説明

インゴットの生産管理システム

【課題】 連続鋳造機でインゴットを鋳造する場合に、1本ごとのインゴットの重量のばらつきを少なくして1つの荷姿にまとめられたときの全重量を所定の許容範囲内に収めることが容易なインゴットの生産管理システムを提供すること。
【解決手段】 連続鋳造機Aで鋳造されるインゴットBの生産管理システムにおいて、1つの荷姿にまとめられた段積みインゴットFの重量を計量器Gで計量表示すると共に、その時に計量した重量が規定された重量でない場合に警報を出し、1つの荷姿にまとめられた段積みインゴットFの重量をインゴットの鋳造中継続して計量することにより時間当りの鋳造量を割り出し、その情報を鋳造コンベア1の駆動源5にフィードバックさせることにより当該鋳造コンベア1の移動速度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト鋳造等に使用されるアルミニュウム又はその合金からなるインゴットを製造するインゴットの生産管理システムに関し、更に詳しくは、無端状に形成された鋳造コンベアに複数個のインゴットケースが等間隔毎に配列され、各インゴットケースに所定量の溶湯を分配器で給湯してインゴットを連続的に製造(鋳造)する装置(これをインゴットの連続鋳造機と称する。)を用いて鋳造され、鋳造された所定個数のインゴットを1つの荷姿にまとめて計量するまでの一連のインゴットの生産管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造機で鋳造されたインゴットは、所定個数を縦横互い違いにして段状に積み上げ(例えば、1段を7本にして縦横互い違いに合計15段に積み上げる。)、バンドで結束されて出荷する荷姿にまとめられる。この際、1つの荷姿にまとめられた段積みインゴットの重量は、所定の許容範囲内に規定されている。すなわち、1本1本のインゴットの重量は異なっていても良いが、1つの荷姿にまとめられたときの全重量が所定の許容範囲内に収まっていることが要求される。
【0003】
一方、1本1本のインゴットの重量管理は、従来では、インゴットケースに給湯される溶湯のレベル(すなわち、高さ=給湯量)をオペレータが目視で確認すると共に、1つの荷姿にまとめられたインゴットの全重量をその都度計測することにより行なっていた。
従って、1本ごとのインゴットの重量がばらつきやすく、その為に、1つの荷姿にまとめられた後に段積みインゴットの一部を加除して重量調整を図るなどの後処置が必要となることがあった。
【0004】
尚、本願出願人が知っている上記の先行技術は、文献公知発明に係るものではないため、本願明細書には先行技術文献情報を開示しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、連続鋳造機でインゴットを鋳造する場合に、1本ごとのインゴットの重量のばらつきを少なくして1つの荷姿にまとめられたときの全重量を所定の許容範囲内に収めることが容易なインゴットの生産管理システムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
斯かる目的を達成する本発明の請求項1に係るインゴットの生産管理システムは、無端状に形成された鋳造コンベアに複数個のインゴットケースが等間隔毎に配列され、各インゴットケースに所定量の溶湯を分配器で給湯してインゴットを鋳造し、鋳造された所定個数のインゴットを1つの荷姿にまとめるようにしたインゴットの生産システムにおいて、1つの荷姿にまとめられた段積みインゴットの重量を計量器で計量表示すると共に、計量中であることをオペレータに報知するようにしたことを特徴としたものである。
この際、1つの荷姿にまとめられた段積みインゴットの重量を計量器で計量した時の重量が規定された重量でない場合に警報を出すようにすることが好ましい(請求項2)。
