説明

インクジェット記録用シート

【課題】光沢性、インク吸収性、画像の画質、長期保存性、特に高温高湿下での画像保存性に優れたインクジェット記録用シートの提供。
【解決手段】支持体上に、無機微粒子、およびバインダーを含有する少なくとも1層のインク受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、前記無機微粒子として、平均一次粒子径30nm以下であり、かつアミノオルガノシランの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Aと、平均一次粒子径30nm以下であり、かつカチオン性ポリマーの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Bとを含むことを特徴とするインクジェット記録用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体上に、無機微粒子およびバインダーを含有するインク受容層を有するインクジェット記録用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
液体インクを微細なノズルから記録体に噴出して画像を形成させるインクジェット記録方式は、記録時の騒音が少なく、カラー化が容易であること、高速記録が可能であること、また、他の印刷装置より安価であること等の理由から端末用プリンター、ファクシミリ、プロッタあるいは帳票印刷などで広く利用されている。
近年では、プリンターの急速な普及や高精細・高速化、さらにはデジタルカメラの登場により、記録体側にも高度な特性が要望されるようになっている。すなわち、インク吸収性、記録濃度、耐水性および保存性に優れた銀塩方式の写真に匹敵する画質と保存性を兼ね備えたインクジェット記録用シートの実現が強く求められている。
最新のインクジェットプリンターの印刷速度は、経済的な理由からますます高速となってきている。したがってそれらのプリンターに適した記録用シートは、インクを極めて迅速に吸収する必要がある。特に好適なものとしては、ナノ結晶、ナノ孔質な無機化合物、好ましくは酸化アルミニウムもしくはシリカのような酸化物、または酸化/水酸化アルミニウムのような酸化物/水酸化物を含む記録用シートなどが挙げられる。そのような記録用シートは、「ナノポーラス」記録用シートと呼ばれている。
【0003】
記録用シートのインク吸収性、記録濃度、画質等を向上させるため、例えば、インク受容層として、非晶質シリカ等の無機微粒子をバインダーとともに支持体上に設ける方法が提案されている。また、記録用シートの光沢、画質を向上させるため、インク受容層に合成シリカ微粒子を用いる方法が提案されている。
【0004】
特開平8−034160号公報(特許文献1)には、四級アンモニウム塩を有するシランカップリング剤を含む溶液を用いて塗工した媒体の調製法が記載されている。そこに記述された方法の欠点は、そのシランを含有する溶液は、媒体の上に第二の工程を介して塗工しなければならない点にある。特開2000−233572号公報(特許文献2)には、耐水性基材の上の、気相法シリカおよびシランカップリング剤を含むインク受容層についての記載がある。記述されているシランは、アルコキシまたはハライド基を担持している。特開昭62−178384号公報(特許文献3)には、シランカップリング剤を用いて表面処理したシリカを含む分散体の調製法についての記載がある。そのシランカップリング剤は、エポキシ、グリシドキシ、アミノ、メルカプトまたはメタクリル官能基を担持している。国際公開第01/05,599号パンフレット(特許文献4)には、インクジェット記録用シートに二酸化ケイ素顔料を使用することが記載されていて、そこでは二酸化ケイ素の表面を、カチオン性アミノオルガノシロキサンを用いて処理することにより変性していた。欧州特許出願公開第1344654号明細書(特許文献5)には、オルガノシランを用いて表面変性したシリカを含む分散体で塗工した媒体の調製法が記載されている。欧州特許第0983867号明細書(特許文献6)には、アミノシランを用いてコロイダルシリカの表面処理をして、インクジェット記録媒体を調製する方法が記載されている。米国特許出願公開第2005/0147770号明細書(特許文献7)には、無機多孔質微粒子および活性配位子含有オルガノシランを水中に分散させることにより得られる媒体シートの調製法が記載されている。記載されているシランには、たとえば、UV吸収剤、立体的ヒンダードアミン、または置換基としてのその他の官能基が担持されている。実施例には、アミノ基を担持したシランの使用に関する記述がある。
引用した特許すべてにおいて、所望のわずかに酸性または中性の範囲にpHを維持するために、大量の酸を使用しなければならないという欠点を有している。媒体中に残存する大量の塩が、画像性能に悪影響を与える。
【0005】
さらに、画像の保存性を改善するため、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、塩化第二クロム等の金属酸化物、金属塩化物またはタンニン酸のうちの少なくとも一つを添加する方法、ヒンダードフェノール類等の酸化防止剤を添加する方法、ヒンダードアミン類を添加する方法、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系やフェニルサリチル酸系等の紫外線吸収剤を添加する方法、チオ尿素系化合物を添加する方法、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール等の特定のメルカプト化合物を添加する方法、ジチオカルバミン酸塩、チウラム塩、チオシアン酸エステルまたはチオシアン酸塩を添加する方法、塩基性ポリ水酸化アルミニウムを添加する方法、酸塩化ジルコニウム系活性無機ポリマーを添加する方法等の、各種添加剤を添加する方法が提案されている。
【0006】
また、記録濃度や画像の耐水性を改善するため、インク受容層にカチオン性ポリマーあるいは塩基性ラテックスを含有させる方法が提案されている。カチオン性ポリマーとしては、例えば、モノアリルアミン塩等の1級アミンから誘導される構成単位を有する1級アミン型ポリマー、ジアリルアミン塩等の2級アミンから誘導される構成単位を有する2級アミン型ポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム化合物から誘導される構成単位を有する4級アンモニウム型ポリマー、モノアリルアミン塩とジアリルアミン塩とから誘導される構成単位を有する1級アミン型/2級アミン型コポリマー等が提案されている(例えば、特許文献8〜10)。
【0007】
さらに、光沢やインク吸収性、耐光性、耐水性に優れたインクジェット用紙として、例えば、特許文献11には、耐水性支持体上に、気相法シリカと、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド等のジアリルアミン誘導体を構成単位として有する4級アンモニウム型のカチオン性ポリマーとを含有するインク受容層を設けたインクジェット記録用シートが記載されている。
【0008】
【特許文献1】特開平8−034160号公報
【特許文献2】特開2000−233572号公報
【特許文献3】特開昭62−178384号公報
【特許文献4】国際公開第01/05,599号パンフレット
【特許文献5】欧州特許出願公開第1344654号明細書
【特許文献6】欧州特許第0983867号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0147770号明細書
【特許文献8】特開昭60−83882号公報
【特許文献9】特開昭61−61887号公報
【特許文献10】特開昭62−238783号公報
【特許文献11】特開2000−211235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、例えば、特許文献1〜11記載のインクジェット記録用シートを用いて形成されるフルカラーインクジェット記録画像は、印字濃度が高く、発色性に優れているものの、あるいは、画像の長期保存性、耐水性、耐光性には優れているものの、インクジェット記録用シートの光沢、インク吸収性、画像の画質、長期保存性−とりわけ、高温高湿環境下での保存性(耐熱湿性)に関して不充分であった。
また、特許文献11記載のインクジェット記録用シートを用いて形成されるフルカラーインクジェット記録画像は、特許文献1と同様、耐熱湿性や耐光性、耐オゾン性等の保存性に問題があり、また、インク吸収性も不充分であった。
【0010】
本発明は、光沢性、インク吸収性、画像の画質、長期保存性、特に高温高湿下での画像保存性(以下、耐熱湿性ともいう)に優れたインクジェット記録用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、インク受容層に含有させる無機微粒子として、平均一次粒子径が30nm以下の無機微粒子を用いることにより、光沢性、インク吸収性、印字濃度、画質等がさらに向上することを見出した。
具体的には、アミノオルガノシランの少なくとも1種で表面変性した平均一次粒子径が30nm以下の無機微粒子と、カチオン性ポリマーの少なくとも1種で表面変性した平均一次粒子径が30nm以下の無機微粒子とを組み合わせて使用することにより、これらの問題が解決されることを見出し、本第1発明に至った。
【0012】
本第1発明は下記態様を含む。
〔1〕支持体上に、無機微粒子、およびバインダーを含有する少なくとも1層のインク受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、前記無機微粒子として、平均一次粒子径30nm以下であり、かつアミノオルガノシランの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Aと、平均一次粒子径30nm以下であり、かつカチオン性ポリマーの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Bとを含むことを特徴とするインクジェット記録用シート。
〔2〕アミノオルガノシランが、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、(3−トリエトキシシリルプロピル)−ジエチレントリアミン、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−トリメトキシ−シリルプロピル)−ジエチレントリアミン、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびそれらの混合物、からなる群より選ばれる少なくとも1種である〔1〕に記載のインクジェット記録用シート。
〔3〕表面変性無機微粒子Aが、少なくとも1種の1価の有機酸と、アミノオルガノシランの存在下で表面変性されてなることを特徴とする、〔1〕又は〔2〕に記載のインクジェット記録用シート。
〔4〕カチオン性ポリマーが、下記一般式(1)又は一般式(2)で表される少なくとも1種の構成単位(b1)、下記一般式(3)で表される少なくとも1種の構成単位(b2)、及び下記一般式(4)〜(7)で表される少なくとも1種の構成単位(b3)、から選択される構成単位の少なくとも1つの構成単位を有するポリマーである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
【化1】

〔式中、Xは酸残基を表す。〕
【化2】

〔式中、R1は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基、炭素数6〜12のアリール基、またはベンジル基のいずれかを表す。〕
【化3】

〔式中、R2〜R9はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、Y、Zはそれぞれ独立の酸残基を表す。〕
〔5〕表面変性無機微粒子Aと表面変性無機微粒子Bの割合が、99:1〜1:99である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
【0013】
〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のインクジェット記録用シートにおいて、前記無機微粒子が気相法シリカであることが好ましい。また、前記インク受容層がホウ素化合物によって硬化されることが好ましい。また、前記支持体が耐水性支持体であることが好ましい。更に、表面変性無機微粒子Aと表面変性無機微粒子Bを有するインク受容層を複数層形成することもできる。この場合、同時多層塗工により形成することが好ましい。
【0014】
また、本発明者らは、インク受容層を複数層形成する場合について、研究を行った結果、支持体に近い層にカチオン性ポリマーの少なくとも1種で表面変性した平均一次粒子径が30nm以下の無機微粒子を、支持体から遠い層に、アミノオルガノシランの少なくとも1種で表面変性した平均一次粒子径が30nm以下の無機微粒子を用いることにより耐熱湿処理後のニジミがよくなり、且つインク吸収性、および記録時の記録濃度がよくなることを見出し、本第2発明に至った。
【0015】
本第2発明は下記態様を含む。
〔6〕支持体上に、無機微粒子、およびバインダーを含有する少なくとも2層のインク受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、支持体に近いインク受容層下層の無機微粒子が、平均一次粒子径30nm以下であり、かつカチオン性ポリマーの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Bであり、支持体から遠いインク受容層上層の無機微粒子が、平均一次粒子径30nm以下であり、かつアミノオルガノシランの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Aであることを特徴とするインクジェット記録用シート。
〔7〕アミノオルガノシランが、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、(3−トリエトキシシリルプロピル)−ジエチレントリアミン、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−トリメトキシ−シリルプロピル)−ジエチレントリアミン、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびそれらの混合物、からなる群より選ばれる少なくとも1種である〔6〕に記載のインクジェット記録用シート。
〔8〕表面変性無機微粒子Aが、少なくとも1種の1価の有機酸と、アミノオルガノシランの存在下で表面変性されてなることを特徴とする、〔6〕又は〔7〕に記載のインクジェット記録用シート。
〔9〕カチオン性ポリマーが、下記一般式(1)又は一般式(2)で表される少なくとも1種の構成単位(b1)、下記一般式(3)で表される少なくとも1種の構成単位(b2)、及び下記一般式(4)〜(7)で表される少なくとも1種の構成単位(b3)、から選択される構成単位の少なくとも1つの構成単位を有するポリマーである〔6〕〜〔8〕のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
【化4】

