説明

インクジェット記録用紙

【課題】 特に、顔料インクで印画した場合の画像濃度や、にじみの抑制に優れるなど、従来のインクジェット記録用紙に基本的に要求される画像品質を維持しながら、染料インクと顔料インクのいずれでも良好に印画できるインクジェット記録用紙を提供する。
【解決手段】 基紙の少なくとも一方の面にインク受理層を設けてなり、該基紙のサイズ度が50〜300秒の範囲であり、該インク受理層が(A)着色顔料又は着色染料、及び(B)シリカを含有し、該シリカの細孔容積が1.6〜2.2ml/gの範囲であり、且つコールターカウンター法による該シリカの平均粒子径が7〜15μmの範囲であるインクジェット記録用紙である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット記録用紙に関し、さらに詳しくは、優れた画像品質を維持しながら、染料インクと顔料インクのいずれでも良好に印画できるインクジェット記録用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印画方式の一つとして、インクジェット記録方式は、高画質のフルカラー画像が容易に得られること、高速化が容易なこと、ランニングコストが低いこと等の利点により、コンピュータ用プリンター、カラー複写機等、多岐にわたる分野で急速に普及しつつある。そのため、インクジェット記録用紙に対して、画像品質に関して、画像濃度、色調が適切であることと、バンディング、ビーディング、にじみ、マイグレーション、黒色の茶変等の問題が発生しないことなどが要求される。
特に近年は、写真調の精細な画像の印画や屋外でのポスターとしての使用等、用途の広がりに応じ、より高度な水準の品質が要求される。
【0003】
画像品質を向上させるために、基紙の上に、インク受理層を設ける方法が、多く用いられている。インク受理層は、通常、シリカ等の填料、樹脂等の結着剤、色材を定着させる添加剤等からなり、インク吸収性に優れ、乾燥が早いこと、適度な強度を有することなどが要求される。
画像を鮮明にする目的で、シート状支持体に白色顔料及び有機着色顔料と蛍光増白剤を含有するインク受理層に有機酸塩を含有させたインクジェット記録用紙が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このインクジェット記録用紙は、顔料インクによる画像の反射濃度が不十分であり、また、顔料インクによる画像のにじみの抑制も不十分である。
【0004】
インクジェット記録用紙に用いるインクは、その用途に応じて、染料インクと顔料インクが使い分けられているが、染料インクと顔料インクは性質が異なるので、片方のインクに対して上記の様々な基本的な要求品質を満足させる様にインクジェット記録用紙を設計すると、他方のインクに対しては満足させられない要求品質が生じやすい。特に、顔料インクで印画した場合の画像濃度(反射濃度)が不十分で、にじみの抑制も不十分な場合が多い。また、それらを解決しようとすると、染料インクで印画した場合の画像濃度(反射濃度)や黒色の茶変防止において問題が生じやすい。
【0005】
以上のように、従来のインクジェット記録用紙では、染料インクまたは顔料インクのいずれかで印画する場合には良好な画像が得られても、その両方に対応しようとすると、何らかの問題が発生しやすい。そのためインクジェット記録用紙も、それぞれのインクに適応するものを使い分けることが行なわれている。従って、インクジェット記録用紙は、染料インク用のものと顔料インク用のものを別個に管理する必要があり、一つのインクジェット記録用紙で何れのインクにも対応できれば、在庫負担の軽減や、作業性の向上を図ることができるなどの利点がある。
それ故、インクジェット記録用紙は、各種インクに対して要求品質を満足させる必要があり、高度な技術が要求される。
【特許文献1】特開2002−283706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような状況下で、特に、顔料インクで印画した場合の画像濃度(反射濃度)や、にじみの抑制に優れるなど、従来のインクジェット記録用紙に基本的に要求される画像品質を維持しながら、染料インクと顔料インクのいずれでも良好に印画できるインクジェット記録用紙を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定のサイズ度を有する基紙を用い、インク受理層に特定のシリカと着色材料等を含有させることにより、優れた画像品質を維持しながら、染料インクと顔料インクのいずれでも良好に印画できるインクジェット記録用紙が得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のインクジェット記録用紙を提供するものである。