また、本発明の請求項3に係るインゴットの生産管理システムは、前記請求項1と同様の連続鋳造機で鋳造されるインゴットの生産管理システムにおいて、1つの荷姿にまとめられた段積みインゴットの重量をインゴットの鋳造中継続して計量することにより時間当りの鋳造量を割り出し、その情報を鋳造コンベアの駆動源にフィードバックさせることにより当該鋳造コンベアの移動速度を制御することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1に係るインゴットの生産管理システムによれば、1つの荷姿にまとめられた段積みインゴットの重量を計量器で計量表示すると共に、計量中であることを表示灯やブザー等によりオペレータに報知するようにしたので、オペレータが計量器から離れた場所にいても、計量中であることを見逃すことがなく、計量器に表示されたインゴットの重量を確実に確認することができる。従って、インゴット重量の不良発生の有無をインゴットの製造中に遅滞なく知らしめることが可能となる。
【0008】
しかも、本発明の請求項2に係るインゴットの生産管理システムによれば、1つの荷姿にまとめられた段積みインゴットの重量を計量器で計量した時の重量が規定された重量でない場合に警報を出すようにしたので、1つの荷姿にまとめられた段積みインゴットが規定範囲外の荷姿重量になったこと、すなわち1本ごとのインゴット重量の不良が発生したことを、インゴットの製造中に遅滞なく知らしめることができる。
従って、1本ごとのインゴット重量の不良の発生に迅速に対応することが可能となり、その結果、1つの荷姿にまとめられた段積みインゴットの重量不良の発生を抑制することができると同時に、1つの荷姿にまとめられた後に段積みインゴットの一部を加除して重量調整を図るなどの後処置の手間を減少させることができ、総じてインゴットの生産性を向上させることが可能となる。
【0009】
また、本発明の請求項3に係るインゴットの生産管理システムによれば、1つの荷姿にまとめられた段積みインゴットの重量をインゴットの鋳造中継続して計量することにより時間当りの鋳造量を割り出し、その情報を鋳造コンベアの駆動源にフィードバックさせることにより当該鋳造コンベアの移動速度を制御するようにしたので、1本ごとのインゴットの重量のばらつきを少なくすることができ、それに伴い1つの荷姿にまとめられたときの全重量を所定の許容範囲内に収めることが容易となる。
しかも、1本ごとのインゴット重量の不良が発生しても、1つの荷姿にまとめられたときの段積みインゴットの重量が規定より軽い場合には、鋳造コンベアの移動速度を遅くしてインゴットケースに給湯される溶湯量を多くすることにより1本当りのインゴットの重量を増加させる修正を行ない、逆に、1つの荷姿にまとめられたときの重量が規定より重い場合には、鋳造コンベアの移動速度を速くしてインゴットケースに給湯される溶湯量を少なくすることにより1本当りのインゴットの重量を減少させる修正を行なうことが可能となる。
よって、1本当りのインゴットの重量を、インゴットの製造中に遅滞なく且つ自動的に適正な重量に修正することができ、総じてインゴットの生産性を向上させることが可能となる。
更に、時間当りの鋳造量を割り出しているので、生産(鋳造)の完了時間を逆算することが可能となり、次の段取りが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の具体的な好適実施例を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は図示実施例のものに限定されるものではない。
【0011】
図中の符号Aは従来と同様の連続鋳造機を示し、無端状に形成された鋳造コンベア1と、その鋳造コンベア1に等間隔毎に並行状に配列される多数個のインゴットケース2と、これらのインゴットケース1に溶湯を給湯するための分配器3などを備えてなり、図示していない湯舟から樋を介して分配器3に一定量の溶湯を連続して供給すると共に、分配器3を鋳造コンベア1の移動速度、すなわちインゴットケース2の移動速度に同期して回転させることにより、この分配器3から溶湯を順番に各インゴットケース1に給湯し凝固させて、インゴットを連続的に製造(鋳造)する仕組みになっている。
【0012】
連続鋳造装置Aで連続的に鋳造されたインゴットBは、インゴットケース2から冷却コンベアC上に放出され、冷却コンベアCで搬送移送中に冷却されて、集荷コンベアDを介してスタッキング台Eで所定の個数を縦横互い違いにして段状に積み上げられ(例えば、1段を7本にして縦横互い違いに合計15段に積み上げる。)、最後に結束バンドで結束されて出荷する荷姿にまとめられる。
【0013】
そして、スタッキング台E上で出荷する荷姿にまとめられた段積みインゴットFは、スタッキング台Eに隣接して配設された計量器Gで計量され、計量器Gで計量された重量情報がオペレータの近傍に設置された重量表示計Hにリアルタイムで表示される。
