
【特許文献2】特開平8−258410号公報
【特許文献3】特開平6−72016号公報
【特許文献4】特開2002−103795号公報
【特許文献5】特開2002−201597号公報
【特許文献6】特開平10−72793号公報
【特許文献7】特開2009−137193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、インクジェットプリンタで印字した際に、波打ち(コックリング)が少ないインクジェット記録媒体用支持体、及びそれを用いたインクジェット記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
【0009】
(1)主成分がセルロースパルプである支持体の少なくとも一方の面に、N−メチルモルホリンN−オキシドを含む処理液で表面処理を施したインクジェット記録媒体用支持体。
【0010】
(2)(1)に記載のインクジェット記録媒体用支持体の表面処理を施した面の上に、少なくとも1種のインク定着剤を含有する塗液を塗工したインクジェット記録媒体。
【0011】
(3)(1)に記載のインクジェット記録媒体用支持体の表面処理を施した面の上に、少なくとも1層のインク受理層が設けられているインクジェット記録媒体。
【0012】
(4)(1)に記載のインクジェット記録媒体用支持体の表面処理を施した面の上に、少なくとも1層のインク受理層が設けられており、且つ該インク受理層の上に光沢発現層が設けられているインクジェット記録媒体。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、インクジェットプリンタで印字した際に、波打ち(コックリング)が少ないインクジェット記録媒体用支持体、及びそれを用いたインクジェット記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のインクジェット記録媒体用支持体、及びそれを用いたインクジェット記録媒体について説明する。
【0015】
本発明のインクジェット記録媒体用支持体としては、セルロースパルプを主成分とした支持体(紙)が用いられる。パルプとしては、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、等の木材パルプが主に用いられるが、これに限定されるものではなく、ケナフ、バガス、竹、コットン等の非木材パルプや、DIP等の古紙パルプを用いても良い。また、内填用白色顔料、バインダー、サイズ剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤等の各種添加剤が必要に応じて混合、あるいはサイズプレス等により表面に塗布され、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種装置で製造された支持体を用いることができる。
【0016】
本発明のインクジェット記録媒体用支持体は、主成分がセルロースパルプである支持体の少なくとも一方の面に、N−メチルモルホリンN−オキシド(以下NMOと記す)を含む処理液で表面処理を施すことによって得ることができる。
【0017】
NMOを含む処理液で表面処理を施す方法としては、支持体の上に処理液を塗工する方法や、原紙抄造の工程にてサイズプレス等によって表面処理を行う方法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、塗工する方法にも特に制限はなく、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、リバースロールコーター、ロールナイフコーター、ゲートロールコーター、フィルムトランスファーコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等各種の塗工方式を用いることができる。
【0018】
また、NMOを含む処理液で表面処理を行う理由と、これによりコックリングが抑制される理由については下記のように考えられる。
【0019】
特開平9−169853号公報に記載されている如く、NMOはセルロースを溶解させ、またセルロースが溶解した溶液からセルロースを再製できるほど、セルロースとの相互作用が強い。よって、NMOを含む処理液で支持体の表面処理を行うことにより、支持体表面のパルプ繊維が強靭なマトリックスを組み、インク中の溶媒が浸透した際のパルプ繊維の膨張が抑えられ、コックリングが少なくなると考えられる。一方、セルロースの構造自体は保持されるため、インク吸収性は阻害されない。
【0020】
表面処理に使用するNMOの量としては、少な過ぎるとコックリングを抑制する効果が小さく、多過ぎると不要なNMOがパルプ繊維の間に残ってインク吸収性を阻害することがあるため、好ましいNMOの量は0.1g/m以上20g/m以下であり、特に好ましくは0.5g/m以上5g/m以下である。
【0021】
本発明のインクジェット記録媒体は、上述のインクジェット記録媒体用支持体を用いて製造される。
【0022】