〔式中、Xは酸残基を表す。〕
【化5】

〔式中、R1は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基、炭素数6〜12のアリール基、またはベンジル基のいずれかを表す。〕
【化6】

〔式中、R2〜R9はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、Y、Zはそれぞれ独立の酸残基を表す。〕
〔10〕インク受容層下層とインク受容層上層の塗工量の比が、1:99〜99:1であることを特徴とする、〔6〕〜〔9〕のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
【0016】
〔6〕〜〔10〕のいずれかに記載のインクジェット記録用シートにおいて、少なくともインク受容層上層の無機微粒子は、気相法シリカであることが好ましく、インク受容層下層の無機微粒子も気相法シリカであることが更に好ましい。また、少なくともインク受容層上層がホウ素化合物によって硬化されることが好ましく、インク受容層下層もホウ素化合物によって硬化されていることが更に好ましい。また、インク受容層上層、インク受容層下層とも無機微粒子が気相法シリカであり、且つインク受容層上層の無機微粒子の一次粒子径は、インク受容層下層の一次粒子径と同じか、それよりも小さいことが好ましい。また、前記支持体が耐水性支持体であることが好ましい。更に、インク受容層上層及びインク受容層下層は、同時多層塗工により形成されることが特に好ましい。
【0017】
更に、本発明者らは、インク受容層を複数層形成する場合について、研究を行った結果、支持体に近い層にアミノオルガノシランの少なくとも1種で表面変性した平均一次粒子径が30nm以下の無機微粒子を、支持体から遠い層にカチオン性ポリマーの少なくとも1種で表面変性した平均一次粒子径が30nm以下の無機微粒子を、用いることにより耐熱湿処理後のニジミがよくなり、且つ処理後の画質の濃度低下が発生しないことを見出し、本第3発明に至った。
【0018】
本第3発明は下記態様を含む。
〔11〕支持体上に、無機微粒子、およびバインダーを含有する少なくとも2層のインク受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、支持体に近いインク受容層下層の無機微粒子が、平均一次粒子径30nm以下であり、かつアミノオルガノシランの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Aであり、支持体から遠いインク受容層上層の無機微粒子が、平均一次粒子径30nm以下であり、かつカチオン性ポリマーの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Bであることを特徴とするインクジェット記録用シート。
〔12〕アミノオルガノシランが、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、(3−トリエトキシシリルプロピル)−ジエチレントリアミン、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−トリメトキシ−シリルプロピル)−ジエチレントリアミン、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびそれらの混合物、からなる群より選ばれる少なくとも1種である〔11〕に記載のインクジェット記録用シート。
〔13〕表面変性無機微粒子Aが、少なくとも1種の1価の有機酸と、アミノオルガノシランの存在下で表面変性されてなることを特徴とする、〔11〕又は〔12〕に記載のインクジェット記録用シート。
〔14〕カチオン性ポリマーが、下記一般式(1)又は一般式(2)で表される少なくとも1種の構成単位(b1)、下記一般式(3)で表される少なくとも1種の構成単位(b2)、及び下記一般式(4)〜(7)で表される少なくとも1種の構成単位(b3)、から選択される構成単位の少なくとも1つの構成単位を有するポリマーである〔11〕〜〔13〕のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
【化7】

〔式中、Xは酸残基を表す。〕
【化8】

〔式中、R1は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基、炭素数6〜12のアリール基、またはベンジル基のいずれかを表す。〕
【化9】

〔式中、R2〜R9はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、Y、Zはそれぞれ独立の酸残基を表す。〕
〔15〕インク受容層下層とインク受容層上層の塗工量の比が、1:99〜99:1であることを特徴とする、〔11〕〜〔14〕のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
【0019】
〔11〕〜〔15〕のいずれかに記載のインクジェット記録用シートにおいて、少なくともインク受容層上層の無機微粒子は、気相法シリカであることが好ましく、インク受容層下層の無機微粒子も気相法シリカであることが更に好ましい。また、少なくともインク受容層上層がホウ素化合物によって硬化されることが好ましく、インク受容層下層もホウ素化合物によって硬化されていることが更に好ましい。また、インク受容層上層、インク受容層下層とも無機微粒子が気相法シリカであり、且つインク受容層上層の無機微粒子の一次粒子径は、インク受容層下層の一次粒子径と同じか、それよりも小さいことが好ましい。また、前記支持体が耐水性支持体であることが好ましい。更に、インク受容層上層及びインク受容層下層は、同時多層塗工により形成されることが特に好ましい。
【0020】
そして、本発明者らは、インク受容層にアミノオルガノシランの少なくとも1種で表面変性した平均一次粒子径が30nm以下の無機微粒子を用いた場合、特定のカチオン性ポリマーを用いることにより耐熱湿処理後のニジミがよくなることを見出し、本第4発明に至った。
【0021】
本第4発明は下記態様を含む。
〔16〕支持体上に、無機微粒子、およびバインダーを含有する少なくとも1層のインク受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、前記無機微粒子として、平均一次粒子径30nm以下であり、かつアミノオルガノシランの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Aを含み、少なくとも1層のインク受容層に少なくとも1種のカチオン性ポリマーを含み、且つ該カチオン性ポリマーが、下記一般式(1)又は一般式(2)で表される少なくとも1種の構成単位(b1)、下記一般式(3)で表される少なくとも1種の構成単位(b2)、及び下記一般式(4)〜(7)で表される少なくとも1種の構成単位(b3)、から選択される構成単位の少なくとも1つの構成単位を有するポリマーであることを特徴とするインクジェット記録用シート。
【化10】

〔式中、Xは酸残基を表す。〕
【化11】

〔式中、R1は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基、炭素数6〜12のアリール基、またはベンジル基のいずれかを表す。〕
【化12】

〔式中、R2〜R9はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、Y、Zはそれぞれ独立の酸残基を表す。〕
〔17〕アミノオルガノシランが、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、(3−トリエトキシシリルプロピル)−ジエチレントリアミン、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−トリメトキシ−シリルプロピル)−ジエチレントリアミン、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびそれらの混合物、からなる群より選ばれる少なくとも1種である〔16〕に記載のインクジェット記録用シート。
〔18〕アミノオルガノシランで表面変性されてなる表面変性無機微粒子Aが、少なくとも1種の、1価の有機酸を含有することを特徴とする、〔16〕又は〔17〕に記載のインクジェット記録用シート。
〔16〕又は〔18〕に記載のインクジェット記録用シートにおいて、アミノオルガノシランで表面変性されてなる表面変性無機微粒子Aと、カチオン性ポリマーが同一層に存在するか、異なる層に存在するインクジェット記録用シート。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、インク吸収性、印字濃度、長期保存性に優れたインクジェット記録用シートが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、(1)支持体上に、アミノオルガノシランにより表面変性された無機微粒子A、カチオン性ポリマーにより表面変性された無機微粒子Bを含有するインク受容層を有するインクジェット記録用シート、(2)支持体上に、カチオン性ポリマーにより表面変性された無機微粒子Bを含有するインク受容層下層、アミノオルガノシランにより表面変性された無機微粒子Aを含有するインク受容層上層を有するインクジェット記録用シート、(3)支持体上に、アミノオルガノシランにより表面変性された無機微粒子Aを含有するインク受容層下層、カチオン性ポリマーにより表面変性された無機微粒子Bを含有するインク受容層上層を有するインクジェット記録用シート、(4)支持体上に、アミノオルガノシランにより表面変性された無機微粒子Aと特定のカチオン性ポリマーを有するインク受容層を有するインクジェット記録用シート、である。まず、各インクジェット記録用シートで共通する構成材料について説明した後、各発明について説明することにする。
【0024】
「支持体について」
支持体としては、従来のインクジェット記録用シートとして公知のものを適宜使用できる。支持体として、より具体的には、例えば紙(酸性紙、中性紙等)、バライタ紙、合成紙、不織布、プラスチックフィルム、紙の片面または両面がポリオレフィン等の樹脂で被覆された支持体(所謂RC紙)、紙の片面または両面に不織布あるいはプラスチックフィルムを、接着剤を介して貼り合わせた積層シート等が挙げられる。なお、プラスチックフィルムとしては、ポリエステル、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ナイロン、ポリエステル等のフィルム、あるいは合成紙が挙げられる。
【0025】
これらの中でも、支持体中にインク液が浸透しない耐水性支持体は、より高い濃度で鮮明な画像を得ることができるので好ましい。耐水性支持体としては、特に、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られるため、紙の両面がポリオレフィン樹脂で被覆された支持体が好ましく用いられる。一方、紙(酸性紙、中性紙等)、コート紙、バライタ紙等の吸収性支持体は、インク吸収性やインク乾燥性が良好で、高速印字性に優れているため、好ましい。なお、支持体の厚さとしては、特に制限はないが、例えば100〜400μmが好ましい。
【0026】
「無機微粒子について」
インク受容層は、平均一次粒子径が30nm以下の無機微粒子を含有する。平均一次粒子径が30nm以下の無機微粒子を含有することにより、透明性が高く、印字濃度や光沢、インク吸収性等にも優れたインク受容層が得られる。無機微粒子の平均一次粒子径は、より好ましくは3〜15nmである。なお、本発明でいう一次粒子径は、電子顕微鏡(SEM及びTEM)で観察した粒径(マーチン径)である。
【0027】
無機微粒子としては、例えばゼオライト、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、ケイ酸アルミニウム、ケイソウ土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、アルミナ水和物、アルミノシリケート、ベーマイト、擬ベーマイト等が挙げられるが、インク吸収性の点で特にシリカ、アルミナ、アルミナ水和物およびアルミノシリケートが好ましく、とりわけシリカが好ましい。
【0028】
また、無機微粒子は、BET法による比表面積が100m2/g以上のものが好ましい。BET法による比表面積に上限はないが、1000m2/g以下程度が好ましい。より好ましくは150〜400m2/g、更に好ましくは200〜400m2/gである。本発明で言うBET法とは、気相吸着法による粉体の表面測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、すなわち、比表面積を求める方法である。
【0029】
無機微粒子は、一次粒子が凝集している凝集粒子(二次粒子)である場合、平均二次粒子径は、特に限定しないが0.05〜1.0μmが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5μmである。平均二次粒子径は、超音波、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動媒体ミル、媒体撹拌ミル、ジェットミル、擂解機、サンドグラインダー等の機械的手法により粉砕処理し、調節することができる。
【0030】
上述したように、無機微粒子としてシリカが好ましく用いられるが、シリカは、石英などの天然のシリカを粉砕して得られる天然シリカと、合成により製造される合成シリカに大別され、合成シリカは気相法シリカと湿式法シリカとに大別される。
気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素および酸素と共に燃焼して作られる。四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシラン、トリクロロシラン等のシラン類を単独あるいは四塩化ケイ素と混合して使用することもある。気相法シリカは、非常に嵩密度が低い粉体として市販されている。気相法シリカの水分散物を乾燥すると、多孔質のシリカゲルとなり、そのゲルのBET法による細孔容積は、一般に、1.2〜1.6ml/gである。この細孔容積は、インクを吸収させるには都合が良い。気相法シリカは、高いインク吸収性、透明性、および光沢が得られるので好ましく用いられる。
【0031】
湿式法シリカとしては、沈降法によるシリカとゲル法によるシリカが知られている。沈降法シリカは、例えば、特開昭55―116613号公報に開示されているように、ケイ酸アルカリ水溶液に鉱酸を段階的に加え、沈降したシリカをろ過して製造されるものである。ゲル法シリカはケイ酸アルカリ溶液に鉱酸を混合し、ゲル化させたのち、洗浄及び粉砕して得られるものである。
沈降法シリカとゲル法シリカは、シリカの一次粒子が結合して二次粒子を形成しており、一次粒子間と二次粒子間に多くの空隙を有しており、そのためにインク吸収量が大きい上、光を散乱する性質が小さいので高い印字濃度が得られる。
【0032】
これらの湿式法シリカは、BET法による比表面積が100〜400m2/gであり、かつ細孔容積が0.5〜2.0ml/gであることが好ましい。この範囲にある湿式法シリカは、インク受容層のひび割れ、インク吸収性、及び光沢のバランスが非常に優れているので好ましい。
【0033】
なお、インク受容層中の無機微粒子の使用量としては、インク受容層の固形分に対して20〜90質量%程度であるのが好ましく、より好ましくは30〜85質量%程度である。この範囲にすると、インク受容層の塗膜強度が低下するおそれがなく、インク吸収性やインク乾燥性に優れ、さらに高画質が得られる。
【0034】
「アミノオルガノシランについて」
インク受容層は、アミノオルガノシランを含有する。アミノオルガノシランは特に限定しないが、好適なアミノオルガノシランは一般式(8)のアミノオルガノシランである。
【化13】

[式中、R10、R11、R12は独立して、水素、ヒドロキシル、1〜6個の炭素原子を有する非置換もしくは置換アルキル、非置換もしくは置換アリール、1〜6個の炭素原子を有する非置換もしくは置換アルコキシル、または非置換もしくは置換アリールオキシルを表し、そしてR13は、少なくとも1個の第一級、第二級または第三級アミノ基により置換された有機残基を表す。]
10、R11、およびR12が置換されている場合には、その置換基は独立して、チオール、スルフィドおよびポリアルキレンオキシドからなる群より選択される。好適に選択された置換基によって、シリカの表面変性が容易となり、その結果、二酸化ケイ素を含有する分散体および塗工液のレオロジー的挙動の改良が図れ、さらに、大気汚染物に対する安定性、耐光抵抗性および物理的性質など、記録用シートの性能も改良される。
【0035】
モノマー性のアミノオルガノシランに代えて、アミノオルガノシランの縮合反応生成物を使用してもよい。その縮合反応は、同一のアミノオルガノシランの間、または異なったアミノオルガノシランの間で起こすことが可能である。
好適なアミノオルガノシランとしては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、(3−トリエトキシシリルプロピル)−ジエチレントリアミン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノ−プロピルトリエトキシ−シラン、(3−トリエトキシシリルプロピル)−ジエチレントリアミン、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびそれらの混合物を挙げることができる。
【0036】
「アミノオルガノシロキサンによる表面変性無機微粒子Aについて」
アミノオルガノシランにより無機微粒子を表面変性する場合、アミノオルガノシラン、無機微粒子の他に、1価の酸を同時に添加して使用するのが好ましい。好適な1価の酸としては、無機酸、例えば塩酸または硝酸;有機酸、例えばカルボン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、アクリル酸、グリオキシル酸、メトキシ酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸もしくはα−ヒドロキシイソ酪酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などを挙げることができる。中でも1価の酸がギ酸、酢酸またはプロピオン酸であればより好ましく、それがギ酸であれば最も好ましい。なお、上記の例示は、可能な酸の例を挙げたものであって、いかなる面においても、言及しなかったその他の1価の酸の使用を限定するものではない。また、各種の1価のカチオン、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウムなどを用いて、1価の酸の塩を形成させることも可能である。
【0037】
表面変性された無機微粒子の調製方法としては、少なくとも1種のアミノオルガノシランと、少なくとも1種の1価の酸またはその塩とを含む主として水性の溶液に、無機微粒子を、たとえば高剪断速度で添加するのが好ましい。適切な条件下においては、表面変性された無機微粒子の分散体を、凝集させることなく得ることができる。
主として水性の溶液を調製する際には脱イオン水を使用するのが好ましい。水混和性溶媒たとえば、低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなど)またはケトンたとえばアセトンを添加することも可能である。
【0038】
また、表面変性された無機微粒子を調製方法として、たとえば、少なくとも1種のアミノオルガノシランと少なくとも1種の1価の酸またはその塩とを含む溶液を、無機微粒子の水性分散体に添加してもよい。
別な方法として、無機微粒子を、少なくとも1種のアミノオルガノシランと水との混合物に高剪断下で混合し、pHのバランスを取るために1価の酸を連続的に添加することも可能である。
さらに、無機微粒子を、1価の有機酸と水との溶液に添加し、それにより、低pHで無機微粒子のアニオン性分散体を生じさせ、少なくとも1種のアミノオルガノシランを高剪断下に添加して、無機微粒子の表面の正味の電荷を逆転させることもできる。
【0039】
本発明においては、表面変性無機微粒子の調製は、少なくとも1種のアミノオルガノシランの水溶液を調製する工程;その水溶液に少なくとも1種の1価の酸または塩を添加して、前記アミノオルガノシランおよび前記1価の酸またはその塩を含む溶液を形成させる工程;次いで、このようにして形成された溶液に無機微粒子を添加して、前記無機微粒子の表面を変性させる工程を含む方法により実施することが好ましい。
【0040】
例えば、無機微粒子がシリカの場合、アミノオルガノシランを水中で室温にて加水分解させ、次いで1価の酸を加えて、その混合物を室温でさらに撹拌するのことが好ましい。このようにすれば、アミノオルガノシランが高pHで速やかに加水分解され、1価の酸を添加することにより、1価の酸とアミノオルガノシランとの反応生成物が形成される。最後に、シリカ粉体を、その1価の酸とアミノオルガノシランとの反応生成物を含む溶液に、少しずつ添加する。
アミノオルガノシランと1価の酸またはその塩とを含む溶液を用いて、シリカの表面を変性するのは、ほとんど瞬時に起きるプロセスである。この理由から、その転化時間は極めて短く、室温で完了するので好ましい。
【0041】
なお、表面変性をする無機微粒子としては、シリカが好ましく、気相法シリカが特に好ましい。単一の気相法シリカ粉体の代わりに、異なった一次粒子径を有する、異なったシリカ粉体の混合物を使用することも可能である。アミノオルガノシランと1価の酸またはその塩とを含む溶液を用いた変性工程は、それぞれのシリカ粉体に対して独立して実施しても、あるいは異なったシリカ粉体の混合物に対して同時に実施してもよい。その変性工程を高剪断速度で実施すれば、その反応生成物はシリカの表面に規則的に分配される。その上、その分散体のレオロジー的挙動も改良される。
【0042】
アミノオルガノシランによる表面変性無機微粒子Aの分散体は、インクジェット記録用シートのインク受容層の塗工液を調製するのに直接使用することが有利である。したがって、その分散体は、少なくとも24時間は安定であって、その表面変性無機微粒子が沈降してはならず、その粘度がかなりの程度で変化するようなことは許されない。具体的には、ゲル化や凝集が起きてはならない。
上記分散体には、本発明に係る表面変性無機微粒子Aを、5質量%〜50質量%の量で含む。10質量%〜30質量%の量であれば好ましく、15質量%〜25質量%の量であれば特に好ましい。
【0043】
「カチオン性ポリマーについて」
本発明で用いられるカチオン性ポリマーは、特に限定するものではなく、インクジェット記録用の媒染剤として公知のカチオン性ポリマーが使用できる。例えば、モノアリルアミン塩、ビニルアミン塩、N−ビニルアクリルアミジン塩、ジシアンジアミド・ホルマリン重縮合物、ジシアンジアミド・ポリエチレンアミン重縮合物等の1級アミン塩を構成単位として有する1級アミン型カチオン性ポリマー、ジアリルアミン塩、エチレンイミン塩等の2級アミン塩を構成単位として有する2級アミン型カチオン性ポリマー、ジアリルメチルアミン塩等の3級アミン塩を構成単位として有する3級アミン型カチオン性ポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物等の4級アンモニウム塩を構成単位として有する4級アンモニウム型カチオン性ポリマー、等が挙げられる。
【0044】
中でも、下記一般式(1)又は一般式(2)で表される少なくとも1種の構成単位(b1)、下記一般式(3)で表される少なくとも1種の構成単位(b2)、及び下記一般式(4)〜(7)で表される少なくとも1種の構成単位(b3)、から選択される構成単位の少なくとも1つの構成単位を有するポリマーは、前記アミノオルガノシランで表面変性した無機微粒子Aと併用することで、印字濃度、インク吸収性および耐熱湿性をバランスよく改善するため、好ましい。
【0045】
(構成単位(b1))
【化14】

〔式中、Xは酸残基を表す。〕
一般式(2)中、HXで表される酸は、無機酸、有機酸のいずれでもよく、無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸等が挙げられ、有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を併用することができる。これらの酸のうちでも、塩酸、硫酸は特に画像保存性に効果的であり好ましい。
【0046】
(構成単位(b2))
【化15】

〔式中、R1は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基、炭素数6〜12のアリール基、またはベンジル基のいずれかを表す。〕
一般式(3)の炭素数1〜18のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、オクタデシル等が挙げられる。炭素数1〜18のアルコキシル基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンタオキシ、ヘキサオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、オクタデシルオキシ等が挙げられる。さらに、炭素数6〜12のアリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、メトキシフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。これらのうちでも、メトキシ基は製造が容易であり、とりわけ耐熱湿性に優れているため好ましい。
【0047】
(構成単位(b3))
【化16】

〔式中、R2〜R9はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、Y、Zはそれぞれ独立の酸残基を表す。〕
一般式(6)、(7)中、HY、HZで表される酸は、無機酸、有機酸のいずれでもよく、無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸等が挙げられ、有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で又は2種以上を併用することができる。これらの酸のうちでも、塩酸、硫酸は特に画像保存性に効果的であり好ましい。
一般式(4)〜(7)中、R2〜R9が全て水素原子であるカチオン性ポリマーは、インク吸収性に優れた高画質の画像が得られるため、特に好ましい。
具体例としては、一般式(4)、(5)、(6)、(7)で表されるジアリルアミン、ジ(2−メチルアリル)アミン、ジ(2−エチルアリル)アミン等の、2個のビニルアルキル基を有する2級アミンまたはその酸塩をモノマーとする構成単位が挙げられる。とりわけ、構成単位(b3)がジアリルアミンまたはその酸塩をモノマーとする構成単位であるカチオン性ポリマーは、高画質が得られ、耐光性、耐オゾン性等の保存性にも優れているため好ましい。
【0048】
カチオン性ポリマーとしては、一般式(1)又は一般式(2)で表される少なくとも1種の構成単位(b1)、一般式(3)で表される少なくとも1種の構成単位(b2)、及び一般式(4)〜(7)で表される少なくとも1種の構成単位(b3)、から選択される構成単位の少なくとも1つの構成単位を有するポリマーが好ましいが、上記構成単位を2つ以上有するポリマーがより好ましい。
【0049】
例えば、構成単位(b1)と構成単位(b2)を有するカチオン性ポリマーは、塗料安定性が良好で、とりわけ高画質で長期保存性に優れた画像が得られる。構成単位(b1)と構成単位(b2)とのモル比は0.1:1〜50:1が好ましく、より好ましくは0.5:1〜20:1である。更に、構成単位(b1)、(b2)、及び(b3)を有するポリマーは、更に耐光性、耐オゾン性等の保存性にも優れる。この場合、ポリマー中、構成単位(b1)および構成単位(b2)の合計と構成単位(b3)とのモル比は0.1:1〜10:1が好ましく、より好ましくは0.5:1〜5:1である。
【0050】
本発明で用いられるカチオン性ポリマーの分子量は、1,000〜50万であることが好ましく、より好ましくは5,000〜20万である。この範囲内であると、塗料安定性が良好で、高画質が得られ、耐光性、耐熱湿性等の保存性、インク吸収性にも優れており、ひび割れも改善される。
【0051】
カチオン性ポリマーのインク受容層中の含有量としては、0.01〜10g/m2が好ましく、より好ましくは0.05〜5g/m2である。この範囲で用いると、画質および画像の保存性、インク吸収性に優れる。
カチオン性ポリマーをインク受容層中に含ませる方法としては特に制限はないが、インク受容層用塗液に添加し塗工する方法、インク受容層を塗工する前、あるいは同時に、あるいはインク受容層を塗工後、カチオン性ポリマーを含有する水溶液を塗工する方法等がある。
更に、カチオン性ポリマーを、一旦、カチオン性ポリマーによる表面変性無機微粒子Bの状態にした後、使用すると、得られるインク受容層が、透明性、インク吸収性、インクの発色性、耐候性等が良好な多孔質層となるので好ましい。
【0052】
「カチオン性ポリマーによる表面変性無機微粒子Bについて」
カチオン性ポリマーによる表面変性無機微粒子Bは、無機微粒子とカチオン性ポリマーを混合し凝集させることによって得られた無機微粒子−カチオン性ポリマーの凝集体粒子を平均粒子径700nm以下に粉砕・分散することにより得られる。
例えば、シリカなどの無機粒子とカチオン性ポリマーとの混合物に対し、機械的手段で強い力を与えることにより得られる。つまり、breaking down法(塊状原料を細分化する方法)によって得られる。カチオン性ポリマーによる表面変性無機微粒子Bはスラリーであってもよい。機械的手段としては、超音波、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動媒体ミル、媒体撹拌ミル、ジェットミル、擂解機、サンドグラインダー等の粉砕手段、市販の分散機器である、吉田機械工業社製のナノマイザー、スギノマシン社製のアルティマイザー、APV社製のマントン−ゴーリン、イストラル社製のコンチ−TDSなどの分散手段を用いて、実施することができる。これらの手段は適宜複数を組み合わせてよい。
【0053】
本発明でいう平均粒子径はすべて電子顕微鏡(SEMとTEM)で観察した粒径である(1万〜40万倍の電子顕微鏡写真を撮り、5cm四方中の粒子のマーチン径を測定し平均したもの。「微粒子ハンドブック」、朝倉書店、p52、1991年等に記載されている。)。
表面変性無機微粒子Bの平均粒子径(実質的に2次粒子)は700nm以下であり、好ましくは10〜500nm、より好ましくは20〜300nmである。平均粒子径が700nmを越える表面変性無機微粒子Bを使用すると、透明感が著しく失われ、印字濃度が著しく低下し、印字後の高光沢を有するインクジェット記録用シートが得られないおそれがある。一方、平均粒子径が極めて小さいシリカコロイド粒子を使用すると、充分なインク吸収速度が得られないおそれがある。
【0054】
カチオン性ポリマーによる表面変性無機微粒子Bを構成する無機微粒子としては、シリカが好ましく、気相法シリカが特に好ましい。シリカを用いた表面変性無機微粒子Bは、特にインク吸収性に優れ、透明感のあるインク受容層を形成できる。
表面変性無機微粒子Bを構成するシリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子を構成する非晶質シリカは、平均1次粒子径が3nm〜40nmであることが好ましい。3nm未満になると1次粒子間の空隙が極端に小さくなり、インク中の溶剤やインクを吸収する能力が著しく低下する。一方、40nmを越えると、凝集した2次粒子が大きくなり、インク受容層の透明性が低下するおそれがある。以上の表面変性無機微粒子A、B、バインダー、架橋剤等を適宜組み合わせてインク受容層用塗液を構成する。
【0055】
「バインダーについて」
インク受容層に配合されるバインダーとしては、例えば酸化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、α−、β−、γ−シクロデキストリン、カゼイン、ゼラチン、アルブミン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウムまたはカリウム、大豆タンパク等のタンパク質類、ポリビニルアルコール、ケイ素変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、スチレン−無水マレイン酸共重合体の塩、スチレン−ブタジエン系ラテックス、アクリル系ラテックス、ポリエステルポリウレタン系ラテックス、酢酸ビニル系ラテックス等の水性接着剤、あるいは、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の有機溶剤可溶性樹脂が挙げられる。これらのバインダーは、単独あるいは複数を混合して用いられる。
【0056】
これらのバインダーの中でも、ポリビニルアルコール類は、透明性が高く、耐水性が高く、非イオン性で各種の材料との混合が可能であり、室温付近で膨潤性が比較的低いため好ましい。また、インクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわない利点がある。
【0057】
ポリビニルアルコール類の中でも、ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコールまたはケイ素変性ポリビニルアルコールが、特に好ましく用いられる。
【0058】
ポリビニルアルコールとしては、ケン化度が80%以上、とりわけ95%以上の部分ケン化ポリビニルアルコールまたは完全ケン化ポリビニルアルコールが好ましく、また、その平均重合度としては200〜5,000が好ましく、500〜5,000がより好ましい。ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化ポリビニルアルコールが好ましい理由は耐水性に優れるためである。また、平均重合度として200〜5,000が好ましい理由は、この範囲の重合度のものを用いると、耐水性に優れ、かつ取り扱い易い粘度となるためである。
【0059】
また、カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、1級、2級あるいは3級アミノ基や第4級アンモニウム塩基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールが好ましい。
【0060】
バインダーは、無機微粒子100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは5〜50質量部の範囲で使用される。バインダーの添加量が多いと、粒子間の細孔が小さくなり、充分なインク吸収速度が得られない場合があり、一方、バインダーが少ないと塗被層にひび割れが入り、使用し得ない状態になる場合もある。
【0061】
「架橋剤について」
インク受容層用塗液中に、架橋剤を併用することは、ひび割れ抑制の観点からより好ましい。架橋剤の具体例としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂、ホウ酸塩等のホウ素化合物、グリオキザール、メラミン・ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、メチロールウレア、ジオキサン、反応性ビニル化合物、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、ジヒドラジド化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物等が挙げられる。これらのうちでもホウ素化合物が好ましく、特にホウ酸がとりわけ画像の耐光性を高くすることができるので好ましい。
架橋剤の塗工量としては、0.005〜3.0g/m2が好ましく、0.01〜2.0g/m2がより好ましい。0.005g/m2未満だと、ひび割れ防止効果が低くなり、3.0g/m2を越えると、インク受容層の乾燥時の強い収縮によって折り割れを生じたり、インク吸収性が低下するおそれがある。
【0062】
「インク受容層中のその他の材料について」
本発明では、さらに耐熱湿性を改善するため、インク受容層中に塩基性塩化アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性乳酸アルミニウム、塩基性脂肪酸アルミニウム等のアルミニウム化合物、あるいは、塩化ジルコニル、塩基性塩化ジルコニル、硝酸ジルコニル、脂肪酸ジルコニル等のジルコニウム化合物を含有させることもできる。添加する場合は、インク受容層塗液中またはシリカ分散時が考えられるが、中でもシリカ分散時に添加するのが特に好ましい。
なお、塩基性脂肪酸アルミニウム、脂肪酸ジルコニル等における脂肪酸の具体例としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、グリコール酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、4−ヒドロキシブタン酸、グリシン、β−アラニン、4−アミノブタン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等が挙げられるが、中でも酢酸が特に好ましい。
【0063】
本発明では、さらに耐光性、耐ガス性等の保存性を改善する目的で使用される各種公知の化合物−例えばフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、イオウ化合物、水溶性金属塩等を使用することも可能である。
【0064】
さらに本発明では、塗料安定化剤として、リンのオキソ酸塩を用いることも可能である。その具体例としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、メタリン酸、メタ亜リン酸、ピロリン酸、ピロ亜リン酸、ポリリン酸等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、亜鉛塩等が挙げられる。これらのうちでも、次亜リン酸塩は、特に塗料安定性に効果が高いため好ましく用いられる。次亜リン酸塩の具体例としては、例えば、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸マグネシウム、次亜リン酸バリウム、次亜リン酸アンモニウム、次亜リン酸亜鉛等が挙げられる。これらのうちでも次亜リン酸ナトリウムが最も塗料安定性に効果が高いため特に好ましく用いられる。
【0065】
インク受容層中には、さらに、各種公知の顔料分散剤、増粘剤、流動性変性剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、防腐剤、防ばい剤等を適宜添加することもできる。
【0066】
インク受容層は、上述した各種成分を含有するインク受容層用塗液を、支持体上の少なくとも片面に塗工、乾燥して形成される。インク受容層用塗液の塗工量は、乾燥質量で2〜50g/m2が好ましく、3〜30g/m2がより好ましい。塗工量がこの範囲にあると、記録画質及び塗膜強度に優れる。
インク受容層用塗液の塗工は、バーコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、カーテンコーター、スライドビードコーター等の塗工方式で行うことができる。
【0067】
「第1発明について」
第1発明は、上記支持体上に、上記アミノオルガノシランにより表面変性された無機微粒子A、上記カチオン性ポリマーにより表面変性された無機微粒子B及び上記バインダー、を含有するインク受容層を有するインクジェット記録用シートである。
【0068】
即ち、支持体上に、無機微粒子、およびバインダーを含有する少なくとも1層のインク受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、前記無機微粒子として、平均一次粒子径30nm以下であり、かつアミノオルガノシランの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Aと、平均一次粒子径30nm以下であり、かつカチオン性ポリマーの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Bとを含むことを特徴とするインクジェット記録用シートである。
表面変性された表面変性無機微粒子Aと、表面変性された表面変性無機微粒子Bを併用するインク受容層を形成することにより印字濃度、インク吸収性、耐熱湿性が優れたインクジェット記録用シートが得られる。
【0069】
表面変性無機微粒子Aを形成するアミノオルガノシランが、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、(3−トリエトキシシリルプロピル)−ジエチレントリアミン、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−トリメトキシ−シリルプロピル)−ジエチレントリアミン、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびそれらの混合物、からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが、特に印字濃度、インク吸収性、耐熱湿性が優れるので好ましい。また、表面変性無機微粒子Aが、少なくとも1種の、1価の有機酸を含有することが耐水性等の印字の保存性が向上するので好ましい。
【0070】
一方、表面変性無機微粒子Bを形成するカチオン性ポリマーが、上記一般式(1)又は一般式(2)で表される少なくとも1種の構成単位(b1)、上記一般式(3)で表される少なくとも1種の構成単位(b2)、及び上記一般式(4)〜(7)で表される少なくとも1種の構成単位(b3)、から選択される構成単位の少なくとも1つの構成単位を有するポリマーであることが、耐熱湿処理後のニジミが改善されるので好ましく、少なくとも2つの構成単位を有することが、耐熱湿処理後のニジミ、および印字濃度が向上するのでより好ましい。
【0071】
なお、表面変性無機微粒子Aと表面変性無機微粒子Bの割合が、99:1〜1:99であることが好ましく、95:5〜20:80であることがより好ましい。
また、表面変性無機微粒子A、表面変性無機微粒子Bの少なくとも一方、好ましくは両方の無機微粒子が気相法シリカであることが好ましい。また、前記インク受容層がホウ素化合物等の架橋剤によって硬化されることが好ましい。また、前記支持体が耐水性支持体であることが好ましい。更に、表面変性無機微粒子Aと表面変性無機微粒子Bを有するインク受容層を複数層形成することもできる。この場合、同時多層塗工により形成することが好ましい。
【0072】
「第2発明について」
第2発明は、上記支持体上に、上記カチオン性ポリマーにより表面変性された無機微粒子Bと上記バインダーをと含有するインク受容層下層、上記アミノオルガノシランにより表面変性された無機微粒子Aと上記バインダーとを含有するインク受容層上層、を有するインクジェット記録用シートである。
【0073】
即ち、支持体上に、無機微粒子、およびバインダーを含有する少なくとも2層のインク受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、支持体に近いインク受容層下層の無機微粒子が、平均一次粒子径30nm以下であり、かつカチオン性ポリマーの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Bであり、支持体から遠いインク受容層上層の無機微粒子が、平均一次粒子径30nm以下であり、かつアミノオルガノシランの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Aであることを特徴とするインクジェット記録用シートである。
表面変性された表面変性無機微粒子Bを有するインク受容層下層、表面変性された表面変性無機微粒子Aを有するインク受容層上層の積層構造を採用することにより、印字濃度、インク吸収性、耐熱湿性が優れたインクジェット記録用シートが得られる。
【0074】
表面変性無機微粒子Aを形成するアミノオルガノシランが、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、(3−トリエトキシシリルプロピル)−ジエチレントリアミン、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−トリメトキシ−シリルプロピル)−ジエチレントリアミン、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびそれらの混合物、からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが、特に印字濃度、インク吸収性、耐熱湿性が優れるので好ましい。また、表面変性無機微粒子Aが、少なくとも1種の、1価の有機酸を含有することが、耐水性等の印字の保存性が向上するので好ましい。
【0075】
一方、表面変性無機微粒子Bを形成するカチオン性ポリマーが、上記一般式(1)又は一般式(2)で表される少なくとも1種の構成単位(b1)、上記一般式(3)で表される少なくとも1種の構成単位(b2)、及び上記一般式(4)〜(7)で表される少なくとも1種の構成単位(b3)、から選択される構成単位の少なくとも1つの構成単位を有するポリマーであることが、耐熱湿処理後のニジミが改善されるので好ましく、少なくとも2つの構成単位を有することが、耐熱湿処理後のニジミ及び記録時の印字濃度が向上するのでより好ましい。
【0076】
インク受容層下層とインク受容層上層の塗工量の比が、1:99〜99:1、好ましくは5:95〜70:30、より好ましくは10:90〜50:50であることが、インク吸収性が優れるため好ましい。
【0077】
また、少なくともインク受容層上層の無機微粒子は、気相法シリカであることが好ましく、インク受容層下層の無機微粒子も気相法シリカであることが更に好ましい。また、少なくともインク受容層上層がホウ素化合物によって硬化されることが好ましく、インク受容層下層もホウ素化合物によって硬化されていることが更に好ましい。また、インク受容層上層、インク受容層下層とも無機微粒子が気相法シリカであり、且つインク受容層上層の無機微粒子の一次粒子径は、インク受容層下層の一次粒子径と同じか、それよりも小さいことが好ましい。また、前記支持体が耐水性支持体であることが好ましい。更に、インク受容層上層及びインク受容層下層は、同時多層塗工により形成されることが特に好ましい。
【0078】
「第3発明について」
第3発明は、上記支持体上に、上記アミノオルガノシランにより表面変性された無機微粒子Aと上記バインダーとを含有するインク受容層下層、上記カチオン性ポリマーにより表面変性された無機微粒子Bと上記バインダーとを含有するインク受容層上層、を有するインクジェット記録用シートである。
【0079】
即ち、支持体上に、無機微粒子、およびバインダーを含有する少なくとも2層のインク受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、支持体に近いインク受容層下層の無機微粒子が、平均一次粒子径30nm以下であり、かつアミノオルガノシランの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Aであり、支持体から遠いインク受容層上層の無機微粒子が、平均一次粒子径30nm以下であり、かつカチオン性ポリマーの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Bであることを特徴とするインクジェット記録用シートである。
表面変性された表面変性無機微粒子Aを有するインク受容層下層、表面変性された表面変性無機微粒子Bを有するインク受容層上層の積層構造を採用することにより、印字濃度、インク吸収性、耐熱湿性、耐熱湿処理後の画像濃度が優れたインクジェット記録用シートが得られる。
【0080】
表面変性無機微粒子Aを形成するアミノオルガノシランが、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、(3−トリエトキシシリルプロピル)−ジエチレントリアミン、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−トリメトキシ−シリルプロピル)−ジエチレントリアミン、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびそれらの混合物、からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが、特に印字濃度、インク吸収性、耐熱湿性が優れるので好ましい。また、表面変性無機微粒子Aが、少なくとも1種の、1価の有機酸を含有することが耐水性等の印字の保存性が向上するので好ましい。
【0081】
一方、表面変性無機微粒子Bを形成するカチオン性ポリマーが、上記一般式(1)又は一般式(2)で表される少なくとも1種の構成単位(b1)、上記一般式(3)で表される少なくとも1種の構成単位(b2)、及び上記一般式(4)〜(7)で表される少なくとも1種の構成単位(b3)、から選択される構成単位の少なくとも1つの構成単位を有するポリマーであることが、耐熱湿処理後のニジミが向上するので好ましく、少なくとも2つの構成単位を有することが、耐熱湿処理後のニジミ及び記録後時の印字濃度が向上するのでより好ましい。
【0082】
インク受容層下層とインク受容層上層の塗工量の比が、1:99〜99:1、好ましくは30:70〜95:5、より好ましくは50:50〜90:10であることが、インク吸収性が優れるため好ましい。
【0083】
また、少なくともインク受容層上層の無機微粒子は、気相法シリカであることが好ましく、インク受容層下層の無機微粒子も気相法シリカであることが更に好ましい。また、少なくともインク受容層上層がホウ素化合物によって硬化されることが好ましく、インク受容層下層もホウ素化合物によって硬化されていることが更に好ましい。また、インク受容層上層、インク受容層下層とも無機微粒子が気相法シリカであり、且つインク受容層上層の無機微粒子の一次粒子径は、インク受容層下層の一次粒子径と同じか、それよりも小さいことが好ましい。また、前記支持体が耐水性支持体であることが好ましい。更に、インク受容層上層及びインク受容層下層は、同時多層塗工により形成されることが特に好ましい。
【0084】
「第4発明について」
第4発明は、上記支持体上に、上記アミノオルガノシランにより表面変性された無機微粒子Aと上記特定のカチオン性ポリマーとバインダーとを有するインク受容層を有するインクジェット記録用シートである。
即ち、支持体上に、無機微粒子、およびバインダーを含有する少なくとも1層のインク受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、前記無機微粒子として、平均一次粒子径30nm以下であり、かつアミノオルガノシランの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Aを含み、少なくとも1層のインク受容層に少なくとも1種のカチオン性ポリマーを含み、且つ該カチオン性ポリマーが、下記一般式(1)又は一般式(2)で表される少なくとも1種の構成単位(b1)、下記一般式(3)で表される少なくとも1種の構成単位(b2)、及び下記一般式(4)〜(7)で表される少なくとも1種の構成単位(b3)、から選択される構成単位の少なくとも1つの構成単位を有するポリマーであることを特徴とするインクジェット記録用シートである。
【化17】

〔式中、Xは酸残基を表す。〕
【化18】

〔式中、R1は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基、炭素数6〜12のアリール基、またはベンジル基のいずれかを表す。〕
【化19】

〔式中、R2〜R9はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、Y、Zはそれぞれ独立の酸残基を表す。〕
【0085】
アミノオルガノシランの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Aと、上記特定のカチオン性ポリマーを併用することにより、印字濃度、インク吸収性、耐熱湿性が優れたインクジェット記録用シートが得られる。
【0086】
表面変性無機微粒子Aを構成するアミノオルガノシランが、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、(3−トリエトキシシリルプロピル)−ジエチレントリアミン、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−トリメトキシ−シリルプロピル)−ジエチレントリアミン、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびそれらの混合物、からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
また、アミノオルガノシランで表面変性されてなる表面変性無機微粒子Aが、少なくとも1種の、1価の有機酸を含有すると、耐水性等の保存性が向上するので好ましい。
なお、アミノオルガノシランで表面変性されてなる表面変性無機微粒子Aと、カチオン性ポリマーが同一層に存在しても、異なる層に存在しても構わない。インク受容層には、表面変性無機微粒子A以外に、無機微粒子を含有していても構わない。
【0087】
上記第1発明〜第4発明のインクジェット記録用シートは、インク受容層形成後、高光沢を付与する等の目的のため、例えばスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダーなどで加圧下、ロールニップ間を通して表面の平滑性を与えることも可能である。支持体が透気性支持体である場合、インク受容層表面をキャスト加工処理してもよい。
【0088】
「光沢層について」
本発明においては、上述したインク受容層上に、さらに光沢層を設けてもよい。これにより、さらに表面光沢度の高いインクジェット記録用シートとすることができる。光沢層は、顔料および/または樹脂を含有して構成される。光沢層はインクを速やかに通過または吸収できるように、光沢を阻害しない範囲で多孔性もしくは通液性にすることが好ましい。
【0089】
上記方法を実施するための一態様において、少なくとも1層のインク受容層用塗液と、それに隣接する前記光沢層用塗液とが、互いに独立に配置された塗工装置の塗液供給から順次に塗布される。この場合、特に湿潤塗液層上に最外層形成用塗液を塗工する塗工装置は、湿潤内側層形成用塗液層と接触しない方式の塗工装置、例えばスロットダイコーター(井上金属社製ウルトラダイコーター、ヒラノテクシード社製リップコーター等)、スライドダイコーター、カーテンコーター等を用いることが好ましい。
【0090】
上記方法を実施するための他の態様において、前記インク受容性最外層形成用の塗液と、それに隣接する前記インク受容性内側層形成用塗液とが、同時多層塗工装置の前記塗液の供給口からほぼ同時に塗布される。同時多層塗工方式とは、独立した塗工装置で順次塗工するのではなく、単一の塗工装置において、2種類以上の塗液を同時に所望面に付与する方式のことである。同時多層塗工方式の場合、各層用塗液が互に混じりあうことが少なく、均一な膜厚の層を形成することが容易である。同時多層塗工には、多層式スロットダイコーター、多層式スライドダイコーター、多層式スライドカーテンコーター等を用いることが好ましい。
【0091】
光沢層に用いられる顔料としては、インク受容層に用いた無機微粒子と同様のものが挙げられるが、光沢、透明性、インク吸収性の点で、コロイダルシリカ、非晶質シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、ゼオライト、合成スメクタイト等が好ましい。その中でも、光沢性と、他のインクジェット記録用シートとしての品質の面から、コロイダルシリカおよび/またはアルミナがより好ましい。ここでいうアルミナとは、一般的に結晶性を有する酸化アルミニウムとも呼ばれる。一般的に、χ、κ、γ、δ、θ、η、ρ、擬γ、α結晶を有する酸化アルミニウムが挙げられる。本発明では、光沢感、インク吸収性及び顔料インク適性からアルミナが好ましく、さらにγ、δ、θ結晶を有するアルミナが好ましく選択される。粒度分布がシャープで、成膜性が特に優れる気相法アルミナ(フュームドアルミナ)が最も好ましい。気相法アルミナは、ガス状アルミニウムトリクロライドの高温加水分解によって形成されたアルミナであり、結果として高純度のアルミナ粒子を形成する。これら粒子の一次粒子サイズはナノオーダーであり、非常に狭い粒子サイズ分布(粒度分布)を示す。かかる気相法アルミナは、カチオン表面チャージを有する。
【0092】
これらの顔料は、光沢層中に10〜90質量%含まれることが望ましい。顔料の平均粒子径(凝集粒子の場合は凝集粒子の径)は、0.001〜1μmが好ましく、0.005〜0.5μmのものがより好ましい。粒子径がこの範囲にあると優れたインク吸収性、光沢及び印字濃度が得られる。
【0093】
また、必要に応じて光沢層に樹脂を含有することができる。前記光沢層に用いられる樹脂としては、水溶性バインダー(例えばポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白質類、でんぷん、カルボキシルメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体)、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系重合体ラテックス、スチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系共重合体ラテックス等の水分散性樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂等、その他一般に塗工紙分野で公知公用の各種樹脂(接着剤)が単独あるいは併用して使用できる。
【0094】
なお、樹脂を主体に光沢層を形成する場合、樹脂としては、特にエチレン性不飽和結合を有するモノマー(以下エチレン性モノマーという)を重合させてなる重合体あるいは共重合体(以下一括して重合体と称する)を主成分として構成されるのが好ましい。さらに、これら重合体の置換誘導体でも良い。また、上記のエチレン性モノマーをコロイダルシリカの存在下で重合させ、Si−O−R(R:重合体成分)結合によって複合体になった形、あるいは上記重合体にSiOH基等のコロイダルシリカと反応するような官能基を導入しておき、コロイダルシリカと反応させて複合体になった形で使用することも可能である。このような複合体を使用した場合、光沢、インク吸収性に優れたものとなりやすい。
【0095】
また、光沢層には、印字濃度を高めたり、耐水性を向上させるために水溶性金属塩やその他のカチオン性化合物を配合したり、さらに耐光性、耐ガス性を改善するために各種助剤、ホウ素化合物などの各種架橋剤を添加したり、摩擦力を調節するためにプラスチックビーズを配合することも可能である。また、光沢度を低く調節するためにマット化剤として粒径1mm以上の顔料を用いることもできる。
【0096】
光沢層用塗液の塗工量は、乾燥質量で0.01〜10g/m2が好ましく、0.05〜5g/m2がより好ましい。塗工量がこの範囲にあると、光沢、インク乾燥性及び記録濃度が優れたものとなる。インク受容層および/または光沢層の乾燥温度も重要である。乾燥温度が高すぎると、成膜が進みすぎ表面の多孔性が低下する結果、インクの吸収速度が低下し、逆に乾燥温度が低すぎると、光沢に乏しくなる傾向があり、生産性も低下する。乾燥温度は、30〜150℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。
【0097】
また、本発明においては、支持体とインク受容層の間に中間層を設けたり、支持体の裏面(インク受容層が形成されていない面)に保護層を設けたり、さらには該裏面に粘着加工することも可能で、インクジェット記録用シート製造分野における各種公知の技術を付加し得る。
【0098】
「インクについて」
本発明のインクジェット記録用シートに記録画像を形成するための液体インクは、着色剤、液媒体、およびその他の任意の添加剤からなる記録液体であり、市販の任意のインクジェット記録用の液体インクが使用できる。着色剤としては、直接染料、酸性染料、反応性染料等の各種水溶性染料、100nm前後に微粒子化され、樹脂、界面活性剤等で表面処理されたカーボンブラック、有機顔料等が挙げられる。また、液媒体としては、水単独、あるいは水および水溶性有機溶剤の併用がある。水溶性有機溶剤としては、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール等の一価アルコール、1,2−ヘキサンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル等が挙げられる。中でも、顔料インク中に水溶性有機溶剤として、1,2−ヘキサンジオールおよびグリセリンを含有し、かつ、両者の合計が水溶性溶剤の80質量%以上である顔料インクと本発明のインクジェット記録用シートとの組合せが、顔料インク適性、特に耐擦過性の点で好適である。添加剤としては、例えばpH調整剤、金属封鎖剤、防ばい剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、界面活性剤、および防錆剤等が挙げられる。
【実施例】
【0099】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、もちろんこれらに限定されるものではない。なお、例中の「部」および「%」は、特に断らない限りそれぞれ質量部および質量%を示す。
【0100】
(アミノオルガノシロキサンによる表面変性無機微粒子A−1のゾルの調製)
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(デグサ社製、商品名:Dynasylan DAMO)15.2部を、撹拌しながらイオン交換水738部に添加した。10分間撹拌してから、ギ酸20%水溶液15.8部を激しく撹拌しながら添加した。206gの比表面積200m2の気相法シリカ(キャボット・コーポレーション社製、商品名:Cab−O−Sil M−5)を、高剪断速度で少量ずつ添加した。次いで、ローター・ステーター・ミキサーを用いてその分散体を15分間撹拌した。その後、その分散体を加熱して温度50℃とし、その温度で30分間維持して、シリカの表面を完全に変性させた。この方法により、固形分濃度が23質量%で、pH=6.30の表面変性無機微粒子A−1のゾルを得た。なお、アミノシランとシリカの間のモル比は、2.0モル%であり、ギ酸のシリカに対するモル比は、2.0モル%である。
【0101】
(カチオン性ポリマーによる表面変性無機微粒子B−1のゾルの調製)
分子量約1.5万のポリアリルアミン塩酸塩(日東紡社製、商品名:PAA−HCl−3L)の50質量%水溶液16部、および分子量約1.5万のポリアリルアミン(日東紡社製、商品名:PAA−15C)の15質量%水溶液13.3部をイオン交換水518部に加え、比表面積200m2の気相法シリカ(キャボット・コーポレーション社製、商品名:Cab−O−Sil M−5)100部を、高剪断速度で少量ずつ添加した。次いで、ローター・ステーター・ミキサーを用いてその分散体を15分間撹拌した後、湿式超微粒化装置ナノマイザーを用いて処理して、固形分濃度17質量%の表面変性無機微粒子B−1を得た。
【0102】
(支持体A)
CSF(JIS P−8121)が250mlまで叩解された針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)と、CSFが250mlまで叩解された広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)とを、質量比2:8の割合で混合し、濃度0.5%のパルプスラリーを調製した。このパルプスラリー中に、パルプ絶乾質量に対し、カチオン化澱粉2.0%、アルキルケテンダイマー0.4%、アニオン化ポリアクリルアミド樹脂0.1%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂0.7%を添加し、十分に攪拌して分散させた。
上記組成のパルプスラリーを長網マシンで抄紙し、ドライヤー、サイズプレス、マシンカレンダーを通し、坪量180g/m2、密度1.0g/cm3の原紙を製造した。上記サイズプレス工程に用いたサイズプレス液は、カルボキシル変性ポリビニルアルコールと塩化ナトリウムとを2:1の質量比で混合し、これを水に加えて過熱溶解し、濃度5%に調製したもので、このサイズプレス液を紙の両面に、合計で25ml/m2塗布して、支持体A(透気度:300秒)を得た。
【0103】
(支持体B)
上記支持体Aの原紙の両面に、コロナ放電処理した後、バンバリーミキサーで混合分散した下記のポリオレフィン樹脂組成物1を、支持体Aのフェルト面側に、塗工量25g/m2となるようにして、またポリオレフィン樹脂組成物2を、支持体Aのワイヤー側に、塗工量20g/m2となるように、T型ダイを有する溶融押出し機(溶融温度320℃)で塗布し、フェルト面側を鏡面のクーリングロール、ワイヤー面側を粗面のクーリングロールで冷却固化して、ポリオレフィン樹脂組成物1を塗布した側の平滑度(王研式、J.TAPPI No.5)が6000秒、不透明度(JIS P8138)が93%の樹脂被覆した支持体Bを得た。この平滑度6000秒の面側にインク受容層が設けられる。
【0104】
「ポリオレフィン樹脂組成物1」
長鎖型低密度ポリエチレン樹脂(密度0.926g/cm3、メルトインデックス20g/10分)35部、低密度ポリエチレン樹脂(密度0.919g/cm3、メルトインデックス2g/10分)50部、アナターゼ型二酸化チタン(商品名:A−220、石原産業社製)15部、ステアリン酸亜鉛0.1部、酸化防止剤(商品名:Irganox 1010、チバガイギー社製)0.03部、群青(商品名:青口群青NO.2000、第一化成社製)0.09部、蛍光増白剤(商品名:UVITEX OB、チバガイギー社製)0.3部を混合し、ポリオレフィン樹脂組成物1とした。
【0105】
「ポリオレフィン樹脂組成物2」
高密度ポリエチレン樹脂(密度0.954g/cm3、メルトインデックス20g/10分)65部、低密度ポリエチレン樹脂(密度0.919g/cm3、メルトインデックス2g/10分)35部を溶融混合し、ポリオレフィン樹脂組成物2とした。
【0106】
実施例1
(インク受容層用塗液Aの調製)
表面変性無機微粒子A−1のゾルを42.5部、表面変性無機微粒子B−1のゾルを57.5部混合した後、ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−224、ケン化度88%、平均重合度2,400)の10質量%水溶液39.2部、ホウ酸0.78部および少量の消泡剤、分散剤および水を加え、固形分濃度15質量%のインク受容層用塗液Aを得た。
【0107】
(インク受容層の形成)
インク受容層用塗液Aを、メイヤーバーで塗工量が25g/m2となるように支持体B上に塗布乾燥してインク受容層を設けた。前記インク受容層の厚みは38μmであった。
【0108】
実施例2
(インク受容層用塗液Bの調製)
表面変性無機微粒子A−1のゾルを87部、表面変性無機微粒子B−1のゾルを13部混合した後、ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−224、ケン化度88%、平均重合度2,400)の10質量%水溶液44.5部、ホウ酸0.90部および少量の消泡剤、分散剤および水を加え、固形分濃度15質量%のインク受容層用塗液Bを得た。
【0109】
(インク受容層の形成)
インク受容層用塗液Bを、メイヤーバーで塗工量が25g/m2となるように支持体B上に塗布乾燥してインク受容層を設けた。前記インク受容層の厚みは38μmであった。
【0110】
実施例3
(インク受容層用塗液Cの調製)
表面変性無機微粒子A−1のゾルを69部、表面変性無機微粒子B−1のゾルを31部混合した後、ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−224、ケン化度88%、平均重合度2,400)の10質量%水溶液42.3部、ホウ酸0.85部および少量の消泡剤、分散剤および水を加え、固形分濃度15質量%のインク受容層用塗液Cを得た。
【0111】
(インク受容層の形成)
インク受容層用塗液Cを、メイヤーバーで塗工量が25g/m2となるように支持体B上に塗布乾燥してインク受容層を設けた。前記インク受容層の厚みは38μmであった。
【0112】
実施例4
(インク受容層用塗液Dの調製)
表面変性無機微粒子A−1のゾルを19.5部、表面変性無機微粒子B−1のゾルを80.5部混合した後、ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−224、ケン化度88%、平均重合度2,400)の10質量%水溶液36.5部、ホウ酸0.85部および少量の消泡剤、分散剤および水を加え、固形分濃度15質量%のインク受容層用塗液Dを得た。
【0113】
(インク受容層の形成)
インク受容層用塗液Dを、メイヤーバーで塗工量が25g/m2となるように支持体B上に塗布乾燥してインク受容層を設けた。前記インク受容層の厚みは38μmであった。
【0114】
実施例5
実施例1において、表面変性無機微粒子A−1のゾル42.5部の代わりに、下記表面変性無機微粒子A−2のゾル37.6部を使用した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
(アミノオルガノシロキサンによる表面変性無機微粒子A−2のゾルの調製)
3−アミノプロピルトリエトキシシラン(デグサ社製、商品名:Dynasylan AMEO)31.2部を、イオン交換水717部に添加して攪拌した。10分間撹拌を続けた後、ギ酸20%水溶液21.9部を激しく撹拌しながら添加した。230gの比表面積200m2の気相法シリカ(キャボット・コーポレーション社製、商品名:Cab−O−Sil M−5)を、高剪断速度で少量ずつ添加した。次いで、ローター・ステーター・ミキサーを用いてその分散体を15分間撹拌した。その後、その分散体を加熱して温度50℃とし、その温度で30分間維持して、シリカの表面を完全に変性させた。この方法により、固形分濃度が26質量%で、pH=6.30の表面変性無機微粒子A−2のゾルを得た。なお、アミノシランとシリカの間のモル比は、3.6モル%であり、ギ酸のシリカに対するモル比は、2.5モル%である。
【0115】
実施例6
実施例1において、表面変性無機微粒子A−1のゾル42.5部の代わりに、下記表面変性無機微粒子A−3のゾル42.5部を使用した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
(アミノオルガノシロキサンによる表面変性無機微粒子A−3のゾルの調製)
N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(デグサ社製、商品名:Dynasylan DAMO)18.1部を、撹拌しながらイオン交換水744部に添加した。10分間撹拌してから、L−乳酸20%水溶液44.5部を激しく撹拌しながら添加した。206gの比表面積200m2の気相法シリカ(キャボット・コーポレーション社製、商品名:Cab−O−Sil M−5)を、高剪断速度で少量ずつ添加した。次いで、ローター・ステーター・ミキサーを用いてその分散体を15分間撹拌した。その後、その分散体を加熱して温度50℃とし、その温度で30分間維持して、シリカの表面を完全に変性させた。この方法により、固形分濃度が23質量%で、pH=6.00の表面変性無機微粒子A−3のゾルを得た。なお、アミノシランとシリカの間のモル比は、2.4モル%であり、L−乳酸のシリカに対するモル比は、2.9モル%である。
【0116】
実施例7
実施例1において、表面変性無機微粒子B−1のゾル57.5部の代わりに、下記表面変性無機微粒子B−2のゾル57.5部を使用した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
(カチオン性ポリマーによる表面変性無機微粒子B−2のゾルの調製)
分子量約1.5万の50モル%メトキシカルボニル変性ポリアリルアミン塩酸塩の20質量%水溶液40部をイオン交換水495部に加え、比表面積200m2の気相法シリカ(キャボット・コーポレーション社製、商品名:Cab−O−Sil M−5)100部を、高剪断速度で少量ずつ添加した。次いで、ローター・ステーター・ミキサーを用いてその分散体を15分間撹拌した後、湿式超微粒化装置ナノマイザーを用いて処理して、固形分濃度17質量%の表面変性無機微粒子B−2のゾルを得た。
【0117】
実施例8
実施例1において、表面変性無機微粒子B−1のゾル57.5部の代わりに、下記表面変性無機微粒子B−3のゾル57.5部を使用した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
(カチオン性ポリマーによる表面変性無機微粒子B−3のゾルの調製)
分子量約2万のアリルアミン塩酸塩・ジアリルアミン塩酸塩の共重合体(日東紡社製、商品名:PAA−D41−HCl)の40質量%水溶液20部、および分子量約1.5万のポリアリルアミン(日東紡社製、商品名:PAA−15C)の15質量%水溶液13.3部をイオン交換水514部に加え、比表面積200m2の気相法シリカ(キャボット・コーポレーション社製、商品名:Cab−O−Sil M−5)100部を、高剪断速度で少量ずつ添加した。次いで、ローター・ステーター・ミキサーを用いてその分散体を15分間撹拌した後、湿式超微粒化装置ナノマイザーを用いて処理して、固形分濃度17質量%の表面変性無機微粒子B−3のゾルを得た。
【0118】
比較例1
実施例1において、インク受容層用塗液Aの代わりに、下記に示すインク受容層用塗液Eを使用した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
(インク受容層用塗液Eの調製)
表面変性無機微粒子A−1のゾル100部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−224、(株)クラレ製、ケン化度88%、平均重合度2,400)の10質量%水溶液46部、ホウ酸0.92部および少量の消泡剤、分散剤および水を加え、固形分濃度15質量%のインク受容層用塗液Eを得た。
【0119】
比較例2
実施例1において、インク受容層用塗液Aの代わりに、下記に示すインク受容層用塗液Fを使用した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
(インク受容層用塗液Fの調製)
表面変性無機微粒子B−1のゾル100部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−224、(株)クラレ製、ケン化度88%、平均重合度2,400)の10質量%水溶液34部、ホウ酸0.68部および少量の消泡剤、分散剤および水を加え、固形分濃度15質量%のインク受容層用塗液Fを得た。
【0120】
実施例9
(インク受容層用塗液Gの調製)
表面変性無機微粒子A−1のゾル100部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−224、(株)クラレ製、ケン化度88%、平均重合度2,400)の10質量%水溶液46部、ホウ酸0.92部および少量の消泡剤、分散剤および水を加え、固形分濃度15質量%のインク受容層用塗液Gを得た。
【0121】
(インク受容層用塗液Hの調製)
表面変性無機微粒子B−1のゾル100部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−224、(株)クラレ製、ケン化度88%、平均重合度2,400)の10質量%水溶液34部、ホウ酸0.68部および少量の消泡剤、分散剤および水を加え、固形分濃度15質量%のインク受容層用塗液Hを得た。
【0122】
(インク受容層の形成)
インク受容層用塗液Hを、メイヤーバーで乾燥後の塗工量が12g/m2となるように支持体B上に塗布乾燥してインク受容層下層を設けた。さらに、前記インク受容層中の細孔を水で満たし、余剰の水分を除去した後、インク受容層用塗液Gを、メイヤーバーで乾燥後の塗工量が12g/m2となるように塗布乾燥してインク受容層上層を設けた。前記インク受容層下層とインク受容層上層の合計厚みは37μmであった。
【0123】
実施例10
実施例9において、インク受容層下層を16g/m2塗工し、前記インク受容層下層上にインク受容層上層を8g/m2塗工した以外は、実施例9と同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
【0124】
実施例11
実施例9において、インク受容層下層を18g/m2塗工し、前記インク受容層下層上にインク受容層上層を6g/m2塗工した以外は、実施例9と同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
【0125】
実施例12
実施例9において、インク受容層下層を8g/m2塗工し、前記インク受容層下層上にインク受容層上層を16g/m2塗工した以外は、実施例9と同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
【0126】
実施例13
実施例9において、インク受容層下層を6g/m2塗工し、前記インク受容層下層上にインク受容層上層を18g/m2塗工した以外は、実施例9と同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
【0127】
実施例14
実施例9において、インク受容層下層を2.4g/m2塗工し、前記インク受容層下層上にインク受容層上層を21.6g/m2塗工した以外は、実施例9と同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
【0128】
実施例15
(インク受容層の形成)
インク受容層用塗液Gを、メイヤーバーで乾燥後の塗工量が12g/m2となるように支持体B上に塗布乾燥してインク受容層下層を設けた。さらに、前記インク受容層下層中の細孔を水で満たし、余剰の水分を除去した後、インク受容層用塗液Hを、メイヤーバーで乾燥後の塗工量が12g/m2となるように塗布乾燥してインク受容層上層を設けた。前記インク受容層下層とインク受容層上層の合計厚みは37μmであった。
【0129】
実施例16
実施例15において、インク受容層下層を16g/m2塗工し、前記インク受容層下層上にインク受容層上層を8g/m2塗工した以外は、実施例15と同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
【0130】
実施例17
実施例15において、インク受容層下層を18g/m2塗工し、前記インク受容層下層上にインク受容層上層を6g/m2塗工した以外は、実施例15と同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
【0131】
実施例18
実施例15において、インク受容層下層を21.6g/m2塗工し、前記インク受容層下層上にインク受容層上層を2.4g/m2塗工した以外は、実施例15と同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
【0132】
実施例19
実施例15において、インク受容層下層を8g/m2塗工し、前記インク受容層下層上にインク受容層上層を16g/m2塗工した以外は、実施例15と同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
【0133】
実施例20
実施例15において、インク受容層下層を6g/m2塗工し、前記インク受容層下層上にインク受容層上層を18g/m2塗工した以外は、実施例15と同様にしてインクジェット記録用シートを得た。
【0134】
実施例21
(カチオン性ポリマーによる表面変性無機微粒子B−4のゾルの調製)
分子量約1.5万のポリアリルアミン塩酸塩(日東紡社製、商品名:PAA−HCl−3L)の50質量%水溶液16部、および分子量約1.5万のポリアリルアミン(日東紡社製、商品名:PAA−15C)の15質量%水溶液13.3部をイオン交換水717部に加え、比表面積300m2の気相法シリカ(キャボット・コーポレーション社製、商品名:Cab−O−Sil M−5)100部を、高剪断速度で少量ずつ添加した。次いで、ローター・ステーター・ミキサーを用いてその分散体を15分間撹拌した後、湿式超微粒化装置ナノマイザーを用いて処理して、固形分濃度13質量%の表面変性無機微粒子B−4のゾルを得た。
【0135】
(インク受容層用塗液Jの調製)
表面変性無機微粒子B−4のゾル100部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−224、(株)クラレ製、ケン化度88%、平均重合度2,400)の10質量%水溶液31部、ホウ酸0.60部および少量の消泡剤、分散剤および水を加え、固形分濃度10質量%のインク受容層用塗液Jを得た。
【0136】
(インク受容層の形成)
インク受容層用塗液Gを、メイヤーバーで乾燥後の塗工量が21.6g/m2となるように支持体B上に塗布乾燥してインク受容層下層を設けた。さらに、前記インク受容層下層中の細孔を水で満たし、余剰の水分を除去した後、インク受容層用塗液Jを、メイヤーバーで乾燥後の塗工量が2.4g/m2となるように塗布乾燥してインク受容層上層を設けた。前記インク受容層下層とインク受容層上層の合計厚みは38μmであった。
【0137】
(評価方法)
実施例1〜21、比較例1〜2で得たインクジェット記録用シートについて、キヤノン社製インクジェットプリンターPIXUS iP7500(染料インク系)を用いて印字を行った。得られたインクジェット記録用シートおよびその画像について、以下の評価を行い、結果を表1に示した。
【0138】
〔印字濃度〕
前記インクジェットプリンターを用いて23℃、相対湿度50%の環境下で黒色100%ベタ印字を行い、同環境下で24時間放置した。その後、グレタグマクベス反射濃度計(グレタグマクベス社製、商品名:RD−19I)を用いて印字濃度を測定した。表中に示した数字は5回測定の平均値である。
【0139】
〔インク吸収性〕
前記インクジェットプリンターでグリーンベタ階調印字を行い、得られた画像を目視観察してインク吸収性のレベルを評価した。評価基準は印字画像の官能評価を点数付けし、(優)10〜1(劣)で評価した。
【0140】
長期保存性の評価として、下記の耐熱湿性、耐水性および耐光性によって評価した。
〔耐熱湿性〕
ISO−400画像『ポートレート』を23℃、相対湿度50%の環境下で印字した直後、30℃、相対湿度85%の恒温恒湿器に7日間保管し、目視観察により耐熱湿性のレベルを評価した。
(評価基準)
優:経時ニジミの発生および変褪色はほとんどみられず良好である
良:若干の経時ニジミおよび変褪色がみられたが、実用上全く問題ないレベルである
可:経時ニジミおよび変褪色がみられ、実用上問題のあるレベルである
不可:経時ニジミが顕著に認められ、変褪色も著しい。
【0141】
〔熱湿処理後の画像評価(透明性)〕
ISO−400画像『ポートレート』を23℃、相対湿度50%の環境下で印字した直後、30℃、相対湿度85%の恒温恒湿器に7日間保管し、目視観察により処理後画像の透明性レベルを官能評価した。
(評価基準)
優:処理後画像の透明性はほとんど変わらず良好である
良:若干の透明性低下がみられたが、実用上全く問題ないレベルである
可:画像の透明性低下がみられ、実用上問題のある可能性がある
不可:画像の透明性が著しく低下し、実用上問題のあるレベルである
【0142】
〔耐水性〕
ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グリーン、ブルーの各色ベタ印字画像を23℃、相対湿度50%の環境下で印字し、同環境で24時間放置した後、2ml容量のスポイトを用いて水道水を一滴滴下し、1分経過後、印字面に残った水を市販のマットインクジェット用紙に転写した。得られた結果を目視観察して耐水性レベルを評価した。
(評価基準)
優:画像の変褪色、色移りがほとんどみられず良好である
良:若干の変褪色、色移りがみられたが、実用上全く問題ないレベルである
可:変褪色、色移りがみられ、実用上問題のあるレベルである
不可:変褪色、色移りが著しい。
【0143】
〔耐光性〕
ISO−400画像『ポートレート』を23℃、相対湿度50%の環境下で印字し、同環境で24時間放置した。その後、キセノンウェザーメーター(スガ試験機株式会社製 型式WEL−7X−LHP)を用い、24℃、相対湿度60%の環境下で72時間処理した。得られた結果につき、目視観察により耐光性のレベルを評価した。
(評価基準)
優:ほとんど変褪色がみられず非常に良好である
良:わずかに変褪色はみられるものの、色バランスは崩れておらず良好である
可:変褪色がみられ、実用上問題のあるレベルである
不可:変褪色が著しい
【0144】
【表1】

