説明

インクジェット記録媒体

【課題】 高い保存性を有し、かつ高光沢度・高白色度で有し、インクジェット記録特性が良好であるインクジェット記録媒体を提供する。
【解決手段】 透気性を有する支持体の少なくとも一方の面に、顔料及び結着剤と蛍光増白剤とを含むインク受容層を設けたインクジェット用記録媒体であって、前記インク受容層は、有機酸にてインク受容層表面のpHを4.0〜7.0に調整され、かつ、前記インク受容層面の75度鏡面光沢度が50%以上である。インク受容層は凝固法キャストコート法及び再湿潤キャストコート法により設けられなることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
インクジェット記録媒体に関し、銀塩写真並の光沢感を有するインクジェット記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にインクジェット記録方式は、種々の機構によりインクの小滴を吐出し、記録用紙上に付着させることにより、ドットを形成し記録を行うものであるが、ドットインパクトタイプの記録方式に比べて騒音がなく、またフルカラー化が容易である上、高速印字が可能であるなどの利点がある。一方、インクジェット記録に使用されるインクは、通常直接染料や酸性染料などを用いた水性インクであるため乾燥性が悪いという欠点がある。
【0003】
更に最近では高解像度のデジタルビデオ、デジタルカメラ、スキャナーおよびパーソナルコンピューターの普及により高精細の画像を取り扱う機会が多くなり、これらのハードコピーをインクジェットプリンターで出力する事が多くなっている。これに伴い記録媒体に対しても要求特性が多様化してきており、中でも銀塩写真並の光沢感を有する記録媒体の要望が高くなってきている。
【0004】
しかし、インクジェット記録媒体においては、従来からある銀塩方式の写真と比較し、保存性が劣るという問題があった。例えば、銀塩方式の写真を保存する場合、通常アルバムやクリアブック等の透明ファイルに入れる。しかし、インクジェット記録媒体ではこれらのファイル中に保存する場合、特に空気に触れるエッジ部分で記録媒体が黄色く変色(以下、ファイル黄変化と記す)する問題があった。
【0005】
ファイル黄変化は、アルバムやクリアファイルの材料に使われている樹脂が含有する酸化防止剤ないし可塑剤がインクジェット記録媒体表面に転写し、吸着することによって発生する。例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等にはブチルヒドロキシトルエン(以下、BHTと記す)などの分子内にフェノール基を有する酸化防止剤が、練り込まれているものが多い。これら分子内にフェノール基を有する化合物が酸化されキノン構造をとり、黄変化を引き起こす。
ファイル黄変化は、表面に化合物を吸着しやすい多孔質なインク受容層であるときとくに顕著である。これは表面積が大きく表面活性が高く、ファイルの材料に含まれている酸化防止剤や可塑剤を吸着する能力に富み、また化合物の反応場として触媒作用を有するからである。
【0006】
また、ファイル黄変化とは別に、インクジェット記録媒体は紫外線やオゾンなどの活性酸素種の環境下に曝すことによって、劣化し黄変化(以下、劣化黄変化と記す)する。
劣化黄変化は、インクジェット記録媒体が含有している化合物、例えばバインダー、界面活性剤、インク定着剤、染料および顔料などが酸化分解されることによって汚染され黄変化する現象、あるいは化合物中に含まれる不純物または製造工程に混入するコンタミ成分、主に金属イオンの酸化によって黄変化する現象である。
従って、インクジェット記録媒体が保存中に黄変化するという現象は「ファイル黄変化」と「劣化黄変化」とが複雑に絡み合って発生しているといえる。
インクジェット記録媒体の保存性を改良する方法として、特許文献1には、ファイル保存中に黄変化することを防止するために、蛍光増白剤を含有する擬ベーマイト多孔質インク吸収層を有する記録シートが開示されている。
【0007】
蛍光増白剤は見かけ上の白色度を増すことによって、ファイル黄変化を感じ難くしている。しかし、蛍光増白剤は安定性に乏しい化合物であり、熱、紫外線や活性酸素の存在によって容易に分解し、劣化黄変化の原因になっていた。
また、擬ベーマイトを主成分とする多孔質インク吸収層に蛍光増白剤を含有した場合、蛍光増白剤の安定性が低下し、かえってファイル黄変化が大きくなっていた。
【0008】
