説明

インク計量機構

【課題】組立時に正確な位置決めを必要とせずにアニロクスロールから均一にインクを除去可能であり、かつ磨耗が生じてもインク除去性能に与える影響が低い、インク計量機構を提供することである。
【解決手段】インク計量機構が円筒面に溝が形成されたアニロクスロールと、ローラの軸方向に渡ってアニロクスロールの円筒面に当接可能な平面である接触面を有するブレードと、ブレードの移動方向が主としてアニロクスロールに離接する方向となるようにブレードをガイドするガイド手段と、を備え、ブレードとアニロクスロールとの間に磁力による引力が働く構成として上記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式印刷機の画像支持体に供給されるインクを計量するインク計量機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に湿式印刷機は、インク(電子写真方式の湿式印刷機においては液状トナー)を均等に画像支持体(電子写真方式の湿式印刷機においては感光ドラム)に供給されるインクを計量する計量機構を備えている。このインク計量機構は、アニロクスロールを用いてインクを計量するものである。アニロクスロールは、円筒面に溝が多数形成されたロールであり、この溝にインクを含ませることによって、一定の量のインクを担持するようになっている。また、湿式印刷機はアニロクスロールの円筒面と当接してアニロクスロールの回転に従動して回転する現像ロールを有し、アニロクスロールに担持されたインクは現像ロールに一旦写された後、画像支持体に均一に塗布される。このように、アニロクスロールは一定量のインクを計量して現像ロールに運ぶ、計量ロールとしての機能を有する。
【0003】
アニロクスロールによってインクを正確に計量するためには、アニロクスロールの溝の部分以外にインクがほとんど含まれないようにする必要がある。そこで、従来のインク計量機構は、例えば特許文献1に記載のもののように、アニロクスロールの円筒面と当接可能なブレードを有しており、このブレードを用いて溝以外の領域に付着したインクをかきとって除去するようになっている。
【特許文献1】特開2002−91172
【0004】
一般に、ブレードは金属薄板(ドクターブレード)やゴム板等の可撓性を有するものが使用される。ブレードはその側面がアニロクスロールの円筒面に押しつけられるように付勢されており、ロールの回転に応じてアニロクスロール円筒面がブレードにこすられて、余分なインクが除去されるようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来のインク計量機構においてはブレードを用いてアニロクスロールのインクを除去しているので、正確にブレードがアニロクスロール円筒面に押し当てられる、すなわち、円筒面のうち、ロールの回転軸と平行となる領域でブレードがロールに当接するようにする必要がある。ブレードとアニロクスロールとの接触位置が上記の領域から傾いていると、ブレード両端におけるロール円筒面への付勢力が低下し、ブレード両端でのインクの除去が完全には行われなくなる。従って、従来のインク計量機構においてはアニロクスロールに対してブレードを正確に位置決めする必要があった。
【0006】
また、このようなブレードを用いたインク計量機構においては、通常、ブレードが複数の支持点で支持されることによって、ブレードがアニロクスロール円筒面に付勢される。このため、支持点付近と支持点から離れた部分との間で付勢力にバラツキが生じ、これによっても、アニロクスロール円筒面に付着したインクを充分に除去できない領域が発生しうる。
【0007】
また、上記のように付勢力にバラツキがある状態で湿式印刷機を長期間に渡って動作させると、ブレードやロールの磨耗の程度が不均一なものとなり、ブレードの付勢力のバラツキがさらに大きくなり、ブレードによるインクの除去性能がさらに低下する可能性があった。
【0008】
上記の問題に鑑み、本発明は、組立時に正確な位置決めを必要とせずにアニロクスロールから均一にインクを除去可能であり、かつ磨耗が生じてもインク除去性能に与える影響が低い、インク計量機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明のインク計量機構は、円筒面に溝が形成されたアニロクスロールと、ローラの軸方向に渡ってアニロクスロールの円筒面に当接可能な平面である接触面を有するブレードと、ブレードの移動方向が主としてアニロクスロールに離接する第1の方向となるようにブレードをガイドするガイド手段と、を備え、ブレードとアニロクスロールとの間に磁力による引力が働くようになっている。
