説明

インコメータ

【課題】湿し水がインキに与える影響を測定して、印刷機の安定性評価を可能にするインコメータを提供する。
【解決手段】駆動装置により回転される駆動ロール1と、該駆動ロール1に接触して回転する少なくとも2個の被動ロール2,3とからなるロール群によってインキのタック値を測定するものであり、前記ロール群に湿し水を供給する湿し水供給機構4と、被動ロールのうち回転軸がタック値を測定するトルクセンサに接続されたトップロール2の回転数を測定する回転数測定機構5を備えてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキのタック値などを測定するインコメータに関する。
【背景技術】
【0002】
インコメータは、少なくとも三つのロールからなるロール群によって、インキのタック値(粘着性)を測定している。一つめのロールは、駆動装置により一定の速度で回転され、一定の温度に保持された金属ロール(駆動ロール)である。二つめのロールは、該金属ロールに接触して、その摩擦力により回転するトップロール(被動ロール)であり、ロードセルに接続されて平衡状態の位置からロールの位置が変化するときのトルクを測定して、インキのタック値を求めている。三つめのロールは、上記金属ロールに接触して振動を付与するバイブレーションロール(被動ロール)である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2545128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在主流となっている平版オフセット印刷などの平版印刷では、非画像部への印刷インキの付着を防ぐために、版面を湿らせるために湿し水を付けている。インキは、湿し水によって乳化すると粘着性(タック値)が低下し、印刷品質に影響を与える。しかし、従来は、湿し水がインキに与える影響を測定する手段がなかった。
そこで、本発明は、湿し水がインキに与える影響を測定して、印刷機の安定性評価を可能にするインコメータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、駆動装置により回転される駆動ロールと、該駆動ロールに接触して回転する少なくとも2個の被動ロールとからなるロール群によってインキのタック値を測定するインコメータであって、前記ロール群に湿し水を供給する湿し水供給機構と、被動ロールのうち回転軸がタック値を測定するトルクセンサに接続されたトップロールの回転数を測定する回転数測定機構を備えたインコメータを提供するものである。
【0006】
また、本発明のインコメータは、湿し水の供給量を計測する湿し水量計測手段を備えてある。
【0007】
また、本発明のインコメータは、前記回転数測定機構が、前記駆動ロールの回転数に対する前記トップロールの回転数の比を求める手段を備えてある。
【発明の効果】
【0008】
本発明のインコメータは、駆動装置により回転される駆動ロールと、該駆動ロールに接触して回転する少なくとも2個の被動ロールとからなるロール群によってインキのタック値を測定するインコメータであって、前記ロール群に湿し水を供給する湿し水供給機構と、被動ロールのうち回転軸がタック値を測定するトルクセンサに接続されたトップロールの回転数を測定する回転数測定機構を備えた構成を有することにより、湿し水によって変化するインキの粘着性(タック値)を測定することができると共に、被動ロールの滑りによるトップロールの回転数の変化を測定することができ、湿し水に対するインキの特性を把握することができる効果がある。
【0009】
また、本発明のインコメータは、湿し水の供給量を計測する湿し水量計測手段を備えたことにより、湿し水の供給量に対するタック値の変化及びトップロールの回転数の変化を測定することができ、湿し水を用いる印刷機の安定性評価をすることができる効果がある。
【0010】
また、本発明のインコメータは、前記回転数測定機構が、前記駆動ロールの回転数に対する前記トップロールの回転数の比を求める手段を備えたことにより、駆動ロールに対する被動ロールの滑りによって生じるトップロールの回転数の変化を測定することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態を図示する実施例に基づいて説明する。
本発明に係るインコメータは、駆動装置により回転される駆動ロール1と、該駆動ロール1に接触して回転する少なくとも2個の被動ロール2,3とからなるロール群によってインキのタック値を測定するものであり、前記ロール群に湿し水を供給する湿し水供給機構4と、被動ロールのうち回転軸がタック値を測定するトルクセンサに接続されたトップロール2の回転数を測定する回転数測定機構5を備えてある。
【実施例1】
【0012】
図1に示す実施例において、インコメータ10は、金属ロール1と、ゴムで形成されたトップロール2及びバイブレーションロール3からなるロール群により、インキの粘着性を示すタック値を測定することができるように構成してある。
【0013】
金属ロール1は、駆動装置(図示せず)により一定の速度で回転され、温調装置(図示せず)により一定の温度に保持された駆動ロールである。トップロール2は、金属ロール1の上部に接触して、その摩擦力により回転する被動ロールである。トップロール2の回転軸は、トルクセンサであるロードセル(図示せず)に接続してあり、平衡状態の位置からロールの位置が変化するときのトルクを測定して、インキのタック値を求めることができるように構成してある。バイブレーションロール3は、金属ロール1の前部に接触して、その摩擦力により回転する被動ロールであり、金属ロール1に振動を付与して試料であるインキを分散することができるように設けてある。
【0014】
図示の実施例において、湿し水供給機構4は、湿し水を貯留する湿し水タンク15と、支持枠13に一定の間隔で配置された複数個の滴下装置11とから構成してある。湿し水タンク15は、配水管16を介して滴下装置11に接続してあり、配水管16の途中にディスペンサー14を設けてある。ディスペンサー14は、湿し水の供給量を計測する湿し水量計測手段を備え、湿し水を必要量だけ滴下装置11に供給できるようにしてある。
【0015】
滴下装置11には、滴下口12を設けてあり、湿し水をバイブレーションロール3の上部後側で、金属ロール1と接する位置の近くに滴下することができるように構成してある。また、湿し水供給機構4は、支持枠13の後端部に設けた支持軸17を中心に回動可能に設けてあり、湿し水を使用しないタック値の測定時やロール洗浄時には図中の破線位置に退避することができるようにしてある。
【0016】
図示の実施例において、回転数測定機構5は、トップロール2の回転軸に設置された回転センサからなり、トップロール2の回転数を測定することができるように構成してある。この回転センサには、回転数を計測可能な各種のセンサを使用することができる。また、回転数測定機構5は、金属ロール1の回転数に対するトップロール2の回転数の比を求める手段を備え、駆動ロールである金属ロール1に対する被動ロールの滑りによって生じるトップロール2の回転数の変化を測定することができるようにしてある。
【0017】
本発明に係るインコメータは、湿し水供給機構4がロール群への湿し水の供給量を測定し、インコメータ10がタック値の変化を測定し、回転数測定機構5がトップロール2の回転数の変化を測定できるから、湿し水に対するインキの特性を把握して印刷機の安定性評価をすることができる。
【0018】
図中の20は洗浄溶剤供給機構であり、洗浄溶剤を貯留する溶剤タンク21と、洗浄溶剤の残量を検知する溶剤残量検知センサ22と、ロール群に洗浄溶剤を供給する供給口25から構成してある。供給口25には、電磁弁23を設けてあり、電磁弁23を開閉制御して洗浄溶剤の供給量を制御することができるようにしてある。洗浄溶剤には、インキを溶かすことができる一般的な溶剤を使用することができる。
【0019】
図示の実施例において、供給口25は、洗浄溶剤をバイブレーションロール3の上部後側に滴下するように配置して、洗浄溶剤がバイブレーションロール3の回転方向(図中の矢印方向)に沿ってバイブレーションロール3と金属ロール1の間に流れ込むようにしてある。また、供給口25には、洗浄溶剤の流れを検知できる流れ検知センサ24を設けてある。
【0020】
図中の30は掻取機構であり、金属ロール1の表面へ斜め方向に当接可能に設けたスクレーパー31と、スクレーパー31を金属ロール1の表面に対して当接位置と退避位置に進退させるエアシリンダーなどのスクレーパー進退装置32とから構成してある。実施例において、スクレーパー31の先端部には、ゴムや合成樹脂などの柔軟性を有する素材からなる掻取部材を設けてあり、掻取部材をロール表面に沿わせてインキを掻き取るようにしてある。また、掻取機構30の下方には、廃溶剤受33を設けてあり、スクレーパー31で掻き取ったインキを回収することができるようにしてある。
【0021】
図示の実施例において、ロール洗浄装置には制御手段を備えてある。制御手段は、ロール群に洗浄溶剤を供給する供給量と、洗浄溶剤がロール群全体に行き渡るように金属ロール1を回転させて待機する待機時間と、回転している金属ロール1の表面から洗浄溶剤で溶かしたインキを掻き取る掻取時間の各パラメータを記憶してあり、該パラメータに基づいて洗浄工程をシーケンス制御することができるように構成してある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るインコメータの一実施例を示す構成図。
【符号の説明】
【0023】
1 金属ロール(駆動ロール)
2 トップロール(被動ロール)
3 バイブレーションロール(被動ロール)
4 湿し水供給機構
5 回転数測定機構
10 インコメータ
11 滴下装置
12 滴下口
13 支持枠
14 ディスペンサー
15 湿し水タンク
16 配水管
17 支持軸
20 洗浄溶剤供給機構
21 溶剤タンク
22 溶剤残量検知センサ
23 電磁弁
24 流れ検知センサ
25 供給口
30 掻取機構
31 スクレーパー
32 スクレーパー進退装置
33 廃溶剤受


【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置により回転される駆動ロールと、該駆動ロールに接触して回転する少なくとも2個の被動ロールとからなるロール群によってインキのタック値を測定するインコメータであって、前記ロール群に湿し水を供給する湿し水供給機構と、被動ロールのうち回転軸がタック値を測定するトルクセンサに接続されたトップロールの回転数を測定する回転数測定機構を備えたインコメータ。
【請求項2】
湿し水の供給量を計測する湿し水量計測手段を備えた請求項1に記載のインコメータ。
【請求項3】
前記回転数測定機構が、前記駆動ロールの回転数に対する前記トップロールの回転数の比を求める手段を備えた請求項1又は2に記載のインコメータ。


【図1】
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【公開番号】特開2010−91499(P2010−91499A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263586(P2008−263586)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000151852)株式会社東洋精機製作所 (26)