説明

インクジェット記録用紙

【課題】 本発明の目的は、優れた表面光沢を有し、インクを速やかに吸収し、顔料インクでプリントした場合に光沢均一感に優れ、染料インクでプリントした場合にも発色性に優れる記録用紙を提供することにある。
【解決手段】 支持体上にインク受容層を有してなるインクジェット記録用紙において、前記インク受容層最表面を構成する層が気相法により合成された1次粒径が20nm以下である酸化チタン粒子を含有することを特徴とするインクジェット記録用紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発色性に優れ、光沢均一感に優れたインクジェット記録用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録はインクにおいても様々な研究開発がなされ、最近では顔料インクが注目され、その課題と解決方法を開示した出願も多い。顔料インクは染料インクに比べ、耐光性、耐オゾン性、耐にじみ性などすなわち堅牢性に優れ、欠点であった色再現性なども向上しつつある。しかしながらプリント表面の光沢感の均一性にやや劣る指摘があり、中間濃度部でのギラツキと高濃度部での光沢度低下があるため、写真として鑑賞するには非常に不自然な表面となる。この不自然さを解消するため型付け原紙を用いて表面を半光沢とし、光沢均一化を図る工夫もなされているが、中間濃度部のギラツキはかかる工夫においてもなかなか解消されないものであった。
【0003】
ところで、チタニア(酸化チタン)はシリカやアルミナと同様に記録用紙に用いる無機微粒子として検討されているが(特許文献1など)、白色度を調整する目的、紫外線を遮断する目的、または光触媒採用に注目した場合としての検討が殆どであり、光沢度を上げるための検討は少ない。
【0004】
特許文献2には屈折率1.65以上の球状粒子によって光沢度を上げる工夫がなされ、特許文献3には酸化チタンとコロイダルシリカによって画像色彩性・塗膜強度に優れる記録用紙が開示されているが、これらの発明によってはインク吸収速度に優れたものは得られていない。また顔料インクでの光沢均一感を得る検討としてはこれまで殆ど見受けられず、気相法酸化チタン(以下チタニアともいう)を実際に検討した例もあまり見受けられない。
【特許文献1】特許第2673840号公報
【特許文献2】特開2001−328341号公報
【特許文献3】特開2001−10212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、優れた表面光沢を有し、インクを速やかに吸収し、顔料インクでプリントした場合に光沢均一感に優れ、染料インクでプリントした場合にも発色性に優れる記録用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の前記課題は以下の手段により達成される。
【0007】
(請求項1)
インク受容層最表面に気相法により合成された1次粒径が20nm以下である酸化チタン粒子を含有することを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0008】
(請求項2)
支持体上に2以上のインク受容層を有し、前記インク受容層最表面を構成する層が、気相法により合成された1次粒径が20nm以下である酸化チタン粒子を含有する厚さ0.1〜5μmの層であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用紙。
【0009】
(請求項3)
前記気相法により合成された1次粒径が20nm以下である酸化チタン粒子を含有する厚さ0.1〜5μmの層が、隣接するインク受容層と同時重層塗布され製造されたことを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録用紙。
【0010】
(請求項4)
前記酸化チタン粒子は、カチオン化処理されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0011】
(請求項5)
前記カチオン化処理が塩基性ポリ塩化アルミニウムによることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録用紙。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、優れた表面光沢を有し、インク吸収が速く、顔料インクでプリントしたとき光沢均一感に優れ、染料インクでプリントしたときは発色性に優れる記録用紙が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0014】
顔料インクは染料インクに比べ、堅牢性に優れ、欠点であった色再現性なども向上しつつある。しかしながらプリント表面の光沢感の均一性や、中間濃度部でのギラツキと高濃度部での光沢度低下等があり、特に中間濃度部のギラツキはなかなか解消することが難しかった。
【0015】
顔料プリントにおける中間濃度域でのギラツキの発生原因は以下のように推測できる。すなわちインクジェット記録用紙において、インク受容層のうちでも空隙型インク受容層は通常シリカまたはアルミナと空隙が主成分であるため、それらを複合した空隙層としての屈折率は1.1〜1.4程度と低くなる。この空隙層の上に顔料インクによるインク層(揮発成分以外の乾燥固形分)が印字により形成されると、顔料を有する屈折率1.5程度の層が、前記屈折率1.1〜1.4程度の低屈折率空隙層の上に形成されるため、屈折率の高い層から低い層への界面においては光の反射率が高くなり、そのためギラツキを生じるものと考えられる。従って、本発明においては、高屈折率を有する酸化チタン粒子を最表層に含有させ最表層の屈折率を上げることで前記ギラツキを抑制するものである。
【0016】
インクジェット記録用紙において、インク受容層に使用される、気相法にて合成される無機微粒子として、気相法シリカや気相法アルミナは非常に一般的であり、特に気相法により製造されるものは湿式法によるものに比べ粒子表面の活性が高く、疎な空隙構造を作りやすいためインク吸収には好適である。本発明者らは、また、チタニアにおいても、沈降法やゾルゲル法などの湿式法により製造されたチタニアに比べ気相法チタニアは、空隙率が高いため、インク吸収、中でもインク吸収速度に有利であることを推測し、確認するに至った。
【0017】
また、酸化チタンを最表層にすることによりその屈折率が高いことにより表面の光沢度は向上する。
【0018】
従って、本発明のインクジェット記録用紙は、支持体上にインク受容層が形成されてなるものであり、かつ、前記インク受容層最表面には気相法により合成された1次粒径が20nm以下である酸化チタン粒子を含有するものである。
【0019】
インク受容層としては、少なくとも微粒子、親水性バインダーを含有する所謂空隙層を有するものであり、チタニア微粒子、親水性バインダーを含有するインク受容層が、本発明に係わる気相法チタニア含有層であってもよく、また、気相法チタニア粒子、親水性バインダーを含有する表面層を、所定の膜厚で、シリカ等他の無機粒子(チタニアであってもよいが)を含有する別の空隙層からなるインク受容層上に有する構成であってもよい。
【0020】
好ましい態様としては、少なくともチタニア以外の無機微粒子、親水性バインダー等を含有する空隙型インク受容層上に、前記気相法チタニア粒子、親水性バインダー等を含有する同じく空隙層が、所定の膜厚で形成される態様である。
【0021】
気相法酸化チタン(チタニア)の製造例としては、例えば、特開平11−278845号公報等に見ることができ、四塩化チタンを酸水素焔中で高温加水分解させることにより得られる。粒子径の調節は公知の条件を調節することによって可能であり、本発明で必要な一次粒子径20nm以下のものもたやすく得ることができる。本発明に用いる気相法チタニアの一次粒子径は3〜20nm、好ましくは5〜15nmである。一次粒子径が大きい場合は、チタニアの高屈折率に起因し光の散乱度が大きくなり、染料プリントでの発色性が低下する。また、一次粒子径が小さい場合は空隙の毛管径が縮小することにより、インクの吸収速度が低下する。
【0022】
一次粒子径とBET比表面積は緩い逆相関があり、一次粒子径が小さければBET比表面積は大きく、BET比表面積が小さければ一次粒子径は大きい傾向にある。つまり本発明ではBET比表面積も好ましいチタニアを得るための指標として用いることができる。
【0023】
好ましいBET比表面積は55〜250m2/g、好ましくは100〜200m2/gである。市販品として得られる気相法チタニアには日本アエロジル製P25(一次粒子径21nm、BET比表面積50m2/g)があるが、これは粒子径が大きいため本発明には適さない。特開平11−278845等に記載のBET比表面積55〜150m2/gの気相法チタニアは好ましく使用できる。特に150m2/gのものが好ましい。
【0024】
BET比表面積とは、ガス吸着法により粒子の比表面積を算出する測定方法である。ガス吸着法による粒子の比表面積算出は、窒素ガスの様な吸着占有面積が分かっているガス分子を粒子に吸着させ、その吸着量から粒子の比表面積を算出する方法である。BET比表面積は、固体表面に直接吸着したガス分子の量(単分子層吸着量)を正確に算出するためのもので、下記に示すBETの式と呼ばれる数式を用いて算出される。
【0025】
下記式に示す様に、BETの式は一定温度で吸着平衡状態にある時の吸着平衡圧Pとその圧力における吸着量Vの関係を示すもので以下の様に表される。
【0026】
P/V(P0−P)=(1/VmC)+((C−1)/VmC)(P/P0
ただし、P0 :飽和蒸気圧
Vm:単分子層吸着量、気体分子が固体表面で単分子層を形成した時の
吸着量
C :吸着熱などに関するパラメータ(>0)
上式より単分子吸着量Vmを算出し、これにガス分子1個の占める断面積を掛けることにより、粒子の表面積を求めることができる。
【0027】
BET比表面積の具体的な測定方法としては、例えば、サンプルを温度50℃で10時間の脱気を行って前処理をした後、窒素ガスを吸着ガスとして使用してガス吸着量測定装置にて測定を行う。測定を行う全自動ガス吸着量測定装置としては、オートソーブ1(湯浅アイオニクス社製)やフローソーブ2300(島津製作所社製)が挙げられる。これらの測定装置では、窒素吸着法の1点法あるいは多点法によりBET比表面積を求める。
【0028】
気相法チタニアは原料の四塩化チタンに起因して比較的高価なものであるため、効果を損なわない範囲で使用量を控えたい。また、光散乱の観点からもあまり使用量が増えると皮膜の透明度が低くなり染料プリントの発色性が低下する。そのため、空隙容量すなわちインク吸収量を確保するために、気相法シリカや気相法アルミナと併用することが好ましい。特に気相法シリカと併用することは好ましい。
【0029】
本発明の効果の一部である光沢性および光沢均一性は、最表層に含まれる気相法チタニアの含有密度が高いほど優れる傾向にある。すなわち本発明の好ましい形態は、最表層が気相法チタニアを高密度に含有し、その隣接層および下層は実質的に気相法チタニアを含有せず気相法シリカを主成分とし、なおかつ、最表層が可能な限り薄層という複層構成である。最表層の厚さは0.1〜5μmであることが好ましく、0.5〜2.5μmがさらに好ましい。
【0030】
この薄層の塗布を達成する上でも、本発明の気相法チタニアの一次粒径は20nm以下であることが必要である。
【0031】
薄層塗布するためには湿潤膜厚も低めに設定することになるが、あまりに湿潤膜厚を低くすると塗布安定性が損なわれる。安定塗布できる湿潤膜厚を維持しようとすれば気相法チタニアの含有濃度は低くなる。安定塗布のためには塗布液粘度も重要な因子であるが、気相法チタニア濃度が低い場合は塗布液粘度が低くなる傾向にあり、薄膜化と安定塗布とは両立が難しい。塗布液粘度を上げる手段として容易に思い至るのが水溶性ポリマーなどの増粘剤である。もともとポリビニルアルコール等は無機微粒子層のバインダーとして好ましく用いられるため、このポリビニルアルコールの量を増加させることによっても塗布液粘度を上げることができる。しかしこのような水溶性ポリマーはインク吸収時に膨潤してインク吸収を阻害するため、不用意に増加させることはできない。薄層塗布を安定にしインク吸収性を維持するためにも、気相法チタニアの一次粒子径を小さくすることが必要である。すなわち、一次粒子径が小さいため活性な表面積が増加し、水溶性ポリマーとの吸着サイトが増加するため、塗布液の粘度が高くなる。より低濃度で高粘度の塗布液が得られるということになる。
【0032】
最表層を形成する方法として、それより下層のインク受容層を一旦塗布・乾燥の後、改めて最表層を塗布乾燥する方法も考えられる。しかし、この方法は工数が増加してコストアップを招くだけでなく、薄膜による光の干渉現象を招くことが多い。光の干渉現象は、隣接媒体と屈折率が異なり厚さが光の1/2波長の数倍程度の薄膜において一般的に観察される現象であり、薄膜が全体に赤・緑・黄色などの色を呈するものである。この色の種類は膜厚に依存し、均一な膜ほど均一な単色になる。この干渉現象を避けるため、最表層は隣接層と同時重層塗布されることが好ましい。同時重層塗布によれば、2層間の界面には若干の混合が生じ、光の反射面となるべき界面がぼやけることになる。また、最表層の膜厚に微妙なブレが生じ、微視的には単色を呈する表面も全体的に多種の単色光が混ざり、見かけ上白色となる。
【0033】
また、前記酸化チタン粒子は、カチオン化処理されていることが好ましく、インク受容層にはカチオン性の化合物を含有させることが好ましい。カチオン性化合物は、染料プリントの場合に耐水性・耐湿性をこれに付与するために従来から好ましく用いられるものであり、また、顔料プリントの場合においても、耐擦性が付与されるために好ましい。
【0034】
本発明の気相法チタニアを含有する最表層は特に染料・顔料との接触が多いため、最表層中にカチオン性化合物を含有させることが好ましい。
【0035】
カチオン性化合物の例としてカチオン性ポリマーが挙げられ、もう一つの好ましいカチオン性化合物としては、塩基性アルミニウム化合物等が挙げられる。
【0036】
カチオン性化合物を含有させる方法としては、これらを含有する水溶液に気相法チタニアまたは気相法チタニア分散液を添加、分散し分散液を得て、これに水溶性ポリマー等のバインダーを混合して塗布液とし塗布・乾燥する方法が好ましい。
【0037】
カチオン性ポリマーとしては、特開昭59−20696号、同59−33176号、同59−33177号、同59−155088号、同60−11389号、同60−49990号、同60−83882号、同60−109894号、同62−198493号、同63−49478号、同63−115780号、同63−280681号、特開平1−40371号、同6−234268号、同7−125411号、同10−193776号公報等に記載されたポリマー主鎖または側鎖に第1〜3級アミン、第4級アンモニウム塩基、または第4級ホスホニウム塩基などを有するポリマーがあり、製造の容易性から、実質的に水溶性であるものが好ましい。
【0038】
その他、カチオン性ポリマーの例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、エピクロルヒドリン−ジアルキルアミン付加重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・SO2共重合物、ポリビニルイミダゾール、ビニルピロリドン・ビニルイミダゾール共重合物、ポリビニルピリジン、ポリアミジン、キトサン、カチオン化澱粉、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド重合物、(2−メタクロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレート重合物、などが挙げられる。
【0039】
または、化学工業時報平成10年8月15日及び25日に記載されるカチオン性ポリマー、「高分子薬剤入門」(三洋化成工業株式会社発行、p787、1992年)に記載される高分子染料固着剤に挙げられたポリマー、が例として挙げられる。
【0040】
カチオン性ポリマーの平均分子量としては2000〜50万の範囲であることが好ましく、更に好ましくは1万〜10万の範囲である。
【0041】
本発明でいう平均分子量とは数平均分子量のことであり、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーから求めたポリエチレングリコール換算値を言う。
【0042】
これらのカチオン性ポリマーの使用量は前記気相法チタニア粒子に対して1〜10質量%、好ましくは2〜7質量%である。
【0043】
カチオン化処理は、カチオン性ポリマーを均一にチタニア含有層塗布液に添加する方法のみならず、チタニア微粒子とともに複合粒子を形成した形で塗布液に添加してもよい。複合粒子を調製する方法としては、チタニア微粒子にカチオン性ポリマーを混合して吸着被覆させる方法、その被覆粒子を凝集させてより高次の複合粒子を得る方法、さらには混合して得られる粗大粒子を分散機によってより均一な複合粒子にする方法などが挙げられる。
【0044】
カチオン性ポリマーは概ね水溶性基を有するために水溶性を示すが、例えば、共重合成分の組成によって水に溶解しないことがある。製造の容易性から水溶性であることが好ましいが、水に難溶であっても水混和性有機溶媒を用いて溶解し使用することも可能である。
【0045】
ここでいう水混和性有機溶媒とは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどのグリコール類、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類など、水に対して概ね10%以上溶解し得る有機溶媒を言う。この場合、有機溶媒の使用量は水の使用量以下であることが好ましい。
【0046】
また、カチオン性化合物として、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が挙げられる。塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記の一般式1、2又は3で示され、例えば[Al6(OH)153+、[Al8(OH)204+、[Al13(OH)345+、[Al21(OH)603+、等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
【0047】
一般式(1) [Al2(OH)nCl16-nm
一般式(2) [Al(OH)3nAlCl13
一般式(3) Aln(OH)mCl(3n-m) 0<m<3n
これらのものは多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名で、また他のメーカーからも同様の目的を持って上市されており、各種グレードの物が容易に入手できる。本発明ではこれらの市販品をそのままでも使用できるが、pHが不適当に低い物もあり、その場合は適宜pHを調節して用いることも可能である。
【0048】
本発明において、上記水溶性の金属化合物の気相法チタニア微粒子を含有する層中における含有量は、0.1g/m2〜10g/m2、好ましくは0.2g/m2〜5g/m2である。
【0049】
上記したカチオン性化合物は2種以上を併用することができる。例えば、カチオン性ポリマーと水溶性金属化合物を併用してもよい。
【0050】
本発明における好ましい態様としては、前記チタニアを含有する最表層が、別のインク受容層の表面に形成されているものである。
【0051】
以下、前記チタニア含有層以外のインク受容層を構成する各成分について説明する。
【0052】
本発明において、前記チタニアを含有する最表層以外のインク受容層は、やはり、無機微粒子、水溶性バインダーを含有する空隙層であることが好ましい。
【0053】
インク受容層を形成する無機微粒子としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料を挙げることができる。上記無機微粒子は1次粒子のまま用いても、また2次凝集粒子を形成した状態で使用することもできる。
【0054】
なかでも無機粒子としては、アルミナ、シリカ等の微粒子が好ましく、特にシリカ微粒子が好ましい。シリカ微粒子としては、珪酸ソーダを原料として沈降法またはゲル法により合成された湿式シリカまたは気相法シリカであることが好ましい。
【0055】
例えば、湿式シリカとしては沈降法による作製された(株)トクヤマのファインシール等、ゲル法によるシリカとしては日本シリカ工業(株)のNIPGEL等が市販されている。沈降法シリカは概ね10〜60nm、ゲル法シリカは概ね3〜10nmの一次粒子が二次凝集体を形成したシリカ粒子として特徴づけられる。
【0056】
湿式シリカの一次粒子径に関する下限に特に制約はないが、シリカ粒子の製造安定性の観点から3nm以上であり、皮膜の透明性の観点から50nm以下であることが好ましい。一般的には、ゲル法により合成される湿式シリカの方が、沈降法に対して一次粒径が小さい傾向にあり好ましい。
【0057】
気相法シリカとは、四塩化ケイ素と水素を原料にして燃焼法により合成されるものであり、例えば、日本アエロジル株式会社製のアエロジルシリーズが市販されている。
【0058】
本発明においては、シリカ微粒子としては、高い空隙率が得られ、かつカチオン性複合微粒子分散液を製造する場合に粗大凝集体が形成されにくいという観点から、気相法シリカが、特に好ましい。また、気相法シリカは、二次凝集体が湿式シリカに対して比較的弱い相互作用により形成されているため、湿式シリカに対して低エネルギーで分散できるという特徴を有している。
【0059】
気相法シリカ微粒子は、その一次粒子の平均粒径は3〜50nmのものが好ましい。一次粒子の平均粒径が50nm以下であれば、記録用紙の高光沢性を達成することができ、また表面での乱反射による最高濃度の低下を低減できるという点で、鮮明でかつ高濃度の画像を得ることができる。
【0060】
本発明でいうシリカ微粒子の平均粒径は、粒子そのものあるいは形成したインク吸収層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、数100個の任意のシリカ粒子の粒径を求め、その単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒径はその投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。
【0061】
特に好ましい態様として、二次粒子以上の粒子を形成して多孔質インク吸収層を形成する場合、その平均粒径は、20〜200nmであることが、高インク吸収性及び高光沢を達成した記録用紙を得るという観点において好ましい。
【0062】
前記気相法シリカを湿度20〜60%で3日以上保存して気相法シリカの含水率を調整することも好ましい。
【0063】
シリカ微粒子の添加量は、要求されるインク吸収容量、空隙層の空隙率、親水性バインダーの種類に大きく依存するが、一般には記録用紙1m2当たり5〜30g、好ましくは10〜25gである。インク吸収層に用いられるシリカ微粒子と親水性バインダーの比率は、質量比で概ね2:1〜20:1であり、特に3:1〜10:1であることが好ましい。
【0064】
シリカ微粒子の添加量の増加に従いインク吸収容量も増加するが、カールやひび割れといった性能の低下を招く恐れがあり、空隙率によって容量を増加させる方法が好ましい。好ましい空隙率は40〜75%である。
【0065】
空隙率は、選択するシリカ微粒子の種類、親水性バインダーの種類によって、あるいはそれらの混合比によって、またはその他の添加剤の量によって所望の条件に適宜調節することができる。本発明でいう空隙率とは、空隙層の体積における空隙の総体積の比率であり、その層の構成物の総体積と層の厚さから計算で求められる。また、空隙部の総体積は、吸水量測定によって容易に求められる。
【0066】
次いで、前記インク受容層で用いる親水性バインダーについて説明する。
【0067】