また別に、ファイル黄変を抑制する方法として、特許文献2には、アルミナ水和物からなるインク吸収層の表面pHを4.0以上5.4以下にしたインクジェット記録媒体が開示されている。
経験的に、ファイル黄変化はインク受容層をアルカリ性側にシフトすることによって顕著となり、酸性側にシフトさせることによって抑制されることが分かっている。
しかし、アルミナ水和物からなる多孔質な材料で、高活性な表面を有するインク受容層をもったインクジェット記録媒体は、表面pH4.0から5.4の範囲では十分なファイル黄変抑制効果が得られず、効果的には表面pHを3以下にする必要がある。表面pHを3以下にする塗被組成物は強酸性な液であり、設備的にも取り扱い面でも使用が困難である。更に紫外線や活性酸素に起因する劣化黄変化に関しては抑制効果が全くなかった。
【0009】
また、ファイル黄変および劣化黄変化ともに抑制する方法として、特許文献3には蛍光増白剤を含有する多孔質のインク吸収層の表面pHが4.5以上6.5以下にしたインクジェット記録媒体が開示されている。しかし、インク吸収層の表面pHのみ調整しただけでは高い保存性を得ることができなかった。
【特許文献1】特開平7−68920号公報
【特許文献2】特開平11−34484号公報
【特許文献3】特開2001−246833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したとおり、従来のインクジェット記録媒体には高い保存性を有するものはなく、ファイル中に保存した場合に発生するファイル黄変化、および紫外線や活性酸素によって発生する劣化黄変化を抑制した銀塩写真並のインクジェット記録が望まれている。
従って、本発明の目的は、高い保存性を有し、かつ高光沢度・高白色度で有し、インクジェット記録特性が良好であるインクジェット記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者等は上記課題を解決すべく検討を行った結果、透気性を有する支持体の少なくとも一方の面に、顔料及び結着剤と蛍光増白剤とを含むインク受容層を設けたインクジェット用記録媒体であって、前記インク受容層は、有機酸にてインク受容層表面のpHを4.0〜7.0に調整され、かつ、前記インク受容層面の75度鏡面光沢度が50%以上であることを特徴とするインクジェット記録媒体によって解決できることを見出した。
【0012】
また、前記インク受容層は凝固法キャストコート法及び再湿潤キャストコート法により設けられてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ファイル黄変化および劣化黄変化とも抑制し、銀塩写真並の高い光沢感、白色度を有し、インクジェット記録を行った場合においても印字品質(鮮やかさ)の優れるインクジェット記録媒体を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明について詳細に説明する。
<支持体>
透気性を有する支持体としては、特に紙(塗工紙、未塗工紙等)が好ましい。該紙の原料パルプとしては、化学パルプ(針葉樹の晒または未晒クラフトパルプ、広葉樹の晒または未晒クラフトパルプ等)等を単独または任意の割合で混合して使用することが可能である。
前記紙のpHは、酸性・中性・アルカリ性のいずれでも良い。また、紙中に填料を含有されると紙の不透明度を向上させることができるため、填料を含有させることが好ましい。填料としては、水和珪酸、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、合成樹脂填料等の公知の填料を使用することができる。
【0015】
<インク受容層>
次に、本発明におけるインク受容層について説明する。インク受容層は、以下の顔料・結着剤・蛍光増白剤、及びその他の成分を適且含む塗工液を上記支持体に塗工して形成することができ、インク受容層の表面pHは有機酸によって、pHが4.0〜7.0になるよう調整される。
【0016】
(インク受容層の顔料)
本発明において、インク受容層の顔料としては、公知の無機微粒子や有機微粒子を用いることができ、例えば、合成非晶質シリカ・コロイダルシリカ・水酸化アルミニウム・アルミナ水和物(アルミナゾル、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト等)・アルミナ(α型結晶のアルミナ、θ型結晶のアルミナ、γ型結晶のアルミナ等)・カオリン・タルク・炭酸カルシウム・二酸化チタン・クレー・酸化亜鉛等を用いることができる。これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。本発明においては、特に発色性の点からコロイダルシリカ、インク吸収性の点から合成非晶質シリカを含有することが好ましい。
【0017】
(インク受容層の結着剤)
本発明において、インク受容層の結着剤としては、水系バインダー樹脂を用いることができる。水系バインダー樹脂とは水溶性樹脂及び水分散性樹脂を意味し、例えば、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ウレタン樹脂エマルジョン由来のウレタン樹脂、酸化澱粉、エステル化澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆タンパク、スチレン−アクリル樹脂及びその誘導体、スチレン−ブタジエン樹脂ラテックス、アクリル樹脂エマルジョン、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、塩化ビニル樹脂エマルジョン、尿素樹脂エマルジョン、アルキッド樹脂エマルジョン及びこれらの誘導体等があげられ、これらの水系バインダー樹脂を単独又は混合して用いることができる。本発明においては、特に発色性の点からポリビニルアルコールを含有することが好ましい。
【0018】
(蛍光増白剤)
本発明に用いられる蛍光増白剤としては、公知の蛍光増白剤を用いることができる。好ましくは4,4−ジ(トリアジノアミノ)スチルベン−2,2‘−ジスルホン酸塩誘導体である。前記蛍光増白剤としては、例えばBLANKOPHOR P liquid 01(LANXESS社製の商品名)、BLANKOPHOR UW liquid(LANXESS社製の商品名)等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して使用することができる。本発明に使用する蛍光増白剤のインク受容層への混合比率は、顔料100質量部に対して質量固形分で0.5〜10部質量部であり、好ましくは1〜5質量部である。0.5質量部以下では白色度向上効果が少なく、10質量部を超えると白色度向上に顕著な効果が得られず、インクジェット特性(鮮やかさ)が低下し、劣化黄変が悪化する傾向にある。
【0019】
(製造方法)
本発明においては通常公知の方法で支持体上にインク受容層を形成することが可能であるが、高い光沢を有するインクジェット記録媒体を得られるという点から、本発明においてはインク受容層をキャストコート法により支持体上に設けられることが好ましい。キャストコート法は支持体上にインク受容層用塗工液を塗工してインク受容層となる塗工層を設け、湿潤し、可塑状態の塗工層をキャストドラム(鏡面仕上げの面)に押し当て、光沢仕上げする方法であり、さらに直接法、凝固法、再湿潤法の3種類がある。本発明においては3種類の方法のうち、いずれの方法を用いることができるが、高い光沢を得られるという点からは凝固キャストコート法が、生産性を向上するという点からは再湿潤キャストコート法が好ましい。
【0020】
(凝固キャストコート法)
凝固法にてインク受容層を支持体上に設ける場合は、インク受容層用塗工液を支持体上に塗工し、その塗工層が湿潤状態の内に水系バインダー樹脂を凝固(あるいは架橋)する作用を持つ処理液(凝固液)を塗布し、その後加熱した鏡面に圧着し、光沢を付与する。例えば、水系バインダー樹脂としてポリビニルアルコールを用いた場合にはポリビニルアルコールを凝固させる作用を持つ化合物を含有する水溶液であればいずれのものも使用することができるが、特に、ホウ酸とホウ酸塩とを含有する処理液(凝固液)が好ましい。混合して用いることにより、適度な固さの凝固を得ることが容易となり、良好な光沢感を有するインクジェット記録用のキャストコート紙を得ることが出来る。
【0021】
(再湿潤キャストコート法)
再湿潤法にてインク受容層を支持体上に設ける場合は、インク受容層用塗工液を支持体上に塗工乾燥し、乾燥状態の塗工層に水系バインダー樹脂を可塑化するする作用を持つ処理液(再湿潤液)を塗布し、その後加熱した鏡面に圧着し、光沢を付与する。再湿潤法の場合は、処理液(再湿潤液)を塗布する際にインク受容層が乾燥状態であるため、鏡面ドラム表面を写し取ることが難しく、表面の微小な凹凸が多くなり光沢感は若干落ちる傾向にあるが、塗工速度を他の方法に比較して高くすることが可能になるため、生産性が向上する。