【0010】
すなわち、本発明によれば、ブレードが移動可能であり、且つ磁力によってブレードがアニロクスロールに引き寄せられる。従って、アニロクスロールの取り付け位置が本来の位置多少ずれたとしても、ブレードの接触面はアニロクスロールの円筒面にその軸方向全域に渡って接触し、余分なインクを適切に除去することができる。また、ブレードとアニロクスロールが磁力によって接触するので、ブレードにおいてアニロクスロールと接触するエリアには、均等な垂直抗力が加わる。このため、このエリアにおける接触圧はほぼ一様なものとなり、この結果均等に磨耗が進行するようになる。このように、本発明によれば、特定の箇所のみに磨耗が集中することは無いので、磨耗が多少発生したとしてもインク除去性能に与える影響は低い。
【0011】
また、アニロクスロールの円筒面及び前記ブレードの接触面は、磁力による引力に対して剛体と見なせる材料によって形成されている。このため、ブレードやアニロクスロールが当接しても変形はほとんど起こらず、ブレードがアニロクスロールの円筒面の形状に追従して移動し、ブレードの接触面は幅方向全域に渡ってアニロクスロールと接触する。
【0012】
好ましくは、アニロクスロールの円筒面及びブレードの接触面は、耐磨耗性の材料である。さらに好ましくは、アニロクスロールの円筒面及び前記ブレードの接触面は金属製である。また、好ましくはアニロクスロールの円筒面及び前記ブレードの接触面は鋼製である。
【0013】
また、アニロクスロールとブレードの少なくとも一方が磁石を含む構成としてもよい。例えば、アニロクスロールとブレードの一方は磁石を含み、他方は磁性体材料を含む。或いは、アニロクスロールとブレードの双方が磁石を含む。代替的には、アニロクスロールおよびブレードは鋼製であり、その少なくとも一方は磁化されている。
【0014】
また、ブレードは一端に接触面が形成されたプレート状の部材であり、その厚さ方向寸法は前記アニロクスロールの取り付け誤差よりも充分に大きく構成されている。従って、アニロクスロールの取り付け位置が本来の位置からブレードの主たる移動方向と垂直な方向に多少ずれたとしても、ブレードの接触面は幅方向全域に渡ってアニロクスロールの円筒面と接触する。
【0015】
また、ブレードは一端に接触面が形成されたプレート状の部材であり、ガイド手段は、ブレードのプレート面部の法線に平行な軸周りの回転、及びこの法線と第1の方向の双方に垂直な軸方向の水平移動において、ブレードが微小移動出来るようにブレードをガイドする構成としてもよい。
【0016】
このような構成とすると、ブレードのプレート面部の法線まわりの回転方向にアニロクスロールが多少ずれて取り付けられたとしても、ブレードとアニロクスロールとの間に働く磁力によって、ブレードが面部の法線まわりに回転して、ブレードの接触面はアニロクスロールの軸方向全域に渡ってアニロクスロールの円筒面と接触するようになる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、組立時に正確な位置決めを必要とせずにアニロクスロールから余分なインクを均一に除去可能であり、かつ磨耗が生じてもインク除去性能に与える影響が低い、インク計量機構が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態につき、図面を用いて説明する。図1は本実施形態の湿式印刷機の側断面図を示したものである。本実施形態の湿式印刷機1は、レーザにて感光ドラムで潜像を描画し、この感光ドラムに液状トナーを塗布してトナーによる像を形成し、この像を記録紙に転写して印刷を行う、所謂電子写真式の印刷機である。
【0019】
湿式印刷機1は、印刷のための各種部材が略直方体形状のケース10に収められた構造となっている。印刷に使用される記録紙は所謂ロール紙であり、印刷前の記録紙Pはケース10の後方(図中右側)に巻き取られた状態で収納されている。ロール状の記録紙Pの下方には、記録紙Pを引き出して、転写位置に送るフィーダ22が設けられている。転写位置において、記録紙Pは中間転写ロール32と、二次転写ロール34とに挟まれるようになっている。そして、中間転写ロール32上に形成されたトナー像が記録紙Pに転写される(中間転写ロール32上にトナー像を形成する方法については後述)。
【0020】
より具体的には、中間転写ロール32の電位は−100〜−300V程度となっており、一方、二次転写ロール34の電位は−1kV程度となっている。このため、正に荷電したトナー粒子が中間転写ロール32から二次転写ロール34に向かって移動する。中間転写ロール32と二次転写ロール34の間には記録紙Pが挟まれているので、中間転写ロール32から二次転写ロール34に向かうトナー粒子は記録紙P上に載ることになる。かくして、中間転写ロール32上のトナー像が記録紙Pに転写される。
【0021】
なお、以下の記載においては、記録紙Pが排出される側を前、その反対を後と定義し、前から後に向かう方向を前後方向(すなわち図1における紙面左右方向)、記録紙Pの幅方向(すなわち図1において手前から奥に向かう方向)を装置の幅方向、装置前後方向及び幅方向の双方に垂直な方向(すなわち図1における紙面上下方向)を装置の上下方向と定義する。
【0022】
トナー像が転写された記録紙Pは、中間転写ロール32と二次転写ロール34との回転によって押し出され、定着部40に送られる。定着部40は、ヒートローラ42とプレスローラ44とを有している。ヒートローラ42にはハロゲンランプ等の熱源が内蔵されており、ヒートローラ42の表面は、液状トナーのキャリア液を蒸発させ、かつトナー粒子を溶融させるだけの温度(通常100〜150℃)まで加熱されている。記録紙Pはこのヒートローラ42とプレスローラ44とに挟まれて加熱・加圧され、記録紙Pからキャリア液が除去されると共にトナー粒子が記録紙P上に定着する。かくして、トナー像が記録紙Pに定着し、この記録紙Pを排紙ローラ対46によってケース10の外部に排出される。
【0023】
次いで、中間転写ロール32上に画像を形成する手順につき説明する。中間転写ロール32は、感光ドラム(一次転写ロール)36と当接しており、感光ドラム36と中間転写ロール32の回転に伴って感光ドラム36上に形成されたトナー像が中間転写ロール32上に転写されるようになっている。
【0024】
感光ドラム36上のトナー像は、感光ドラム36に潜像を描画し、次いで感光ドラム36に液状トナーを塗布することによって形成される。潜像は、以下の手順で感光ドラムに描画される。
【0025】
まず、感光ドラム36に近接して配置されたコロナ放電器54によって感光ドラム36の円筒面が+700Vの電荷を帯びる。次いで、レーザ走査機構52から出射したレーザ光Lによって感光ドラム36が走査される。感光ドラム36の表面は、レーザ光Lが当たると導電性を有するようになる光導電層となっている。そして、感光ドラム36の内部は接地されているので、レーザ光Lが当たった部分の電位は0V付近に変化する。このように、レーザ光Lによる走査を行いながらレーザ光をオンオフ制御することによって、+700Vの感光ドラム上に、0Vの潜像を描画することができる。
【0026】
次いで、この感光ドラム36に液状トナーを塗布する。感光ドラム36にはトナー供給機構70の現像ロール78が当接している。隣接するコロナ放電器64によって現像ロール78には図示しない高圧電源により+500Vの現像バイアスが印加されている。これにより現像ロール78に載っている液状トナーは、+700Vの領域には載らず、0Vの潜像部分にのみ載る。かくして、感光ドラム36上にトナー像が形成される。
【0027】
トナー供給機構70は、適量の液状トナーを計量し、現像ロール78に搬送するよう構成されている。ここで、トナー供給機構70は、その下部に設けられた支点13を中心に回動するよう構成されている。また、トナー供給機構70と印刷機1のフレームとの間には、圧縮ばね12が設けられている。この圧縮ばね12は、トナー供給機構70を図1中時計回りに回動するように付勢しており、これによって、一定の圧接力をもって現像ロール78と感光ドラム36が密着し、液状トナーが確実に感光ドラム36に移動するようになっている。以下、トナー供給機構70の構造、動作につき説明する。
【0028】
図2は、本実施形態のトナー供給機構70の断面図である。また、図3は、トナー供給機構の側面図である。本実施形態においては、図示しない貯蔵タンクからトナー供給管72を介してトナー供給機構70の上部から液状トナーを滴下供給するようになっている。
【0029】
図2に示されているように、アニロクスロール74とほぼ同じ高さに、アニロクスロール74の円筒面に隣接するトナー供給ローラ73が設けられている。トナー供給ローラ73の円筒面とアニロクスロール74の円筒面の間には、幅0.1ミリメートル程度の微小なギャップGが設けられている。トナー供給管72の開口部72aはこのギャップGの上に形成されており、液状トナーはこのギャップGの部分に滴下される。
【0030】
ここで、図示しないモータによって、アニロクスロール74が図中反時計回り、トナー供給ローラ73が図中時計回りに回動されている。これによって、ギャップGに滴下された液状トナーは、アニロクスロール74の円筒面に螺旋状かつ均一に形成された溝に送り込まれる。この溝は、例えばアニロクスロール74の円筒面にワイヤを螺旋状に巻き付けることによって形成される。
【0031】
また、アニロクスロール74の円筒面は、ギャップGの下流側でブレード76と当接している。そして、ブレード76との当接位置よりも下流側で、アニロクスロール74の円筒面は現像ロール78の円筒面と当接している。
【0032】
ブレード76は、磁力によってアニロクスロール74の円筒面に当接しており、アニロクスロール74の溝以外の部分に付着した不要なトナーを擦り落とし、専ら溝の中のみに液状トナーが保持されるようにする。この結果、ブレード76を通過した後は、アニロクスロール74が保持する単位面積あたりの液状トナーの量は略均一なものとなる。
【0033】
ブレード76によって均された液状トナーは、次いで現像ロール78に移される。前述のように、現像ロール78に形成された液状トナーの層は、感光ドラム36に転写されるが、全ての液状トナーが転写されるわけではなく、一部は現像ロール78に残される。このため、現像ロール78は、感光ドラム36との当接位置78aよりも下流側で第1クリーニングブレード75と当接している。これによって、現像ロール78がアニロクスロール74と当接する時には、常に第1クリーニングブレード75によって不要な液状トナーが擦り落とされた状態となる。このように、第1クリーニングブレード75によって余計な液状トナーが除去された状態で、現像ロール78とアニロクスロール74とが当接するようになっているので、現像ロール78には略均一に液状トナーの層が形成される。
【0034】
第1クリーニングブレード75の下には、回収ロール82が配置されている。このため、第1クリーニングブレード75によって現像ロール78から拭い落とされた液状トナーは、回収ロール82の上に滴下される。
【0035】
ここで、図3に示されているように、アニロクスロール74及び回収ロール82の一端には、プーリ74a及び82aが取り付けられており、両プーリ74a、82aには、無端ベルトB1が掛け渡されている。このため、アニロクスロール74の回転に共動して、回収ロール82はアニロクスロール74と同一方向に回転する。前述のように、アニロクスロール74は図中反時計回り方向に回転されるよう駆動されているので、回収ロール82もまた、図中反時計回り方向に回転する。このため、回収ロール82の上端に滴下された液状トナーは、回収ロール82の回転に伴って、上側から前側に向って図中反時計回りに移動する。図2に示されているように、回収ロール82の前側の位置には、第2クリーニングプレード83が当接しており、回収ロール82上の液状トナーは、第2クリーニングブレード83によって除去される。
【0036】
第2クリーニングブレード83の上面には、除去された液状トナーをトナー供給機構70のフレーム71の底部に設けられた排出スクリュー86に誘導するための案内フィルム84が設けられている。案内フィルム84の面上には、搬送パドル85が当接している。この搬送パドル85を図中時計回りに回転させると、案内フィルム84上に溜まった液状トナーが搬送パドル85によって次々と掻き出される。この結果、案内フィルム84の下端に配置された排出スクリュー86に向って、液状トナーは速やかに搬送される。排出スクリュー86は回転駆動されており、フレーム71の底部に溜まった液状トナーを図示しないトナー循環機構に排出する。トナー循環機構は液状トナーの再処理を行い、処理済のトナーは、図示しないポンプ機構によって、トナー供給管72に送られる。
【0037】
なお、図3に示されているように、トナー供給ロール73、搬送パドル85及び排出スクリュー86の一端には、プーリ73a、85a及び86aが取り付けられており、これらのプーリ73a、85a及び86aには、無端ベルトB2がオープン掛けで掛け渡されている。従って、トナー供給ロール73を回転駆動すると、搬送パドル85および排出スクリュー86もまた、トナー供給ロール73と同じ方向に回転する。トナー供給ロール73は図中時計回りに回転するので、搬送パドル85及び排出スクリュー86もまた、図中時計回りに回転する。
【0038】
以上の機構により,トナー供給管72から滴下された液状トナーが感光ドラム36に均一に塗布される。また、液状トナーの塗布の過程で除去される液状トナーは回収されて再利用される。
【0039】
本実施形態においては、前述のように磁力によってブレード76がアニロクスロール74に当接するようになっている。以下、その構成に付き説明する。図4は、アニロクスロール72及びブレード76を斜め上前方(図2中左上)から見た斜視図である。なお、図面を見易くするため、トナー供給機構70を構成する部材(トナー供給機構70自身のフレームなど)の一部分を省略している。また、アニロクスロール74の円筒面に形成された螺旋溝もまた省略されている。
【0040】
図4に示されているように、アニロクスロール74は、その両端(図4では一端側のみを示す)をトナー供給機構70のフレーム71の幅方向両端の壁面に回転可能に支持されている。また、アニロクスロール74の回転軸は幅方向に伸びている。また、トナー供給機構70のフレーム71の幅方向両端(図4では一端側のみを示す)の壁面には、斜め後方上側に開部があるコの字状のブレードガイド79が固定されている。ブレード76は、板状の部材であり、アニロクスロールと当接する当接面76aは平面となっている。ブレード76は、両端をブレードガイド79に支持されて、斜め後方上側−斜め前方下側方向(図2、4中矢印方向)に摺動可能である。この方向は、ブレード76がアニロクスロール74に対して離接する方向である。また、フレーム71内壁の幅方向の間隔よりもブレード76の幅方向寸法はやや小さくなっており、ブレード76は幅方向及び、面部76bの法線に平行な軸まわりに微小移動することができる。
【0041】
ここで、ブレード76は鋼の板状部材であり、且つ、当接面76aに一方の極が形成されるように磁化されている。また、アニロクスロール74もまた鋼製の部材である。従って、磁石であるブレード76と磁性体であるアニロクスロール74は磁力によって互いに引き合い、当接面76aとアニロクスロール74の円筒面とが磁力によってくっつき、両者間の隙間は溝部分だけとなる。よって、本実施形態のブレード76とアニロクスロール74によって、余分な液状トナーが除去される。また、本実施形態においては、ブレード76、アニロクスロール74共に、形状安定性及び耐磨耗性に優れた材料である鋼を使用している。このため、磁力によってブレード76がアニロクスロール74に押しつけられた状態であってもブレード76およびアニロクスロール74はほとんど変形せず、良好な接触状態(すなわち、良好なトナー除去能力)を保つ。また、ブレード76、アニロクスロール74共に磨耗しにくいため、長期間に渡って良好なトナー除去能力を維持する。加えて、ブレード76がアニロクスロール74に磁力によって押しつけられるため、ブレード76の当接面76aにおいて、アニロクスロール74と接触するエリアには、均等な垂直抗力が発生する。このため、ブレード76は均等に(アニロクスロール74の円筒面の形状に沿って)磨耗することになる。すなわち、本実施形態の構成によれば、多少の磨耗が発生したとしても、ブレード76とアニロクスロール74との良好な接触は維持されるので、ブレード76は余分な液状トナーを確実に除去することができる。なお、アニロクスロール74の円筒面(トナー担持面)の幅方向寸法は、フレーム71内壁の幅方向の間隔及びブレード76の幅方向寸法よりも短いため、アニロクスロール74のトナー担持面の幅方向全体に渡ってブレード76は当接し、余分な液状トナーを除去することができる。
【0042】
本実施形態の構成によれば、ブレード76が移動可能であり、且つ磁力によってブレード76がアニロクスロール74に引き寄せられる。この効果につき、図5及び図6を用いて以下に説明する。図5及び6は、アニロクスロール74及びブレード76をアニロクスロール74の回転軸に略垂直な面で切断した断面図である。図5に示されるように、アニロクスロール74の取り付け位置が本来の位置(図5破線)からブレード74の摺動方向に多少ずれた(図5実線)としても、ブレード76の当接面76aは幅方向全域に渡ってアニロクスロール74の円筒面(溝を除く)と接触し、余分な液状トナーを適切に除去することができる。また、ブレード76はアニロクスロール74の取り付け誤差に対して充分な厚さを持った板状部材であるので、図6に示されるように、アニロクスロール74の取り付け位置が本来の位置(図6破線)からブレード74の摺動方向と垂直な方向に多少ずれた(図6実線)としても、ブレード76の当接面76aは幅方向全域に渡ってアニロクスロール74の円筒面(溝を除く)と接触する。
【0043】
また、ブレード76の当接面76aの法線に平行な軸周りにアニロクスロール74が多少ずれて取り付けられたとしても、ブレード76の当接面76aは幅方向全域に渡ってアニロクスロール74の円筒面(溝を除く)と接触する。この特徴につき、図7を用いて以下に説明する。
【0044】
図7は、ブレード76及びアニロクスロール74を当接面76aの法線方向に投影した図である。本実施形態においては、アニロクスロール74の円筒面とブレード76の当接面76aとは、アニロクスロール74の回転軸に平行な一直線(図7中二点鎖線)において当接するようになっている。このため、ブレード76の当接面76aの法線まわりの回転方向にアニロクスロール74が本来の位置(図7中破線)から多少ずれて(図7中実線)取り付けられたとしても、アニロクスロール74の回転軸を当接面76aの法線方向に移動した直線(図7中一点鎖線)がアニロクスロール74の幅方向全域において当接面76aに収まっているのであれば、ブレード76の当接面76aは幅方向全域に渡ってアニロクスロール74の円筒面(溝を除く)と接触することになる。
【0045】
また、ブレード76の面部の法線(すなわち、ブレード76の摺動方向と幅方向の双方に垂直な軸)まわりにアニロクスロール74が多少ずれて取り付けられたとしても、ブレード76の当接面76aは幅方向全域に渡ってアニロクスロール74の円筒面(溝を除く)と接触する。この特徴につき、図8を用いて以下に説明する。
【0046】
図8は、ブレード76及びアニロクスロール74をブレード76の面部76bの法線方向に投影した図である。本実施形態においては、前述のようにブレード76がその面部76bの法線方向に微小回転可能となっている。このため、ブレード76の面部76bの法線まわりの回転方向にアニロクスロール74が本来の位置(図8中破線)から多少ずれて(図8中実線)取り付けられたとしても、ブレード76とアニロクスロール74との間に働く磁力によって、ブレード76が面部76bの法線まわりに回転して、ブレード76の当接面76aは幅方向全域に渡ってアニロクスロール74の円筒面(溝を除く)と接触するようになる。
【0047】
以上のように、本実施形態の構成によれば、アニロクスロール74の取り付け位置に多少の誤差があったとしても、ブレード76の当接面76aは幅方向全域に渡ってアニロクスロール74の円筒面(溝を除く)と接触し、良好なトナー除去能力が得られる。
【0048】
なお、本実施形態においては、ブレード76が磁石であり、アニロクスロール74が磁性体である。しかしながら、本発明は上記の構成に限定されるものではなく、ブレード76とアニロクスロール74との間に磁力による引力が発生する他の構成もまた本発明の範囲に含まれる。例えば、アニロクスロール74が磁石であり且つブレード76が磁石である、或いはアニロクスロール74とブレード76の双方が磁石であっても良い。
【0049】
また、本実施形態においては、形状安定性と耐磨耗性を考慮してブレード76、アニロクスロール74の全体を鋼で構成していたが、充分な形状安定性が得られ、且つブレード76の当接面76aとアニロクスロール74の円筒面の耐磨耗性が高いような他の構成もまた、本発明の範囲に含まれる。例えば、耐磨耗性をさらに向上させるため、ブレード76の当接面76a及び/またはアニロクスロール74の円筒面にセラミックをコーティングしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態の湿式印刷機の側断面図である。
【図2】本発明の実施の形態のトナー供給機構の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態のトナー供給機構の側面図である。
【図4】本発明の実施の形態のアニロクスロール及びブレードを斜め上前方から見た斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態のアニロクスロール及びブレードを、アニロクスロールの回転軸に略す垂直な面で切断した断面図である。
【図6】本発明の実施の形態のアニロクスロール及びブレードを、アニロクスロールの回転軸に略す垂直な面で切断した断面図である。
【図7】本発明の実施の形態において、ブレード及びアニロクスロールを端面の法線方向に投影した図である。
【図8】本発明の実施の形態において、ブレード及びアニロクスロールをブレードの面部の法線方向に投影した図である。
【符号の説明】
【0051】
1 湿式印刷機
36 感光ドラム
70 トナー供給機構
71 フレーム
74 アニロクスロール
76 ブレード
76a ブレード端面
76b ブレード面部
78 現像ロール
79 ブレードガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒面にインクを計量するための溝が形成されたアニロクスロールと、
前記アニロクスロールの軸方向に渡って前記アニロクスロールの円筒面に当接可能な平面である接触面を有するブレードと、
前記ブレードの移動方向が、主として前記アニロクスロールに離接するような第1の方向となるように前記ブレードをガイドするガイド手段と、
を備え、前記ブレードと前記アニロクスロールとの間に磁力による引力が働く、ことを特徴とするインク計量機構。
【請求項2】
前記アニロクスロールの円筒面及び前記ブレードの接触面は、前記引力に対して剛体と見なせる材料によって形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のインク計量機構。
【請求項3】
前記アニロクスロールの円筒面及び前記ブレードの接触面は、耐磨耗性の材料にて形成されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のインク計量機構。
【請求項4】
前記アニロクスロールの円筒面及び前記ブレードの接触面は金属製である、ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインク計量機構。
【請求項5】
前記アニロクスロールの円筒面及び前記ブレードの接触面は鋼製である、ことを特徴とする請求項4に記載のインク計量機構。
【請求項6】
前記アニロクスロールと前記ブレードの少なくとも一方は磁石を含む、ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインク計量機構。
【請求項7】
前記アニロクスロールと前記ブレードの一方は磁石を含み、他方は磁性体材料を含む、ことを特徴とする請求項6に記載のインク計量機構。
【請求項8】
前記アニロクスロールと前記ブレードの双方が磁石を含む、ことを特徴とする請求項6に記載のインク計量機構。
【請求項9】
前記アニロクスロールおよび前記ブレードは鋼製であり、その少なくとも一方は磁化されている、ことを特徴とする請求項5に記載のインク計量機構。
【請求項10】
前記ブレードは一端に接触面が形成されたプレート状の部材であり、前記ブレードの厚さ方向寸法は前記アニロクスロールの取り付け誤差よりも充分に大きいこと、を特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のインク計量機構。
【請求項11】
前記ブレードは一端に接触面が形成されたプレート状の部材であり、
前記ガイド手段は、前記ブレードのプレート面部の法線に平行な軸周りの回転、及び該法線と該第1の方向の双方に垂直な軸方向の水平移動において、前記ブレードが微小移動出来るように前記ブレードをガイドする、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のインク計量機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate