説明

インクジェット記録材料

【課題】インク吸収性、発色性、インク定着性、写像性、及び耐傷性に優れたインクジェット記録材料を提供する。
【解決手段】非吸収性支持体上に少なくとも2層からなるインク受容層を設けたインクジェット記録材料において、該支持体側に近いインク受容層(A)が無機微粒子を主体として含有し、該支持体から最も離れたインク受容層(B)が、一次粒子が球状で平均一次粒子径が20〜60nmのシリカゾルに、水に溶解したとき液性が酸性を示すアルミニウム塩を添加して得られる平均二次粒子径が90〜200nmのシリカアルミナ複合粒子を主体として含有し、且つ1%水溶液の20℃におけるB型粘度が1000mPa・s以上であるカチオン性ポリアクリルアミド樹脂を含有することを特徴とするインクジェット記録材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録材料に関し、詳しくはインク吸収性、発色性、インク定着性、写像性、及び耐傷性の全てに優れたインクジェット記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式に使用される記録材料としては、通常の紙やフィルムからなる支持体上に、親水性ポリマーを主体とする膨潤性のインク受容層や、非晶質シリカ等の顔料を主体とする多孔質性のインク受容層を設けてなる記録材料が知られている。
【0003】
多孔質性のインク受容層を設ける場合には、顔料として極微細な無機粒子、例えば、粉砕あるいは分散した気相法シリカや湿式法シリカ等の無機超微粒子をインク受容層の顔料成分として用いることが提案されている。例えば、特公平3−56552号公報、特開平10−119423号公報、特開2000−211235号公報、特開2000−309157号公報に気相法シリカの使用例が、特開平9−286165号公報、特開平10−181190号公報に粉砕沈降法シリカの使用例が、特開2001−277712号公報に粉砕ゲル法シリカの使用例が開示されている。また、特開昭62−174183号公報、特開平2−276670号公報、特開平5−32037号公報、特開平6−199034号公報等にアルミナやアルミナ水和物を用いた記録材料が開示されている。
【0004】
近年のインクジェット記録技術の進歩に伴い、銀塩方式のカラー写真に迫る高画質、保存性、高級感のある面質や光沢等が要求されるようになってきた。フォトグレードといわれる銀塩写真並の高画質を要求されるインクジェット記録材料では、光沢や面質の点で支持体として紙をポリエチレン樹脂でラミネートしたいわゆるRCベースや、ポリエステルフィルム等非吸収性支持体が一般的に使用されている。これら非吸収性支持体を利用した場合、支持体上に設けられたインク受容層で全てのインクを吸収する必要があり、インク受容層にはインクの乾燥性や吸収性等に対して高いレベルが要求される。
【0005】
また、ハガキやカレンダー等のカード用途やフォトアルバム用途等にインクジェット記録材料が用いられてきているが、このような記録材料はインク吸収性や発色性に加えて、プリンターで印字される際や印字後の耐傷性が要求される。この課題に対して、例えば特開2003−94800号公報(特許文献1)、特開2003−159862号公報(特許文献2)、特開2003−285537号公報(特許文献3)ではコロイダルシリカを含有する表面保護層を設けることが提案されている。しかし、表面保護層に微細亀裂が発生することによって耐傷性、写像性を低下させてしまうことがあった。また、耐傷性を向上させるために表面保護層を厚く設けるとインク吸収性が悪化してしまうことがあった。
【0006】
なお、写像性とは、従来の光沢計では測定不可能な、目視で見た際の光沢感に相関のある指標であり、塗膜表面に物体が映ったとき、その物体の像がどの程度鮮明に、また歪みなく映し出されるかの指標として、特に自動車ボディー塗装の分野において美観要素を決定づける重要な特性として扱われてきたものである。光沢度が高くても像に歪みやひずみがある場合には、必ずしも目視で見た際の光沢感は得られない。写像性試験機による写像性の評価が、高光沢を有するインクジェット記録材料の評価においても、鮮明度合いの指標として有効であることが見出されている。
【0007】
一方、塗布液の粘性を調整する手段として、例えば特開2002−293006号公報(特許文献4)には塗布液に1%水溶液の20℃におけるB型粘度が1000mPa・s以上である樹脂を含有させることが提案されている。また、特開平10−114142号公報(特許文献5)には非晶質合成シリカ、水性結合剤、及びカチオン性ポリアクリルアミドを含有する塗工液によってカーテン塗布適性を改善することが提案されている。しかしながら、表面保護層にこのような樹脂を含有すると、塗布層の透明性が低下し、写像性や発色濃度を低下させてしまうことがあった。また、インク吸収性を阻害してしまうことがあった。
【0008】
一方、国際公開第99/64354号パンフレット(特許文献6)にはシリカアルミナ複合ゾルの製造方法及びこれを用いた記録媒体が開示され、また、特開2002−347337号公報(特許文献7)、特開2002−370444号公報(特許文献8)、特開2003−291488号公報(特許文献9)等には複数のインク受容層を有し、支持体から最も離れたインク受容層にシリカアルミナ複合粒子を含有し、表面保護層とするインクジェット記録材料が開示されている。しかし、インク定着性及び写像性に十分満足できるものではなかった。従って、インク吸収性、発色性、インク定着性、写像性及び耐傷性の全てに優れるインクジェット記録材料が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−94800号公報
【特許文献2】特開2003−159862号公報
【特許文献3】特開2003−285537号公報
【特許文献4】特開2002−293006号公報
【特許文献5】特開平10−114142号公報
【特許文献6】国際公開第99/64354号パンフレット
【特許文献7】特開2002−347337号公報
【特許文献8】特開2002−370444号公報
【特許文献9】特開2003−291488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、インクジェット記録材料において、インク吸収性、発色性、インク定着性、写像性、及び耐傷性の全てに優れたインクジェット記録材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の上記課題は以下の手段で解決された。
(1)非吸収性支持体上に少なくとも2層からなるインク受容層を設けたインクジェット記録材料において、該支持体側に近いインク受容層(A)が無機微粒子を主体として含有し、該支持体から最も離れたインク受容層(B)が、一次粒子が球状で平均一次粒子径が20〜60nmのシリカゾルに、水に溶解したとき液性が酸性を示すアルミニウム塩を添加して得られる平均二次粒子径が90〜200nmのシリカアルミナ複合粒子を主体として含有し、且つ1%水溶液の20℃におけるB型粘度が1000mPa・s以上であるカチオン性ポリアクリルアミド樹脂を含有することを特徴とするインクジェット記録材料。
(2)前記カチオン性ポリアクリルアミド樹脂の含有量が、前記シリカアルミナ複合粒子に対して固形分で0.5〜1.5質量%の範囲である前記(1)に記載のインクジェット記録材料。
