説明

インクジェット記録媒体

【課題】 インク吸収性、発色性、ブロンジングを良好としつつ、ローラーマーク及び屈曲割れの発生を抑制したインクジェット記録媒体を提供すること。
【解決手段】 2層のインク受容層のうち、支持体から近い側のインク受容層である下層の方が、支持体から遠い側のインク受容層である上層よりも、アルミナ及びアルミナ水和物の含有量に対するホウ酸及びホウ酸塩と水溶性ジルコニウム塩の合計含有量が多いことを特徴とするインクジェット記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録媒体は、シリカやアルミナ水和物といった顔料を、ポリビニルアルコール(PVA)等のバインダーで保持した多孔質構造のインク受容層を支持体上に有するものが一般的である。このようなインクジェット記録媒体には、インク吸収性や発色性、ブロンジング等を向上させることが求められている。
【0003】
特許文献1には、支持体上に微粒子シリカを含有するインク受容層を少なくとも2層有するインクジェット記録媒体が記載されている。この記録媒体は、支持体から離れたインク受容層が水溶性ジルコニウム化合物を含有し、かつインク受容層全体における水溶性アルミニウム化合物の分布は不均一で、支持体に近い部分により多く分布している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−110771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
記録媒体に連続して高速印字を行う場合には、記録媒体を上下のローラーで挟み込んで搬送させる際の搬送精度を高めることが求められている。搬送精度を向上するためには、紙を挟み込んだ時に変形しにくい硬いローラーを使用する必要がある。このような硬いローラーで搬送した場合、ローラーの押し跡(ローラーマーク)等によって記録媒体の品位が低下することがある。特に高湿環境下では、インク受容層が吸湿により膨潤して軟化するため、ローラーマークが発生しやすくなる。
【0006】
本発明者らは、特許文献1に記載されている記録媒体に関して、インクジェットプリンタで印刷を行い、ローラーマークについて検討を行った。この結果、高湿環境下でのローラーマークが発生することがあった。
【0007】
インク受容層中のバインダーを十分に架橋剤で架橋すると、ローラーマーク発生を抑制することができるが、単純に架橋剤を増加させると、インク受容層の曲げに対する柔軟性が低下する傾向にある。さらに、近年のインクジェットプリンタは小型化も進展しており、記録媒体の通紙経路の曲率が非常に高い搬送システムを採用する傾向がある。このため、インクジェットプリンタで印刷する際の通紙搬送過程で、記録媒体が非常に高い曲率で折り曲げられ、特に低湿環境下で印刷するとインク受容層にひび割れ(屈曲割れ)が発生することが課題としてある。
【0008】
従って、本発明は、インク吸収性、発色性、ブロンジングを良好としつつ、ローラーマーク及び屈曲割れの発生を抑制したインクジェット記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明は、支持体と、該支持体上に2層以上のインク受容層とを有するインクジェット記録媒体であって、該2層以上のインク受容層のうちの2層のインク受容層は、いずれも、アルミナ及びアルミナ水和物から選ばれる少なくとも1種と、ポリビニルアルコールと、ホウ酸及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種と、水溶性ジルコニウム化合物とを含有し、該2層のインク受容層のうち、支持体から近い側のインク受容層におけるアルミナ及びアルミナ水和物の合計含有量に対するホウ酸及びホウ酸塩と水溶性ジルコニウム塩の合計含有量が、支持体から遠い側のインク受容層におけるアルミナ及びアルミナ水和物の合計含有量に対するホウ酸及びホウ酸塩と水溶性ジルコニウム塩の合計含有量よりも多いことを特徴とするインクジェット記録媒体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インク吸収性、発色性、ブロンジングを良好としつつ、ローラーマーク及び屈曲割れの発生を抑制したインクジェット記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0012】
<インクジェット記録媒体>
本発明のインクジェット記録媒体は、支持体と、該支持体上に2層以上のインク受容層とを有する。2層以上のインク受容層のうちの2層のインク受容層は、支持体から近い側のインク受容層(下層)と、支持体から遠い側のインク受容層(上層)とからなる。これら2層のインク受容層は、乾燥塗工量が少なくとも0.1g/m以上の層のことである。上層の上には、例えば光沢調整等の目的で、本発明に規定されない層であって塗工量が0.1g/mより少ない最表面層を形成してもよい。最表面層は、気相法シリカ、コロイダルシリカ、その他無機微粒子、有機微粒子等の粒子及び親水性バインダー及びその他架橋剤、活性剤等からなる層であることが好ましい。下層は支持体上に直接設けてもよいが、例えば密着性やインク定着性等を向上させるため、下層と支持体との間に本発明に規定する層とは別の層(プレコート層)を設けてもよい。プレコート層は特に限定されるものではなく、公知の組成の層であってよい。
【0013】
後述するが、本発明の2層のインク受容層は、いずれも、アルミナ及びアルミナ水和物から選ばれる少なくとも1種と、ポリビニルアルコールと、ホウ酸及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種と、水溶性ジルコニウム化合物とを含有する。これに対し、この2層以外のインク受容層は、アルミナ及びアルミナ水和物から選ばれる少なくとも1種と、ポリビニルアルコールと、ホウ酸及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種と、水溶性ジルコニウム化合物との全てを含有しているものではない。また、本発明のインクジェット記録媒体は、支持体の両面にインク受容層を有していてもよい。
【0014】
<支持体>
本発明に用いる支持体は、例えば普通紙、コート紙等の吸水性支持体、合成紙、プラスチックフィルム、樹脂被覆紙等の耐水性支持体が挙げられる。特に基紙を樹脂被覆層で覆った樹脂被覆紙が好ましく用いられる。樹脂被覆紙の基紙は、特に制限はなく、一般に用いられている紙が使用できるが、例えば写真用支持体に用いられているような平滑な原紙が好ましい。原紙を構成するパルプとしては、天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種もしくは2種以上混合して用いられる。この原紙には一般に製紙で用いられているサイズ剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等の添加剤が配合されていてもよい。さらに、表面サイズ剤、表面紙力剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、染料、アンカー剤等が表面塗工されていてもよい。
【0015】
上記樹脂被覆紙の基紙の厚みは50μm以上が好ましい。50μm以上であれば、引っ張りや引き裂きに対する強度を十分に保ち、質感の低下も抑制することができる。尚、基紙の厚みに上限は特に無いが、好ましくは350μm以下である。350μm以下であれば、記録媒体の取扱いが不便になることを良好に防ぎ、コストが高くなることも良好に防ぐことができる。さらに、基紙としては、紙を抄造中または抄造後、カレンダー等にて圧力を付加して圧縮する等の表面処理をした表面平滑性の良いものが好ましいが、基紙の密度は0.6g/cm以上1.2g/cm以下であることが好ましい。1.2g/cm以下であれば、十分なクッション性を保つことができる。その他に、良好に搬送性することができる。また、0.6g/cm以上であれば、表面平滑性を高めることができる。より好ましくは0.7g/cm以上である。
【0016】
上記樹脂被覆紙の樹脂被覆層の厚さは、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは8μm以上40μm以下である。基本的には、樹脂被覆層の厚さは基紙の厚さに関係するカール性から適時決定されるが、5μm以上であれば、樹脂面からの水やガス浸透性の増大、折り曲げによるインク受容層のひび割れを良好に防ぐことができる。また、50μm以下であれば、耐カール性が低下することを良好に防ぐことができる。
【0017】
樹脂被覆層に用いられる樹脂は、低密度のポリエチレン(LDPE)及び高密度のポリエチレン(HDPE)のいずれかであることが好ましい。他の直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)やポリプロピレン等も使用することができる。
【0018】
インク受容層を形成する側(表面側)の樹脂被覆層は、ルチルまたはアナターゼ型の酸化チタン、蛍光増白剤等をポリエチレン中に添加して作製した、不透明度や白色度、色相を改良した樹脂被覆層が好ましい。インク受容層を形成する側(表面側)の樹脂被覆層中の酸化チタン含有量は、前記樹脂被覆層中の樹脂に対して、3質量%以上20質量%以下が好ましく、4質量%以上13質量%以下がより好ましい。
【0019】
樹脂被覆紙は、光沢紙としたものを用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるような絹目面を形成したものを用いることもできる。
【0020】
また、本発明に用いるプラスチックフィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂であるポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂である尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等から製造されたフィルムが挙げられる。本発明で用いるプラスチックフィルムの厚さは、50μm以上250μm以下が好ましい。
【0021】
<インク受容層>
本発明のインクジェット記録媒体が有する2層のインク受容層は、いずれも、アルミナ及びアルミナ水和物から選ばれる少なくとも1種と、ポリビニルアルコールと、ホウ酸及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種と、水溶性ジルコニム化合物とを含有する。
【0022】
本発明者らは、架橋剤として、ホウ酸及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種に加えて、水溶性ジルコニム化合物を第二の架橋剤として併用することでインク受容層のローラーマークのつきやすさを大きく改善できることを見出した。
【0023】
一方で、ホウ酸及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種と水溶性ジルコニウム化合物とを併用することで、近年の曲率の高い搬送経路を有するインクジェットプリンタで低湿環境下で印刷した場合にひび割れ(屈曲われ)が発生しやすいことも見出した。
【0024】
これらのホウ酸及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種と水溶性ジルコニウム化合物とを併用した際の課題を解決し、さらに併用によるローラーマーク抑制を達成すべく、本発明者らはさらに鋭意検討を行った。その結果、インク受容層を2層以上の多層構成とし、2層のインク受容層のうち、支持体から近い側のインク受容層におけるアルミナ及びアルミナ水和物に対するホウ酸及びホウ酸塩と水溶性ジルコニウム塩の合計含有量が、支持体から遠い側のインク受容層におけるアルミナ及びアルミナ水和物に対するホウ酸及びホウ酸塩と水溶性ジルコニウム塩の合計含有量よりも多い構成とすることで、これらの課題を解決できることを見出した。本発明においては、下層におけるアルミナ及びアルミナ水和物の合計含有量に対するホウ酸及びホウ酸塩と水溶性ジルコニウム塩の合計含有量と、上層におけるアルミナ及びアルミナ水和物の合計含有量に対するホウ酸及びホウ酸塩と水溶性ジルコニウム塩の合計含有量との差が0.2質量%以上3.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上1.7質量%以下であることがより好ましく、0.7質量%以上1.5質量%以下であることがより好ましい。
【0025】
尚、インク受容層は、インク受容層用塗工液の固化物であって、インク受容層用塗工液を支持体上に塗工、乾燥して作製することができる。そのため、例えば、下層に含まれるアルミナ及びアルミナ水和物に対する下層に含まれるホウ酸及びホウ酸塩と水溶性ジルコニウム塩の合計量と、下層を形成するためのインク受容層用塗工液に含まれるアルミナ及びアルミナ水和物の合計含有量に対する下層を形成するためのインク受容層用塗工液に含まれるホウ酸及びホウ酸塩と水溶性ジルコニウム塩の合計含有量とは同等である。前述した通り、本発明で規定する2層のインク受容層以外の最表面層、プレコート層等には、公知の組成の層を用いることができる。塗工液について、以下詳細に述べる。
【0026】
本発明に用いられるインク受容層用塗工液は、後述する解膠酸によりアルミナ及びアルミナ水和物から選ばれる少なくとも1種を解膠した分散液と、ポリビニルアルコールと、ホウ酸及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種と、水溶性ジルコニウム化合物とを含む。
【0027】
[インク受容層用塗工液]
(アルミナ及びアルミナ水和物)
本発明のインク受容層は、顔料としてアルミナ及びアルミナ水和物から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0028】
本発明で好ましく用いられるアルミナ水和物は下記一般式(1)により表される。
一般式(1) Al3−n(OH)2n・mH
(上式中、nは0、1、2または3のうちのいずれかを表わし、mは0以上10以下、好ましくは0以上5以下の数を表わす。mHOは、多くの場合結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相を表わすものであるため、mは整数でない値をとることができる。また、アルミナ水和物をか焼すると、mは0の値をとりうる。ただし、nとmは同時に0にはならない。)
【0029】
これらの中でも、X線回折法による分析でベーマイト構造、または非晶質を示すアルミナ水和物が好ましい。具体例としては、特開平7−232473号公報、特開平8−132731号公報、特開平9−66664号公報、特開平9−76628号公報等に記載されたアルミナ水和物を挙げることができる。本発明に用いるアルミナ水和物の形状の具体例としては、不定形のものあるいは、球状または板状等の形態を有しているものが挙げられ、これらのうちのいずれかを使用してもよいし、併用してもよい。特に一次粒子の数平均粒径が5nm以上50nm以下のアルミナ水和物が好ましく、アスペクト比が2以上の板状アルミナ水和物が好ましい。
【0030】
アスペクト比は、特公平5−16015号公報に記載された方法により求めることができる。すなわち、アスペクト比は、粒子の「厚さ」に対する「直径」の比で示される。ここで「直径」とは、アルミナ水和物を顕微鏡または電子顕微鏡で観察したときの粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径(円相当径)を示す。また、BET法により算出した比表面積が100m/g以上200m/g以下であるアルミナ水和物を用いることが好ましく、前記比表面積が125m/g以上175m/g以下のアルミナ水和物を用いるのがより好ましい。BET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。このBET法では、通常、吸着気体として窒素ガスが用いられ、吸着量を被吸着気体の圧力または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられる。この際、多分子吸着の等温線を表すものとして最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であって、BET式と呼ばれ比表面積決定に広く用いられている。上記BET法では、BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けることにより比表面積が得られる。BET法では、窒素吸着脱離法の測定において、ある相対圧力における吸着量の関係を数点測定し、最小二乗法によりそのプロットの傾き、切片を求めることで比表面積を導き出す。本発明では、相対圧力と吸着量の関係は10点測定して算出する。
【0031】
アルミナ水和物は、米国特許第4,242,271号明細書、同第4,202,870号明細書に記載されているような、アルミニウムアルコキシドを加水分解する方法やアルミン酸ナトリウムを加水分解する方法等の公知の方法で製造できる。また、特公昭57−447605号公報等に記載されている、アルミン酸ナトリウム等の水溶液に、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム等の水溶液を加えて中和する方法等の公知の方法でも製造することができる。本発明に用いる好適なアルミナ水和物の具体例としては、例えば以下のようなものがある。即ち、X線回折法による分析でベーマイト構造もしくは非晶質を示すアルミナ水和物であって、特に、特開平7−232473号公報、特開平8−132731号公報、特開平9−66664号公報、特開平9−76628号公報等に記載されているアルミナ水和物である。さらに、アルミナ水和物の具体例としては、市販のアルミナ水和物(商品名:DISPERAL HP14、サソール社製)を挙げることができる。
【0032】
アルミナとしては、例えばγ−アルミナ、α−アルミナ、δ−アルミナ、θ−アルミナ、χ−アルミナ等が挙げられる。これらの中でも発色性、インク吸収性の観点から、気相法で合成されたγ−アルミナが好ましい。γ−アルミナは、公知の方法で製造されたアルミナ水和物を400℃以上900℃以下の温度で加熱、焼成することによって得られる。
【0033】
以上のアルミナ水和物及びアルミナは混合して用いてもよい。即ち、アルミナ水和物及びアルミナを粉体状態で混合、分散して分散液とするほか、アルミナ水和物分散液とアルミナ分散液とを混合して用いてもよい。
【0034】
特に、アルミナ水和物と気相法で合成されたγ−アルミナを混合して本発明における上層に使用すると、インク吸収性が特に良好となるため好ましい。混合質量比は、(アルミナ水和物):(気相法で合成されたγ−アルミナ)=50:50〜95:5であることが好ましい。また、70:30〜90:10であることがより好ましい。本発明においては、本発明の効果を損なわない程度であれば、アルミナ及びアルミナ水和物から選ばれる少なくとも1種と共に、顔料として気相法シリカや水酸化マグネシウム等の他の顔料を併用してもよい。
【0035】
(分散液)
本発明に用いるアルミナ及びアルミナ水和物から選ばれる少なくとも1種は、解膠剤で解膠された水性分散液の状態でインク受容層塗工液に含まれることが好ましい。アルミナ水和物及びアルミナをそれぞれ単独に用いた場合、解膠剤で解膠された水性分散液の状態を、それぞれアルミナ水和物分散液及びアルミナ分散液とする。本発明に用いるアルミナ水和物及びアルミナから選ばれる少なくとも1種を含む分散液は、アルミナ水和物及びアルミナのうちの少なくとも1種と、解膠剤とを含有する。
【0036】
本発明では解膠剤として酸(解膠酸)を使用することが好ましい。具体的には、この解膠酸として、下記一般式(2)で表される1価のスルホン酸を使用することが、画像の耐オゾン性が特に良好な点や高湿環境下での画像にじみを良好に抑制できる点から好ましい。
一般式(2) R−SO
(一般式(2)において、Rは水素原子を表すか、炭素数1以上3以下の分岐もしくは非分岐のアルキル基またはアルケニル基を表す。ただしRは、オキソ基、ハロゲン原子、アルコキシ基(−OR’)及びアシル基(R’−CO−)のうちの少なくとも一つを置換基として有しても良く、R’は水素原子、メチル基またはエチル基を表す。)
一般式(2)で表されるスルホン酸の具体例としては、以下のようなものが挙げられる。メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、2−プロパンスルホン酸、クロロメタンスルホン酸、ジクロロメタンスルホン酸、トリクロロメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等である。これらは1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0037】
アルミナ水和物及びアルミナの両者を含む分散液は、例えばアルミナ水和物及びアルミナを粉体状態で混合し、酸と、分散媒と、必要に応じて上記添加剤とを加えて調製することができる。さらに、前記アルミナ水和物及びアルミナの両者を含む分散液は、アルミナ水和物分散液とアルミナ分散液とをそれぞれ別々に調製したのち、これらを混合して調製することもできる。
【0038】
塗工液のゾル固形分濃度は、それぞれ10質量%以上40質量%以下にすることが好ましい。上記ゾル固形分濃度が10質量%以上の場合は、塗工時にクラックが発生することを良好に防ぐことができる。上記ゾル固形分濃度が40質量%以下の場合は、ゾルが不安定で容易にゲル化することを良好に防ぎ、塗工性が低下することを良好に防ぐことができる。ゾルの粘度安定性の観点から、特に好ましい上記ゾル固形分濃度は、20質量%以上35質量%以下である。尚、塗工液のゾル固形分濃度とは、塗工液のゾル中に、各塗工液中の前記ゾルの全固形分の質量が占める割合を百分率で表したものである。
【0039】
本発明に用いるアルミナ水和物及びアルミナを解膠するための酸の使用量は、酸の種類、アルミナ水和物及びアルミナの粒径及び比表面積等による。特には、アルミナ水和物及びアルミナから選ばれる少なくとも1種を含む塗工液中に、それぞれアルミナ水和物及びアルミナの合計量1kgに対して100mmol以上500mmol以下の解膠酸が含まれることが好ましい。解膠酸の使用量が100mmol以上の場合、ゾル粘度が大幅に上昇することを良好に防ぐことができる。逆に、上記解膠酸の使用量が500mmol以下の場合では、ブロンジングやビーディングが発生することを良好に防ぎ、画像品質が低下することを良好に防ぐことができる。
【0040】
アルミナ水和物及びアルミナから選ばれる少なくとも1種を含む分散液中の粒子は、更に粉砕解膠機等を用いた物理的な手段で所望とする粒径にすることも可能である。粉砕解膠機としては、公知の様々な解膠機を使用することが可能である。例えば、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、湿式メディア型粉砕機(サンドミル、ボールミル)、連続式高速撹拌型解膠機、超音波解膠機等が挙げられる。
【0041】
アルミナ水和物及びアルミナの少なくとも1種を含む分散液には、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、界面活性剤、離型剤、浸透剤、着色顔料、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、耐水化剤、染料定着剤、硬化剤、耐候材料等を含んでもよい。また、アルミナ水和物及びアルミナのうちの少なくとも1種を含む分散液の分散媒は、水であることが好ましい。
【0042】
(ポリビニルアルコール)
本発明のインク受容層は、バインダーとしてポリビニルアルコールを含有する。中でも、インク吸収性の観点から、ポリビニルアルコールは完全にまたは部分的にケン化された、ポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールが好ましい。さらに耐水性、発色性の観点から、重量平均重合度2000以上、かつ、けん化度が85モル%以上98モル%以下であるポリビニルアルコールがより好ましい。さらに、重量平均重合度は、2000以上5000以下が特に好ましい。
【0043】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号公報に記載されているような、第1〜3級アミノ基または第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールが好ましい。
【0044】
ポリビニルアルコールは水溶液の状態で使用することが好ましい。ポリビニルアルコール含有水溶液のポリビニルアルコール乾燥固形分濃度は、3質量%以上20質量%以下が好ましい。この範囲とすることで、塗工液の濃度が過度に低下して乾燥速度が大幅に低下することを良好に防ぎ、逆に塗工液濃度の上昇により塗工液粘度が大幅に上昇して塗工面の平滑性が損なわれるのを特に抑制することができる。また、必要に応じてポリビニルアルコール以外のバインダーも併用できるが、発色性の観点から、その使用量はポリビニルアルコールの使用量に対して50質量%以下であることが好ましい。
【0045】
インク受容層の上層を形成するための塗工液(以下、上層形成用塗工液ともいう)に含まれるポリビニルアルコールの量は、乾燥時の塗布面割れやインク吸収性の観点から、固形分で上層形成用塗工液に含まれるアルミナ及びアルミナ水和物の総量に対し5.0質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以上13.0質量%以下であることがより好ましく、7.0質量%以上11.0質量%以下であることが特に好ましい。また、インク受容層の下層を形成するための塗工液(以下、下層形成用塗工液ともいう)に含まれるポリビニルアルコールの量は、乾燥時の塗布面割れやインク吸収性の観点から、固形分で下層形成用塗工液に含まれるアルミナ及びアルミナ水和物の総量に対し5.0質量%以上15質量%以下であることが好ましく、7.0質量%以上15.0質量%以下であることがより好ましく、8.0質量%以上13.0質量%以下であることが特に好ましい。
【0046】
(ホウ酸及びホウ酸塩)
本発明のインク受容層は、それぞれホウ酸及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種を含有する。インク受容層塗工液には、それぞれポリビニルアルコールとともにホウ酸及びホウ酸塩の少なくとも1種を添加することができるが、その添加順序については、どれが先でも良い。この際、架橋剤として使用できるホウ酸としては、オルトホウ酸(HBO)、メタホウ酸及び次ホウ酸等が挙げられる。ホウ酸塩としては例えば、オルトホウ酸塩、InBO、ScBO、YBO、LaBO、Mg(BO、Co(BO、二ホウ酸塩(例えば、Mg、Co)、メタホウ酸塩(例えば、LiBO、Ca(BO、NaBO、KBO)、四ホウ酸塩(例えば、Na・10HO)、五ホウ酸塩(例えば、KB・4HO、Ca11・7HO、CsB)等を挙げることができる。これらのホウ酸及びホウ酸塩の中でも、塗工液の経時安定性と、クラック発生の抑制効果の点からオルトホウ酸を用いることが好ましい。オルトホウ酸は水溶液の状態で使用することが好ましい。オルトホウ酸含有水溶液の乾燥固形分濃度は、0.5質量%以上8.0質量%以下が好ましい。この範囲にすることで、塗工液の濃度が低下して乾燥速度が大幅に低下することを良好に防ぎ、オルトホウ酸が析出することを特に抑制できる。ホウ酸及びホウ酸塩を添加する方法については、例えば以下のような方法がある。塗工液に直接ホウ酸及びホウ酸塩を添加してバッチ方式で塗布を行う方法、ホウ酸及びホウ酸塩を予めアルミナ水和物またはアルミナの分散液に添加しておき、塗布直前にバインダーと連続的に混合しながら塗布を行う方法、ホウ酸及びホウ酸塩を別の水性媒体に溶解しておき、塗布直前に塗工液へインライン添加する方法、更には、アルミナ水和物またはアルミナとバインダーを含む塗工液の塗布前後に、ホウ酸及びホウ酸塩を含む溶液を塗布する方法等が挙げられ、何れの方法も利用できる。上層形成用塗工液に含まれるホウ酸及びホウ酸塩の添加量は、塗工液の経時安定性と、クラック発生の抑制効果の観点から、上層形成用塗工液に含まれるアルミナ及びアルミナ水和物の総量に対して0.3質量%以上2.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上1.5質量%以下であることがより好ましい。また、下層形成用塗工液に含まれるホウ酸及びホウ酸塩の添加量は、塗工液の経時安定性と、クラック発生の抑制効果の観点から、下層形成用塗工液に含まれるアルミナ及びアルミナ水和物の総量に対して1.0質量%以上2.5質量%以下であることが好ましく、1.7質量%以上2.2質量%以下であることがより好ましい。また、下層形成用塗工液におけるアルミナ及びアルミナ水和物に対するホウ酸及びホウ酸塩の添加量は、上層形成用塗工液におけるアルミナ及びアルミナ水和物に対するホウ酸及びホウ酸塩の添加量よりも多いことが好ましい。
【0047】
また、上層用塗工液及び下層用塗工液に含まれるホウ酸及びホウ酸塩の量は、各々の塗工液に含まれるポリビニルアルコールの量に対して、塗工液の経時安定性と、クラック発生の抑制効果の観点から、各々2質量%以上40質量%以下が好ましい。より好ましくは、5質量%以上25質量%以下である。
【0048】
(水溶性ジルコニウム化合物)
本発明のインク受容層は、それぞれ水溶性ジルコニウム化合物を含有する。水溶性ジルコニウム化合物の例としては、例えば酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化ジルコニウム八水和物、酸塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム等が挙げられる。これらの水溶性ジルコニウム化合物の中でも、インク受容層塗工液のpHが極度に低下してホウ酸による架橋を阻害することが少ない、酢酸ジルコニウム(酢酸ジルコニル)、酸塩化ジルコニウムが特に好ましい。水溶性ジルコニウム化合物は1種類で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0049】
水溶性ジルコニウム化合物を添加する方法としては、以下のような方法がある。例えば、塗工液に直接水溶性ジルコニウム化合物を添加してバッチ方式で塗布を行う方法、水溶性ジルコニウム化合物を予めアルミナ水和物またはアルミナの分散液に添加しておき、塗布直前にバインダーと連続的に混合しながら塗工を行う方法である。また、水溶性ジルコニウム化合物を別の水性媒体に溶解しておき、塗工直前に塗工液へインライン添加する方法、更には、アルミナ水和物またはアルミナとバインダーを含む塗工液の塗工前後に、水溶性ジルコニウム化合物を含む溶液を塗工する方法等があり、何れの方法も利用できる。
【0050】
上層形成用塗工液及び下層形成用塗工液に含まれる水溶性ジルコニウム化合物の添加量は、各々の塗工液に含まれるポリビニルアルコールの量に対して、塗工液の経時安定性と、クラック発生の抑制効果の観点から、各々2質量%以上40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%25質量%位以下である。
【0051】
上層形成用塗工液に含まれる水溶性ジルコニウム化合物の添加量は、塗工液の経時安定性と、クラック発生の抑制効果の観点から、上層形成用塗工液に含まれるアルミナ及びアルミナ水和物の総量に対して0.05質量%以上1.00質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましい。下層形成用塗工液に含まれる水溶性ジルコニウム化合物の添加量は、塗工液の経時安定性と、クラック発生の抑制効果の観点から、下層形成用塗工液に含まれるアルミナ及びアルミナ水和物の総量に対して0.3質量%以上2.20質量%以下であることが好ましく、0.45質量%以上0.7質量%以下であることがより好ましい。また、下層形成用塗工液におけるアルミナ及びアルミナ水和物に対する水溶性ジルコニウム化合物の添加量は、上層形成用塗工液におけるアルミナ及びアルミナ水和物に対する水溶性ジルコニウム化合物の添加量よりも多いことが好ましい。
【0052】
また、上層形成用塗工液におけるアルミナ及びアルミナ水和物に対する水溶性ジルコニウム化合物の添加量は、上層形成用塗工液におけるアルミナ及びアルミナ水和物に対するホウ酸及びホウ酸塩の添加量の添加量よりも少ないことが好ましい。また、上層形成用塗工液におけるホウ酸及びホウ酸塩の添加量に対する水溶性ジルコニウム化合物の添加量の比は1:1〜10:1であることが好ましく、2:1〜8:1であることがより好ましい。
【0053】
下層形成用塗工液におけるアルミナ及びアルミナ水和物に対する水溶性ジルコニウム化合物の添加量は、下層形成用塗工液におけるアルミナ及びアルミナ水和物に対するホウ酸及びホウ酸塩の添加量の添加量よりも少ないことが好ましい。また、下層形成用塗工液におけるホウ酸及びホウ酸塩の添加量に対する水溶性ジルコニウム化合物の添加量の比は1:1〜8:1であることが好ましく、3:1〜:6:1であることがより好ましい。
【0054】
(添加剤)
上層用及び下層用インク受容層ならびにその塗工液には、それぞれ必要に応じて各種の添加剤を含有していてもよい。例えば、各種カチオン性樹脂等の定着剤、樹脂エマルジョン、多価金属塩等の凝集剤、界面活性剤、蛍光増白剤、増粘剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、浸透剤、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、防腐剤、pH調節剤等である。その添加量は適宜調整することができる。
【0055】
本発明に使用できるカチオン性樹脂の例としてはポリエチレンイミン系樹脂、ポリアミン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドエピクロルヒドリン系樹脂、ポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン系樹脂、ポリジアリルアミン系樹脂、ジシアンジアミド縮合物等が挙げられる。これらのカチオン性樹脂は、それぞれ単独で用いても良く、2種以上を併用して用いてもよい。
【0056】
カチオン性樹脂の中でもジアリルアミン系樹脂、特にジアリルアミン塩酸塩・二酸化イオウ共重合体樹脂は特に高湿環境下での画像滲みを抑制する効果が高いことから好ましい。尚、ジアリルアミン塩酸塩・二酸化イオウ共重合体樹脂は、インク中の染料凝集機能が高く、インク受容層表面に存在するとブロンジングを発生させる恐れが高いため、本発明における下層インク受容層にのみ添加することは好ましい態様である。下層インク受容層へのジアリルアミン塩酸塩・二酸化イオウ共重合体樹脂の添加量としては、下層インク受容層に含有するアルミナ水和物またはアルミナに対して質量比で0.1質量%以上2.0質量%以下、特に0.3質量%以上1.0質量%以下が好ましい。
【0057】
また、本発明に使用できる樹脂エマルジョンとしては、カチオン性ポリウレタン系エマルジョンが塗工液との混和性、インク吸収性の向上効果、高湿環境下での画像滲み抑制効果の観点から好ましい。特に、2つ以上の活性水素基を有する含硫黄化合物及びイソシアネート基を2つ以上有するポリイソシアネート化合物の少なくとも2種の化合物を反応させた硫黄の構成成分として有するカチオン性ポリウレタンが挙げられる。好ましくは硫黄の構成成分として有する高分子化合物が2つ以上の活性水素基を有する含硫黄化合物,ポリイソシアネート化合物及び親水性の官能基として2つ以上の活性水素基を有するポリエーテル化合物、及び2つ以上の活性水素基を有するアミン化合物を反応させたカチオン性ポリウレタンである。
【0058】
また、前記2つ以上の活性水素基を有する含硫黄化合物及びイソシアネート基を2つ以上有するポリイソシアネート化合物の少なくとも2種の化合物を反応させた高分子化合物は、バインダーとして機能する。この結果、ローラーマークの抑制及びニジミ抑制効果をもつ。ポリビニルアルコールと前記高分子化合物の総量は、インク吸収性及び色ムラの抑制の点で、塗工液に対して16.9質量%以下にすることが好ましい。
【0059】
インク受容層に吸収されたインク中の色材成分は、インク受容層層の表層付近に高い密度で定着することが確認されている。前記色材の染着位置は表層から20μmの範囲に定着する。前記範囲中でも表層から10μm以内の範囲で高濃度で定着する。このため、前記含硫黄化合物はインク受容層内に均一な状態で添加しても良いが、表層から20μmの範囲に添加することが好ましく、より好ましくは表層から10μmの範囲に添加することが好ましい。
【0060】
本発明のインク受容層の上層は、下層よりもアルミナ及びアルミナ水和物の含有量に対するホウ酸及びホウ酸塩と水溶性ジルコニウム塩の合計含有量が少ない。この結果、上層の高湿環境下での耐ローラーマーク性は下層よりも総架橋剤濃度が低いため劣る傾向にある。一方で、低湿環境下での耐屈曲割れ性は優れる傾向にある。このため上層と下層の塗工量バランスを取ることが必要であり、上層の固形分塗工量は5g/m以上20g/m以下であることが好ましい。さらには7g/m以上15g/m以下がより好ましい。
【0061】
本発明のインク受容層の下層は、上層よりもアルミナ及びアルミナ水和物の含有量に対するホウ酸及びホウ酸塩と水溶性ジルコニウム塩の合計含有量が多い。この結果、下層の高湿環境下での耐ローラーマーク性は上層よりも総架橋剤濃度が高いため優れる傾向にある。一方で、低湿環境下での耐屈曲割れ性は劣る傾向にある。このため上層と下層の塗工量バランスを取ることが必要であり、下層の固形分塗工量は15g/m以上40g/m以下が好ましい。さらには20g/m以上35g/m以下がより好ましい。
【0062】
本発明のインク受容層の形成方法としては、塗工液を公知の塗工方式で塗工すればよい。例えば、スロットダイ方式、スライドビード方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ロッドバーコーティング方式等がある。本発明に用いる2層以上のインク受容層の塗工液は、逐次塗工で塗工、乾燥する他、同時多層塗工によってもよい。特にスライドビードによる同時多層塗工は生産性が高く、好ましい方法である。塗工後の乾燥には、例えば、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤー等の熱風乾燥機、赤外線、加熱ドライヤー、マイクロ波等を利用した乾燥機等を、適宜選択して用いることができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。尚、「部」或いは「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0064】
(支持体の作製)
濾水度450mlCSF(Canadian Standarad Freeness)の、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)と、濾水度480mlCSFの、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)と、水とからなるパルプスラリー100質量部(LBKP:NBKPは質量基準で8:2の割合で混合)に、カチオン化澱粉0.60質量部、重質炭酸カルシウム10質量部、軽質炭酸カルシウム15質量部、アルキルケテンダイマー0.10質量部、カチオン性ポリアクリルアミド0.03質量部を外添した。このようにして、紙料を調整した。調製後、長網抄紙機で抄造し、3段のウエットプレスを行って、多筒式ドライヤーで乾燥した。その後、サイズプレス装置で、酸化澱粉水溶液を(酸化澱粉)の固形分で1.0g/mとなるように含浸し、乾燥後、マシンカレンダ−仕上げをし、坪量155g/mの基紙を得た。
【0065】
上記基紙の表面側上に、低密度ポリエチレン(70部)と高密度ポリエチレン(20部)と酸化チタン(10部)とからなる樹脂組成物を25g/m塗工して被覆樹脂層を形成した。この基紙の裏面側に高密度ポリエチレン(50部)と低密度ポリエチレン(50部)とからなる樹脂組成物を30g/m塗工して被覆樹脂層を形成し、樹脂被覆紙を得た。
【0066】
この樹脂被覆紙の表面側にコロナ放電した後、酸処理ゼラチンを固形分塗工量0.05g/mになるように易接着層を塗工し、樹脂被覆紙の裏面側にコロナ放電した。その後Tg(ガラス転移点)が約80℃のスチレン−アクリル酸エステル系ラテックスバインダーを約0.4g、帯電防止剤(カチオン性ポリマー)を0.1g及びコロイダルシリカ0.1gをマット剤として含有するバック層を裏面側に塗工し、支持体を作製した。
【0067】
〔記録媒体1の作製〕
(アルミナ水和物分散液の調製)
イオン交換水333部に対して、解膠酸として、メタンスルホン酸1.65部を添加した。このメタンスルホン酸水溶液をホモミキサー(特殊機化工業製、商品名:T.K.ホモミクサーMARKII2.5型)で3000rpmの回転条件で攪拌しながらアルミナ水和物(DISPERAL HP14、サソール社製)100部を少量ずつ添加した。添加終了後もそのまま30分間攪拌し、固形分濃度23%のアルミナ水和物分散液を調製した。
【0068】
(アルミナ分散液の調製)
イオン交換水333部に対して、解膠酸として、メタンスルホン酸1.65部を添加した。このメタンスルホン酸水溶液をホモミキサー(特殊機化工業製、商品名:T.K.ホモミクサーMARKII2.5型)で3000rpmの回転条件で攪拌した。拡販しながら、気相法γ―アルミナ(Aeroxide Alu C、Evonik社製)100部を少量ずつ添加した。添加終了後もそのまま30分間攪拌し、固形分濃度23%のアルミナ分散液を調製した。
【0069】
(カチオン性ポリウレタン系エマルジョンの調製)
以下のようにしてカチオン性ポリウレタンエマルジョンを製造した。
攪拌装置、温度計及び還流冷却管を備えた反応容器に、反応溶媒としてアセトン109gを投入した。撹拌下、3,6−ジチア−1,8−オクタンジオールを40.00g、メチルジエタノールアミンを6.79g溶解後、40℃まで昇温してイソホロンジイソシアネートを62.07g加えた。その後50℃まで昇温して錫系触媒を0.2g加え、さらに55℃まで昇温して撹拌しながら4時間反応を行った。反応終了後、反応溶液を室温まで冷却して85%蟻酸3.09gを加えて反応生成物をカチオン化した。さらに水446gを加えた後、減圧濃縮してアセトンを除去し、水で濃度調製することにより固形分20%のカチオン性エマルション1を製造した。得られたカチオン性エマルション1の平均粒子径をレーザー粒径解析装置PARIII(大塚電子製)により測定した結果、50nmであった。
【0070】
(気相法シリカ分散液の調製)
イオン交換水420部に対し、ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(商品名:シャロールDC902P、第一工業製薬製)5部を吸引型分散撹拌機Conti−TDSに添加した。更に、最大回転数で気相法シリカ(商品名:AEROSIL300、日本アエロジル製)を少量ずつ100部添加し、24時間分散を行い固形分濃度20%の気相法シリカ分散液を得た。
【0071】
次に、上記の調製した各液を用い、下記組成のインク受容層形成用塗工液(上層、下層用)を調整した。尚、塗工液組成の配合部数は顔料の総固形分が100部となるように設定した。
(上層塗工液A1の組成)
・アルミナ水和物分散液 348.00部
・アルミナ分散液 87.00部
・カチオン性ポリウレタンエマルジョン 15.00部
・ポリビニルアルコ−ル水溶液(PVA235、クラレ製、重量平均重合度3500、けん化度88モル%、固形分8質量%) 112.50部
・界面活性剤(サーフィノール465、日信化学工業製) 0.70部
・酢酸ジルコニル(ジルコゾールZA−30、第一希元素化学工業製、固形分30質量%) 0.67部
・オルトホウ酸水溶液(固形分5質量%) 23.00部
(下層塗工液B1の組成)
・アルミナ水和物分散液 435.00部
・ポリビニルアルコ−ル水溶液(PVA235、クラレ製、重量平均重合度3500、けん化度88モル%、固形分8質量%) 112.50部
・酢酸ジルコニル(ジルコゾールZA−30、第一希元素化学工業製、固形分30質量%) 1.67部
・オルトホウ酸水溶液(固形分5質量%) 40.00部
【0072】
(インク受容層の作製)
上述の2種の塗工液を、上記支持体の表面側に、下層インク受容層の固形分塗工量が25g/m、上層インク受容層の固形分塗工量が10g/mとなるように、上層1層、下層1層の合計2層を多層スライドホッパー型塗工装置にて塗工した。続いて塗工した塗工液を60℃で乾燥し、インク受容層を有する記録媒体1を得た。
【0073】
〔記録媒体2の作製〕
前記記録媒体1のインク受容層の作成において、下層インク受容層の固形分塗工量を32g/m、上層インク受容層の固形分塗工量を3g/mに変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体2を得た。
【0074】
〔記録媒体3の作製〕
前記記録媒体1のインク受容層の作成において、下層インク受容層の固形分塗工量を15g/m、上層インク受容層の固形分塗工量を20g/mに変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体3を得た。
【0075】
〔記録媒体4の作製〕
前記記録媒体1のインク受容層の作成において、下層インク受容層の固形分塗工量を15g/mに変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体4を得た。
【0076】
〔記録媒体5の作製〕
前記記録媒体1のインク受容層用の作成において、下層インク受容層の固形分塗工量を40g/mに変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体5を得た。
【0077】
〔記録媒体6の作製〕
前記記録媒体1の上層塗工液A1の組成において、酢酸ジルコニルの添加量を0.17部に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体6を得た。
【0078】
〔記録媒体7の作製〕
前記記録媒体1の上層塗工液A1の組成において、酢酸ジルコニルの添加量を2.67部に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体7を得た。
【0079】
〔記録媒体8の作製〕
前記記録媒体1の下層塗工液B1の組成において、酢酸ジルコニルの添加量を1.00部に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体8を得た。
【0080】
〔記録媒体9の作製〕
前記記録媒体1の下層塗工液B1の組成において、酢酸ジルコニルの添加量を6.00部に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体9を得た。
【0081】
〔記録媒体10の作製〕
前記記録媒体1の上層塗工液A1の組成において、オルトホウ酸水溶液の添加量を6.00部に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体10を得た。
【0082】
〔記録媒体11の作製〕
前記記録媒体1の上層塗工液A1の組成において、オルトホウ酸水溶液の添加量を40.00部に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体11を得た。
【0083】
〔記録媒体12の作製〕
前記記録媒体1の下層塗工液B1の組成において、オルトホウ酸水溶液の添加量を20.00部に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体12を得た。
【0084】
〔記録媒体13の作製〕
前記記録媒体1の下層塗工液B1の組成において、オルトホウ酸水溶液の添加量を50.00部に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体13を得た。
【0085】
〔記録媒体14の作製〕
前記記録媒体1の上層塗工液A1の組成において、酢酸ジルコニルの添加量を2.67部に、またオルトホウ酸水溶液の添加量を30.00部に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体14を得た。
【0086】
〔記録媒体15の作製〕
前記記録媒体1の上層塗工液A1の組成において、酢酸ジルコニルの添加量を0.17部に、またオルトホウ酸水溶液の添加量を6.00部に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体15を得た。
【0087】
〔記録媒体16の作製〕
前記記録媒体1の下層塗工液B1の組成において、酢酸ジルコニルの添加量を6.00部に、またオルトホウ酸水溶液の添加量を50.00部に変更したこと以外は記録媒体1と同様に記録媒体16を得た。
【0088】
〔記録媒体17の作製〕
前記記録媒体1の下層塗工液B1の組成において、酢酸ジルコニルの添加量を1.33部に、またオルトホウ酸水溶液の添加量を20.00部に変更したこと以外は記録媒体1と同様に記録媒体17を得た。
【0089】
〔記録媒体18の作製〕
前記記録媒体1の上層塗工液A1の組成において、ポリビニルアルコール水溶液の添加量を62.50部に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体18を得た。
【0090】
〔記録媒体19の作製〕
前記記録媒体1の上層塗工液A1の組成において、ポリビニルアルコール水溶液の添加量を162.50部に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体19を得た。
【0091】
〔記録媒体20の作製〕
前記記録媒体1の下層塗工液B1の組成において、ポリビニルアルコール水溶液の添加量を87.50部に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体20を得た。
【0092】
〔記録媒体21の作製〕
前記記録媒体1の下層塗工液B1の組成において、ポリビニルアルコール水溶液の添加量を187.50部に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体21を得た。
【0093】
〔記録媒体22の作製〕
前記記録媒体1の上層塗工液A1の組成において、酢酸ジルコニルの添加量を3.33部に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体22を得た。
【0094】
〔記録媒体23の作製〕
前記記録媒体1の上層塗工液A1の組成において、オルトホウ酸水溶液の添加量を40.00部に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体23を得た。
【0095】
〔記録媒体24の作製〕
前記記録媒体1の上層、下層塗工液A1、B1の組成において、酢酸ジルコニルを酸塩化ジルコニウム(第一希元素化学工業製、固形分33質量%)に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体24を得た。
【0096】
〔記録媒体25の作製〕
前記記録媒体1の上層、下層塗工液A1、B1の組成において、酢酸ジルコニルを硝酸ジルコニル(ジルコゾールZN、第一希元素化学工業製、固形分25質量%)に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体25を得た。
【0097】
〔記録媒体26の作製〕
前記記録媒体1の上層、下層塗工液A1、B1の組成において、ポリビニルアルコール水溶液を別のポリビニルアルコール水溶液(JM26、日本酢ビ・ポバール製、重量平均重合度2600、けん化度97モル%、固形分8質量%)に変更した。これ以外は記録媒体1と同様にして記録媒体26を得た。
【0098】
〔記録媒体27の作製〕
前記記録媒体1の上層、下層塗工液A1、B1の組成において、ポリビニルアルコール水溶液を別のポリビニルアルコール水溶液(PVA420、クラレ製、重量平均重合度2000、けん化度80モル%、固形分8質量%)に変更した。これ以外は記録媒体1と同様にして記録媒体27を得た。
【0099】
〔記録媒体28の作製〕
前記記録媒体1の下層塗工液B1の組成を以下のB2に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体28を得た。
【0100】
(下層塗工液B2の組成)
・アルミナ水和物分散液 435.00部
・ポリビニルアルコ−ル水溶液(PVA235、クラレ製、重量平均重合度3500、けん化度88モル%、固形分8質量%) 112.50部
・ジアリルアミン塩酸塩・二酸化イオウ共重合体樹脂(PAS−92、日東紡製、固形分20質量%) 2.50部
・酢酸ジルコニル(ジルコゾールZA−30、第一希元素化学工業製、固形分30質量%) 1.67部
・オルトホウ酸水溶液(固形分5質量%) 40.00部
【0101】
〔記録媒体29の作製〕
前記記録媒体1の上層塗工液A1の組成を以下のA2に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体29を得た。
【0102】
(上層塗工液A2の組成)
・アルミナ水和物分散液 348.00部
・アルミナ分散液 87.00部
・ポリビニルアルコ−ル水溶液(PVA235、クラレ製、重量平均重合度3500、けん化度88モル%、固形分8質量%) 112.50部
・界面活性剤(サーフィノール465、日信化学工業製) 0.70部
・酢酸ジルコニル(ジルコゾールZA−30、第一希元素化学工業製、固形分30質量%) 0.67部
・オルトホウ酸水溶液(固形分5質量%) 23.00部
【0103】
〔記録媒体30の作製〕
前記記録媒体1の上層塗工液A1の組成を以下のA3に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体30を得た。
【0104】
(上層塗工液A3の組成)
・アルミナ水和物分散液 435.00部
・カチオン性ポリウレタンエマルジョン 15.00部
・ポリビニルアルコ−ル水溶液(PVA235、クラレ製、重量平均重合度3500、けん化度88モル%、固形分8質量%) 112.50部
・界面活性剤(サーフィノール465、日信化学工業製) 0.70部
・酢酸ジルコニル(ジルコゾールZA−30、第一希元素化学工業製、固形分30質量%) 0.67部
・オルトホウ酸水溶液(固形分5質量%) 23.00部
〔記録媒体31の作製〕
前記記録媒体1の上層塗工液A1の組成において、酢酸ジルコニルの添加量を4.33部に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体31を得た。
【0105】
〔記録媒体32の作製〕
前記記録媒体1の下層塗工液B1の組成において、酢酸ジルコニルの添加量を7.33部に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体32を得た。
【0106】
〔記録媒体33の作製〕
前記記録媒体1の上層、下層塗工液A1、B1の組成において、酢酸ジルコニルを添加しなかったこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体33を得た。
【0107】
〔記録媒体34の作製〕
前記記録媒体1の上層塗工液A1の組成において、酢酸ジルコニルを添加しなかったこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体34を得た。
【0108】
〔記録媒体35の作製〕
前記記録媒体1の下層塗工液B1の組成において、酢酸ジルコニルを添加しなかったこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体35を得た。
【0109】
〔記録媒体36の作製〕
前記記録媒体1の上層、下層塗工液A1、B1の組成において、オルトホウ酸水溶液を添加しなかったこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体36を得た。
【0110】
〔記録媒体37の作製〕
前記記録媒体1の上層塗工液A1の組成において、オルトホウ酸水溶液を添加しなかったこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体37を得た。
【0111】
〔記録媒体38の作製〕
前記記録媒体1の下層塗工液B1の組成において、オルトホウ酸水溶液を添加しなかったこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体38を得た。
【0112】
〔記録媒体39の作製〕
前記記録媒体1の上層塗工液A1の組成において、酢酸ジルコニルの添加量を0.50部に、またオルトホウ酸水溶液の添加量を2.00部に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体39を得た。
【0113】
〔記録媒体40の作製〕
前記記録媒体1の下層塗工液B1の組成において、酢酸ジルコニルの添加量を0.20部に、またオルトホウ酸水溶液の添加量を1.15部に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体40を得た。
【0114】
〔記録媒体41の作製〕
前記記録媒体1の上層塗工液A1の組成において、酢酸ジルコニルの添加量を0.80部に、またオルトホウ酸水溶液の添加量を2.00部に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体41を得た。
【0115】
〔記録媒体42の作製〕
前記記録媒体1の下層用塗工液B1の組成において、酢酸ジルコニルの添加量を0.20部に、またオルトホウ酸水溶液の添加量を1.00部に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体42を得た。
【0116】
〔記録媒体43の作製〕
前記記録媒体1の上層塗工液A1の組成において、酢酸ジルコニルを添加せずにオルトホウ酸水溶液の添加量を1.35部に変更し、下層塗工液B1の組成において、酢酸ジルコニルを添加せずにオルトホウ酸水溶液の添加量を2.50部に変更した。これ以外は記録媒体1と同様にして記録媒体43を得た。
【0117】
〔記録媒体44の作製〕
前記記録媒体1の上層塗工液A1の組成を以下のA4に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体44を得た。
【0118】
(上層塗工液A4の組成)
・気相法シリカ分散液 500.00部
・カチオン性ポリウレタンエマルジョン 15.00部
・ポリビニルアルコ−ル水溶液(PVA235、クラレ製、重量平均重合度3500、けん化度88モル%、固形分8質量%) 250.00部
・界面活性剤(サーフィノール465、日信化学工業製) 0.70部
・酢酸ジルコニル(ジルコゾールZA−30、第一希元素化学工業製、固形分30質量%) 3.33部
・オルトホウ酸水溶液(固形分5質量%) 60.00部
【0119】
〔記録媒体45の作製〕
前記記録媒体1の下層塗工液B1の組成を以下のB3に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体45を得た。
【0120】
(下層塗工液B3の組成)
・気相法シリカ分散液 500.00部
・ポリビニルアルコ−ル水溶液(PVA235、クラレ製、重量平均重合度3500、けん化度88モル%、固形分8質量%) 250.00部
・酢酸ジルコニル(ジルコゾールZA−30、第一希元素化学工業製、固形分30質量%) 6.67部
・オルトホウ酸水溶液(固形分5質量%) 80.00部
【0121】
〔記録媒体46の作製〕
前記記録媒体1の上層塗工液A1の組成を前記のA4に、下層塗工液B1の組成を前記のB3に変更したこと以外は記録媒体1と同様にして記録媒体46を得た。
【0122】
〔評価方法〕
<耐クラック性>
上述の各記録媒体のインク受容層表面を観察し、クラックに関して以下の基準で評価を行った。
・ランク5:顕微鏡で観察してもクラックの発生は認められなかった。
・ランク4:肉眼で観察してもクラックの発生は確認されなかったが、顕微鏡で観察したところ、微小なクラックが一部に認められた。
・ランク3:肉眼で観察してもクラックの発生は確認されなかったが、顕微鏡で観察したところ微小なクラックが多数認められた。
・ランク2:肉眼で観察してクラックが一部に認められた。
・ランク1:肉眼で観察してクラックが多数認められた。
【0123】
<ブロンジング>
上述の各記録媒体を温度30℃、相対湿度80%の高湿環境下に6時間保存したのち、同環境下でインクジェットプリンタMP980(商品名、キヤノン製)にてシアンのベタ画像を形成した。そして、ブロンジング発生の有無を、それぞれ以下の評価基準に基づき目視評価した。
・ランク5:ブロンジングの発生は認められなかった。
・ランク4:僅かに反射光に赤みが認められた。
・ランク3:ある程度、反射光に赤みが認められた。
・ランク2:金属光沢調のブロンジングが認められた。
・ランク1:ブロンジングにより光沢が失われていた。
【0124】
<発色性>
上述の各記録媒体にiP4600(商品名、キヤノン製)を用いてブラック(Bk)インクにより、100%Dutyの画像を記録した。記録後、光学濃度を光学反射濃度計(X−Rite社製、530分光濃度計)を用いて測定し、下記の評価基準に基づきランクを決定した。
・ランク5:2.20以上
・ランク4:2.10以上2.20未満
・ランク3:2.00以上2.10未満
・ランク2:1.90以上2.00未満
・ランク1:1.90未満
【0125】
<インク吸収性>
上述の各記録媒体のインク吸収性をそれぞれ評価した。印字はiP4600(商品名、キヤノン製)の印字処理方法を改造した装置を用いた。印字パターンは、Green色の64階調のベタ(6.25%Duty刻みで64階調、0〜400%Duty)を用いた。具体的には、0%Dutyから400%Dutyまで、6.25%ずつDutyを変更した、Dutyの異なる64種類の1平方インチのベタ画像を形成した。各ベタ画像は、キャリッジ速度が25インチ/秒で、往復2回のパスで印字が完了する双方向印字で形成した。尚、400%Dutyとは、解像度が600dpiのインクジェットヘッドを用いて、1/600平方インチあたりに44ngのインクを付与することを意味する。インク吸収性とビーディングはほぼ相関性があるため、ビーディングを評価することによって、記録媒体のインク吸収性を評価した。ビ―ディングとは、表面に付与されたインク滴がインク受容層に吸収される前に、隣接するインク滴と接触して色ムラのある画像ができる現象を言う。評価は目視で行い、下記の評価基準に基づきランクを決定した。
・ランク4:300%Dutyでもビーディングが観察されなかった。
・ランク3:250%Duty以上300%Duty以下の範囲ではビーディングがやや観察されたが、250%Duty未満ではビーディングが観察されなかった。
・ランク2:200%Duty以上250%Duty以下の範囲ではビーディングがやや観察されたが、200%Duty未満ではビーディングが観察されなかった。
・ランク1:200%Duty未満でもビーディングが観察された。
【0126】
<耐ローラーマーク性>
上述の各記録媒体を温度30℃、相対湿度80%の高湿環境下に6時間保存したのち、同環境下で、インクジェットプリンタPIXUS MP990(商品名、キヤノン製)のプラチナモード(デフォルト設定)により、ブラックのベタ画像の印字を行なった。印字物表面の搬送ローラー通過部の傷を、以下の基準に基づいて目視で評価を行った。
・ランク5:ローラーマークが観察されなかった。
・ランク4:かすかなローラーマークが一本が観察された。
・ランク3:かすかなローラーマークが複数本が観察された。
・ランク2:かすかなローラーマークに加えて、明確なローラーマークも一本が観察された。
・ランク1:明確なローラーマークが複数本観察された。
【0127】
<耐屈曲割れ性>
上述の各記録媒体を温度15℃、相対湿度10%で24時間調湿した後、直径がそれぞれ6mm、12mm、16mm、20mmの円筒に巻き付け、インク吸収層のヒビ割れが生じる棒の直径を調べ、下記の基準で目視で評価を行った。
・ランク5:全ての円筒において折り割れが発生しなかった。
・ランク4:円筒直径が6mmの場合のみ折り割れが発生した。
・ランク3:円筒半径が6mm、12mmの場合のみ折り割れが発生した。
・ランク2:円筒半径が6mm、12mm、16mmの場合のみ折り割れが発生した。
・ランク1:円筒半径が6mm、12mm、16mm、20mmのいずれの場合においても折り割れが発生した。
【0128】
以上、インクジェット記録媒体の層構成及び評価結果を表1及び表2に示す。
【0129】
【表1】

【0130】
【表2】

【0131】
表1及び表2に示したように、記録媒体1〜32は、耐クラック性、ブロンジング、画像濃度、インク吸収性、耐ローラーマーク性、耐屈曲割れ性が総合的に良好であった。一方、記録媒体33〜46は、上記評価項目のいずれかが劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に2層以上のインク受容層とを有するインクジェット記録媒体であって、
該2層以上のインク受容層のうちの2層のインク受容層は、いずれも、アルミナ及びアルミナ水和物から選ばれる少なくとも1種と、ポリビニルアルコールと、ホウ酸及びホウ酸塩から選ばれる少なくとも1種と、水溶性ジルコニウム化合物とを含有し、
該2層のインク受容層のうち、支持体から近い側のインク受容層におけるアルミナ及びアルミナ水和物の合計含有量に対するホウ酸及びホウ酸塩と水溶性ジルコニウム塩の合計含有量が、支持体から遠い側のインク受容層におけるアルミナ及びアルミナ水和物の合計含有量に対するホウ酸及びホウ酸塩と水溶性ジルコニウム塩の合計含有量よりも多いことを特徴とするインクジェット記録媒体。
【請求項2】
前記水溶性ジルコニウム塩が、酢酸ジルコニルである請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項3】
前記支持体から近い側のインク受容層におけるアルミナ及びアルミナ水和物に対するホウ酸及びホウ酸塩と水溶性ジルコニウム塩の合計含有量と前記支持体から遠い側のインク受容層におけるアルミナ及びアルミナ水和物に対するホウ酸及びホウ酸塩と水溶性ジルコニウム塩の合計含有量との差が0.2質量%以上3.0質量%以下である請求項1又は2に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項4】
前記支持体から近い側のインク受容層におけるアルミナ及びアルミナ水和物に対するホウ酸及びホウ酸塩の量が1.0質量%以上2.5質量%以下であり、前記支持体から遠い側のインク受容層におけるアルミナ及びアルミナ水和物に対するホウ酸及びホウ酸塩の量が0.3質量%以上2.0質量%以下である請求項1乃至3の何れか1項に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項5】
前記支持体から近い側のインク受容層におけるアルミナ及びアルミナ水和物に対する水溶性ジルコニウム化合物の量が0.3質量%以上2.20質量%以下であり、前記支持体から遠い側のインク受容層におけるアルミナ及びアルミナ水和物に対する水溶性ジルコニウム化合物の量が0.05質量%以上1.00質量%以下である請求項1乃至4の何れか1項に記載のインクジェット記録媒体。
【請求項6】
前記支持体から近い側のインク受容層におけるアルミナ及びアルミナ水和物に対するポリビニルアルコールの量が7.0質量%以上15.0質量%以下であり、前記支持体から遠い側のインク受容層におけるアルミナ及びアルミナ水和物に対するポリビニルアルコールの量が5.0質量%以上13.0質量%以下である請求項1乃至5の何れか1項に記載のインクジェット記録媒体。

【公開番号】特開2011−240700(P2011−240700A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47893(P2011−47893)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】