インクジェット記録媒体としては、本発明のインクジェット記録媒体用支持体を用いたものであれば特に限定されるものではないが、特に好ましい形態は、本発明のインクジェット記録媒体用支持体の表面処理を施した面の上に、少なくとも1種のインク定着剤を含有する塗液を塗工したインクジェット記録媒体、本発明のインクジェット記録媒体用支持体の表面処理を施した面の上に、少なくとも1層のインク受理層が設けられているインクジェット記録媒体、本発明のインクジェット記録媒体用支持体の表面処理を施した面の上に、少なくとも1層のインク受理層が設けられており、且つ該インク受理層の上に光沢発現層が設けられているインクジェット記録媒体の3つである。
【0023】
先ず、本発明のインクジェット記録媒体用支持体の表面処理を施した面の上に、少なくとも1種のインク定着剤を含有する塗液を塗工したインクジェット記録媒体について説明する。
【0024】
インク定着剤を含有する塗液を本発明のインクジェット記録媒体用支持体に塗工することにより、インク中の色材(インク染料またはインク顔料)を固定し、印字後の滲みを防止できると共に、色材をインクジェット記録媒体の表面に保持することにより画像の鮮鋭度が向上する。
【0025】
インク定着剤としては、インク中の色材にはアニオン性のものが多いことから、カチオン性ポリマーや多価金属イオンが好ましい。カチオン性ポリマーとしては、例えば、分子内に1〜3級アミン、4級アンモニウム塩を有する高分子で、具体的には、ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類またはその誘導体、2級アミン、3級アミン、4級アンモニウム塩を有するアクリル樹脂、ポリビニルアミン、ポリビニルアミジン類、ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物に代表されるジシアン系カチオン樹脂、ジシアンジアミド−ジエチレントリアミン重縮合物に代表されるポリアミン系カチオン樹脂、エピクロロヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルアミン塩重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、アリルアミン塩の重合物、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩重合物、アクリルアミド−ジアリルアミン塩共重合物、ポリビニルアルコール−カチオンモノマーグラフト重合物等が挙げられる。また、カチオン性ポリマーの数平均分子量としては3千〜20万が好ましく、特に5千〜10万の分子量のものが好ましい。また、多価金属イオンとしては、Ca2+、Mg2+、Al3+等が挙げられる。
【0026】
インク定着剤の塗工量としては、少な過ぎると色材を固定できず、多過ぎても色材を固定する効果に差が認めらないだけでなくインク吸収性が低下することがあるため、好ましいインク定着剤の量は0.3g/m以上10g/m以下であり、特に好ましくは0.5g/m以上5g/m以下である。
【0027】
次に、本発明のインクジェット記録媒体用支持体の表面処理を施した面の上に、少なくとも1層のインク受理層が設けられているインクジェット記録媒体について説明する。
【0028】
支持体の上にインク受理層を設けることによって、より高精細な画像を得ることができる。インク受理層には、インク吸収性を高めるために無機顔料が含有される。また、インク受理層に含まれる無機顔料の量は、十分なインク吸収性を確保するために、インク受理層の全固形分に対して50質量%以上が好ましく、特に好ましくは55質量%以上90質量%以下であり、更に好ましくは60質量%以上90質量%以下である。
【0029】
また、無機顔料としては平均二次粒子径が1μm以上10μm以下のものが好ましく、必要に応じて上記の粒子径の範囲内で2種以上の粒径の異なる無機顔料を併用することもできる。また、無機顔料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、合成シリカ、水酸化マグネシウムなど挙げられ、特に合成シリカ等の多孔性顔料が好ましい。
【0030】
インク受理層の塗工量は、乾燥固形分として3g/m以上20g/m以下が好ましく、特に好ましくは5g/m以上12g/m以下である。塗工量が少な過ぎるとインク吸収性が不足することがあり、塗工量が多過ぎると塗層の強度が落ちることがある。
【0031】
また、インク受理層には、無機顔料と共にバインダーが用いられる。バインダーの含有量は、無機顔料に対して5質量%以上50質量%以下の範囲が好ましい。バインダーが少な過ぎると無機顔料を支持体上に保持することができず、多過ぎるとインク吸収性を阻害することがある。バインダーとしては、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉などの澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリビニルアルコールまたはその誘導体、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体または共重合体などのアクリル系重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合体エマルジョン、あるいはこれら各種重合体のカルボキシ基などの官能基含有単量体による官能基変性重合体エマルジョン、メラミン樹脂、尿素樹脂などの熱硬化合成樹脂などの水性接着剤、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂などの合成樹脂系接着剤などを挙げることができる。
