説明

インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法

【課題】奇数回および偶数回の双方向記録によって所定領域の画像を完成させる場合のそれぞれにおいて、スジ状の画像欠陥と濃度ムラの両方を抑えて、高画質の画像の高速記録を可能とすること。
【解決手段】奇数回の双方向記録によって画像を完成させるときには、小インク滴用および大インク滴用の第1の間引きパターンを用いて記録データを間引く。それらの第1の間引きパターンによって、奇数回の記録走査おける全ての往路方向の記録走査による合計の記録率と、全ての復路方向の記録走査による合計の記録率と、の差を異ならせる。偶数回の双方向記録によって画像を完成させるときには、小インク滴用および大インク滴用の第2の間引きパターンを用いて記録データを間引く。それらの第2の間引きパターンによって、偶数回の記録走査おける全ての往路方向の記録走査による合計の記録率と、全ての復路方向の記録走査による合計の記録率と、の差を等しくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出可能な記録ヘッドの双方向の記録走査を伴って、記録媒体上の所定領域の画像を完成させるインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の機能を有する記録装置、コンピューターやワードプロセッサ等を含む複合型電子機器やワークステーションなどの出力機器として、広く用いられている。これらの記録装置は、画像情報(文字情報等を含む)に基づいて、用紙やプラスチック薄板等の記録媒体に画像(文字等を含む)を記録するように構成されている。インクジェット記録装置は、記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して記録を行うため、他の記録方式の記録装置に比べて、記録画像の高精細化および記録速度の高速化が可能であり、しかも静粛性に優れかつ安価である。また、カラー画像の記録のニーズも高まっており、それに対応するインクジェット記録装置も数多く開発されている。
【0003】
このようなインクジェット記録装置においては、記録速度のさらなる向上のために、複数の記録素子が集積配列された記録ヘッド(「マルチヘッド」ともいう)が用いられている。記録素子は、インク吐出口と、それに対応する吐出エネルギー発生素子と、を含み、その吐出エネルギー発生素子としては、ヒータ(発熱抵抗素子)やピエゾ素子などが用いられる。以下においては、このようなインク吐出口と吐出エネルギー発生素子とを含む部分を「ノズル」ともいう。カラー画像を記録するためのインクジェット記録装置においては、一般に、このような記録素子が集積配列された記録ヘッドが複数備えられている。
【0004】
特許文献1には、複数のインク吐出口が列状に形成された記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置として、いわゆるシリアルスキャンタイプのインクジェット記録装置が記載されている。シリアルスキャンタイプのインクジェット記録装置は、記録ヘッドのインク吐出口からインクを吐出しつつ、記録ヘッドを主走査方向に移動させる動作と、記録媒体を副走査方向に搬送する動作と、を繰り返すことによって、記録媒体上に画像を記録する。
【0005】
さらに記録文献1には、記録ヘッドの製造工程において生じるわずかなノズル単位のばらつきによって、インクの吐出量や吐出方向の向きが影響を受ける場合を考慮して、濃度ムラのない高品質の画像を記録するためのマルチパス記録方式が記載されている。マルチパス記録方式は、所定の記録領域に対する画像の記録を記録ヘッドの複数回の走査によって完成させる記録方式であり、主走査方向に沿う1ラインを複数のノズルを用いて記録することができる。このように複数のノズルを用いて所定単位の記録領域を記録することにより、ノズル単位のばらつきの影響を小さく抑えて、濃度ムラのない高品質の画像を記録することが可能となる。記録文献1には、4画素単位の記録領域の記録を2回の走査によって完成させる2パス記録方式が記載されている。その2パス記録方式においては、1走査目に、千鳥状の間引きパターンを用いて画素を千鳥格子状に記録し、2走査目に、逆千鳥状の間引きパターンを用いて画素を逆千鳥格子状に記録する。
【0006】
また特許文献2には、記録ヘッドの往路方向と復路方向のいずれの移動時においてもインクを吐出して記録を行う双方向記録方式と、マルチパス記録方式と、を組み合わせた構成が記載されている。具体的には、3パスの双方向記録方式において、1,2,3走査目における記録率を25%,50%,25%に設定する構成が記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開昭60−107975号公報
【特許文献2】特開平06−336015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
インクジェット記録装置においては、高画質な画像を高速記録するためには、記録ヘッドから小さいインク滴を高い周期で吐出させる必要がある。しかし、その場合には、図13のように記録画像I(n)およびI(n+1)にスジ状の記録ムラが発生するおそれがあった。
【0009】
図13は、所定の記録領域の記録を記録ヘッドHの1回の走査によって完成させるシングルパス記録方式の場合の説明図であり、Nは記録ヘッドHに形成されている複数のノズルである。記録ヘッドHのn回目の走査時に、記録データD(n)に基づいて記録した画像はI(n)となり、その画像I(n)の図中上下の部分にはインクが着弾せずに白スジが発生する。記録ヘッドHの(n+1)回目の走査時に、記録データD(n+1)に基づいて記録した画像はI(n+1)となり、同様に、その画像I(n+1)の図中上下の部分にもインクが着弾せずに白スジが発生する。このようなスジ状の画像欠陥は、特に、インクの着弾によって形成されるドットの密度が高い領域(記録デューティが高い領域)において発生することが多い。
【0010】
図14は、このようなスジ状の画像欠陥の発生原因を説明するための図であり、画像の記録時に、記録ヘッドHから記録媒体Pに向かってインク滴を吐出している状態を示している。この図の状態は、記録ヘッドHに存在する全ノズル(例えば、256ノズル)からインクを吐出している状態、すなわち、記録するドット密度(記録デューティ)が100%のべた画像の記録時の状態である。その際、ノズル列の端部付近に位置するノズル(図14中上下の端部付近に位置するノズル)は、インクの吐出方向がノズル列の中央寄りに傾く。その理由は、全ノズルが高い駆動周波数によって駆動されてインクを吐出するため、吐出されたインク滴の周囲の空気もそのインク滴と同じ方向に移動する。その空気の移動に伴って、インク滴の周囲の空気が減圧状態となり、そのインク滴の周囲外の空気が減圧方向に移動することによって、図14中の矢印のようにノズル列の中央寄りに向かう気流が生じる。その気流の影響により、ノズル列の端部付近のノズルから吐出されるインク滴は、ノズル列の中央寄りに向かって内側に曲がる(以下、この現象を「端部よれ」ともいう)。この端部よれによって、ノズル列の端部付近に位置するノズルから吐出されるインクの着弾位置、つまりドットの形成位置にずれが生じ、その結果、図13のようなスジ状の画像欠陥が発生するおそれがある。
【0011】
このような端部よれの現象の回避策としては、インク滴の体積を大きくして、気流の影響を受けにくくすることが考えられる。しかし、インク滴を大きくした場合には、記録媒体上に形成されるドットの粒状性が目立ってしまい、記録画像の品質が低下するおそれがある。また、端部よれの現象を抑えるために、インクの吐出周波数を下げたり、記録ヘッドにおけるノズルの配備数を少なくしたり、ノズルの配置密度を低くした場合には、記録速度の低下を招くおそれがある。
【0012】
また、このような端部よれの現象は、記録ヘッドの1回の走査において形成するドットの密度(記録デューティ)に依存して発生する。そのため、図13のようなシングルパス記録方式の記録時だけではなく、前述した特許文献1に記載されているようなマルチパス記録方式の記録時においても、形成するドットの密度(記録デューティ)が高い場合には同様の現象が発生するおそれがある。
【0013】
図15は、双方向記録方式における記録ヘッドの走査方向と、記録媒体上に着弾したインク滴により形成されるドットと、の関係の説明図である。
【0014】
双方向記録方式において、記録ヘッドHは、図15(a)中の矢印X1の往路方向と矢印X2の復路方向のいずれに移動時においてもノズルNからインクを吐出する。図15(b)は、記録ヘッドHが往路方向に走査したときのインク滴の着弾位置を示し、図15(c)は、記録ヘッドHが復路方向に走査したときのインク滴の着弾位置を示す。D1は、ノズルNから吐出されるインクの主滴であり、D2は、主滴D1の後に続いてノズルNから吐出されるインクの副滴である。図15(a)における記録ヘッドは、ノズルNからのインクの吐出方向が僅かに往路方向(矢印X1方向)に傾いている。そのため、往路方向の走査(往路走査)時は、図15(b)のように主滴D1と同じ位置に副滴D2が着弾し、一方、復路方向の走査(復路走査)時は、図15(c)のように、主滴D1から復路方向(矢印X2方向)にずれた位置に副滴D2が着弾する。
【0015】
奇数の走査回数によって所定の記録領域の記録を完成させるマルチパス記録方式においては、次のような第1領域と第2領域とが交互に位置することになる。第1領域は、偶数回の往路走査と、それよりも1回少ない奇数回の復路走査と、によって画像の記録が完成する領域、つまり往路走査によって記録される比率が高い領域であり、往路走査によって記録が始まり、往路走査によって記録が終わる領域である。一方、第2領域は、偶数回の復路走査と、それよりも1回少ない奇数回の往路走査と、によって画像の記録が完成する領域、つまり復路走査によって記録される比率が高い領域であり、復路走査によって記録が始まり、復路走査によって記録が終わる領域である。このような第1および第2領域が交互に位置することになるため、記録画像の濃度ムラが発生するおそれがある。
【0016】
その濃度ムラの主な発生原因としては、図15(b)のような往路走査によって記録される比率が高い第1領域に対して、図15(c)のような復路走査によって記録される比率が高い第2領域は、単位面積当りのインクの着弾面積が広いことが挙げられる。このようなインクの着弾面積の差によって濃度差が発生し、それが濃度ムラにつながるおそれがある。
【0017】
また、このように奇数の走査回数によって所定の記録領域の記録を完成させるマルチパス記録方式において、複数色のインク滴を用いて画像を記録する場合には、第1および第2領域が交互に位置するために、記録画像に色ムラが発生するおそれがある。
【0018】
例えば、図16のようにイエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)のインクを吐出するためのノズル列が形成されている記録ヘッドHを用いて、マゼンタ(M)とシアン(C)のインクを重ねてブルーの色を表現する場合を想定する。この場合、往路走査においてはシアン(C)、マゼンタ(M)の順にインク滴が着弾し、逆に、復路操作においてはマゼンタ(M)、シアン(C)の順にインク滴が着弾する。このようなインク滴の着弾順序の違いにより、記録画像上に、視覚的に確認可能な程度の色味の差が現れるおそれがある。その理由は、先に着弾したインクは、その後に着弾したインクよりも色相的に支配的となる傾向があるからであり、第1および第2領域が交互に位置することにより、それらの領域に色味の差が生じて色ムラとなるおそれがある。
【0019】
前述したように、特許文献2には、3パスの双方向記録方式において、1,2,3走査目の記録率を25%,50%,25%に設定する構成が記載されている。このように構成した場合には、計3回の走査によって記録される単位記録領域において、全ての往路走査による記録率と、全ての復路走査による記録率と、を同じ50%ずつとすることができる。これにより、濃度ムラの発生は低減することができる。しかし、2走査目の記録率が50%と高くなるため、その2走査目に形成するドットの密度(記録デューティ)が高くなり、図14のような端よれの現象が生じて、スジ状の画像欠陥が生じるおそれがある。
【0020】
仮に、インクの吐出周波数を低くしたり、所定の記録領域の画像の記録を完成させるための走査回数を増やして、1回の走査時に形成するドットの密度(記録デューティ)を低くした場合には、端よれの発生を抑えることはできるものの記録速度の低下を招く。
【0021】
本発明の目的は、奇数回および偶数回の双方向の記録走査によって所定領域の画像を完成させる場合のそれぞれにおいて、スジ状の画像欠陥と濃度ムラの両方を抑えて、高画質の画像を高速記録可能なインクジェット記録装置および記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明のインクジェット記録装置は、記録ヘッドを主走査方向に沿って往路方向および復路方向に移動させつつ、前記記録ヘッドから体積が異なる大小のインク滴を吐出させる双方向の記録走査と、前記主走査方向と交差する副走査方向に記録媒体を搬送する搬送動作と、を繰り返すことにより、前記記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、前記記録媒体上の第1の所定領域の画像を奇数回の双方向の記録走査によって完成させる第1の記録モードと、前記記録媒体上の第2の所定領域の画像を偶数回の双方向の記録走査によって完成させる第2の記録モードと、を備え、前記第1の記録モードは、前記小インク滴を吐出するための記録データを間引く小インク滴用の第1の間引きパターンと、前記大インク滴を吐出するための記録データを間引く大インク滴用の第1の間引きパターンと、を用い、前記第2の記録モードは、前記小インク滴を吐出するための記録データを間引く小インク滴用の第2の間引きパターンと、前記大インク滴を吐出するための記録データを間引く大インク滴用の第2の間引きパターンと、を用い、前記小インク滴用の第1の間引きパターンと前記大インク滴用の第1の間引きパターンは、前記奇数回の記録走査おける全ての前記往路方向の記録走査による合計の記録率と、全ての前記復路方向の記録走査による合計の記録率と、の差を異ならせるように、前記記録データを間引き、前記小インク滴用の第2の間引きパターンと前記大インク滴用の第2の間引きパターンは、前記偶数回の記録走査おける全ての前記往路方向の記録走査による合計の記録率と、全ての前記復路方向の記録走査による合計の記録率と、の差を等しくするように、前記記録データを間引くことを特徴とする。
【0023】
本発明のインクジェット記録方法は、記録ヘッドを主走査方向に沿って往路方向および復路方向に移動させつつ、前記記録ヘッドから体積が異なる大小のインク滴を吐出させる双方向の記録走査と、前記主走査方向と交差する副走査方向に記録媒体を搬送する搬送動作と、を繰り返すことにより、前記記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法において、前記記録媒体上の第1の所定領域の画像を奇数回の双方向の記録走査によって完成させる第1の記録モードと、前記記録媒体上の第2の所定領域の画像を偶数回の双方向の記録走査によって完成させる第2の記録モードと、を用い、前記第1の記録モードは、小インク滴用の第1の間引きパターンを用いて前記小インク滴を吐出するための記録データを間引き、大インク滴用の第1の間引きパターンを用いて前記大インク滴を吐出するための記録データを間引き、前記第2の記録モードは、小インク滴用の第2の間引きパターンを用いて前記小インク滴を吐出するための記録データを間引き、大インク滴用の第2の間引きパターンを用いて前記大インク滴を吐出するための記録データを間引き、前記小インク滴用の第1の間引きパターンと前記大インク滴用の第1の間引きパターンは、前記奇数回の記録走査おける全ての前記往路方向の記録走査による合計の記録率と、全ての前記復路方向の記録走査による合計の記録率と、の差を異ならせるように、前記記録データを間引き、前記小インク滴用の第2の間引きパターンと前記大インク滴用の第2の間引きパターンは、前記偶数回の記録走査おける全ての前記往路方向の記録走査による合計の記録率と、全ての前記復路方向の記録走査による合計の記録率と、の差を等しくするように、前記記録データを間引くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、奇数回の双方向記録によって画像を完成させる第1の記録モードにおいて、小インク滴および大インク滴を吐出するための記録データを間引く間引きパターンとして、小インク滴用および大インク滴用の第1の間引きパターンを用いる。また、偶数回の双方向記録によって画像を完成させる第2の記録モードにおいて、小インク滴および大インク滴を吐出するための記録データを間引く間引きパターンとして、小インク滴用および大インク滴用の第2の間引きパターンを用いる。