(3)前記インク受容層(A)が主体として含有する無機微粒子が、アルミナまたはアルミナ水和物である前記(1)または(2)に記載のインクジェット記録材料。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって、インク吸収性、発色性、インク定着性、写像性、及び耐傷性の全てに優れたインクジェット記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のインクジェット記録材料は支持体上に少なくとも2層からなるインク受容層を設け、該支持体側に近いインク受容層(A)が無機微粒子を主体として含有し、該支持体から最も離れたインク受容層(B)が、一次粒子が球状で平均一次粒子径が20〜60nmのシリカゾルに、水に溶解したとき液性が酸性を示すアルミニウム塩を添加して得られる平均二次粒子径が90〜200nmのシリカアルミナ複合粒子を主体として含有し、且つ1%水溶液の20℃におけるB型粘度が1000mPa・s以上であるカチオン性ポリアクリルアミド樹脂を含有するものである。
【0014】
ここでインク受容層(A)が無機微粒子を主体として含有するとは、インク受容層(A)を構成する全固形分に対して無機微粒子を50質量%以上含有することであり、好ましくは65質量%以上含有することであり、より好ましくは70質量%以上含有することである。また、インク受容層(B)がシリカアルミナ複合粒子を主体として含有するとは、インク受容層(B)を構成する全固形分に対してシリカアルミナ複合粒子を50質量%以上含有することであり、好ましくは80質量%以上含有することであり、より好ましくは90質量%以上含有することである。
【0015】
本発明のインク受容層(A)に主体に含有される無機微粒子としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ケイ酸アルミニウム、ケイソウ土、ケイ酸カルシウム、合成シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナ水和物等が挙げられる。これらの中でも、高いインク吸収性が得られることからアルミナ、アルミナ水和物、非晶質合成シリカが好ましいが、本発明においては高い写像性が得られることからアルミナ、アルミナ水和物が特に好ましい。
【0016】
本発明において、インク受容層(A)に主体に含有させる無機微粒子としてアルミナを用いる場合、酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ−アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶とγグループ結晶が好ましい。特に気相法により製造される気相法アルミナが好ましい。気相法アルミナは日本アエロジル(株)よりAEROXIDEタイプとして入手することができる。γ−アルミナは一次粒子を10nm程度まで小さくすることが可能であるが、本発明では、数千から数万nmの二次粒子結晶を超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等を使用して平均二次粒子径を好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下にまで粉砕したものが使用される。
【0017】
本発明で用いられるアルミナ水和物はAl・nHO(n=1〜3)の構成式で表され、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。本発明に使用されるアルミナ水和物の平均二次粒子径は好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下である。
【0018】
本発明に用いられる上記のアルミナ、及びアルミナ水和物は、酢酸、乳酸、ギ酸、硝酸等の公知の分散剤によって分散された分散液の形態から使用されることが好ましい。
【0019】
本発明において、インク受容層(A)に主体に含有させる無機微粒子として非晶質合成シリカを用いることもできる。非晶質合成シリカは製造法によって湿式法シリカ、気相法シリカに大別することができる。更に湿式法シリカは、製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。
【0020】
非晶質合成シリカの中で気相法シリカを使用すると、特に高い透明性を得ることができる。気相法シリカは乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって製造される。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは、日本アエロジル(株)からアエロジル、(株)トクヤマからQSタイプとして市販されており入手することができる。
【0021】
気相法シリカを用いる場合、その平均一次粒子径は5〜50nm、好ましくは5〜20nmであり、且つ高いインク吸収性を得るためにBET法による比表面積が90〜400m/gのものを用いるのが好ましい。BET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の1つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて、表面積が得られる。
【0022】
上記のようにして製造された気相法シリカは、数nm〜数十nmの一次粒子が網目構造あるいは鎖状につながりあって二次的に凝集した状態で存在する。本発明では、この凝集粒子の平均粒径(平均二次粒子径)が好ましくは500nm以下になるまで、より好ましくは200nm以下になるまで分散される。平均二次粒子径は、透過型電子顕微鏡による写真撮影で求めることができる。
【0023】
気相法シリカの分散方法としては、通常のプロペラ撹拌、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌等で気相法シリカと分散媒を予備混合し、次にボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を使用して分散を行うことが好ましい。
【0024】
本発明において、インク受容層(A)に主体に含有させる無機微粒子として湿式法シリカを用いる場合、平均一次粒子径は好ましくは50nm以下、より好ましくは3〜40nmであり、更に湿式法シリカが沈降法シリカであることが特に好ましい。本発明における湿式法シリカの吸油量は120〜210ml/100gの範囲が好ましく、160〜210ml/100gの範囲が特に好ましい。吸油量は、JIS−K5101の記載に基づき測定される。
【0025】
本発明で用いられる湿式法シリカとしては、沈降法シリカあるいはゲル法シリカであることが好ましい。沈降法シリカは、珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造される。製造過程で粒子成長したシリカ粒子は、凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の工程を経て製品化される。この方法で製造されたシリカの二次粒子は緩やかな凝集粒子となり、比較的粉砕し易い粒子が得られる。沈降法シリカとしては、例えば東ソーシリカ(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシール、ファインシールとして市販されている。
【0026】
ゲル法シリカは、珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造される。この場合、熟成中に小さなシリカ粒子が溶解し、大きな粒子の一次粒子間に一次粒子どうしを結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、水澤化学工業(株)からミズカシルとして、グレースジャパン(株)からサイロジェットとして市販されている。