【0014】
また、図中の符号4は、出荷する荷姿にまとめられた段積みインゴットFが計量器Gで計測された後に搬送コンベアIへ移送されたことを感知して、所定時間経過後(例えば、10秒後)に計量器G及び重量表示計Hをリセットするためのリミットスイッチを示す。
【0015】
出荷する荷姿にまとめられた段積みインゴットFの計量器Gによる重量情報は、重量表示計Hに表示されるだけでなく、警告灯JやブザーK等の報知器ないしは警報器にも無線又は有線により伝えられ、計量中であることをオペレータに報知したり計量器Gで計量した重量が規定された重量でない場合に警報を出すように構成されている。
【0016】
更に、1つの荷姿にまとめられた段積みインゴットFの重量をインゴットBの鋳造中継続して計量することにより時間当りの鋳造量を割り出し、その情報を鋳造コンベア1の駆動源5にフィードバックさせることにより当該鋳造コンベア1の移動速度を制御するように構成されている。
すなわち、1つの荷姿にまとめられた段積みインゴットFの重量は、インゴットBの鋳造中継続して計量され、その計量情報を基にして時間当りのインゴットの鋳造量を割り出し、割り出された時間当りのインゴットの鋳造量を基にしてインゴットの鋳造速度に換算して速度表示計Lにリアルタイムで表示すると共に、インゴットの鋳造速度に換算された速度情報を鋳造コンベア1の駆動源5にフィードバックさせることにより当該鋳造コンベア1の移動速度を制御するように構成するものである。具体的には、鋳造コンベア1の駆動源5のインバータ出力電圧とインゴットの鋳造速度との関係を予め実測で求めておき、得られたインゴットの鋳造速度情報を鋳造コンベア1の駆動源5にフィードバックさせることにより当該鋳造コンベア1の移動速度が制御される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明実施の一例を示す概略模式図。
【符号の説明】
【0018】
A:連続鋳造機 B:インゴット
C:冷却コンベア D:集荷コンベア
E:スタッキング台 F:段積みインゴット
G:計量器 H:重量表示計
I:搬送コンベア J:警告灯
K:ブザー L:速度表示計
1:鋳造コンベア 2:インゴットケース
3:分配器 4:リミットスイッチ
5:駆動源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に形成された鋳造コンベアに複数個のインゴットケースが等間隔毎に配列され、各インゴットケースに所定量の溶湯を分配器で給湯してインゴットを鋳造し、鋳造された所定個数のインゴットを1つの荷姿にまとめるようにしたインゴットの生産システムにおいて、1つの荷姿にまとめられた段積みインゴットの重量を計量器に計量表示すると共に、計量中であることをオペレータに報知するようにしたことを特徴とするインゴットの生産管理システム。
【請求項2】
請求項1記載のインゴットの生産管理システムにおいて、1つの荷姿にまとめられた段積みインゴットの重量を計量器で計量した時の重量が規定された重量でない場合に警報を出すようにしたことを特徴とするインゴットの生産管理システム。
【請求項3】
無端状に形成された鋳造コンベアに複数個のインゴットケースが等間隔毎に配列され、各インゴットケースに所定量の溶湯を分配器で給湯してインゴットを鋳造し、鋳造された所定個数のインゴットを1つの荷姿にまとめるようにしたインゴットの生産システムにおいて、1つの荷姿にまとめられた段積みインゴットの重量をインゴットの鋳造中継続して計量することにより時間当りの鋳造量を割り出し、その情報を前記鋳造コンベアの駆動源にフィードバックさせることにより当該鋳造コンベアの移動速度を制御することを特徴とするインゴットの生産管理システム。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−15369(P2006−15369A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195582(P2004−195582)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000005256)株式会社アーレスティ (44)