【0022】
(有機酸処理)
本発明においては、有機酸によりインク受容層の表面pHが4.0以上7.0以下となるよう調整する。無機酸を用いて表面pHを調整した場合には劣化黄変が劣ってくるので、好ましくない。表面pHを調整する方法としては、最終的にインク受容層の表面pHが上記の範囲になっていればいずれの方法を用いてもよく、インク受容層を形成する塗工液に有機酸を添加する方法を用いても、インク受容層を形成した後に有機酸を含む溶液を表面に塗工、含浸する方法を用いてもよい。好ましくは、後者の方法であり、特にインク受容層が凝固キャストコート法で形成される場合は、有機酸を凝固液中に含有することが好ましく、再湿潤キャストコート法で形成される場合は、有機酸を再湿潤液に含有することが好ましい。
塗被組成物のpHの制御に用いられる酸は有機酸としては、例えば酢酸、グリコール酸、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸などが用いられる。有機酸を用いた場合、インクジェット記録媒体の印字発色性や鮮鋭性に悪影響を与えない。
また、有機酸のインク受容層中の配合量は出来るだけ小さいことが好ましい。インク受容層を形成した後に有機酸を含む溶液を塗工する場合や、有機酸を凝固液や再湿潤液に含有させる場合は、溶液中に1質量%以内となるように配合することが好ましく、また、液の塗工量は固形分換算で0.1〜1.5g/m程度になることが好ましい。有機酸の配合量を抑えることで、ファイル黄変化および劣化黄変化ともに抑制することができる。
【0023】
(表面pH)
本発明において、インク受容層を設けたインクジェット記録媒体インク吸収層側の表面pHは4.0以上7.0以下であり、好ましくは5.0以上6.5以下である。表面pHが4.0を下回ると劣化黄変化が顕著となり、表面pHが7.0を超えるとファイル黄変化が顕著となり、また、有機酸の添加量が多くなるとインクジェット記録特性が劣るようになる。なお、本発明でいう「表面pH」とは、J.TAPPIのNo.49−2に規定されるように、pH指示液を紙表面に塗布し、標準変色表と比較する方法で測定した紙面pHを意味する。
【0024】
(塗工方式)
支持体上にインク受容層用塗工液を塗布する塗工方式としては、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ブラッシュコーター、キスコーター、スクイズコーター、カーテンコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコータ等の公知の塗工機を用いた塗工する方法の中から適宜選択して使用することができる。処理液(凝固液・再湿潤液等)を塗布する方法としてはロール、スプレー、カーテン方式等があげられるが、特に限定されない。
【0025】
(インク受理層の塗工量)
インク受容層の塗工量は、原紙の表面を覆い、かつ十分なインク吸収性が得られる範囲で任意に調整することができるが、記録濃度及びインク吸収性を両立させる観点から、片面当たり、固形分換算で3〜30g/m2であることが好ましい。さらに好ましい範囲は5g/m2〜25g/m2である。25g/m2を超えると、鏡面ドラムからの剥離性が低下し塗工層が鏡面ドラムに付着するなどの問題を生じる。本発明においては必要に応じて支持体とインク受容層の間にアンダー層を設けても良いし、インク受容層を設ける面とは反対側の支持体上に筆記性、帯電防止性、防汚性、滑り性糖を付与するためのバック層を設けることも可能である。
【0026】
(その他添加剤)
インク受容層には、その他添加剤として、染料定着剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤等を適宜配合することもできる。また、インク受容層をキャストコート法で設ける場合、インク受容層用にはキャストドラムからの剥離性を向上することを目的として剥離剤を含有することが出来る。
【0027】
(光沢感、白色度)
