説明

インクジェット記録媒体

【課題】本発明の目的は、光学読み取り装置にて読み取りが可能な情報が、インクジェット記録媒体の外観を損ねることなく、予め該インクジェット記録媒体の所定の位置に付与されているインクジェット記録媒体を提供することにある。
【解決手段】インクジェット記録媒体の所定の位置に800〜1000nmの波長域に吸収を持つ白色顔料を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録媒体に関し、更に詳しくは、光学読み取り装置にて読み取りが可能な情報が、インクジェット記録媒体の外観を損ねることなく、予め該インクジェット記録媒体の所定の位置に付与されているインクジェット記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、種々の作動原理によりインクの微小液滴を飛翔させて紙等の被記録媒体に付着させ、画像・文字等の記録を行うものである。インクジェットプリンターやプロッターはコンピューターにより作成した文字や各種図形等の画像情報のハードコピー作成装置として、種々の用途において近年急速に普及している。特に多色インクジェット記録方式により形成されるカラー画像は製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画に比較しても遜色のない記録を得ることが可能であり、更に作成部数が少ない用途においては、印刷技術や写真技術よりも安価で済むことから広く応用されている。
【0003】
このような用途の多様化に伴い、多くの種類のインクジェット記録媒体が使用されているが、一般にインクジェット専用紙と言われているインクジェット記録媒体であっても、その塗工層の構成や使用材料はインクジェット記録媒体の種類によって異なる。また、例えば写真画質を印刷できる光沢紙や半光沢紙では、キャスト紙や樹脂被覆紙等、塗工層だけでなく支持体も異なるインクジェット記録媒体が広く使用されている。
【0004】
上述のようにインクジェット記録媒体の種類は多く、かつインクジェット記録媒体の種類によって塗工層や構成等が異なり、当然ながらインクの吸収容量や発色も各々異なる。それ故、一般にはインクジェット記録媒体の種類毎に適切な印刷モードが予め設定されており、使用者は適切な印刷モードを選択することによって、最良の印刷物を得ることができる。しかしながら、使用者が選択する印刷モードを間違えることや、選択すべき適切な印刷モードが設定されていることを知らないことも多い。また、片面のみに塗工層が設けられているインクジェット記録媒体では、塗工層が設けられている側の面に記録を行う必要があるが、紙の表裏を間違えることも多い。
【0005】
かかる問題を解決し、適切な印刷モードや表裏を自動的に識別させる方法として、記録媒体の所定の場所にマーキングや切り込みを設ける方法(例えば、特許文献1および2参照)、紫外光の照射により可視光が発光をする蛍光塗料を記録媒体に塗工する方法(例えば、特許文献3参照)等が提案されているが、マーキングや切り込みを入れる方法は、視認性は良いものの、外観が損なわれる問題がある。また、紫外光の照射により可視光が発光する蛍光塗料を使う方法では、インクジェット記録媒体の多くは、塗工層や支持体に蛍光染料を含有しており、また白紙色相の調整のために塗工層や原紙に色材が含有されることも多いため、これらの蛍光染料や色材と読み取り波長が重なってしまう問題がある。
【0006】
一方、予め必要な情報を記録しておく方法としては、700nmを超える近赤外域の波長域を利用して情報を記録し、光学読み取り装置にて読み取る方法が従来から利用されており、例えば一次元や二次元バーコード、OCR文字等の光学的に読み取りが可能な情報が、いわゆる近赤外吸収色素(NIR色素)を用いて印刷され、半導体レーザーまたは発光ダイオードを用いた光学読み取り装置を用いて情報を読み取る方法が一般に広く行われている。しかしながら、近赤外吸収色素は可視光域にも吸収があるため、外観を損ねることなく、この方法を用いて予めインクジェット記録媒体に情報を付与しておくことはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−51177号公報
【特許文献2】特開2004−330448号公報
【特許文献3】特開2002−321439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、インクジェット記録媒体を提供することであり、更に詳しくは、光学読み取り装置にて読み取りが可能な情報が、インクジェット記録媒体の外観を損ねることなく、予め該インクジェット記録媒体の所定の位置に付与されているインクジェット記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
【0010】
(1)インクジェット記録媒体の所定の位置に800〜1000nmの波長域に吸収を持つ白色顔料が付与されていることを特徴とするインクジェット記録媒体。
【0011】
(2)白色顔料がアンチモン・錫複合酸化物であることを特徴とする(1)に記載のインクジェット記録媒体。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、光学読み取り装置にて読み取りが可能な情報が、インクジェット記録媒体の外観を損ねることなく、予め該インクジェット記録媒体の所定の位置に付与されているインクジェット記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のインクジェット記録媒体において、800〜1000nmの波長域に吸収を持つ白色顔料を付与する位置を示す一例である。
【図2】本発明のインクジェット記録媒体において、800〜1000nmの波長域に吸収を持つ白色顔料を付与する位置を示す一例である。
【図3】本発明のインクジェット記録媒体において、800〜1000nmの波長域に吸収を持つ白色顔料を付与する位置を示す一例である。
【図4】本発明のインクジェット記録媒体において、800〜1000nmの波長域に吸収を持つ白色顔料を付与する位置を示す一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のインクジェット記録媒体について説明する。本発明のインクジェット記録媒体は所定の位置に800〜1000nmの波長域に吸収を持つ白色顔料が付与されていることを特徴とするインクジェット記録媒体である。
【0015】
本発明の800〜1000nmの波長域に吸収を持つ白色顔料とは、導電性のある金属酸化物であり、微粉末固体にした時に白色を示すものである。
【0016】
本発明の800〜1000nmの波長域に吸収を持つ白色顔料が、導電性のある金属酸化物である理由は以下の通りである。物質が可視光に対して透明で、近赤外域の波長の光を吸収するためには、プラズマ振動数が可視光域と近赤外域の境界付近、波長で言えば800〜1000nm付近であることが最も好ましい。プラズマ振動とは、電子伝導体の中には正イオンと自由電子から成るプラズマが閉じ込められており、自由電子はプラズマ振動と呼ばれる密度の平方根に比例した疎密の変化を伴う振動をしている。プラズマ振動数より振動数の高い電磁波(プラズマ振動の波長よりも短波長の光)はプラズマ内を透過し、低い電磁波(プラズマ振動の波長よりも長波長の光)はプラズマ内を透過できずに、吸収ないし反射される。金属等の高い導電性を持つ物質は、自由電子密度が大きくプラズマ振動数が高い(波長が短い)ため、近赤外光に対しても、可視光に対しても不透明である。一方、セラミックスや樹脂等の絶縁体は、自由電子がないため可視光に対しても、近赤外光に対しても共に透明となる。導電性のある金属酸化物は、適当な導電性を持ち、プラズマ振動数は近赤外域にある。従って、可視光に対しては透明となり、近赤外光に対しては不透明となる性質を持っている。
【0017】
このような導電性のある金属酸化物としては、例えばインジウム・錫複合酸化物(ITO)、アンチモン・錫複合酸化物(ATO)等が挙げられるが、本発明はこれに限定されるものではない。また、入手が容易で、かつ透明性(可視光透過性)および近赤外域の吸収波長が発光ダイオード等の波長と合致していることから、アンチモン・錫複合酸化物(ATO)が特に好ましい。
【0018】
また、物質が光に対して透明であるためには、反射および吸収がないことに加え、散乱がないことが条件となる。粒子による散乱は、粒子サイズの大きい方から、幾何散乱、回折散乱、ミイー散乱、レイリー散乱に区分され、光の波長より十分小さい粒子による散乱は、レイリー散乱となる。この領域の散乱は、波長のおよそ1/2の時に最大となり、それ以下では粒径の6乗に比例して急激に小さくなる。従って、散乱を小さくするには光の波長の1/2、すなわち可視光は一般に400nm〜700nmであるので、二次粒子径は可視光最短波長である400nmの1/2である200nmより小さい方が好ましく、特に好ましいのは50〜150nmである。二次粒子径が50nm未満の場合には、透明性は高くなるものの遮蔽性も低くなるため、読み取りの際の感度が悪くなることがあり、200nmを超える場合は、光の散乱により白色顔料が付与されている部分が視認し易くなることがある。また、50〜150nmの二次粒子径を得るためには、二次粒子径の大きさにもよるが白色顔料の一次粒子径の大きさは3〜30nmであることが好ましい。なお、二次粒子径の大きさは、動的光散乱粒度計(DLS)を用いて容易に測定することができる。
【0019】
本発明における白色顔料を付与する所定の位置は、光学読み取り装置にて読み取れる位置に合わせて設定すれば特に限定されず、図1に示すように矩形のインクジェット記録媒体の角部の近傍でも、図2および図3に示すように全面であってもよい。また、表裏のあるインクジェット記録媒体の場合には、表面(インクジェット記録を行う側の面)でも裏面(インクジェット記録を行わない側の面)でもよいが、インクの種類によっては、白色顔料を付与した部分にインクがのらないこともあるため、裏面の方が好ましい。裏面にロゴ等がある場合には、図4に示すようにロゴに重ねても良い。
【0020】
本発明において、予めインクジェット記録媒体の所定の位置に付与される光学読み取り装置にて読み取りが可能な情報とは、例えば表裏の判別、適切な印刷モード、印刷開始位置、偽造品と判別するための記号や文字、製品ロット番号等を挙げることができるが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
情報を記録する方法は、記録する情報量によって適切な記録方法を選ぶことができる。例えば表裏を判別する等のために、インクジェット記録媒体の全面または一部に本発明の白色顔料を付与して良く、印刷モード等のより複雑な情報を記録するために、EANコードやJANコード等の一次元バーコード、QRコード等の二次元バーコード等を用いても良く、偽造防止等のための隠し文字等を記録しても良いが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
本発明において白色顔料を所定の位置に付与する方法としては特に限定されず、フレキソ、スクリーン、オフセット、グラビア、インクジェット等の各種印刷方式や、エアーナイフ、ブレード、ロッド、リバースロール、フィルムトランスファー、リップ、ダイ、カーテン等各種の塗工方式を用いることができる。
【0023】
本発明のインクジェット記録媒体は、光沢紙やインクジェット専用紙等の表裏を区別すべきものに好適であるが、例えば普通紙等の非塗工紙、OHPシートや白色PET等のフィルム等でも良い。例えば、特開平11−180030号公報、特開2000−238412号公報等に記載されている如きシリカ等のインク吸収性の高い無機材料が塗布されたインクジェット記録媒体、特開2000−280605号公報、特開2005−280094号公報等に記載されている如きキャスト処理によって光沢が付与されたインクジェット記録媒体、特開2002−192831号公報、特開2004−130671号公報、特開2005−88198号公報等に記載されている如き樹脂被覆紙を支持体として用いたインクジェット記録媒体、特開2007−90709号公報、特開2009−184261号公報等に記載されている如き表面処理を施した非塗工紙のインクジェット記録媒体、特開2001−205923号公報、特開2004−1449号公報、特開2005−28573号公報、特開2008−30415号公報等に記載されている如き校正用インクジェット記録媒体等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
以下に本発明の実施例を示す。また、本実施例中で、特に明示しない限り部は質量部、%は質量%を示すものとする。
【0025】
<実施例1>
水448部に合成非晶質シリカ(トクヤマ社製:ファインシールX37B、粒子径3.8μm)100部を分散し、10%シラノール変性ポリビニルアルコール水溶液(クラレ社製:R1130)200部、30%アクリルアミド・ジメチルジアリルアンモニウムクロライド共重合体溶液50部、界面活性剤2部を加えてインク受理層用塗液を調製した。
【0026】
坪量157g/mの原紙(三菱製紙社製ダイヤフォーム)上に、上述のインク受理層用塗液を、乾燥後の塗工量が7g/mとなるようにエアーナイフコーターを用いて塗工し、熱風型乾燥機を用いて乾燥させた。
【0027】
水57部、グリセリン25部、ジプロピレングリコール−n−プロピルエーテル3部を混合し、アンチモン・錫複合酸化物の30%分散物(石原産業社製SN−100D、二次粒子径85〜120nm)15部を徐々に加えて、1時間攪拌した後、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過して、800〜1000nmの波長域に吸収を持つ白色顔料の5%分散液を得た。
【0028】
市販のインクジェットプリンター(ブラザー社製DCP−115)のインクカートリッジを洗浄後、上述の白色顔料5%分散液を充填し、該インクジェットプリンターを用いてインク受理層を設けた面と反対側の面の図1で示す位置にバーコードパターンを印字して、800〜1000nmの波長域に吸収を持つ白色顔料が所定の位置に付与されているインクジェット記録媒体Aを作製した。
【0029】
<実施例2>
水37部、50%水溶性樹脂(ビックケミー・ジャパン社製DISPERBYK−190)20部、イソプロピルアルコール3部、アンチモン・錫複合酸化物の30%分散物(石原産業社製SN−100D、二次粒子径85〜120nm)40部を徐々に加えて練肉し、800〜1000nmの波長域に吸収を持つ白色顔料の12%分散液を得た。
【0030】
この分散液をテスト用グラビア印刷機を用い、実施例1で作製したインク受理層を設けた用紙のインク受理層を設けた面と反対側の面に、図2で示すように全面にバーコードパターンを印刷して、800〜1000nmの波長域に吸収を持つ白色顔料が所定の位置に付与されているインクジェット記録媒体Bを作製した。
【0031】
<実施例3>
実施例1におけるインクジェットプリンターによる印字の代わりに、固形分塗工量が2g/mになるようにグラビアコーターを用いて、インク受理層を設けた用紙のインク受理層を設けた面と反対側の面に、図3で示すように全面に塗工して、800〜1000nmの波長域に吸収を持つ白色顔料が所定の位置に付与されているインクジェット記録媒体Cを作製した。
【0032】
<実施例4>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)の1:1混合物をカナディアン スタンダード フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5%添加し、水で希釈して0.2%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/mになるように抄造し、乾燥調湿してポリオレフィン樹脂被覆紙の基紙とした。
【0033】
抄造した基紙のインク受理層を設ける面と反対側の面に、実施例1と同様に白色顔料5%分散液をインクカートリッジに充填し、インクジェットプリンターを用いて図1で示す位置にバーコードパターンを印字した。
【0034】
次いで、密度0.918g/cmの低密度ポリエチレンに対して、表面(インク受理層を設ける側の面)に、10%のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、厚さ35μmになるように押出被覆し、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。裏面(インク受理層を設けない側の面)には密度0.962g/cmの高密度ポリエチレン樹脂70部と密度0.918g/cmの低密度ポリエチレン樹脂30部のブレンド樹脂組成物を同様に320℃で溶融し、厚さ30μmになるように押出コーティングし、粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した。
【0035】
上記ポリオレフィン樹脂被覆紙の表面に高周波コロナ放電処理を施した後、40℃の温水250部、石灰処理ゼラチン10部、スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩0.2部、クロム明ばん1部を加えて下引き層塗液を作製し、下引き層をゼラチンが50mg/mとなるように塗布乾燥してポリオレフィン樹脂被覆紙を作製した。
【0036】
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(シャロールDC902P、第一工業製薬(株);分子量9,000)4部と気相法シリカ(平均一次粒子径7nm、BET比表面積300m/g)100部を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機(ブレード周速30m/秒)を使用して分散し、次いで圧力ホモジナイザーにて40MPaの条件で2回通過させて、固形分濃度20%のシリカ分散液を得た。なお、分散液の動的光散乱粒度計による測定ではシリカの平均二次粒子径は135nmであった。
【0037】
このシリカ分散液500部に、8%ポリビニルアルコール300部(鹸化度88%、平均重合度3500)、2%ほう酸200部、エタノール10部を加え、インク受理層用塗液を調製した。この塗液を40℃にて上述のポリオレフィン樹脂被覆紙の表面にスライドビードコーターで固形分塗工量が21g/mとなるように塗工し、直ぐに5℃の空気で20秒間冷却することによりゲル化した。このとき、インク受理層の表面温度は15℃であった。その後、30〜50℃の温風で乾燥させることによりインク受理層をポリオレフィン樹脂被覆紙の表面に形成させ、800〜1000nmの波長域に吸収を持つ白色顔料が、所定の位置に付与されているインクジェット記録媒体Dを作製した。
【0038】
<実施例5>
実施例4におけるポリオレフィン樹脂被覆紙の基紙の裏面(インク受理層を設けない側の面)に、グラビア印刷機で図4に示すようにロゴマークを10%の灰色網点で印刷した。次いで、実施例1と同様にして白色顔料5%分散液をインクカートリッジに充填し、図4に示すようにロゴマークの上に重なる位置に5%白色顔料分散液をインクジェットプリンターで印字し、800〜1000nmの波長域に吸収を持つ白色顔料が所定の位置に付与されているインクジェット記録媒体Eを作製した。
【0039】
<実施例6>
実施例1におけるアンチモン・錫複合酸化物の30%分散物の代わりに、インジウム・錫複合酸化物(Aldrich社製、型番700460)の30%イソプロピルアルコール分散液を用いた以外は実施例1と同様にして800〜1000nmの波長域に吸収を持つ白色顔料が所定の位置に付与されているインクジェット記録媒体Fを作製した。
【0040】
<比較例1>
水89部、イソプロピルアルコール4部、近赤外線吸収色素のN,N,N′,N′−テトラキス(p−ジエチルアミノフェニル)−p−フェニレンジアミニウムのトリフルオロメタンスルホン酸塩6部、界面活性剤1部をガラスビーズ(ビーズ径:0.997〜1.372mm)で48時間分散した。これに50%水溶性樹脂(ビックケミー・ジャパン社製DISPERBYK−190)20部を加えて練肉し、近赤外線吸収色素の5%分散液を得た。この分散液用いて実施例2と同様にしてバーコードパターンを印刷し、所定の位置に近赤外吸収色素が付与されたインクジェット記録媒体Gを作製した。
【0041】
<比較例2>
800〜1000nmの波長域がない非導電性酸化物である粒子径50nmのコロイダルシリカを用いた以外は実施例1と同様にしてバーコードパターンを印字し、所定の位置に非導電性酸化物が付与されたインクジェット記録媒体Hを作製した。
【0042】
<評価>
(光学読み取り試験)
実施例1、2、4および6、比較例1〜2で得られた6種類のインクジェット記録媒体A、B、D、F、GおよびHに記録されたバーコードパターンを、光源として赤外発光ダイオード(SHARP、GL480)を用い、受光部としてCCDリニアセンサ(SONY、ILX503)を用いて読み取り試験を行った。その結果、比較例2のインクジェット記録媒体Hを除いた5種類のインクジェット記録媒体でバーコード情報を読み取ることができた。
【0043】
また、実施例3のインクジェット記録媒体Cおよび実施例5のインクジェット記録媒体Eでも同様に光源として赤外発光ダイオード(SHARP、GL480)を用い、受光部としてCCDリニアセンサ(SONY、ILX503)を用いて950nmの近赤外光の吸収を確認したところ、いずれのインクジェット記録媒体でも950nmの近赤外光の吸収を検出できた。
【0044】
(視認評価)
外観を損ねないためには、目視で視認されないことが好ましい。実施例1〜6および比較例1〜2で得られた8種類のインクジェット記録媒体を目視評価した結果、比較例1のインクジェット記録媒体Gでは青いバーコードパターンが確認された。他の7種類のインクジェット記録媒体では外観を損ねるものは目視では何も確認されなかった。
【0045】
実施例から明らかなように、本発明により、光学読み取り装置にて読み取りが可能な情報が、インクジェット記録媒体の外観を損ねることなく、予め該インクジェット記録媒体の所定の位置に付与されているインクジェット記録媒体を提供することができた。
【符号の説明】
【0046】
11 インクジェット記録媒体
12 白色顔料(1箇所のみ)
13 白色顔料(複数)
14 白色顔料(全面)
15 白色顔料(1箇所のみ。16の一つの上に重なる)
16 ロゴマーク(複数)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット記録媒体の所定の位置に800〜1000nmの波長域に吸収を持つ白色顔料が付与されていることを特徴とするインクジェット記録媒体。
【請求項2】
該白色顔料がアンチモン・錫複合酸化物であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−218736(P2011−218736A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92699(P2010−92699)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】