親水性バインダーとしては、前記本発明に係わる気相法チタニア含有層と基本的には同じものが使用できる。例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、カゼイン、澱粉、寒天、カラギーナン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、セルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール等が挙げられる。これらの親水性バインダーは、2種以上併用することも可能である。
【0068】
本発明で好ましく用いられる親水性バインダーは、ポリビニルアルコールであり、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール、紫外線架橋型変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0069】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1000以上のものが好ましく用いられ、特に、平均重合度が1500〜5000のものが好ましく、更に、ケン化度が70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0070】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0071】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0072】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0073】
アニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号及び同63−307979号に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0074】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載された疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。
【0075】
紫外線架橋型変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開2004−262236号に記載されているような光反応性側鎖を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0076】
また、ポリビニルアルコールは、上記説明した重合度や変性等の種類違いのものを2種類以上併用してもよい。
【0077】
本発明のインクジェット記録用紙は、光沢性に優れ、高い空隙率を皮膜の脆弱性を劣化することなく実現するためには、ポリビニルアルコールが硬膜剤により硬膜されていることが好ましい。
【0078】
本発明において用いることのできる硬膜剤としては、一般的には、ポリビニルアルコールと反応し得る基を有する化合物、あるいはポリビニルアルコールが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、例えば、エポキシ系硬膜剤(例えば、ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬膜剤(例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬膜剤(例えば、2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(例えば、1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、ホウ酸及びその塩、ホウ砂、アルミ明礬、イソシアネート化合物等が挙げられる。これらの中でも、ホウ酸及びその塩、エポキシ系硬膜剤及びイソシアネート化合物が好ましい。
【0079】
ホウ酸及びその塩としては、ホウ素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことを示し、具体的にはオルトほう酸、二ほう酸、メタほう酸、四ほう酸、五ほう酸、八ほう酸及びそれらの塩が含まれる。
【0080】
硬膜剤の使用量は、ポリビニルアルコールの種類、硬膜剤の種類、シリカ微粒子の種類やポリビニルアルコールに対する比率等により変化するが、通常、ポリビニルアルコール1g当たり5〜500mg、好ましくは10〜300mgである。
【0081】
上記硬膜剤は、本発明に係るインク吸収層形成用の水溶性塗布液を塗布する際、該塗布液中に直接添加してもよく、あるいはインク吸収層形成用の水溶性塗布液(硬膜剤非含有)を塗布、乾燥した後、硬膜剤を含む溶液をオーバーコートするなどして供給することができる。
【0082】
本発明のインクジェット記録用紙において、前記気相法チタニアを含有する最表層以外のインク受容層、例えば湿式シリカまたは気相法シリカを含有するインク受容層においては、水溶性多価金属化合物を含有することが好ましい。
【0083】
水溶性多価金属化合物としては、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、ストロンチウム、バリウム、ニッケル、銅、スカンジウム、ガリウム、インジウム、チタン、ジルコニウム、スズ、鉛などの金属の塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩、クロロ酢酸塩等が挙げられる。中でもアルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ジルコニウムからなる水溶性塩はその金属イオンが無色のため好ましい。更に、水溶性アルミニウム化合物、水溶性ジルコニウム化合物が長期保存時の滲み耐性に優れると言う点で特に好ましい。
【0084】
水溶性アルミニウム化合物の具体例としては、ポリ塩化アルミニウム(塩基性塩化アルミニウム)、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸アンモニウムアルミニウム(アンモニウムミョウバン)、硫酸ナトリウムアルミニウム、硝酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、ポリ硫酸ケイ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性乳酸アルミニウム等を挙げることができる。ここで、水溶性多価金属化合物における水溶性とは、20℃の水に1質量%以上、より好ましくは3質量%以上溶解することを意味する。
【0085】
最も好ましい水溶性アルミニウム化合物は、インク吸収性の観点から塩基度が80%以上の塩基性塩化アルミニウムであり、次の分子式で表すことができる。
【0086】
〔Al2(OH)nCl6-nm
(ただし、0<n<6、m≦10)
塩基度はn/6×100(%)で表される。
【0087】
水溶性ジルコニウム化合物の具体例としては、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、酸塩化ジルコニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニルが好ましい。炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニルは特に好ましい。特に酸塩化ジルコニウム、酢酸ジルコニルが長期保存時の滲み耐性の点から好ましい。
【0088】
また、積層した前記気相法チタニア含有層を含むインク受容層またその他のインク受容層群において、最表部に位置するインク受容層(以下、最表層ともいう)に含まれる水溶性多価金属化合物は、多価金属化合物の酸化物換算での質量として、0.1〜1.0g/m2であることが好ましい。0.1g/m2以下では画像濃度の点で、また1.0g/m2以上ではインク吸収性の点で性能に差が生じる。なお、本発明においては、最表層以外のインク吸収層に水溶性多価金属を含有させることもできる。この場合、積層した2層以上のインク吸収層のうち、最表部に位置するインク吸収層が含有する水溶性多価金属化合物を酸化物換算した時の質量をAとし、該最表部に位置するインク吸収層を除く全てのインク吸収層が含有する総水溶性多価金属化合物を酸化物換算した時の質量をBとした時、その質量比〔A/(A+B)〕が0.50以上であることが好ましく、より好ましくは0.60以上である。
【0089】
本発明のインクジェット記録用紙においては、本発明に係る前記気相法チタニアを含有する最表層の乾燥膜厚が全インク吸収層の総乾燥膜厚の0.1〜30%であることが好ましく、更に好ましくは2〜10%である。すなわち、2層以上のインク吸収層を積層し、インク吸収層の最表層中に上記水溶性多価金属化合物を高濃度に含有させることが好ましい。
【0090】
本発明に係るインク受容層には、前記気相法チタニアを含有する層と同様に界面活性剤を含有することが好ましい。インク受容層で用いることのできる界面活性剤としては、カチオン系、ベタイン系及びノニオン系の炭化水素系、フッ素系、シリコン系界面活性剤等のいずれも使用可能である。その中でも、塗布故障耐性などの塗膜品質と多層同時塗布適性の観点から、特開2003−312134号公報に記載のカチオン系、ベタイン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤の使用量は0.0001〜1.0g/m2が好ましく、より好ましくは0.001〜0.5g/m2である。
【0091】
本発明に係るインク受容層の具体的な構成としては、前記気相法チタニアを含有する層と同様に例えば、特開平11−321079号、特開2000−158807号公報などに記載の方法で、シリカ微粒子と親水性バインダーに加えカチオン性ポリマーを含有する多孔質のインク吸収層を用いることができる。
【0092】
カチオン性ポリマーとしては、前記気相法チタニアを含有する層において述べたものと同様である。
【0093】
カチオン性ポリマーをインク受容層塗布液にあらかじめ添加する場合には、前記チタニア含有層同様、均一に塗布液に添加するのみならず、無機微粒子とともに複合粒子を形成させた形で添加してもよい。無機微粒子とカチオン性ポリマーによって複合粒子を調製する方法としては、無機微粒子にカチオン性ポリマーを混合して吸着被覆させる方法、その被覆粒子を凝集させてより高次の複合粒子を得る方法、さらには混合して得られる粗大粒子を分散機によってより均一な複合粒子にする方法などが挙げられる。
【0094】
カチオン性ポリマーは概ね水溶性基を有するために水溶性を示すが、例えば、共重合成分の組成によって水に溶解しないことがある。製造の容易性から水溶性であることが好ましいが、水に難溶であっても水混和性有機溶媒を用いて溶解し使用することも可能である。ここで水混和性有機溶媒とは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどのグリコール類、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類など、水に対して概ね10%以上溶解し得る有機溶媒を言う。この場合、有機溶媒の使用量は水の使用量以下であることが好ましい。
【0095】
カチオン性ポリマーは、インクジェット記録用紙1m2当たり、通常0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gの範囲で用いられる。
【0096】
本発明のインクジェト記録用紙のインク受容層および必要に応じて設けられるその他の層には、前記した以外に各種の添加剤を添加することができるが、特に、紫外線吸剤、酸化防止剤、ニジミ防止剤等の画像保存性向上剤を含有することが好ましい。
【0097】
これら紫外線吸剤、酸化防止剤、ニジミ防止剤としては、アルキル化フェノール化合物(ヒンダードフェノール化合物を含む)、アルキルチオメチルフェノール化合物、ヒドロキノン化合物、アルキル化ヒドロキノン化合物、トコフェロール化合物、チオジフェニルエーテル化合物、2個以上のチオエーテル結合を有する化合物、ビスフェノール化合物、O−,N−,S−ベンジル化合物、ヒドロキシベンジル化合物、トリアジン化合物、ホスホネート化合物、アシルアミノフェノール化合物、エステル化合物、アミド化合物、アスコルビン酸、アミン系抗酸化剤、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール化合物、2−ヒドロキシベンゾフェノン化合物、アクリレート、水溶性又は疎水性の金属塩、有機金属化合物、金属錯体、ヒンダードアミン化合物(所謂TEMPO化合物を含む。)、2−(2−ヒドロキシフェニル)1,3,5,−トリアジン化合物、金属不活性化剤、ホスフィット化合物、ホスホナイト化合物、ヒドロキシアミン化合物、ニトロン化合物、過酸化物スカベンジャー、ポリアミド安定剤、ポリエーテル化合物、塩基性補助安定剤、核剤、ベンゾフラノン化合物、インドリノン化合物、ホスフィン化合物、ポリアミン化合物、チオ尿素化合物、尿素化合物、ヒドラジト化合物、アミジン化合物、糖化合物、ヒドロキシ安息香酸化合物、ジヒドロキシ安息香酸化合物、トリヒドロキシ安息香酸化合物等が挙げられる。
【0098】
これらの中でも、アルキル化フェノール化合物、2個以上のチオエーテル結合を有する化合物、ビスフェノール化合物、アスコルビン酸、アミン系抗酸化剤、水溶性又は疎水性の金属塩、有機金属化合物、金属錯体、ヒンダードアミン化合物、ヒドロキシアミン化合物、ポリアミン化合物、チオ尿素化合物、尿素化合物、ヒドラジド化合物、ヒドロキシ安息香酸化合物、ジヒドロキシ安息香酸化合物、トリヒドロキシ安息香酸化合物等が好ましい。
【0099】
また、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、またはこれらの共重合体、尿素樹脂、またはメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等の油滴微粒子、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0100】
本発明の記録用紙に用いられる支持体について説明する。本発明で使用することのできる支持体としては特に制限はないが、紙のような吸水性支持体を用いた場合には、プリント後および記録用紙に水がかかった場合、支持体の平滑性が低下してコックリングを生じやすい。また、支持体中に染料やジルコニウム化合物またはアルミニウム化合物が拡散して耐水性、滲み、画像濃度の低下を起こす場合が有るという問題を抱えている。従って、支持体として非吸水性支持体を用いる方が、本発明の効果を顕著に奏するという点において好ましい。
【0101】
本発明で用いる支持体は従来インクジェット記録用紙に公知のものを適宜使用できる。
【0102】
本発明で用いることのできる吸水性支持体としては、例えば一般の紙、布、木材等からなるシートや板等を挙げることができるが、特に紙は基材自身の吸水性に優れかつコスト的にも優れるために最も好ましい。紙支持体としては、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、CGP、RMP、TMP、CTMP、CMP、PGW等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等の木材パルプを主原料としたものが使用可能である。また、必要に応じて合成パルプ、合成繊維、無機繊維等の各種繊維状物質も原料として適宜使用することができる。
【0103】
上記紙支持体中には必要に応じて、サイズ剤、顔料、紙力増強剤、定着剤等、蛍光増白剤、湿潤紙力剤、カチオン化剤等の従来公知の各種添加剤を添加することができる。
【0104】
紙支持体は前記の木材パルプなどの繊維状物質と各種添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種抄紙機で製造することができる。また、必要に応じて抄紙段階又は抄紙機にスターチ、ポリビニルアルコール等でサイズプレス処理したり、各種コート処理したり、カレンダー処理したりすることもできる。
【0105】
本発明で好ましく用いることのできる非吸水性支持体には、プラスチック樹脂フィルム支持体、あるいは紙の両面をプラスチック樹脂フィルムで被覆した支持体が挙げられる。
【0106】