また、本発明のインクジェット記録媒体は、銀塩写真並の品質を目標としているため、インク受容層面から測定した75度鏡面光沢度が50%以上の光沢感のあるインクジェット記録媒体となる。さらに、像鮮鋭度が20%以上であることが好ましい。75度鏡面光沢度はJIS−P−8142に準じて測定し、像鮮鋭度はJIS−K−7105に準じて測定する。また、白色度についてはISO白色度で90%以上であるインクジェット記録媒体とすることが好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例によって更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。又、特に断らない限り、以下に記載する「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0029】
<実施例1>
叩解度285mlの広葉樹晒クラフトパルプ(L−BKP)100部からなるパルプスラリ−にタルク10重量部、硫酸アルミニウム1.0重量部、合成サイズ剤0.1重量部、歩留向上剤0.02重量部を添加した支持体を抄紙機で抄紙するに際し、デンプンを両面に片面当り固形分で2.5g/m2となるように塗布して、坪量170g/m2の原紙を得た。 この原紙にロールコーターで塗工液Aを乾燥塗工量が14g/m2となるように塗工し、その塗工層が湿潤状態にあるうちに、凝固液Bをロールコーター用いて塗工層上に塗布してこれを凝固させ、次いでプレスロールを介して加熱された鏡面仕上げ面に圧着して鏡面を写し取り、184g/m2のインクジェット記録媒体を得た。
【0030】
・塗工液A:顔料として、コロイダルシリカ(クォートロンPL−1:扶桑化学工業社製の商品名)を50部、合成シリカ(アエロジル300:日本アエロジル株式会社製)を50部、バインダーとしてポリビニールアルコール(PVA235:クラレ株式会社製の商品名)を5部、蛍光染料(BLANKOPHOR P liquid01:LANXESS社製の商品名)を1.5部、消泡剤0.2部を配合して濃度20%の塗工液を調整した。
・凝固液B:硼砂2%、ホウ酸2%(硼砂/ホウ酸の質量比=1/1、Na
およびHBO換算で計算)、リンゴ酸0.5%、離型剤(FL−48C:東邦化学工業社製)0.2%を配合して凝固液(pH6.5)を調整した。
【0031】
<実施例2>
実施例1において、凝固液Bに硼砂2%、ホウ酸2%(硼砂/ホウ酸の質量比=1/1、NaおよびHBO換算で計算)、クエン酸0.5%、離型剤(FL−48C:東邦化学工業社製)0.2%を配合して凝固液を調整した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【0032】
<実施例3>
実施例1において、凝固液Bに硼砂2%、ホウ酸2%(硼砂/ホウ酸の質量比=1/1、NaおよびHBO換算で計算)、リンゴ酸1%、離型剤(FL−48C:東邦化学工業社製)0.2%を配合して凝固液を調整した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【0033】
<比較例1>
実施例1において、凝固液Bに硼砂2%、ホウ酸2%(硼砂/ホウ酸の質量比=1/1、NaおよびHBO換算で計算)、離型剤(FL−48C:東邦化学工業社製)0.2%を配合して凝固液を調整した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【0034】
<比較例2>
実施例1において、凝固液Bに硼砂2%、ホウ酸2%(硼砂/ホウ酸の質量比=1/1、NaおよびHBO換算で計算)、リンゴ酸2%、離型剤(FL−48C:東邦化学工業社製)0.2%を配合して凝固液を調整した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【0035】
<比較例3>
実施例1において、凝固液Bに硼砂2%、ホウ酸2%(硼砂/ホウ酸の質量比=1/1、NaおよびHBO換算で計算)、硝酸マグネシウム0.5%、離型剤(FL−48C:東邦化学工業社製)0.2%を配合して凝固液を調整した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【0036】
<比較例4>
実施例1において、凝固液Bに硼砂2%、ホウ酸2%(硼砂/ホウ酸の質量比=1/1、NaおよびHBO換算で計算)、硝酸マグネシウム1.5%、離型剤(FL−48C:東邦化学工業社製)0.2%を配合して凝固液を調整した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【0037】
<比較例5>
実施例1において、塗工液A中に蛍光染料(BLANKOPHOR P liquid01:LANXESS社製の商品名)を配合しなかった以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を得た。
【0038】
実施例1〜3、比較例1〜5で得られたインクジェット記録用紙のキャスト塗工操業性、光沢感およびインクジェット記録試験は以下の方法で行った。結果は表1にまとめる。
評価方法は、下記の要領で実施した。
【0039】
(1)紙面pH:J.Tappi No49-2に準拠してキャストコート層表面の紙面pHを測定した。
(株)共立理化学研究所製の紙面測定用pH計(型式MPC)を用い、pH2.4〜4.4用、pH3.4〜5.4用、pH4.8〜6.8用、pH6.0〜8.0用、pH6.8〜8.8用、8.0〜10.0用の6種類の試験液から2種類以上を選び、試験液をキャストコート層表面に綿棒で付与し、変色の程度を紙面pH測定用の標準色と見比べて判定した。
(2)ISO白色度
JIS P8148:2001に準じてキャストコート紙表面のISO白色度測定し、下記の基準で評価した。
○:ISO白色度が95%以上のもの
△:ISO白色度が88%〜95%のもの
×:ISO白色度が87%以下のもの
【0040】
(3)光沢感
キャストコート紙表面の光沢感を下記の基準で評価した。
○:75度鏡面光沢度が50%以上でかつ像鮮明度が40%以上のもの
△:75度鏡面光沢度が50%以上でかつ像鮮明度が20〜40%のもの
×:75度鏡面光沢度が50%以下で、像鮮明度が20%以下のもの
・JIS P8142に準じて、75度鏡面光沢度の測定:光沢度計(村上色彩技術研究所製、True GLOSS GM-26PRO)を用いて、75度鏡面光沢度を測定した。
・像鮮明度: JIS K7105に準じて、写像性測定器(型番:ICM−1DP、スガ試験機株式会社製)を用いて測定した。測定角度を60度、くし幅2mmの条件で、紙のMD方向を測定した。
【0041】
(4)鮮やかさ
インクジェットプリンター(PM―950C:エプソン株式会社製の商品名)を用いて所定のパターンを記録し、下記の基準によって記録画像部の鮮やかさを目視で評価した。
◎:非常に鮮やか
○:鮮やか
△:若干鮮やかさが劣る
×:鮮やかに見えない
【0042】
(5)黄変化
a、ファイル黄変
市販のポリプロピレン製樹脂ファイル(A4サイズ)にサンプルをはみ出すように入れ、70℃の環境下で7日間保存した。黄変しやすいファイルの縁部分の個所を保存前後のインク受容層側のL*a*b*を色彩色差計(日本電色工業株式会社製 分光色差計 NF−999)で測定した。ファイル黄変化の程度は、記録媒体の保存前後のL*a*b*の差(以下、△Eと記す)で表し、評価した。
b、劣化黄変化(耐光性)
インクジェット記録媒体を、強エネルギーキセノンウェザーメーター(キセノンフェードオメータ)に24時間(照射照度:65W/m)かけた。照射前後のインク受容層側のL*a*b*を色彩色差計(日本電色工業株式会社製 分光色差計 NF−999)し、ファイル黄変同様に△Eで表し、評価した。
【0043】
【表1】

【0044】
表1から明らかなように、実施例1は全てにバランスがとれており、実施例2、3についても僅かに品質が劣る部分があるが、概ね良好な品質を得ることが出来た。一方、有機酸を添加していない比較例1、比較例3、比較例4ではファイル黄変に劣り、有機酸の添加量が多く、表面pHの値が小さい比較例2ではインクジェット記録特性(鮮やかさ)が劣っていた。また、有機酸以外でpH調整を行った比較例3及び4ではさらに劣化黄変も劣っていた。また、蛍光染料を含有しない比較例5では白色度が劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透気性を有する支持体の少なくとも一方の面に、顔料及び結着剤と蛍光増白剤とを含むインク受容層を設けたインクジェット用記録媒体であって、前記インク受容層は、有機酸にてインク受容層表面のpHを4.0〜7.0に調整され、かつ、前記インク受容層面の75度鏡面光沢度が50%以上であることを特徴とするインクジェット記録媒体。
【請求項2】
前記インク受容層は凝固法キャストコート法及び再湿潤キャストコート法により設けられてなる請求項1記載のインクジェット記録媒体。


【公開番号】特開2007−54956(P2007−54956A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−239290(P2005−239290)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】