【0025】
そして、小インク滴用と大インク滴用の第1の間引きパターンにより、前記奇数回の記録走査おける全ての往路方向の記録走査による合計の記録率と、全ての復路方向の記録走査による合計の記録率と、の差を異ならせるように、記録データを間引く。また、小インク滴用と大インク滴用の第2の間引きパターンは、前記偶数回の記録走査おける全ての往路方向の記録走査による合計の記録率と、全ての復路方向の記録走査による合計の記録率と、の差を等しくするように、記録データを間引く。
【0026】
これらの結果、奇数回および偶数回の双方向の記録走査によって所定領域の画像を完成させる場合のそれぞれにおいて、スジ状の画像欠陥と濃度ムラの両方を抑えて、高画質の画像を高速に記録することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置の要部の斜視図である。
101は4つのインクカートリッジであり、それらは、インクタンクと、複数の記録素子が集積配列された記録ヘッド(マルチヘッド)102と、より構成されている。それらのインクタンクには、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクが収容される。記録ヘッド102は、インクタンクと別体に構成されるものであってもよい。記録ヘッド102に備わる記録素子は、インク吐出口と、それに対応する吐出エネルギー発生素子と、を含み、その吐出エネルギー発生素子としては、ヒータ(発熱抵抗素子)やピエゾ素子などが用いられる。以下においては、このようなインク吐出口と吐出エネルギー発生素子とを含む部分を「ノズル」ともいう。
【0028】
103は紙送りローラであり、補助ローラ104と共に記録紙(記録媒体)Pを抑えながら矢印方向に回転することにより、記録媒体Pを矢印Yの副走査方向に間欠的に搬送する。105は給紙ローラであり、記録媒体Pの給紙を行うと共に、ローラ103および104と同様に、記録媒体Pを抑える役割も果たす。106は、4つのインクカートリッジ101を搭載可能なキャリッジであり、矢印X方向に沿って主走査方向に往復移動する。以下、+Xの方向を往路方向X1、−Xの方向を復路方向X2という。主走査方向と副走査方向は互いに交差し、本例の場合は、互いに直交する。キャリッジ106は、記録を行っていないとき、あるいは記録ヘッド102の回復処理などを行うときには、図中点線の位置のホームポジション(h)に移動して待機する。
【0029】
図2は、記録ヘッド102におけるシアンインク吐出用のノズルの配列を説明するために、記録ヘッド102をZ方向から見た図である。記録ヘッド102には、シアンインク用の吐出口として、吐出口1101,1102が形成されている。吐出口1101は、大きな体積(第1の体積)のインク滴を吐出するための大インク吐出口であり、吐出口1102は、小さな体積(第1の体積よりも小さな第2の体積)のインク滴を吐出するための小インク吐出口である。
【0030】
このようなシアンインク用の吐出口と同様に、他のインクを吐出するための吐出口も、体積が異なる大小のインク滴を吐出する構成とすることができる。本実施形態においては、シアンインク用の吐出口のみが大インク吐出口と小インク吐出口を含む構成となっている。以下においては、主として、それらの大インク吐出口と小インク吐出口からシアンインクを吐出するための構成および制御について説明する。
【0031】
それぞれの吐出口1101,1102は、1インチ当たりNドットの記録画素密度に対応するようにn個配列されている。本例の場合、それぞれの吐出口1101,1102は、1インチ当たり600ドット(600dpi)の記録画素密度に対応するように12個ずつ配列されている。大インク吐出口1101が吐出するインク滴(以下、「大インク滴」という)の体積は10pl(ピコリットル)であり、小インク吐出口1102が吐出するインク滴(以下、「小インク滴」という)の体積は5plである。また、これらのインク滴を安定して吐出するために、吐出周波数は30KHz、吐出速度は約18m/秒とする。このような記録ヘッド102を搭載するキャリッジ106の主走査方向の移動速度は、25インチ/秒とする。これにより、主走査方向における画像の記録密度は、1200dpiとなる。
【0032】
吐出口1101,1102は、いずれもインクの吐出方向が僅かに往路方向(矢印X1方向)に傾いており、それらから吐出されるインクの主滴と副滴は、図15(b),(c)のように着弾する。すなわち、往路方向の走査(往路走査)時は、図15(b)のように主滴D1と同じ位置に副滴D2が着弾し、一方、復路方向の走査(復路走査)時は、図15(c)のように、主滴D1から復路方向(矢印X2方向)にずれた位置に副滴D2が着弾する。
【0033】
図3は、インクジェット記録装置の制御系のブロック構成図である。
【0034】
本例の制御系は、ソフト系処理手段とハード系処理手段とに大別される。ソフト系処理手段は、メインバスライン1005にアクセスする画像入力部1003、画像信号処理部1004、および中央制御部CPU1000を含む。ハード系処理手段は、操作部1006、回復系制御回路1007、インクジェットヘッド温度制御回路1014、ヘッド駆動制御回路1015、キャリッジ駆動制御回路1016、および紙送り制御回路1017を含む。キャリッジ駆動制御回路1016は、キャリッジ106の主走査方向の駆動を制御し、紙送り制御回路1017は、記録媒体Pの副走査方向の搬送を制御する。
【0035】
CPU1000は、ROM1001とランダムメモリ(RAM)1002を有し、入力情報に応じた適正な記録条件に基づいて、記録ヘッド1013を駆動する。RAM1002内には、記録ヘッド102の回復処理を実行するためのプログラムが格納されている。必要に応じて、そのプログラムが実行されることにより、画像の記録に寄与しないインクを吐出(予備吐出)させるための条件等が回復系制御回路1007、記録ヘッド102、保温ヒータ1013等に与えられる。回復系モータ1008は、クリーニングブレード1009、キャップ1010、および吸引ポンプ1011を駆動する。クリーニングブレード1009は、記録ヘッド102における吐出口の形成面(吐出口形成面)をクリーニングする。キャップ1010は、その吐出口形成面をキャッピングし、吸引ポンプ1011は、記録ヘッド102からキャップ1010内に排出されたインクを吸引排出する。ヘッド駆動制御回路1015は、記録ヘッド102における吐出エネルギー発生手段(本例の場合は、電気熱変換体(ヒータ))を駆動することにより、記録動作および予備吐出のためのインクを記録ヘッド102から吐出させる。
【0036】
保温ヒータ1013は、電気熱変換体が設けられている記録ヘッド102の基板に備えられており、記録ヘッド102内のインク温度を所望設定温度に調整する。サーミスタ1012は、同様に記録ヘッド102の基板に設けられていて、記録ヘッド内部の実質的なインク温度を測定する。これらの保温ヒータ1013およびサーミスタ1012は、記録ヘッド102の周囲近傍等、記録ヘッド102の外部に設けてもよい。
【0037】
図4は、画像データの量子化レベル(階調レベル)と、図2の記録ヘッド102によるドットの形成パターン(ドットパターン)と、の関係の説明図である。Lは、大インク吐出口1101から吐出された大インク滴によって形成される大ドットであり、Sは、小インク吐出口1102から吐出された小インク滴によって形成される小ドットである。
【0038】
本例の場合、600dpi×600dpiの解像度の単位画素は、0〜2の量子化レベル(階調レベル)により指定された3段階を表現する。つまり、画素領域内に2×1のマトリクス状のエリアを設定し、これらのエリアに、体積の異なる2種類のインク滴を着弾させて、大ドットLと小ドットSを形成する。これにより、画素領域内に全くドットを形成しないドット無しパターン(量子化レベル0)を含む3種類のドットパターンを用いて、量子化レベル0〜2によって指定された3段階を表現することができる。
【0039】
量子化レベル0は、画素領域内に全くドットが形成されないドット無しのパターンに対応する。また、量子化レベル1は、画素領域内の1つのエリアに、5plの小インク滴によって1個の小ドットSを形成するパターンに対応する。量子化レベル2は、52plの液滴によって形成する1個の小ドットSと、10plの液滴によって形成する1個の大ドットLと、を組み合わせたパターンに対応する。それぞれの階調レベルに応じて600×600dpiの画素領域に付与されるインク量(体積)は、量子化レベル0では0pl、量子化レベル1では5pl、量子化レベル2では15plとなる。
【0040】
(第1の記録モード)
図5および図6は、奇数回の双方向の記録走査によって所定の記録領域(第1の所定領域)の記録を完成させる記録モード(以下、「第1の記録モード」という)において、記録データを間引くために用いる間引きパターンの説明図である。本例の第1の記録モードは、3回の双方向の記録走査によって所定の記録領域の記録を完成させる記録モードである。図5の間引きパターンは、小ドットSを形成するための記録データを間引くものであり、図6の間引きパターンは、大ドットLを形成するための記録データを間引くものである。
【0041】
図5(a),(b),(c)は、それぞれ第1,第2,および第3走査目に記録する記録データを間引くための間引きパターン(以下、「小ドット用間引きパターン」ともいう)である。この小ドット用間引きパターン(小インク滴用の第1の間引きパターン)は、ドット密度(記録デューティ)が100%の記録データに対しては、それぞれの走査におけるドット密度が1/3ずつとなるように間引く。すなわち、この小ドット用間引きパターンは相互に補完関係にあり、それぞれの第1,第2,および第3走査における記録率(小ドットSの形成率)を1/3ずつとする。図6(a),(b),(c)は、それぞれ第1,第2,および第3走査目に記録する記録データを間引くための間引きパターン(以下、「大ドット用間引きパターン」ともいう)である。この大ドット用間引きパターン(大インク滴用の第1の間引きパターン)は、第2ドット密度(記録デューティ)が100%の記録データに対して、第1,第2,および第3走査におけるドット密度が1/4,1/2,1/4となるように間引く。すなわち、この大ドット用間引きパターンは相互に補完関係にあり、それぞれの第1,第2,および第3走査における記録率(大ドットの形成率)を1/4,1/2,1/4とする。
【0042】
図7は、本例の第1の記録モードによる記録動作を説明するための図である。
【0043】
まず、給紙方向上流側のノズル番号n1からn4までの4つの大インク吐出口1101と、給紙方向上流側のノズル番号n1からn4までの4つの小インク吐出口1102と、を用いて記録できるように、記録媒体Pを副走査方向(Y方向)に搬送する。その搬送が終了した後、往路方向(矢印X1方向)の1走査目において、記録媒体Pの記録領域Aに対して、n1からn4の大インク吐出口1101と、n1からn4の小インク吐出口1102と、を用いて記録を行う。その際、n1からn4の小インク吐出口1102は、図5(a)の間引きパターンによって間引かれた記録データに基づいて、5(pl)の小インク滴を吐出する。一方、n1からn4の大インク吐出口1101は、図6(a)の間引きパターンによって間引かれた記録データに基づいて、10(pl)の大インク滴を吐出する。
【0044】
その後、ノズル番号n1からn8までの8つの大インク吐出口1101と、ノズル番号n1からn8までの8つの小インク吐出口1102を用いて記録できるように、記録媒体Pを副走査方向(Y方向)に搬送する。その搬送量は、600dpiで4ドット分に相当する量である。その搬送が終了した後、復路方向(矢印X2方向)の2走査目において、記録媒体Pの記録領域A,Bに対して記録を行う。
【0045】
記録領域Aに対しては、n5からn8の大インク吐出口1101と、n5からn8の小インク吐出口1102と、を用いて記録を行う。その際、n5からn8の小インク吐出口1102は、図5(b)の間引きパターンによって間引かれた記録データに基づいて、5(pl)の小インク滴を吐出する。一方、n5からn8の大インク吐出口1101は、図6(b)の間引きパターンによって間引かれた記録データに基づいて、10(pl)の大インク滴を吐出する。
【0046】
また記録領域Bに対しては、n1からn4の大インク吐出口1101と、n1からn4の小インク吐出口1102と、を用いて記録を行う。その際、n1からn4の小インク吐出口1102は、図5(a)の間引きパターンによって間引かれた記録データに基づいて、5(pl)の小インク滴を吐出する。一方、n1からn4の大インク吐出口1101は、図6(a)の間引きパターンによって間引かれた記録データに基づいて、10(pl)の大インク滴を吐出する。したがって、記録領域Bに関しては1走査目となる。
【0047】
その後、ノズル番号n1からn12の大インク吐出口1101と、ノズル番号n1からn12の小インク吐出口1102を用いて記録できるように、記録媒体Pを副走査方向(Y方向)に搬送する。その搬送量は、600dpiで4ドット分に相当する量である。その搬送が終了した後、往路方向(矢印X1方向)の3走査目において、記録媒体Pの記録領域A,B,Cに対して記録を行う。
【0048】
記録領域Aに対しては、n9からn12の大インク吐出口1101と、n9からn12の小インク吐出口1102と、を用いて記録を行う。その際、n9からn12の小インク吐出口1102は、図5(c)の間引きパターンによって間引かれた記録データに基づいて、5(pl)の小インク滴を吐出する。一方、n9からn12の大インク吐出口1101は、図6(c)の間引きパターンによって間引かれた記録データに基づいて、10(pl)の大インク滴を吐出する。この3走査目において、記録領域Aの記録画像が完成する。
【0049】
また記録領域Bに対しては、n5からn8の大インク吐出口1101と、n5からn8の小インク吐出口1102と、を用いて記録を行う。その際、n5からn8の小インク吐出口1102は、図5(b)の間引きパターンによって間引かれた記録データに基づいて、5(pl)の小インク滴を吐出する。一方、n5からn8の大インク吐出口1101は、図6(b)の間引きパターンによって間引かれた記録データに基づいて、10(pl)の大インク滴を吐出する。したがって、記録領域Bに関しては2走査目となる。
【0050】
また記録領域Cに対しては、n1からn4の大インク吐出口1101と、n1からn4の小インク吐出口1102と、を用いて記録を行う。その際、n1からn4の小インク吐出口1102は、図5(a)の間引きパターンによって間引かれた記録データに基づいて、5(pl)小インク滴を吐出する。一方、n1からn4の大インク吐出口1101は、図6(a)の間引きパターンによって間引かれた記録データに基づいて、10(pl)の大インク滴を吐出する。したがって、記録領域Cに関しては1走査目となる。
【0051】
その後、同様に、記録媒体Pの搬送動作と記録走査とを交互に繰り返すことにより、記録媒体P上に順次画像を完成させていく。
【0052】
図8および図9は、本実施形態の第1の記録モードによる記録画像の観察結果の説明図である。図8は、記録画像におけるスジ状の画像欠陥の程度の評価結果、図9は、記録画像における濃度ムラの程度の評価結果である。本実施形態および比較例1,2において、スジ状の画像欠陥や濃度ムラによる画質の程度が悪い結果を×、やや悪い結果を△、問題なしを○として主観評価した。これらの評価の結果、本実施形態の場合には問題がなかった。
【0053】
比較例1においては、大インク吐出口1101の記録データの間引きに用いる間引きパターンとして、本実施形態において用いた図6(a),(b),(c)の間引きパターンの代わりに、図5(a),(b),(c)の間引きパターンを用いた。つまり、大インク吐出口1101および小インク吐出口1102の記録データを間引くために、いずれにおいても図5(a),(b),(c)の間引きパターンを用いた。
【0054】
一方、比較例2においては、小インク吐出口1102の記録データの間引きに用いる間引きパターンとして、本実施形態において用いた図5(a),(b),(c)の間引きパターンの代わりに、図6(a),(b),(c)の間引きパターンを用いた。つまり、大インク吐出口1101および小インク吐出口1102の記録データを間引くために、いずれにおいても図6(a),(b),(c)の間引きパターンを用いた。
【0055】
図8の評価結果から、本実施形態および比較例1においては、どの階調においてもスジ状の画像欠陥が発生していないことが分かる。しかし比較例2は、量子化レベル1付近、つまり5(pl)の小インク滴による画像デューティが100%付近の階調において、スジ状の画像欠陥が発生した。比較例2の場合は、5(pl)の小インク滴を使用する低階調から中階調までの間において、最大の記録率が1/2の図6の間引きパターンを用いる。前述したように、小インク滴は気流の影響を受けやすく(図13および図14参照)、特に、その記録率が高くなるにつれて端よれの現象が発生しやすい。そのため比較例2においては、小インク滴を使用する低階調から中階調までの間において、端よれによってスジ状の画像欠陥が発生した。一方、本実施形態および比較例1の場合は、小インク滴に対して、最大の記録率が1/3までの間引きパターン、つまり図5の間引きパターンを用いているために、スジ状の画像欠陥は発生しなかった。
【0056】
中階調から高階調までの間においては、5(pl)の小インク滴に加えて、10(pl)の大インク滴が用いられる。このような中階調から高階調までの間において、本実施形態の場合は、10(pl)の大インク滴に対して最大の記録率が1/2の間引きパターン、つまり図6の間引きパターンを用いる。インク滴による最大の記録率が1/2と大きくても、そのインク滴が大インク滴であるため、スジ状の画像欠陥を生じる端よれは発生しにくい。また、記録画像の高階調部は、インク滴によって埋め尽くされるため、スジ状の画像欠陥は目立たない。
【0057】
図9の評価結果から、本実施形態および比較例2は、どの階調においても濃度ムラが発生していないことが分かる。しかし比較例1は、量子化レベルが2付近、つまり大インク滴による画像デューティが100%付近の階調において、濃度ムラが多く発生した。中階調から高階調までの間においては、5(pl)の小インク滴に加えて、10(pl)の大インク滴が用いられる。
【0058】
比較例1の場合は、10(pl)の大インク滴に対しても図5の間引きパターンを用いる。前述したように、往路走査と復路走査においてインク滴の着弾面積に差が生じた場合には、濃度ムラが発生しやすい(図15参照)。すなわち、往路走査によって記録される比率が高い第1領域と、復路走査によって記録される比率が高い第2領域と、の間において、インク滴の着弾面積に大きな差が生じた場合には、濃度ムラが発生しやすい。比較例1においては、そのような着弾面積の差が大きくなりやすい10(pl)の大インク滴に対して、ドット密度(記録デューティ)を1/3ずつに間引く図5の間引きパターンを用いる。そのため、図7の記録領域AおよびCのそれぞれの記録を完成させる計3回の記録走査において、全ての往路走査による合計の記録率(以下、「全往路走査による記録率」ともいう)は、2/3(=1/3+1/3)となる。一方、全ての復路走査による合計の記録率(以下、「全復路走査による記録率」ともいう)は、1/3となる。それらの記録率の間には、1/3の差が生じる。また、図7の記録領域BおよびDのそれぞれにおいて、全往路走査による記録率1/3と、全復路走査による記録率2/3(=1/3+1/3)と、の間も1/3の差が生じる。つまり、記録領域A,Cは、往路走査によって記録される比率が1/3高い第1領域となり、逆に、記録領域B,Dは、復路走査によって記録される比率が1/3高い第1領域となる。比較例1の場合には、このような第1領域と第2領域とが交互に現れるため、濃度ムラが発生した。
【0059】
本実施形態の場合は、大インク滴に対して、図6のように間引きパターンを用いることにより、全往路走査による記録率と、全復路走査による記録率と、の差が0となる。すなわち、図7の記録領域AおよびCにおいては、全往路走査による記録率1/2(=1/4+1/4)と、全復路走査による記録率1/2と、の間の差は0となる。また、図7の記録領域BおよびDのそれぞれにおいては、全往路走査による記録率1/2と、全復路走査による記録率1/2(=1/4+1/4)と、の間の差も0となる。このように、記録領域A,B,C,Dは、いずれも全往路走査による記録率と、全復路走査による記録率と、の差が0となり、この結果、濃度ムラが発生しない。
【0060】
一方、小インク滴に対して、図5のような間引きパターンを用いるため、全往路走査による記録率と、全復路走査による記録率と、の差は1/3となり、第1領域と第2領域との間において、インク滴の着弾面積に差が生じる。しかし、小インク滴の場合、そのような着弾面積の差は小さく、濃度ムラは発生し難い。
【0061】
このように本実施形態は、小インク滴に対しては、図5のように、それぞれの記録走査による記録率を等しく(1/3ずつ)する間引きパターンを用いる。一方、大インク滴に対しては、図6のように、全往路走査による記録率と、全復路走査による記録率と、の差を0とする間引きパターンを用いる。全往路走査による記録率と、全復路走査による記録率と、の差に関しては、前述したように、図5の間引きパターンの方が図6の間引きパターンよりも大きい。
【0062】
また、奇数回の記録走査おいては、往路方向と復路方向の記録走査の内、いずれか一方の記録走査の回数が他方の記録走査の回数よりも多くなる。本例の場合、図6の間引きパターン(大インク滴用の第1の間引きパターン)は、一方の記録走査の1回当たりにおける記録率(1/2)を他方の記録走査の1回当たりにおける記録率(1/4)よりも高くするように、記録データを間引く。また本例の場合、図5の間引きパターン(小インク滴用の第1の間引きパターン)は、往路方向の記録走査の1回当たりにおける記録率(1/3)と、復路方向の記録走査の1回当たりにおける記録率(1/3)と、を等しくするように、記録データを間引く。
【0063】
これらの結果、本実施形態は、端よれの現象に起因するスジ状の画像欠陥による画像劣化と、全往路走査と全復路走査による記録率の差に起因する濃度ムラによる画像劣化と、の両方を抑制して、高画質の画像を高速に記録することが可能となる。
【0064】
(第2の記録モード)
図10は、偶数回の双方向の記録走査によって所定の記録領域(第2の所定領域)の記録を完成させる記録モード(以下、「第2の記録モード」という)において、記録データを間引くために用いる間引きパターンの説明図である。本例の第2の記録モードは、4回の双方向の記録走査によって所定領域の記録を完成させる記録モードである。図10(a),(b),(c),(d)は、第1,第2,第3,および第4走査目に記録する記録データを間引くための間引きパターンである。この間引きパターンは、ドット密度(記録デューティ)が100%の記録データに対しては、それぞれの走査におけるドット密度が1/4ずつとなるように間引く。すなわち、これらの間引きパターンは相互に補完関係にある。本例の場合、この図10の間引きパターンは、小インク滴用の間引きパターン(小インク滴用の第2の間引きパターン)であり、かつ大インク滴用の間引きパターン(大インク滴用の第2の間引きパターン)でもある。
【0065】
図11は、本例の第2の記録モードによる記録動作を説明するための図である。
【0066】
まず、給紙方向上流側のノズル番号n1からn3までの3つの大インク吐出口1101と、給紙方向上流側のノズル番号n1からn3までの3つの小インク吐出口1102と、を用いて記録できるように、記録媒体Pを副走査方向(Y方向)に搬送する。その搬送が終了した後、往路方向(矢印X1方向)の1走査目において、記録媒体Pの画像領域Aに対して、n1からn3の大インク吐出口1101と、n1から3の小インク吐出口1102と、を用いて記録を行う。その際、n1からn3の小インク吐出口1102および大インク吐出口1101は、それぞれ、図10(a)の間引きパターンによって間引かれた記録データに基づいて、5(pl)および10(pl)のインク滴を吐出する。
【0067】
その後、ノズル番号n1からn6までの6つの大インク吐出口1101と、ノズル番号n1からn6までの6つの小インク吐出口1102と、を用いて記録できるように、記録媒体Pを副走査方向(Y方向)に搬送する。その搬送量は、600dpiで3ドット分に相当する量である。その搬送が終了した後、復路方向(矢印X2方向)の2走査目において、記録媒体Pの記録領域A,Bに対して記録を行う。
【0068】
記録領域Aに対しては、n4からn6までの小インク吐出口1102および大インク吐出口1101を用いて記録を行う。その際、n4からn6までの小インク吐出口1102および大インク吐出口1101は、それぞれ、図10(b)の間引きパターンによって間引かれた記録データに基づいて、5(pl)および10(pl)のインク滴を吐出する。
【0069】
また画像領域Bに対しては、n1からn3までの小インク吐出口1102および大インク吐出口1101を用いて記録を行う。その際、n1からn3までの小インク吐出口1102および大インク吐出口1101は、それぞれ、図10(a)の間引きパターンによって間引かれた記録データに基づいて、5(pl)および10(pl)のインク滴を吐出する。したがって、記録領域Bに関しては1走査目となる。
【0070】
その後、ノズル番号n1からn9までの9つの大インク吐出口1101と、ノズル番号n1からn9までの9つの小インク吐出口1102と、を用いて記録できるように、記録媒体Pを副走査方向(Y方向)に搬送する。その搬送量は、600dpiで3ドット分に相当する量である。その搬送が終了した後、往路方向(矢印X1方向)の3走査目において、記録媒体Pの記録領域A,B,Cに対して記録を行う。
【0071】
記録領域Aに対しては、n7からn9までの小インク吐出口1102および大インク吐出口1101を用いて記録を行う。その際、n7からn9までの小インク吐出口1102および大インク吐出口1101は、それぞれ、図10(c)の間引きパターンによって間引かれた記録データに基づいて、5(pl)および10(pl)のインク滴を吐出する。
【0072】
また画像領域Bに対しては、n4からn6までの小インク吐出口1102および大インク吐出口1101を用いて記録を行う。その際、n4からn6までの小インク吐出口1102および大インク吐出口1101は、それぞれ、図10(b)の間引きパターンによって間引かれた記録データに基づいて、5(pl)および10(pl)のインク滴を吐出する。したがって、記録領域Bに関しては2走査目となる。
【0073】
また画像領域Cに対しては、n1からn3までの小インク吐出口1102および大インク吐出口1101を用いて記録を行う。その際、n1からn3までの小インク吐出口1102および大インク吐出口1101は、それぞれ、図10(a)の間引きパターンによって間引かれた記録データに基づいて、5(pl)および10(pl)のインク滴を吐出する。したがって、記録領域Cに関しては1走査目となる。
【0074】
その後、ノズル番号n1からn12の大インク吐出口1101と、ノズル番号n1からn12の小インク吐出口1102と、を用いて記録できるように、記録媒体Pを副走査方向(Y方向)に搬送する。その搬送量は、600dpiで3ドット分に相当する量である。その搬送が終了した後、復路方向(矢印X2方向)の4走査目において、記録媒体Pの記録領域A,B,C,Dに対して記録を行う。
【0075】
記録領域Aに対しては、n10からn12までの小インク吐出口1102および大インク吐出口1101を用いて記録を行う。その際、n10からn12までの小インク吐出口1102および大インク吐出口1101は、それぞれ、図10(d)の間引きパターンによって間引かれた記録データに基づいて、5(pl)および10(pl)のインク滴を吐出する。
【0076】
また画像領域Bに対しては、n7からn9までの小インク吐出口1102および大インク吐出口1101を用いて記録を行う。その際、n7からn9までの小インク吐出口1102および大インク吐出口1101は、それぞれ、図10(c)の間引きパターンによって間引かれた記録データに基づいて、5(pl)および10(pl)のインク滴を吐出する。したがって、記録領域Bに関しては3走査目となる。
【0077】
また画像領域Cに対しては、n4からn6までの小インク吐出口1102および大インク吐出口1101を用いて記録を行う。その際、n4からn6までの小インク吐出口1102および大インク吐出口1101は、それぞれ、図10(b)の間引きパターンによって間引かれた記録データに基づいて、5(pl)および10(pl)のインク滴を吐出する。したがって、記録領域Cに関しては2走査目となる。
【0078】
また画像領域Dに対しては、n1からn3までの小インク吐出口1102および大インク吐出口1101を用いて記録を行う。その際、n1からn3までの小インク吐出口1102および大インク吐出口1101は、それぞれ、図10(a)の間引きパターンによって間引かれた記録データに基づいて、5(pl)および10(pl)のインク滴を吐出する。したがって、記録領域Dに関しては1走査目となる。
【0079】
その後、同様に、記録媒体Pの搬送と記録走査とを交互に繰り返すことにより、記録媒体P上に順次画像を完成させていく。
【0080】
このように、第2の記録モードにおいては、大インク吐出口1101および小インク吐出口1102の記録データを間引くために、いずれにおいてもドット密度(記録デューティ)を均等に間引く間引きパターンを用いた。本例の場合は、4回の偶数回の双方向の記録走査によって所定の記録領域の記録を完成させる第2の記録モードにおいて、ドット密度を1/4ずつ間引くために、図10の間引きパターンを用いた。
【0081】
大インク滴に対して、このような間引きパターンを用いて、全ての記録走査における記録率を同じ1/4とすることにより、端よれによるスジ状の画像欠陥の発生を抑えることができる。さらに、全往路走査と全復路走査による記録率の差を0とすることにより、それらの記録率の差に起因する濃度ムラの発生を防止することができる。
【0082】
同様に、小インク滴に対しても、このような間引きパターンを用いて、全ての記録走査における記録率を同じ1/4とすることにより、端よれによるスジ状の画像欠陥の発生を抑えることができる。さらに、全往路走査と全復路走査による記録率の差を0とすることにより、それらの記録率の差に起因する濃度ムラの発生を防止することができる。
【0083】
本例の場合、図10の間引きパターンは、小インク滴用の第2の間引きパターンと、大インク滴用の第2の間引きパターンと、して兼用される。その間引きパターンは、往路方向の記録走査の1回当たりにおける記録率(1/4)と、復路方向の記録走査の1回当たりにおける記録率(1/4)と、を等しくするように、記録データを間引く。
【0084】
以上のように本実施形態は、奇数回の双方向の記録走査によって所定領域の画像を完成させる記録方式においては、第1の記録モードを用い、一方、偶数回の双方向の記録走査によって所定領域の画像を完成させる記録方式においては、第2の記録モードを用いる。これにより、それぞれの記録方式において、端よれの現象に起因するスジ状の画像欠陥による画像劣化と、全往路走査と全復路走査による記録率の差に起因する濃度ムラによる画像劣化と、の両方を抑制して、高画質の画像を高速に記録することが可能となる。
【0085】
(第2の実施形態)
前述した第1の実施形態においては、シアンインク用の吐出口が大インク吐出口と小インク吐出口を含む構成となっている。本実施形態においては、シアンインク用の吐出口と同様に、マゼンタインク用の吐出口も大インク吐出口と小インク吐出口を含む構成となっている。また本実施形態における記録ヘッドは、往路走査時と復路走査時においてインク滴が着弾したときの着弾面積は等しく、図15(b),(c)のような全往路走査と全復路走査による記録率の差は生じない。
【0086】
本実施形態において、画像データの量子化レベル(階調レベル)と、シアンインクおよびマゼンタインクのドットの形成パターン(ドットパターン)と、の関係は、前述した実施形態における図4と同様である。
【0087】
(第1の記録モード)
本実施形態における第1の記録モードは、シアンインク用とマゼンタインク用の記録データのそれぞれに対して、前述した第1の実施形態と同様に、図5および図6の間引きパターンを用いる。つまり、シアンインクとマゼンタインクの小ドットSを形成するための記録データは、図5の間引きパターンを用いて間引き、それらのインクの大ドットLを形成するための記録データは、図6の間引きパターンを用いて間引く。そして、第1の実施形態と同様に、図7のように3回の双方向の記録走査によって所定の領域の記録を完成させる。
【0088】
図12は、シアンインクとマゼンタインクを重ねて記録されるブルー色について、各階調における色ムラの程度を評価した結果の説明図である。本実施形態における第1の記録モードと、後述する比較例1,2と、における色ムラによる画質の程度を主観評価し、悪い評価結果を×、やや悪い評価結果を△、問題なしを○とした。これらの評価の結果、本実施形態の場合には、前述した第1の実施形態と同様に問題がなかった。
【0089】
比較例1においては、シアンインクおよびマゼンタインクのドットSと大ドットLを形成するために、5(pl)と10(pl)のインク滴を吐出させる記録データのいずれに対しても、図5の間引きパターンを用いた。一方、比較例1においては、シアンインクおよびマゼンタインクのドットSと大ドットLを形成するために、5(pl)と10(pl)のインク滴を吐出させる記録データのいずれに対しても、図6の間引きパターンを用いた。
【0090】
図12の評価結果から、本実施形態および比較例2においては、どの階調においても色ムラが発生していないことが分かる。一方、比較例1においては、下記のような理由により、量子化レベルが2付近、つまり10(pl)の大インク滴による画像デューティが100%付近の階調において、色ムラが発生して画質が悪化した。
【0091】
往路走査においては、シアンインクを吐出した後にマゼンタインクが吐出され、復路走査においては、逆に、マゼンタインクを吐出した後にシアンインクが吐出されることになる。このようなシアンインクとマゼンタインクの吐出順序の違いにより、特に、インク滴の体積が大きい場合に、往路走査と復路走査において色相に大きな差が生じるおそれがある。図5の間引きパターンを用いた場合、前述したように、全往路走査の記録率と全復路走査の記録率の差が1/3となる。比較例1においては、10(pl)の大インク滴に関しても図5の間引きパターンを用いる。そのため比較例1の場合には、特に、中階調から高階調において、つまり5(pl)の小インク滴に加えて、10(pl)の大インク滴が用いられる階調において、色ムラが発生して画質が悪化した。
【0092】
このように、本実施形態の場合も前述した第1の実施形態と同様に、第1の記録モードにおいては、大インク滴に対して、図6のように、全往路走査と全復路走査による記録率の差を0とする間引きパターンを用いる。一方、小インク滴に対しては、図5のように、それぞれの記録走査による記録率を等しく(1/3ずつ)する間引きパターンを用いる。これらの結果、端よれの現象に起因するスジ状の画像欠陥による画像劣化と、往路走査と復路走査による記録率の差に起因する濃度ムラによる画像劣化と、の両方を抑制して、高画質の画像を高速に記録することが可能となる。
【0093】
(第2の記録モード)
本実施形態の第2の記録モードによる記録動作は、シアンインク用とマゼンタインク用の記録データのそれぞれに対して、前述した第1の実施形態と同様に、図10の間引きパターンを用いる。そして、第1の実施形態と同様に、図11のように4回の双方向の記録走査によって所定の領域の記録を完成させる。このように、大インク滴に対して、このような間引きパターンを用いて、全ての記録走査における記録率を同じ1/4とすることにより、端よれによるスジ状の画像欠陥の発生を抑えることができる。
【0094】
以上のように本実施形態では、シアンインク用とマゼンタインク用の記録データに基づいて、奇数回および複数回の双方向の記録走査によって画像を完成させる記録方式において、前述した第1の実施形態の第1および第2の記録モードを用いる。これにより、それぞれの記録方式において、端よれの現象に起因するスジ状の画像欠陥による画像劣化と、全往路走査と全復路走査による記録率の差に起因する濃度ムラによる画像劣化と、の両方を抑制して、高画質の画像を高速に記録することが可能となる。
【0095】
(他の実施形態)
前述した実施形態の第1の記録モードにおいて、大インク滴に対応する記録データの間引きパターンは、図6(a),(b),(c)のように記録率を1/4,1/2,1/4とするパターンとした。しかし、大インク滴に対応する記録データの間引きパターンは、本例のみに特定されず、例えば、記録率を3/10,4/10,3/10とするパターンとしてもよい。また、前述した実施形態の第1の記録モードにおいて、小インク滴に対応する記録データの間引きパターンは、図5(a),(b),(c)のように記録率を1/3,1/3,1/3とするパターンとした。しかし、小インク滴に対応する記録データの間引きパターンは、本例のみに特定されず、例えば、記録率を3/10、4/10、3/10とするパターンとしてもよい。つまり、大インク滴に対応する記録データの間引きパターンによる全往路走査と全復路走査の記録率の差は、小インク滴に対応する記録データの間引きパターンによる全往路走査と全復路走査の記録率の差よりも小さければよい。このような記録率の差の関係を満たすことにより、前述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0096】
また間引きパターンは、前述した実施形態のように固定されたパターンに限定されるものではなく、間引きパターンのサイズを大きくして、相互に補完関係のあるランダムな間引きパターンとしてもよい。
【0097】
また、階調の表現方法は、図4のように量子化レベルとドットパターンとの関係によって表現する方法にみに限定されない。例えば、大、中、小の3種類の異なる体積のインク滴を用いて、階調を表現してもよい。この場合には、大と中、大と小、中と小の3つの体積の組み合わせの内、少なくとも1組において、記録率の関係を前述した実施形態のように設定することにより、スジ状の画像欠陥による画像劣化と、濃度ムラによる画像劣化と、を抑制することができる。さらに、2組および3組についても同様に記録率の関係を設定することが望ましく、そのような記録率の関係を設定する組数が多くなるにつれて、スジ状の画像欠陥および濃度ムラによる画像劣化の防止効果が増大させることができる。このように、少なくとも2種類の異なる体積のインク滴を用いて階調表現することにより、前述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0098】
また、前述した実施形態においては、シアンとマゼンタのインクを用いた。しかし、これには限定されず、イエローやブラックなどの他の色のインクを用いてもよく、また同系色で濃度の異なる色のインクを用いても同様の効果を得ることができる。
【0099】
また、第2の実施形態においては2色のインクを用いたがこれらに限定されるものではなく、3色以上のインクを用いても同様の効果を得ることができる。
【0100】
また本発明は、それぞれのインク色による階調表現方法が同じ場合に限定されることは無い。大と小の異なる2種類の体積で吐出されるインクの色、大のみの1種類の体積で吐出されるインクの色、大、中、小の異なる3種類の体積で吐出されるインクの色、大と中の異なる2種類の体積で吐出されるインクの色のように、インク色によって階調表現方法が異なる場合についても、前述した実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、ドットの粒状感が目立ちやすいインク色の明度が低いシアン色やマゼンタ色については、前述した実施形態で用いた図4の小ドットと大ドットの2種類のドットを用いた階調表現を用い、ドットの粒状感が目立ち難いインク色の明度が高いイエロー色については、大ドットのみを用いた1種類のドットによる階調表現としても良い。この時のイエロー色の大ドットに用いる間引きパターンは、シアン色やマゼンタ色の大ドットに用いる間引きパターンと同じにしてもよく、前述した実施形態と同様の効果を得ることができる。つまり、イエロー色の大ドットと、シアン色やマゼンタ色の小ドットと、の関係が、上記実施形態で記載した大ドットと小ドットとの関係を満たしていれば、前述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるインクジェット記録装置の概略斜視図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置における記録ヘッドのノズル部分の説明図である。
【図3】図1のインクジェット記録装置の制御系のブロック構成図である。
【図4】画像データの量子化レベルと、ドットパターンと、の関係の説明図である。
【図5】(a),(b),(c)は、本発明の第1の実施形態において、小さな体積のインク滴に対応する記録データを間引くための間引きパターンの説明図である。
【図6】(a),(b),(c)は、本発明の第1の実施形態において、大きな体積のインク滴に対応する記録データを間引くための間引きパターンの説明図である。
【図7】本発明の第1の実施形態における第1の記録モードによる記録方法の説明図である。
【図8】本発明の第1の実施形態におけるスジ状の画像欠陥の程度を主観評価した結果の説明図である。
【図9】本発明の第1の実施形態における濃度ムラの程度を主観評価した結果の説明図である。
【図10】(a),(b),(c),(d)は、本発明の第1の実施形態において、第2の記録モード時に記録データを間引くための間引きパターンの説明図である。
【図11】本発明の第1の実施形態における第2の記録モードによる記録方法の説明図である。
【図12】本発明の第2の実施形態における色ムラの程度を主観評価した結果の説明図である。
【図13】端部よれ現象によるスジ状の画像欠陥の説明図である。
【図14】端部よれ現象の説明図である。
【図15】(a)は、従来の記録ヘッドの概略構成図、(b)は、(a)の記録ヘッドによる往路走査時のインク滴の着弾面積の説明図、(a)の記録ヘッドによる復路走査時のインク滴の着弾面積の説明図である。
【図16】従来の記録ヘッドの他の例の概略構成図である。
【符号の説明】
【0102】
101 インクカートリッジ
102 記録ヘッド
106 キャリッジ
1000 中央制御部(CPU)
1001 ROM
1002 RAM
1101 大インク吐出口
1102 小インク吐出口
X1 往路走査方向
X2 復路走査方向
P 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドを主走査方向に沿って往路方向および復路方向に移動させつつ、前記記録ヘッドから体積が異なる大小のインク滴を吐出させる双方向の記録走査と、前記主走査方向と交差する副走査方向に記録媒体を搬送する搬送動作と、を繰り返すことにより、前記記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置において、
前記記録媒体上の第1の所定領域の画像を奇数回の双方向の記録走査によって完成させる第1の記録モードと、前記記録媒体上の第2の所定領域の画像を偶数回の双方向の記録走査によって完成させる第2の記録モードと、を備え、
前記第1の記録モードは、前記小インク滴を吐出するための記録データを間引く小インク滴用の第1の間引きパターンと、前記大インク滴を吐出するための記録データを間引く大インク滴用の第1の間引きパターンと、を用い、
前記第2の記録モードは、前記小インク滴を吐出するための記録データを間引く小インク滴用の第2の間引きパターンと、前記大インク滴を吐出するための記録データを間引く大インク滴用の第2の間引きパターンと、を用い、
前記小インク滴用の第1の間引きパターンと前記大インク滴用の第1の間引きパターンは、前記奇数回の記録走査おける全ての前記往路方向の記録走査による合計の記録率と、全ての前記復路方向の記録走査による合計の記録率と、の差を異ならせるように、前記記録データを間引き、
前記小インク滴用の第2の間引きパターンと前記大インク滴用の第2の間引きパターンは、前記偶数回の記録走査おける全ての前記往路方向の記録走査による合計の記録率と、全ての前記復路方向の記録走査による合計の記録率と、の差を等しくするように、前記記録データを間引く
ことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記小インク滴用の第1の間引きパターンは、前記大インク滴用の第1の間引きパターンよりも前記差を大きくするように、前記記録データを間引くことを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記奇数回の記録走査おいて、前記往路方向と前記復路方向の記録走査の内、いずれか一方の記録走査の回数が他方の記録走査の回数よりも多く、
前記大インク滴用の第1の間引きパターンは、前記一方の記録走査の1回当たりにおける記録率を前記他方の記録走査の1回当たりにおける記録率よりも高くするように、前記記録データを間引く
ことを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記小インク滴用の第1の間引きパターンは、前記往路方向の記録走査の1回当たりにおける記録率と、前記復路方向の記録走査の1回当たりにおける記録率と、を等しくするように、前記記録データを間引くことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記小インク滴用の第2の間引きパターンは、前記往路方向の記録走査の1回当たりにおける記録率と、前記復路方向の記録走査の1回当たりにおける記録率と、を等しくするように、前記記録データを間引くことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記大インク滴用の第2の間引きパターンは、前記往路方向の記録走査の1回当たりにおける記録率と、前記復路方向の記録走査の1回当たりにおける記録率と、を等しくするように、前記記録データを間引くことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記記録ヘッドは、少なくとも2つの異なるインクのそれぞれについて、体積が異なる大小のインク滴を吐出可能であり、
前記第1の記録モードは、前記異なるインクのそれぞれについて、前記小インク滴用の第1の間引きパターンを用いて、前記小インク滴を吐出するための記録データを間引き、前記大インク滴用の第1の間引きパターンを用いて、前記大インク滴を吐出するための記録データを間引き、
前記第2の記録モードは、前記異なるインクのそれぞれについて、前記小インク滴用の第2の間引きパターンを用いて、前記小インク滴を吐出するための記録データを間引き、前記大インク滴用の第2の間引きパターンを用いて、前記大インク滴を吐出するための記録データを間引く
ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
記録ヘッドを主走査方向に沿って往路方向および復路方向に移動させつつ、前記記録ヘッドから体積が異なる大小のインク滴を吐出させる双方向の記録走査と、前記主走査方向と交差する副走査方向に記録媒体を搬送する搬送動作と、を繰り返すことにより、前記記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法において、
前記記録媒体上の第1の所定領域の画像を奇数回の双方向の記録走査によって完成させる第1の記録モードと、前記記録媒体上の第2の所定領域の画像を偶数回の双方向の記録走査によって完成させる第2の記録モードと、を用い、
前記第1の記録モードは、小インク滴用の第1の間引きパターンを用いて前記小インク滴を吐出するための記録データを間引き、大インク滴用の第1の間引きパターンを用いて前記大インク滴を吐出するための記録データを間引き、
前記第2の記録モードは、小インク滴用の第2の間引きパターンを用いて前記小インク滴を吐出するための記録データを間引き、大インク滴用の第2の間引きパターンを用いて前記大インク滴を吐出するための記録データを間引き、
前記小インク滴用の第1の間引きパターンと前記大インク滴用の第1の間引きパターンは、前記奇数回の記録走査おける全ての前記往路方向の記録走査による合計の記録率と、全ての前記復路方向の記録走査による合計の記録率と、の差を異ならせるように、前記記録データを間引き、
前記小インク滴用の第2の間引きパターンと前記大インク滴用の第2の間引きパターンは、前記偶数回の記録走査おける全ての前記往路方向の記録走査による合計の記録率と、全ての前記復路方向の記録走査による合計の記録率と、の差を等しくするように、前記記録データを間引く
ことを特徴とするインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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