説明

インクジェット記録用シート

【課題】製造工程においてインク吸収性を達成するための非効率な加熱処理をすることなく、充分なインク吸収性を達成するインクジェット記録用シートを提供すること。
【解決手段】支持体上に、少なくとも1層の無機微粒子及び親水性バインダーを含有するインク受容層を設けたインクジェット記録用シートにおいて、該インク受容層がアルデヒド系架橋剤の少なくとも1種とホウ酸もしくはその塩を含有することを特徴とするインクジェット記録用シート。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インクジェット記録用シートに関し、更に詳しくは、インク受容層表面のひび割れがなく、高い光沢を有し、インク吸収性に優れたインクジェット記録用シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】インクジェット方式によるプリンターは、多色化が容易なことや印字騒音が低いこと等から近年急速に普及した。この方式では記録用シートに向けてインク液滴をノズルから高速で射出するものであり、該記録シートは印字性を高めるために高いインク吸収性を有することが要求される。
【0003】インクジェット記録方式に使用される記録用シートとしては、通常の紙やインクジェット記録用紙と称される支持体上に非晶質シリカ等の顔料をポリビニルアルコール等の親水性バインダーからなる多孔質のインク吸収層を設けてなる記録用シートが使用されてきた。
【0004】例えば、特開昭55−51583号、同56−157号、同57−107879号、同57−107880号、同59−230787号、同62−160277号、同62−184879号、同62−183382号、同64−11877号、特開平3−215082号、同4−67986号、同5−32037号、同10−81064号及び特公平3−56552号公報等に開示のごとく、シリカ微粒子やアルミナゾルを親水性バインダーと共に支持体表面に塗布した記録シートが記載されている。
【0005】このように支持体上に無機微粒子で形成される空隙層を持つインク受容層を形成させることは、記録用シートのインク吸収性を高めるための有効な手段の一つではあるが、無機微粒子と併用する親水性バインダーが空隙層を塞いでせっかくのインク吸収性を低下させてしまわないよう、その使用量が限定される。
【0006】しかしながら、空隙容量の効率的増加を図るため無機微粒子に対して必要最少量の親水性バインダーを用いて塗布乾燥されたインク受容層皮膜は皮膜強度が低く、かつインク受容層塗布乾燥後に膜面に微細なヒビ割れが発生するため、光沢が減少したり、画像のにじみが発生する等著しく画質が低下する。この皮膜の脆弱性を改良し、ひび割れを防止するための化合物を前記親水性バインダーと併用することが知られている。
【0007】このような化合物は、一般的には前記親水性バインダーと反応し得る基を有する化合物あるいは親水性バインダーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、親水性バインダーの種類に応じて適宜選択して用いられる。
【0008】このような化合物の具体例としては従来、例えば、エポキシ系化合物、アルデヒド系化合物、活性ハロゲン系化合物、ほう酸およびその塩、ほう砂、アルミ明礬等が知られている。
【0009】特に親水性バインダーとして完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールを使用する場合は、これらの化合物を塗液に添加した場合の液粘度の上昇、凝集等の塗液安定性、塗液を塗布乾燥した後の皮膜のひび割れ、脆弱性の改良効果を勘案すれば、特開平10−119423号明細書に記載の如く、ほう酸およびその塩、エポキシ系化合物に限られてくる。好ましくは、ホウ酸及びその塩に限られる。
【0010】しかし、上記ホウ酸及びホウ酸塩を用いて作成したインク受容層は、支持体に塗布し乾燥された後、通常の温度環境下(30℃未満)に保存したままでは、インクジェットプリンターで印字した際に、インク受容層中の親水性バインダーが膨潤し、無機微粒子で形成された空隙層を塞いで、インクを吸収せず、インク受容層表面に溢れ出るようなインク吸収性が不十分な現象が生じてしまう。この現象を解決するために、特願平11−273687で提案のように、30℃以上の温度で10時間以上加熱、好ましくは33〜50℃の温度で1〜12日間加熱、より好ましくは35〜50℃で1〜12日間加熱することを余儀なくされていた。
【0011】したがって、製造工程において非効率な加熱処理をすることなく、通常の温度環境下(30℃未満)に放置しておけば充分なインク吸収性を達成するインクジェット記録用シートが望まれていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、製造工程においてインク吸収性を達成するための非効率な加熱処理をすることなく、充分なインク吸収性を達成するインクジェット記録用シートを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、下記の手段で達成できた。