【0032】
また、バインダーの中でも、ポリビニルアルコールが好ましく、ポリビニルアルコールの中でも特にシラノール変性ポリビニルアルコールが好ましい。バインダーとしてシラノール変性ポリビニルアルコールを用いることによって、少ないバインダー量で塗層強度を強くすることができる。
【0033】
更に、インク受理層にはインク定着剤を含有するのが好ましい。インク定着剤としては、上述のカチオン性ポリマーや多価金属イオンを用いることができる。インク受理層に含有されるインク定着剤の量としては、少な過ぎると色材を固定できず、多過ぎるとインク受理層の空隙を小さくすることから、好ましいインク定着剤の量は0.3g/m以上、特に好ましくは0.5g/m以上5g/m以下である。
【0034】
次に、本発明のインクジェット記録媒体用支持体の表面処理を施した面の上に、少なくとも1層のインク受理層が設けられており、且つ該インク受理層の上に光沢発現層が設けられているインクジェット記録媒体について説明する。
【0035】
光沢発現層としては、インク吸収性が速く、且つ光沢処理によって光沢を発現し易いことから、主としてシリカまたはアルミナ水和物から選ばれる少なくとも1種のサブミクロン顔料を含有することが好ましい。
【0036】
また、サブミクロン顔料としては、比表面積がある程度以上あるものを用いると高い印字濃度が得られることから好ましい。一方比表面積が大き過ぎるものを用いるとインクの吸収性が低下することがある。具体的には、BET法による比表面積が60m/g以上600m/g以下のものを用いることが好ましく、150m/g以上400m/g以下のものを用いることがより好ましい。
【0037】
このような比表面積を有するサブミクロン顔料は通常、直径数nmから数十nmの一次粒子が結合しその内部に空隙を有する高次構造を形成してなる顔料である。サブミクロン顔料の一次粒子が小さいと光沢発現層の透明性が高くなるが、インク吸収性が悪くなることがある。一方、一次粒子が大きいとインク吸収性は悪くならないものの、光沢発現層の透明性が悪くなり、表面の光沢を得難いことがある。それ故、光沢発現層に含有されるサブミクロン顔料は、平均一次粒子径は6nm以上18nm未満であることが好ましい。
【0038】
光沢発現層の塗工量は、乾燥固形分として3g/m以上20g/m以下が好ましく、特に好ましくは5g/m以上12g/m以下である。塗工量が少な過ぎると光沢を発現し難く、塗工量が多過ぎると塗層の強度が落ちることがある。
【0039】
シリカまたはアルミナ水和物からなるサブミクロン顔料の種類としては、例えば、ゲル法シリカ、沈降法シリカ、コロイダルシリカ、気相法シリカ、気相法アルミナ、擬ベーマイト等からなるサブミクロン顔料を例示することができ、本発明はこれらに限定されるものではないが、光沢発現層の透明性が得やすく、且つインク吸収性も良いことから、気相法シリカ及び擬ベーマイトが特に好ましい。
【0040】
サブミクロン顔料と共に用いられるバインダーとしては、上述のインク受理層に用いられるバインダーを用いることができるが、その中でもポリビニルアルコールが好ましい。また、ポリビニルアルコールのけん化度が高いと塗液の安定性が悪くなり易く、けん化度が低いとインク受理層の強度が弱くなり易いことから、けん化度が70mol%以上95mol%以下、特に85mol%以上94mol%以下が好ましい。また、ポリビニルアルコールの添加量は、少な過ぎると乾燥時に光沢発現層に亀裂が生じたり、形成される光沢発現層の強度が不足することがあり、添加量が多過ぎるとインクの吸収を阻害することがあることから、ポリビニルアルコールの添加量はサブミクロン顔料の2質量%以上40質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることが特に好ましい。
【0041】
光沢発現層に光沢を付与するために施される光沢処理としては、カレンダーによる光沢処理及び/またはキャスト法による光沢処理が好ましい。
【0042】
カレンダーによる光沢処理とは、一般に印刷用紙で圧力や温度をかけたロール間に通紙することで塗層表面を平滑化する方法であり、スーパーカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダー、グロスカレンダー等が、一般の印刷用紙に似た風合いを得易い。
【0043】
キャスト法による光沢処理とは、湿潤状態にある塗工層を加熱された鏡面に圧着し、鏡面形状を光沢発現層の表面に転写すると共に塗工層から水分を乾燥除去し記録媒体に光沢を付与する処理を言い、一般に高い鏡面光沢を得ることができる。キャスト法に使用する装置(キャスト装置)は通常、表面がクロムメッキされたシリンダーの表面に、弾性ロールを用いて連続的に塗工紙を圧着する構造の装置であるが、本発明には、同様の作用を有する他の構造の装置を用いても良い。本発明のインクジェット記録媒体を製造するにあたり、用いられるキャスト法の方式としては、光沢発現層を塗工後一旦乾燥させてから再度水分を付与し、その後キャスト装置の鏡面に圧着するいわゆるリウエット法、光沢発現層を塗工後、乾燥させずそのままキャスト装置の鏡面に圧着するいわゆる直接法等の方式を例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
本発明のインクジェット記録媒体を製造するにおいて、本発明のインクジェット記録媒体用支持体の表面処理を施した面の上に、少なくとも1種のインク定着剤を含有する塗液を塗工する方法、少なくとも1層のインク受理層を塗工する方法、インク受理層の上に光沢発現層を塗工する方法としては特に制限はなく、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、リバースロールコーター、ロールナイフコーター、ゲートロールコーター、フィルムトランスファーコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等各種の塗工方式を用いることができる。
【0045】
また、本発明のインクジェット記録媒体を製造する各塗液には、必要に応じて、染料定着剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤等を適宜配合することもできる。
【実施例】
【0046】
以下本発明の実施例を示す。また、本実施例中で、特に明示しない限り部は質量部、%は質量%を示すものとする。
【0047】
<実施例1〜3>
下記の方法により、インクジェット記録媒体用支持体A〜Cを作製した。
【0048】
NMOを含む処理液のNMO含有率が8%、20%、42%になるように、50%NMO水溶液にイオン交換水で希釈して全体を100部とし、界面活性剤0.1部を加えて、NMOを含む処理液(A)〜(C)を調製した。
【0049】
坪量81.4g/mの原紙(三菱製紙社製ダイヤフォーム)上に、上述の処理液(A)〜(C)を、処理液のウエット塗工量が片面当たり10g/mとなるようにサイズプレスにて塗工し、それぞれインクジェット記録媒体用支持体(A)〜(C)を作製した。
【0050】
<実施例4>
下記の方法により、インク定着剤を含有する塗液を塗工したインクジェット記録媒体1−(B)を作製した。
【0051】
イオン交換水200部に、界面活性剤1.5部、ポリアリルアミンの25%水溶液100部、エチレングリコール50部、水酸化ナトリウムを添加してpHを8.0に調整し、全量で500部となるようにイオン交換水を追加してインク定着剤を含有する塗液を調製した。
【0052】
インクジェット記録媒体用支持体(B)の上に、インク定着剤を含有する塗液を、塗液のウエット塗工量が50g/mとなるようにエアナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させ、インクジェット記録媒体1−(B)を作製した。
【0053】
<比較例1>
インクジェット記録媒体用支持体(B)の代わりに、NMOを含む処理液による表面処理を施していない、未処理の坪量81.4g/mの原紙(三菱製紙社製ダイヤフォーム)を用いた以外は、実施例4と同様にしてインクジェット記録媒体1−(D)を作製した。
【0054】
(評価)
実施例4及び比較例1で作製したインクジェット記録媒体を下記の方法にて評価した。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
縦目でA3サイズに断裁したインクジェット記録媒体に、市販のインクジェットプリンタ(商品名:PX−5500 セイコーエプソン社製)を用いて、幅250mm、長さ350mmのCMY重色ベタ印字を720dpi×720dpiにて行い、印字直後の外観を目視で観察し、下記の基準にて評価を行った。
◎:印字直後は多少コックリングが確認されるが、画質にも問題がなく、印字障害もない。
×:コックリングによって、記録媒体がヘッドに当たる印字障害が発生する。
【0057】
<実施例5〜7>
下記の方法により、インク受理層が設けられているインクジェット記録媒体2−(A)〜(C)を作製した。
【0058】
水448部に合成非晶質シリカ(トクヤマ製:ファインシールX37B、粒子径3.8μm)100部を分散し、10%シラノール変性ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製:R1130)200部、30%アクリルアミド・ジメチルジアリルアンモニウムクロライド共重合体溶液50部、界面活性剤2部を加えてインク受理層用塗液を調製した。
【0059】
インクジェット記録媒体用支持体(A)〜(C)の上に、上述のインク受理層用塗液を、乾燥後の塗工量が7g/mとなるようにエアナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させ、インクジェット記録媒体2−(A)〜(C)を作製した。
【0060】
<比較例2>
インクジェット記録媒体用支持体(A)の代わりに、NMOを含む処理液による表面処理を施していない、未処理の坪量81.4g/mの原紙(三菱製紙社製ダイヤフォーム)を用いた以外は、それぞれ実施例5と同様にしてインクジェット記録媒体2−(D)を作製した。
【0061】
<実施例8>
下記の方法により、光沢発現層が設けられているインクジェット記録媒体3−(B)を作製した。
【0062】
水350部に四ホウ酸ナトリウム十水和物6部(HBO換算で0.97部)を溶解し、ここに湿式合成シリカ(トクヤマ社製ファインシールX−37B)100部を添加し、十分に分散した。次いでウレタン系重合体(第一工業製薬社製スーパーフレックス500)88.9部(固形分として40部)を添加・混合してインク受理層用塗液を調製した。
【0063】
水392部に酢酸8部を混合し、アルミナ水和物(サソール社製Disperal HP14)100部を添加し、固形分濃度20%のアルミナ水和物ゾルを得た。得られたアルミナ水和物ゾルの125部に、けん化度88mol%、4%水溶液の25℃における粘度95mPa・秒のポリビニルアルコール(クラレ社製PVA235)の10%水溶液75部(固形分7.5部)を添加し、光沢発現層用塗液を調製した。
【0064】
インクジェット記録媒体用支持体(B)の上に、上述のインク受理層用塗液を、乾燥後の塗工量が10g/mとなるようにエアナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させた。次いで得られた塗工紙をソフトカレンダーを用いて処理した後、上述の光沢発現層用塗液を、乾燥後の塗工量が10g/mとなるようにエアナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させた。得られた塗工紙を、JIS Z 8741による75度鏡面光沢度が45%以上55%以下の範囲に入るように調整してカレンダー処理を行い、インクジェット記録媒体3−(B)を作製した。
【0065】
<比較例3>
インクジェット記録媒体用支持体(B)の代わりに、NMOを含む処理液による表面処理を施していない、未処理の坪量81.4g/mの原紙(三菱製紙社製ダイヤフォーム)を用いた以外は、それぞれ実施例8と同様にしてインクジェット記録媒体3−(D)を作製した。
【0066】
<実施例9>
下記の方法により、光沢発現層が設けられているインクジェット記録媒体4−(B)を作製した。
【0067】
実施例8におけるカレンダー処理の代わりに、塗工紙の塗工面を、水に5秒間接触させて湿潤した後、温度95℃に加熱したキャスト装置の鏡面クロムメッキシリンダーに、線圧30kN/m、速度25m/minで圧着し、乾燥後にシリンダーより剥離することにより、インクジェット記録媒体4−(B)を作製した。
【0068】
<比較例4>
インクジェット記録媒体用支持体(B)の代わりに、NMOを含む処理液による表面処理を施していない、未処理の坪量81.4g/mの原紙(三菱製紙社製ダイヤフォーム)を用いた以外は、それぞれ実施例9と同様にしてインクジェット記録媒体4−(D)を作製した。
【0069】
(評価)
実施例5〜9及び比較例2〜4で作製したインクジェット記録媒体を下記の方法にて評価した。結果を表2に示す。
【0070】
【表2】

【0071】
縦目でA2サイズに断裁したインクジェット記録媒体に、市販のインクジェットプリンタ(商品名:PX−H8000 セイコーエプソン社製)を用いて、幅350mm、長さ450mmのCMY重色ベタ印字を720dpi×720dpiにて行い、印字直後の外観を目視で観察し、下記の基準にて評価を行った。
◎:印字直後は多少コックリングが確認されるか、またはほとんど確認されず、画質にも問題がなく、印字障害もない。
○:コックリングによるインク滴の着弾精度のズレによる画像ムラが僅かに確認されるが、実用上は許容できる。
×:コックリングによってインク滴の着弾精度が悪くなり、画像にムラが発生する。
××:コックリングによって、記録媒体がヘッドに当たる印字障害が発生する。
【0072】
実施例から明らかなように、本発明により、インクジェットプリンタで印字した際に、波打ち(コックリング)が少ないインクジェット記録媒体用支持体、及びそれを用いたインクジェット記録媒体を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分がセルロースパルプである支持体の少なくとも一方の面に、N−メチルモルホリンN−オキシドを含む処理液で表面処理を施したことを特徴とするインクジェット記録媒体用支持体。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット記録媒体用支持体の表面処理を施した面の上に、少なくとも1種のインク定着剤を含有する塗液を塗工したことを特徴とするインクジェット記録媒体。
【請求項3】
請求項1に記載のインクジェット記録媒体用支持体の表面処理を施した面の上に、少なくとも1層のインク受理層が設けられていることを特徴とするインクジェット記録媒体。
【請求項4】
請求項1に記載のインクジェット記録媒体用支持体の表面処理を施した面の上に、少なくとも1層のインク受理層が設けられており、且つ該インク受理層の上に光沢発現層が設けられていることを特徴とするインクジェット記録媒体。

【公開番号】特開2011−161787(P2011−161787A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27188(P2010−27188)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】