説明

インタンク蒸発ガス排出制御システム

【課題】蒸発ガス排出制御システム内の熱的エネルギー移動を操って燃料タンク補給中に燃料蒸気吸着材料を冷却するとともにパージサイクル中に燃料蒸気吸着材料を加熱することによって蒸発ガス排出制御システムの全体的な効率を向上させるように構成する。
【解決手段】蒸発ガス排出制御システム10は、燃料タンク12の内部の発熱装置30と物理的に接触した燃料蒸気吸着装置32を有する。発熱装置30は、パージサイクル中に前記燃料蒸気吸着装置32を加熱する燃料ポンプ30であり、これによりパージサイクル中に捕捉燃料蒸気の脱離速度が増大する。前記燃料蒸気吸着装置32及び/又は追加の燃料蒸気吸着装置34は、給油中に流入燃料によって冷却されるよう、タンク内部のタンク注入開口22に隣接した位置に配置されてもよく、これにより給油中に前記燃料蒸気吸着装置32,34の吸着効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発ガス排出制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車メーカーが燃料効率を高めようとするとともに環境への影響を減少させようと取り組む中で、自動車及び自動車の燃料システムから排出される燃料蒸気の蒸発ガス排出制御の重要性がますます増している。自動車燃料貯蔵タンクは、通常部分的に液体燃料で満たされるとともに部分的に燃料蒸気及び/又は他のガスで満たされたタンク体積を含む。燃料補給中に、燃料タンクの燃料蒸気はタンク体積から移動される。燃料蒸気が大気中に逃げるのを防止するために、タンク補給中に蒸気を捕捉するためのさまざまなシステム、例えば自動車に搭載された又は燃料分配装置に搭載された自動車搭載型蒸気回収(ORVR)システムが提案されている。ORVRシステムは、自動車の動作中、燃料蒸気を捕捉するために燃料タンクから移動されたガスを燃料蒸気吸着材料を通過させて送り、捕捉された燃料蒸気を自動車エンジンの吸入口側に送ることによって、機能する。このような種類のシステムは、自動車のコスト、重量及び複雑さを増加させ、これらの要因の一部はORVRシステムの利益に反するように作用する。
【発明の概要】
【0003】
本発明の一実施形態によれば、蒸発ガス排出制御システムは、燃料タンクと、燃料蒸気吸着装置と、前記燃料タンクの内部に位置する熱伝達領域において前記燃料蒸気吸着装置と物理的に接触した発熱装置と、を有する。
【0004】
本発明の別の実施形態によれば、蒸発ガス排出制御システムに使用される燃料システムモジュールは、ハウジングと該ハウジング内に位置する燃料ポンプとが設けられた燃料ポンプモジュールを有する。前記燃料システムモジュールは、前記燃料ポンプと物理的に接触した、ハウジングの内部に位置する燃料蒸気吸着装置を有する。
【0005】
本発明の別の実施形態によれば、燃料蒸発ガス排出制御方法は、給油中に液体燃料を用いて燃料タンク内の燃料蒸気吸着装置を冷却する工程と、前記燃料タンクの内部で発生した熱を用いてパージサイクル中に前記燃料蒸気吸着装置を加熱する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の一実施形態による蒸発ガス排出制御システムを有する自動車燃料タンクの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のさまざまな実施形態について、本明細書に添付された図面を参照して説明する。
【0008】
以下に記載の蒸発ガス排出制御システムの実施形態は、蒸発ガス排出制御システム内の熱的エネルギー移動を操って燃料タンク補給中に燃料蒸気吸着材料を冷却するとともにパージサイクル中に燃料蒸気吸着材料を加熱することによって蒸発ガス排出制御システムの全体的な効率を向上させるように構成されてもよい。蒸発ガス排出制御システムは、燃料タンク補給中に、燃料蒸気吸着材料を用いて、移動された燃料蒸気を捕捉する。吸着プロセスは発熱性のものであり、即ち燃料蒸気が燃料蒸気吸着材料によって吸着された時に熱的エネルギーが放出される。これにより燃料蒸気吸着材料の温度が上昇するとともに燃料蒸気吸着材料の吸着能又は吸着効率が低下する。蒸発ガス排出制御システムは、パージサイクル中に、捕捉燃料蒸気を解放し、これは通常の自動車の動作中に起こる。パージサイクル中、燃料蒸気吸着材料から燃料が脱離する。脱離プロセスは吸熱性のものであり、したがって燃料蒸気吸着材料を冷却して脱離効率を低下させる。これらの効率の問題を緩和することを助ける新たな部品、構成及び方法が考案されている。
【0009】
図面をより詳細に参照すると、図1は本発明の一実施形態に基づく蒸発ガス排出制御システム10の断面図である。蒸発ガス排出制御システム10は自動車、船舶又は液体状態で貯蔵された燃料を使用する燃焼エンジンなどの動力装置を有する他の可動なもしくは固定された装置における使用に適している。蒸発ガス排出制御システム10の潜在用途のいくつかの例として、ガソリン、アルコールもしくはディーゼルエンジンを動力源とした自動車もしくは装置、ハイブリッド自動車又は自動車搭載型炭化水素改質装置を有する燃料電池を動力源とした自動車が挙げられる。蒸発ガス排出制御システム10は燃料タンク12及び燃料システムモジュール14を有してもよい。
【0010】
燃料タンク12は、ガソリンのような炭化水素燃料などの液体燃料16を貯蔵するための部品である。燃料タンク12は、タンクの内部とも呼ばれる貯蔵体積20を少なくとも部分的に画定する一以上の壁18を有する。この実施形態において、燃料タンク12は注入開口22及びモジュール開口24を有し、各々が燃料タンク壁を貫通して形成されている。注入開口22は、補給即ち給油中に貯蔵体積内に流れる燃料が通る開口であり、モジュール開口24は、蒸発ガス排出制御システム10の組立中に燃料システムモジュール14の少なくとも一部が通される開口である。開口22及び24は、各々、任意の燃料タンク壁上の任意の位置に設けられてもよい。図示される実施形態において、注入開口22は、燃料タンク12の底の付近に位置するとともに、燃料システムモジュール14の特定の部品に隣接して設けられてもよく、モジュール開口24は、燃料タンク12の上部に設けられてもよい。このような構成が有する利点のいくつかを以下に詳しく説明する。
【0011】
図面には、注入開口22に流体接続された燃料給油管26の一端と、注入開口の位置もしくは付近又は燃料給油管26内に設けられた注入逆止弁28とが示されているが、これらを必ず蒸発ガス排出制御システム10に含む必要はない。燃料タンク12は、金属部品を形成及び溶接する又は一以上の材料層を有する適切なプラスチック材料をブロー成形するなどの周知技術を用いて任意の形状又は寸法に形成してもよい。
【0012】
図示される燃料システムモジュール14は、発熱装置30、第一燃料蒸気吸着装置32、第二燃料蒸気吸着装置34、蓋又は取付フランジ36、気液分離器38、外気弁40及び各種流体管42〜50を有する。一般的に、図示される燃料システムモジュール14は、必要に応じて(例えば給油中に)燃料蒸気を燃料蒸気吸着装置32、34を通過させて送ることによって、燃料蒸気を貯蔵体積20から捕捉し、その後、エンジン動作中に、捕捉燃料蒸気を燃料蒸気吸着装置から所望に応じていくつかの他の有用な位置、例えばエンジンの吸気口側に送るように、動作する。ここで、燃料蒸気吸着装置32、34を指す「第一」及び「第二」の用語は任意であり、必ずしも流路上の位置の順序又は順番を表わすものではなく、また蒸発ガス排出制御システム内の他の燃料蒸気吸着装置の重要性、好ましさ、寸法、容量又は存在を表わすものではない。例えば、少なくとも一部の実施において、燃料システムモジュール14は一つの燃料蒸気吸着装置のみを含む。また、蒸発ガス排出制御システムの他の燃料蒸気吸着装置を追加の燃料蒸気吸着装置と呼んでもよい。
【0013】
発熱装置30及び燃料蒸気吸着装置32、34は、図示するように、蒸発ガス排出制御システムが組み立てられた時にタンクの内部に位置してもよい。燃料蒸気吸着装置32、34の一方又は両方が、発熱装置と物理的に接触した一以上の部分を有していてもよい。具体的には、発熱装置30は、燃料蒸気吸着装置32、34の一方又は両方の少なくとも一つの表面と物理的に接触した少なくとも一つの表面を有する。図示される例において、第一燃料蒸気吸着装置32は発熱装置30に隣接して配置され、第二燃料蒸気吸着装置34は燃料タンク12の注入開口22に隣接して配置される。この配置及びその他の配置によって、蒸発ガス排出制御システム10内の熱的エネルギーを有利に操ることができ、これについて以下により詳細に説明する。
【0014】
発熱装置30は、電気エネルギーなどの他のエネルギー形態から熱的エネルギーを局所的に発生させる部品である。この実施形態において、発熱装置は燃料ポンプモジュール52の一部である燃料ポンプ30であり、図示される燃料ポンプモジュール52はハウジング54及び一以上のフィルタ56を含む。燃料ポンプ30はハウジング54の内部に位置し、燃料ポンプの底にある吸入口側から燃料ポンプモジュール52内に液体燃料を吸い込み、液体燃料を加圧して管48を介して取付フランジ36の開口を通して燃料噴射システムなどの他の自動車部品に送る。燃料ポンプ30は電動式であり、電気エネルギーを力学的エネルギー及び熱的エネルギーに変換する(例えば電気モータを介して変換する)。力学的エネルギーは液体燃料を加圧し、熱的エネルギーは燃料ポンプモジュールからいくつかの他の部品へ又はそれらを通って移動する又は拡散する。この実施形態では、熱的エネルギーの少なくとも一部が燃料蒸気吸着装置32へ移動する。電動抵抗ヒーター、燃料ポンプ駆動装置及びサーミスタなどの他の種類のインタンク発熱装置を蒸発ガス排出制御システム10に含んでもよい。
【0015】
燃料蒸気吸着装置32は、ハウジング58、第一アクセスポート60及び第二アクセスポート62を含んでもよい。ハウジング58は、少なくとも部分的に、粒状及び/又は活性炭などの燃料蒸気吸着材料64で満たされている。各アクセスポート60、62は、ハウジング58の内部と流体連結しているとともに、燃料ポンプ動作中(即ちパージサイクル中)に燃料蒸気が吸着材料による吸着のために一方のアクセスポート、この例では第一アクセスポート60、を通ってハウジング内に進入し、同じアクセスポートを通ってハウジングを出るように構成されている。燃料蒸気及び/又は他のガスは、流動ガスと燃料蒸気吸着材料64との間の表面接触を最大化するよう構成されたハウジング58内部にある内部経路に沿ってアクセスポート60及び62間を何れの方向にも流れることができる。この実施形態では、アクセスポート60は図示されるように管46を介して第二燃料蒸気吸着装置34に接続され、アクセスポート62は管50を介して弁40及び取付フランジ36の開口を通って大気と通気する。あるいは、アクセスポート60は気液分離器38又はその他の部品に直接接続されてもよい。燃料蒸気吸着装置32は、ガスが給油中に第一アクセスポート60から第二アクセスポート62へ流れそしてパージサイクル中に反対方向即ち第二アクセスポート62から第一アクセスポート60に流れるように、構成されている。
【0016】
この実施形態の燃料蒸気吸着装置のハウジング58は全体が燃料ポンプモジュールのハウジング54内に位置している。ハウジング58は燃料ポンプモジュールのハウジング54内に位置する熱伝達領域66を少なくとも部分的に画定し、熱伝達領域66において燃料蒸気吸着装置32が燃料ポンプ30と物理的に接触している。図示されるように、燃料蒸気吸着装置のハウジング58は、熱伝達領域において燃料ポンプ30を少なくとも部分的に囲んでもよい。図示される実施形態において、燃料ポンプ30は全体的に円筒状であり、全体的にリング形状又はスリーブ状のハウジング58によって囲まれている。燃料ポンプ30及びハウジング58は、燃料ポンプ30の外面65がハウジング58の内面67と密に接触するよう構成されている。外面65及び内面67はこの例では各々全体的に円筒状であるが、任意の形状であってもよい。この例において、表面接触しているこの領域は、燃料ポンプ30と燃料蒸気吸着装置32との間の熱伝達領域66を画定する。特にパージサイクル中に燃料ポンプ又は他の発熱装置30から燃料蒸気吸着材料64への熱的エネルギーの伝達を促進又は最大化するために、ハウジング58は、少なくとも熱伝達領域66において、他の周知の燃料蒸気吸着装置よりも熱伝導性を有するように構成されてもよい。例えば、熱伝達領域66において、ハウジング58は、金属部分を含んでもよく、壁厚が比較的小さくてもよく、あるいは発熱装置30との表面接触を最大化するよう比較的正確な寸法に製造された表面を含んでもよい。図示される円筒状又はスリーブ状の構成はほんの一例であり、熱伝達領域66の全表面領域を増加させるような他の構成も可能である。
【0017】
第二燃料蒸気吸着装置34も燃料タンク12の内部に配置され、第一燃料蒸気吸着装置32と動作可能に接続されている。第二燃料蒸気吸着装置34は、動作が第一燃料蒸気吸着装置32と類似しており、ハウジング68、第一アクセスポート70及び第二アクセスポート72を含んでもよい。ハウジング68は活性炭などの燃料蒸気吸着材料74で少なくとも部分的に満たされてもよく、燃料蒸気吸着材料74は燃料蒸気吸着材料64と同じ材料である必要はない。各アクセスポート70、72はハウジング68の内部と流体連結している。燃料蒸気及び/又は他のガスは、流動ガスと燃料蒸気吸着材料74との間の表面接触を最大化するよう構成されたハウジング68内部の内部経路に沿ってアクセスポート70及び72間を何れの方向にも流れることができる。この実施形態では、アクセスポート72と第一燃料蒸気吸着装置32の第一アクセスポート60とが互いに流体連結しており、これにより燃料蒸気が一方の燃料蒸気吸着装置から他方の燃料蒸気吸着装置へと流れることができる。
【0018】
図示された例において、第二燃料蒸気吸着装置34は、燃料タンク12に組み付けられたときに自動車給油中に流入する液体燃料流の中又は近くに位置するように、燃料システムモジュール14の一部として構成される。例えば、第二燃料蒸気吸着装置34は、図示されるように、流入燃料が注入開口を通って燃料タンク12内に入り燃料蒸気吸着装置34に向かうよう、燃料タンクの注入開口22に隣接した位置に配置されてもよい。あるいは、又はこれに加えて、第一燃料蒸気吸着装置32を、給油中に冷却を促進するために、注入開口22に隣接した位置に配置してもよい。また燃料システムモジュール14は、該燃料システムモジュールが燃料タンクに組み付けられたときに燃料蒸気吸着装置32、34のうち少なくとも一つが燃料タンク12内部の底に又は底の近くに位置するよう構成及び配置されてもよい。これにより、(複数の)燃料蒸気吸着装置が給油時の初期において液体燃料に浸されるとともに、給油中に液体燃料の必然的により冷たい部分の中に位置することとなる。
【0019】
ハウジング68は、燃料蒸気吸着材料74と液体燃料16間の熱的エネルギー移動を促進又は最大化するよう、少なくとも部分的に金属材料などの熱伝導材料から構成されてもよい。ハウジング68は、熱的エネルギー移動を促進するための他の特徴、例えば壁厚(例えば注入開口22に最も近いハウジング上部の壁厚)が比較的小さい又は燃料タンク内部の液体燃料とハウジング68内部の燃料蒸気吸着材料74の両方と接触する全表面積を増大させる又は最大化する形状を有するなどの特徴を有していてもよい。
【0020】
この実施形態において、燃料蒸気吸着装置34はパージポート76を含む。燃料蒸気吸着装置34は、燃料蒸気及び/又は他のガスがアクセスポート72に対して何れの方向にも流れるとともに流動ガスと燃料蒸気吸着材料74間の表面接触を最大化するように構成されたハウジング68内部の内部経路に沿って流れるように構成及び配置されたマルチチャンバ炭素キャニスタであってもよい。図示される例において、アクセスポート70は管42を介して気液分離器38に接続し、アクセスポート72は管46を介して第一燃料蒸気吸着装置32に接続される。パージポート76は、管44を介して取付フランジ36の開口を通って最終的に自動車エンジン又は他の自動車部品の吸入口側に接続される。燃料蒸気吸着装置34は、ガスが給油中に第一ポート70から第二ポート72にそしてパージサイクル中に第二ポート72からパージポート76に流れるよう、構成されている。給油中のアクセスポート70とパージサイクル中のパージポート76との間の切り替えは、いろいろな周知技術によって達成することができる。例えば、エンジン動作中にエンジンの吸入口側において生じる真空によって、蒸気が管44を通って流れることを許可し流体が管42を通って流れることを阻止する一以上の弁を直接的又は間接的に開く又は閉じるよう構成してもよい。あるいは気液分離器38は逆止弁を含んでもよく又は逆止弁として動作してもよく、これによりパージサイクル中において燃料蒸気吸着装置34内を流れる流体はアクセスポート72からパージポート76にのみ流れることが許可される。代替的な実施形態では、第二燃料蒸気吸着装置34が省かれ、第一燃料蒸気吸着装置32が、上記した燃料蒸気吸着装置34と関連して記載されたパージポートに似たパージポートを含む。そのような実施形態では、給油中に液体燃料によって第一燃料蒸気吸着装置32が冷却されるよう、第一燃料蒸気吸着装置32を注入開口22に隣接して配置してもよく、さもなければ流入液体燃料流の中又は近くに配置してもよい。
【0021】
取付フランジ36はモジュール開口24を閉じるものである。取付フランジ36は、図示される気液分離器38、弁40、各種管又は他の部品などの他の部品の取付用構造としても機能する。この実施形態において、燃料システムモジュール14の一部が取付フランジ36から離れる方向にタンク体積20内に伸びるよう、燃料システムモジュール14は取付フランジ36、第一及び第二燃料蒸気吸着装置32、34及び発熱装置30を有しており、取付フランジ36、第一及び第二燃料蒸気吸着装置32、34及び発熱装置30は共に接続されている。図示される取付フランジ36は、該取付フランジを貫通する各種開口及び/又は蒸発ガス排出制御システム10内外に流体を移動させる外部ホースもしくは他の管を取り付けるための接続金具78を有する。取付フランジ36は、機械的締結、接着、溶接又はその他の連結法などの周知技術を用いて燃料タンク12に取り付けられる。取付フランジ36とモジュール開口24の一方又は両方はリップ又はシール面を有し、これにより燃料システムモジュール14が燃料タンクに組み付けられたときにモジュール開口24が閉鎖され流体密封される。
【0022】
気液分離器38は、燃料を燃料蒸気吸着装置に入れる前にガスから液体を分離する。気液分離器38は好ましくは図示されるように燃料タンク12の上部又はその近くに配置され、この実施形態では取付フランジ36に取り付けられている。気液分離器38は、燃料タンクがほぼ満タンのときの貯蔵液体燃料16の上側部分などの液体燃料又は気液分離器38と接触したときに凝縮し液体になるような気化燃料を、貯蔵燃料の液体部分に戻すように機能する。この実施形態において、気液分離器38は第二燃料蒸気吸着装置のアクセスポート70と接続しているが、他の実施形態において第一燃料蒸気吸着装置32と接続させてもよい。
【0023】
外気弁40は、圧力センサによってモニター可能な蒸発ガス排出制御システム内の圧力差を生じる大気への流れを止めるよう構成された弁である。該外気弁を、蒸発ガス排出制御システムの漏れに対する完全性を検査するために使用してもよい。一実施形態において、外気弁40は、弁位置を変更することができるソレノイドによって動作する。
【0024】
管42〜50は、燃料蒸気及び/又は他のガスを蒸発ガス排出制御システム部品間で動かす流体運送部材である。一以上の上記管はそれ自体は任意であり、一部の部品は別個の管を必要とせずに互いに直接連結するよう設計されてもよい。管を含む場合、管は好ましくは蒸発ガス排出制御システム内の特定の燃料の化学成分に対して耐性を有する材料から構成される。必要に応じて、いくつかの管を金属材料など比較的硬い材料又は非エラストマー材料又は半硬質プラスチック材料から構成してもよい。例えば、蒸発ガス排出制御システム内の寸法又は距離を画定するために管を用いる場合には、管はそのように構成される。例えば、一以上の管42〜46を、第二燃料蒸気吸着装置34を設置したときに第二燃料蒸気吸着装置34が燃料タンク12の底の近くに効果的に位置決めされるように第二燃料蒸気吸着装置34が確実に取付フランジ36から適切な間隔をおいて設けられるよう、上記材料から構成してもよい。
【0025】
図1の例示的な実施形態における蒸発ガス排出制御システム10の各種部品は、有利には以下に燃料補給及びパージサイクルに関連して記載するように、共に動作する。燃料補給即ち給油は、通常、ある自動車において液体燃料16によって満たされた燃料タンク12のタンク体積20の部分が十分に小さくなり運転手が燃料タンクを補給しようと決めたときに行われる。これは大抵の場合、常にではないが、タンク体積20の燃料蒸気を含むガスの形である部分が、タンク体積20の液体燃料である部分に比べて比較的大きいことを意味する。タンク体積20の液体燃料レベルの上の空間を満たす蒸気は、通常は、燃料蒸気と自動車の動作中に燃料タンクに入った空気との混合物である。燃料補給は持続時間が比較的短く、通常は数分しかかからない。給油開始後、燃料タンク内のガス状混合物の圧力は、液体燃料がタンク体積20内に入るにつれて増加する。この圧力はガスをタンク体積20から出して大気中に流すことで解放される。一以上の燃料蒸気吸着装置は、ガス状混合物から燃料蒸気を取り除くために、大気へと続く経路に設けられ、これにより混合物が大気中に放出されたときに混合物内の燃料蒸気の量が最小化される又は除去される。
【0026】
図示される実施形態による燃料補給中、ガスはタンク体積20から気液分離器38を通って流れ、液体はその下にある貯蔵液体燃料16に戻される。流体は続いて管42を通って第二燃料蒸気吸着装置34内に入り、ここで燃料蒸気吸着材料74が、ガス状混合物から炭化水素又は他の種類の燃料を発熱を伴って吸着する。流体は続いて管46を通って、一部の実施形態で炭化水素洗浄装置とも呼ばれる第一燃料蒸気吸着装置32内に入り、第一燃料蒸気吸着装置32を通って流れる混合物から残留燃料蒸気が取り除かれる。自動車は通常は給油中は停止しているので、燃料ポンプ30はこのとき動作していない。最終的に、残っているガス、通常は燃料を含まない空気、は、取付フランジ36の開口を通って大気中に放出される。燃料蒸気吸着装置34が燃料注入開口22に隣接して配置されているような図1に示す構成の場合、燃料蒸気吸着装置34は流入燃料によって冷却される。例えば、地下に設置された貯蔵タンクからの流入燃料の温度は通常はカ氏約59度である。冷却しないまま置いた場合、いくつかの燃料蒸気吸着装置の温度はカ氏180度以上にまで達成する可能性がある。温度が上昇すると、燃料蒸気吸着材料74の吸着能は低下し、即ち一定量の燃料蒸気吸着材料表面積は高温では低温のときほど多くの燃料蒸気を吸着できなくなる。したがって、図示及び記載される構成は、特に有用な時間即ち燃料蒸気吸着材料がタンク体積からの蒸気を吸着するよう機能している燃料補給中において、燃料蒸気吸着材料を冷却して維持することにより、所定量の燃料蒸気吸着材料が吸着できる燃料蒸気(例えば炭化水素)の量が増加する。第一燃料蒸気吸着装置32もまた流入液体燃料によって冷却されてもよく、これによって第一燃料蒸気吸着装置32の吸着効率も向上する。
【0027】
パージサイクルは給油よりも長期間起こり、一般的に自動車の運転中、即ちエンジンがかかっている間に起こる。パージサイクル中、パージ用空気が外気弁40から第一燃料蒸気吸着装置32へと流れる。空気流は、空気源を加圧することにより又は流路の反対側の端に真空を作ることにより、発生する。勿論、空気以外のパージ用ガスを用いることも可能である。パージサイクル中、燃料ポンプ30は燃料タンクからエンジンに向かって燃料を汲みあげると熱を生じ、したがって燃料蒸気吸着材料64を温めて燃料蒸気吸着材料64の吸着能を低下させ、これにより脱離速度が増大する。燃料蒸気吸着装置32内に蓄えられた燃料蒸気は燃料蒸気吸着材料64から脱離してパージ用空気との混合物として管46を通って第二燃料蒸気吸着装置34に流される。燃料蒸気吸着装置34に入るガス混合物は、燃料蒸気吸着装置32に入った空気よりも温められていてもよく、したがって第二燃料蒸気吸着装置34の燃料蒸気吸着材料74からの燃料蒸気の脱離を助ける。したがって、燃料蒸気吸着装置32及び34の両方は、パージサイクル中に発熱装置30によって直接的又は間接的に加熱されてもよい。燃料を含むガスはその後燃料蒸気吸着装置34の外に流れ、管44を介して蒸発ガス排出制御システムから除去される。燃料を含むガスは燃焼のために自動車エンジンの吸入口側に送られてもよく、あるいはさもなければ自動車によってリサイクル又は再利用されてもよい。
【0028】
蒸発ガス排出制御システム10の記載された実施形態及び他の実施形態は、パージサイクル中に燃料蒸気吸着装置を加熱し、給油中に燃料蒸気吸着装置を冷却する。加熱された及び冷却された燃料蒸気吸着装置は同じ装置であってもよく又は異なる装置であってもよい。したがって、燃料蒸発ガス排出制御方法は、給油中に液体燃料を用いて燃料タンク内の燃料蒸気吸着装置を冷却する工程と、燃料タンクの内部で発生した熱を用いてパージサイクル中に燃料蒸気吸着装置を加熱する工程と、を有する。上記加熱する工程は、燃料ポンプによって発生した熱を用いて燃料蒸気吸着装置を加熱することを含む。上記方法は、給油中に液体燃料を用いて別個の燃料蒸気吸着装置を冷却する工程及び/又はパージサイクル中に前記別個の燃料蒸気吸着装置を加熱する工程を含んでもよい。蒸発ガス排出制御システムが複数の燃料蒸気吸着装置を含む場合、上記方法は、上記加熱する工程中に、燃料蒸気を含むガスを追加の燃料蒸気吸着装置の中を通って送ることを含んでもよい。例えば、図1の例では、上記加熱する工程を燃料ポンプの動作中に行ってもよい。捕捉燃料は第一燃料蒸気吸着装置32の燃料蒸気吸着材料から脱離されて第二燃料蒸気吸着装置34の中を通って送られる。
【0029】
蒸発ガス排出制御システムは、通常は該システムの性能を促進するために無駄になる又はさもなければ役に立たない熱的エネルギー源及び又はヒートシンクを使用してもよい。例えば、燃料ポンプは通常は大気中に放散される又はインタンク燃料ポンプモジュールの場合は液体燃料体積中に放散される余分な熱を発生させる。いくつかの燃料ポンプは、与えられた電気エネルギーのうちの最大約70%以上を熱的エネルギーに変換する。燃料ポンプ30を蒸発ガス排出制御システム10の発熱装置として利用することによって、より短い時間でより多くの燃料蒸気吸着材料表面積が解放されるようなより効率的なパージサイクルが実現し、これにより蒸発ガス排出制御システムの性能が向上する。同時に、燃料ポンプから液体燃料体積への廃熱の移動は最小限に抑えられ、したがって燃料タンク内の燃料の過度の蒸発が減少し、燃料蒸気吸着装置の吸着能の不必要な使用が減少する。
【0030】
同様に、一般的な燃料タンクに入る冷たい燃料は、通常、外部環境から又は自動車部品の隣接位置又はすぐ近くから熱的エネルギーを吸収することによって、時間の経過とともに温度が上昇する。上記の蒸発ガス排出制御システムの実施形態はその代わりに冷たい燃料をヒートシンクとして使用して給油の有用な時間において一以上の燃料蒸気吸着装置から熱を除去する。そのようなシステムは、既に利用可能な加熱源及び冷却源を利用することによって、他の周知の蒸発ガス排出制御システムに比べて向上した性能を提供する。この向上した性能によって、より軽量で、コストの低い、そして使用材料のより少ないより小さいシステム部品の使用が可能となり、したがって自動車の全体の動作効率が向上する。一以上の上記システム部品を燃料タンクの外側に配置させてもよいが、燃料システムモジュール14部品を単一のアセンブリに包含させて燃料システムモジュール14部品を燃料タンクの内部に配置することによって組み立てが容易になるとともに材料取り扱いが容易となる。さらに、システムの部品及び部品間連結部をタンク体積の内部に配置することにより、外部部品を有するシステムに比べて全体的な自動車燃料蒸気放出が減少する。
【0031】
本明細書で開示された実施形態は現時点での好ましい実施形態であるが、その他のさまざまな実施形態も可能である。本明細書では、本発明の同等の形態又は効果の可能性の全てを記載することは意図していない。本明細書に用いられる用語は単に説明のためのものであり、限定するものではない。また、本発明の精神又は範囲内でさまざまな変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクと、燃料蒸気吸着装置と、前記燃料タンクの内部に位置する熱伝達領域において前記燃料蒸気吸着装置と物理的に接触した発熱装置と、を有することを特徴とする蒸発ガス排出制御システム。
【請求項2】
前記発熱装置が燃料ポンプであることを特徴とする請求項1に記載の蒸発ガス排出制御システム。
【請求項3】
前記蒸発ガス排出制御システムが、ハウジング及び該ハウジングの内部に配置された燃料ポンプを有する燃料ポンプモジュールを含み、
前記ハウジングの内部に前記熱伝達領域がある
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸発ガス排出制御システム。
【請求項4】
前記燃料ポンプが前記発熱装置であり、前記燃料蒸気吸着装置が前記ハウジングの内部に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の蒸発ガス排出制御システム。
【請求項5】
前記燃料蒸気吸着装置が、前記熱伝達領域において前記発熱装置を少なくとも部分的に囲んでいることを特徴とする請求項1に記載の蒸発ガス排出制御システム。
【請求項6】
前記蒸発ガス排出制御システムが、前記燃料タンクの内部に配置された、前記燃料蒸気吸着装置と動作可能に接続された追加の燃料蒸気吸着装置を有していることを特徴とする請求項1に記載の蒸発ガス排出制御システム。
【請求項7】
前記燃料蒸気吸着装置と前記追加の燃料蒸気吸着装置との少なくとも一つが、前記燃料タンクのタンク注入開口に隣接して配置され、これにより流入燃料が前記タンク注入開口を通って前記燃料タンク内に流れて前記燃料蒸気吸着装置と前記追加の燃料蒸気吸着装置との少なくとも一つに向かうよう構成されていることを特徴とする請求項5に記載の蒸発ガス排出制御システム。
【請求項8】
前記蒸発ガス排出制御システムが、互いに接続した取付フランジ、前記燃料蒸気吸着装置及び前記発熱装置が設けられた燃料システムモジュールを有し、
前記燃料システムモジュールの一部が前記取付フランジから離れて前記タンクの内部に伸びるよう構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸発ガス排出制御システム。
【請求項9】
燃料蒸発ガス排出制御方法において、
給油中に液体燃料を用いて燃料タンク内の燃料蒸気吸着装置を冷却する工程と、
前記燃料タンクの内部で発生した熱を用いてパージサイクル中に前記燃料蒸気吸着装置を加熱する工程と、を有する
ことを特徴とする燃料蒸発ガス排出制御方法。
【請求項10】
前記加熱する工程が、燃料ポンプによって発生した熱を用いて前記燃料蒸気吸着装置を加熱することを含むことを特徴とする請求項9に記載の燃料蒸発ガス排出制御方法。
【請求項11】
前記給油中に液体燃料を用いて別個の燃料蒸気吸着装置を冷却する工程を有することを特徴とする請求項9に記載の燃料蒸発ガス排出制御方法。
【請求項12】
前記加熱する工程中に燃料蒸気を含むガスを追加の燃料蒸気吸着装置の中に通して送ることを特徴とする請求項9に記載の燃料蒸発ガス排出制御方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−64402(P2013−64402A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−200111(P2012−200111)
【出願日】平成24年9月12日(2012.9.12)
【出願人】(502429154)ティーアイ グループ オートモーティヴ システムズ リミテッド ライアビリティー カンパニー (39)
【Fターム(参考)】