説明

インクジェット記録装置、およびインクジェット記録装置のメディア切断方法

【課題】 大判プリンタにおいてメディアのカット不良は、プリント物の価値を下げ、生産性を低下させる大きな要因のひとつである。メディアの切断の繰り返しにより磨耗したカッターは切れ味が悪化しカット不良が発生していた。
【解決手段】 カッターのメディアから受ける負荷からカッターの切れ味を検出し、その切れ味に応じて最適なカット速度に切り換える手段を導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に搭載されたプリントメディア切断用カッターの、カット不良防止のための、切断中の負荷の大きさによる最適なカット速度への切り換え制御に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ロール状に巻き取られた連続プリントメディアを装てんするプリンタは、その紙面に画像を形成し、カッター機構により切断し排紙する。このカッター機構はカッター部と駆動部からなる。このカッター部はナイフ状の固定刃を用いてメディアを押し切るタイプのものと、回転刃を用いてメディアを挟み切るタイプのものとが知られている。
【0003】
メディア幅の大きなロール紙を用いた大判インクジェットプリンタにおいて、メディアの切断はプリントの最後の工程であり、カット不良はプリント物としての価値を下げるとともに、生産性を低下させる大きな要因のひとつである。さらにカット不良は切り屑を発生させ、プリンタの信頼性をも低下させる。
【0004】
従来のカット不良防止の技術として、カッターの刃の磨耗によるカット不良を未然に防ぐものが提案されている。例えば下記特許文献1では、カッターの寿命を切断時間、切断回数、累積切断時間、負荷電流、温度などのうちいずれかを用いて予め設定する閾値とを比較して、交換の有無や交換の必要性の度合いを判断し、交換を促すために表示や警告音によりユーザーに告知し最終段階でプリンタの動作を止める、というものがある。
【0005】
また、環境条件の変化によるメディアのカット不良を防ぐ技術が提案されている。例えば下記特許文献2では、使用メディアの紙質や環境温度、環境湿度に基づいてロール紙の先端からカッターまでの長さが最適な長さになるように、駆動ローラを制御しロール紙を無駄なくスムーズに切断できるようにする、というものがある。
【特許文献1】特開2001-88384号公報
【特許文献2】特開2001-146053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
大判プリンタにおけるメディアのカット不良は、プリント物の価値を下げ、生産性を低下させる大きな要因のひとつである。カット不良の原因は、カッターの磨耗による切れ味の悪化によるものや、メディアの物性(剛度など)とカットのパラメータ(カット速度など)とのミスマッチが考えられる。特に切断の繰り返しで磨耗が進むと、カッターの切れ味が悪くなり、メディアの切り口にメディアの繊維の毛羽立ちなどが現れ、さらにはカット不良によるジャムなどを引き起こす。
【0007】
本発明は上記の観点に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、未然にカット不良を防止し、信頼性の高いプリントを提供するためのものである。そのためにメディア切断時のモータの負荷を検出し、カッターがメディアから受ける負荷に対して最適な切断速度に切り換える手段を導入する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では下記のいずれかの構成をとることにより、カッターの繰り返しの切断による切れ味の変化を、モータの負荷が変化することを利用し、切断速度を切り換えることで未然にカット不良を防ぐことができることを見出した。
【0009】
1.ロール状の連続プリントメディアを搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送される前記連続プリントメディアに対して画像を形成するプリント手段と、前記搬送手段による搬送方向に対し直交方向に移動し前記連続プリントメディアを切断する切断手段と、を有する画像形成装置において、前記切断手段の切断中の負荷を検出する手段と、前記検出手段の検出結果に応じて、前記切断手段の移動速度を制御する制御手段と、を有する画像形成装置。
【0010】
2.前記切断手段は、前記切断方向に移動可能なカッター部と前記カッター部を前記切断方向に任意の速度で移動させることができるモータと、を有することを特徴とする前記1記載の画像形成装置。
【0011】
3.前記検出手段は、前記プリントメディアの切断中に前記モータに印加される電流値を検出する検出手段、を有する前記1、2記載の画像形成装置。
【0012】
4.前記制御手段は、前記検出手段により切断中のモータの負荷に基づいて、前記切断手段の前記カッター部の速度を任意に制御するものであることを特徴とする前記1、2、3記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、メディア切断時のカッターが受ける負荷を検出し、その値に応じた適正なカット速度に切り換えることで、カット不良を未然に防止することができる。このため従来に比べ、カッターが磨耗した状態でも安定したカットを維持することができ、高い信頼性のプリントを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の画像形成装置の一実施形形態を説明する。図1は一実施形のインクジェットプリンタにおいてロール紙を切断している様子を示す斜視図である。このシステムにおいて、インクジェットプリンタ本体10にメディア切断手段としてカッターユニット20が設けられる。図2は上記カッターユニット20の概略を示す正面図である。上記カッターユニット20のカッター部21と駆動モータ22からなる。カッターはメディアの幅方向Aに移動可能で、この動きによりメディア30を切断する。
【0015】
図3は従来のインクジェット画像形成装置の一例であるインクジェットプリンタを示す斜視図である。インクジェットプリンタ10にはこのインクジェットプリンタを操作するための操作パネル部11が設けられている。この操作パネル部11にはメディアの種類に応じて画像形成方法を変えるためのメニューが用意されている。これから実際に使うメディア種をこのメニューから選択し決定することで、メディア種によって異なる印字品位、紙搬送性、切断動作が最適化される。
【0016】
インクジェットプリンタ10にはメディア切断動作を制御する制御装置が備えられている。この制御装置はロール紙30を切断する際のカッター部21の移動速度が制御されることとなる。
【0017】
またインクジェットプリンタ10には、メディア切断時にカッターがメディアから受ける負荷を検出する検出装置が設けられている。カッターがメディアから受ける負荷は、メディア切断時のカッターを駆動するためのモータ22の電流値を検出することで得られる。
【0018】
図4はロール紙30を切断するまでの手順を示すフローチャートである。上記の操作パネル部11とカッターの負荷検出装置40から送られてきた信号に基づいて、制御装置が切断動作を制御する。ここでは、操作パネル部11でのメディアの選択とカッターの負荷検出装置40でのモータの負荷電流の検出により、排紙時の切断速度が決定されるまでの手順を、図4に示したフロー図を参照し説明する。
【0019】
このフローはインクジェットプリンタ10にロール紙がセットされ、最初の切断動作の際に起動する。このフローにより決定された切断速度は、次にロール紙がセットされるまで維持される。
【0020】
まず、プリンタのユーザーが使用するメディアの種類を、プリンタの操作部11から入力する。このとき選択したメディア種ごとに、予め設定されたカッターの切断速度が決定される(S401)。この切断速度はカッターの磨耗がない状態で決定されたものである。
【0021】
次にカッターの磨耗状況を検出する。切断速度を決定する際の重要なパラメータは、カッターがメディアから受ける負荷の大きさである。カッターの磨耗が進むと、カッターがメディアから受ける負荷は大きくなるのは周知のとおりである。カッターの磨耗がない状況での負荷電流に対し、検出時の負荷電流の上昇分から、最適なカット速度を決定する。
【0022】
【表1】

代表的なメディアの負荷電流の上昇率と、そのときの切断速度の一例を示す。このように、メディアの種類とそのときのカッターの磨耗状況での最適な切断速度が決定される。(S405)
図5に示すように、磨耗したカッターの刃23は、切れ味が悪くなっており、正常にメディア30への進入ができないことがある。カット不良による切り口の乱れやジャム、紙粉の発生を引き起こしてしまう。確実にカッターの刃23をメディア30に進入させるために、磨耗が進む毎に切断速度をより低速にする。
【0023】
ここで、表1の数値はある条件下での特定の紙種の一例であり、実際の負荷上昇率、切断速度はこの数値に限定するものではない。
【0024】
また、説明のために固定刃による切断を例としてあげたが、これは固定刃または回転刃を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタにおいてロール紙を切断している様子を示す斜視図である。
【図2】図1のインクジェットプリンタの切断装置の概略を示す斜視図である。
【図3】従来のインクジェット画像形成装置の一例であるインクジェットプリンタを示す斜視図である。
【図4】ロール紙を切断するまでの手順を示すフローチャートである。
【図5】記録媒体を切断し始めたときに生じた不具合を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
10 インクジェットプリンタ本体
11 プリンタ操作部
20 カッターユニット
21 カッター部
22 カッターの駆動モータ
23 カッターの刃
30 メディア(ロール紙)
40 負荷検知部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状の連続プリントメディアを搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送される前記連続プリントメディアに対して画像を形成するプリント手段と、前記搬送手段による搬送方向に対し直交方向に移動し前記連続プリントメディアを切断する切断手段と、を有する画像形成装置において、
前記切断手段の切断中の負荷を検出する手段と、前記検出手段の検出結果に応じて、前記切断手段の移動速度を制御する制御手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記切断手段は、前記切断方向に移動可能なカッター部と前記カッター部を前記切断方向に任意の速度で移動させることができるモータと、を有することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記プリントメディアの切断中に前記モータに印加される電流値を検出する検出手段、を有することを特徴とする請求項1、2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記検出手段により切断中のモータの負荷に基づいて、前記切断手段の前記カッター部の速度を任意に制御するものであることを特徴とする請求項1、2、3記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate