説明

インク噴射装置及びその製造方法

【目的】 歩留まりが高く、大量生産性に優れるインク噴射装置及びその製造方法を提供すること。
【構成】 インクを噴射するインク室と、インク室の両側に設けられた空気室とが設けられたインク噴射装置1では、溝15a、15c、15eにおける、カバープレート3のマニホールド22直下付近に、樹脂100が形成されている。この樹脂100は、溝15a、15c、15eの長手方向全体には充填されていないが、溝15a、15c、15eの幅方向及び高さ方向全体には充填されている。この樹脂100により、マニホールド22に連通しない空気室が形成される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インク噴射装置及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】今日、これまでのインパクト方式の印字装置にとってかわり、その市場を大きく拡大しつつあるノンインパクト方式の印字装置のなかで、原理が最も単純で、かつ多階調化やカラー化が容易であるものとして、インクジェット方式の印字装置が上げられる。なかでも印字に使用するインク滴のみを噴射するドロップ・オン・デマンド型が、噴射効率の良さ、ランニングコストの安さなどから急速に普及している。
【0003】ドロップ・オン・デマンド型として特公昭53−12138号公報に開示されているカイザー型、あるいは特公昭61−59914号公報に開示されているサーマルジェット型がその代表的な方式としてある。このうち、前者は小型化が難しく、後者は高熱をインクに加えるためにインクの耐熱性に対する要求が必要とされ、それぞれに非常に困難な問題を抱えている。
【0004】以上のような欠陥を同時に解決する新たな方式として提案されたのが、特開昭63−247051号公報に開示されているせん断モード型である。
【0005】図9に示すように、上記せん断モード型のインク噴射装置600は、底壁601、天壁602及びその間のせん断モードアクチュエータ壁603からなる。そのアクチュエータ壁603は、底壁601に接着され、且つ矢印611方向に分極された下部壁607と、天壁602に接着され、且つ矢印609方向に分極された上部壁605とからなっている。アクチュエータ壁603は一対となってその間にインク流路613を形成し、且つ次の一対のアクチュエータ壁603の間には、インク流路613よりも狭い空間615を形成している。
【0006】各インク流路613の一端には、ノズル618を有するノズルプレート617が固着され、各アクチュエータ壁603の両側面には電極619、621が金属層として設けられている。各電極619、621はインクと絶縁するための絶縁層(図示せず)で覆われている。そして、空間615に面している電極619、621はアース623に接続され、インク流路613内に設けられている電極619、621は、アクチュエータ駆動回路を与えるシリコン・チップ625に接続されている。
【0007】次に、このインク噴射装置600の製造方法を説明する。まず、矢印611に分極された圧電セラミックス層を底壁601に接着し、矢印609に分極された圧電セラミックス層を天壁602に接着する。各圧電セラミックス層の厚みは、下部壁607、上部壁605の高さに等しい。次に、圧電セラミックス層に、平行な溝をダイヤモンドカッティング円板の回転などによって形成して、下部壁607、上部壁605を形成する。そして、真空蒸着によって下部壁607の側面に電極619を形成し、その電極619上に前記絶縁層を設ける。同様にして上部壁605の側面に電極621、前記絶縁層を設ける。
【0008】上部壁605の天頂部と下部壁607の天頂部とを接着してインク流路613と空間615とを形成する。次に、ノズル618が穿孔されているノズルプレート617を、ノズル618がインク流路613と対応するように、底壁601、天壁602、アクチュエータ壁603の一端に接着し、インク流路613と空間615との他端をシリコン・チップ625とアース623とに接続する。
【0009】そして、各インク流路613の電極619、621にシリコン・チップ625が電圧を印加することによって、各アクチュエータ壁603がインク流路613の容積を増加する方向に圧電厚みすべり変形して、所定時間後電圧印加が停止されてインク流路613の容積が増加状態から自然状態となってインク流路613内のインクに圧力が加えられ、インク滴がノズル618から噴射される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した構成のインク噴射装置600を示した特開昭63−247051号公報には、インク流路613のみにインクを充填し、空間615にインクを充填しないが、その具体的構成および方法が開示されていない。そこで、例えば、底壁601あるいは天壁602に、インク流路613に連通する貫通孔を各インク流路613に対応して設けて、インク流路613のみにインクを供給し、空間615にインクを供給しないようにすると、それら貫通孔が微小なために、その加工が難しく、歩留まりが悪い。また、加工に時間がかかり、大量生産性に劣るといった問題があった。
【0011】本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、非噴射チャンネルにインクが入らないようにすることができ、歩留まりが高く、大量生産性に優れるインク噴射装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために本発明の請求項1では、インクを噴射する噴射チャンネルと、前記噴射チャンネルの両側に設けられインクを噴射しない非噴射チャンネルとを有するインク噴射装置において、前記非噴射チャンネル内の一部あるいは全部に設けられた目止め部材を備えている。
【0013】請求項2では、前記目止め部材は、紫外線等の特定波長の光に対して硬化する光硬化性樹脂であり、その樹脂を前記噴射チャンネル及び前記非噴射チャンネルに注入し、非噴射チャンネルのみに選択的に露光することを特徴とする。
【0014】請求項3では、圧電材料で少なくとも一部が形成された隔壁によって隔てられた溝を有するアクチュエータプレートと、前記アクチュエータプレートの前記溝の開口部を塞ぐカバープレートとを有し、そのカバープレートには、光を透過する透過領域と、光を透過しない非透過領域とが設けられていることを特徴とする。
【0015】請求項4では、前記目止め部材は、導電性を有する導電性樹脂であることを特徴とする。
【0016】請求項5では、インクを噴射する噴射チャンネルと、前記噴射チャンネルの両側に設けられインクを噴射しない非噴射チャンネルとを有するインク噴射装置の製造方法において、前記噴射チャンネル及び前記非噴射チャンネルの一部あるいは全部に、紫外線等の特定波長の光に対して硬化する光硬化性樹脂を注入する第一工程と、前記非噴射チャンネルの前記光硬化性樹脂のみに選択的に露光する第二工程とからなる。
【0017】請求項6では、インクを噴射する噴射チャンネルと、前記噴射チャンネルの両側に設けられインクを噴射しない非噴射チャンネルと、前記噴射チャンネルにインクを供給するためのマニホールドとを有するインク噴射装置の製造方法において、前記非噴射チャンネルに連通する連通孔を有するプレートを前記非噴射チャンネルの一部に配置する第一工程と、前記プレートの前記連通孔から前記非噴射チャンネル内に目止め部材を注入する第二工程と、前記非噴射チャンネル内の前記目止め部材を硬化する第三工程とからなる。
【0018】請求項7では、前記目止め部材は、紫外線等の特定波長の光に対して硬化する光硬化性樹脂であり、前記第三ステップは、マニホールドから前記非噴射チャンネルに光を照射して、前記目止め部材を硬化することを特徴とする。
【0019】請求項8では、前記目止め部材は、所定の熱に対して硬化する熱硬化性樹脂であり、前記第三ステップは、所定の熱を与えて、前記目止め部材を硬化することを特徴とする。
【0020】
【作用】上記の構成を有する本発明の請求項1のインク噴射装置では、前記非噴射チャンネル内の全部あるいは一部に目止め部材が設けられて、非噴射チャンネル内にインクが供給されず、噴射チャンネルのみにインクが供給される。
【0021】請求項5のインク噴射装置の製造方法では、前記噴射チャンネル及び前記非噴射チャンネルの一部あるいは全部に光硬化性樹脂が注入され、前記非噴射チャンネルの前記光硬化性樹脂のみが選択的に露光されて、非噴射チャンネルに硬化した光硬化性樹脂が設けられる。これにより請求項1記載のインク噴射装置が製造される。
【0022】請求項6のインク噴射装置の製造方法では、前記非噴射チャンネルに連通する連通孔を有するプレートが前記非噴射チャンネルの一部に配置され、前記プレートの前記連通孔から前記非噴射チャンネル内に目止め部材が注入され、前記非噴射チャンネル内の前記目止め部材が硬化される。これにより請求項1記載のインク噴射装置が製造される。
【0023】
【実施例】以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照して説明する。
【0024】まず、インク噴射装置1の斜視図を示す図1R>1によって、本発明の第一実施例の構成を説明する。インク噴射装置1は、圧電セラミックスプレート2とカバープレート3とノズルプレート31とから構成されている。
【0025】圧電セラミックスプレート2は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料で形成され、矢印5方向に分極処理が施されている。そして、圧電セラミックスプレート2には、薄い円板状のダイヤモンドブレードを使用した切削加工などによって、複数の溝15が作製される。溝15は圧電セラミックスプレート2のほぼ全域で同じ深さの平行な溝であるが、端面17に近づくにつれて徐々に浅くなり、端面17付近では浅く平行な浅溝18となるように作製される。
【0026】この溝15の上半分の領域および浅溝18の内面には、アルミニウム、ニッケル、カーボンなどの導電材料からなる電極13、19が真空蒸着やスパッタリングなどによって形成される。この電極13、19の形成時には、溝15を隔てる側壁11の天頂部にも電極が形成されるため、側壁11の両側の電極を分離するために、側壁11の天頂部の電極がラッピングなどにより除去される。このようにして、溝15の内面にはその側面の上半分のみに電極13が形成され、浅溝18の内面にはその側面および底面全体に電極19が形成される。この電極19によって、溝15の両側の側壁11の表面に形成された電極13は電気的に接続されている。
【0027】そして溝15a、15c、15eにおける、後述するカバープレート3のマニホールド22直下付近に対応する位置は、目止め部材としての樹脂100が形成されており、この樹脂100は、溝15a、15c、15eの長手方向全体には充填されていないが、溝15a、15c、15eの幅方向及び高さ方向全体には充填されている。
【0028】また、研削加工または切削加工などによってマニホールド22が作製されたカバープレート3を、圧電セラミックスプレート2の溝15加工側に、エポキシ系の接着剤4(図2)によって接着する。このとき、マニホールド22と前記樹脂100との位置関係は以下に示す通りである。樹脂100における圧電セラミックスプレート2の端面16側の形成端は、マニホールド22のそれよりも端面16側に設けられて、マニホールド22のインクが、溝15a、15c、15eにおいて樹脂100よりも端面16側へ流れない構造になっている。また、樹脂100における圧電セラミックスプレート2の端面17側の形成端は、マニホールド22のそれよりも端面16側でも良いし、端面17側でも良い。
【0029】そして、溝15b、15dに対応した位置にノズル32が設けられたノズルプレート31を圧電セラミックスプレート2及びカバープレート3の一端面16に接着する。
【0030】このように、圧電セラミックスプレート2、カバープレート3、ノズルプレート31及び樹脂100により、マニホールド22と連通する噴射チャンネルとしてのインク室12b、12d(図2)及び樹脂100によってマニホールド22と連通しない非噴射チャンネルとしての空気室12a、12c、12e(図2)が形成されたインク噴射装置1が構成される。インク室12b、12dは、インクが充填され、空気室12a、12c、12eは空気が充填される。
【0031】次に、図2、図3によって、インク噴射装置1の動作を説明する。インク噴射装置1において、所望の印字データに従って例えばインク室12bが選択されると、電極13eと13fに急速に正の駆動電圧が印加され、電極13dと13gは接地される。これにより側壁11bの上半分には矢印14bの方向の駆動電界が作用し、側壁11cの上半分には矢印14cの方向の駆動電界が作用する。このとき駆動電界方向14bおよび14cと分極方向5とが直交しているため、側壁11bおよび11cは、圧電厚みすべり効果によってインク室12bの内部方向に急速に変形する。この変形によってインク室12bの容積が減少してインク室12bのインク圧力が急速に増大し、圧力波が発生して、インク室12bに連通するノズル32(図1)からインク滴が噴射される。
【0032】また、駆動電圧の印加を停止すると、側壁11bおよび11cが変形前の位置(図2参照)に戻るためインク室12b内のインク圧力が低下し、マニホールド22(図1)を通してインク室12b内にインクが供給される。
【0033】但し、上記の動作は本実施例の基本動作に過ぎず、製品として具体化される場合には、まず駆動電圧をインク室12bの容積が増加する方向に印加して、インク室12bにインクを供給させ、次に駆動電圧の印加を停止して、側壁11bおよび11cを変形前の位置(図2)に戻すことによりインク圧力を増大させてインクを噴射させることもある。
【0034】このように、本実施例のインク噴射装置1では、溝15a、15c、15eにおけるカバープレート3のマニホールド22直下付近に樹脂100が設けられるので、インク室12b、12dにマニホールド22からインクが供給され、且つ空気室12a、12c、12eにインクが供給されないようにすることができる。また、このような構成であると、マニホールド22の形状が単純であるので、その加工が容易となり、時間が短縮されて、大量生産性に優れる。
【0035】また、インク室12bおよび12dのみにインクが供給され、空気室12a、12c、12eにはインクが供給されず空気が充填されるため、インク室12bからインク滴を噴射するための側壁11cの変形が、隣接する空気室12cの空気により吸収され、他の噴射チャンネル12dに影響を及ぼすことがない。従って、各噴射チャンネル12b、12dから良好にインク滴が噴射され、印字品質がよい。
【0036】また、本実施例においては、圧電セラミックスプレート2の片面に溝15を形成していたが、圧電セラミックスプレートの両面に溝を形成して、両側に噴射チャンネル及び非噴射チャンネルを設けるようにしてもよい。
【0037】また、従来技術のような構成のインク噴射装置600においても、本発明を用いることができる。
【0038】続いて、第一実施例のインク噴射装置の製造方法を図4を用いて説明する。
【0039】予め分極を施した圧電セラミックス層に、平行な溝15をダイヤモンドカッティング円板の回転などによって形成して、真空蒸着によって側壁11の側面に電極13を形成し、その電極13上に絶縁層を設けたセラミックスプレート2を用意する。その圧電セラミックスプレート2の一端面16(図1)に図示しない板部材を接合して、一端面16における溝15の開口部を塞ぐ。そして、UV(紫外線)の照射により硬化する光硬化樹脂としての樹脂液99、例えばスリーボンド社製の型番3042のものを溝15に充填する(第一工程)。この樹脂液99は粘度が20cpsと非常に低いため、前記溝15の中を速やかに満たす。
【0040】そして、その上にマスク700をフィルム800を介して載せる。そのフィルム800はマスク700が樹脂液99によって汚れるのを防ぐ。また、フィルム800は、後に照射するUV(紫外線)910が広がるのを防ぐためにできるだけ薄く、且つUV910の透過を妨げない材質が良く、例えば厚さ20μmで、UV910の透過率が約80%のセロファンを用いる。そしてマスク700は、例えば、UV910をよく透過するガラス等で形成されており、溝15a、15c、15eの一部分に対応するUV透過部703と、そのUV透過部703以外の部分においてUV910を遮蔽するようなクロム(Cr)等が形成されたUV遮蔽部701とを有する。このUV透過部703は、カバープレート3のマニホールド22(図1)近傍に対応した位置に設けられている。
【0041】このようなマスク700を、UV透過部703が溝15a、15c、15eに重なるように圧電セラミックスプレート2に載せて、できるだけ密着させ、前記マスク700を介してUVランプ900を用いてUV910を照射する(第二工程)。本実施例では、UVランプ900に、300〜400nmの光が約12mWであるものを使用する。
【0042】ここで、UVランプ900は300〜400nmの光が約12mWであり、前記樹脂液99の硬化に必要な光量は3000mJであり、マスク700によるUV910の減衰を考慮すると、このような組み合わせにおいては、およそUV910を300sec間照射すれば、樹脂液99が硬化する。尚、UVランプ900は300〜400nmの光が強いものほど良い。マスク700のUV透過部703の下にある樹脂液99は、UV910の照射により速やかに重合硬化し、その他の部分である遮蔽部701の下の樹脂液99はUV910があたらないため、硬化せず液状のまま残っている。
【0043】そして、前記板部材、マスク700及びフィルム800を外し、圧電セラミックスプレート2をアセトン等の有機溶剤で洗浄し、未硬化の樹脂液を洗い流す。最後に純水で洗浄し乾燥させて、樹脂100(図1R>1)が溝15a、15c、15eの一部に、ほぼ側壁11の高さで形成される。
【0044】このように樹脂100を形成した圧電セラミックスプレート2に対し、溝15加工側の面とカバープレート3のマニホールド22加工側の面が、エポキシ系接着剤4(図2)などによって接着される。続いて図1R>1に示すように、圧電セラミックスプレート2およびカバープレート3の端面16に、溝15b、15dの位置に対応した各位置にノズル32が設けられたノズルプレート31がエポキシ系接着剤(図示せず)などによって接着される。これによって、図2に示すインク室12b、12d及び空気室12a、12c、12eが形成される。
【0045】尚、圧電セラミックスプレート2とカバープレート3とを接着すると、そのためのエポキシ系接着剤4が浅溝18内(図1)に入り込む。このため、マニホールド22(図1)、インク室12b、12d内のインクが浅溝18から漏れることがない。また、浅溝18からインクが漏れないように、カバープレート3と浅溝18との接合部に樹脂などを設けてもよい。
【0046】このようにして、空気室12a、12c、12eとマニホールド22とを連通させないための、目止め部材としての樹脂100が形成されるので、インク室12b、12dにインクを供給するためのマニホールド22の形状を単純にでき、そのため加工が容易である。また、UVランプ900によるUV910の照射で樹脂100が形成されるので、そのための工程が容易であり、歩留まりが高く、大量生産性に優れる。
【0047】次に、インク噴射装置の製造方法の第二実施例を図5を用いて説明する。圧電セラミックスプレート2の溝15加工側の面にカバープレート103を、エポキシ系接着剤4などによって接着する。ここでカバープレート103は、例えば、UV910をよく透過するガラス等で形成されており、予め溝15a、15c、15e(図1)に対応する部分以外に、UV910を遮蔽するようなクロム(Cr)等の非透過領域としての遮蔽パターン300が形成されている。また、カバープレート103に形成されたマニホールド(図示せず)においては、遮蔽パターン300形成面とは反対の面にUV遮蔽シール(図示せず)等で塞いでおく。ここで、カバープレート103の前記溝15a、15c、15eに対応する部分は、UV910を透過するUV透過領域である。
【0048】そしてカバープレート103の遮蔽パターン300が形成された面を圧電セラミックスプレート2側に向け、且つ遮蔽パターン300が圧電セラミックスプレート2の溝15b、15dに重なるように位置合わせした後接着する。その後、UV樹脂液99を、圧電セラミックスプレート2の端面16側の溝15の開口部から溝15の中へ充填する(第一工程)。次に、圧電セラミックスプレート2の端面16に、図示しない板部材を接着し、溝15を密閉する。
【0049】そして前述したようなUVランプ900を用いて、UV910を300sec照射する(第二工程)。するとカバープレート103がマスクとなり、前記UV透過領域の下にある樹脂液99は、UV910の照射により速やかに重合硬化し、その他の領域の樹脂液99は遮蔽パターン300によってUV910があたらないため硬化せず液状のまま残っている。続いて、前記UV遮蔽シール、前記板部材を剥し、アセトン等の有機溶剤で洗浄し、溝15b、15d内の未硬化の樹脂液99を洗い流す。最後に純水で洗浄し乾燥させて、硬化した樹脂を溝15a、15c、15e全体に形成する。
【0050】樹脂100を形成した後、続いて図1に示すように、圧電セラミックスプレート2およびカバープレート3の端面16に、溝15b、15dの位置に対応した各位置にノズル32が設けられたノズルプレート31がエポキシ系接着剤(図示せず)などによって接着される。これによって、噴射チャンネル及び非噴射チャンネルが形成される。
【0051】このようにインク噴射装置1を製造しても、第一の製造方法と同様の効果が得られる。また、前述したマスク700を用いることなく、カバープレート103をマスクとするので、第一の製造方法より工程が少なくなり、製造が容易となる。
【0052】尚、第二実施例では、溝15a、15c、15e全体に樹脂100を形成したが、溝15a、15c、15eの一部に樹脂を形成して、マニホールド22からインクが入らないようにしてもよい。
【0053】続いて、インク噴射装置の製造方法の第三実施例に付いて図6、7を用いて説明する。前記カバープレート3を前記圧電セラミックスプレート2の溝15加工側に接着した後、圧電セラミックスプレート2およびカバープレート3の端面16に、溝15a、15c、15eの位置に対応した各位置に穴311が設けられたダミープレート310を粘着剤等により一時的に貼る(第一工程)。
【0054】そして前記ダミープレート310の穴311を通して、UV(紫外線)の照射により硬化する樹脂液99を溝15a、15c、15eに注入する(第二工程)。
【0055】注入された樹脂液99は毛細管現象により溝15a、15c、15e内を速やかに流れ、カバープレート3のマニホールド22の直下を通り、浅溝18に至る。このとき、マニホールド22を介して溝15にUV(紫外線)910を全面照射する(第三工程)。
【0056】すると、樹脂液99は、溝15a、15c、15eの、マニホールド22の下部分で硬化する。その後、前記ダミープレート310を取り外し、未硬化の樹脂液99をアセトン等の有機溶剤で洗い流し、純水洗浄後、乾燥することで樹脂100(図1)が形成される。
【0057】樹脂100を形成した後、図1に示すように、圧電セラミックスプレート2およびカバープレート3の端面16に、溝15b、15dの位置に対応した各位置にノズル32が設けられたノズルプレート31をエポキシ系接着剤(図示せず)などによって接着する。このようにして、インク室12b、12d及び空気室12a、12c、12eが形成される。
【0058】尚、マニホールド22と空気室12a、12c、12eとを確実に遮断するために、UV910を端面16に向けて傾斜させて照射するとよい。
【0059】このような製造方法においては、第一実施例のマスク700(図4)を使用しないので、UV透過部701(図4)の位置合わせが不要である。また、カバープレート3が透過性の材質であれば、一定強度以上のUV910が得られた場所全てで樹脂液99の硬化がおき、溝15a、15c、15eの全長で樹脂100を形成することが可能である。
【0060】尚、第三実施例では、樹脂液99として光硬化性樹脂を用いて、UV910により硬化させていたが、熱硬化性樹脂を用いて熱により硬化させてもよい。
【0061】また、第三実施例では、圧電セラミックスプレート2の端面16側から、ダミープレート310の穴311を通して、溝15a、15c、15eにのみ樹脂液99を注入していたが、マニホールド22側から、溝15a、15c、15eにのみ連通する穴を有するプレートを用いて、樹脂液を注入してもよい。
【0062】続いて、インク噴射装置の製造方法の第四実施例について説明する。第三実施例と同様に、前記圧電セラミックス2にカバープレート3及びダミープレート310を接着し、ダミープレート310の穴311を通して溝15a、15c、15eのみに樹脂液を充填する。ただし、充填する樹脂液として、例えば、銀粉導電フィラーの入ったスリーボンド社製の型番3303を用いる。この樹脂液は体積抵抗率が1〜2×10-3Ω・cmの導電体である。尚、この樹脂液にはUVに反応して硬化が始まるUV硬化剤が含まれていないため、UVの照射に関係なく150℃で一時間ほどベークすることで硬化が完了する。ここで、前記UV硬化剤が含まれている導電性樹脂液ならば第一、第二実施例ような形成法も可能である。
【0063】溝15a、15c、15eに充填された樹脂液を150℃で一時間ほどベークすることで、導電性樹脂を形成し、ダミープレート310を取り外し、続いて圧電セラミックスプレート2およびカバープレート3の端面16(図1)に、図8に示すノズルプレート33がエポキシ系接着剤(図示せず)などによって接着される。これによって、噴射チャンネル及び非噴射チャンネルが形成される。
【0064】ノズルプレート33には、溝15b、15dの位置に対応した各位置にノズル32が設けられ、また溝15a、15c、15eに対応した部分に突出した形状の電極パターン34が形成されている。前記電極パターン34は、溝15b、15dを避ける形で溝15a、15c、15eの側面の電極13を接続する。そしてパターン電極34は図示しないFPC等を介して接地される。
【0065】また、上述したような空気室12a、12c、12eの電極13を接地して駆動するインク噴射装置では、このように製造すると、樹脂の導電性を利用して空気室12a、12c、12eの電極13全てを電気的に接続することができるので、簡単に接地することができる。従って、インク噴射装置のコネクトが簡単にできるので、歩留まりが高く、大量生産性に優れる。
【0066】
【発明の効果】以上説明したことから明かなように、本発明の請求項1のインク噴射装置によれば、前記非噴射チャンネル内の全部あるいは一部に目止め部材が設けられているので、非噴射チャンネル内にインクを供給せず、噴射チャンネルのみにインクを供給することができる。
【0067】請求項5のインク噴射装置の製造方法によれば、前記噴射チャンネル及び前記非噴射チャンネルの一部あるいは全部に光硬化性樹脂が注入され、前記非噴射チャンネルの前記光硬化性樹脂のみが選択的に露光されて、非噴射チャンネルに硬化した光硬化樹脂が設けられるので、非噴射チャンネル内にインクを供給せず、噴射チャンネルのみにインクを供給するための加工を従来より容易に行うことができ、歩留まりが高く、大量生産性に優れる。
【0068】請求項6のインク噴射装置の製造方法では、前記非噴射チャンネルに連通する連通孔が有するプレートを前記噴射チャンネル及び非噴射チャンネルの一端側の配置され、前記プレートの前記連通孔から前記非噴射チャンネル内に前記光硬化性樹脂が注入され、前記マニホールドから前記非噴射チャンネルに光が照射されて、非噴射チャンネルに硬化した光硬化樹脂が設けられるので、非噴射チャンネル内にインクを供給せず、噴射チャンネルのみにインクを供給するための加工を従来より容易に行うことができ、歩留まりが高く、大量生産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例のインク噴射装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一実施例のインク噴射装置の断面図である。
【図3】本発明の第一実施例のインク噴射装置の動作を示す説明図である。
【図4】本発明の第一実施例の形成方法を示す断面図である。
【図5】本発明のインク噴射装置の製造方法の第二実施例を示す説明図である。
【図6】本発明のインク噴射装置の製造方法の第三実施例を示す説明図である。
【図7】本発明のインク噴射装置の製造方法の第三実施例を示す説明図である。
【図8】本発明のインク噴射装置の製造方法の第四実施例のノズルプレート裏のパターンを示す説明図である。
【図9】従来例のインク噴射装置を示す説明図である。
【符号の説明】
1 インク噴射装置
2 圧電セラミックスプレート
12a 空気室
12b インク室
12c 空気室
12d インク室
12e 空気室
13 電極
15 溝
18 浅溝
100 樹脂
310 ダミープレート
311 穴
700 マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】 インクを噴射する噴射チャンネルと、前記噴射チャンネルの両側に設けられインクを噴射しない非噴射チャンネルとを有するインク噴射装置において、前記非噴射チャンネル内の一部あるいは全部に設けられた目止め部材を備えたことを特徴とするインク噴射装置。
【請求項2】 前記目止め部材は、紫外線等の特定波長の光に対して硬化する光硬化性樹脂であり、その樹脂を前記噴射チャンネル及び前記非噴射チャンネルに注入し、非噴射チャンネルのみに選択的に露光することを特徴とする請求項1記載のインク噴射装置。
【請求項3】 圧電材料で少なくとも一部が形成された隔壁によって隔てられた溝を有するアクチュエータプレートと、前記アクチュエータプレートの前記溝の開口部を塞ぐカバープレートとを有し、そのカバープレートには、光を透過する透過領域と、光を透過しない非透過領域とが設けられていることを特徴とする請求項2記載のインク噴射装置。
【請求項4】 前記目止め部材は、導電性を有する導電性樹脂であることを特徴とする請求項1記載のインク噴射装置。
【請求項5】 インクを噴射する噴射チャンネルと、前記噴射チャンネルの両側に設けられインクを噴射しない非噴射チャンネルとを有するインク噴射装置の製造方法において、前記噴射チャンネル及び前記非噴射チャンネルの一部あるいは全部に、紫外線等の特定波長の光に対して硬化する光硬化性樹脂を注入する第一工程と、前記非噴射チャンネルの前記光硬化性樹脂のみに選択的に露光する第二工程とからなることを特徴とするインク噴射装置の製造方法。
【請求項6】 インクを噴射する噴射チャンネルと、前記噴射チャンネルの両側に設けられインクを噴射しない非噴射チャンネルと、前記噴射チャンネルにインクを供給するためのマニホールドとを有するインク噴射装置の製造方法において、前記非噴射チャンネルに連通する連通孔を有するプレートを前記非噴射チャンネルの一部に配置する第一工程と、前記プレートの前記連通孔から前記非噴射チャンネル内に目止め部材を注入する第二工程と、前記非噴射チャンネル内の前記目止め部材を硬化する第三工程とからなることを特徴とするインク噴射装置の製造方法。
【請求項7】 前記目止め部材は、紫外線等の特定波長の光に対して硬化する光硬化性樹脂であり、前記第三ステップは、マニホールドから前記非噴射チャンネルに光を照射して、前記目止め部材を硬化することを特徴とする請求項6記載のインク噴射装置の製造方法。
【請求項8】 前記目止め部材は、所定の熱に対して硬化する熱硬化性樹脂であり、前記第三ステップは、所定の熱を与えて、前記目止め部材を硬化することを特徴とする請求項6記載のインク噴射装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図7】
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【図9】
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