(1) 基紙の少なくとも一方の面にインク受理層を設けてなり、該基紙のサイズ度が50〜300秒の範囲であり、該インク受理層が(A)着色顔料又は着色染料、及び(B)シリカを含有し、該シリカの細孔容積が1.6〜2.2ml/gの範囲であり、且つ該シリカのコールターカウンター法による平均粒子径が7〜15μmの範囲であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
(2) インク受理層がカチオン性物質として4級アンモニウム塩を含有する(1)のインクジェット記録用紙。
(3) インク受理層が結着剤としてシラノール変性ポリビニルアルコールを含有する(1)又は(2)のインクジェット記録用紙。
(4) インク受理層中の填料(F)と結着剤(R)との質量比(F/R)が、1.8〜4.0の範囲である(1)〜(3)のいずれかのインクジェット記録用紙。
(5) インク受理層におけるシリカ含有量が、全填料中の固形分比率で90質量%以上である(1)〜(4)のいずれかのインクジェット記録用紙。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、上記のような特定のサイズ度を有する基紙を用い、インク受理層に特定のシリカと着色材料等を含有させることにより、次のような効果を有する。
(1)顔料インクで印画した際の画像の反射濃度に優れる。
(2)顔料インクで印画した際の画像のにじみの防止性能にも優れる。
(3)インクジェット記録用紙に要求される多数の画像上の基本的な要求品質(画像濃度や色調が適切であることや、バンディング、ビーディング、にじみ、マイグレーション、黒色の茶変等の問題が発生しないことなど)を、染料インク、顔料インクのいずれに対しても充分満足させる。
(4)染料インクで印画した際の画像の反射濃度にも優れ、染料インクで黒色を印画した際に、黒色が変色して茶色になることを防止する性能も有する。
(5)インク受理層に蛍光増白剤を含有させてもその性能が損なわれないため、良好な白色度にすることができる。
従って、本発明のインクジェット記録用紙は、優れた画像品質を維持しながら、染料インクと顔料インクのいずれでも良好に印画できるので、本発明のインクジェット記録用紙を用いることにより、一つのインクジェット記録用紙で何れのインクにも対応でき、在庫負担の軽減や、作業性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のインクジェット記録用紙は、基紙の少なくとも一方の面にインク受理層を設けてなるものである。この基紙に用いられる紙については特に制限されず、上質紙、中質紙、パルプ紙、ファンシーペーパー、クラフト紙などが挙げられる。
紙の原料としては、木材パルプ、非木材パルプ及びその他のパルプを用いる。木材パルプとしては、NBKP(針葉樹晒しパルプ)、LBKP(広葉樹晒しパルプ)、NBSP(針葉樹晒しサルファイドパルプ)、GP(砕木パルプ)、TMP(熱処理機械パルプ)、古紙パルプ等が挙げられ、非木材パルプとしては、ケナフ、竹、リンター、麻、バガス、ワラ、アシ、エスパルト、バナナ等が挙げられ、その他のパルプとしては合成パルプ等が挙げられる。これらのパルプは、必要に応じて単独であるいは二種以上を併用して用いられる。さらに、これらに合成繊維を混合したパルプを用いてもよい。
【0011】
基紙には、さらに、目的に応じて、添加剤を含有させてもよい。例えば、木材パルプを主体とする紙である場合、内添サイズ剤としては、ロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸、アルキルケテンダイマー、石油樹脂系サイズ剤などを用いることができる。
また、その他の添加剤として、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、保湿剤、改質剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。更に、カオリン、チタン、炭酸カルシウム、タルクなどの填料を添加してもよい。
基紙を製造する際の抄紙機としては、長網抄紙機、丸網抄紙機、ツインワイヤ抄紙機等の各種の公知のものを用いることができる。
【0012】
本発明の効果をより向上させるために、基紙として、サイズ度が50〜300秒の範囲である紙を用いることが必要であり、サイズ度が100〜200秒の範囲である紙が好ましい。なお、サイズ度は、JIS P8122(2004)ステキヒト法により測定したものである。
本発明に用いられる基紙の坪量については特に制限はないが、通常、70〜250g/m2の範囲のものを用いることが好ましい。基紙の坪量が上記範囲であれば、強度と印刷時の通紙性が両立し、インクジェット記録用紙の取り扱いが容易である。
【0013】
本発明のインクジェット記録用紙におけるインク受理層は、填料、結着剤及び他の添加剤からなる層である。
インク受理層の填料(フィラー)としてシリカを含有し、そのシリカの細孔容積が1.6〜2.2ml/gの範囲であり、且つコールターカウンター法による平均粒子径が7〜15μmの範囲であることが必要である。この細孔容積は水銀圧入法により測定したものであり、平均粒子径はコールターカウンター法による2次粒子の平均粒子径である。
【0014】
インク受理層の填料として用いられる上記のようなシリカは湿式法によるゲルタイプのものが好ましい。填料は、シリカのみを用いればよいが、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、他の填料を混合して用いても良い。併用できる填料としては、有機、無機の制限はなく、炭酸カルシウム、タルク、クレー、けいそう土、ポリスチレン、ポリメタクリレート、酸化チタン、焼成カオリン、含水マグネシウムシリケートなどが挙げられる。これらは単独、又は二種以上を混合して使用できる。但し、全填料中の固形分比率として、シリカが90質量%以上であることが好ましい。
【0015】
インク受理層に含有するシリカの細孔容積は1.6〜2.2ml/gであり、好ましくは1.7〜2.0ml/gである。また、シリカの平均粒子径は7〜15μmであり、好ましくは9〜13μmである。細孔容積および平均粒子径が上記範囲のシリカを用いることにより、本発明の効果を発揮することができる。
また、該シリカは粒度分布d10/d90が0.13〜1.00であることが好ましく、0.20〜1.00であることがより好ましく、0.30〜1.00であることが更に好ましい。この際のd10は、粒子径が小さい方から足していき、その積算体積が全体の10%となった時の最大粒子径であり、d90は粒子径が小さい方から足していき、その積算体積が全体の90%となった時の最大粒子径である。粒度分布d10/d90はd10の値をd90の値で割ったものである。
なお、上記の粒度分布の範囲のシリカは、市販のシリカの中から、選択することができる。粒度分布の測定は、例えば、島津製作所社製のレーザー回折式粒度分布測定装置(機種名:SALD−2000J)等によって行なうことができる。
【0016】
本発明において、インク受理層における結着剤(バインダー)として使用できる物質としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ゼラチン、ポリビニルアセタール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、アクリル、ウレタン、塩素化ポリプロピレン、バーサチック酸ビニルおよびこれらの共重合物、スチレン−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエンゴムおよびこれらの共重合物などが挙げられる。これらは単独で又は二種以上を混合して使用できる。
インク受理層の結着剤として特にシラノール変性ポリビニルアルコールを用いると、インク受理層の強度・耐水性、染料インクと顔料インクの発色性が向上するので、シラノール変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。
インク受理層中の、結着剤に対する填料の固形分質量比は、填料の質量をF、結着剤の質量をRとしたときの質量比(F/R)が、1.8〜4.0の範囲であることが好ましく、2.0〜2.6の範囲であることがより好ましい。質量比(F/R)を上記範囲とすることにより、本発明の効果をさらに向上できる。
【0017】
本発明においては、インク受理層に着色染料又は着色顔料を含有させる。これらのうち、着色染料が画像の鮮明さの点から好ましい。着色染料としては特に限定されないが、フタロシアニン系染料、アゾ系染料、ニトロソ系染料、ニトロ系染料、スチルベンアゾ系染料、ケトイミン系染料等が挙げられる。着色顔料としては特に限定されないが、ピグメントブルー系顔料、ピグメントバイオレット系顔料、ピグメントイエロー系顔料、ピグメントオレンジ系顔料、ピグメントグリーン系顔料、ピグメントブラウン系顔料、ピグメントブラック系顔料、ピグメントレッド系顔料などが挙げられる。これらは、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0018】
また、本発明においては、画像品質向上の目的で、インク受理層にカチオン性物質を含有させることが好ましく、特に、4級アンモニウム塩型のカチオン性樹脂を含有することが好ましい。4級アンモニウム塩型のカチオン性樹脂は、インク中の成分をインク受理層に定着させる作用を有し、特に限定されないが、ポリマー主鎖または側鎖に第4級アンモニウム塩基を有する水溶性ポリマーなどがあり、その具体的な例としては、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩化物、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン、ポリジメチルアミンアンモニウムエピクロルヒドリン、エピクロルヒドリン・ジメチルアミン付加重合物、(メタ)アクリルアミドアルキル4級アンモニウム塩の重合体、2級アミン・エピクロルヒドリン付加重合物、ポリエポキシアミン、ポリアリルアミン塩酸塩などの化合物が挙げられる。
【0019】
この4級アンモニウム塩型のカチオン性樹脂は、第4級アンモニウム塩基を含む繰り返し単位の単独重合体または縮合物であってもよく、また、第4級アンモニウム塩基を有さない他の共重合可能な繰り返し単位との共重合物であってもよい。共重合可能な繰り返し単位は、共重合可能な不飽和結合を1又は2以上有する単量体から誘導されるものであり、そのような単量体の具体例としては、例えば、スチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなど)、(メタ)アクリルアミド、ブタジエン、エチレン、酢酸ビニル、ビニルメチルエーテル、アクリルニトリル、N−ビニル−2−ピロリドン、マレイン酸、ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。但し、本発明では、該単量体がこれらに限定されるものではない。
【0020】
その他、使用可能なカチオン性物質としては、インクジェット用の染料あるいは着色顔料のスルフォン基、カルボキシル基などと反応して水不溶性塩を形成する各種樹脂類、2級アミン、3級アミンなどを含有するカチオン性樹脂類が挙げられる。その具体例として、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリビニルアミン、モノアリルアミン塩酸塩の重合体、ジアリルアミン塩酸塩の重合体、モノアリルアミン塩酸塩−ジアリルアミン塩酸塩の共重合体、ポリアルキレンポリアミン・ジシアンジアミド縮合物、アリルアミン−ジアリルアミン共重合体、(メタ)アクリルアミド−ジアリルアミン共重合体、エピクロルヒドリンポリアミド、ポリジアルキルアミノエチルアクリルアミドおよびジシアンジアミドポリエチレンアミンなどの化合物を挙げることができる。なお、樹脂以外のカチオン性物質を用いることも可能である。
4級アンモニウム塩型のカチオン性樹脂は、インク受理層中の固形分比率で、1〜10質量%の範囲であることが好ましく、3〜8質量%の範囲であることがより好ましい。4級アンモニウム塩型のカチオン性樹脂を上記範囲とすることにより、本発明の効果をさらに向上できる。
【0021】
また、インク受理層には、水和アルミニウム酸化物や水溶性アルミニウム塩を含有させることが好ましい。使用可能な水溶性アルミニウム塩としては、乳酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどが挙げられ、中でも、乳酸アルミニウム、特に塩基性乳酸アルミニウムが好ましい。
さらに、インク受理層には、蛍光増白剤を含有させることが好ましい。通常、蛍光増白剤を含有させると耐光性が低下するが、本発明は、その程度が小さい。そのため、蛍光増白剤を比較的多く含有させ、インクジェット記録用紙の色合いを明るい白さにすることが可能である。蛍光増白剤の含有量は、インク受理層中の固形分比率で、1〜8質量%の範囲であることが好ましく、2〜6質量%の範囲であることがより好ましい。
インク受理層には、本発明の目的が損なわれない範囲で、その他の添加剤として必要に応じ、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、顔料分散剤、増粘剤などの各種添加剤を含有させることができる。これらは、インク受理層形成用の塗工液に含有させて塗工することができる。
インク受理層の質量(乾燥後)は、5〜20g/m2とすることが好ましく、7〜15g/m2とすることがより好ましい。20g/m2以下とすることにより、インク受理層の強度・耐水性が優れるようになり、また、5g/m2以上とすることにより、染料インクと顔料インクの吸収性が優れるようになる。
【0022】
本発明のインクジェット記録用紙は、上記のインク受理層(以下、「本発明のインク受理層」ということがある。)を、基紙上の少なくとも一方の面に、少なくとも1層以上有するものである。
本発明のインク受理層は、基材の片面に設けてもよいし、両面に設けてもよく、基材の片面に2層以上設けてもよい。たとえば、基材の片面に本発明のインク受理層を、1層で設けたときと同じ層厚みになるように2層重ねると、インク受理層のひび割れを防止しやすくできる。
また、本発明のインクジェット記録用紙は、本発明のインク受理層以外のインク受理層を併用してもよい。例えば、本発明のインクジェット記録用紙のインク受理層を有する面と反対の面に、他のインク受理層を設けることもできる。
【0023】
インク受理層は、必要な成分を水その他の適当な溶媒に分散させたり溶解させたりした塗工液を塗工して乾燥させることなどによって形成することができる。塗工は、リバースロールコート、エアナイフコート、グラビアコート、ブレードコート、コンマコート、ワイヤーバーコート等の従来公知の種々の方法を用いることが可能である。
本発明のインクジェット記録用紙に適するインクは、水性の顔料タイプのインク、水性の染料タイプのインク、油性の顔料タイプのインク、油性の染料タイプのインク、溶剤系の顔料タイプのインクおよび溶剤系の染料タイプのインクであり、特に水性の顔料タイプのインクおよび水性の染料タイプのインクが好適である。
本発明のインクジェット記録用紙は、前述のような効果があり、優れた画像品質を維持しながら、染料インクと顔料インクのいずれでも良好に印画できる。
【実施例】
【0024】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例において、印画試験は次のように行った。
(使用したプリンター、インクおよび印画設定)
A.顔料インクによる印画の場合
・プリンター:ヒューレットパッカード社製のインクジェットプリンター(機種名DJ5000PS)
・インク:純正の水性顔料タイプのインク(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ライトシアン、ライトマゼンタ)
・印画設定:アツデマットシモード、最高品質
・インクの噴射量:高噴射
B.染料インクによる印画の場合
・プリンター:ヒューレットパッカード社製のインクジェットプリンター(機種名DJ5000PS)
・インク:純正の水性染料タイプのインク(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ライトシアン、ライトマゼンタ)
・印画設定:アツデマットシモード、最高品質
・インクの噴射量:高噴射
【0025】
(印画した画像)
試験項目に応じて、下記の画像の中から画像を選択して用いた。
「画像1」
画像の内容:「シアン」(シアンインク100%)、「マゼンタ」(マゼンタインク100%)、「イエロー」(イエローインク100%)、「ブラック」(ブラックインク100%)、「レッド」(マゼンタインク100%、イエローインク100%)、「グリーン」(シアンインク100%、イエローインク100%)、「ブルー」(シアンインク100%、マゼンタインク100%)、「混色黒」(シアンインク100%、マゼンタインク100%、イエローインク100%)のベタ
「画像2」
画像の内容:ISO高精細カラーディジタル標準画像N3A
【0026】
インクジェット記録用紙の性能は、以下に示す方法に従って評価した。
(1)顔料インクの反射濃度
顔料インクによって「画像1」を印画し、目視で観察し、画像の反射濃度を下記の基準で評価した。
◎…非常に優れている ○…優れている
△…普通(実用上支障なし) ×…実用上支障あり
(2)顔料インクのにじみ
顔料インクによって「画像1」および「画像2」を印画し、目視で観察し、画像のにじみを下記の基準で評価した。
◎…非常ににじみが少ない ○…にじみが少ない
△…普通(実用上支障なし) ×…実用上支障あり
(3)染料インクの反射濃度
染料インクによって「画像1」を印画し、目視で観察し、画像の反射濃度を下記の基準で評価した。
◎…非常に優れている ○…優れている
△…普通(実用上支障なし) ×…実用上支障あり
(4)染料インクの茶変
染料インクによって「混色黒」(シアンインク100%、マゼンタインク100%、イエローインク100%)のベタを印画し、目視で観察し、茶色く変色した度合いを下記の基準で評価した。
◎…非常に変色が少ない ○…変色が少ない
△…普通(実用上支障なし) ×…実用上支障あり
(5)耐光性
スガ試験機株式会社製『紫外線ロングライフフェードメーター(カーボン電極)』を用い、実施例と比較例のインクジェット記録用紙、及び市販のマットタイプのインクジェット記録用紙の白紙部を8時間照射した。それぞれ、照射したものと未照射のものの色あいの差を色差計で測定した。実施例と比較例を、下記基準で評価した。
○…市販のインクジェット記録用紙と比較して、色差が同等かそれよりも小さい( 即ち黄変が少なく実用上問題なし)
×…市販のインクジェット記録用紙と比較して、色差が大きい(即ち黄変が多く実 用上支障あり)
【0027】
実施例1
NBKP(針葉樹晒しパルプ)とLBKP(広葉樹晒しパルプ)を離解及び叩解したものを、質量比1対3の比率で混合し、パルプ100質量部に対する質量比で、澱粉を1質量部、内添サイズ剤を4質量部添加し、濾水度450mlcsfにて製造したパルプスラリーを用いて長網抄紙機により抄造した。更に、澱粉、ポリビニルアルコール、表面サイズ剤を水に溶解させた液体を、サイズプレス装置により、両面に塗布し乾燥させた後、マシンカレンダー処理をして基紙を作製した。前記液体の塗布においては、パルプ100質量部に対する質量比で、両面合計で澱粉0.8質量部、ポリビニルアルコール0.5質量部、表面サイズ剤0.4質量部を塗布した。なお、基紙のサイズ度は118秒、坪量は128g/m2であった。
インク受理層用塗工液として、次の成分の均一混合物を用いた。
(a) 填料(フィラー)
・シリカ[ウイルバー・エリス社販売、商品名:ガシル HP395(GASIL HP395)、固形分濃度100質量%、平均粒子径12.5〜13.0μm、粒度分布d10/d90が0.139、細孔容積1.80ml/g]20.64質量部
(b)結着剤(バインダー)
・シラノール変性ポリビニルアルコール[クラレ社製、商品名:クラレRポリマー R−1130、固形分濃度100質量%、]8.60質量部
(c) 添加剤
・着色染料〔ランクセス社製、商品名:LEVACELL Fast Blue HS liquid〕0.015質量部
・着色染料〔ランクセス社製、商品名:LEVACELL Violet BBN liquid 40%〕0.012質量部
・水溶性カチオン性樹脂〔センカ社製、商品名:パピオゲンP−113、固形分濃度42質量%、4級アンモニウム塩型カチオン性樹脂〕4.64質量部
・水和アルミニウム酸化物[日産化学工業社製、商品名:アルミナゾル200、固形分濃度10質量%] 4.54質量部
・界面活性剤〔日本油脂社製、商品名:ノニオンID−206、固形分濃度100質量%〕0.17質量部
・消泡剤〔サンノプコ社製、商品名:SNデフォーマー480、固形分濃度100質量%〕0.29質量部
・蛍光増白剤〔バイエル社製、商品名:BLANKOPHOR UW liquid、固形分濃度100質量%〕1.00質量部
(d)水 163質量部
基紙の一方の面に、インク受理層用塗工液を乾燥後の質量が10g/m2になるように塗工し、乾燥処理することにより、インク受理層を設けインクジェット記録用紙を作製した。前述の印画試験を行い、インクジェット記録用紙の性能評価結果を第1表に示す。
【0028】
比較例1
実施例1におけるインク受理層用塗工液として、シリカ〔ガシル HP395(GASIL HP395)〕20.64質量部を、シリカ〔水澤化学工業社製、商品名:ミズカシルP−50、固形分濃度100質量%、平均粒子径10.0μm、細孔容積1.1ml/g〕20.64質量部に代えた以外は、実施例1と同様な操作を行い、インクジェット記録用紙を作製した。前述の印画試験を行い、インクジェット記録用紙の性能評価結果を第1表に示す。
【0029】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙の少なくとも一方の面にインク受理層を設けてなり、該基紙のサイズ度が50〜300秒の範囲であり、該インク受理層が(A)着色顔料又は着色染料、及び(B)シリカを含有し、該シリカの細孔容積が1.6〜2.2ml/gの範囲であり、且つ該シリカのコールターカウンター法による平均粒子径が7〜15μmの範囲であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【請求項2】
インク受理層がカチオン性物質として4級アンモニウム塩を含有する請求項1に記載のインクジェット記録用紙。
【請求項3】
インク受理層が結着剤としてシラノール変性ポリビニルアルコールを含有する請求項1又は2に記載のインクジェット記録用紙。
【請求項4】
インク受理層中の填料(F)と結着剤(R)との質量比(F/R)が、1.8〜4.0の範囲である請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録用紙。
【請求項5】
インク受理層におけるシリカ含有量が、全填料中の固形分比率で90質量%以上である請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録用紙。


【公開番号】特開2006−264119(P2006−264119A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85922(P2005−85922)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】