【0014】(1)支持体上に、少なくとも1層の無機微粒子及び親水性バインダーを含有するインク受容層を設けたインクジェット記録用シートにおいて、該インク受容層がアルデヒド系架橋剤の少なくとも1種とホウ酸もしくはその塩を含有することを特徴とするインクジェット記録用シート。
(2)前記無機微粒子が、一次粒子の平均粒径が50nm以下の気相法による合成シリカであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用シート。
(3)前記親水性バインダーがポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールであることを特徴とする前記1または2に記載のインクジェット記録用シート。
(4)前記インク受容層がアルデヒド系架橋剤を前記親水性バインダー1g当たり30〜200mg含有することを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用シート。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】本発明において用いられるアルデヒド系架橋剤とは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドデンプン、ヘキサメチレンテトラミン、1,4−ジオキサン−2,3−ジオール、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−2−イミダゾリジン、ジメチロール尿素、N−メチロールアクリルアミド、尿素ホルマリン樹脂、メラミンホルマリン樹脂等の水溶液中でアルデヒドを遊離するアルデヒド系化合物、または、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒドなどの芳香族アルデヒド系化合物があげられるが、塗液組成物の安定性の点で、グリオキザール、1,4−ジオキサン−2,3−ジオール、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−2−イミダゾリジンが望ましい。
【0017】本発明で使用されるアルデヒド系化合物の使用量は親水性バインダーの種類、化合物の種類、無機微粒子の種類や親水性バインダーに対する比率等により変化するが、概ね親水性バインダー1g当たり1〜500mg、好ましくは10〜300mg、より好ましくは30〜200mgである。該化合物の使用量は、少なすぎると効果が無く、あまり多いとインク吸収性を阻害する。
【0018】本発明で使用される、ホウ酸としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸など、ホウ酸塩としては、硼砂、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アンモニウム、ナトリウムボロハイドライド、過ホウ酸ソーダ等のようなナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0019】本発明で使用される、ホウ酸もしくはその塩の使用量は親水性バインダーの種類、化合物の種類、無機微粒子の種類や親水性バインダーに対する比率などにより変化するが、概ね親水性バインダー1g当たり10〜500mg、好ましくは50〜400mg、より好ましくは100〜300mgである。該化合物の使用量は、少なすぎると効果が無く、あまり多いとインク吸収性を阻害する。
【0020】アルデヒド系架橋剤及びホウ酸もしくはその塩は、インク受容層を塗布する際にその塗液またはこれに隣接する層の塗液中に添加する。インク受容層が2層以上の場合は、各層にアルデヒド系架橋剤及びホウ酸もしくはその塩を別々に添加しても、併用して添加してもよいが、同一層に添加するのが好ましい。
【0021】アルデヒド系架橋剤とホウ酸もしくはその塩を含有することにより、非効率な加熱処理をしないで充分なインク吸収性が達成される理由は、以下のように考える。
【0022】充分なインク吸収性は、無機粒子によって皮膜中に形成される空隙を、有効に活用することで達成される。そのためには、親水性バインダーがインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが必要である。ホウ酸もしくはその塩のみを含有した場合には、親水性バインダーの膨潤を抑制するために、親水性バインダーとホウ酸もしくはその塩の架橋反応を促進させるべく、ある温度以上の熱エネルギーをある期間に渡って与えることが必要であるが、アルデヒド系架橋剤とホウ酸もしくはその塩を併用することによりにより、架橋反応に必要な活性化エネルギーが低下し、通常の温度環境下で架橋反応が促進可能となるため、加熱処理をしないで充分なインク吸収性が達成されると考える。
【0023】本発明の上記化合物を含有するインク受容層は、一般に無機微粒子によって皮膜中に形成される空隙にインクを吸収させるものであり、高いインク吸収容量を発現させるためには高い空隙容量を達成する必要がある。
【0024】これを達成するためには塗布膜厚を増大させるのが単位面積当たりのインク吸収容量を高めるのに効果的ではあるが、製造コストの増大や、皮膜の単位面積当たりの固形分増加によるカール、皮膜の脆弱性等記録シートの物性が低下する。
【0025】このために、出来るだけ効率よく空隙容量を高めるために必要最小量のバインダーを使用して、乾燥膜厚を極力低減することが好ましい。言い換えれば親水性バインダーに対する無機微粒子の割合を増加させることである。一般的に無機微粒子に対して50重量%以下の親水性バインダー量が好ましいとされている。
【0026】バインダーとしては、公知の各種バインダーを用いることができるが、インクのより高い浸透性が得られる親水性バインダーが好ましく用いられる。親水性バインダーとしては、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デンプン、アルギン酸、ポリエチレンオキサイド等やそれらの誘導体が挙げられる。しかし、親水性バインダーの使用に当たっては、親水性バインダーがインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが重要であり、この観点から比較的室温付近で膨潤性の低い親水性バインダーが好ましく用いられる。特に好ましい親水性バインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
【0027】本発明に用いられる無機微粒子としては、酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられるが、好ましくは一次平均粒径0.1μm以下のアルミナまたはアルミナ水和物もしくは合成シリカ微粒子が挙げられるが、本発明で最も好ましく用いられるのは平均粒径50nm以下のアルミナ又はアルミナ水和物、もしくは気相法による合成シリカである。
【0028】アルミナ及びアルミナ水和物は、酸化アルミニウムやその化合物であり、結晶質でも非晶質でもよく、不定形や、球状、板状等の形態を有しているものが使用される。両者の何れかを使用してもよいし、併用してもよい。特に一次粒子の平均粒径が5〜30nmのものが光沢性、印字濃度からは好ましく、更にアスペクト比が2以上の平板状のアルミナ水和物がより良好な光沢性、印字濃度等の発色性が得られるので好ましい。更に平均粒径が3μm以下の水不溶性の有機、無機の紡錘状か球状粒子を含有させることで印字時の搬送性、耐傷性が改良される。
【0029】本発明のアルミナとしては酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ−アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶が好ましい。γ−アルミナは一次粒子を10nm程度まで小さくすることが可能であるが、通常は、数千から数万nmの二次粒子結晶を超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で50〜300nm程度まで粉砕したものが好ましく使用出来る。
【0030】本発明のアルミナ水和物はAl23・nH2O(n=1〜3)の構成式で表される。nが1の場合がベーマイト構造のアルミナ水和物を表し、nが1より大きく3未満の場合が擬ベーマイト構造のアルミナ水和物を表す。アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。
【0031】合成シリカには、湿式法によるものと気相法によるものがある。通常シリカ微粒子といえば湿式法シリカを指す場合が多い。湿式法シリカとしては、■ケイ酸ナトリウムの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾル、または■このシリカゾルを加熱熟成して得られるコロイダルシリカ、■シリカゾルをゲル化させ、その生成条件を変えることによって数ミクロンから10ミクロン位の一次粒子がシロキサン結合をした三次元的な二次粒子となったシリカゲル、更には■シリカゾル、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム等を加熱生成させて得られるもののようなケイ酸を主体とする合成ケイ酸化合物等がある。
【0032】本発明に好ましく用いられる気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル株式会社からアエロジルとして市販されており入手することができる。
【0033】本発明のインク受容層において、上記無機微粒子は5〜50g/m2程度、好ましくは8〜30g/m2程度含有させる。またインク受容層の皮膜としての特性を維持するためにバインダーを有していることが好ましい。
【0034】好ましい親水性バインダーは前述の如く完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
【0035】ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したもので、皮膜形成性及び皮膜脆弱性を改良する観点から平均重合度200〜5000、好ましくは500〜4000のものが用いられる。
【0036】また、カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
【0037】また、他の親水性バインダーも併用することができるが、ポリビニルアルコールに対して20重量%以下であることが好ましい。
【0038】これらのバインダーの使用量としては無機微粒子の固形分に対して、50重量%以下、好ましくは30〜1重量%の範囲である。
【0039】インク受容層にはインク中の色材の定着性を上げ、発色性を更に向上させるために、カチオン性物質を含有させることが好ましい。カチオン性物質としては、例えば特開平10−52908号に記載されているような、1級〜3級アミン塩型の化合物、第4級アンモニウム塩型の化合物、ピリジニウム塩型の化合物、イミダゾリン型カチオン性化合物、第2級アルキルアミンのエチレンオキシド付加物等の低分子カチオン性物質、更にはポリアリルアミン、ポリアミンスルホン、ポリビニルアミン、キトサン及びこれらの塩酸、酢酸等の酸による中和物または部分中和物等のカチオン性ポリマーが挙げられる。これらカチオン性物質の添加量は0.05〜1.5g/m2程度、好ましくは0.15〜1.0g/m2程度である。
【0040】更に、皮膜の脆弱性を改良するために各種油滴を含有することが好ましいが、そのような油滴としては室温における水に対する溶解性が0.01重量%以下の疎水性高沸点有機溶媒(例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等)や重合体粒子(例えば、スチレン、ブチルアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等の重合性モノマーを一種以上重合させた粒子)を含有させることができる。そのような油滴は好ましくは親水性バインダーに対して10〜50重量%の範囲で用いることができる。
【0041】本発明において、インク受容層に界面活性剤を添加することができる。用いられる界面活性剤はアニオン系、カチオン系、ノニオン系、ベタイン系のいずれのタイプでもよく、また低分子のものでも高分子のものでもよい。1種もしくは2種以上界面活性剤をインク受理層塗液中に添加するが、2種以上の界面活性剤を組み合わせて使用する場合は、アニオン系のものとカチオン系のものとを組み合わせて用いることは好ましくない。界面活性剤の添加量はインク受容層を構成するバインダー100gに対して0.001〜5gが好ましく、より好ましくは0.01〜3gである。
【0042】本発明において、インク受容層には、更に、界面活性剤、硬膜剤の他に着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0043】本発明に用いられる支持体としては防水性支持体が好ましい。防水性支持体としては、透明な支持体も不透明な支持体も用いることができる。透明な支持体としては、従来公知のものがいずれも使用でき、例えばポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のフィルムもしくは板及びガラス板等が挙げられ、これらの中でもポリエチレンテレフタレートからなるフィルムが最も好ましく用いられる。
【0044】このような透明な防水性支持体はその厚さが約10〜200μm程度のものであることが好ましい。
【0045】不透明な防水性支持体としては、合成紙、樹脂被覆紙、顔料入り不透明フィルム、発泡フィルム等の従来公知のものがいずれも使用できる。光沢、平滑性の点から樹脂被覆紙、各種フィルムがより好ましいが、手触り感、高級感から写真用支持体に類似の樹脂被覆紙と白色度と強度が高い顔料入りのポリエチレンテレフタレートからなるフィルムがさらに好ましく用いられる。
【0046】本発明において好ましく用いられる防水性支持体としての樹脂被覆紙を構成する原紙は、特に制限はなく、一般に用いられている紙が使用できるが、より好ましくは例えば写真用支持体に用いられているような平滑な原紙が好ましい。原紙を構成するパルプとしては天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種もしくは2種以上混合して用いられる。この原紙には一般に製紙で用いられているサイズ剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等の添加剤が配合される。
【0047】さらに、表面サイズ剤、表面紙力剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、染料、アンカー剤等が表面塗布されていてもよい。
【0048】また、原紙の厚みに関しては特に制限はないが、紙を抄造中または抄造後カレンダー等にて圧力を印加して圧縮するなどした表面平滑性の良いものが好ましく、その坪量は30〜250g/m2が好ましい。
【0049】樹脂被覆紙の樹脂としては、ポリオレフィン樹脂や電子線で硬化する樹脂を用いることができる。ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテンなどのオレフィンのホモポリマーまたはエチレン−プロピレン共重合体などのオレフィンの2つ以上からなる共重合体及びこれらの混合物であり、各種の密度、溶融粘度指数(メルトインデックス)のものを単独にあるいはそれらを混合して使用できる。
【0050】また、樹脂被覆紙の樹脂中には、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウムなどの白色顔料、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩、イルガノックス1010、イルガノックス1076などの酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セシリアンブルー、フタロシアニンブルーなどのブルーの顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガン紫などのマゼンタの顔料や染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤などの各種の添加剤を適宜組み合わせて加えるのが好ましい。
【0051】本発明において好ましく用いられる支持体である樹脂被覆紙は、走行する原紙上にポリオレフィン樹脂の場合は、加熱溶融した樹脂を流延する、いわゆる押出コーティング法により製造され、その両面が樹脂により被覆される。また、電子線により硬化する樹脂の場合は、グラビアコーター、ブレードコーターなど一般に用いられるコーターにより樹脂を塗布した後、電子線を照射し、樹脂を硬化させて被覆する。また、樹脂を原紙に被覆する前に、原紙にコロナ放電処理、火炎処理などの活性化処理を施すことが好ましい。支持体のインク受容層が塗布される面(表面)は、その用途に応じて光沢面、マット面などを有し、特に光沢面が優位に用いられる。裏面に樹脂を被覆する必要はないが、カール防止の点から樹脂被覆したほうが好ましい。裏面は通常無光沢面であり、表面あるいは必要に応じて表裏両面にもコロナ放電処理、火炎処理などの活性処理を施すことができる。また、樹脂被覆層の厚みとしては特に制限はないが、一般に5〜50μmの厚味に表面または表裏両面にコーティングされる。
【0052】本発明における支持体には帯電防止性、搬送性、カール防止性などのために、各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、親水性バインダー、ラテックス、硬化剤、顔料、界面活性剤などを適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【0053】本発明において、インク受容層の塗布方法は、特に限定されず、公知の塗布方法を用いることができる。例えば、スライドリップ方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ロッドバーコーティング方式等がある。
【0054】本発明において、インク記録シートは無機微粒子を含有する層に加え、さらにインク吸収層、インク定着層、中間層、保護層等を設けてもよい。例えば、無機微粒子を含有する層の下層に水溶性ポリマー層を塗設したり、無機微粒子を含有する層の上層に膨潤層を塗設しても良い。
【0055】本発明のインク記録シートには、帯電防止性、搬送性、カール防止性などのために、インク受容層と反対側の支持体面に各種のバックコート層を塗設することができる。バックコート層には無機帯電防止剤、有機帯電防止剤、親水性バインダー、ラテックス、硬化剤、顔料、界面活性剤などを適宜組み合わせて含有せしめることができる。
【0056】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【0057】実施例1支持体として、LBKP(50部)とLBSP(50部)のパルプ配合からなる120g/m2の基紙の表面に低密度ポリエチレン(70部)と高密度ポリエチレン(20部)と酸化チタン(10部)からなる樹脂組成物を25g/m2塗布し、裏面に高密度ポリエチレン(50部)と低密度ポリエチレン(50部)からなる樹脂組成物を25g/m2塗布してなる樹脂被覆紙を用意した。
【0058】上記支持体上に、下記組成のインク受容層塗液を調整し、塗布量が固形分で20g/m2となるように塗布し、乾燥してインクジェット記録シートを作成した。なお、部とは固形分重量部を意味する。
【0059】
<記録シート1> 気相法シリカ(商品名:アエロジル380、日本アエロジル(株)社製、 平均一次粒径7nm) 100部 アルキルアミンエピクロルヒドリン重縮合物 4部 ポリビニルアルコール(商品名:PVA235、(株)クラレ社製、 ケン化度88%、平均重合度3500) 20部 両性界面活性剤(商品名:SWAM AM−2150、日本サーファクタント 社製) 0.3部
【0060】<記録シート2>記録シート1の組成にホウ酸を4部添加した以外は記録シート1と同様にして塗布して得られたインクジェット記録シート。
【0061】<記録シート3>記録シート2の組成にグリオキザールを2部添加した以外は記録シート1と同様にして塗布して得られたインクジェット記録シート。
【0062】<記録シート4>記録シート2の組成に1,4−ジオキサン−2,3−ジオールを2部添加した以外は記録シート1と同様にして塗布して得られたインクジェット記録シート。
【0063】<記録シート5>記録シート2の組成に1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−2−イミダゾリジンを2部添加した以外は記録シート1と同様にして塗布して得られたインクジェット記録シート。
【0064】得られた各々のインクジェット記録シートについて30℃以上の環境下におくことなく通常の温度環境下20℃に保存したまま下記の評価を行った。その結果を表1および2に示す。
【0065】<インク吸収性>記録シート1〜5を通常の温度環境下(20℃)においたまま1日後、1週間後、2週間後、1ヶ月後、3ヶ月後にインクジェットプリンター(エプソン社製PM800C)を用いて青ベタ印字を行い、印字直後にPPC用紙を印字部に重ねて軽く圧着し、PPC用紙に転写したインク量の程度を目視で観察し、下記の基準で評価した。
◎:全く転写しない。
○:僅かに転写するが、実用上問題ない。
△:やや転写する。
×:転写が著しい。
【0066】<ひび割れ>記録シート1〜5を作成直後に記録シート表面のひび割れを目視で判定。
◎:ひび割れは全く認められない。
○:僅かにひび割れが認められるが、実用上問題ない。
△:ややひび割れが認められる。
×:塗布面を保持できないほどひび割れが発生し、剥がれ落ちる。
【0067】<光沢性>記録シート1〜5を作成直後に記録シート表面の光沢を目視で判定。
◎:優れた光沢を有している。
○:高い光沢を有している。
△:やや光沢が低い。
×:光沢低く劣る。
【0068】
【表1】
─────────────────────────────────── インク吸収性評価 ─────────────────────────────────── 記録シート 1日後 1週間後 2週間後 1ヶ月後 3ヶ月後 備考 ─────────────────────────────────── 記録シート1 × × × × × 比較例 記録シート2 × × × × × 比較例 記録シート3 △ ○ ◎ ◎ ◎ 本発明 記録シート4 △ ○ ◎ ◎ ◎ 本発明 記録シート5 △ ○ ◎ ◎ ◎ 本発明 ───────────────────────────────────
【0069】
【表2】
───────────────────────────── 記録シート ひび割れ 光沢 備考 ───────────────────────────── 記録シート1 × × 比較例 記録シート2 ○ ○ 比較例 記録シート3 ◎ ◎ 本発明 記録シート4 ◎ ◎ 本発明 記録シート5 ◎ ◎ 本発明 ─────────────────────────────
【0070】上記結果から明らかなように、インク受容層に本発明の化合物を含有させることにより、非効率な加熱処理をすることなく、充分なインク吸収性を達成するインクジェット記録用シートを提供できる。
【0071】
【発明の効果】本発明により製造工程において非効率な加熱処理をすることなく、通常の温度環境下(15〜25℃)に放置しておけば充分なインク吸収性を達成するインクジェット記録用シートが提供できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 支持体上に、少なくとも1層の無機微粒子及び親水性バインダーを含有するインク受容層を設けたインクジェット記録用シートにおいて、該インク受容層がアルデヒド系架橋剤の少なくとも1種とホウ酸もしくはその塩を含有することを特徴とするインクジェット記録用シート。
【請求項2】 前記無機微粒子が、一次粒子の平均粒径が50nm以下の気相法による合成シリカであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用シート。
【請求項3】 前記親水性バインダーがポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1または2記載のインクジェット記録用シート。
【請求項4】 前記インク受容層がアルデヒド系架橋剤を前記親水性バインダー1g当たり30〜200mg含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用シート。

【公開番号】特開2002−283703(P2002−283703A)
【公開日】平成14年10月3日(2002.10.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−85986(P2001−85986)
【出願日】平成13年3月23日(2001.3.23)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】