説明

インクジェット記録方法

【課題】高い印画濃度を達成すると共に、耐湿性、耐光性及び耐オゾン性に優れたインクジェット記録方法の提供。
【解決手段】支持体上にバインダー樹脂及び2価の水溶性金属塩を含む下塗り層形成液を塗布する工程と、次に、少なくとも無機微粒子及びアセトアセチル変性ポリビニルアルコールを含む塗布膜形成液を塗布する工程と、塗布膜を形成すると同時に、または塗布膜が減率乾燥を示す前に、分子内に2個以上のアミノ基を有する水溶性多官能化合物を含む硬化溶液を塗布膜の上に付与する工程とを有する方法で製造されたインクジェット記録媒体上に、A−N=N−A−N=N−Aに示されるような染料等含有インクをインクジェット方式で付与して画像記録する工程を含むインクジェット記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、諸特性の向上を目的として、インクを受容する記録層が多孔質構造に構成された多種のインクジェット記録媒体が提案され、それを用いた方法が種々実用化されている。例えば、無機顔料粒子及び水溶性バインダーを含み、高い空隙率を有する記録層が支持体上に設けられたインクジェット記録媒体がある。このようなインクジェット記録媒体は、多孔質構造を有するためにインク受容性(速乾性)に優れており、高い光沢を有し、写真ライクな画像の記録が可能な材料として広く使用されている。
【0003】
無機顔料粒子及び水溶性バインダーを用いて形成された空隙率の高い記録層は、一般に粒子が小さく粒子の含有量も多いため、塗布液を塗布した後にその塗膜を乾燥させる過程で膜にひび割れが発生する場合がある。このひび割れは、特に乾燥時間を短縮するために例えば比較的高い温度で乾燥させる等の場合に生じやすく、塗布した後の乾燥途中、具体的には恒率乾燥から減率乾燥へ移行する時期に生じやすい。
【0004】
ひび割れを防止する方法としては、従来から塗布液中のバインダーの粘度を高める等の方法が知られているが、粘度上昇は塗布ムラ等の点で望ましくない。また、アセトアセチル変性ポリビニルアルコールなどのバインダーを架橋剤と併用することで、塗布後に乾燥させる際のひび割れを防止する技術がある。
【0005】
一方、写真ライクな画像の記録の点からは、記録後にインク(すなわち画像)の滲みが生じないことが重要であり、インクの滲みを防止する方法として、インクが着滴する記録層にカチオン性ポリマーや多価金属化合物等を含有させたり、水溶性セルロース誘導体を用いる技術が知られている。
【0006】
上記のひび割れやインク滲みに関連して、ケト基を有する樹脂バインダーを含有するインク受容層と架橋剤を含有するインク受容層とを隣接するように同時塗布して2層の塗布層からなるインク受容層が設けられたインクジェット用記録材料(例えば、特許文献1参照)や、結着剤、架橋剤及び水溶性セルロース誘導体を主成分とする下塗り層、無機微粒子とアセトアセチル変性ポリビニルアルコールを主成分とするインク受理層を順次積層したインクジェット記録シート(例えば、特許文献2参照)が開示されている。前者では、ひび割れがなく、耐水性等に優れ、後者では塗膜強度が高いとされている。
【0007】
また、硬膜剤及び分散剤を含む水性媒体に無機微粒子を分散させたもので、かつヒドロキシプロピルセルロース及び/又はカチオン性ウレタン樹脂を含有する色材受容層塗布液を塗布するインクジェット記録媒体の製造方法が開示されており(例えば、特許文献3参照)、無機微粒子の分散が良好になり、経時ニジミが生じないとされている。
さらに、着色剤として染料、特にフタロシアニン系染料を用いたときの画像のオゾン耐性を向上させるため、インク受容層中に水溶性金属塩を含ませたインクジェット記録媒体を用いた記録方法も開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−199671号公報
【特許文献2】特開2005−271441号公報
【特許文献3】特開2004−358774号公報
【特許文献4】特開2007−196396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール及びその架橋剤と水溶性金属塩とを用いてインク受容層を形成し、ひび割れ等の脆性を緩和し、例えば染料を含むインク(画像)の耐オゾン性を抑制しようとしても、実際にはインクを受容する層を形成するための塗布液の安定性が著しく悪化し、しかも、印字後の画像において耐湿性が低下する問題があった。
【0010】
本発明は、高い印画濃度を達成すると共に、耐湿性、耐光性、及び耐オゾン性に優れたインクジェット記録方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、以下の本発明により達成される。すなわち本発明は、
<1>
支持体上に、バインダー樹脂及び2価の水溶性金属塩を含む下塗り層形成液を塗布して下塗り層を形成する下塗り層形成工程と、少なくとも無機微粒子及びアセトアセチル変性ポリビニルアルコールを含む塗布膜形成液を、前記下塗り層の上に塗布して塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、前記塗布膜を形成すると同時に、または前記塗布膜の乾燥途中であって塗布膜が減率乾燥を示す前に、分子内に2個以上のアミノ基を有する水溶性多官能化合物を含む硬化溶液を前記塗布膜の上に付与する溶液付与工程と、を有するインクジェット記録媒体の製造方法で製造されたインクジェット記録媒体上に、下記一般式(M)で表される水溶性染料を含有するインク、下記一般式(Bk)で表される水溶性染料を含有するインク、下記一般式(Y)で表される水溶性染料を含有するインク、および下記一般式(C)で表される水溶性染料を含有するインクから選ばれる少なくとも1種を、インクジェット方式で付与して画像を記録する工程を含むインクジェット記録方法。
【0012】
【化1】



【0013】
[一般式(M)中、A31は5員複素環基を表す。B31およびB32は各々=CR31−、−CR32=を表すか、あるいはいずれか一方が窒素原子、他方が=CR31−または−CR32=を表す。R35、R36は各々独立して、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、複素環スルホニル基、またはスルファモイル基を表わす。
、R31、R32は各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アリールアミノ基、複素環アミノ基を含む)、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基、複素環スルホニルアミノ基、ニトロ基、アルキルもしくはアリールチオ基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、複素環スルホニル基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、複素環スルフィニル基、スルファモイル基、スルホン酸基、または複素環チオ基を表す。
31とR35、またはR35とR36は、互いに結合して5乃至6員環を形成しても良い。
なお、A31、R31、R32、R35、R36およびGの少なくとも1つは、スルホン酸基を有し、対イオンとしてLiまたは4級アンモニウムイオンを有する。

一般式(Bk)中、A、AおよびAは、各々独立に、芳香族基または複素環基を表す。AおよびAは1価の基であり、Aは2価の基である。

一般式(Y)中、Gはヘテロ環基を表し、R、X、Y、Z、およびQは置換基を表し、nは1〜3の整数を表す。nが1の時は、R、X、Y、Z、Q、およびGは1価の置換基を表す。nが2の時は、R、X、Y、Z、Q、およびGは1価または2価の置換基を表し、少なくとも1つは2価の置換基を表す。nが3の時は、R、X、Y、Z、Q、およびGは1価、2価または3価の置換基を表し、少なくとも2つが2価の置換基を表すかまたは少なくとも1つが3価の置換基を表す。

一般式(C)中、X、X、X及びXは、それぞれ独立に、−SO−Z、−SO−Z、−SONV、−CONV、−COZ、−CO−Z及びスルホ基のいずれかを表す。ここでZは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。
およびVは、同一または異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Z、V1およびV2で表される置換基はさらに置換基を有していてもよい。
、Y、Y及びYは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、ホスホリル基、アシル基、又はイオン性親水性基を表し、各々の基はさらに置換基を有していてもよい。
〜a及びb〜bは、それぞれX〜X及びY〜Yの置換基数を表す。そして、a〜aは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、すべてが同時に0になることはない。b〜bは、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
Mは、水素原子、金属原子若しくはその酸化物、水酸化物又はハロゲン化物である。
ただし、X、X、X、X、Y、Y、Y及びYの内の少なくとも1つは、イオン性親水性基であるか又はイオン性親水性基を置換基として有する基である]
【0014】
<2>
前記硬化溶液が、更に無機微粒子とポリビニルアルコール(アセトアセチル変性ポリビニルアルコールを除く)とを含むことを特徴とする上記<1>に記載のインクジェット記録方法。
<3>
前記塗布膜形成液が、少なくとも無機微粒子及びアセトアセチル変性ポリビニルアルコールを含む第1の溶液と、少なくとも無機微粒子及びポリビニルアルコール(アセトアセチル変性ポリビニルアルコールを除く)を含む第2の溶液とからなり、
前記塗布膜形成工程が、前記第1の溶液の上に前記第2の溶液が位置するように同時重層塗布し、塗布膜を重層形成する工程であることを特徴とする上記<1>または<2>に記載のインクジェット記録方法。
<4>
前記塗布膜形成液が水溶性セルロース誘導体を含み、前記塗布膜形成液が前記第1の溶液と前記第2の溶液とからなるときは、該第1の溶液及び該第2の溶液の少なくとも一方が前記水溶性セルロース誘導体を含むことを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
<5>
前記塗布膜形成液が、水溶性アルミニウム化合物を含むことを特徴とする上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
<6>
前記硬化溶液が、更に無機微粒子とポリビニルアルコール(アセトアセチル変性ポリビニルアルコールを除く)とを含み、前記第1の溶液と、前記第2の溶液と、前記硬化溶液とを、支持体に形成した下塗り層上に該下塗り層側から順に第1の溶液、第2の溶液、硬化溶液の位置関係になるように同時重層塗布し、下塗り層上に塗布膜を重層形成することを特徴とする上記<3>〜<5>のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば高い印画濃度を達成すると共に、耐湿性、耐光性、及び耐オゾン性に優れたインクジェット記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
≪インクジェット記録方法≫
本発明のインクジェット記録方法は、支持体上に、バインダー樹脂及び2価の水溶性金属塩を含む下塗り層形成液を塗布して下塗り層を形成する下塗り層形成工程と、少なくとも無機微粒子及びアセトアセチル変性ポリビニルアルコールを含む塗布膜形成液を、前記下塗り層の上に塗布して塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、前記塗布膜を形成すると同時に、または前記塗布膜の乾燥途中であって塗布膜が減率乾燥を示す前に、分子内に2個以上のアミノ基を有する水溶性多官能化合物を含む硬化溶液を前記塗布膜の上に付与する溶液付与工程と、を有するインクジェット記録媒体の製造方法で製造されたインクジェット記録媒体上に、下記一般式(M)で表される水溶性染料を含有するインク、下記一般式(Bk)で表される水溶性染料を含有するインク、下記一般式(Y)で表される水溶性染料を含有するインク、および下記一般式(C)で表される水溶性染料を含有するインクから選ばれる少なくとも1種を、インクジェット方式で付与して画像を記録する工程を含む。
【0017】
【化2】



【0018】
[一般式(M)中、A31は5員複素環基を表す。B31およびB32は各々=CR31−、−CR32=を表すか、あるいはいずれか一方が窒素原子、他方が=CR31−または−CR32=を表す。R35、R36は各々独立して、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、複素環スルホニル基、またはスルファモイル基を表わす。
、R31、R32は各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アリールアミノ基、複素環アミノ基を含む)、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基、複素環スルホニルアミノ基、ニトロ基、アルキルもしくはアリールチオ基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、複素環スルホニル基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、複素環スルフィニル基、スルファモイル基、スルホン酸基、または複素環チオ基を表す。
31とR35、またはR35とR36は、互いに結合して5乃至6員環を形成しても良い。
なお、A31、R31、R32、R35、R36およびGの少なくとも1つは、スルホン酸基を有し、対イオンとしてLiまたは4級アンモニウムイオンを有する。
【0019】
一般式(Bk)中、A、AおよびAは、各々独立に、芳香族基または複素環基を表す。AおよびAは1価の基であり、Aは2価の基である。
【0020】
一般式(Y)中、Gはヘテロ環基を表し、R、X、Y、Z、およびQは置換基を表し、nは1〜3の整数を表す。nが1の時は、R、X、Y、Z、Q、およびGは1価の置換基を表す。nが2の時は、R、X、Y、Z、Q、およびGは1価または2価の置換基を表し、少なくとも1つは2価の置換基を表す。nが3の時は、R、X、Y、Z、Q、およびGは1価、2価または3価の置換基を表し、少なくとも2つが2価の置換基を表すかまたは少なくとも1つが3価の置換基を表す。
【0021】
一般式(C)中、X、X、X及びXは、それぞれ独立に、−SO−Z、−SO−Z、−SONV、−CONV、−COZ、−CO−Z及びスルホ基のいずれかを表す。ここでZは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。
およびVは、同一または異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Z、V1およびV2で表される置換基はさらに置換基を有していてもよい。
、Y、Y及びYは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、ホスホリル基、アシル基、又はイオン性親水性基を表し、各々の基はさらに置換基を有していてもよい。
〜a及びb〜bは、それぞれX〜X及びY〜Yの置換基数を表す。そして、a〜aは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、すべてが同時に0になることはない。b〜bは、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
Mは、水素原子、金属原子若しくはその酸化物、水酸化物又はハロゲン化物である。
ただし、X、X、X、X、Y、Y、Y及びYの内の少なくとも1つは、イオン性親水性基であるか又はイオン性親水性基を置換基として有する基である。]
【0022】
本発明のインクジェット記録方法は、特定の構成を有するインクジェット記録媒体上に特定の水溶性染料を含むインクを用いて画像記録することにより、高い印画濃度を達成すると共に、耐湿性、耐光性、及び耐オゾン性に顕著に優れたインクジェット記録方法となる。
以下に、本発明におけるインクジェット記録媒体及びインクについて説明する。
【0023】
≪インクジェット記録媒体≫
本発明におけるインクジェット記録媒体は、支持体上に、バインダー樹脂及び2価の水溶性金属塩を含む下塗り層形成液を塗布して下塗り層を形成する下塗り層形成工程と、少なくとも無機微粒子及びアセトアセチル変性ポリビニルアルコールを含む塗布膜形成液を、前記下塗り層の上に塗布して塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、前記塗布膜を形成すると同時に、または前記塗布膜の乾燥途中であって塗布膜が減率乾燥を示す前に、分子内に2個以上のアミノ基を有する水溶性多官能化合物を含む硬化溶液を前記塗布膜の上に付与する溶液付与工程と、を有する製造方法により製造されたものである。
【0024】
本発明においては、塗布乾燥時のひび割れ抑制に効果があるアセトアセチル変性ポリビニルアルコール(以下、「アセトアセチル変性PVA」ということがある。)を含む塗膜形成液を用いてインク受容層を形成する場合に、アセトアセチル変性PVAと、その架橋剤である「分子内に2個以上のアミノ基を有する水溶性多官能化合物」とが直接接触しないようにインク受容層の形成が行なえるだけでなく、画像の耐オゾン性に有効である塩化マグネシウムに代表される2価の水溶性金属塩を下塗り層に含ませる構成としているので、特にアセトアセチル変性PVA及び2価の水溶性金属塩を併用した場合に大きく現れる増粘、及びこれに伴なって受ける塗布性の低下を効果的に低減することができ、かかる組成系における塗布液安定性が保たれ、塗布後(特に乾燥中)の脆性を改善してひび割れ等の塗膜故障の発生を防止できると共に、記録後の画像の耐湿性や耐オゾン性も向上させることができる。
【0025】
以下、本発明における各工程について詳述する。
<下塗り層形成工程>
本工程は、支持体上にバインダー樹脂及び2価の水溶性金属塩を含む下塗り層形成液を塗布して下塗り層を形成する工程である。
(下塗り層形成液)
−バインダー樹脂−
下塗り層形成に用いられる下塗り層形成液は、バインダー樹脂及び2価の水溶性金属塩を含むが、該バインダー樹脂としては溶剤として後述する水系溶媒が用いられることから親水性ポリマーが好ましく、例えば、ポリビニルアルコール、各種変性ポリビニルアルコール、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらの中でもゼラチン、ポリビニルアルコールが好ましく用いられ、PAGI法の粘度が10〜30mP、PAGI法のゼリー強度が15〜70gであるゼラチンが特に好ましく、このようなバインダー樹脂を用いることによりインク受容層の密着性が一段と向上する。
【0026】
−2価の水溶性金属塩−
前記2価の水溶性金属塩としては、例えば、水溶性マグネシウム塩、水溶性カルシウム塩、水溶性バリウム塩、水溶性亜鉛塩、水溶性ストロンチウム塩、水溶性チタン塩、水溶性ジルコニウム塩などが挙げられ、中でも水溶性マグネシウム塩、水溶性カルシウム塩が好ましい。
なお、前記「水溶性」とは、20℃の水で金属塩の飽和水溶液を調製した場合に、飽和溶液100g中に含まれる金属塩が1g以上になるものをいう。以下同様である。
【0027】
前記水溶性マグネシウム塩としては、特に限定はなく、公知のものを選択することができる。例えば、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、塩素酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、しゅう酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられ、中でも塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウムが好ましく、塩化マグネシウムが特に好ましい。
【0028】
前記水溶性カルシウム塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、酢酸カルシウム、しゅう酸カルシウム等が挙げられ、中でも塩化カルシ
ウム、硝酸カルシウムが好ましく、塩化カルシウムが特に好ましい。
これらの2価の水溶性金属塩は、一種単独で用いる以外に、2種以上を併用してもよい。
【0029】
2価の水溶性金属塩の下塗り層液中における含有量は、塗工後の下塗り層中における含有量が0.01〜1g/mの範囲となるようにすることが望ましく、0.02〜0.5g/mの範囲とすることがより好適である。層中の2価の水溶性金属塩の含有量を上記範囲とすることにより、記録画像の耐オゾン性を維持しつつにじみ耐性も確保することができる。
またこの場合、層中における2価の水溶性金属塩及び前記バインダー樹脂との質量比(金属塩/樹脂)は、1/20〜5/5の範囲とすることが望ましく、1/10〜4/5の範囲とすることがより望ましい。
【0030】
下塗り層形成液には、溶剤として水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を用いることができる。また、塗布に使用可能な有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。これらの点については、後述の塗膜形成液を調製する場合も同様である。
下塗り層形成液における固形分濃度は0.1〜20質量%の範囲とすることが望ましく、0.5〜10質量%の範囲とすることがより好適である。
【0031】
下塗り層形成液の塗布は、公知の塗布法を利用して行なうことができる。公知の塗布法としては、例えば、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等を用いた方法が挙げられる。
形成液の塗布量は1〜15ml/mの範囲とすることが望ましい。
【0032】
下塗り層形成液の塗布後の乾燥は、20〜100℃で10秒間〜5分間(特に20秒間〜3分間)行なわれることが望ましい。この乾燥時間は、当然塗布量により異なるが、前記範囲が適当である。
下塗り層の層厚としては、耐オゾン性向上、脆性と受像層の密着性の観点から、0.05〜5μmの範囲が好ましく、0.05〜2μmの範囲がより好ましい。
【0033】
(支持体)
本発明に用いられる支持体としては、例えば、プラスチック等の透明材料よりなる透明支持体、紙等の不透明材料で構成される不透明支持体のいずれをも使用できる。中でも、紙等の基体の両側に樹脂層が設けられた樹脂被覆紙が好適である。
【0034】
本発明では、樹脂被覆紙としてポリオレフィン樹脂被覆紙が特に好ましい。
前記ポリオレフィン樹脂被覆紙を構成する原紙は、特に制限はなく、一般に用いられている紙を使用できるが、より好ましくは例えば写真用支持体に用いられているような平滑な原紙が好ましい。原紙を構成するパルプとしては、天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種もしくは2種以上混合して用いることができる。
【0035】
原紙には、一般に製紙で用いられるサイズ剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等の添加剤を配合できる。さらに、表面サイズ剤、表面紙力剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、染料、アンカー剤等が表面塗布されていてもよい。
【0036】
原紙の厚みには、特に制限はないが、紙を抄造中又は抄造後にカレンダー等にて圧力を印加して圧縮する等した、表面平滑性の良いものが好ましい。また、坪量は、30〜250g/m2の範囲が好ましく、特に50〜250g/m2の範囲が好ましい。
【0037】
前記ポリオレフィン樹脂被覆紙のポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンのホモポリマー、又はエチレン−プロピレン共重合体などの2つ以上のオレフィンからなる共重合体及びこれらの混合物が挙げられる。ポリオレフィン樹脂は、各種の密度、溶融粘度指数(メルトインデックス)のものを1種単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0038】
また、ポリオレフィン樹脂被覆紙のポリオレフィン樹脂中には、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウムなどの白色顔料、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩、イルガノックス1010、イルガノックス1076などの酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セシリアンブルー、フタロシアニンブルーなどのブルーの顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガン紫などのマゼンタの顔料や染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤などの各種の添加剤を適宜組み合わせて加えるのが好ましい。
【0039】
前記ポリオレフィン樹脂被覆紙は、走行する原紙上に、加熱溶融したポリオレフィン樹脂を流延する、いわゆる押出コーティング法により製造することができ、その片面もしくは両面がポリオレフィン樹脂により被覆される。また、ポリオレフィン樹脂を原紙に被覆する前に、原紙表面にはコロナ放電処理、火炎処理などの活性化処理を施すことが好ましい。
【0040】
樹脂被覆紙は、インク受容層が塗布形成される面(これをオモテ面とする)にポリオレフィン樹脂を被覆して構成されるのが好ましいが、その反対側の裏面はポリオレフィン樹脂で必ずしも被覆される必要はない。但し、カール防止の点から、裏面もポリオレフィン樹脂で被覆されていることが好ましい。この場合、オモテ面あるいは必要に応じてオモテ/裏の両面にコロナ放電処理、火炎処理などの活性処理を施すことができる。
また、ポリオレフィン樹脂を被覆する場合の厚みは、5〜50μmの範囲が好ましく、特に10〜45μmの範囲が好ましい。
【0041】
ポリオレフィン樹脂被覆紙には、帯電防止性、搬送性、カール防止性などのため、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には、無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、親水性バインダー、ラテックス、硬化剤、顔料、界面活性剤などを適宜組み合わせて含有することができる。また、ポリオレフィン樹脂被覆紙の両側にインク受容層を設けてもよい。
【0042】
<塗布膜形成工程>
塗布膜形成工程では、前記支持体に形成した下塗り層上に、少なくとも無機微粒子及びアセトアセチル変性ポリビニルアルコールを含む塗布膜形成液を塗布して、塗布膜を形成する。この塗布膜は、記録媒体がインクジェット記録に用いられたときにインク受容層となるものであり、前記塗布膜形成液は「インク受容層用塗布液」という場合がある。
【0043】
本工程では、塗布膜の形成を1つの塗布膜形成液を用いて行ってもよいし、2つの塗布膜形成液(第1の溶液及び第2の溶液)を用いて行ってもよいが、後述するように、2つ塗布膜形成液を用いて行うことが、塗布液安定性及び塗布乾燥中の塗布故障の発生回避の観点から望ましい。
以下、各々について説明する。
【0044】
A.1つの塗布膜形成液で塗布膜形成を行う場合
この場合に用いられる1つの塗布膜形成液には、少なくとも無機微粒子及びアセトアセチル変性ポリビニルアルコールが含まれる。
(塗布膜形成液)
−無機微粒子−
無機微粒子としては、平均二次粒子径が500nm以下のものから選択されるのが好ましく、例えば、非晶質合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン等、公知の各種微粒子を用いることができる。特に、非晶質合成シリカ、アルミナ、又はアルミナ水和物が好ましい。
【0045】
非晶質合成シリカは、製造法によって湿式法シリカ、気相法シリカ、及びその他に大別することができる。湿式法シリカは、さらに製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。
沈降法シリカは、珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の工程を経て製品化される。沈降法シリカとしては、例えば、東ソー・シリカ(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシールとして市販されている。
ゲル法シリカは、珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造される。熟成中に微小粒子は溶解し、他の一次粒子同士を結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子が形成される。例えば、東ソー・シリカ(株)からニップゲルとして、グレースジャパン(株)からサイロイド、サイロジェットとして市販さている。ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、ケイ酸ソーダの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られ、例えば日産化学工業(株)からスノーテックスとして市販されている。
【0046】
気相法シリカは、湿式法シリカに対して乾式法シリカとも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作製される。具体的には、四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独又は四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは、日本アエロジル(株)からアエロジル、(株)トクヤマからQSタイプとして市販されている。
【0047】
気相法シリカは、カチオン性化合物の存在下で、該気相法シリカの平均二次粒子径が500nm以下、好ましくは10〜300nm、更に好ましくは20〜200nmに分散することにより好適に用いられる。分散方法としては、通常のプロペラ撹拌、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌等で気相法シリカと分散媒を予備混合し、次いでボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等で分散を行なうことが好ましい。なお、平均二次粒子径とは、得られたインク受容層を電子顕微鏡で観察することにより観察される分散された凝集粒子の粒子径の平均値を求めたものである。
【0048】
また、平均二次粒子径500nm以下に粉砕した湿式法シリカも好ましく使用できる。
湿式法シリカとしては、平均1次粒子径50nm以下、好ましくは3〜40nmであり、かつ平均凝集粒子径が5〜50μmである湿式法シリカが好ましく、これをカチオン性化合物の存在下で平均二次粒子径500nm以下、好ましくは20〜200nm程度まで微粉砕した湿式法シリカ微粒子を使用することが好ましい。
【0049】
通常の方法で製造された湿式法シリカは、1μm以上の平均凝集二次粒子径を有するため、これを微粉砕して使用することができる。粉砕方法としては、水性媒体中に分散したシリカを機械的に粉砕する湿式分散法が好ましい。この際、分散液の初期粘度上昇が抑制されて高濃度分散が可能となり、粉砕・分散効率が上昇してより微粒子に粉砕することができることから、吸油量が210ml/100g以下、平均凝集二次粒子径5μm以上の沈降法シリカが好ましい。高濃度分散液を用いることで、インクジェット記録媒体の生産性も向上する。吸油量は、JIS K−5101の記載に基づいて測定される。
【0050】
平均二次粒子径が500nm以下の湿式法シリカ微粒子を得る具体的な方法としては、まず、水中に湿式シリカとカチオン性化合物とを混合(添加はいずれが先であっても、また同時であってもよい)、又はそれぞれの分散液又は水溶液を混合し、これをのこぎり歯状ブレード型分散機、プロペラ羽根型分散機、又はローターステーター型分散機等の分散装置の少なくとも1つを用いて分散して予備分散液を得る。このとき、必要に応じて、更に適度の低沸点溶剤等を添加してもよい。予備分散物の固形分濃度は高い方が好ましいが、あまり高濃度になると分散不可能となるため、好ましい範囲としては15〜40質量%、より好ましくは20〜35質量%である。次に、より強い機械的エネルギーを与えることによって、平均二次粒子径が500nm以下の湿式法シリカ微粒子の分散液が得られる。機械的エネルギーを与える手段としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等の公知の手段を採用することができる。
【0051】
気相法シリカ及び湿式法シリカの分散には、カチオン性化合物を用いることができる。カチオン性化合物としては、カチオン性ポリマー又は水溶性金属化合物が挙げられる。
前記カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59−20696号、同昭59−33176号、同昭59−33177号、同昭59−155088号、同昭60−11389号、同昭60−49990号、同昭60−83882号、同昭60−109894号、同昭62−198493号、同昭63−49478号、同昭63−115780号、同昭63−280681号、同平1−40371号、同平6−234268号、同平7−125411号、同平10−193776号公報等に記載の1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましい。特に、カチオン性ポリマーとしてはジアリルアミン誘導体が好ましい。分散性及び分散液粘度の点で、これらのカチオンポリマーの分子量は、2000〜10万程度が好ましく、特に2000〜3万程度が好ましい。
【0052】
前記水溶性金属化合物としては、例えば水溶性の多価金属塩が挙げられ、中でもアルミニウムもしくは周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)の化合物が好ましい。特に好ましくは、水溶性アルミニウム化合物である。水溶性アルミニウム化合物としては、例えば無機塩として、塩化アルミニウム又はその水和物、硫酸アルミニウム又はその水和物、アンモニウムミョウバン等が挙げられる。さらに、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物も好ましい。塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物の詳細については後述する。
【0053】
アルミナとしては、酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ−アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶が好ましい。γ−アルミナは、一次粒子を10nm程度まで小さくすることが可能であるが、通常は数千から数万nmの二次粒子結晶を超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で平均二次粒子径を500nm以下、好ましくは20〜300nm程度まで粉砕したものが好ましい。
【0054】
アルミナ水和物は、Al・nHO(n=1〜3)で表され、nが1の場合がベーマイト構造のアルミナ水和物であり、nが1より大きく3以下の場合が擬ベーマイト構造のアルミナ水和物である。アルミニウムイソプロボキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。アルミナ水和物の平均二次粒子径は、500nm以下が好ましく、より好ましくは20〜300nmである。
【0055】
上記のアルミナ及びアルミナ水和物は、酢酸、乳酸、ギ酸、硝酸等の公知の分散剤によって分散された分散液の形態から用いることができる。
【0056】
また、無機微粒子の前記1つの塗布膜形成液中における含有量としては、空隙率の高い多孔質構造を形成し、インク吸収性を付与する点から、形成液中の固形分に対して、5〜15質量%の範囲が好ましく、7〜13質量%の範囲とすることがより好ましい。
【0057】
−アセトアセチル変性ポリビニルアルコール−
塗布膜形成液は、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(アセトアセチル変性PVA)の少なくとも1種を含有する。アセトアセチル変性PVAを含むことにより、最終的に形成されるインク受容層のひび割れや耐水性の低下を防止することができる。
【0058】
アセトアセチル変性PVAは、ポリビニルアルコールとジケテンの反応等の公知の方法によって製造することができる。アセトアセチル化度は、ひび割れ等の脆性低減、耐水性向上の点で、0.1〜20モル%の範囲が好ましく、更に1〜15モル%の範囲が好ましく、また、ケン化度は80モル%以上が好ましく、更に85モル%以上が好ましい。
アセトアセチル変性PVAの平均重合度としては、500〜5000の範囲が好ましく、特に1000〜4500の範囲が好ましい。
【0059】
アセトアセチル変性PVAの前記1つの塗布膜形成液中における含有量としては、無機微粒子に対して15〜30質量%の範囲が好ましく、15〜25質量%の範囲がより好ましい。アセトアセチル変性PVAの含有量が15質量%以上であると塗布後(特に乾燥中)のひび割れ等の塗膜故障が防止することができ、30質量%以下であるとインク吸収性の点で有利である。
【0060】
−上記以外の成分−
塗布膜形成液には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記の成分以外に、必要に応じて、カチオン性ポリマー等のカチオン性媒染剤、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、フッ素系、シリコーン系等の界面活性剤、高沸点有機溶剤などの他の成分を含有することができる。
なお、これらの成分を用いることが可能である点は、後述する第1の溶液、第2の溶液においても同様である。
【0061】
また、無機微粒子とアセトアセチル変性PVAを含む塗布膜形成液の調製は、無機微粒子(例えば気相法シリカ)水分散液を予め調製し、調製した水分散液をPVA含有水溶液に添加してもよいし、PVA含有水溶液を無機微粒子水分散液に添加してよいし、同時に混合してもよい。また、無機微粒子水分散液ではなく、粉体の無機微粒子を用いて上記のようにPVA含有水溶液に添加してもよい。
前記無機微粒子とアセトアセチル変性PVAとを混合した後、この混合液を分散機を用いて細粒化することで、平均粒子径50nm以下の水分散液を得ることができる。
なお、塗布膜形成液の調製に用いる溶媒は前述の通りである。
【0062】
塗布膜形成液の塗布も、公知の塗布法を利用して行なうことができる。公知の塗布法としては、例えば、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等を用いた方法が挙げられる。
【0063】
塗布膜形成液の塗布後の乾燥は、一般に、50〜180℃で0.5〜10分間(特に0.5〜5分間)行なわれる。この乾燥時間は、当然塗布量により異なるが、前記範囲が適当である。
また、1つの塗布膜形成液を用いて形成された塗布膜(インク受容層)の膜厚としては、インク吸収性、脆性及び塗布乾燥時のひび割れ改良の点で、15〜50μmの範囲が好ましく、20〜40μmの範囲がより好ましい。
【0064】
B.2つの塗布膜形成液で塗布膜形成を行う場合
この場合には、少なくとも無機微粒子及びアセトアセチル変性ポリビニルアルコールを含む第1の溶液(以下、「第1のインク受容層用塗布液」ともいう。)と、少なくとも無機微粒子及びポリビニルアルコール(アセトアセチル変性ポリビニルアルコールを除く)を含む第2の溶液(以下、「第2のインク受容層用塗布液」ともいう。)とを、前記第1の溶液の上に前記第2の溶液が位置するように同時重層塗布し、塗布膜を重層形成する。
これにより、塗布膜として支持体に近い側から順に、第1の溶液で形成される第1塗布膜(以下、単に「第1塗布膜」ということがある。)と、第2の溶液で形成される第2塗布膜(以下、単に「第2塗布膜」ということがある。)とが形成される。なお、以下、第1及び第2のインク受容層用塗布液を総じて単に「インク受容層用塗布液」ということがある。
【0065】
(第1の溶液)
第1の溶液は、少なくとも、無機微粒子と、アセトアセチル変性ポリビニルアルコールとを用いて調製され、更に後述するように水溶性セルロース誘導体を用いて調製することもできる。第1の溶液は、外部から付与されたインクを吸収、受容するインク受容層を構成する。また、第1の溶液は、必要に応じて、更に他の成分を用いることができる。
【0066】
第1の溶液に用いる前記無機微粒子、アセトアセチル変性PVAの詳細は、前述の通りである。
前記無機微粒子の第1の溶液中における含有量としては、空隙率の高い多孔質構造を形成し、インク吸収性を付与する点から、第1の溶液中の固形分に対して、5〜15質量%の範囲が好ましい。
また、前記アセトアセチル変性PVAの第1の溶液中における含有量としては、無機微粒子に対して、10〜30質量%の範囲が好ましく、15〜25質量%の範囲がより好ましい。アセトアセチル変性PVAの含有量は、10質量%以上であると塗布後(特に乾燥中)のひび割れ等の塗膜故障が防止され、記録後の滲み(特に耐水性)を抑制することができ、30質量%以下であるとインク吸収性の点で有利である。
【0067】
第1の溶液(第1のインク受容層用塗布液)の調製は、例えば、平均一次粒子径10nm以下のシリカ微粒子を水中に添加し(例:10〜15質量%)、これを高速回転湿式コロイドミル(例:クレアミックス(エム・テクニック(株)製))にて例えば10000rpm(好ましくは5000〜20000rpm)の高速回転の条件で20分間(好ましくは10〜30分間)分散させた後、アセトアセチル変性PVAを含む水溶液を加え、更に上記と同じ条件で分散を行なって水分散物とすることにより得られる。得られた水分散物は均一ゾルであり、これを下記の塗布法により支持体上に塗布することにより、三次元網目構造を有する多孔質層を得ることができる。
【0068】
また、無機微粒子とアセトアセチル変性PVAとを含む第1の溶液の調製は、無機微粒子(例えば気相法シリカ)水分散液を予め調製し、調製した水分散液をPVA含有水溶液に添加してもよいし、PVA含有水溶液を無機微粒子水分散液に添加してよいし、同時に混合してもよい。また、無機微粒子水分散液ではなく、粉体の無機微粒子を用いて上記のようにPVA含有水溶液に添加してもよい。
前記無機微粒子とアセトアセチル変性PVAとを混合した後、この混合液を分散機を用いて細粒化することで、平均粒子径50nm以下の水分散液を得ることができる。
【0069】
第1の溶液の調製に用いる溶媒は前述の通りである。これらの点については、後述の第2の溶液を調製する場合も同様である。
第1の溶液の塗布は、公知の塗布法を利用して行なうことができる。公知の塗布法としては、例えば、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等を用いた方法が挙げられる。
【0070】
インク受容層用塗布液の塗布後の乾燥は、一般に、50〜180℃で0.5〜10分間(特に0.5〜5分間)行なわれる。この乾燥時間は、当然塗布量により異なるが、前記範囲が適当である。
第1塗布膜の膜厚としては、脆性及び塗布乾燥時のひび割れ改良の点で、10〜35μmの範囲が好ましく、25〜32μmの範囲がより好ましい。
【0071】
(第2の溶液)
第2の溶液は、少なくとも、無機微粒子と、ポリビニルアルコール(アセトアセチル変性ポリビニルアルコールを除く)とを用いて調製され、更に後述するように水溶性セルロース誘導体を用いて調製することもできる。第2の溶液は、外部から付与されたインクを吸収、受容するインク受容層を構成する。また、第2の溶液は、必要に応じて、更に他の成分を用いることができる。
【0072】
第2の溶液は、無機微粒子の少なくとも1種を含有する。第2の溶液に使用可能な無機微粒子としては、前記第1の溶液の調製に使用可能な無機微粒子と同様のものを挙げることができる。中でも、シリカ粒子が好ましく、気相法シリカがより好ましい。
また、無機微粒子の第2の溶液中における含有量としては、空隙率の高い多孔質構造を形成し、インク吸収性を付与する点から、第2の溶液中の固形分に対して、5〜15質量%の範囲が好ましい。
【0073】
−ポリビニルアルコール−
第2の溶液は、アセトアセチル変性PVA以外のポリビニルアルコール(以下、単に「PVA」と略記することがある。)の少なくとも1種を含有する。アセトアセチル変性PVAを含むと、後述の溶液付与工程で硬化溶液が付与される際に、該硬化溶液中の「分子内に2個以上のアミノ基を有する水溶性多官能化合物」が、第2の溶液に含まれるアセトアセチル変性PVAと直接接触して増粘し、塗布性、すなわち塗布後の塗布面状が悪化してしまう。
【0074】
第2の溶液に含有されるポリビニルアルコール(PVA)は、後述の硬化溶液との接触による塗布時の増粘、ひいては塗布面状の悪化及び塗布故障を回避する点から、後述の「分子内に2個以上のアミノ基を有する水溶性多官能化合物」と反応し得るアセトアセチル基を含まないPVAであればよい。このようなPVAとしては、例えば、ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性PVA以外の各種変性ポリビニルアルコールが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコールが好ましく、特に平均重合度が1500以上であるポリビニルアルコールが好ましい。このようなPVAを用いると、インク受容層の塗膜強度が向上する。
【0075】
ポリビニルアルコール(アセトアセチル変性PVAを除く)の第2の溶液中における含有量としては、インク吸収性の点から、無機微粒子に対して、15〜30質量%の範囲が好ましく、15〜25質量%の範囲がより好ましい。
【0076】
第2の溶液(第2のインク受容層用塗布液)の調製は、上記の第1の溶液(第1のインク受容層用塗布液)を調製する場合と同様の方法により行なうことができる。
また、第2の溶液の塗布は、公知の塗布法を利用して行なうことができ、前記第1の溶液における場合と同様の塗布法を適用することができる。第2の溶液は、第1の溶液と同時重層塗布してもよく、この場合には例えばエクストルージョンダイコーター、カーテンフローコーター等を用いた塗布法が好ましい。
また、第2の溶液の塗布後の乾燥は、前記第1の溶液における場合と同様に行なえる。
【0077】
第2塗布膜の膜厚としては、塗布乾燥時のひび割れ、塗布故障抑制の点で、3〜15μmの範囲が好ましく、3〜10μmの範囲がより好ましい。
また、第1塗布膜と第2塗布膜との膜厚比(第2塗布膜/第1塗布膜)については、特に制限はないが、インク吸収性と塗布故障抑制の両立の観点からは、1/9〜4/6の範囲とするのが好ましく、1/9〜3/7の範囲とするのがより好ましい。
【0078】
−水溶性セルロース誘導体−
本発明におけるインクジェット記録媒体を構成するインク受容層の少なくとも1層は、水溶性セルロース誘導体を用いて構成されることが望ましい。水溶性セルロース誘導体を含むことにより、塗布時に良好な塗布面状が得られ、インク受容層に画像記録した後の滲みを抑制する(耐湿性向上)ことができる。
したがって、前記塗布膜形成液が、水溶性セルロース誘導体の少なくとも1種を含有してもよい。
【0079】
前記水溶性セルロース誘導体としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、アミノエチルセルロース等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0080】
上記の水溶性セルロース誘導体は、前記1つの塗布膜形成液、あるいは、第1の溶液及び前述の第2の溶液の少なくとも一方に含有されることが望ましいが、塗布液安定性、乾燥時の塗布故障抑制、及び画像濃度の点で、2つの塗布膜形成液を用いる場合における第1の溶液に含有されていることが好ましい。また、第1の溶液と共に前述の第2の溶液に含有されている態様も好ましい。
【0081】
水溶性セルロース誘導体の1つの塗布膜形成液あるいは第1の溶液中における含有量としては、溶液中の無機微粒子に対して、0.5〜5質量%の範囲が好ましく、0.5〜2質量%の範囲がより好ましい。水溶性セルロース誘導体の含有量は、0.5質量%以上であると記録後の滲みを抑制することができ、5質量%以下であると塗布液安定性の点で有利である。
【0082】
また、本発明のインクジェット記録媒体の製造方法においては、前記第1の溶液が水溶性セルロース誘導体を含まずあるいは含むと共に、第2の溶液が、水溶性セルロース誘導体の少なくとも1種を含有してもよい。第2の溶液、又は第1及び第2の溶液が水溶性セルロース誘導体を含むことにより、塗布後(特に乾燥中)のひび割れ等の塗膜故障が防止され、記録後の滲み(特に耐水性)が抑制される。
第2の溶液に使用可能な水溶性セルロース誘導体としては、前記第1の溶液の調製に使用可能なものと同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0083】
−水溶性アルミニウム化合物−
本発明におけるインクジェット記録媒体を構成するインク受容層の少なくとも1層は、水溶性アルミニウム化合物を用いて構成されることが望ましい。水溶性アルミニウム化合物を含むことにより、耐水性が向上し、例えば高湿下など水分の影響によるインク(画像)の滲みが抑制される。
したがって、前記塗布膜形成液が、水溶性アルミニウム化合物の少なくとも1種を含有してもよい。
【0084】
なお、塗布膜の形成に前記2つの塗布膜形成液を用いる場合には、前記第2の溶液が水溶性アルミニウム化合物を含有することが好ましい。水溶性アルミニウム化合物を含むことにより、耐水性が向上し、例えば高湿下など水分の影響によるインク(画像)の滲みが抑制される。
【0085】
水溶性アルミニウム化合物としては、例えば、無機塩として塩化アルミニウム又はその水和物、硫酸アルミニウム又はその水和物、アンモニウムミョウバン等が挙げられる。さらに、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が挙げられる。染料の耐オゾン性の観点で、塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が特に好ましい。
【0086】
前記塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記式(1)、式(2)、又は式(3)で表され、例えば、[Al(OH)153+、[Al(OH)204+、[Al13(OH)345+、[Al21(OH)603+、等の塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含む水溶性ポリ水酸化アルミニウムである。
[Al(OH)Cl6−n ・・・ 式(1)
[Al(OH)AlCl ・・・ 式(2)
Al(OH)Cl(3n−m) 〔0<m<3n〕 ・・・ 式(3)
【0087】
これらは、多木化学(株)より水処理剤としてポリ塩化アルミニウム(PAC)の名称で、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名称で、また、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名称で、また、他のメーカーからも同様の目的で上市されており、各種グレードのものを使用することができる。
【0088】
水溶性アルミニウム化合物の含有量としては、前記1つの塗布膜形成液に含まれる場合には、無機微粒子に対して1〜15質量%の範囲が好ましく、3〜10質量%の範囲がより好適である。また前記第2の溶液に含まれる場合には、無機微粒子に対して、2〜20質量%の範囲が好ましく、3〜15質量%の範囲がより好ましい。水溶性アルミニウム化合物の含有量が、前記下限値以上であると耐水性が向上し、記録後の環境(特に高湿下)の影響で生じる滲みを抑制することができ、前記上限値以下であると塗布液安定性の点で有利である。
【0089】
<溶液付与工程>
溶液付与工程は、前記塗布膜形成工程で塗布膜(好適な態様は第1塗布膜及び第2塗布膜、以下も同様)を形成すると同時に、又は塗布膜の乾燥途中であって該塗布膜が減率乾燥を示す前に、分子内に2個以上のアミノ基を有する水溶性多官能化合物(水溶性多官能架橋剤)を含む硬化溶液を塗布膜の上に付与する工程である。
【0090】
本工程を設けることで、水溶性多官能架橋剤がアセトアセチル変性PVAと直接接触することがなく、しかも塗布された塗布膜の減率乾燥状態が始まる前の恒率乾燥の状態において、塗布膜の膜強度が高められる。換言すると、良好な塗布面状が得られる塗布性が保たれ、塗布後(特に乾燥中)のひび割れ等の脆性が軽減され、耐インク(画像)滲み(特に耐水性)に優れたインク受容層が得られる。
【0091】
硬化溶液は、少なくとも水溶性多官能架橋剤を用いて調製され、少なくとも塗布膜(前記2つの塗布膜形成液を用いる場合には、少なくとも第1塗布膜)を架橋硬化する架橋剤溶液として用いられる。なお、硬化溶液は、必要に応じて、アセトアセチル変性PVA以外のバインダー成分の架橋剤や界面活性剤など他の成分を含んでもよい。硬化溶液は、例えば、水溶性多官能架橋剤と溶媒とを混合して調製される。溶媒としては、水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を用いることができる。有機溶媒の例については、前記下塗り形成液の調製に用いられるものを使用できる。
また、硬化溶液は、pHが7.1以上の塩基性溶液であるのが好ましく、架橋促進の点で、既述の塗布膜形成液のpHは3〜5の範囲が好ましい。
【0092】
本発明における溶液付与工程では、硬化溶液は、塗布膜の乾燥塗中であって、塗布膜が減率乾燥を示す前に付与することができる。付与後に乾燥させて、塗布膜が架橋硬化されてなるインク受容層が得られる。
【0093】
硬化溶液(架橋剤含有溶液)の付与は、塗布後の支持体を架橋剤溶液中への浸漬、架橋剤溶液の塗布やスプレー等による噴霧などの方法により行なうことができる。
また、前記「減率乾燥を示す前」とは、通常は塗布直後から数分の間であり、この間においては塗布膜中の溶剤の含有量が時間に比例して減少する現象を示す恒率乾燥を示す。このような恒率乾燥を示す期間については、化学工学便覧(707〜712頁、丸善株式会社発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
【0094】
インク受容層用塗布液の塗布膜を重層塗布により形成する場合は、既述の第1のインク受容層用塗布液及び第2のインク受容層用塗布液の塗布後に、塗布膜(第1塗布膜及び第2塗布膜)が恒率乾燥を示している間に、既述の硬化溶液に浸漬し、又は硬化溶液を塗布、噴霧等する。
【0095】
硬化溶液(架橋剤含有溶液)を塗布により付与する場合、塗布は、前記方法のほか、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレッドコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等を用いた公知の塗布法を利用できる。中でも、エクストリュージョンダイコーター、カーテンフローコーター、バーコーター等を用いて塗布膜にコーターが直接接触しない方法によるのが好ましい。
【0096】
硬化溶液の塗布膜上への付与量は、架橋剤換算(水溶性多官能架橋剤及びホウ酸等の他の架橋剤を含む。)で、0.01〜10g/mの範囲が一般的であり、0.05〜5g/mの範囲が好ましい。硬化溶液の塗布後は、塗布膜は一般に40〜180℃で0.5〜30分間加熱され、乾燥及び硬化が行なわれる。40〜150℃で1〜20分間で加熱することが好ましい。
【0097】
また、本発明における溶液付与工程では、硬化溶液は、既述のように塗布膜(好適な態様は第1塗布膜及び第2塗布膜)の形成、すなわち、塗布膜形成液(好適には第1の溶液及び第2の溶液)の塗布と同時に付与することができる。この場合、塗布膜形成液(インク受容層用塗布液)と硬化溶液(架橋剤含有溶液)とを、塗布膜形成液(好適には第1の溶液)が支持体に接触するようにして支持体上に同時塗布し、塗布膜形成液を硬化させる。このとき、インク受容層用塗布液と架橋剤含有溶液との同時重層塗布は、例えば、エクストルージョンダイコーター、カーテンフローコーターを用いた塗布方法により行なえる。また、同時重層塗布後の乾燥は、一般に40〜150℃で0.5〜10分間加熱することにより行なわれ、塗布膜は硬化される。更に40〜100℃で0.5〜5分間加熱することが好ましい。
【0098】
また、前記同時重層塗布を、例えば、エクストルージョンダイコーターで行なう場合、2種又は3種の溶液は、エクストルージョンダイコーター上で、すなわち支持体上に移る前に重層が形成される。そのため、本発明のインクジェット記録媒体の製造方法では、同時重層塗布する場合により良好な効果が得られる。
【0099】
塗布、乾燥後に得られたインク受容層は、例えば、スーパーカレンダ、グロスカレンダなどを用い、加熱、加圧下にロールニップ間を通すことにより、表面平滑性、透明性及び塗膜強度を向上させることが可能である。但し、このような処理は空隙率を低下させるため(即ち、インク吸収性が低下するため)、空隙率の低下が少ない条件を設定して行なうことが重要である。
支持体上に形成されたインク受容層の1層の厚みは、10〜35μmの範囲が好ましく、また、2層以上からなるインク受容層の全体の厚みは、10〜50μmの範囲が好ましい。
【0100】
ここで、前記硬化溶液を構成する水溶性多官能架橋剤等の各成分について説明する。
−水溶性多官能化合物−
本発明における硬化溶液は、分子内に2個以上のアミノ基を有する水溶性多官能化合物(水溶性多官能架橋剤)の少なくとも1種を含有する。この水溶性多官能架橋剤は、既述のアセトアセチル変性PVAを架橋する架橋剤として機能するものである。本発明においては、この水溶性多官能架橋剤を第3の溶液に含有し、インク受容層形成時にアセトアセチル変性PVAと直接接触しないようにするので、塗布後(特に乾燥中)のひび割れ等の塗膜故障が防止され、記録後の滲み(特に耐水性)を抑制することができる。
【0101】
分子内に2個以上のアミノ基を有する水溶性多官能化合物としては、例えば、アミン化合物、ヒドラジン化合物が挙げられる。
前記アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン、フェニレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリアミノプロパン、アミノ基を有する重合体(例えば、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン)、等が挙げられる。
【0102】
前記ヒドラジン化合物としては、例えば、カルボヒドラジド、チオカルボヒドラジド、エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジン、シュウ酸ジヒドラジド、プロピオン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、サリチル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、4,4’−オキシベンゼンスルホニルヒドラジド、ヒドラジド基を有するビニル重合体(例えば、アミノポリアクリルアミド)、等が挙げられる。
【0103】
水溶性多官能架橋剤の硬化溶液中における含有量は、塗布膜の膜厚やアセトアセチル変性PVAの量などで異なるが、好ましくは、塗布膜形成液(好適には第1の溶液)中のアセトアセチル変性PVAの量に対して、0.1〜5質量%の範囲であり、より好ましくは1〜3質量%の範囲である。水溶性多官能架橋剤の含有量は、0.1質量%以上であると塗布後(特に乾燥中)のひび割れ等の塗膜故障が防止され、記録後の滲み(特に耐水性)を抑制することができ、5質量%以下であると塗布液安定性の点で有利である。
【0104】
本発明における溶液付与工程は、前記の塗布膜形成工程での塗布膜形成液(好適には第1の溶液及び第2の溶液)の塗布と同時に、硬化溶液を塗布する同時重層塗布を行なって2層以上からなるインク受容層を形成する方法がより好ましい。
【0105】
この場合、溶液付与工程は、硬化溶液を用いて前記塗布膜上に水溶性多官能架橋剤を付与する際に、硬化溶液中に更に無機微粒子及びポリビニルアルコール(アセトアセチル変性PVAを除く)を含有させ、塗布膜上に更に硬化塗布膜が形成されるようにしてもよい。
具体的には、前記1つの塗布膜形成液を用いて塗布膜が形成される場合には、塗布膜上に更に硬化塗布膜が形成されることとなり、支持体上に2層構造に構成されたインク受容層が設けられたインクジェット記録媒体が得られる。また、前記2つの塗布膜形成液を用いて塗布膜が形成される場合には、前記第2塗布膜上に更に硬化塗布膜が形成されることとなり、支持体上に3層構造に構成されたインク受容層が設けられたインクジェット記録媒体が得られる。
【0106】
すなわち、塗布膜(好適には第2塗布膜)の架橋硬化反応を保ち、ひび割れ等の脆性やインク滲み(特に耐水性の低下)を回避する観点から、前記塗布膜形成液(好適には第1の溶液及び前記第2の溶液)と共に、少なくとも水溶性多官能架橋剤と無機微粒子とポリビニルアルコール(アセトアセチル変性PVAを除く)とを含有する硬化溶液を、支持体上に同時重層塗布することが好ましい。また、前記アセトアセチル変性ポリビニルアルコールと併用する水溶性セルロース誘導体は、塗布膜が前記2層の場合、第1塗布膜、第2塗布膜及び硬化塗布膜の3層から選ばれる1層又は2層以上に含有させることができるが、アセトアセチル変性ポリビニルアルコールとの混合状態の際に水溶性多官能架橋剤が共存しない組成を形成することが好ましいことから、少なくとも第1の溶液に含有させることが好ましい。
【0107】
具体的には、少なくとも無機微粒子とアセトアセチル変性ポリビニルアルコールとを含む第1の溶液、少なくとも無機微粒子とポリビニルアルコール(アセトアセチル変性ポリビニルアルコールを除く)とを含む第2の溶液、及び少なくとも分子内に2個以上のアミノ基を有する水溶性多官能化合物と無機微粒子とポリビニルアルコール(アセトアセチル変性ポリビニルアルコールを除く)とを含む硬化溶液を、支持体上に該支持体側から順に第1の溶液、第2の溶液、硬化溶液の位置関係になるように同時重層塗布し、支持体上に第1塗布膜、第2塗布膜、及び硬化塗布膜を重層形成する工程を設け、第1の溶液、第2の溶液、及び硬化溶液の少なくとも1つに更に水溶性セルロース誘導体を含ませて構成された方法とすることができる。
【0108】
このとき、硬化溶液は、少なくとも水溶性多官能架橋剤と無機微粒子とポリビニルアルコール(アセトアセチル変性PVAを除く)とを用いて調製され、必要に応じて更に他の成分を用いることができる。無機微粒子及びポリビニルアルコールを含む硬化溶液(第3のインク受容層用塗布液)の調製は、上記の第1の溶液(第1のインク受容層用塗布液)を調製する場合と同様の方法により行なうことができる。
【0109】
硬化溶液を構成する無機微粒子、ポリビニルアルコール(アセトアセチル変性ポリビニルアルコールを除く)、及び他の成分の詳細については、既述の第1の溶液及び第2の溶液における場合と同様であり、好ましい態様も同様である。
硬化溶液中における無機微粒子(好ましくはシリカ粒子(特に気相法シリカ))の含有量としては、インク吸収性及び塗布液安定性の点から、硬化溶液中の固形分に対して、5〜15質量%の範囲が好ましく、7〜13質量%の範囲がより好ましい。
硬化溶液中におけるポリビニルアルコール(アセトアセチル変性PVAを除く)の含有量としては、インク吸収性及び塗布液安定性の点の点から、無機微粒子に対して、15〜30質量%の範囲が好ましく、15〜25質量%の範囲がより好ましい。
【0110】
重層塗布する場合の第1塗布膜、第2塗布膜、及び第3塗布膜の膜厚については、特に制限はないが、第3塗布膜/第2塗布膜/第1塗布膜の膜厚比は、1/1/7〜4/1/5が塗布故障及び塗布後の脆性の点で好ましい。
【0111】
≪インク≫
本発明のインクジェット記録方法は、前記インクジェット記録媒体上に、下記一般式(M)で表される水溶性染料を含有するインク(以下、マゼンタインクともいう。)、下記一般式(Bk)で表される水溶性染料を含有するインク(以下、ブラックインクともいう。)、下記一般式(Y)で表される水溶性染料を含有するインク(以下、イエローインクともいう。)、および下記一般式(C)で表される水溶性染料を含有するインク(以下、シアンインクともいう。)から選ばれる少なくとも1種を、インクジェット方式で付与して画像を形成する工程を含む。
【0112】
前記特定の構成を有するインクジェット記録媒体と特定構造の水性染料を含むインクとを組合せることにより、記録された画像の濃度、耐湿性、耐光性、及び耐オゾン性効果をより良好なレベルで実現することができることを見出した。
尚、本発明において水溶性染料とは、20℃において水に1質量%以上溶解する染料を意味する。
【0113】
【化3】



【0114】
一般式(M)中、A31は5員複素環基を表す。
31およびB32は各々=CR31−、−CR32=を表すか、あるいはいずれか一方が窒素原子、他方が=CR31−または−CR32=を表す。R35、R36は各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、複素環スルホニル基、またはスルファモイル基を表わし、各基は更に置換基を有していても良い。
、R31、R32は各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アリールアミノ基、複素環アミノ基を含む)、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基、複素環スルホニルアミノ基、ニトロ基、アルキル及びアリールチオ基、アルキル及びアリールスルホニル基、複素環スルホニル基、アルキル及びアリールスルフィニル基、複素環スルフィニル基、スルファモイル基、スルホン酸基、または複素環チオ基を表し、各基は更に置換されていても良い。
31とR35、あるいはR35とR36が結合して5乃至6員環を形成しても良い。
なお、A31、R31、R32、R35、R36およびGの少なくとも1つは、スルホン酸基を有し、対イオンとしてLiまたは4級アンモニウムイオンを有する。
【0115】
一般式(M)で表される水溶性染料の具体例としては、国際公開特許2002/83795号(35〜55頁)、同2002−83662号(27〜42頁)、特開2004−149560号(段落番号[0046]〜[0059])、同2004−149561号(段落番号[0047]〜[0060])に記載されたものの中で、水溶性基がスルホン酸基のみであり、対イオンがLiイオンまたは4級アンモニウムイオンのものが挙げられる。特に好ましい一般式(M)で表される水溶性染料の具体例を遊離の酸の構造で以下に示すが、塩として用いることが好ましい。
【0116】
【化4】

【0117】
本発明において一般式(M)で表される水溶性染料(複素環アゾ染料)のマゼンタインク中での含有量は、0.2〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。
本発明におけるマゼンタインクは、一般式(M)で表される水溶性染料以外の染料を含んでいてもよいが、一般式(M)で表される水溶性染料の全染料に対する含有率は、25質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。
【0118】
【化5】

【0119】
一般式(Bk)中、A、AおよびAは、各々独立に、置換されていてもよい芳香族基または置換されていてもよい複素環基を表す。AおよびAは1価の基であり、Aは2価の基である。A、AおよびAの少なくとも1つは複素環基であることが好ましい。
【0120】
本発明における一般式(Bk)で表される水溶性染料としては、特開2007−70573号公報の段落番号[0041]〜[0059]に記載された水溶性染料を挙げることができ、好適な範囲も同様である。
【0121】
本発明において、一般式(Bk)で表される化合物のブラックインク中での含有量は、0.2〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。
本発明におけるブラックインクは、一般式(Bk)で表される水溶性染料以外の染料を含んでいてもよいが、一般式(Bk)で表される水溶性染料の全染料に対する含有率は、25質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。
【0122】
尚、本発明における一般式(Bk)で表される水溶性染料を含有するインクは、水溶性短波染料を更に含有することが好ましい。
水溶性短波染料の具体例としては特開2007−70573号公報の段落番号[0061]〜[0072]に記載された水性染料を挙げることができ、好ましい態様についても同様である。
【0123】
【化6】

【0124】
式中、Gはヘテロ環基を表し、R、X、Y、Z、およびQは置換基を表し、nは1〜3の整数を表す。nが1の時は、R、X、Y、Z、Q、およびGは1価の置換基を表す。nが2の時は、R、X、Y、Z、Q、およびGは1価または2価の置換基を表し、少なくとも1つは2価の置換基を表す。nが3の時は、R、X、Y、Z、Q、およびGは1価、2価または3価の置換基を表し、少なくとも2つが2価の置換基を表すかまたは少なくとも1つが3価の置換基を表す。
【0125】
一般式(Y)で表される水溶性染料はイエロー染料として機能する。
一般式(Y)中、Gの好ましい置換基例は、5〜8員ヘテロ環基が好ましく、その中でも5又は6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環基が好ましく、それらは更に縮環していてもよい。更に好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。
【0126】
前記Gで表されるヘテロ環基の例には、置換位置を限定しないで例示すると、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾール、イソオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリン、スルホランに由来するヘテロ環基などが挙げられる。
前記ヘテロ環基が、更に置換基を有することが可能な基であるときは、置換基を更に有してもよい。
【0127】
一般式(Y)中、Q、R、X、Y及びZの好ましい置換基例を詳細に説明する。
Q、R、X、Y及びZが1価の基を示す場合、1価の基としては、水素原子、または1価の置換基を表す。1価の置換基を更に詳しく説明する。この1価の置換基の例としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基)、アシルアミノ基(アミド基)、アミノカルボニルアミノ基(ウレイド基)、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基、アゾ基、またはイミド基を挙げることができ、各々はさらに置換基を有していてもよい。
【0128】
中でも特に好ましいものは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アルコキシ基、アミド基、ウレイド基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、またはアルコキシカルボニル基であり、特に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、またはヘテロ環基が好ましく、水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、またはアルキルスルホニル基が最も好ましい。
【0129】
一般式(Y)中、nの好ましい例は、1または2であり、特に2が好ましい。
【0130】
一般式(Y)中、Xの好ましい置換基例は電子吸引性基である。特に、ハメットの置換基定数σp値が0.20以上の電子吸引性基であり、より好ましくは、σp値が0.30以上の電子吸引性基であることが好ましい。上限としては1.0以下の電子吸引性基である。
【0131】
σp値が0.20以上の電子吸引性基であるXの具体例としては、アシル基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルホスホノ基、ジアリールホスホノ基、ジアリールホスフィニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、アシルチオ基、スルファモイル基、チオシアネート基、チオカルボニル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン化アリールオキシ基、ハロゲン化アルキルアミノ基、ハロゲン化アルキルチオ基、σp値が0.20以上の他の電子吸引性基で置換されたアリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アゾ基、又はセレノシアネート基が挙げられる。
【0132】
Xの好ましいものとしては、炭素数2〜12のアシル基、炭素数2〜12のアシルオキシ基、炭素数1〜12のカルバモイル基、炭素数2〜12のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7〜18のアリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1〜12のアルキルスルフイニル基、炭素数6〜18のアリールスルフイニル基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基、炭素数0〜12のスルファモイル基、炭素数1〜12のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜12のハロゲン化アルキルオキシ基、炭素数1〜12のハロゲン化アルキルチオ基、炭素数7〜18のハロゲン化アリールオキシ基、2つ以上のσp0.20以上の他の電子吸引性基で置換された炭素数7〜18のアリール基、及び窒素原子、酸素原子、またはイオウ原子を有する5〜8員環で炭素数1〜18のヘテロ環基を挙げることができる。
【0133】
更に好ましくは、シアノ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基、または炭素数0〜12のスルファモイル基である。
Xとして特に好ましいものは、シアノ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、または炭素数0〜12のスルファモイル基であり、最も好ましいものは、シアノ基、または炭素数1〜12のアルキルスルホニル基である。
【0134】
一般式(Y)中、Zの好ましい置換基例は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロ環基を示す。
【0135】
Zが表す詳細なヘテロ置換基例は、前述のGで表されるヘテロ環基の例で説明した対応する置換基例と同義であり、好ましい例も同じである。
Zが表す特に好ましい置換基は置換アリール基、または置換へテロ環基であり、その中でも特に置換アリール基が好ましい。
前記置換アリール基は、トリル基、オルト-キシリル基等が挙げられる。
【0136】
一般式(Y)中、Qの好ましい置換基例は、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数2〜12のアシル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、または置換もしくは無置換の炭素数6〜18のアリールスルホニル基が好ましく、特に水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜12のアルキル基、または置換もしくは無置換の炭素数2〜12のアシル基が好ましく、その中でも特に水素原子が好ましい。
【0137】
一般式(Y)中、Rは置換もしくは無置換の総炭素数1〜12のアルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、または置換もしくは無置換の総炭素数4〜12ヘテロ環基が好ましく、その中でも、総炭素原子数1〜8の直鎖アルキル基または分岐のアルキル基が好ましく、特に2級または3級アルキル基が好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。
【0138】
一般式(Y)中、Yは水素原子、置換もしくは無置換の総炭素数1〜12のアルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、または置換もしくは無置換の総炭素数4〜12ヘテロ環基が好ましく、その中でも、水素原子、総炭素原子数1〜8の直鎖アルキル基及びまたは分岐のアルキル基が好ましく、特に水素原子、または1〜8のアルキル基が好ましく、水素原子が最も好ましい。
【0139】
本発明の一般式(Y)で表される水溶性染料の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0140】
本発明の一般式(Y)で表される水溶性染料として特に好ましい組み合わせは、以下の(イ)〜(ト)を含むものである。
【0141】
(イ)Gは、5〜8員含窒素ヘテロ環が好ましく、特にS-トリアジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、ピリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、またはピロール環が好ましく、その中でもS-トリアジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、またはピラジン環が好ましく、S-トリアジン環が最も好ましい。
【0142】
(ロ)Rは置換もしくは無置換の総炭素数1〜12のアルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、または置換もしくは無置換の総炭素数4〜12ヘテロ環基が好ましく、その中でも、総炭素原子数1〜8の直鎖アルキル基または分岐のアルキル基が好ましく、特に2級または3級アルキル基が好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。
【0143】
(ハ)Xとして特に好ましいものは、シアノ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基、または炭素数0〜12のスルファモイル基であり、その中でも、シアノ基、または炭素数1〜12のアルキルスルホニル基が好ましく、最も好ましいものは、シアノ基である。
【0144】
(ニ)Yは水素原子、置換もしくは無置換の総炭素数1〜12のアルキル基、置換もしくは無置換の総炭素数6〜18のアリール基、または置換もしくは無置換の総炭素数4〜12ヘテロ環基が好ましく、その中でも、水素原子、総炭素原子数1〜8の直鎖アルキル基または分岐のアルキル基が好ましく、特に水素原子、または総炭素原子数1〜8のアルキル基が好ましく、水素原子が最も好ましい。
【0145】
(ホ)Zは、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換のヘテロ環基が好ましく、特に好ましい置換基は置換アリール基、または置換へテロ環基であり、その中でも特に置換アリール基が好ましい。
【0146】
(ヘ)Qは、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアシル基、置換もしくは無置換のアルキルスルホニル基、または置換もしくは無置換のアリールスルホニル基が好ましく、特に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアシル基が好ましく、その中でも特に水素原子が好ましい。
(ト)nは1〜3の整数を表し、好ましくは1または2であり、特に2が最も好ましい。
【0147】
一般式(Y)で表される化合物は、下記一般式(Y−1)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(Y−1):
【0148】
【化7】




【0149】
式中、R、R、X、X、Y、Y、Z、及びZは1価の基を示し、Gは5〜8員含窒素ヘテロ環を構成する原子団を示し、Mは水素原子またはカチオンを示す。mは0〜3の整数を表す。
【0150】
一般式(Y)で表される化合物は、前記一般式(Y−1)中、Gで構成される含窒素ヘテロ環がS−トリアジン環であることが好ましい。
前記一般式(Y)で表される染料の具体例(例示染料DYE−1〜3、10〜12)を以下に示すが、本発明に用いられる染料は、下記の例に限定されるものではなく、特開2007−191650号公報等に記載の染料も本発明に用いることができる。
【0151】
また、以下の具体例の構造は遊離の酸の形で示されるが、任意の塩の形で用いても良いことは言うまでもない。
好ましいカウンターカチオンとしては、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)、アンモニウム、または有機のカチオン(例えば、ピリジニウム、テトラメチルアンモニウム、グアニジウム)を挙げることができる。
【0152】
【化8】

【0153】
【化9】

【0154】
本発明において使用するイエロー染料は、堅牢性、オゾンガスに対する堅牢性の点から、酸化電位が1.0V(vs SCE)よりも貴である染料が好ましく、1.1V(vs SCE)よりも貴である染料がさらに好ましく、1.2V(vs SCE)よりも貴である染料が特に好ましい。
酸化電位の値(Eox)は当業者が容易に測定することができる。この方法に関しては、例えばP.Delahay著“New InstrumentalMethods in Electrochemistry”(1954年 Interscience Publishers社刊)やA.J.Bard他著“Electrochemical Methods”(1980年 JohnWiley & Sons社刊)、藤嶋昭他著“電気化学測定法”(1984年 技報堂出版社刊)に記載されている。
【0155】
具体的に酸化電位は、過塩素酸ナトリウムや過塩素酸テトラプロピルアンモニウムといった支持電解質を含むジメチルホルムアミドやアセトニトリルのような溶媒中に、被験試料を1×10−2〜1×10−6mol/L(リットル)溶解して、各種ボルタンメトリー(滴下水銀電極を用いるポーラログラフィー、サイクリックボルタンメトリー、回転式ディスク電極を用いた方法)を用いてSCE(飽和カロメル電極)に対する値として測定する。この値は、液間電位差や試料溶液の液抵抗などの影響で、数10ミルボルト程度偏位することがあるが、標準試料(例えばハイドロキノン)を入れて電位の再現性を保証することができる。
なお、電位を一義的に規定する為、本発明では0.1mol/Lの過塩素酸テトラプロピルアンモニウムを支持電解質として含むN,N−ジメチルホルムアミド中(染料の濃度は10−3mol/L)で参照電極としてSCE(飽和カロメル電極)、作用極としてグラファイト電極、対極として白金電極を使用して測定した値(vs SCE)を染料の酸化電位とする。
【0156】
Eoxの値は試料から電極への電子の移りやすさを表わし、その値が大きい(酸化電位が貴である)ほど試料から電極へ電子が移りにくい、言い換えれば、酸化されにくいことを表す。化合物の構造との関連では、電子求引性基を導入することにより酸化電位はより貴となり、電子供与性基を導入することにより酸化電位はより卑となる。本発明では、求電子剤であるオゾンとの反応性を下げるために、イエロー染料骨格に電子求引性基を導入して酸化電位をより貴とすることが望ましい。
【0157】
また、本発明において使用する染料は、堅牢性が良好であると共に色相が良好であるということが好ましく、イエローインクとして用いる場合、特に吸収スペクトルにおいて長波側の裾切れが良好であることが好ましい。このためλmaxが390nmから470nmにあり、λmaxの吸光度I(λmax)と、λmax+70nmの吸光度I(λmax+70nm)との比I(λmax+70nm)/I(λmax)が、0.20以下であるイエロー染料が好ましく、0.15以下がより好ましく、0.10以下がさらに好ましい。なお、ここで定義した吸収波長及び吸光度は、溶媒(水又は酢酸エチル)中での値を示す。
【0158】
本発明において一般式(Y)で表される水溶性染料(アゾ染料)のイエローインク中での含有量は、0.2〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。
本発明におけるイエローインクは、一般式(Y)で表される水溶性染料以外の染料を含んでいてもよいが、一般式(Y)で表される水溶性染料の全染料に対する含有率は、25質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。
【0159】
【化10】



【0160】
前記一般式(C)中、X、X、X及びXは、それぞれ独立に、−SO−Z、−SO−Z、−SONV、−CONV、−COZ、−CO−Z及びスルホ基のいずれかを表す。ここで、Zは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアルキニル基、置換若しくは無置換のアラルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のヘテロ環基を表す。V1、V2は、同一または異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基を表す。
、Y、Y及びYは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルフィニル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、ホスホリル基、アシル基、又はイオン性親水性基を表し、各々の基はさらに置換基を有していてもよい。
〜a及びb〜bは、それぞれX〜X及びY〜Yの置換基数を表す。
そして、a〜aは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、すべてが同時に0になることはない。b〜bは、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
Mは、水素原子、金属原子又はその酸化物、水酸化物若しくはハロゲン化物である。ただし、X、X、X、X、Y、Y、Y及びYの内の少なくとも1つは、イオン性親水性基であるか又はイオン性親水性基を置換基として有する基である。
【0161】
本発明においては、上記一般式(C)において、a、a、a及びaが0又は1であり、かつa、a、a及びaのうち2つ以上が1であり、さらにb、b、b及びbはそれぞれa、a、a及びaとの和が4となる整数であることが好ましい。
【0162】
上述のとおり、前記一般式(C)中、X、X、X及びXは、それぞれ独立に、−SO−Z、−SO−Z、−SONV、−CONV、−COZ、−CO−Z及びスルホ基のいずれかを表す。
【0163】
Zは、同一または異なっていても良く、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基を表す。
好ましくは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基であり、その中でも置換アルキル基、置換アリール基、置換ヘテロ環基が好ましく、特に置換アルキル基が最も好ましい。
【0164】
およびVは、同一または異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基を表す。好ましくは水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基であり、その中でも水素原子、置換アルキル基、置換アリール基、置換ヘテロ環基が最も好ましい。
尚、Z、V及びVは、さらに置換基を有することができる。
【0165】
Z、VおよびVが表す置換もしくは無置換のアルキル基としては、炭素原子数が1〜30のアルキル基が好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、分岐のアルキル基が好ましく、特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。置換基の例については一般式Iが有していても良い置換基を挙げることができるが、中でも水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基が染料の会合性を高め堅牢性を向上させるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有していても良い。
【0166】
Z、VおよびVが表す置換もしくは無置換のシクロアルキル基としては、炭素原子数が5〜30のシクロアルキル基が好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。置換基の例については一般式(C)が有していても良い置換基を挙げることができるが、中でも水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基が染料の会合性を高め堅牢性を向上させるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有していても良い。
【0167】
Z、VおよびVが表す置換もしくは無置換のアルケニル基としては、炭素原子数が2〜30のアルケニル基が好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、分岐のアルケニル基が好ましく、特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。置換基の例については一般式Iが有していても良い置換基を挙げることができるが、中でも水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基が染料の会合性を高め堅牢性を向上させるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有していても良い。
【0168】
Z、VおよびVが表す置換もしくは無置換のアルキニル基としては、炭素原子数が2〜30のアルキニル基が好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、分岐のアルキニル基が好ましく、特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。置換基の例については一般式(C)が有していても良い置換基を挙げることができるが、中でも水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基が染料の会合性を高め堅牢性を向上させるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有していても良い。
【0169】
Z、VおよびVが表す置換もしくは無置換のアラルキル基としては、炭素原子数が7〜30のアルキル基が好ましい。特に染料の溶解性やインク安定性を高めるという理由から、分岐のアルキル基が好ましく、特に不斉炭素を有する場合(ラセミ体での使用)が特に好ましい。置換基の例については一般式(C)が有していても良い置換基を挙げることができるが、中でも水酸基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、スルホンアミド基が染料の会合性を高め堅牢性を向上させるので特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基を有していても良い。
【0170】
Z、VおよびVが表す置換もしくは無置換のアリール基としては、炭素原子数が6〜30のアリール基が好ましい。置換基の例については一般式(C)が有していても良い置換基を挙げることができるが、中でも染料の酸化電位を貴とし堅牢性を向上させるので電子求引性基が特に好ましい。
【0171】
本発明におけるフタロシアニン染料は、イオン性親水性基を有することが好ましい。イオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシル基、ホスホノ基および4級アンモニウム基等が含まれる。前記イオン性親水性基としては、カルボキシル基、ホスホノ基、およびスルホ基が好ましく、特にカルボキシル基、スルホ基が好ましい。カルボキシル基、ホスホノ基およびスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)および有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれる。対イオンの中でもアルカリ金属塩が好ましく、特にリチウム塩は染料の溶解性を高めインク安定性を向上させるため特に好ましい。最も好ましいイオン性親水性基はスルホ基のリチウム塩である。
【0172】
イオン性親水性基の数としては、本発明のフタロシアニン染料1分子中少なくとも2個以上有するものが好ましく、特にスルホ基および/またはカルボキシル基を少なくとも2個以上有するものが特に好ましい。
【0173】
Mとして好ましい物は、水素原子、金属原子としては、Li、Na、K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi等が挙げられる。酸化物としては、VO、GeO等が挙げられる。 また、水酸化物としては、Si(OH)Cr(OH)、Sn(OH)等が挙げられる。さらに、ハロゲン化物としては、AlCl、SiCl、VCl、VCl、VOCl、FeCl、GaCl、ZrCl等が挙げられる。なかでも特に、Cu、Ni、Zn、Al等が好ましく、Cuが最も好ましい。
【0174】
また、L(2価の連結基)を介してPc(フタロシアニン環)が2量体(例えば、Pc−M−L-M−Pc)または3量体を形成してもよく、その時のMはそれぞれ同一であっても異なるものであってもよい。
【0175】
Lで表される2価の連結基は、オキシ基−O−、チオ基−S−、カルボニル基−CO−、スルホニル基−SO−、イミノ基−NH−、メチレン基−CH−、およびこれらを組み合わせて形成される基が好ましい。
【0176】
本発明におけるフタロシアニン染料の化学構造としては、スルフィニル基(−SO−Z);スルホニル基(−SO−Z);スルファモイル基(−SONV);カルバモイル基(−CONV);アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基(−COZ);アシル基(−CO−Z);スルホ基のような電子求引性基を、本発明におけるフタロシアニンの各ベンゼン環に少なくとも一つずつ、フタロシアニン骨格全体の置換基のσp値の合計で1.2以上となるように導入することが特に好ましい。その中でも、スルフィニル基(−SO−Z);スルホニル基(−SO−Z);スルファモイル基(−SONV)が好ましく、更にスルホニル基(−SO−Z);スルファモイル基(−SONV)が好ましく、スルホニル基(−SO−Z)が最も好ましい。
【0177】
ハメットの置換基定数σp値について若干説明する。ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるために1935年L.P.Hammettにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則に求められた置換基定数にはσp値とσm値があり、これらの値は多くの一般的な成書に見出すことができるが、例えば、J.A.Dean編、「Lange’s Handbook of Chemistry」第12版、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域」増刊、122号、96〜103頁、1979年(南光堂)に詳しい。
【0178】
前記一般式(C)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0179】
本発明においてシアンインクに着色剤として用いられる上記一般式(C)で表されるシアン系染料は、好ましくは下記一般式(C−2)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる化合物である。
一般式(C−2):
【0180】
【化11】



【0181】
上記一般式(C−2)中、R、R、R、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルフィニル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、ホスホリル基、アシル基またはイオン性親水性基を表す。これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。
【0182】
、Z、Z、及びZは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基を表す。但し、Z、Z、Z、及びZのうち少なくとも1つは、イオン性親水性基を置換基として有する。
【0183】
l、m、n、p、q、q、q、qは、それぞれ独立に、1または2の整数を表す。
Mは、一般式(C)の場合と同義である。
【0184】
本発明においては、上記一般式(C−2)中、l、m、n、及びpは、それぞれ独立に、1または2の整数であり、その中でもl、m、n、及びpのうち2つ以上が1であるのが好ましく、l=m=n=p=1が最も好ましい。
【0185】
上記一般式(C−2)中、q、q、q、及びqは、それぞれ独立に、1または2の整数であり、その中でもq、q、q、及びqのうち2つ以上が2であるのが好ましく、q=q=q=q=2が最も好ましい。
【0186】
上記一般式(C−2)中、Z、Z、Z、及びZは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基を表し、好ましくは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基であり、その中でも置換アルキル基、置換アリール基、置換ヘテロ環基が好ましく、特に置換アルキル基が最も好ましい。但し、Z、Z、Z、及びZのうち少なくとも1つは、イオン性親水性基を置換基として有する。
【0187】
上記一般式(C−2)中、R、R、R、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルフィニル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、ホスホリル基、アシル基またはイオン性親水性基を表す。その中でも、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルフィニル基、スルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホスホリル基、アシル基またはイオン性親水性基が好ましく、更に水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、スルファモイル基、スルフィニル基、スルホニル基、イオン性親水性基が好ましく、特に水素原子が最も好ましい。
【0188】
上記一般式(C−2)中、Mは上記一般式中(C)中のMと同義であり好ましい例も同じである。
【0189】
前記一般式(C−2)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0190】
本発明において、シアンインクに着色剤として用いられる上記一般式(C−2)で表されるシアン系染料は、好ましくは下記一般式(C−3)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる化合物である。
一般式(C−3):
【0191】
【化12】



【0192】
一般式(C−3)中、Z、Z、Z、Z、l、m、n、p及びMは、一般式(C−2)中のZ、Z、Z、Z、l、m、n、p及びMと同義である。
【0193】
本発明においては、上記一般式(C−3)中、l、m、n、及びpは、それぞれ独立に、1または2の整数であり、その中でもl、m、n、及びpのうち2つ以上が1であるのが好ましく、l=m=n=p=1が最も好ましい。
【0194】
上記一般式(C−3)中、Z、Z、Z、及びZは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基を表し、好ましくは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基であり、その中でも置換アルキル基、置換アリール基、置換ヘテロ環基が好ましく、特に置換アルキル基が最も好ましい。
【0195】
更に詳しくは、Z、Z、Z、及びZは、それぞれ独立に、Z11(前記Z11は、−(CHSOを表し、ここでMはアルカリ金属原子を表す。)及び/又はZ12(前記Z12は、−(CHSONHCHCH(OH)CHを表す。)であり、特に前記一般式(C−3)で表されるシアン染料全体に含まれる前記Z11及び前記Z12のモル比が、Z11/Z12=4/0、3/1、2/2、1/3なる染料混合物が好ましく、その中でもZ11/Z12=3/1を主成分となる染料混合物、およびまたはZ11/Z12=2/2を主成分となる染料混合物が最も好ましい。但し、Z、Z、Z、及びZのうち少なくとも1つは、イオン性親水性基を置換基として有する。
【0196】
前記Z11で表される−(CHSO中、Mはアルカリ金属原子が好ましく、その中でもリチウム、ナトリウム、カリウムイオンが好ましく、特にリチウムイオンが最も好ましい。
【0197】
上記一般式(C−3)中、Mは上記一般式中(C−2)中のMと同義であり好ましい例も同じである。
【0198】
前記一般式(C−3)で表される化合物の好ましい置換基の組み合わせについては、種々の置換基の少なくとも1つが前記の好ましい基である化合物が好ましく、より多くの種々の置換基が前記好ましい基である化合物がより好ましく、全ての置換基が前記好ましい基である化合物が最も好ましい。
【0199】
本発明において、シアンインク中に含まれるシアン系染料の含有量は、一般式(C)におけるX〜X及びY〜Yの種類、及びインクを製造するために用いる溶媒成分の種類等により決められるが、本発明においては、一般式(C)で表されるシアン系染料の合計量が、シアンインク中に、シアンインクの総質量に対して1〜10質量%含まれることが好ましく、2〜6質量%含まれることがさらに好ましい。
【0200】
シアンインク中に含まれる一般式(C)の染料の合計量を1質量%以上にすることで、印刷したときの記録媒体上におけるインクの発色性を良好にでき、かつ必要とされる画像濃度を確保できる。また、シアンインク中に含まれる一般式(C)の染料の合計量を10質量%以下にすることで、インクジェット記録方法に用いた場合にシアンインクの吐出性を良好にでき、しかもインクジェットノズルが目詰まりしにくい等の効果が得られる。
本発明におけるシアンインクは、一般式(C)で表される水溶性染料以外の染料を含んでいてもよいが、一般式(C)で表される水溶性染料の全染料に対する含有率は25質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。
【0201】
本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット方式で前記インクジェット記録媒体に前記マゼンタインク、前記ブラックインク、前記イエローインク、及び前記シアンインクから選ばれる少なくとも1種を付与して画像を記録する方法であるが、前記各インクの少なくとも2種を有するインクセットとして用いることが多彩な色相を有する画像が得やすいとの観点から好ましい。
前記インクセットにおいては、シアンインクとして色濃度の高いシアンインク(濃シアンインク)及び色濃度の低いシアンインク(淡シアンインク)をインクセットに含めることができる。
【0202】
濃シアンインク及び淡シアンインクを前記インクセットに含める場合、濃シアンインク又は淡シアンインクの少なくとも一つが前記一般式(C)、(C−2)、(C−3)の染料の少なくとも一種を着色剤として含むことが好ましい。
【0203】
前記色濃度の異なる2種のシアンインクのうち、低い色濃度を有するシアンインクが、前記一般式(C−2)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる少なくとも一種において、Z、Z、Z、及びZがそれぞれ独立してZ11(前記Z11は、−(CHSOを表し、ここでMはアルカリ金属原子を表す。)及び/又はZ12(前記Z12は、−(CHSONHCHCH(OH)CHを表す。)から選ばれた混合物であることが好ましく、特に前記一般式(C−3)で表されるシアン染料全体に含まれる前記Z11及び前記Z12のモル比が、Z11/Z12=4/0、3/1、2/2、1/3なる染料混合物が好ましく、その中でもZ11/Z12=2/2を主成分となる染料混合物が最も好ましい。
【0204】
一方、前記色濃度の異なる2種のシアンインクのうち、低い色濃度を有するシアンインクが、下記一般式(C−4)で表される化合物及びその塩からなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種用いることも好ましい。
一般式(C−4):
【0205】
【化13】



【0206】
一般式(C−4)中、Q〜Q、P〜P、W〜W、R〜Rは、それぞれ独立に、(=C(J)−及びまたは−N=)、(=C(J)−及びまたは−N=)、(=C(J)−及びまたは−N=)、(=C(J)−及びまたは−N=)を表す。J〜Jはそれぞれ独立に、水素原子及びまたは置換基を表す。(Q、P、W、R)、(Q、P、W、R)、(Q、P、W、R)、(Q、P、W、R)から成る環{A環:(A)、B環:(B)、C環:(C)、D環:(D)}の4つのうち、少なくとも1つはヘテロ環である。
【0207】
更に詳しくは、上記一般式(C−4)で表されるシアンインクにおいて、Q、P、W、R)、(Q、P、W、R)、(Q、P、W、R)、(Q、P、W、R)から成る環{A環:(A)、B環:(B)、C環:(C)、D環:(D)}の4つのうち、少なくとも1つのヘテロ環が含窒素ヘテロ環であるであることが好ましく、その中でもヘテロ環がピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環が好ましく、更にヘテロ環がピリジン環、ピラジン環が好ましく、特にピリジン環が最も好ましい。
【0208】
更に好ましくは、上記一般式(C−4)で表されるシアンインクにおいて、Q、P、W、R)、(Q、P、W、R)、(Q、P、W、R)、(Q、P、W、R)から成る環{A環:(A)、B環:(B)、C環:(C)、D環:(D)}の4つのうち、芳香族環を表す場合に、下記一般式(I)であることが好ましい。
【0209】
一般式(I):
【0210】
【化14】

【0211】
一般式(I)中、*はフタロシアニン骨格との結合位置を表す。Gは−SO−Z、−SO−Z、−SONZ、−CONZ、−CO、−COZ、またはスルホ基を表す。tは、1〜4の整数を表す。
【0212】
は、同一または異なっていても良く、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基を表す。
【0213】
上記一般式(I)中好ましいZは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基が挙げられ、その中でも置換のアルキル基、置換のアリール基が好ましく、特に置換のアルキル基が最も好ましい。
【0214】
およびZは、同一または異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基を表す。
【0215】
上記一般式(I)中、好ましいZおよびZは、それぞれ独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のヘテロ環基が挙げられ、その中でも水素原子、置換のアルキル基、置換のアリール基が好ましく、特にZおよびZの一方が水素原子を表し、他方が置換のアルキル基、置換のアリール基を表す場合が最も好ましい。
【0216】
上記一般式(I)中、好ましいGは−SO−Z、−SO−Z、−SONZ、−CONZ、−CO、−COZが挙げられ、その中でも−SO−Z、−SO−Z、−SONZが好ましく、特に−SO−Zが最も好ましい。
【0217】
上記一般式(I)中好ましいtは、1〜3の整数を表し、その中でも1〜2の整数が好ましく、特にt=1が最も好ましい。
【0218】
更に詳しくは、上記一般式(C−4)で表される化合物において、A環、B環、C環、D環の任意の環が芳香族環である場合には、少なくとも1つの芳香族環が下記一般式(II)であることが好ましい。
【0219】
一般式(II):
【0220】
【化15】

【0221】
一般式(II)中、*はフタロシアニン骨格との結合位置を表す。
【0222】
上記一般式(II)中Gは、上記一般式(I)と同義であり、好ましい例も同じである。
【0223】
上記一般式(II)中tは、1または2であり、特にt=1が好ましい。
【0224】
一般式(C)に示される染料の好ましい具体例としては、特開2007−138124号公報の[0582]〜[0652]に記載の化合物が挙げられる。
【0225】
本発明におけるインクは、前記一般式(M)、一般式(Bk)、一般式(Y)および一般式(C)で表される水溶性染料の少なくとも1種を含むが、必要に応じて、水性媒体、その他の添加剤を本発明の効果を害しない範囲内において添加しうる。その他の添加剤としては、例えば、ホウ素化合物、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0226】
前記水性媒体は、水を主成分とし、所望により、水混和性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。前記水混和性有機溶剤の例には、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。尚、前記水混和性有機溶剤は、2種類以上を併用してもよい。
【0227】
前記乾燥防止剤はインクジェット記録方式に用いるノズルのインク噴射口においてインクが乾燥することによる目詰まりを防止する目的で好適に使用される。
【0228】
前記乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。具体的な例としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体が挙げられる。これらのうちグリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールがより好ましい。また上記の乾燥防止剤は単独で用いても良いし2種以上併用しても良い。これらの乾燥防止剤はインク中に10〜50質量%含有することが好ましい。
【0229】
前記浸透促進剤は、インクを紙により良く浸透させる目的で好適に使用される。前記浸透促進剤としてはエタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を用いることができる。これらはインク中に5〜30質量%含有すれば通常充分な効果があり、印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲で使用するのが好ましい。
【0230】
前記紫外線吸収剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。前記紫外線吸収剤としては特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
【0231】
前記褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。前記褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、チオエーテル類、チオウレア類(チオエーテル類とチオウレア類の例は特開2002−36717号公報、また、チオエーテル類の例は特開2002−86904号公報に記載)、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。より具体的にはリサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。
【0232】
前記防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンおよびその塩等が挙げられる。これらはインク中に0.02〜1.00質量%使用するのが好ましい。
【0233】
前記pH調整剤としては前記中和剤(有機塩基、無機アルカリ)を用いることができる。前記pH調整剤はインクの保存安定性を向上させる目的で、該インクがpH6〜10となるように添加するのが好ましく、pH7〜10となるように添加するのがより好ましい。
【0234】
前記表面張力調整剤としてはノニオン、カチオンあるいはアニオン界面活性剤が挙げられる。尚、本発明に係るインクの表面張力は25〜70mN/mが好ましい。さらに25〜60mN/mが好ましい。また本発明に係るインクの粘度は30mPa・s以下が好ましい。更に20mPa・s以下に調整することがより好ましい。
【0235】
界面活性剤の例としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型やN,N−ジメチル−N−ラウリル−カルボメチルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩含有ベタイン型の両性界面活性剤等も好ましい。更に、特開昭59−157、636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使うことができる。
【0236】
前記消泡剤としては、フッ素系、シリコーン系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等も必要に応じて使用することができる。
【0237】
本発明におけるインクの調製方法には特に制限はなく、例えば、特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号、特開2004−331871号の各工法に詳細が記載されていて、本発明におけるインクの調製にも適用できる。
【0238】
本発明におけるインクジェット記録媒体上に画像を記録するためのインクジェット方式については特に制限はなく、公知の方式、例えば静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して、放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式等を用いることができる。また、前記インクジェット記録方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【実施例】
【0239】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」「%」は質量基準である。
【0240】
<試験例1>
(支持体の作製)
アカシアからなるLBKP50部及びアスペンからなるLBKP50部をそれぞれディスクリファイナーによりカナディアンフリーネス300mlに叩解し、パルプスラリーを調製した。次いで、得られたパルプスラリーに、対パルプあたり、カチオン性澱粉(日本NSC(株)製、CATO 304L)1.3質量%、アニオン性ポリアクリルアミド(星光化学(株)製、ポリアクロン ST−13)0.15質量%、アルキルケテンダイマー(荒川化学(株)製、サイズパインK)0.29質量%、エポキシ化ベヘン酸アミド0.29質量%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン(荒川化学(株)製、アラフィックス100)0.32質量%を加えた後、さらに消泡剤0.12質量%を加えた。
【0241】
このパルプスラリーを長網抄紙機で抄紙し、ウェッブのフェルト面をドラムドライヤーシリンダーにドライヤーカンバスを介して押し当て、ドライヤーカンバスの引張り力を1.6kg/cmに設定して乾燥を行ない、原紙とした後、この原紙の両面にサイズプレスにてポリビニルアルコール((株)クラレ製、KL−118)を1g/m塗布して乾燥し、カレンダー処理を行なって基紙を得た。なお、得られた基紙の坪量は、166g/mであり、厚さ160μmであった。
【0242】
得られた基紙のワイヤー面(裏面)側にコロナ放電処理を行なった後、溶融押出機を用いて、高密度ポリエチレンを厚さ25μmとなるようにコーティングし、マット面からなる熱可塑性樹脂層を形成した(以下、この熱可塑性樹脂層面を「ウラ面」と称する。)。このウラ面に更にコロナ放電処理を施した後、帯電防止剤として、酸化アルミニウム(日産化学工業(株)製の「アルミナゾル100」)と二酸化ケイ素(日産化学工業(株)製の「スノーテックスO」)とを1:2の質量比で水に分散した分散液を、乾燥質量が0.2g/mとなるように塗布した。
【0243】
更に、熱可塑性樹脂層の設けられていない側のフェルト面(表面)側に、コロナ放電処理を施した後、アナターゼ型二酸化チタン10質量%、東京インキ(株)製の群青を0.3質量%の含有量に調整し、更に(株)日本化学工業所製の蛍光増白剤「Whiteflour PSN conc」を0.08質量%の含有量となるように調整したMFR(メルトフローレート)3.8の低密度ポリエチレンを、溶融押出機を用いて厚み25μmとなるように押出して、高光沢な熱可塑性樹脂層を形成し(以下、この高光沢面を「オモテ面」と称する。)、耐水性支持体を作製した。この耐水性支持体を幅1.5m、巻き長3000mに揃えて長尺ロール体とした。
【0244】
(下塗り層形成液Aの調製)
下記組成中の(1)脱イオンアルカリ処理ゼラチンと(2)イオン交換水と(3)塩化マグネシウムと、(4)メタノールとを混合し、超音波分散機((株)エスエムテー製)を用いて分散させて、下塗り層形成液Aを調製した。
【0245】
(1)脱イオンアルカリ処理ゼラチン(等電点:5.0) ・・・ 50.0部
(2)イオン交換水 ・・・ 250.0部
(3)塩化マグネシウム・・・ 30部
(4)メタノール ・・・ 670.0部
【0246】
(インク受容層用塗布液A1の調製)
下記組成中の(1)気相法シリカ微粒子と(2)イオン交換水と(3)シャロールDC−902Pとを混合し、超音波分散機((株)エスエムテー製)を用いて分散させた後、分散液を45℃に加熱し、20時間保持した。その後、これに下記組成中の(4)ホウ酸と(5)アセトアセチル変性ポリビニルアルコールの7質量%水溶液と(6)界面活性剤の10質量%水溶液とを30℃下で加え、インク受容層用塗布液(溶液A)A1を調製した。
【0247】
−インク受容層用塗布液A1の組成−
(1)気相法シリカ微粒子(無機微粒子)(AEROSIL300SV、日本アエロジル(株)製)・・・10.0部
(2)イオン交換水 ・・・56部
(3)「シャロールDC−902P」(51.5%水溶液)(分散剤、第一工業製薬(株)製)・・・0.8部
(4)ホウ酸(架橋剤) ・・・0.37部
(5)アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(Z210、日本合成化学(株)製)の7%水溶液 ・・・29部
(6)界面活性剤(エマルゲン109P、花王(株)製)の10%水溶液 ・・・0.6部
【0248】
(架橋剤溶液1の調製)
下記組成の成分を常温で溶解、混合し、架橋剤溶液1(硬化溶液)を調製した。
(1)イオン交換水 ・・・30部
(2)アジピン酸ジヒドラジド(水溶性多官能架橋剤) ・・・1部
(3)界面活性剤(エマルゲン109P、花王(株)製)の10%水溶液 ・・・0.5部
【0249】
(インクジェット記録媒体の作製)
上記で得た支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行なった後、前記下塗り層形成液Aをワイヤーバーを用いて10ml/m 2 塗布し、70℃で2分間乾燥して下塗り層を形成した(固形分塗布量0.8g/m)。
次いで、前記インク受容層塗布液A1を200ml/mになるようにスライドビードコーターで塗布し、熱風乾燥機により80℃(風速3m/秒)で3分間乾燥した(固形分塗布量28.2g/m)。この間、塗布膜は、恒率乾燥を示した。3分間の乾燥直後にこの塗布膜を架橋剤溶液1に1秒間浸漬させ、80℃で10分間乾燥した(固形分塗布量0.3g/m)。このようにして、インクジェット記録媒体(1)を作製した。
【0250】
<試験例2>
試験例1において、下層形成用のインク受容層塗布液A1を下記組成のインクジェット受容層用塗布液A2に代えたこと以外は、試験例1と同様にして、インクジェット記録媒体(2)を作製した。
【0251】
−インク受容層用塗布液A2の組成−
(1)気相法シリカ微粒子(無機微粒子)(AEROSIL300SV、日本アエロジル(株)製)・・・10.0部
(2)イオン交換水 ・・・56部
(3)「シャロールDC−902P」(51.5%水溶液)(分散剤、第一工業製薬(株)製)・・・0.78部
(4)ホウ酸(架橋剤) ・・・0.37部
(5)アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(Z210、日本合成化学(株)製)の7%水溶液 ・・・29部
(6)ヒドロキシプロピルセルロース(NISSO HPC−SSL、日本曹達(株)製;水溶性セルロース誘導体)の10%水溶液 ・・・3部
(7)界面活性剤(エマルゲン109P、花王(株)製)の10%水溶液 ・・・0.6部
【0252】
<試験例3>
試験例1において、下層形成用のインク受容層塗布液A1を下記組成のインクジェット受容層用塗布液A3に代えたこと以外は、試験例1と同様にして、インクジェット記録媒体(3)を作製した。
【0253】
−インク受容層用塗布液A3の組成−
(1)気相法シリカ微粒子(無機微粒子)(AEROSIL300SV、日本アエロジル(株)製)・・・10.0部
(2)イオン交換水 ・・・56部
(3)「シャロールDC−902P」(51.5%水溶液)(分散剤、第一工業製薬(株)製)・・・0.78部
(4)ホウ酸(架橋剤) ・・・0.37部
(5)アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(Z210、日本合成化学(株)製)の7%水溶液 ・・・29部
(6)ヒドロキシプロピルセルロース(NISSO HPC−SSL、日本曹達(株)製;水溶性セルロース誘導体)の10%水溶液 ・・・3部
(7)ポリ塩化アルミニウム(アルファイン83、大明化学工業(株)製)・・・1.5部
(8)界面活性剤(エマルゲン109P、花王(株)製)の10%水溶液 ・・・0.6部
【0254】
<試験例4>
(インク受容層用塗布液A3の調製)
試験例3と同じインク受容層用塗布液A3(第1の溶液)を調製した。
【0255】
(インク受容層用塗布液B1の調製)
試験例1のインク受容層用塗布液A1の調製において、組成を下記のように変更したこと以外は、インク受容層用塗布液A1と同様にして、インク受容層用塗布液B1(第2の溶液)を調製した。
【0256】
−インク受容層用塗布液B1の組成−
(1)気相法シリカ微粒子(無機微粒子)(AEROSIL300SV、日本アエロジル(株)製)・・・10.0部
(2)イオン交換水 ・・・56部
(3)「シャロールDC−902P」(51.5%水溶液)(分散剤、第一工業製薬(株)製)・・・0.78部
(4)ホウ酸(架橋剤) ・・・0.37部
(5)ポリビニルアルコール((株)クラレ製、PVA−235)の7%水溶液 ・・・29部
(6)ポリ塩化アルミニウム(アルファイン83、大明化学工業(株)製)・・・1.5部
(7)界面活性剤(エマルゲン109P、花王(株)製)の10%水溶液 ・・・0.6部
【0257】
−インクジェット記録媒体の作製−
前記で得た下塗り層を有する支持体のウラ面と反対側のオモテ面にコロナ放電処理を行なった後、インク受容層塗布液A3を下層として160cc/mになるように、インク受容層塗布液B1を上層として40cc/mになるように、スライドビードコーターで重層塗布し、支持体側から順にインク受容層塗布液A3からなる第1塗布膜とインク受容層塗布液B1からなる第2塗布膜とを形成し、熱風乾燥機により80℃(風速3m/秒)で3分間乾燥した。この間、第1塗布膜及び第2塗布膜は、恒率乾燥を示した。3分間の乾燥直後にこの塗布膜を架橋剤溶液1に1秒間浸漬させ、80℃で10分間乾燥させた。3分間の乾燥直後に架橋剤液1にこの塗布層を1秒間浸漬させ、80℃で10分間乾燥した。このようにして、インクジェット記録媒体(4)を作製した。
【0258】
<試験例5>
(インク受容層用塗布液A3の調製)
試験例3と同様にして、インク受容層用塗布液A3(第1の溶液)を調製した。
【0259】
(インク受容層用塗布液C1の調製)
試験例1のインク受容層用塗布液A1の調製において、組成を下記のように変更したこと以外は、インク受容層用塗布液A1と同様にして、インク受容層用塗布液C1(第2の溶液)を調製した。
−インク受容層用塗布液C1の組成−
(1)気相法シリカ微粒子(無機微粒子)(AEROSIL300SV、日本アエロジル(株)製)・・・10.0部
(2)イオン交換水 ・・・56部
(3)「シャロールDC−902P」(51.5%水溶液)(分散剤、第一工業製薬(株)製)・・・0.78部
(4)ホウ酸(架橋剤) ・・・0.37部
(5)ポリビニルアルコール((株)クラレ製、PVA−235)の7%水溶液 ・・・29部
(6)界面活性剤(エマルゲン109P、花王(株)製)の10%水溶液 ・・・0.6部
【0260】
(インク受容層用塗布液B2の調製)
試験例1のインク受容層用塗布液A1の調製において、組成を下記のように変更したこと以外は、インク受容層用塗布液A1と同様にして、インク受容層用塗布液B2(硬化溶液)を調製した。
−インク受容層用塗布液B2の組成−
(1)気相法シリカ微粒子(無機微粒子)(AEROSIL300SV、日本アエロジル(株)製)・・・10.0部
(2)イオン交換水 ・・・56部
(3)「シャロールDC−902P」(51.5%水溶液)(分散剤、第一工業製薬(株)製)・・・0.78部
(4)ホウ酸(架橋剤) ・・・0.37部
(5)ポリビニルアルコール(PVA−235、(株)クラレ製)の7%水溶液 ・・・29部
(6)アジピン酸ジヒドラジド ・・・1部
(7)界面活性剤(エマルゲン109P、花王(株)製)の10%水溶液 ・・・0.6部
【0261】
(インクジェット記録媒体の作製)
前記で得た下塗り層を有する支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行なった後、インク受容層塗布液A3を最下層として140cc/mになるように、インク受容層塗布液C1を中間層として20cc/mになるように、インク受容層用塗布液B2を最上層として40cc/mになるように、3液をスライドビードコーターで同時重層塗布し、支持体側からインク受容層塗布液A3からなる第1塗布膜、インク受容層塗布液C1からなる第2塗布膜、インク受容層塗布液B2からなる第3塗布膜を形成し、熱風乾燥機により80℃(風速3m/秒)で10分間乾燥した。このようにして、インクジェット記録媒体(5)を作製した。
【0262】
<試験例6>
試験例5において、最上層を形成するインク受容層塗布液B2の代わりに、下記組成のインクジェット受容層用塗布液B3に代えたこと以外は、試験例5と同様にして、インクジェット記録媒体(6)を作製した。
【0263】
−インク受容層用塗布液B3の組成−
(1)気相法シリカ微粒子(無機微粒子)(AEROSIL300SV、日本アエロジル(株)製)・・・10.0部
(2)イオン交換水 ・・・56部
(3)「シャロールDC−902P」(51.5%水溶液)(分散剤、第一工業製薬(株)製)・・・0.78部
(4)ホウ酸(架橋剤) ・・・0.37部
(5)ポリビニルアルコール(PVA−235、(株)クラレ製)の7%水溶液 ・・・29部
(6)ヒドロキシプロピルセルロース(NISSO HPC−SSL、日本曹達(株)製;水溶性セルロース誘導体)の10%水溶液 ・・・3部
(7)ポリ塩化アルミニウム(アルファイン83、大明化学工業(株)製)・・・1.5部
(8)界面活性剤(エマルゲン109P、花王(株)製)の10%水溶液 ・・・0.6部
(9)アジピン酸ジヒドラジド ・・・1部
【0264】
<試験例7>
試験例5において、下層形成用のインク受容層塗布液A3を前記インクジェット受容層用塗布液A1(第1の溶液)に代えたこと以外は、試験例5と同様にして、インクジェット記録媒体(7)を作製した。
【0265】
<試験例8>
試験例5において、インク受容層用塗布液C1を用いずに、下塗り層を有する支持体のウラ面と反対側のオモテ面にコロナ放電処理を行なった後、インク受容層塗布液A3を下層として160cc/mになるように、インク受容層塗布液B2を上層として40cc/mになるように、スライドビードコーターで重層塗布し、支持体側から順にインク受容層塗布液A3からなる塗布膜とインク受容層塗布液B2からなる硬化塗布膜とを形成し、熱風乾燥機により80℃(風速3m/秒)で3分間乾燥した。このようにして、インクジェット記録媒体(8)を作製した。
【0266】
<試験例9>
(下塗り層形成液Bの調製)
下記組成中の(1)脱イオンアルカリ処理ゼラチンと(2)イオン交換水と(3)メタノールとを混合し、超音波分散機((株)エスエムテー製)を用いて分散させて、下塗り層形成液Bを調製した。
【0267】
(1)脱イオンアルカリ処理ゼラチン(等電点:5.0) ・・・ 50.0部
(2)イオン交換水 ・・・ 280.0部
(3)メタノール ・・・ 670.0部
【0268】
(インクジェット記録媒体の作製)
前記で得た支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行なった後、前記下塗り層形成液Bをワイヤーバーを用いて10ml/m 2 塗布し、70℃で2分間乾燥して下塗り層を形成した。
試験例4において、下塗り層を有する支持体として上記支持体を用いた以外は、試験例4と同様にして、インクジェット記録媒体(9)を作製した。
【0269】
<試験例10>
(インク受容層用塗布液A4の調製)
試験例1のインク受容層用塗布液A1の調製において、組成を下記のように変更したこと以外は、インク受容層用塗布液A1と同様にして、インク受容層用塗布液A4を調製した。
−インク受容層用塗布液A4の組成−
(1)気相法シリカ微粒子(無機微粒子)(AEROSIL300SV、日本アエロジル(株)製)・・・10.0部
(2)イオン交換水 ・・・56部
(3)「シャロールDC−902P」(51.5%水溶液)(分散剤、第一工業製薬(株)製)・・・0.8部
(4)ホウ酸(架橋剤) ・・・0.37部
(5)アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(Z210、日本合成化学(株)製)の7%水溶液 ・・・29部
(6)ポリ塩化アルミニウム(アルファイン83。大明化学工業(株)製) ・・・1.5部
(7)塩化マグネシウム ・・・0.15部
(8)界面活性剤(エマルゲン109P、花王(株)製)の10%水溶液 ・・・0.6部
【0270】
前記試験例9で得た下塗り層を有する支持体のオモテ面にコロナ放電処理を行なった後、インクジェット受容層用塗布液A4を200cc/mになるように塗布し、熱風乾燥機により80℃(風速3m/秒)で10分間乾燥した。このようにして、インクジェット記録媒体(10)を作製した。
【0271】
<評価>
上記の試験例で得られた各インクジェット記録媒体(1)〜(10)を用いて、以下の評価、測定を行なった。測定、評価の結果は、下記表1に示す。
【0272】
(耐湿性(滲み))
インクジェットプリンターMP970(キヤノン(株)製)を用い、23℃、50%RHの環境下で各インクジェット記録媒体上にマゼンタとブラックとが隣り合う格子状のパターン(格子の一辺の長さ0.28mm)を3cmの四角形になるようにプリントした。プリント直後、インクジェット記録媒体を23℃、90%RHの環境下に移動し、7日間放置した。7日後、23℃、50%RH環境下で充分に乾燥させた後に目視で滲みの程度を評価し、下記の評価基準にしたがってランク付けを行なった。
−評価基準−
A:滲みが認識できなかった。
B:やや滲んでいた。
C:滲みが大きく、実用上許容できない範囲であった。
【0273】
(耐オゾン性)
インクジェットプリンター(セイコーエプソン(株)製の「PM−G820」)を用いて、各インクジェット記録用シート上に反射濃度1.0±0.1のマゼンタおよびシアンのベタ画像をそれぞれ印画し、オゾン濃度5ppmの環境下で48時間保管した。保管前と保管後のマゼンタおよびシアン濃度を、反射濃度測定計(Xrite社製の「Xrite938」)にて測定し、該該マゼンタ、シアン濃度の残存率を算出した。
−評価基準−
A:マゼンタもしくはシアンの残存率の低い方の値が85%以上。
B:マゼンタもしくはシアンの残存率の低い方の値残存率が75〜85%未満。
C:マゼンタもしくはシアンの残存率の低い方の値残存率が65〜75%未満。
D:マゼンタもしくはシアンの残存率の低い方の値残存率が65%未満。
【0274】
(濃度)
インクジェットプリンターA820(セイコーエプソン(株)製)を用い、23℃、50%RHの環境下で各インクジェット記録媒体上に黒ベタ画像をプリントした。プリント後、23℃、50%環境下で1晩放置し、濃度計(X−rite 310TR)にてビジュアル反射濃度を測定した。
−評価基準−
A:濃度が2.4以上
B:濃度が2.3以上、2.4未満
C:濃度が2.2以上、2.3未満
D:濃度が2.2未満
【0275】
(塗布液安定性)
インク受像層用塗布液A1〜A4、B1〜B3をそれぞれ30℃の環境下に放置し、粘度が時間とともに上昇して300mPs以上に達する時間から下記の評価基準にしたがって評価した。
−評価基準−
A:インク受像層用塗布液の調製後、1晩放置しても取り扱いに支障はなかった。
B:インク受像層用塗布液の調製後、1時間以内であれば取り扱いに支障はなかった。
C:インク受像層用塗布液の調製直後であれば取り扱いに支障はなかった。
D:増粘が著しく、取り扱い不可能であった。
【0276】
(塗布面状)
各インクジェット記録媒体について、塗布乾燥時にインク受容層表面に発生する膜割れ、ブツ故障の発生程度を目視で確認し、以下の基準でランク付けした。
−評価基準−
A:膜割れ、故障が発生していない
B:膜割れ、故障がわずかに発生しているがめだたない
C:膜割れ、故障の発生が確認できる
D:膜割れ、故障の頻度が多く問題となるレベル
【0277】
(脆性)
23℃15%の環境下で、3cm×10cmサイズにカットしたインクジェット記録媒体を1晩放置し、その後直径の異なる数種の円柱に外側が受像層面になるように巻きつけ、インク受像層に割れが発生するかどうか目視で確認した。われが発生しない最も小さい円柱の径に応じて、以下のようにランク付けした。
−評価基準−
A:円柱の直径が10mmまで割れが発生しない
B:円柱の直径が20mmまで割れが発生しない
C:円柱の直径が30mmまで割れが発生しない
D:円柱の直径が30mmを超えて割れが発生する。
【0278】
【表1】

【0279】
前記表1に示すように、試験例1〜8では、塗布に用いる塗布液の安定性を良好に維持しながら、塗布面状が良好で脆性が軽減されたインク受容層が得られ、記録後には耐オゾン性が良好であり、画像の滲みが少なく抑えられた。
これに対し、試験例9〜10では、下塗り層に塩化マグネシウムがないと耐オゾン性が確保できず、また塗布膜形成液中に塩化マグネシウムを混入させると、耐オゾン性が確保できないだけでなく、塗布液安定性や塗布面状が悪化してしまい、さらに記録後の画像滲みも悪化しまった。
【0280】
[実施例1]
<インクセット1の調製>
(イエローインクY−101の調製)
下記の成分にイオン交換水を加え1リットルとした後、30〜40℃で加熱しながら1時間撹拌した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過してイエローインク(Y−101)を調製した。
【0281】
〔イエローインク:Y−101処方〕
(固形分)
・イエロー染料 ・・・ 60.0g/l
(下記構造式で示されるイエロー染料Y−1のカリウム塩)
・プロキセルXL−2(AVECIA(株)製) ・・ 1.0g/l
(液体成分)
・グリセリン ・・・ 81g/l
・トリエチレングリコール ・・・ 96g/l
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル ・・・ 94g/l
・オルフィンE1010(信越化学製) ・・・ 20g/l
【0282】
【化16】

【0283】
(シアンインクC−101の調製)
下記の成分にイオン交換水を加え1リットルとした後、30〜40℃で加熱しながら1時間撹拌した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過してシアンインク(C−101)を調製した。
【0284】
〔シアンインクC−101処方〕
(固形分)
・シアン染料 ・・・ 54.0g/l
(下記構造式で示されるシアン染料C−1)
・尿素 ・・・ 41.0g/l
・プロキセルXL−2(AVECIA(株)製) ・・・ 1.0g/l
(液体成分)
・グリセリン ・・・ 91g/l
・トリエチレングリコール ・・・ 18g/l
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル ・・・ 97g/l
・1,2−ヘキサンジオール ・・・ 12g/l
・2−ピロリドン ・・・ 27g/l
・オルフィンE1010(信越化学製) ・・・ 10g/l
【0285】
【化17】

【0286】
(マゼンタインクM−101の調製)
下記の成分にイオン交換水を加え1リットルとした後、30〜40℃で加熱しながら1時間撹拌した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過してマゼンタ用インク液(M−101)を調製した。
【0287】
〔マゼンタインクM−101処方〕
(固形分)
・マゼンタ色素 ・・・ 30.0g/l
(特開2007−138124号公報[0887]記載のMAGENTA−1の化合物)
・プロキセルXL−2(AVECIA(株)製) ・・・ 1.0g/l
・尿素 ・・・ 48g/l
(液体成分)
・グリセリン ・・・ 84g/l
・トリエチレングリコール ・・・ 122g/l
・ベタイン化合物 ・・・ 17g/l
(特開2007−138124号公報[0901]に記載のベタイン−1)
【0288】
(ブラックインクBk−101の調製)
下記の成分にイオン交換水を加え1リットルとした後、30〜40℃で加熱しながら1時間撹拌した。その後、平均孔径0.25μmのミクロフィルターで減圧濾過してブラックインク(Bk−101)を調製した。
【0289】
〔ブラックインク:Bk−101処方〕
(固形分)
・ブラック染料1 ・・・ 62.0g/l
(下記ブラック用主染料Bk−1)
・ブラック染料2 ・・・10.0g/l
(下記ブラック用補色染料Bk−2)
・プロキセルXL−2(AVECIA(株)製) ・・・ 1.0g/l
(液体成分)
・グリセリン ・・・ 83g/l
・トリエチレングリコール ・・・ 11g/l
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル ・・・ 84g/l
・1,2−ヘキサンジオール ・・・ 16g/l
・オルフィンE1010(信越化学製) ・・・ 10g/l
【0290】
【化18】

【0291】
インクセット2として、本発明におけるインクとは異なるインクジェットプリンタMP610(キヤノン(株)製)用純正インクを選定した。
【0292】
<インクジェット記録媒体の準備>
上記試験例で得られたインクジェット記録媒体(1)〜(10)を準備した。
【0293】
前記インクセット1については、インクジェットプリンタA700(エプソン(株)製)にインクセット1を詰め替え、表2に記載のインクジェット記録媒体を用いて、以下の評価を行なった。下記に記載の評価を実施した。インクセット2についてはインクジェットプリンタMP610(キヤノン(株)製)と純正インクを組み合わせ、表2に記載のインクジェット記録媒体を用いて、以下の評価を行なった。評価結果を下記表2に示す。
<評価>
(耐湿性(滲み))
23℃、50%RHの環境下で各インクジェット記録媒体上にマゼンタとブラックとが隣り合う格子状のパターン(格子の一辺の長さ0.28mm)を3cmの四角形になるようにプリントした。プリント直後、インクジェット記録媒体を23℃、90%RHの環境下に移動し、7日間放置した。7日後、23℃、50%RH環境下で充分に乾燥させた後に目視で滲みの程度を評価し、下記の評価基準にしたがってランク付けを行なった。
−評価基準−
A:滲みが認識できなかった。
B:わずかに滲んでいたが通常使用では気がつかない範囲であった。
C:滲みは気がつくレベルであったが、実用上許容な範囲であった。
D:滲みが大きく、実用上許容できない範囲であった。
【0294】
(耐光性)
デジタルカラー写真プリント画像保存性試験方法規格(JEITA CP−3901)に従い、耐光性寿命を評価した。試料は、23℃、50%RHの環境下で印字後、同環境下で24時間乾燥したのち耐光性試験機に入れた。耐光性試験機は、アトラス社製Ci5000を用い、試験時には紫外線遮断フィルタとして、富士フイルム(株)製SC−37を用いた。試験期間中の照度は約70000lux、槽内の温湿度は25℃50%RHであった。試験前後の反射濃度は反射濃度測定計(Xrite社製の「Xrite938」)にて測定した。
−評価基準−
A:寿命が150年以上
B:寿命が100年以上、150年未満
C:寿命が50年以上、100年未満
D:寿命が50年未満
【0295】
(耐オゾン性)
デジタルカラー写真プリント画像保存性試験方法規格(JEITA CP−3901)に従い、耐オゾン性寿命を評価した。試料は、23℃、50%RHの環境下で印字後、同環境下で24時間乾燥したのちオゾン槽に入れた。オゾン槽中のオゾン濃度は5ppmであり、温湿度は25℃50%RHであった。試験前後の反射濃度は反射濃度測定計(Xrite社製の「Xrite938」)にて測定した。
−評価基準−
A:寿命が20年以上
B:寿命が10年以上、20年未満
C:寿命が5年以上、10年未満
D:寿命が5年未満
【0296】
(印画濃度)
23℃50%RHの環境下で、試験例で得られたインクジェット記録媒体上にブラック(K)のベタ画像を印画し、光学濃度(O.D.)を反射濃度測定計(Xrite社製の「Xrite938」)により測定した。
−評価基準−
A:濃度が2.3以上
B:濃度が2.15以上、2.3未満
C:濃度が2.0以上、2.15未満
D:濃度が2.0未満
【0297】
【表2】

【0298】
表2から、本発明におけるインクジェット記録媒体及びインクを用いた場合は、上記いずれの評価においても優れていることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、バインダー樹脂及び2価の水溶性金属塩を含む下塗り層形成液を塗布して下塗り層を形成する下塗り層形成工程と、少なくとも無機微粒子及びアセトアセチル変性ポリビニルアルコールを含む塗布膜形成液を、前記下塗り層の上に塗布して塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、前記塗布膜を形成すると同時に、または前記塗布膜の乾燥途中であって塗布膜が減率乾燥を示す前に、分子内に2個以上のアミノ基を有する水溶性多官能化合物を含む硬化溶液を前記塗布膜の上に付与する溶液付与工程と、を有するインクジェット記録媒体の製造方法で製造されたインクジェット記録媒体上に、下記一般式(M)で表される水溶性染料を含有するインク、下記一般式(Bk)で表される水溶性染料を含有するインク、下記一般式(Y)で表される水溶性染料を含有するインク、および下記一般式(C)で表される水溶性染料を含有するインクから選ばれる少なくとも1種を、インクジェット方式で付与して画像を記録する工程を含むインクジェット記録方法。
【化1】



[一般式(M)中、A31は5員複素環基を表す。B31およびB32は各々=CR31−、−CR32=を表すか、あるいはいずれか一方が窒素原子、他方が=CR31−または−CR32=を表す。R35、R36は各々独立して、水素原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、複素環スルホニル基、またはスルファモイル基を表わす。
、R31、R32は各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基、シアノ基、カルボキシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基、アシル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、シリルオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アリールアミノ基、複素環アミノ基を含む)、アシルアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基、複素環スルホニルアミノ基、ニトロ基、アルキルもしくはアリールチオ基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、複素環スルホニル基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、複素環スルフィニル基、スルファモイル基、スルホン酸基、または複素環チオ基を表す。
31とR35、またはR35とR36は、互いに結合して5乃至6員環を形成しても良い。
なお、A31、R31、R32、R35、R36およびGの少なくとも1つは、スルホン酸基を有し、対イオンとしてLiまたは4級アンモニウムイオンを有する。
一般式(Bk)中、A、AおよびAは、各々独立に、芳香族基または複素環基を表す。AおよびAは1価の基であり、Aは2価の基である。
一般式(Y)中、Gはヘテロ環基を表し、R、X、Y、Z、およびQは置換基を表し、nは1〜3の整数を表す。nが1の時は、R、X、Y、Z、Q、およびGは1価の置換基を表す。nが2の時は、R、X、Y、Z、Q、およびGは1価または2価の置換基を表し、少なくとも1つは2価の置換基を表す。nが3の時は、R、X、Y、Z、Q、およびGは1価、2価または3価の置換基を表し、少なくとも2つが2価の置換基を表すかまたは少なくとも1つが3価の置換基を表す。
一般式(C)中、X、X、X及びXは、それぞれ独立に、−SO−Z、−SO−Z、−SONV、−CONV、−COZ、−CO−Z及びスルホ基のいずれかを表す。ここでZは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。
およびVは、同一または異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。Z、V1およびV2で表される置換基はさらに置換基を有していてもよい。
、Y、Y及びYは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、ヘテロ環オキシ基、アゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、ヘテロ環チオ基、ホスホリル基、アシル基、又はイオン性親水性基を表し、各々の基はさらに置換基を有していてもよい。
〜a及びb〜bは、それぞれX〜X及びY〜Yの置換基数を表す。そして、a〜aは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、すべてが同時に0になることはない。b〜bは、それぞれ独立に、0〜4の整数を表す。
Mは、水素原子、金属原子若しくはその酸化物、水酸化物又はハロゲン化物である。
ただし、X、X、X、X、Y、Y、Y及びYの内の少なくとも1つは、イオン性親水性基であるか又はイオン性親水性基を置換基として有する基である]
【請求項2】
前記硬化溶液が、更に無機微粒子とポリビニルアルコール(アセトアセチル変性ポリビニルアルコールを除く)とを含むことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
【請求項3】
前記塗布膜形成液が、少なくとも無機微粒子及びアセトアセチル変性ポリビニルアルコールを含む第1の溶液と、少なくとも無機微粒子及びポリビニルアルコール(アセトアセチル変性ポリビニルアルコールを除く)を含む第2の溶液とからなり、
前記塗布膜形成工程が、前記第1の溶液の上に前記第2の溶液が位置するように同時重層塗布し、塗布膜を重層形成する工程であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録方法。
【請求項4】
前記塗布膜形成液が水溶性セルロース誘導体を含み、前記塗布膜形成液が前記第1の溶液と前記第2の溶液とからなるときは、該第1の溶液及び該第2の溶液の少なくとも一方が前記水溶性セルロース誘導体を含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項5】
前記塗布膜形成液が、水溶性アルミニウム化合物を含むことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
【請求項6】
前記硬化溶液が、更に無機微粒子とポリビニルアルコール(アセトアセチル変性ポリビニルアルコールを除く)とを含み、前記第1の溶液と、前記第2の溶液と、前記硬化溶液とを、支持体に形成した下塗り層上に該下塗り層側から順に第1の溶液、第2の溶液、硬化溶液の位置関係になるように同時重層塗布し、下塗り層上に塗布膜を重層形成することを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。

【公開番号】特開2010−234555(P2010−234555A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82534(P2009−82534)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】