プラスチック樹脂フィルム支持体としては、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、セルローストリアセテートフィルム、ポリスチレンフィルムあるいはこれらの積層したフィルム支持体等が挙げられる。これらのプラスチック樹脂フィルムは透明、または半透明なものも使用できる。
【0107】
本発明で特に好ましい支持体は、紙の両面をプラスチック樹脂で被覆した支持体であり、最も好ましいのは紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体である。
【0108】
以下、最も好ましいポリオレフィン樹脂の代表であるポリエチレンでラミネートした非吸水性の紙支持体について説明する。
【0109】
紙支持体に用いられる原紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプにポリプロピレンなどの合成パルプあるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を加えて抄紙される。木材パルプとしては、例えば、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSPまたはLDPの比率は10質量%以上、70質量%以下であることが好ましい。
【0110】
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0111】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0112】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlであることが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と、42メッシュ残分の質量%との和が30〜70質量%が好ましい。なお、4メッシュ残分の質量%は、20質量%以下であることが好ましい。
【0113】
原紙の坪量は50〜250gが好ましく、特に70〜200gが好ましい。原紙の厚さは50〜210μmが好ましい。原紙は、抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理を施して、高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/cm3(JIS−P−8118に規定の方法に準ずる)が一般的である。更に、原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。原紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良く、表面サイズ剤としては、前述の原紙中に添加できるサイズ剤と同様のものを使用することができる。原紙のpHは、JIS−P−8113で規定された熱水抽出法ににより測定した場合、5〜9であることが好ましい。
【0114】
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0115】
また、インク吸収層を塗布する面側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広く行われているようにルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量は、ポリエチレンに対して1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%である。
【0116】
ポリオレフィン層中には白地の調整を行うための耐熱性の高い顔料や蛍光増白剤を添加することができる。着色顔料としては、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、マンガンブルー、セルリアン、タングステンブルー、モリブデンブルー、アンスラキノンブルー等が挙げられる。蛍光増白剤としては、ジアルキルアミノクマリン、ビスジメチルアミノスチルベン、ビスメチルアミノスチルベン、4−アルコキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸−N−アルキルイミド、ビスベンズオキサゾリルエチレン、ジアルキルスチルベン等が挙げられる。
【0117】
紙の表裏のポリオレフィンの使用量は、インク吸収層の膜厚やバック層を設けた後で低湿及び高湿化でのカールを最適化するように選択されるが、一般にはポリエチレン層の厚さはインク吸収層側で15〜50μm、バック層側で10〜40μmの範囲である。表裏のポリエチレンの比率はインク吸収層の種類や厚さ、中紙の厚み等により変化するカールを調整する様に設定されるのが好ましく、通常は表/裏のポリエチレンの比率は厚みで概ね3/1〜1/3である。
【0118】
ポリオレフィン樹脂層の面質としては、種々のものを用いることができ、具体的には鏡面光沢性を有する支持体や、例えば、特開2001−63204号に記載されているような微粗面加工されて適度の光沢を有する支持体などの光沢紙用のポリオレフィン樹脂被覆紙、例えば、特開2000−296667号、同2000−296669号、同2001−347748号、および同2001−63205号等に記載された絹目やマット調などの面質を与えるように片付け処理された面質も本発明に使用することができる。
【0119】
基紙の含水率は、カールの安定化の観点で、5〜8質量%であることが好ましい。含水量が5質量%未満の場合には、高湿化で保管した際の波打ち程度が大きく成りやすく、8質量%を越えると逆に低湿条件下に保存された際にカールが増大しやすい。
【0120】
更に上記ポリオレフィンで被覆した紙支持体は、以下の特性を有していることが好ましい。
【0121】
1)引っ張り強さ:JIS−P−8113で規定される強度で、縦方向が20〜300N、横方向が10〜200Nであることが好ましい
2)引き裂き強度:JIS−P−8116による規定方法で、縦方向が0.1〜2N、横方向が0.2〜2Nが好ましい
3)圧縮弾性率:≧9.8kN/cm2
4)表面ベック平滑度:JIS−P−8119に規定される条件で、500秒以上が光沢面としては好ましいが、いわゆる型付け品ではこれ以下であっても良い
5)裏面ベック平滑度:JIS−P−8119に規定される条件で、100〜800秒が好ましい
6)不透明度:直線光入射/拡散光透過条件の測定条件で、可視域の光線での透過率が20%以下、特に15%以下が好ましい
7)白さ:JIS−P−8123に規定されるハンター白色度で、90%以上が好ましい。また、JIS−Z−8722(非蛍光)、JIS−Z−8717(蛍光剤含有)により測定し、JIS−Z−8730に規定された色の表示方法で表示したときの、L*=90〜98、a*=−5〜+5、b*=−10〜+5が好ましい。
【0122】
上記支持体のインク吸収層面側には、インク吸収層との接着性を改良する目的で、下引き層を設けることができる。下引き層のバインダーとしては、ゼラチンやポリビニルアルコール等の親水性ポリマーやTgが−30〜60℃のラテックスポリマーなどが好ましい。これらバインダーは、記録媒体1m2当たり0.001〜2gの範囲で用いられる。下引き層中には、帯電防止の目的で、従来公知のカチオン性ポリマーなどの帯電防止剤を少量含有させることができる。
【0123】
上記支持体のインク吸収層面側とは反対側の面には、滑り性や帯電特性を改善する目的でバック層を設けることもできる。バック層のバインダーとしては、ゼラチンやポリビニルアルコール等の親水性ポリマーやTgが−30〜60℃のラテックスポリマーなどが好ましく、またカチオン性ポリマーなどの帯電防止剤や各種の界面活性剤、更には平均粒径が0.5〜20μm程度のマット剤を添加することもできる。バック層の厚みは、概ね0.1〜1μmであるが、バック層がカール防止のために設けられる場合には、概ね1〜20μmの範囲である。また、バック層は2層以上から構成されていても良い。
【0124】
インクジェット記録用紙の製造方法としては、本発明に係わる前記気相法によるチタニア粒子を含有する最表層、および例えばシリカ等を含有するインク受容層等、各構成層を、各々単独にあるいは同時に、公知の塗布方式から適宜選択して、支持体上に塗布、乾燥して製造することができる。塗布方式としては、例えば、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等が好ましく用いられる。
【0125】
2層以上の構成層を同時重層塗布を行う際の各塗布液の粘度としては、スライドビード塗布方式を用いる場合には、5〜100mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜50mPa・sの範囲である。また、カーテン塗布方式を用いる場合には、5〜1200mPa・sの範囲が好ましく、さらに好ましくは25〜500mPa・sの範囲である。
【0126】
また、塗布液の15℃における粘度としては、100mPa・s以上が好ましく、100〜30,000mPa・sがより好ましく、さらに好ましくは3,000〜30,000mPa・sであり、最も好ましいのは10,000〜30,000mPa・sである。
【0127】
本発明に係わる前記気相法によるチタニア粒子を含有する最表層と、例えばシリカ等を含有し、下層となる空隙構造を有するインク受容層を同時重層するとコストは勿論のこと、薄膜間で生じる光の干渉が無いため美観的に優れる。
【0128】
そのためにも、前記チタニア粒子の粒径は、大きいと表面積が小さくなるため、塗布液が高粘度にならず、スライドホッパー等を用いた同時重層という観点からみても適さないため、前記の様に一次粒径が20nm以下であることが必要である。
【0129】
塗布および乾燥方法としては、塗布液を30℃以上に加温して、同時重層塗布を行った後、形成した塗膜の温度を1〜15℃に一旦冷却し、10℃以上で乾燥することが好ましい。塗布液調製時、塗布時及び乾燥時おいて、表層に含まれる熱可塑性樹脂が製膜しないように、該熱可塑性樹脂のTg以下の温度で塗布液の調製、塗布、乾燥することが好ましい。より好ましくは、乾燥条件として、湿球温度5〜50℃、膜面温度10〜50℃の範囲の条件で行うことである。また、塗布直後の冷却方式としては、形成された塗膜均一性の観点から、水平セット方式で行うことが好ましい。
【0130】
また、その製造過程で、塗布、乾燥の後に35℃以上、70℃以下の条件で24時間以上、60日以下保存する工程を有することが好ましい。
【0131】
加温条件は、35℃以上、70℃以下の条件で24時間以上、60日以下保存する条件であれば特に制限はないが、好ましい例としては、例えば、36℃で3日〜4週間、40℃で2日〜2週間、あるいは55℃で1〜7日間である。この熱処理を施すことにより、水溶性バインダーの硬化反応の促進、あるいは水溶性バインダーの結晶化を促進することができ、その結果、好ましいインク吸収性を達成することができる。
【0132】
本発明のインクジェット記録用紙を用いた画像記録のには、水性インクを用いた記録方法が好ましく用いられる。
【0133】
水性インクとは、着色剤、溶媒及びその他の添加剤を有する記録液体である。着色剤としては、インクジェットで公知の直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料あるいは食品用色素等の水溶性染料あるいは水分散性顔料が使用できる。
【0134】
水性インクの溶媒としては、水及び水溶性の各種有機溶剤が使用でき、ジエチレングリコール、トリエタノールアミンやグリセリン等の多価アルコール類、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの多価アルコールの低級アルキルエーテル等が好ましい。
【0135】
その他の水性インクの添加剤としては、例えば、pH調節剤、金属封鎖剤、防カビ剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤及び防錆剤、等が挙げられる。
【0136】
水性インクは、記録用紙に対する濡れ性を良好にするために、20℃において、通常、25〜60mN/m、好ましくは30〜50N/mの範囲の表面張力を有することが好ましい。上記水性インクのpHは、好ましくは5〜10であり、特に好ましくは6〜9である。
【実施例】
【0137】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
〈気相法酸化チタン(チタニア)の作成〉
気相法酸化チタンを以下に従って調製した。
四塩化チタンをガス状で酸水素ガスの存在下、1200℃の温度で原料ガス中のチタン濃度が二酸化チタン(チタニア)換算で60g/m3の条件下で熱加水分解した。これにより平均粒子径18nm、BET比表面積70cm2/gの酸化チタン微粉末が得られた。
【0138】
また、条件を1500℃、チタン濃度を10g/m3として、同様に、平均粒子径9nm、BET比表面積150cm2/gの酸化チタン微粉末を得た。
【0139】
以上の2種の気相法チタニアを表1中で気相法チタニア(粒径18nm)、気相法チタニア(9nm)としてそれぞれ用いた。
【0140】
なお比較品として、日本アエロジル製 気相法チタニアP25(平均粒子径21nm、BET比表面積50cm2/g)を用いた。
【0141】
《記録用紙の作製》
〔記録用紙1の作製〕
(シリカ分散液D−1の調製)
予め均一に分散されている一次粒子の平均粒径が約0.007μmの気相法シリカ(日本アエロジル社製、アエロジル300)を22%と、アニオン性蛍光増白剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製、UVITEXNFW LIQUID)を0.6L含むシリカ分散液B−1(pH=2.6、エタノール0.5%含有)の400Lを、カチオン性ポリマーP−1を12%、n−プロパノールを10%およびエタノールを2%含有する水溶液C−1(pH=2.5、サンノブコ社製の消泡剤SN381を2g含有)の110Lに、室温で3000rpmで攪拌しながら添加した。次いで、ホウ酸とほう砂の1:1質量比の混合水溶液A−1(各々3質量%の濃度)の54Lを攪拌しながら徐々に添加した。
【0142】
次いで、三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで、3kN/cm2の圧力で分散し、全量を純水で630Lに仕上げて、ほぼ透明なシリカ分散液D−1を得た。
【0143】
【化1】

【0144】
(シリカ分散液D−2の調製)
上記シリカ分散液D−1の調製において、アニオン性蛍光増白剤を除き、カチオン性ポリマーP−1を除いた以外は同様にして、シリカ分散液D−2を調製した。
【0145】
(シリカ分散液D−3の調製)
上記シリカ分散液D−2の調製において、塩基性塩化アルミニウム水溶液(多木化学製:タキバイン#1500、Al23として23.75%含有、塩基度83.5%)を気相法シリカ/Al23=5.6となるように混合、含有させた以外は同様にして、シリカ分散液D−3を製した。
【0146】
上記調製したシリカ分散液D−1、D−3について、特開平11−321079号公報に記載の方法に従ってシリカ粒子の分散状態を観察した結果、極めて安定なカチオン変換された複合粒子になっていることを確認することができた。
【0147】
また、上記調製したシリカ分散液D−1、D−2、D−3は、30μmの濾過精度を有するアドバンテック東洋社製のTCP−30タイプのフィルターを用いて濾過を行った。
【0148】
(インク吸収層塗布液の調製)
上記調製した各シリカ分散液を使用して、以下に記載の各添加剤を順次混合して、多孔質層用の各インク吸収層塗布液を調製した。なお、各添加量は塗布液1L当りの量で表示した。
【0149】
〈第1層用インク吸収層塗布液:下層〉
シリカ分散液D−1 650ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3800 ケン化度88%)の8.0%水溶液
250ml
界面活性剤(ネオス社製;フタージェント400S)の4%水溶液 2.0ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
【0150】
〈第2層用インク吸収層塗布液:最表層〉
シリカ分散液D−2 630ml
ポリビニルアルコール(平均重合度:3800 ケン化度88%)の8.0%水溶液
250ml
界面活性剤(花王製;コータミン24P)の6%水溶液 3.0ml
界面活性剤(ネオス社製;フタージェント400S)の4%水溶液 1.0ml
純水で全量を1000mlに仕上げた
以上に様にして調製した各インク吸収層塗布液を、20μmの濾過精度を持つアドバンテック東洋社製のTCPD−30フィルターで濾過した後、TCPD−10フィルターで濾過した。
【0151】
〔記録用紙の作製〕
次に、上記調製した各インク吸収層塗布液にのうち、第2層用インク吸収層塗布液を用いてNo.1の記録用紙試料をスライドホッパー塗布により表1に記載の乾燥膜厚となるように塗布した。
【0152】
試料No.2〜7については、最表層第2層用インク吸収層塗布液の前記気相法シリカ(日本アエロジル社製、アエロジル300)にかえて、表1に記載の同量の無機粒子を用い調製したインク吸収層塗布液を用い、やはり表1に記載の乾燥膜厚となるよう各々スライドホッパーにて塗布を行った。
【0153】
また、No.8〜18は第1層、第2層からなる重層記録用紙試料であり、第2層用インク吸収層塗布液中のシリカ分散液をD−3にかえた処方で調製した塗布液を用い、塗布方法に1パスとあるものについてはスライドホッパーによる下層(第1層)、表層(第2層)の同時重層塗布を、また2パスとあるものについては1パス目(下層)をスライドホッパーで、2パス目(表層)をワイヤーバー塗布にて塗布し調製した。
【0154】
第1層は第1層用インク吸収層塗布液(無機粒子はシリカ)を用い、第2層(最上層)のみを変化させた。即ち、シリカ分散液をD−3にかえた第2層用インク吸収層塗布液中の気相法シリカ(日本アエロジル社製、アエロジル300)にかえて表1に記載の無機粒子をそれぞれ用い調製したインク吸収層塗布液を用いた。
【0155】
尚、インク吸収層塗布液作製において、無機粒子としてチタニアを用いる場合、チタニアの添加量は、シリカの添加量の1.7倍として混合した。
【0156】
また、記録用紙試料No.16については、第2層用インク吸収層塗布液中のPAC(多木化学製:タキバイン#1500)の代わりに、以下のカチオン性ポリマーP−2を用い気相法チタニアに対し、5質量%添加した。
【0157】
【化2】

【0158】
各塗布層の乾燥膜厚について、表1中に示した。
【0159】
また、各塗布液の粘度(mPa・s)についても表1中に示した。重層構成の試料No.11,12についてはそれぞれの第1層用インク吸収層塗布液を表中の粘度となるまで希釈して用い、表層が薄層となる構成とした。
【0160】
なお、上記RC紙は幅が約1.5m、長さが約4000mのロール上に巻かれた下記の支持体を用いた。
【0161】
RC紙は、含水率が8%で、坪量が170gの写真用原紙表面を、アナターゼ型酸化チタンを6%含有するポリエチレンを厚さ35μmで押し出し溶融塗布し、裏面には厚さ40μmのポリエチレンを厚さ35μmで押し出し溶融塗布した。表面側はコロナ放電した後、ポリビニルアルコール(クラレ社製 PVA235)をRC紙1m2当り0.05gになるように下引き層を塗布し、裏面側にはコロナ放電した後、Tgが約80℃のスチレン−アクリル酸エステル系ラテックスバインダーを約0.4g、帯電防止剤(カチオン性ポリマー)を0.1gおよび約2μmのシリカ0.1gをマット剤として含有するバック層を塗布した。
【0162】
また、試料17,18については片付け処理による絹目面質を有するRC紙を用いた。
【0163】
インク吸収層塗布液を塗布した後の乾燥は、5℃に保った冷却ゾーンを15秒間通過させて膜面の温度を13℃にまで低下させた後、複数設けた乾燥ゾーンの温度を適宜設定して乾燥を行った後、ロール状に巻き取って各記録用紙試料を得た。
【0164】
上記で得られた各記録用紙試料No.1〜18について、以下の方法により評価を行った。
【0165】
(安定塗布)
先ず、記録用紙試料No.8〜18の重層塗布の際、スライド面の塗れ広がりが悪いか、また、乾燥風で膜面が乱れる等の安定塗布性について評価した。
○:スライド面の塗れ広がりがよく膜面の乱れもなく安定に塗布可能であった。
△:やや塗れ広がりにムラを生じたが、何とか塗布可能であった。
×:塗布は不安定でありムラが多い、比較的均一な評価可能な部分を用いて以下の評価は行った。
【0166】
(干渉現象)
作製した重層試料No.8〜18について、太陽光のもとで目視により光干渉を観察した。
○:30cmの距離で観察しても全く気づかない。
△:30cmの距離で観察すると赤〜緑の弱い縞模様が見える。
×:30cmの距離で観察すると全面が赤、オレンジ色、または緑に光る。
【0167】
(プリント前光沢度)
作製した記録紙の記録面側表面の60°光沢度を、日本電位工業変角光沢度計(VGS−1001DP)を用い、JIS−Z−8741に従って測定した。
【0168】
(インク吸収速度)
インク吸収速度の目安として、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM3000Cで画像をプリントして、プリント画像の状態を目視で観察して画像のマダラを下記のように評価した。
○:マダラムラが全く認められない
△:一部でマダラムラが認められる
×:マダラムラが認められる
実用上問題がないのは△、○である。
【0169】
(染料プリント発色性)
セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−900Cを用いて画像をプリントして黒ベタ部の反射濃度の評価を行った。反射濃度は、分光測色計濃度計(日本平版機材株式会社:X−Rite938)で測定した。
【0170】
(顔料プリント光沢均一性)
セイコーエプソン社製インクジェットプリンタPX−6000でのシアンベタ部(濃度d=0.6±0.05)の光沢度とプリント前光沢度との差をとった。前記と同じく60°光沢度は日本電位工業変角光沢度計(VGS−1001DP)を用い、JIS−Z−8741に従って測定した。
【0171】
以下表1に作製した記録用紙各試料構成および評価結果について示した。
【0172】
【表1】

【0173】
以上のように、本発明に係わるインクジェット記録用紙は表面光沢がよく、また染料インクでプリントしたときにも発色性がよく、またインクを速やかに吸収するためにムラがない。また、顔料インクでプリントした場合、光沢の均一感に優れた記録用紙であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク受容層最表面に気相法により合成された1次粒径が20nm以下である酸化チタン粒子を含有することを特徴とするインクジェット記録用紙。
【請求項2】
支持体上に2以上のインク受容層を有し、前記インク受容層最表面を構成する層が、気相法により合成された1次粒径が20nm以下である酸化チタン粒子を含有する厚さ0.1〜5μmの層であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用紙。
【請求項3】
前記気相法により合成された1次粒径が20nm以下である酸化チタン粒子を含有する厚さ0.1〜5μmの層が、隣接するインク受容層と同時重層塗布され製造されたことを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録用紙。
【請求項4】
前記酸化チタン粒子は、カチオン化処理されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【請求項5】
前記カチオン化処理が塩基性ポリ塩化アルミニウムによることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録用紙。

【公開番号】特開2006−198973(P2006−198973A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−15260(P2005−15260)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】