【0027】
これらの湿式法シリカの平均粒径(平均二次粒子径)は、通常1μm以上である。本発明では、これらの湿式法シリカを、好ましくは平均二次粒子径が500nm以下になるまで、より好ましくは200nm以下になるまで粉砕する。粉砕された湿式法シリカの平均二次粒子径は、前述したように透過型電子顕微鏡で求めることができる。
【0028】
湿式法シリカの粉砕工程は、分散媒にシリカ微粒子を添加し混合(予備分散)する一次分散工程と、該一次分散工程で得られた粗分散液中のシリカを粉砕する二次分散工程からなる。一次分散工程における予備分散は、通常のプロペラ撹拌、歯状ブレード型分散機、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌、超音波撹拌等で行うことができる。湿式法シリカの粉砕方法としては、分散媒中に分散したシリカを機械的に粉砕する湿式分散法が好ましく使用できる。湿式分散機としては、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜旋回型分散機等を使用することができるが、本発明では特にビーズミル等のメディアミルが好ましく用いられる。
【0029】
本発明において、インク受容層(A)に主体に含有する無機微粒子として気相法シリカまたは湿式シリカを使用する場合、上記分散あるいは粉砕する工程でカチオン性化合物を添加してカチオン化することが好ましい。このとき、ポリビニルアルコールのような親水性バインダーやほう酸等の架橋剤は含まない状態で分散するのが好ましい。水中に分散されたシリカにカチオン性化合物を添加すると凝集物が発生することが多いが、これを粉砕処理することによって、水のみに分散するよりも高濃度分散が可能となり、その結果分散効率が上昇し、より微粒子に粉砕することができる。更に、高濃度分散液を作製することによって、塗布液調製時に塗布液の高濃度化が可能になり、生産効率が向上する等の利点がある。
【0030】
カチオン化された気相法シリカとして、例えば、特開平11−321079号公報、特開2000−239536号公報、特開2001−19421号公報、特開2001−80204号公報、特開2001−207078号公報等にカチオン性ポリマーの存在下で気相法シリカを分散する方法が記載されており、何れも本発明に採用することができる。
【0031】
気相法及び湿式法シリカの粉砕または分散に用いられるカチオン性化合物としては、カチオン性ポリマーまたは水溶性金属化合物を使用できる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59−20696号公報、特開昭59−33176号公報、特開昭59−33177号公報、特開昭59−155088号公報、特開昭60−11389号公報、特開昭60−49990号公報、特開昭60−83882号公報、特開昭60−109894号公報、特開昭62−198493号公報、特開昭63−49478号公報、特開昭63−115780号公報、特開昭63−280681号公報、特開平1−40371号公報、特開平6−234268号公報、特開平7−125411号公報、特開平10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特に、カチオン性ポリマーとしてジアリルアミン誘導体が好ましく用いられる。これらのカチオンポリマーの分子量は、2000〜10万程度が好ましく、特に2000〜3万程度が好ましい。分子量が10万よりも大きくなると、分散液が高粘度となりすぎるため好ましくない。
【0032】
水溶性金属化合物としては、例えば水溶性の多価金属塩が挙げられ、中でもアルミニウムもしくは周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物が好ましい。特に好ましくは水溶性アルミニウム化合物である。水溶性アルミニウム化合物としては、例えば無機塩としては塩化アルミニウムまたはその水和物、硫酸アルミニウムまたはその水和物、アンモニウムミョウバン等が知られている。更に、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が知られており、好ましく用いられる。
【0033】
前記塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記の一般式1、2、または3で示され、例えば[Al(OH)153+、[Al(OH)204+、[Al13(OH)345+、[Al21(OH)603+等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
【0034】
[Al(OH)Cl6−n 一般式1
[Al(OH)AlCl 一般式2
Al(OH)Cl(3n−m) 0<m<3n 一般式3
【0035】
これらのものは多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名で、また他のメーカーからも市販されており、各種グレードのものが容易に入手できる。
【0036】
本発明に用いられる周期表4A族元素を含む水溶性金属化合物としては、チタンまたはジルコニウムを含む水溶性金属化合物がより好ましい。チタンを含む水溶性金属化合物としては、塩化チタン、硫酸チタンが挙げられる。ジルコニウムを含む水溶性金属化合物としては、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム化合物等が挙げられる。本発明において、水溶性とは常温常圧下で水に1質量%以上溶解することを目安とする。
【0037】
本発明において、インク受容層(A)に含有される無機微粒子は各々単独で用いてもよいが、任意の比率で混合して使用することもできる。
【0038】
本発明において、インク受容層(A)には皮膜としての特性を維持するために有機バインダーを含有することが好ましい。有機バインダーとしては、各種水溶性ポリマーあるいはポリマーラテックスが好ましく用いられる。水溶性ポリマーとしては、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、澱粉、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸エステル系等やそれらの誘導体が使用されるが、特に好ましい有機バインダーは、完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
【0039】
ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したものである。また、平均重合度500〜5000のポリビニルアルコールが好ましい。
【0040】
また、有機バインダーとして用いられるポリマーラテックスとしては、例えば、アクリル系ラテックスとしては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ヒドロキシアルキル基等を有するアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステル類、アクリルニトリル、アクリルアミド、アクリル酸及びメタクリル酸等の単独重合体または共重合体、あるいは上記モノマーと、スチレンスルホン酸やビニルスルホン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、ビニルメチルエーテル、酢酸ビニル、スチレン、ジビニルベンゼン等との共重合体が挙げられる。オレフィン系ラテックスとしては、ビニルモノマーとジオレフィン類のコポリマーからなるポリマーが好ましく、ビニルモノマーとしてはスチレン、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、酢酸ビニル等が好ましく用いられ、ジオレフィン類としてはブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0041】
