説明

インサートラベルと加飾方法

【目的】 凹凸表面のインサートラベルが成形品の表面に強固に接着した成形品を効率がよく得る。
【構成】 ポリエチレンテレフタレートからなる基体シート11上に、商品名の図柄層12を形成し、その上にアクリル樹脂からなる接着層13を形成する。また、ポリプロピレンからなる接着フィルム2を、40〜50μmの深さの凹凸を有する凹凸形状21に形成する。基体シート11と接着フィルム2とを接着し、所望のラベル形状に打ち抜き、基体シート11と接着フィルム2との間に多数の密閉された空間部3を有するインサートラベルとする。つぎに、カップ状容器を成形する一対の金型内にインサートラベル1を載置し、型閉め後、成形樹脂を射出し、成形と同時にインサートラベル1を成形品の表面に貼りつける。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、成形品の成形と同時に成形品の表面に貼り付けられるインサートラベルと、このインサートラベルを用いた加飾方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、成形品の表面に凹凸を表現する方法としては、つぎのような方法がある。
(1)凹凸形状を有する基体シート表面に、図柄層、感圧性接着層が形成された凹凸形状のラベルを、表面が平坦な成形品に手で貼りつける方法
【0003】(2)平坦な基体シート表面に、図柄層、感圧性接着層が形成された平坦なラベルを、表面が凹凸の成形品に手で貼りつける方法
【0004】(3)平坦な基体シート表面に、図柄層、感熱性接着層が形成された平坦なインサートラベルを、インサートラベルの基体シートと金型表面とが接するように、射出成形用の金型表面にラベルを載置し、ラベルの接着層に溶融した成形樹脂を射出し、凹凸表面の成形品の成形と同時に成形品の表面にラベルを接着する方法この方法において、凹凸を有する金型を用いたり、あるいは、発泡性の成形樹脂を用いて、成形品に凹凸を形成することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、(1)の方法は、基材フィルムの凹凸の度合いが大きくなると、表面に図柄層が形成しにくく、きれいな図柄が形成できない。
【0006】(2)の方法は、成形品の表面が凹凸なので、ラベルが成形品の表面に接着しにくい。
【0007】(3)の場合は、金型の凹凸とインサートラベルの図柄との位置合わせが正確にできない。また、凹凸形状の変更のたびに、専用の金型や専用の発泡性樹脂を用意する必要があり、コストがかかる。また、金型の凹凸に成形品表面の凸部がはまりこんだかたちになるので、成形品が金型のシボに引っ掛かって取り出しにくく手間がかかる。
【0008】この発明は以上のような問題点を解決し、凹凸の度合いが大きくてもきれいな図柄が形成でき、成形品表面に強固に接着でき、成形品表面の凹凸と図柄との位置合わせが正確にでき、コストや手間のかからないインサートラベルとこのインサートラベルを用いた加飾方法とを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】この発明は、インサートラベルを、図柄層を有する基体シート上に、凹凸形状に形成された感熱性の接着フィルムが形成され、基体シートと接着フィルムとの間に多数の密閉された空間部を有するように構成した。
【0010】また、この発明は、加飾方法を、基体シート上に図柄層が形成され、その上に凹凸形状に形成された感熱性の接着フィルムが形成され、基体シートと接着フィルムとの間に多数の密閉された空間部を有しているインサートラベルを、基体シート側が金型表面と接するように射出成形用の金型内に載置し、型閉め後、インサートラベルの接着フィルム側に溶融した成形樹脂を射出し、成形樹脂の圧力によりインサートラベルの空間部を圧縮し、成形と同時にインサートラベルを成形品表面に形成し、射出成形用の金型から成形品を取り出すことによってインサートラベルの空間部が膨張し基体シートを凹凸表面とするように構成した。
【0011】以下、この発明の実施例を図面を参照しながら説明する。図1は、この発明のインサートラベルの断面図である。図2、図3は、この発明の加飾方法の実施例の一工程を示す断面図である。図4は、この発明の加飾方法によって得られた成形品の斜視図である。図5は、この発明の加飾方法によって得られた成形品の一部分の断面図である。
【0012】まず、この発明のインサートラベル1を説明する(図1参照)。基体シート11は、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートなどの延伸済みのプラスチックフィルムなどからなる。あるいは、紙、あるいは紙とプラスチックフィルムのラミネートシート、合成樹脂と紙との合成紙、紙に合成樹脂をしみこませた含浸紙などでもよい。基体シート11は、表面にマット状や艶消し状などの微細な凹凸が形成されたものでもよい。
【0013】図柄層12は、基体シート11上に形成する。図1では、図柄層12は接着フィルム2が形成される側の表面に形成されている。図柄層12は、成形品30表面を装飾するためにインキや染料などによって描かれた層である。図柄層12の図柄としては色、柄、模様、絵画、ロゴ、文字、記号、図形などがある。図柄層12は、印刷法やコーティング法などにより形成される。図柄層12は、蒸着によって形成された金属光沢による図柄を有していてもよい。なお、図柄層12は、接着フィルム2が形成される面の反対側に形成されていてもよい。この場合、図柄層12上には図柄層を保護するトップコート層14が形成されていてもよい。トップコート層14は、アクリル、塩素化ポリプロピレンなどからなる。トップコート層14は、印刷法やコーティング法などにより形成される。
【0014】接着層13は、必要により基体シート11の接着フィルム2が形成される側に形成する。接着層13は、図柄層13が形成された基体シート11と、接着フィルム2とを接着するための層である。接着層13は、ウレタン系やポリエステル系の2液硬化型の樹脂を用いるとよい。
【0015】接着フィルム2は、図柄層12を有する基体シート11上に形成する。接着フィルム2は、凹凸形状21に形成されており、基体シート11と接着フィルム2との間に多数の密閉された空間部3ができるようになっている。接着フィルム2は、単一種類の樹脂からなっていてもよいし、異なる種類の樹脂を積層したものでもよい。接着フィルム2を凹凸形状21に形成する方法としては、押し出し成形された平滑な表面の接着フィルムを、エンボスロールとニップロールとの間で加熱しながら挟み込み接着フィルムを凹凸形状21とする方法がある。接着フィルム2を基体シート11上に形成する方法としては、接着フィルム2に接着層13を形成して乾燥させておき、基体シート11上に重ね合わせ、ニップロールで貼り合わせるドライラミネート法を用いるとよい。凹凸形状21に形成された接着フィルム2と、図柄層12が形成された平滑な表面の基体シート11とが重なって形成されると、接着フィルム2表面の凹んだ部分と基体シート11とによって囲まれた部分が密閉された空間部3となり、このような空間部3が多数形成される。
【0016】つぎに、この発明のインサートラベル1を用いて成形品表面を加飾する方法を説明する(図2〜5参照)。まず、フランジ部52を有するカップ状容器を成形する一対の射出成形用の金型41、42とインサートラベル1とを用意する。
【0017】つぎに、インサートラベル1の基材フィルム11が金型表面43に接するように、インサートラベル1を金型42に載置する(図2(a)参照)。図2(a)の要部を拡大すると図2(b)のようになる。
【0018】つぎに、金型41と金型42とを型閉めした後、キャビティ部45内に溶融した成形樹脂5を射出口44より射出し、インサートラベル1の接着フィルム2に成形樹脂5を押し当てて、成形する(図3(a)参照)。接着フィルム2は、成形樹脂5に接着する感熱性を持つ樹脂フィルムである。成形樹脂5としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど無延伸の成形されたプラスチックがあり、インサート成形法に用いられる樹脂である。
【0019】インサートラベル1の多数の空間部3は、成形樹脂5の射出圧力によって圧縮され、体積が小さい圧縮された空間部31となる(図3(b)参照)。接着フィルム2は成形樹脂3の熱によって表面が一時的に溶融され、成形樹脂5と接した状態で再び固化され、圧縮された空間部31を有したまま、接着フィルム2と成形樹脂5とが接着される。
【0020】つぎに、成形品6を金型42から取りはずす。インサートラベル1の圧縮された空間部31が、インサートラベル1の基体シート11側方向に膨張する(図5参照)。このようにして、図柄を有する胴部が凹凸表面6に加飾された成形品51が成形される(図5参照)。
【0021】成形品51表面の凹凸は、膨張した空気によって形成されている。したがって、成形品51内部の断熱性、保温性、保冷性が発揮される。また、成形品表面の手触りが柔らかで、手で持ったときの滑り止めにもなる。
【0022】
【実施例】ポリエチレンテレフタレートからなる厚さ25μmの基体シート11上に、商品名およびメーカー名を表示する図柄層12を形成し、その上にアクリル樹脂からなる接着層13を形成する。また、ポリプロピレンからなる厚さ50μmの接着フィルム2を、40〜50μmの深さの凹凸を有する凹凸形状21に形成する。つぎに、基体シート11と接着フィルム2とをドライラミネートして接着し、所望のラベル形状に打ち抜き、基体シート11と接着フィルム2との間に40〜50μmの大きさの多数の密閉された空間部3を有するインサートラベルとする。