【0145】
実施例1〜8のインクジェット記録用シートは、第1発明である、表面変性無機微粒子Aと表面変性無機微粒子Bを同一層に併用した例である。併用しない比較例に比べ、高画質の画像が形成され、かつ、高温高湿下でも経時ニジミの発生や変褪色もほとんどみられず、さらに長時間光に晒された場合でも画像の変褪色が非常に少なく、長期保存性に優れたインクジェット記録用シートであった。
【0146】
また、実施例9〜14のインクジェット記録用シートは、第2発明である、表面変性無機微粒子Aをインク受容層上層に、表面変性無機微粒子Bをインク受容層下層に積層した例である。表面変性無機微粒子A、表面変性無機微粒子Bを単独で用いた比較例に比べ、高画質の画像が形成され、かつ、高温高湿下でも経時ニジミの発生や変褪色もほとんどみられず、さらに長時間光に晒された場合でも画像の変褪色が非常に少なく、長期保存性に優れたインクジェット記録用シートであった。また、同一層に用いた実施例1〜8と比べると、インク吸収性が高くなる。なお、この傾向は、インク受容層上層の塗工量を多くすると、顕著である。
【0147】
また、実施例15〜21のインクジェット記録用シートは、第3発明である、表面変性無機微粒子Aをインク受容層下層に、表面変性無機微粒子Bをインク受容層上層に積層した例である。表面変性無機微粒子A、表面変性無機微粒子Bを単独で用いた比較例に比べ、高画質の画像が形成され、かつ、高温高湿下でも経時ニジミの発生や変褪色もほとんどみられず、さらに長時間光に晒された場合でも画像の変褪色が非常に少なく、長期保存性に優れたインクジェット記録用シートであった。また、同一層に用いた実施例15〜21と比べると、耐光性に優れる。なお、この傾向は、インク受容層下層の塗工量を多くすると、顕著である。
【0148】
また、アミノオルガノシランの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Aと、第4発明で規定するカチオン性ポリマーを組み合わせた全ての実施例は、高画質の画像が形成され、かつ、高温高湿下でも経時ニジミの発生や変褪色もほとんどみられず、さらに長時間光に晒された場合でも画像の変褪色が非常に少なく、長期保存性に優れた極めてバランスのとれたインクジェット記録用シートとなる。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明は、支持体上に、無機微粒子、カチオン性ポリマーおよびバインダーを含有するインク受容層を有するインクジェット記録用シートに利用できる。中でも、写真画質を狙ったインク吐出の早い染料系や顔料系インクジェットプリンターに適したインクジェット記録用シートを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、無機微粒子、およびバインダーを含有する少なくとも1層のインク受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、前記無機微粒子として、平均一次粒子径30nm以下であり、かつアミノオルガノシランの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Aと、平均一次粒子径30nm以下であり、かつカチオン性ポリマーの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Bとを含むことを特徴とするインクジェット記録用シート。
【請求項2】
アミノオルガノシランが、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、(3−トリエトキシシリルプロピル)−ジエチレントリアミン、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−トリメトキシ−シリルプロピル)−ジエチレントリアミン、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびそれらの混合物、からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のインクジェット記録用シート。
【請求項3】
表面変性無機微粒子Aが、少なくとも1種の1価の有機酸と、アミノオルガノシランの存在下で表面変性されてなることを特徴とする、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用シート。
【請求項4】
カチオン性ポリマーが、下記一般式(1)又は一般式(2)で表される少なくとも1種の構成単位(b1)、下記一般式(3)で表される少なくとも1種の構成単位(b2)、及び下記一般式(4)〜(7)で表される少なくとも1種の構成単位(b3)、から選択される構成単位の少なくとも1つの構成単位を有するポリマーである請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録用シート。
【化1】

〔式中、Xは酸残基を表す。〕
【化2】

〔式中、R1は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基、炭素数6〜12のアリール基、またはベンジル基のいずれかを表す。〕
【化3】

〔式中、R2〜R9はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、Y、Zはそれぞれ独立の酸残基を表す。〕
【請求項5】
表面変性無機微粒子Aと表面変性無機微粒子Bの割合が、99:1〜1:99である請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット記録用シート。
【請求項6】
支持体上に、無機微粒子、およびバインダーを含有する少なくとも2層のインク受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、支持体に近いインク受容層下層の無機微粒子が、平均一次粒子径30nm以下であり、かつカチオン性ポリマーの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Bであり、支持体から遠いインク受容層上層の無機微粒子が、平均一次粒子径30nm以下であり、かつアミノオルガノシランの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Aであることを特徴とするインクジェット記録用シート。
【請求項7】
アミノオルガノシランが、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、(3−トリエトキシシリルプロピル)−ジエチレントリアミン、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−トリメトキシ−シリルプロピル)−ジエチレントリアミン、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびそれらの混合物、からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項6に記載のインクジェット記録用シート。
【請求項8】
表面変性無機微粒子Aが、少なくとも1種の1価の有機酸と、アミノオルガノシランの存在下で表面変性されてなることを特徴とする、請求項6又は7に記載のインクジェット記録用シート。
【請求項9】
カチオン性ポリマーが、下記一般式(1)又は一般式(2)で表される少なくとも1種の構成単位(b1)、下記一般式(3)で表される少なくとも1種の構成単位(b2)、及び下記一般式(4)〜(7)で表される少なくとも1種の構成単位(b3)、から選択される構成単位の少なくとも1つの構成単位を有するポリマーである請求項6〜8のいずれか一項に記載のインクジェット記録用シート。
【化4】

〔式中、Xは酸残基を表す。〕
【化5】

〔式中、R1は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基、炭素数6〜12のアリール基、またはベンジル基のいずれかを表す。〕
【化6】

〔式中、R2〜R9はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、Y、Zはそれぞれ独立の酸残基を表す。〕
【請求項10】
インク受容層下層とインク受容層上層の塗工量の比が、1:99〜99:1であることを特徴とする、請求項6〜9のいずれか一項に記載のインクジェット記録用シート。
【請求項11】
支持体上に、無機微粒子、およびバインダーを含有する少なくとも2層のインク受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、支持体に近いインク受容層下層の無機微粒子が、平均一次粒子径30nm以下であり、かつアミノオルガノシランの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Aであり、支持体から遠いインク受容層上層の無機微粒子が、平均一次粒子径30nm以下であり、かつカチオン性ポリマーの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Bであることを特徴とするインクジェット記録用シート。
【請求項12】
アミノオルガノシランが、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、(3−トリエトキシシリルプロピル)−ジエチレントリアミン、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−トリメトキシ−シリルプロピル)−ジエチレントリアミン、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびそれらの混合物、からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項11に記載のインクジェット記録用シート。
【請求項13】
表面変性無機微粒子Aが、少なくとも1種の1価の有機酸と、アミノオルガノシランの存在下で表面変性されてなることを特徴とする、請求項11又は12に記載のインクジェット記録用シート。
【請求項14】
カチオン性ポリマーが、下記一般式(1)又は一般式(2)で表される少なくとも1種の構成単位(b1)、下記一般式(3)で表される少なくとも1種の構成単位(b2)、及び下記一般式(4)〜(7)で表される少なくとも1種の構成単位(b3)、から選択される構成単位の少なくとも1つの構成単位を有するポリマーである請求項11〜13のいずれか一項に記載のインクジェット記録用シート。
【化7】

〔式中、Xは酸残基を表す。〕
【化8】

〔式中、R1は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基、炭素数6〜12のアリール基、またはベンジル基のいずれかを表す。〕
【化9】

〔式中、R2〜R9はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、Y、Zはそれぞれ独立の酸残基を表す。〕
【請求項15】
インク受容層下層とインク受容層上層の塗工量の比が、1:99〜99:1であることを特徴とする、請求項11〜14のいずれか一項に記載のインクジェット記録用シート。
【請求項16】
支持体上に、無機微粒子、およびバインダーを含有する少なくとも1層のインク受容層を有するインクジェット記録用シートにおいて、前記無機微粒子として、平均一次粒子径30nm以下であり、かつアミノオルガノシランの少なくとも1種により表面変性された表面変性無機微粒子Aを含み、少なくとも1層のインク受容層に少なくとも1種のカチオン性ポリマーを含み、且つ該カチオン性ポリマーが、下記一般式(1)又は一般式(2)で表される少なくとも1種の構成単位(b1)、下記一般式(3)で表される少なくとも1種の構成単位(b2)、及び下記一般式(4)〜(7)で表される少なくとも1種の構成単位(b3)、から選択される構成単位の少なくとも1つの構成単位を有するポリマーであることを特徴とするインクジェット記録用シート。
【化10】

〔式中、Xは酸残基を表す。〕
【化11】

〔式中、R1は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基、炭素数6〜12のアリール基、またはベンジル基のいずれかを表す。〕
【化12】

〔式中、R2〜R9はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、Y、Zはそれぞれ独立の酸残基を表す。〕
【請求項17】
アミノオルガノシランが、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−トリメトキシシラン、(3−トリエトキシシリルプロピル)−ジエチレントリアミン、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−トリメトキシ−シリルプロピル)−ジエチレントリアミン、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランおよびそれらの混合物、からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項16に記載のインクジェット記録用シート。
【請求項18】
アミノオルガノシランで表面変性されてなる表面変性無機微粒子Aが、少なくとも1種の、1価の有機酸を含有することを特徴とする、請求項16又は17に記載のインクジェット記録用シート。

【公開番号】特開2009−241290(P2009−241290A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88010(P2008−88010)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】