本発明において、インク受容層(A)に含有される有機バインダーは各々単独で用いてもよいが、任意の比率で混合して使用することもできる。
【0042】
インク受容層(A)における有機バインダーの比率は、用いられる無機微粒子の種類によって好ましい範囲が適宜選択される。無機微粒子に対する有機バインダーの比率は、アルミナまたはアルミナ水和物を用いる場合は4〜30質量%の範囲が好ましく、6〜20質量%の範囲がより好ましく、8〜12質量%の範囲が更に好ましい。気相法シリカを用いる場合は15〜30質量%の範囲が好ましく、16〜27質量%の範囲がより好ましく、17〜25質量%の範囲が更に好ましい。湿式法シリカを用いる場合は10〜20質量%の範囲が好ましく、12〜19質量%の範囲がより好ましい。
【0043】
本発明におけるインク受容層(A)の乾燥塗布量は好ましくは12〜40g/mであり、より好ましくは20〜36g/mである。乾燥塗布量が少ないとインク吸収性が低下する場合があり、逆に多いとひび割れが発生する場合がある。
【0044】
本発明のインクジェット記録材料は、非吸収性支持体から最も離れたインク受容層(B)が、一次粒子が球状で一次粒子径が20〜60nmのシリカゾルに、水に溶解したとき液性が酸性を示すアルミニウム塩を添加して得られる平均二次粒子径が90〜200nmのシリカアルミナ複合粒子を主体として含有し、且つ1%水溶液の20℃におけるB型粘度が1000mPa・s以上であるカチオン性ポリアクリルアミド樹脂を含有するものである。インク受容層(B)に該シリカアルミナ複合粒子を含有することによって、シリカ表面に生成付着したアルミナにより効率よく染料が定着し優れた発色性とインク定着性を発現するほか、高いインク吸収性を得ることができる。
【0045】
本発明に用いられるシリカアルミナ複合ゾルは、シリカゾルに、水に溶解したとき液性が酸性を示すアルミニウム塩を添加することによって得られたコロイド溶液であって、コロイド粒子としてシリカとアルミナを含む凝集粒子が水性媒体中に分散したものである。シリカアルミナ複合ゾルを得るために用いられるシリカゾルの作製には、一次粒子が球状で平均一次粒子径が20〜60nmの範囲のシリカが用いられる。より好ましい範囲は25〜50nmである。平均一次粒子径が上記範囲より小さい場合、複合ゾルを乾燥したときに平均細孔半径が大きなキセロゲルができないため、インク吸収性、発色性及びインク定着性が悪化する。また上記範囲より大きい場合、写像性の低下を招く。前記シリカの平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡を利用することで得られる。
【0046】
本発明に用いられるシリカアルミナ複合ゾルは、例えば、前述の特許文献6〜9に記載されている製造方法によって製造することができる。原料となるシリカゾルは、例えば日揮触媒化成社製のカタロイドSI−50、SI−45P等の商品名で市販されているシリカゾルを使用するのが好ましい。シリカゾルのpHや溶媒は特に限定されないが、溶媒については操作が簡単な点から水が好ましい。また、適宜、水で希釈してもよい。
【0047】
液性が酸性を示すアルミニウム塩としては、水酸化アルミニウムと強酸との塩(以下酸性アルミニウム塩)が好ましい。酸性アルミニウム塩としては、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム等の無機酸塩、または酢酸アルミニウム等の有機酸塩が挙げられる。
【0048】
酸性アルミニウム塩としては、ポリ塩化アルミニウムを用いるのが好ましい。ポリ塩化アルミニウム塩は化学式が[Al(OH)Cl6−n(1<n<6,m<10)で表される化合物である。例えば多木化学社製のタキバイン#1500や(株)理研グリーン製のピュラケムWTが市販されているものとして挙げられる。
【0049】
シリカゾルに酸性アルミニウム塩を添加する方法としては、原料となるシリカゾルに対し、所定量の酸性アルミニウム塩を徐々に添加するのが好ましい。シリカゾルに徐々に酸性アルミニウム塩を添加していくと、ゾル中のシリカ粒子の表面に徐々にアルミナが生成して付着する。アルミナの付着量が増大するにつれゾル粒子の表面電位は負から正に変化する。その途中で電位が0の状態を通るので粒子の凝集が起こり、シリカ及びアルミナを含む凝集粒子が形成される。
【0050】
酸性アルミニウム塩の添加量は、粒子のゼータ電位が+10mV以上になるだけの添加量であることが好ましい。本発明においてはSiOに換算して100gのシリカに対してAlに換算して1〜50gの酸性アルミニウム塩を添加するのが好ましい。
【0051】
本発明に用いられるシリカアルミナ複合ゾルの凝集粒子の平均二次粒子径は90〜200nmの範囲であり、より好ましい範囲は130〜200nmである。平均二次粒子径が小さいとインク吸収性、発色性及びインク定着性が低下し、大きいと写像性が悪化する。前記シリカアルミナ複合ゾルの平均二次粒子径は、透過型電子顕微鏡を利用することで得られる。
【0052】
上記のようにして合成したシリカアルミナ複合ゾルの凝集粒子の平均二次粒子径が200nmより大きい場合は、解膠剤を添加したり、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機や超音波分散機等を用いて分散し、90nm〜200nmに調整する。解膠剤としては、特に限定されず、塩酸、硝酸、硫酸、アミド硫酸等の無機酸、酢酸、乳酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸を使用することができる。これらの解膠剤は、単独で用いても適宜混合して用いてもよい。
【0053】
本発明において、インク受容層(B)は、1%水溶液の20℃におけるB型粘度が1000mPa・s以上であるカチオン性ポリアクリルアミド樹脂を含有する。B型粘度の上限は7000mPa・s以下であることが好ましい。該カチオン性ポリアクリルアミド樹脂の導入によって微細亀裂発生を抑制する効果と、表面の平滑性を向上させる効果が得られ、結果として高い写像性を付与できる。更に、該樹脂がカチオン性であることにより、発色性、インク定着性を改善する効果も得られる。
【0054】
前述したように写像性とは、従来の光沢計では測定不可能な、目視で見た際の光沢感に相関のある指標であり、光沢度が高くても像に歪みやひずみがある場合には、必ずしも目視で見た際の光沢感は得られない。本発明では、視覚による光沢感との相関性に優れる写像性を測定することによって光沢の評価を行った。
【0055】
この写像性数値の測定方法は、JIS−H8686で規定されており、光学的装置を使用し、光学くしを通して得られた光量の波形から、写像性数値を像鮮明度として求める。即ち、光学くしを移動させて、記録紙上の最高波形(M)及び最低波形(m)を読み取り、次の(式1)により像鮮明度を求める。なお、光学くしは暗部明部の比が1:1で、その幅は0.125mm、0.5mm、1.0mm、及び2.0mmの各種のものがある。本発明においては、これらの光学くしの幅の中でも、測定値差異が出やすい2.0mm幅の光学くしにおける測定値によって評価した。
【0056】
(式1)
C=(M−m)/(M+m)×100
ここで、C:写像性(%)、M:最高波形、m:最低波形を示す。
【0057】
写像性C値は、値が大きければ写像性が良いことを示し、値が小さければ「ボケ」や「歪み」が大きいことを示す。本発明者の知見では、光沢計で測定した光沢値が同じ値であっても、C値が大きければ目視による見た目の光沢感が高くなり、文字部と画線部とをより明確に際立たせることができることが分かっている。
【0058】
前記カチオン性ポリアクリルアミドは、アクリルアミドとカチオン性モノマーとの共重合体であるが、更にモノマー成分として(メタ)アクリル酸を加えて共重合した三元共重合体であってもよい。
【0059】
前記カチオン性モノマーの具体例としては、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルクロライド塩、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が挙げられる。
【0060】
前記カチオン性ポリアクリルアミドの分子量としては、塗布液の粘性調整の容易さから50万〜120万が好ましく、60万〜100万がより好ましい。
【0061】
前記カチオン性ポリアクリルアミドのカチオン価としては、1.5〜5.0mg/gが好ましく、1.8〜3.5mg/gがより好ましい。
【0062】
本発明において、前記カチオン性ポリアクリルアミド樹脂の含有量が、前記シリカアルミナ複合粒子に対して、固形分で0.05〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.5〜1.5質量%の範囲であることがより好ましい。この範囲より多いとインクジェットプリンターによる印字品位が低下する場合があり、この範囲より少ないと塗布液を高粘度化する効果が不足したり、インク定着性が低下する場合がある。
【0063】
本発明において、インク受容層(B)塗工液の20℃における粘度を10〜3000mPa・sとすると、塗布適性が優れるので好ましい。この範囲とすることにより、塗工液のレベリングが良好で優れた面質が得られるので好ましく、安定した連続塗工も可能となる。
【0064】
インク受容層(B)には皮膜としての特性を維持するために、インク受容層(A)に使用したものと同様の有機バインダーを使用できる。中でも、優れた皮膜強度を得られることから完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したものである。平均重合度500〜5000のポリビニルアルコールが好ましい。
【0065】
本発明において、インク受容層(B)に含有される有機バインダーは各々単独で用いてもよいが、本発明の効果を阻害しない限り、これらを任意の比率で混合して使用することもできる。
【0066】
インク受容層(B)における有機バインダーの比率は、シリカアルミナ複合粒子に対して2〜20質量%の範囲が好ましく、4〜15質量%の範囲がより好ましく、6〜12質量%の範囲が更に好ましい。
【0067】
本発明のインク受容層(B)は、インクを受容するか、あるいは速やかに透過させる性質を有する必要があり、その乾燥塗布量は好ましくは0.1〜10g/mであり、より好ましくは0.5〜8g/mであり、更に好ましくは1〜5g/mである。
【0068】
本発明のインク受容層(A)及びインク受容層(B)には、本発明の効果を阻害しない範囲で、インクジェット記録によって形成された記録画像の定着性、滲み耐性を更に向上させるために、カチオン性定着剤を含有させることができる。本発明におけるカチオン定着剤としては、非晶質合成シリカの分散・粉砕に使用するカチオン性化合物として前述した各種カチオン性ポリマーや、水溶性金属化合物が使用できるが、中でも水溶性アルミニウム化合物や水溶性ジルコニウム化合物に代表される水溶性多価金属を用いることが好ましい。これらの化合物は、無機塩や有機酸の単塩及び複塩、金属錯体等の何れであってもよい。
【0069】
水溶性アルミニウム化合物は、前述の気相法シリカや湿式法シリカの粉砕または分散に用いられる水溶性アルミニウム化合物と同義である。
【0070】
また、水溶性ジルコニウム化合物に関しても、前述の気相法シリカや湿式法シリカの粉砕または分散に用いられる水溶性ジルコニウム化合物と同義である。
【0071】
水溶性ジルコニウム化合物の中でもインク受容層を形成する塗布液に安定に添加でき、優れた滲み耐性を示す酢酸ジルコニウム(ジルコニル)化合物は特に好ましい。これらのものは、第一稀元素化学工業(株)からジルコゾールZA−20、ZA−30として、また日本軽金属(株)からも同様のものが市販されている。
【0072】
上記水溶性アルミニウム化合物及び水溶性ジルコニウム化合物の合計の添加量は、インク受容層の全固形分に対して、固形分で0.5〜10質量%の範囲が好ましく、1〜5質量%の範囲がより好ましい。
【0073】
本発明において、インク受容層(A)及びインク受容層(B)には、有機バインダーと共に硬膜剤を含有するのが好ましい。硬膜剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5トリアジン、米国特許第3,288,775号明細書記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号明細書記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号明細書記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号明細書記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号明細書、米国特許第2,983,611号明細書記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号明細書記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号明細書記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、ほう酸及びほう酸塩の如き無機硬膜剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にほう酸あるいはほう酸塩が好ましい。硬膜剤の添加量はインク受容層を構成する有機バインダーに対して、固形分で0.1〜40質量%の範囲が好ましく、0.5〜30質量%の範囲であることがより好ましい。
【0074】
また、本発明のインク受容層(A)及びインク受容層(B)には、炭素数3〜5のアルカンジオールの1種以上を含有してもよい。炭素数3〜5のアルカンジオールは常温では液体であり、吸湿性が高く、揮発性が低く、水溶性である。該化合物は、発色性の低下やひび割れを起こさずに、温度・湿度変動による塗層の収縮変動を抑えることで耐カール性を改善することができる。
【0075】
炭素数3〜5のアルカンジオールとしては、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオールがあり、それらの異性体は何れも含まれる。また、3−メチル−1,3−ブタンジオール等のような分岐のブタンジオールも含まれる。これらの中でも、炭素数が3〜4のプロパンジオールやブタンジオールが好ましく、特にプロパンジオールが好ましい。プロパンジオールとしてはプロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)とトリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)があり、特にプロピレングリコールが好ましい。該化合物の添加量の範囲は、インク受容層の全固形分に対して、固形分で0.1〜10質量%の範囲が好ましく、1〜5質量%の範囲がより好ましい。上記範囲であることによって、塗層の収縮変動を抑える効果と、インク吸収性、塗層の耐水性を得ることができる。
【0076】
更に、インク受容層(A)及びインク受容層(B)には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要に応じ、公知の各種無機顔料や、有機顔料、着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、分散剤、画像保存剤、消泡剤、可塑剤、架橋剤、着色剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤その他の添加剤を含有していてもよい。また、本発明のインク受容層(A)及びインク受容層(B)の塗布液のpHは、3.3〜6.5の範囲が好ましく、特に3.5〜5.5の範囲が好ましい。
【0077】
本発明のインクジェット記録材料は、支持体側に近いインク受容層(A)と支持体から最も離れたインク受容層(B)の少なくとも2層からなるインク受容層を有するが、本発明の効果を阻害しない限り、更に他のインク吸収層、インク定着層、中間層等を設けてもよい。
【0078】
本発明で使用される非吸収性支持体としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルム、及び紙と樹脂フィルムを貼り合わせたもの、基紙の両面にポリオレフィン樹脂層を被覆したポリオレフィン樹脂被覆紙等が挙げられる。中でもポリオレフィン樹脂被覆紙が好ましく用いられる。これらの非吸収性支持体の厚みは50〜300μm、好ましくは80〜260μmのものが用いられる。
【0079】
本発明において、非吸収性支持体として好ましく用いられるポリオレフィン樹脂被覆紙支持体(以降、ポリオレフィン樹脂被覆紙と称す)について詳細に説明する。本発明に用いられるポリオレフィン樹脂被覆紙は、その含水率は特に限定しないが、カール性より好ましくは5.0〜9.0質量%の範囲であり、より好ましくは6.0〜9.0質量%の範囲である。ポリオレフィン樹脂被覆紙の含水率は、任意の水分測定法を用いて測定することができる。例えば、赤外線水分計、絶乾重量法、誘電率法、カールフィッシャー法等を用いることができる。
【0080】
ポリオレフィン樹脂被覆紙を構成する基紙は、特に制限はなく、一般に用いられている紙が使用できるが、より好ましくは例えば写真用支持体に用いられているような平滑な原紙が好ましい。基紙を構成するパルプとしては天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種もしくは2種以上混合して用いられる。この基紙には一般に製紙で用いられているサイズ剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等の添加剤が配合される。更に、表面サイズ剤、表面紙力剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、染料、アンカー剤等が表面塗布されていてもよい。
【0081】
また、基紙の厚みに関しては特に制限はないが、紙を抄造中または抄造後カレンダー等にて圧力を印加して圧縮する等した表面平滑性の良いものが好ましく、その坪量は30〜250g/mが好ましい。
【0082】
基紙を被覆するポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンのホモポリマーまたはエチレン−プロピレン共重合体等のオレフィンの2つ以上からなる共重合体及びこれらの混合物であり、各種の密度、溶融粘度指数(メルトインデックス)のものを単独あるいは混合して使用できる。
【0083】
また、ポリオレフィン樹脂被覆紙の樹脂中には、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウム等の白色顔料、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩、ヒンタードフェノール化合物等の酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セシリアンブルー、フタロシアニンブルー等のブルーの顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガン紫等のマゼンタの顔料や染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤等の各種の添加剤を適宜組み合わせて加えるのが好ましい。
【0084】
ポリオレフィン樹脂被覆紙の主な製造方法としては、走行する基紙上にポリオレフィン樹脂を加熱溶融した状態で流延する、いわゆる押出コーティング法により製造され、基紙の両面が樹脂により被覆される。また、樹脂を基紙に被覆する前に、基紙にコロナ放電処理、火炎処理等の活性化処理を施すことが好ましい。樹脂被覆層の厚みとしては、5〜50μmが適当である。
【0085】
ポリオレフィン樹脂被覆面は、ポリオレフィン樹脂を押出機で加熱溶融し、紙基体とクーリングロールとの間にフィルム状に押出し、圧着、冷却して製造される。この際、クーリングロールはポリオレフィン樹脂コーティング層の表面形状の形成に使用され、樹脂層の表面の形状により鏡面、微粗面、またはパターン化された絹目状やマット状等に型付け加工することができる。
【0086】
前述のポリオレフィン樹脂被覆紙には、下引き層を設けるのが好ましい。この下引き層は、インク受容層が塗設される前に、予め非吸収性支持体の表面に塗布乾燥されたものである。この下引き層は、皮膜形成可能な水溶性ポリマーやポリマーラテックス等を主体に含有する。好ましくは、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース等の水溶性ポリマーであり、特に好ましくはゼラチンである。これらの水溶性ポリマーの付着量は、10〜500mg/mが好ましく、20〜300mg/mがより好ましい。更に、下引き層には、他に界面活性剤や硬膜剤を含有するのが好ましい。支持体に下引き層を設けることによって、インク受容層塗布時のひび割れ防止に有効に働き、均一な塗布面が得られる。
【0087】
本発明において、インク受容層の塗布方法は、1層ずつ塗布する逐次塗布方法(例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、リバースコーター等)、あるいは多層重層塗布方法(例えば、スライドビードコーターやスライドカーテンコーター等)の何れの方法であっても、本発明の効果は得られる。多層重層塗布方法が好ましく用いられる。
【0088】
以下、本発明を更に具体的に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されず、特許請求の範囲において各種の応用ができるものである。なお、表記中で「部」及び「%」とは特に断らない限り固形分質量基準である。
【実施例】
【0089】
(実施例1)
<ポリオレフィン樹脂被覆紙の作製>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)の1:1混合物をカナディアン スタンダード フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5質量%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0質量%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0質量%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5質量%添加し、水で希釈して0.2質量%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/mになるように抄造し、乾燥調湿してポリオレフィン樹脂被覆紙の基紙とした。抄造した基紙の両面に、密度0.918g/cmの低密度ポリエチレン100質量%の樹脂に対して、10質量%のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、厚さ35μmになるように押出被覆し、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆し、ポリオレフィン樹脂被覆紙を得た。
【0090】
上記ポリオレフィン樹脂被覆紙の両面にそれぞれ高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成の下引き層をゼラチンが50mg/mとなるようにそれぞれ塗布乾燥して支持体を作製した。
【0091】
<下引き層>
石灰処理ゼラチン 100部
スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩 2部
クロム明ばん 10部
【0092】
<アルミナ水和物の分散>
水に硝酸(2部)と、無機微粒子として超微粒子アルミナ(サソールジャパン社製HP14,平均一次粒子径14nm)100部を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機を使用して、固形分濃度30%のアルミナ水和物分散液を調製した。アルミナ水和物の平均二次粒子径は160nmであった。
【0093】
<インク受容層(A)塗布液の作製>
この分散液に含有されるアルミナ水和物100部に対し、ほう酸0.3部、ポリビニルアルコール(ケン化度88モル%,平均重合度3500)10部を順次添加し、最後に18質量%の濃度になるように水を加え、インク受容層(A)塗布液とした。
【0094】
<シリカアルミナ複合ゾル1の作製>
水 1648部
シリカゾル 248部
(日揮触媒化成社製,カタロイドSI−50,平均一次粒子径27nm)
ポリ塩化アルミニウム水溶液 64部
(多木化学社製,タキバイン#1500)
【0095】
上記比率において分散媒の水とシリカゾルとを混合撹拌し、温度80℃に昇温、維持した状態でシリカゾル水溶液にポリ塩化アルミニウム水溶液を徐々に添加した後、温度80℃を保持したまま1時間撹拌を続け複合粒子を熟成させた。次にこの混合液にNaOHを添加しpHを7に調整し限外濾過装置により不純物を除去した後、混合液固形分濃度に対して解膠剤としてアミド硫酸を3部添加してから、固形分濃度20質量%まで濃縮を行い、超音波処理を実施してシリカアルミナ複合ゾル1を作製した。複合粒子の平均二次粒子径は145nmであった。
【0096】
<インク受容層(B)塗布液の作製>
この分散液に含有されるシリカアルミナ複合粒子100部に対し、ほう酸0.5部、ポリビニルアルコール(ケン化度88モル%,平均重合度3500)9部、1%水溶液の20℃でのB型粘度が3000mPa・sであるカチオン性ポリアクリルアミド樹脂(アライドコロイドリミテッド社製,ハイドロコール880)1部を順次添加し、最後に15質量%の濃度になるように水を加え、インク受容層(B)塗布液とした。
【0097】
上記のようにして作製した支持体の一方の面に、上記インク受容層(A)塗布液を下層(支持体に近い層)として固形分塗布量が30g/mになるように、インク受容層(B)塗布液を上層(支持体から最も離れた層)として固形分塗布量が2g/mになるように、スライドビードコーターで重層塗布した。塗布後に10℃で20秒間冷却後、30〜55℃の加熱空気を吹き付けて乾燥して実施例1のインクジェット記録材料を得た。
【0098】
(実施例2)
実施例1のインク受容層(B)塗布液のシリカアルミナ複合ゾル1を下記シリカアルミナ複合ゾル2に変えた以外は実施例1と同様にして実施例2のインクジェット記録材料を得た。シリカアルミナ複合ゾル2は、シリカアルミナ複合ゾル1と同様に熟成、濃縮処理、超音波処理を実施して作製し、複合粒子の平均二次粒子径は150nmであった。
【0099】
<シリカアルミナ複合ゾル2の作製>
水 874部
シリカゾル 1051部
(日揮触媒化成社製,カタロイドSI−45P,平均一次粒子径45nm)
ポリ塩化アルミニウム水溶液 75部
(多木化学社製,タキバイン#1500)
【0100】
(実施例3)
実施例1の分散媒の水とシリカゾルとの混合撹拌時の保温温度を60℃に変更し、平均二次粒子径110nmのシリカアルミナ複合ゾル3を得た。このシリカアルミナ複合ゾル3を使用し、実施例1と同様にして実施例3のインクジェット記録材料を得た。
【0101】
(実施例4)
実施例1のインク受容層(B)塗布液のカチオン性ポリアクリルアミド樹脂を、1%水溶液の20℃でのB型粘度が1500mPa・sのカチオン性ポリアクリルアミド樹脂(MTアクアポリマー社製,アロンフロックE3580)に変えた以外は実施例1と同様にして実施例4のインクジェット記録材料を得た。
【0102】
(実施例5)
実施例1のインク受容層(B)塗布液のカチオン性ポリアクリルアミド樹脂の添加量を0.08部とした以外は実施例1と同様にして実施例5のインクジェット記録材料を得た。
【0103】
(実施例6)
実施例1のインク受容層(B)塗布液のカチオン性ポリアクリルアミド樹脂の添加量を2部とした以外は実施例1と同様にして実施例6のインクジェット記録材料を得た。
【0104】
(実施例7)
水にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9000)4部と気相法シリカ(日本アエロジル社製,A200,平均一次粒子径12nm)100部を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機(ブレード周速30m/秒)を使用して予備分散液を調製した。次に得られた予備分散液を高圧ホモジナイザーで処理して、固形分濃度20%の気相法シリカ分散液を作製した。気相法シリカの平均二次粒子径は電子顕微鏡観察により求めたところ130nmであった。
【0105】
この分散液に含有される気相法シリカ100部に対し、ほう酸4部、ポリビニルアルコール(ケン化度88モル%,平均重合度3500)20部を順次添加し、最後に13質量%の濃度になるように水を加え、インク受容層(A)塗布液とした。実施例1と同様にしてスライドビードコーターで、インク受容層(B)塗布液と共に重層塗布し、実施例7のインクジェット記録材料を得た。
【0106】
(比較例1)
実施例1のインク受容層(B)塗布液のシリカアルミナ複合ゾル1を下記シリカアルミナ複合ゾル4に変えた以外は実施例1と同様にして比較例1のインクジェット記録材料を得た。
【0107】
<シリカアルミナ複合ゾル4の作製>
水 1068部
シリカゾル 826部
(日揮触媒化成社製,カタロイドSI−50,平均一次粒子径27nm)
ポリ塩化アルミニウム水溶液 106部
(多木化学社製,タキバイン#1500)
【0108】
分散媒の水とポリ塩化アルミニウム水溶液を混合撹拌し、温度40℃に昇温、維持した状態でシリカゾルを徐々に添加した後、温度40℃を保持したまま4時間撹拌を続け複合粒子を熟成させてシリカアルミナ複合ゾル4を作製した。複合粒子の平均二次粒子径は70nmであった。
【0109】
(比較例2)
実施例1に用いたシリカアルミナ複合ゾル1の作製において、超音波処理にて複合粒子の平均凝集粒子径を250nmに調整した以外は実施例1と同様にして比較例2のインクジェット記録材料を得た。
【0110】
(比較例3)
実施例1のインク受容層(B)塗布液のシリカアルミナ複合ゾル1を下記シリカアルミナ複合ゾル5に変えた以外は実施例1と同様にして比較例3のインクジェット記録材料を得た。
【0111】
<シリカアルミナ複合ゾル5の作製>
水 1607部
シリカゾル 297部
(日揮触媒化成社製,カタロイドSI−30,平均一次粒子径13nm)
ポリ塩化アルミニウム水溶液 96部
(多木化学社製,タキバイン#1500)
【0112】
シリカアルミナ複合ゾル1と同様の方法にてシリカアルミナ複合ゾル5を作製した。複合粒子の平均二次粒子径は140nmであった。
【0113】
(比較例4)
実施例1のインク受容層(B)塗布液のシリカアルミナ複合ゾル1を下記シリカアルミナ複合ゾル6に変えた以外は実施例1と同様にして比較例4のインクジェット記録材料を得た。
【0114】
<シリカアルミナ複合ゾル6の作製>
水 1425部
シリカゾル 198部
(扶桑化学工業社製,PL−7,平均一次粒子径75nm)
ポリ塩化アルミニウム水溶液 63部
(多木化学社製,タキバイン#1500)
【0115】
シリカアルミナ複合ゾル1と同様の方法にてシリカアルミナ複合ゾル6を作製した。複合粒子の平均凝集粒子径は180nmであった。
【0116】
(比較例5)
実施例1のインク受容層(B)塗布液のシリカアルミナ複合ゾル1を市販のコロイダルシリカ(日産化学工業社製,スノーテックスOL−40,平均一次粒子径45nm)に変えた以外は実施例1と同様にして比較例5のインクジェット記録材料を得た。
【0117】
(比較例6)
実施例1のインク受容層(B)塗布液のカチオン性ポリアクリルアミド樹脂を、1%水溶液の20℃でのB型粘度が2500mPa・sの両性ポリアクリルアミド樹脂(荒川化学工業社製,ポリストロン372)に変えた以外は実施例1と同様にして比較例6のインクジェット記録材料を得た。
【0118】
(比較例7)
実施例1のインク受容層(B)塗布液のカチオン性ポリアクリルアミド樹脂を、1%水溶液の20℃でのB型粘度が1200mPa・sのヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学社製,SP−900)に変えた以外は実施例1と同様にして比較例7のインクジェット記録材料を得た。
【0119】
(比較例8)
実施例1のインク受容層(B)塗布液のカチオン性ポリアクリルアミド樹脂を、1%水溶液の20℃でのB型粘度が500mPa・sのカチオン性ポリアクリルアミド樹脂(MTアクアポリマー社製,アロンフロックE3590)に変えた以外は実施例1と同様にして比較例8のインクジェット記録材料を得た。
【0120】
(比較例9)
実施例1のインク受容層(B)塗布液のカチオン性ポリアクリルアミド樹脂を添加しなかった以外は実施例1と同様にして比較例9のインクジェット記録材料を得た。
【0121】
(比較例10)
実施例1のインク受容層(B)を設けなかった以外は実施例1と同様にして比較例10のインクジェット記録材料を得た。
【0122】
得られた各々のインクジェット記録材料について下記の評価を行った。その結果を表1に示す。なお、評価は全て23℃50%RHの環境下で行った。
【0123】
<インク吸収性>
市販のインクジェットプリンター(キヤノン社製,PIXUS iP4300,染料インクタイプ)にて、レッドとグリーンの重色系のベタ印字を隣接して交互に行い、印字直後にベタ部のインクの吸収状態、モットリング(画像の濃淡むら)及びレッドとグリーンの境界の滲み具合の程度を目視で観察した。下記の基準で評価した。
○:速やかにインクが吸収され、モットリング及び境界の滲みも見られない。
△:インクの吸収はやや遅く、境界滲みが少し見られるが、実用上問題ない。
×:印字面にインクがあふれ、強いモットリングと境界滲みが発生。実使用不可。
【0124】
<発色性>
市販のインクジェットプリンター(キヤノン社製,PIXUS iP4300,染料インクタイプ)にて印字した、レッド、ブルー、グリーン、ブラックのベタ画像部の発色とブロンズの発生具合を目視で観察して下記の基準で評価した。
○:くすみとブロンズがなく、発色性が良好。
△:くすみまたはブロンズが少し見られるが、実用可。
×:強いくすみまたはブロンズの発生がある。もしくはインクがあふれる。実使用不可。
【0125】
<インク定着性>
市販のインクジェットプリンター(キヤノン社製,PIXUS iP4300,染料インクタイプ)にて印字したレッド、ブルー、グリーン、ブラックのベタ画像部に、24時間静置後に水を滴下し、インクの滲み具合を目視で観察した。下記の基準で評価した。
○:インクの滲みがなく、インク定着性が良好。
△:インクの滲みが少し見られるが、実用可。
×:インクの滲みが大きく、インク定着性に劣る。実使用不可。
【0126】
<写像性>
視覚による光沢感との相関性に優れる写像性を測定することによって光沢の評価を行った。インク受容面白紙部と、上記<発色性>で作製したブラックのベタ画像部の写像性C値を測定し、白紙部、黒ベタ部ともに80%以上を実使用可と判断した。なお、測定はスガ試験機社製写像性測定器ICM−2DP型を用い、測定角60°、光学くし幅2.0mmの条件にて行った。
【0127】
<耐傷性>
市販のインクジェットプリンター(セイコーエプソン社製,PX−5500,顔料インクタイプ)にてブラックのベタ印字を行い、印字直後にPPC用紙を重ね、その上に20kN/mの荷重を掛け、10mm/secの速度でPPC用紙を引っ張った。印字部と白紙部の傷の発生具合を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:傷が認められない。
△:傷が僅かに認められるが実用上可。
×:傷の発生が明確に認められる。実使用不可。
【0128】
【表1】

【0129】
表1の結果より、本発明のインクジェット記録材料が、インク吸収性、発色性、インク定着性、写像性、及び耐傷性の全てに優れた記録材料であることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非吸収性支持体上に少なくとも2層からなるインク受容層を設けたインクジェット記録材料において、該支持体側に近いインク受容層(A)が無機微粒子を主体として含有し、該支持体から最も離れたインク受容層(B)が、一次粒子が球状で平均一次粒子径が20〜60nmのシリカゾルに、水に溶解したとき液性が酸性を示すアルミニウム塩を添加して得られる平均二次粒子径が90〜200nmのシリカアルミナ複合粒子を主体として含有し、且つ1%水溶液の20℃におけるB型粘度が1000mPa・s以上であるカチオン性ポリアクリルアミド樹脂を含有することを特徴とするインクジェット記録材料。
【請求項2】
前記カチオン性ポリアクリルアミド樹脂の含有量が、前記シリカアルミナ複合粒子に対して固形分で0.5〜1.5質量%の範囲である請求項1に記載のインクジェット記録材料。
【請求項3】
前記インク受容層(A)が主体として含有する無機微粒子が、アルミナまたはアルミナ水和物である請求項1または2に記載のインクジェット記録材料。

【公開番号】特開2011−93163(P2011−93163A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248255(P2009−248255)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】