【0023】つぎに、カップ状容器を成形する一対の金型41、42を有する金型装置を用意する。カップ状容器の胴部に相当する金型表面43と基体シート11側とが接するように、インサートラベル1を射出成形用の金型内に載置する。型閉め後、インサートラベルの接着フィルム2側に溶融した成形樹脂5を射出し、成形樹脂5の圧力によりインサートラベル1の空間部3を圧縮し、成形と同時にインサートラベル1を成形品51表面に貼りつける。射出成形用の金型から成形品51を取り出すことによってインサートラベル1の圧縮された空間部31が膨張し、基体シート11が凹凸表面となり、凹凸表面6のカップ状容器となる。
【0024】
【発明の効果】この発明はインサートラベルを、図柄層を有する基体シート上に、凹凸形状に形成された感熱性の接着フィルムが形成され、基体シートと接着フィルムとの間に多数の密閉された空間部を有するように構成した。
【0025】したがって、凹凸形状の基体シートの表面に図柄層を形成する必要がないので、段差の大きな凹凸表面の成形品を得る場合でも、きれいな図柄層の成形品が得られる。
【0026】この発明は加飾方法を、基体シート上に図柄層が形成され、その上に凹凸形状に形成された感熱性の接着フィルムが形成され、基体シートと接着フィルムとの間に多数の密閉された空間部を有しているインサートラベルを、基体シート側が金型表面と接するように射出成形用の金型内に載置し、型閉め後、インサートラベルの接着フィルム側に溶融した成形樹脂を射出し、成形樹脂の圧力によりインサートラベルの空間部を圧縮し、成形と同時にインサートラベルを成形品表面に形成し、射出成形用の金型から成形品を取り出すことによってインサートラベルの空間部が膨張し基体シートを凹凸表面とするように構成した。
【0027】したがって、インサート成形法によって成形品を加飾するので、インサートラベルが成形品の表面に強固に接着する。また、成形品の成形と同時に表面に凹凸が設けられるので加飾効率がよい。
【0028】また、凹凸を有する金型を使用する必要がなく、金型の凹凸の位置に合わせてインサートラベルを載置する必要がない。また、専用の金型や専用の発泡性樹脂を用意する必要がないので、コストがかからない。
【0029】また、成形品51表面の凹凸は、膨張した空気によって形成されている。したがって、成形品51内部の断熱性、保温性、保冷性が発揮される。また、成形品表面の手触りが柔らかで、手で持ったときの滑り止めにもなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明のインサートラベルの断面図である。
【図2】 この発明の加飾方法の実施例の一工程を示す断面図である。
【図3】 この発明の加飾方法の実施例の一工程を示す断面図である。
【図4】 この発明の加飾方法によって得られた成形品の斜視図である。
【図5】 この発明の加飾方法によって得られた成形品の一部分の断面図である。
【符号の説明】
1 インサートラベル
11 基体シート
12 図柄層
13 接着層
2 接着フィルム
21 凹凸形状
3 空間部
31 圧縮された空間部
32 膨張した空間部
41 金型
42 金型
43 金型表面
44 射出口
45 キャビティ部
5 成形樹脂
51 成形品
52 フランジ部
6 凹凸表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】 図柄層を有する基体シート上に、凹凸形状に形成された感熱性の接着フィルムが形成され、基体シートと接着フィルムとの間に多数の密閉された空間部を有していることを特徴とするインサートラベル。
【請求項2】 基体シート上に図柄層が形成され、その上に凹凸形状に形成された感熱性の接着フィルムが形成され、基体シートと接着フィルムとの間に多数の密閉された空間部を有しているインサートラベルを、基体シート側が金型表面と接するように射出成形用の金型内に載置し、型閉め後、インサートラベルの接着フィルム側に溶融した成形樹脂を射出し、成形樹脂の圧力によりインサートラベルの空間部を圧縮し、成形と同時にインサートラベルを成形品表面に形成し、射出成形用の金型から成形品を取り出すことによってインサートラベルの空間部が膨張し基体シートを凹凸表面とすることを特徴とする加飾方法。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開平6−15795
【公開日】平成6年(1994)1月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−197721
【出願日】平成4年(1992)6月30日
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)