インターフェロン療法の治療効果予測方法及び判定方法
【課題】 C型肝炎に対するインターフェロン療法の有効性を治療開始前に予測又は治療開始後に判定し、患者に対する無用な負担を回避し、医療経済に貢献する。
【解決手段】 患者から採取された血液におけるリポタンパク質中の脂質濃度やリポタンパク質の粒子サイズに基づき、C型肝炎に対するインターフェロン療法の治療効果を予測する方法、及び患者から採取された治療開始前と治療開始後の血液におけるリポタンパク質中の脂質濃度に基づき、C型肝炎に対するインターフェロン療法の治療効果を判定する方法。
【解決手段】 患者から採取された血液におけるリポタンパク質中の脂質濃度やリポタンパク質の粒子サイズに基づき、C型肝炎に対するインターフェロン療法の治療効果を予測する方法、及び患者から採取された治療開始前と治療開始後の血液におけるリポタンパク質中の脂質濃度に基づき、C型肝炎に対するインターフェロン療法の治療効果を判定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果を治療開始前に予測する方法及び治療開始後に判定する方法に関する。これらの方法により、治療見込みのない不要な治療を減らし、治療に伴う患者の無用な負担を回避することができる。
【背景技術】
【0002】
わが国におけるC型慢性肝炎の感染者数は、150〜200万人といわれており、そのうち、約50万人が治療を受けている。
【0003】
C型慢性肝炎を発症した場合、20年で約10〜15%が肝硬変に進展し、そのうち約20%が肝細胞癌などの肝疾患で死亡する。現在、わが国における肝細胞癌による死亡者数は年間約3万5千人であり、これは癌による死亡者数の第3位である。
【0004】
C型慢性肝炎に対しては、肝庇護薬による治療法、瀉血療法、インターフェロン療法などの治療法が行われている。肝庇護薬による治療法は、ウルソデオキシコール酸、強力ネオミノファーゲンシー、漢方等を用いた治療法であり、これらの薬剤は、ALT(GPT)を低下させる効果はあるが、抗ウイルス作用はない。瀉血療法は、瀉血により体内の鉄分を減少させ、これにより鉄による肝細胞への酸化ストレスを軽減する治療法である。インターフェロン療法は、インターフェロンの抗ウイルス作用により肝硬変への進展を抑制、肝癌発生、肝疾患死を抑制する治療法であり、C型慢性肝炎に対する最も有効な治療法である。
【0005】
しかし、このインターフェロン療法にも幾つか問題点がある。インターフェロン療法では長期(通常、48週間)にわたってインターフェロンを投与しなければならず、その間、発熱、倦怠感、食欲不振、抑うつなどの副作用が生じる。また、治療費が高額であるため、患者に対する経済的負担も大きい。更に、インターフェロン療法はすべての患者に効果があるわけではなく、インターフェロンが全く効かない患者もかなりの割合で存在する。C型肝炎ウイルスには幾つかの遺伝子型が存在し、わが国では1b型のウイルスが多いが、インターフェロンは、この1b型のウイルスの肝炎に対して効きにくく、奏効率は50%程度にすぎない。
【0006】
ところで、最近、C型慢性肝炎と肝脂質代謝との関係について報告が幾つかなされている。例えば、Shintaniらは、C型肝炎では、炎症性サイトカインを介して、インスリン抵抗性を誘導し、高インスリン血症をきたし、肝への遊離脂肪酸を負荷することを報告している(非特許文献1)。Korenagaらは、HCVコア蛋白はミトコンドリア電子伝達系を障害し、脂肪酸のβ酸化が抑制されることを報告している(非特許文献2)。Moriishiらは、HCVコア蛋白は脂質合成系の転写因子であるSREBP-1の発現を増加させ、脂肪酸の合成を促進することを報告している(非特許文献3)。Perlemuterらは、HCV感染は中性脂肪の輸送体であるMTP活性を低下させ、VLDL分泌を低下させることを報告している(非特許文献4)。
【0007】
【非特許文献1】Shintani Y et al. Gastroenterology 126, 2004, 840-8
【非特許文献2】Korenaga M et al. J Biol Chem 280, 2005, 37481-8
【非特許文献3】Moriishi K et al. Proc Natl Acad Sci USA 104, 2007, 1661-6
【非特許文献4】Perlemuter G et al. FASEB J 16, 2002, 185-94
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、インターフェロン療法はC型慢性肝炎に対する有効な治療法であるが、治療の効果がない患者が存在し、また、副作用や高額な医療費といった患者に対する身体的、経済的負担も大きい。
【0009】
インターフェロン療法の有効性について、治療開始前に予測又は治療開始後に正確に判定できるようになれば、患者に対する無用な負担を回避できるだけでなく、医療経済においても貢献する。
【0010】
本発明は、以上の背景の下、インターフェロン療法の有効性を治療開始前に予測する手段及び治療開始後に判定する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、インターフェロン療法の効果とリポタンパク質中の脂質量とが密接に関連し、治療開始前にリポタンパク質中の脂質量を測定し、その測定値や二種類の測定値の比により、インターフェロン療法の有効性を予測できることを見出した。Fernandez-Mirandaらは、インターフェロン療法の奏効者の脂質プロファイルは無効者のものと違いはなかったと報告している(Fernandez-Miranda C. et al., The American Journal of Gastroenterology, Vol.93, No.10, 1998, p.1901-1904〔1991頁左欄20-22行〕)。従って、リポタンパク質中の脂質量の測定により、インターフェロン療法の有効性が予測できることは全く予想外のことであった。
【0012】
また、本発明者は、インターフェロン療法の効果と血液中に含まれるリポタンパク質の粒子サイズとが密接に関連し、治療開始前に血液中に含まれるリポタンパク質の平均粒子サイズを求めることにより、インターフェロン療法の有効性を予測できることも見出した。
【0013】
更に、本発明者は、インターフェロン療法が有効である場合は、治療開始後にリポタンパク質中の脂質量に大きな変化が生じ、これによってインターフェロン療法の有効性を判定できることも見出した。
【0014】
本発明は、以上の知見に基づき、完成されたものである。
【0015】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(19)を提供するものである。
(1)C型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果を予測する方法であって、患者から採取された血液におけるリポタンパク質中の脂質濃度又は血液中の脂質濃度を測定し、その濃度を基準値と比較することにより、治療効果を予測することを特徴とするインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(2)リポタンパク質が超低比重リポタンパク質であり、脂質が中性脂肪であり、中性脂肪濃度が基準値よりも高い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする(1)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(3)超低比重リポタンパク質が、粒子サイズが31.3nm〜53.6nmの超低比重リポタンパク質であることを特徴とする(2)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(4)リポタンパク質が高比重リポタンパク質であり、脂質が中性脂肪であり、中性脂肪濃度が基準値よりも低い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも高い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする(1)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(5)高比重リポタンパク質が、粒子サイズが10.9nm〜15nmの高比重リポタンパク質であることを特徴とする(4)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(6)リポタンパク質が低比重リポタンパク質であり、脂質がコレステロールであり、コレステロール濃度が基準値よりも高い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする(1)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(7)低比重リポタンパク質が、粒子サイズが20.7nm〜28.6nmの低比重リポタンパク質であることを特徴とする(6)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(8)リポタンパク質が高比重リポタンパク質であり、脂質がリン脂質であり、リン脂質濃度が基準値よりも低い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも高い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする(1)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(9)高比重リポタンパク質が、粒子サイズが10.9nm〜16.7nmの高比重リポタンパク質であることを特徴とする(8)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(10)リポタンパク質が高比重リポタンパク質であり、脂質がフリーコレステロールであり、フリーコレステロール濃度が基準値よりも低い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも高い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする(1)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(11)高比重リポタンパク質が、粒子サイズが10.9nm〜15nmの高比重リポタンパク質であることを特徴とする(10)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(12)C型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果を予測する方法であって、患者から採取された血液におけるリポタンパク質中の脂質濃度又は血液中の脂質濃度を測定し、測定した脂質濃度の比を基準値と比較することにより、治療効果を予測することを特徴とするインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(13)脂質濃度の比が、超低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度/全リポタンパク質中の中性脂肪濃度であり、前記比の値が基準値よりも高い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする(12)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(14)脂質濃度の比が、超低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度/高比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度であり、前記比の値が基準値よりも高い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする(12)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(15)C型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果を予測する方法であって、患者から採取された血液中に含まれるリポタンパク質の平均粒子サイズを求め、その粒子サイズを基準値と比較することにより、治療効果を予測することを特徴とするインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(16)リポタンパク質が低比重リポタンパク質であり、低比重リポタンパク質の平均粒子サイズが基準値よりも小さい場合は治療効果があると予測し、基準値よりも大きい場合は治療効果がないと予測することを特徴とする(15)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(17)リポタンパク質が高比重リポタンパク質であり、高比重リポタンパク質の平均粒子サイズが基準値よりも小さい場合は治療効果があると予測し、基準値よりも大きい場合は治療効果がないと予測することを特徴とする(15)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(18)C型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果を判定する方法であって、患者から採取された治療開始前と治療開始後の血液におけるリポタンパク質中の脂質濃度を測定し、治療開始前の脂質濃度と治療開始後の脂質濃度とを比較することにより、治療効果を判定することを特徴とするインターフェロン療法の治療効果の判定方法。
(19)リポタンパク質が超低比重リポタンパク質であり、脂質が中性脂肪であり、治療開始後の中性脂肪濃度の方が高ければ治療効果があると判定し、治療開始後の中性脂肪濃度の方が高くなければ治療効果がないと判定することを特徴とする(18)に記載のインターフェロン療法の治療効果の判定方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、インターフェロン療法の有効性を治療開始前に予測することが可能になる。これにより、治療見込みのない不要な治療を減らし、治療に伴う身体的・経済的負担を回避することができ、また医療経済にも大きく貢献することができる。また、現在、インターフェロン療法による治療を躊躇している患者に対し、治療への大きな動機付けともなる。
【0017】
また、本発明により、インターフェロン療法の有効性を治療開始後に正確に判定することも可能になる。これにより、有効でないと判定された場合は治療を中止することができ、治療開始前に予測する場合と同様、患者に対する負担回避と医療経済への貢献が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
(1)脂質濃度による治療効果の予測方法
本発明のC型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果の予測方法は、患者から採取された血液におけるリポタンパク質中の脂質濃度又は血液中の脂質濃度を測定し、その濃度を基準値と比較することにより、治療効果を予測することを特徴とするものである。
【0020】
リポタンパク質としては、例えば、カイロミクロン、超低比重リポタンパク質、低比重リポタンパク質、高比重リポタンパク質などを挙げることができる。これらのリポタンパク質は、通常比重によって分類されているが、粒子サイズによって分類されたものであってもよい。後述する実施例では、粒子サイズが80nmを超えるリポタンパク質をカイロミクロンとし、粒子サイズが30nm〜80nmのリポタンパク質を超低比重リポタンパク質とし、粒子サイズが16nm〜30nmのリポタンパク質を低比重リポタンパク質とし、粒子サイズが8nm〜16nmのリポタンパク質を高比重リポタンパク質としている。また、測定対象とするリポタンパク質は、上記のカイロミクロンや超低比重リポタンパク質などの一般的な分類に従ったものでなくてもよく、例えば、特定の比重のリポタンパク質、特定の粒子サイズのリポタンパク質といったものでもよい。後述する実施例では、リポタンパク質を粒子サイズにより20の分画(G01〜G20)に分けており、このような分画の一又は二以上を測定対象とするリポタンパク質としてもよい。
【0021】
脂質としては、リポタンパク質中に含まれている脂質であれば特に限定されず、例えば、中性脂肪、コレステロール、フリーコレステロール、コレステロールエステル、リン脂質などを挙げることができる。
【0022】
リポタンパク質中の脂質濃度を測定する方法は特に限定されず、HPLCなどで目的のリポタンパク質を分離し、既知の方法により目的の脂質濃度を測定すればよい。好ましい測定方法としては、例えば、国際公開第2006/057440号パンフレットの図1に記載されている装置を用いた測定方法を挙げることができる。
【0023】
本発明の方法の具体例としては、以下の(1−A)〜(1−E)の方法を例示できる。
【0024】
(1−A)患者から採取した血液中の超低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度を測定し、その濃度が基準値よりも高い場合には治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測する方法。
【0025】
中性脂肪濃度を測定する超低比重リポタンパク質は、特定の粒子サイズのものであってもよく、例えば、粒子サイズが31.3nm〜53.6nmの超低比重リポタンパク質を測定対象としてもよい。
【0026】
基準値は、年齢、病態、治療への意思といった患者の状況に応じて決めればよい。例えば、患者が老齢で副作用が大きな負担となり、なおかつインターフェロンによる治療を強く希望していないような場合には、基準値を高く設定することが好ましい。こうすることにより、無効であるにもかかわらず奏効と誤認してしまう可能性を低くすることができる。逆に、患者が若く副作用があまり負担にならず、なおかつインターフェロンによる治療を強く希望しているような場合には、基準値を低く設定することが好ましい。こうすることにより、奏効であるにもかかわらず無効と誤認してしまう可能性を低くすることができる。
【0027】
基準値の具体的な値は、超低比重リポタンパク質全体を測定対象にするのであれば、48.0〜70.9mg/dlの範囲内に設定するのが好ましく、50.0〜68.9mg/dlの範囲内に設定するのが更に好ましく、52.0〜66.9mg/dlの範囲内に設定するのが最も好ましく、粒子サイズが31.3nm〜53.6nmの超低比重リポタンパク質を測定対象とするのであれば、28.2〜44.7mg/dlの範囲内に設定するのが好ましく、30.2〜42.7mg/dlの範囲内に設定するのが更に好ましく、32.2〜40.7mg/dlの範囲内に設定するのが最も好ましい。
【0028】
(1−B)患者から採取した血液中の高比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度を測定し、その濃度が基準値よりも低い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも高い場合は治療効果がないと予測する方法。
【0029】
中性脂肪濃度を測定する高比重リポタンパク質は、特定の粒子サイズのものであってもよく、例えば、粒子サイズが10.9nm〜15nmの高比重リポタンパク質を測定対象としてもよい。
【0030】
基準値は、(1−A)の方法と同様、患者の状況に応じて決めればよい。基準値の具体的な値は、高比重リポタンパク質全体を測定対象にするのであれば、16.1〜21.5mg/dlの範囲内に設定するのが好ましく、16.6〜21.0mg/dlの範囲内に設定するのが更に好ましく、17.1〜20.5mg/dlの範囲内に設定するのが最も好ましく、粒子サイズが10.9nm〜15nmの高比重リポタンパク質を測定対象とするのであれば、4.2〜9.2mg/dlの範囲内に設定するのが好ましく、4.7〜8.7mg/dlの範囲内に設定するのが更に好ましく、5.2〜8.2mg/dlの範囲内に設定するのが最も好ましい。
【0031】
(1−C)患者から採取した血液中の低比重リポタンパク質中のコレステロール濃度を測定し、その濃度が基準値よりも高い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測する方法。
【0032】
コレステロール濃度を測定する低比重リポタンパク質は、特定の粒子サイズのものであってもよく、例えば、粒子サイズが20.7nm〜28.6nmの低比重リポタンパク質を測定対象としてもよい。
【0033】
基準値は、(1−A)の方法と同様、患者の状況に応じて決めればよい。基準値の具体的な値は、低比重リポタンパク質全体を測定対象にするのであれば、81.7〜99.1mg/dlの範囲内に設定するのが好ましく、82.7〜98.1mg/dlの範囲内に設定するのが更に好ましく、83.7〜97.1mg/dlの範囲内に設定するのが最も好ましく、粒子サイズが20.7nm〜28.6nmの低比重リポタンパク質を測定対象とするのであれば、45.9〜59.5mg/dlの範囲内に設定するのが好ましく、46.9〜58.5mg/dlの範囲内に設定するのが更に好ましく、47.9〜57.5mg/dlの範囲内に設定するのが最も好ましい。
【0034】
(1−D)患者から採取した血液中の高比重リポタンパク質中のリン脂質濃度を測定し、その濃度が基準値よりも低い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも高い場合は治療効果がないと予測する方法。
【0035】
リン脂質濃度を測定する高比重リポタンパク質は、特定の粒子サイズのものであってもよく、例えば、粒子サイズが10.9nm〜16.7nmの高比重リポタンパク質を測定対象としてもよい。
【0036】
基準値は、(1−A)の方法と同様、患者の状況に応じて決めればよい。基準値の具体的な値は、高比重リポタンパク質全体を測定対象にするのであれば、106.2〜146.1mg/dlの範囲内に設定するのが好ましく、111.2〜141.1mg/dlの範囲内に設定するのが更に好ましく、116.2〜136.1mg/dlの範囲内に設定するのが最も好ましく、粒子サイズが10.9nm〜16.7nmの高比重リポタンパク質を測定対象とするのであれば、29.6〜66.9mg/dlの範囲内に設定するのが好ましく、32.6〜63.9mg/dlの範囲内に設定するのが更に好ましく、35.6〜60.9mg/dlの範囲内に設定するのが最も好ましい。
【0037】
(1−E)患者から採取した血液中の高比重リポタンパク質中のフリーコレステロール濃度を測定し、その濃度が基準値よりも低い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも高い場合は治療効果がないと予測する方法。
【0038】
フリーコレステロール濃度を測定する高比重リポタンパク質は、特定の粒子サイズのものであってもよく、例えば、粒子サイズが10.9nm〜15nmの高比重リポタンパク質を測定対象としてもよい。
【0039】
基準値は、(1−A)の方法と同様、患者の状況に応じて決めればよい。基準値の具体的な値は、高比重リポタンパク質全体を測定対象にするのであれば、10.5〜15.1mg/dlの範囲内に設定するのが好ましく、11.0〜14.6mg/dlの範囲内に設定するのが更に好ましく、11.5〜14.1mg/dlの範囲内に設定するのが最も好ましく、粒子サイズが10.9nm〜15nmの高比重リポタンパク質を測定対象とするのであれば、2.7〜6.6mg/dlの範囲内に設定するのが好ましく、3.2〜6.1mg/dlの範囲内に設定するのが更に好ましく、3.7〜5.6mg/dlの範囲内に設定するのが最も好ましい。
【0040】
(2)脂質濃度の比による治療効果の予測方法
本発明のC型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果の予測方法は、患者から採取された血液におけるリポタンパク質中の脂質濃度又は血液中の脂質濃度を測定し、測定した脂質濃度の比を基準値と比較することにより、治療効果を予測するものである。
【0041】
脂質濃度の比は、治療効果予測の指標となるものであればどのようなものでもよく、以下の表1〜3に示す比を例示できる。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
上記表に示した比の中でも、超低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度と高比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度の比、低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度と高比重リポタンパク質中のコレステロール濃度の比、高比重リポタンパク質中のコレステロールとリン脂質濃度の比、超低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度と全リポタンパク質の中性脂肪濃度の比、超低比重リポタンパク質中のリン脂質濃度と高比重リポタンパク質中のリン脂質濃度の比、超低比重リポタンパク質中のフリーコレステロール濃度と高比重リポタンパク質中のフリーコレステロール濃度の比などを好ましい比として例示できる。
【0045】
本発明の方法の具体例としては、以下の(2−A)及び(2−B)の方法を例示できる。
【0046】
(2−A)患者から採取された血液における超低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度と全リポタンパク質の中性脂肪濃度とを測定し、超低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度/全リポタンパク質の中性脂肪濃度の値を求め、この値が基準値よりも高い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測する方法。
【0047】
基準値は、(1−A)の方法と同様、患者の状況に応じて決めればよい。基準値の具体的な値は、0.71〜0.32の範囲内に設定するのが好ましく、0.61〜0.36の範囲内に設定するのが更に好ましく、0.56〜0.43の範囲内に設定するのが最も好ましい。
【0048】
(2−B)患者から採取された血液における超低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度と高比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度とを測定し、超低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度/高比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度の値を求め、この値が基準値よりも高い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測する方法。
【0049】
基準値は、(1−A)の方法と同様、患者の状況に応じて決めればよい。基準値の具体的な値は、6.72〜1.18の範囲内に設定するのが好ましく、5.78〜1.61の範囲内に設定するのが更に好ましく、3.76〜2.84の範囲内に設定するのが最も好ましい。
【0050】
(3)粒子サイズによる治療効果の予測方法
本発明のC型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果の予測方法は、患者から採取された血液中に含まれるリポタンパク質の平均粒子サイズを求め、その粒子サイズを基準値と比較することにより、治療効果を予測することを特徴とするものである。
【0051】
平均粒子サイズを求めるリポタンパク質は、カイロミクロン、超低比重リポタンパク質、低比重リポタンパク質、高比重リポタンパク質のいずれでもよく、これらを二つ以上組み合わせてもよい。好ましいリポタンパク質としては、低比重リポタンパク質、高比重リポタンパク質を挙げることができる。
【0052】
リポタンパク質の平均粒子サイズを求める方法は特に限定されず、HPLCなどにより血液中のリポタンパク質を粒子サイズによって分けた後、粒子サイズごとのリポタンパク質量を測定し、それから平均粒子サイズを求めればよい。
【0053】
本発明の方法の具体例としては、以下の(3−A)及び(3−B)の方法を例示できる。
【0054】
(3−A)患者から採取された血液中に含まれる低比重リポタンパク質の平均粒子サイズを求め、その平均粒子サイズが基準値よりも小さい場合は治療効果があると予測し、基準値よりも大きい場合は治療効果がないと予測する方法。
【0055】
基準値は(1−A)の方法と同様、患者の状況に応じて決めればよい。基準値の具体的な値は、25.5〜27.0nmの範囲内に設定するのが好ましく、25.6〜26.9nmの範囲内に設定するのが更に好ましく、25.7〜26.8nmの範囲内に設定するのが最も好ましい。
【0056】
(3−B)患者から採取された血液中に含まれる高比重リポタンパク質の平均粒子サイズを求め、その平均粒子サイズが基準値よりも小さい場合は治療効果があると予測し、基準値よりも大きい場合は治療効果がないと予測する方法。
【0057】
基準値は(1−A)の方法と同様、患者の状況に応じて決めればよい。基準値の具体的な値は、10.6〜11.6nmの範囲内に設定するのが好ましく、10.7〜11.5nmの範囲内に設定するのが更に好ましく、10.8〜11.4nmの範囲内に設定するのが最も好ましい。
【0058】
(4)治療効果の判定方法
本発明のC型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果の判定方法は、患者から採取された治療開始前と治療開始後の血液におけるリポタンパク質中の脂質濃度を測定し、治療開始前の脂質濃度と治療開始後の脂質濃度とを比較することにより、治療効果を判定することを特徴とするものである。
【0059】
リポタンパク質中の脂質濃度の測定は、上述した(1)の方法と同様に行うことができる。
【0060】
具体的な方法としては、患者から採取された治療開始前と治療開始後の血液における低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度を測定し、治療開始後の中性脂肪濃度の方が高ければ治療効果があると判定し、治療開始後の中性脂肪濃度の方が高くなければ治療効果がないと判定する方法、を例示できる。
【0061】
ここで、「治療開始後の中性脂肪濃度の方が高い」とは、治療開始後の中性脂肪濃度が治療開始前の中性脂肪濃度の通常1.1倍以上、好ましくは1.2倍以上、更に好ましくは1.3倍以上であることをいう。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0063】
〔実施例1〕
(1)材料及び方法
(1−1)血清試料
C型慢性肝炎患者のうち、HCV群別により「1型」と分類され、かつHCV RNA定量(アンプリコアハイレンジ法)にて高ウイルス量タイプと判断された患者21名を対象として、採血し、血清分離を行った。採血は、早朝空腹時に行い、予め患者から文書による同意を得た後に行った。
【0064】
(1−2)インターフェロン療法の効果の判定
上記患者21名に対し、インターフェロンによる治療を行った。治療は、ペグインターフェロンα−2bとリバビリン併用療法により行い、投与量は厚生労働省治療ガイドラインに従い、治療期間は48週とした。
【0065】
治療終了後半年間HCV RNA定性(アンプリコア定性法)にて、HCV RNAが検出されなかった例を奏効、HCV RNAが検出された場合を無効と判定した。
【0066】
(1−3)中性脂肪等の測定
本実施例において、血清試料に含まれるリポタンパク質の分析は、国際公開第2006/057440号パンフレットの図1に記載されているHPLCを利用した分析装置を用いて行った。具体的に、本実施例では分析装置におけるHPLC装置として、Prominenceシリーズ(島津製作所社製)を使用した。分析カラムは、TSKgel LipopropakXL(東ソー株式会社製)を用いた。本実施例では、HPLC装置により分離されたカイロマイクロン(CM)、超低比重リポタンパク(VLDL)、低比重リポタンパク(LDL)、高比重リポタンパク(HDL)に含まれるコレステロール、中性脂肪、リン脂質及びフリーコレステロールを検出した。
【0067】
コレステロールの検出には、検出用試薬としてコレステロール測定試薬 TCHO試薬SK-A及びTCHO試薬SK-B(東洋紡績株式会社製)を使用した。コレステロールの検出に際しては、それぞれの酵素を2:1の比率で混合した反応試薬を、HPLC装置により分離されたサンプルとシステム内で1:1の比率で混合した。この混合液を37℃に保った恒温器内で3分間保持した後、550nmの波長で測定することでコレステロールを検出した。
【0068】
中性脂肪の検出には、検出用試薬として中性脂肪測定試薬 TG試薬SK-A及びTG試薬SK-B(東洋紡績株式会社製)を使用した。中性脂肪の検出に際しては、それぞれの酵素を3:1の比率で混合した反応試薬を、HPLC装置により分離されたサンプルとシステム内で1:1の比率で混合した。この混合液を37℃に保った恒温器内で3分間保持した後、550nmの波長で測定することで中性脂肪を検出した。
【0069】
リン脂質の検出には、検出用試薬としてリン脂質測定用試薬 リキッドPL (東洋紡績株式会社製)を使用した。リン脂質の検出に際しては、リキッドPL酵素試薬AとリキッドPL酵素試薬Bを2:1の比率で混合した反応試薬を、HPLC装置により分離されたサンプルとシステム内で1:1の比率で混合した。この混合液を37℃に保った恒温器内で約3分間保持した後、550nmの波長で測定することでリン脂質を検出した。
【0070】
フリーコレステロールの検出には、検出用試薬としてフリーコレステロール測定試薬コレスカラー・リキッドFC(東洋紡績株式会社)を使用した。フリーコレステロールの検出に際しては、コレスカラー・リキッドFC酵素試薬Aとコレスカラー・リキッドFC酵素試薬Bを2:1の比率で混合した反応試薬を、HPLC装置により分離されたサンプルとシステム内で1:1の比率で混合した。この混合液を37℃に保った恒温器内で3分間保持した後、550nmの波長で測定することでフリーコレステロールを検出した。
【0071】
分析装置を用いたリポタンパク質の分析は以下の条件で行った。先ず、血清試料を10μL注入し、溶離液としてTSK eluentLP-1又はLP-2を流速0.7ml/minで送液した。得られたクロマトグラムより、国際公開第2006/057440号パンフレットに示された分析プログラムにより、血清試料に含まれるリポタンパク質分画(CM、VLDL、LDL、HDL)中のコレステロール、中性脂肪、リン脂質、フリーコレステロールの濃度を求めた。すなわち、リポタンパク質を粒子サイズによってG01〜G20の20の分画(G01:>90nm、G02:64-90nm、G03:53.6-75nm、G04:44.5-64nm、G05:36.8-53.6nm、G06:31.3-44.5nm、G07:28.6-36.8nm、G08:25.5-31.3nm、G09:23-28.6nm、G10:20.7-25.5nm、G11:18.6-23nm、G12:16.7-20.7nm、G13:15-18.6nm、G14:13.5-16.7nm、G15:12.1-15nm、G16:10.9-13.5nm、G17:9.8-12.1nm、G18:8.8-10.9nm、G19:7.6-9.8nm、G20:<8.8nm)に分け、得られたクロマトグラムを、このG01〜G20の合計20個のピークに分割し、20個のピークに基づいて各成分の濃度を測定した。なお、本実施例では、対照となる標準血清として、デタミナー標準血清HDL-C測定用(協和メディックス株式会社)を用いた。
【0072】
(2)結果
(2−1)中性脂肪濃度
G01〜G20の分画における中性脂肪濃度の測定結果を図1に示す。また、CM、VLDL、LDL、HDL分画における中性脂肪濃度の測定結果を図2に示す。
【0073】
無効例では奏効例に比べて、VLDL中性脂肪濃度が低く、LDLとHDL中性脂肪濃度が高かった。特にVLDLのうち粒子サイズが31.3nm〜53.6nmの中性脂肪濃度が低く、HDLでは粒子サイズが10.9nm〜15nmの中性脂肪濃度が高かった。
【0074】
VLDL全体の中性脂肪濃度平均値は、無効例で48.0mg/dl、奏効例で70.9mg/dlであった。LDL全体の中性脂肪濃度平均値は、無効例で36.8mg/dl、奏効例で30.9mg/dlであった。HDL全体の中性脂肪濃度平均値は、無効例で21.5mg/dl、奏効例で16.1mg/dlであった。
【0075】
粒子サイズ31.3nm〜53.6nmのVLDLの中性脂肪濃度平均値は、無効例で28.2mg/dl、奏効例で44.7mg/dlであった。粒子サイズが10.9nm〜15nmのHDLの中性脂肪濃度平均値は、無効例で9.2mg/dl、奏効例で4.2mg/dlであった。
【0076】
(2−2)コレステロール濃度
G01〜G20の分画におけるコレステロール濃度の測定結果を図3に示す。また、CM、VLDL、LDL、HDL分画におけるコレステロール濃度の測定結果を図4に示す。
【0077】
無効例では奏効例に比べて、LDLコレステロール濃度が低く、HDLコレステロール濃度が高かった。特にLDLのうち粒子サイズが20.7nm〜28.6nmのコレステロール濃度が高かった。
【0078】
LDL全体のコレステロール濃度平均値は、無効例で81.7mg/dl、奏効例で99.1mg/dlであった。HDL全体のコレステロール濃度平均値は、無効例で57.8mg/dl、奏効例で46.7mg/dlであった。粒子サイズが20.7nm〜28.6nmのLDLのコレステロール濃度平均値は、無効例で45.9mg/dl、奏効例で59.5mg/dlであった。
【0079】
(2−3)リン脂質濃度
G01〜G20の分画におけるリン脂質濃度の測定結果を図5に示す。また、CM、VLDL、LDL、HDL分画におけるリン脂質濃度の測定結果を図6に示す。
【0080】
無効例では奏効例に比べて、HDLリン脂質濃度が高かった。特にHDLのうち粒子サイズが10.9nm〜16.7nmのリン脂質濃度が高かった。
【0081】
HDL全体のリン脂質濃度平均値は、無効例で146.1mg/dl、奏効例で106.2mg/dlであった。粒子サイズが10.9nm〜16.7nmのHDLのリン脂質濃度平均値は、無効例で66.9mg/dl、奏効例で29.6mg/dlであった。
【0082】
(2−4)フリーコレステロール濃度
G01〜G20の分画におけるフリーコレステロール濃度の測定結果を図7に示す。また、CM、VLDL、LDL、HDL分画におけるフリーコレステロール濃度の測定結果を図8に示す。
【0083】
無効例では奏効例に比べて、HDLフリーコレステロール濃度が高かった。特にHDLのうち粒子サイズが10.9nm〜15nmのフリーコレステロール濃度が高かった。
【0084】
HDL全体のフリーコレステロール濃度平均値は、無効例で15.1mg/dl、奏効例で10.5mg/dlであった。粒子サイズが10.9nm〜15nmのHDLのフリーコレステロール濃度平均値は、無効例で6.6mg/dl、奏効例で2.7mg/dlであった。
【0085】
(2−5)低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度とコレステロール濃度の比
低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度とコレステロール濃度の比を図9に示す。無効例では奏効例に比べて、コレステロール濃度/中性脂肪濃度の値が低かった。
【0086】
(2−6)脂質濃度についての考察
以上の結果から、インターフェロン治療無効例群では、VLDL分泌能が低下し、またHDL代謝が停滞していると考えられる。これらの原因として、肝臓における脂質合成系の異常や、VLDL生産に関わるMTP活性の低下、HDL代謝にかかわるHTGL生産の低下が考えられる。すなわち、VLDL中性脂肪、HDLのコレステロール、中性脂肪、フリーコレステロール、リン脂質の代謝異常を引き起こしているMTP活性やHTGL量・活性を測定することで治療効果予測が可能と考えられる。
【0087】
(2−7)低比重リポタンパ質及び高比重リポタンパク質の平均粒子サイズ
低比重リポタンパク質及び高比重リポタンパク質の平均粒子サイズの分布を図10及び図11にぞれぞれ示す。無効例では、奏効例に比べてLDL及びHDLの平均粒子サイズが大きい方に分布していることがわかった。
【0088】
〔実施例2〕
インターフェロンによる治療開始半年後に血液を採取し、血清分離を行った。奏効例及び無効例の患者をそれぞれ一名ずつ選び、G01〜G20分画における中性脂肪濃度を治療前と治療後(治療開始半年後)で比較した。奏効例の中性脂肪濃度を図12に、無効例の中性脂肪濃度を図13にそれぞれ示す。
【0089】
インターフェロン治療奏効患者では、インターフェロン治療により、VLDL中性脂肪濃度が増加することが確認された。一方、インターフェロン治療無効患者では、インターフェロンにより、VLDL中性脂肪含濃度は増加せず低下していた。すなわち、インターフェロン治療により脂質代謝が改善している場合には、治療効果が得られていると判断され、一方、改善がみられない場合には、治療効果が得られていないと考えられる。
【0090】
〔実施例3〕
実施例1で測定したVLDL中性脂肪濃度と全リポタンパク質中性脂肪濃度から両者の比(VLDL中性脂肪濃度/全リポタンパク質中性脂肪濃度、以下「VLDL tg/Total tg」という。)を算出した。奏効例及び無効例それぞれについてのVLDL tg/Total tgを図14に示す。
【0091】
また、カットオフ値(基準値)を0.54とし、VLDL tg/Total tgがそれより高い値を示した者を奏効と予測し、それより低い値を示した者を無効と予測した。この予測方法の感度、特異度、陽性反応適中度、陰性反応適中度を下表に示す。なお、感度等の意味は、以下のとおりである。
【0092】
感度:実際にインターフェロン療法が有効であった者のうち、上記予測方法により有効であると予測された者の割合
特異度:実際にインターフェロン療法が無効であった者のうち、上記予測方法により無効であると予測された者の割合
陽性反応適中度:上記予測方法によりインターフェロン療法が有効であると予測された者のうち、実際に有効であった者の割合
陰性反応適中度:上記予測方法によりインターフェロン療法が無効であると予測された者のうち、実際に無効であった者の割合
【0093】
【表4】
表4に示すように、感度、特異度、陽性反応適中度、陰性反応適中度はいずれも高い値を示した。このことから、VLDL tg/Total tgを指標とした予測方法が高い精度でインターフェロン療法の効果を予測できることがわかった。
【0094】
さらに、VLDL tg/Total tgを指標として奏効例を予測した場合のROC曲線を作成した。これを図15に示す。ROC曲線下の面積は0.889と1に近い値を示し、この方法が高い精度でインターフェロン療法の効果を予測できることがわかった。
【0095】
〔実施例4〕
実施例1で測定したVLDL中性脂肪濃度とHDL中性脂肪濃度から両者の比(VLDL中性脂肪濃度/HDL中性脂肪濃度、以下「VLDL tg/HDL tg」という。)を算出した。奏効例及び無効例それぞれについてのVLDL tg/HDL tgを図16に示す。
【0096】
また、カットオフ値(基準値)を2.85とし、VLDL tg/HDL tgがそれより高い値を示した者を奏効と予測し、それより低い値を示した者を無効と予測した。この予測方法の感度、特異度、陽性反応適中度、陰性反応適中度を下表に示す。なお、感度等の意味は、実施例3と同じである。
【0097】
【表5】
表5に示すように、感度、特異度、陽性反応適中度、陰性反応適中度はいずれも高い値を示した。このことから、VLDL tg/HDL tgを指標とした予測方法が高い精度でインターフェロン療法の効果を予測できることがわかった。
【0098】
さらに、VLDL tg/HDL tgを指標として奏効例を予測した場合のROC曲線を作成した。これを図17に示す。ROC曲線下の面積は0.907と1に近い値を示し、この方法が高い精度でインターフェロン療法の効果を予測できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】G01〜G20分画における中性脂肪濃度を示す図である。図中の※は統計学的に有意であったことを示す(p<0.05)。
【図2】CM、VLDL、LDL、HDL分画における中性脂肪濃度を示す図である。図中の※は統計学的に有意であったことを示す(p<0.05)。
【図3】G01〜G20分画におけるコレステロール濃度を示す図である。図中の※は統計学的に有意であったことを示す(p<0.05)。
【図4】CM、VLDL、LDL、HDL分画におけるコレステロール濃度を示す図である。図中の※は統計学的に有意であったことを示す(p<0.05)。
【図5】G01〜G20分画におけるリン脂質濃度を示す図である。図中の※は統計学的に有意であったことを示す(p<0.05)。
【図6】CM、VLDL、LDL、HDL分画におけるリン脂質濃度を示す図である。図中の※は統計学的に有意であったことを示す(p<0.05)。
【図7】G01〜G20分画におけるフリーコレステロール濃度を示す図である。図中の※は統計学的に有意であったことを示す(p<0.05)。
【図8】CM、VLDL、LDL、HDL分画におけるフリーコレステロール濃度を示す図である。図中の※は統計学的に有意であったことを示す(p<0.05)。
【図9】奏効例及び無効例の(コレステロール濃度/中性脂肪濃度)の値を示す図。
【図10】LDLの平均粒子サイズの分布を示した図。図中の●は中央値を示す。
【図11】HDLの平均粒子サイズの分布を示した図。図中の●は中央値を示す。
【図12】G01〜G20分画における奏効例患者の中性脂肪濃度を示す図である。
【図13】G01〜G20分画における無効例患者の中性脂肪濃度を示す図である。
【図14】奏効例及び無効例の(VLDL中性脂肪濃度/全リポタンパク質中性脂肪濃度)の値を示す図。図中の●は中央値を示し、※は統計学的に有意であったことを示す(p<0.01)。
【図15】VLDL中性脂肪濃度/全リポタンパク質中性脂肪濃度を指標として奏効例を予測した場合のROC曲線を示す図。
【図16】奏効例及び無効例の(VLDL中性脂肪濃度/HDL中性脂肪濃度)の値を示す図。図中の●は中央値を示し、※は統計学的に有意であったことを示す(p<0.01)。
【図17】VLDL中性脂肪濃度/HDL中性脂肪濃度を指標として奏効例を予測した場合のROC曲線を示す図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、C型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果を治療開始前に予測する方法及び治療開始後に判定する方法に関する。これらの方法により、治療見込みのない不要な治療を減らし、治療に伴う患者の無用な負担を回避することができる。
【背景技術】
【0002】
わが国におけるC型慢性肝炎の感染者数は、150〜200万人といわれており、そのうち、約50万人が治療を受けている。
【0003】
C型慢性肝炎を発症した場合、20年で約10〜15%が肝硬変に進展し、そのうち約20%が肝細胞癌などの肝疾患で死亡する。現在、わが国における肝細胞癌による死亡者数は年間約3万5千人であり、これは癌による死亡者数の第3位である。
【0004】
C型慢性肝炎に対しては、肝庇護薬による治療法、瀉血療法、インターフェロン療法などの治療法が行われている。肝庇護薬による治療法は、ウルソデオキシコール酸、強力ネオミノファーゲンシー、漢方等を用いた治療法であり、これらの薬剤は、ALT(GPT)を低下させる効果はあるが、抗ウイルス作用はない。瀉血療法は、瀉血により体内の鉄分を減少させ、これにより鉄による肝細胞への酸化ストレスを軽減する治療法である。インターフェロン療法は、インターフェロンの抗ウイルス作用により肝硬変への進展を抑制、肝癌発生、肝疾患死を抑制する治療法であり、C型慢性肝炎に対する最も有効な治療法である。
【0005】
しかし、このインターフェロン療法にも幾つか問題点がある。インターフェロン療法では長期(通常、48週間)にわたってインターフェロンを投与しなければならず、その間、発熱、倦怠感、食欲不振、抑うつなどの副作用が生じる。また、治療費が高額であるため、患者に対する経済的負担も大きい。更に、インターフェロン療法はすべての患者に効果があるわけではなく、インターフェロンが全く効かない患者もかなりの割合で存在する。C型肝炎ウイルスには幾つかの遺伝子型が存在し、わが国では1b型のウイルスが多いが、インターフェロンは、この1b型のウイルスの肝炎に対して効きにくく、奏効率は50%程度にすぎない。
【0006】
ところで、最近、C型慢性肝炎と肝脂質代謝との関係について報告が幾つかなされている。例えば、Shintaniらは、C型肝炎では、炎症性サイトカインを介して、インスリン抵抗性を誘導し、高インスリン血症をきたし、肝への遊離脂肪酸を負荷することを報告している(非特許文献1)。Korenagaらは、HCVコア蛋白はミトコンドリア電子伝達系を障害し、脂肪酸のβ酸化が抑制されることを報告している(非特許文献2)。Moriishiらは、HCVコア蛋白は脂質合成系の転写因子であるSREBP-1の発現を増加させ、脂肪酸の合成を促進することを報告している(非特許文献3)。Perlemuterらは、HCV感染は中性脂肪の輸送体であるMTP活性を低下させ、VLDL分泌を低下させることを報告している(非特許文献4)。
【0007】
【非特許文献1】Shintani Y et al. Gastroenterology 126, 2004, 840-8
【非特許文献2】Korenaga M et al. J Biol Chem 280, 2005, 37481-8
【非特許文献3】Moriishi K et al. Proc Natl Acad Sci USA 104, 2007, 1661-6
【非特許文献4】Perlemuter G et al. FASEB J 16, 2002, 185-94
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、インターフェロン療法はC型慢性肝炎に対する有効な治療法であるが、治療の効果がない患者が存在し、また、副作用や高額な医療費といった患者に対する身体的、経済的負担も大きい。
【0009】
インターフェロン療法の有効性について、治療開始前に予測又は治療開始後に正確に判定できるようになれば、患者に対する無用な負担を回避できるだけでなく、医療経済においても貢献する。
【0010】
本発明は、以上の背景の下、インターフェロン療法の有効性を治療開始前に予測する手段及び治療開始後に判定する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、インターフェロン療法の効果とリポタンパク質中の脂質量とが密接に関連し、治療開始前にリポタンパク質中の脂質量を測定し、その測定値や二種類の測定値の比により、インターフェロン療法の有効性を予測できることを見出した。Fernandez-Mirandaらは、インターフェロン療法の奏効者の脂質プロファイルは無効者のものと違いはなかったと報告している(Fernandez-Miranda C. et al., The American Journal of Gastroenterology, Vol.93, No.10, 1998, p.1901-1904〔1991頁左欄20-22行〕)。従って、リポタンパク質中の脂質量の測定により、インターフェロン療法の有効性が予測できることは全く予想外のことであった。
【0012】
また、本発明者は、インターフェロン療法の効果と血液中に含まれるリポタンパク質の粒子サイズとが密接に関連し、治療開始前に血液中に含まれるリポタンパク質の平均粒子サイズを求めることにより、インターフェロン療法の有効性を予測できることも見出した。
【0013】
更に、本発明者は、インターフェロン療法が有効である場合は、治療開始後にリポタンパク質中の脂質量に大きな変化が生じ、これによってインターフェロン療法の有効性を判定できることも見出した。
【0014】
本発明は、以上の知見に基づき、完成されたものである。
【0015】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(19)を提供するものである。
(1)C型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果を予測する方法であって、患者から採取された血液におけるリポタンパク質中の脂質濃度又は血液中の脂質濃度を測定し、その濃度を基準値と比較することにより、治療効果を予測することを特徴とするインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(2)リポタンパク質が超低比重リポタンパク質であり、脂質が中性脂肪であり、中性脂肪濃度が基準値よりも高い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする(1)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(3)超低比重リポタンパク質が、粒子サイズが31.3nm〜53.6nmの超低比重リポタンパク質であることを特徴とする(2)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(4)リポタンパク質が高比重リポタンパク質であり、脂質が中性脂肪であり、中性脂肪濃度が基準値よりも低い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも高い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする(1)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(5)高比重リポタンパク質が、粒子サイズが10.9nm〜15nmの高比重リポタンパク質であることを特徴とする(4)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(6)リポタンパク質が低比重リポタンパク質であり、脂質がコレステロールであり、コレステロール濃度が基準値よりも高い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする(1)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(7)低比重リポタンパク質が、粒子サイズが20.7nm〜28.6nmの低比重リポタンパク質であることを特徴とする(6)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(8)リポタンパク質が高比重リポタンパク質であり、脂質がリン脂質であり、リン脂質濃度が基準値よりも低い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも高い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする(1)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(9)高比重リポタンパク質が、粒子サイズが10.9nm〜16.7nmの高比重リポタンパク質であることを特徴とする(8)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(10)リポタンパク質が高比重リポタンパク質であり、脂質がフリーコレステロールであり、フリーコレステロール濃度が基準値よりも低い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも高い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする(1)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(11)高比重リポタンパク質が、粒子サイズが10.9nm〜15nmの高比重リポタンパク質であることを特徴とする(10)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(12)C型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果を予測する方法であって、患者から採取された血液におけるリポタンパク質中の脂質濃度又は血液中の脂質濃度を測定し、測定した脂質濃度の比を基準値と比較することにより、治療効果を予測することを特徴とするインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(13)脂質濃度の比が、超低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度/全リポタンパク質中の中性脂肪濃度であり、前記比の値が基準値よりも高い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする(12)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(14)脂質濃度の比が、超低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度/高比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度であり、前記比の値が基準値よりも高い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする(12)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(15)C型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果を予測する方法であって、患者から採取された血液中に含まれるリポタンパク質の平均粒子サイズを求め、その粒子サイズを基準値と比較することにより、治療効果を予測することを特徴とするインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(16)リポタンパク質が低比重リポタンパク質であり、低比重リポタンパク質の平均粒子サイズが基準値よりも小さい場合は治療効果があると予測し、基準値よりも大きい場合は治療効果がないと予測することを特徴とする(15)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(17)リポタンパク質が高比重リポタンパク質であり、高比重リポタンパク質の平均粒子サイズが基準値よりも小さい場合は治療効果があると予測し、基準値よりも大きい場合は治療効果がないと予測することを特徴とする(15)に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
(18)C型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果を判定する方法であって、患者から採取された治療開始前と治療開始後の血液におけるリポタンパク質中の脂質濃度を測定し、治療開始前の脂質濃度と治療開始後の脂質濃度とを比較することにより、治療効果を判定することを特徴とするインターフェロン療法の治療効果の判定方法。
(19)リポタンパク質が超低比重リポタンパク質であり、脂質が中性脂肪であり、治療開始後の中性脂肪濃度の方が高ければ治療効果があると判定し、治療開始後の中性脂肪濃度の方が高くなければ治療効果がないと判定することを特徴とする(18)に記載のインターフェロン療法の治療効果の判定方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、インターフェロン療法の有効性を治療開始前に予測することが可能になる。これにより、治療見込みのない不要な治療を減らし、治療に伴う身体的・経済的負担を回避することができ、また医療経済にも大きく貢献することができる。また、現在、インターフェロン療法による治療を躊躇している患者に対し、治療への大きな動機付けともなる。
【0017】
また、本発明により、インターフェロン療法の有効性を治療開始後に正確に判定することも可能になる。これにより、有効でないと判定された場合は治療を中止することができ、治療開始前に予測する場合と同様、患者に対する負担回避と医療経済への貢献が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
(1)脂質濃度による治療効果の予測方法
本発明のC型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果の予測方法は、患者から採取された血液におけるリポタンパク質中の脂質濃度又は血液中の脂質濃度を測定し、その濃度を基準値と比較することにより、治療効果を予測することを特徴とするものである。
【0020】
リポタンパク質としては、例えば、カイロミクロン、超低比重リポタンパク質、低比重リポタンパク質、高比重リポタンパク質などを挙げることができる。これらのリポタンパク質は、通常比重によって分類されているが、粒子サイズによって分類されたものであってもよい。後述する実施例では、粒子サイズが80nmを超えるリポタンパク質をカイロミクロンとし、粒子サイズが30nm〜80nmのリポタンパク質を超低比重リポタンパク質とし、粒子サイズが16nm〜30nmのリポタンパク質を低比重リポタンパク質とし、粒子サイズが8nm〜16nmのリポタンパク質を高比重リポタンパク質としている。また、測定対象とするリポタンパク質は、上記のカイロミクロンや超低比重リポタンパク質などの一般的な分類に従ったものでなくてもよく、例えば、特定の比重のリポタンパク質、特定の粒子サイズのリポタンパク質といったものでもよい。後述する実施例では、リポタンパク質を粒子サイズにより20の分画(G01〜G20)に分けており、このような分画の一又は二以上を測定対象とするリポタンパク質としてもよい。
【0021】
脂質としては、リポタンパク質中に含まれている脂質であれば特に限定されず、例えば、中性脂肪、コレステロール、フリーコレステロール、コレステロールエステル、リン脂質などを挙げることができる。
【0022】
リポタンパク質中の脂質濃度を測定する方法は特に限定されず、HPLCなどで目的のリポタンパク質を分離し、既知の方法により目的の脂質濃度を測定すればよい。好ましい測定方法としては、例えば、国際公開第2006/057440号パンフレットの図1に記載されている装置を用いた測定方法を挙げることができる。
【0023】
本発明の方法の具体例としては、以下の(1−A)〜(1−E)の方法を例示できる。
【0024】
(1−A)患者から採取した血液中の超低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度を測定し、その濃度が基準値よりも高い場合には治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測する方法。
【0025】
中性脂肪濃度を測定する超低比重リポタンパク質は、特定の粒子サイズのものであってもよく、例えば、粒子サイズが31.3nm〜53.6nmの超低比重リポタンパク質を測定対象としてもよい。
【0026】
基準値は、年齢、病態、治療への意思といった患者の状況に応じて決めればよい。例えば、患者が老齢で副作用が大きな負担となり、なおかつインターフェロンによる治療を強く希望していないような場合には、基準値を高く設定することが好ましい。こうすることにより、無効であるにもかかわらず奏効と誤認してしまう可能性を低くすることができる。逆に、患者が若く副作用があまり負担にならず、なおかつインターフェロンによる治療を強く希望しているような場合には、基準値を低く設定することが好ましい。こうすることにより、奏効であるにもかかわらず無効と誤認してしまう可能性を低くすることができる。
【0027】
基準値の具体的な値は、超低比重リポタンパク質全体を測定対象にするのであれば、48.0〜70.9mg/dlの範囲内に設定するのが好ましく、50.0〜68.9mg/dlの範囲内に設定するのが更に好ましく、52.0〜66.9mg/dlの範囲内に設定するのが最も好ましく、粒子サイズが31.3nm〜53.6nmの超低比重リポタンパク質を測定対象とするのであれば、28.2〜44.7mg/dlの範囲内に設定するのが好ましく、30.2〜42.7mg/dlの範囲内に設定するのが更に好ましく、32.2〜40.7mg/dlの範囲内に設定するのが最も好ましい。
【0028】
(1−B)患者から採取した血液中の高比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度を測定し、その濃度が基準値よりも低い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも高い場合は治療効果がないと予測する方法。
【0029】
中性脂肪濃度を測定する高比重リポタンパク質は、特定の粒子サイズのものであってもよく、例えば、粒子サイズが10.9nm〜15nmの高比重リポタンパク質を測定対象としてもよい。
【0030】
基準値は、(1−A)の方法と同様、患者の状況に応じて決めればよい。基準値の具体的な値は、高比重リポタンパク質全体を測定対象にするのであれば、16.1〜21.5mg/dlの範囲内に設定するのが好ましく、16.6〜21.0mg/dlの範囲内に設定するのが更に好ましく、17.1〜20.5mg/dlの範囲内に設定するのが最も好ましく、粒子サイズが10.9nm〜15nmの高比重リポタンパク質を測定対象とするのであれば、4.2〜9.2mg/dlの範囲内に設定するのが好ましく、4.7〜8.7mg/dlの範囲内に設定するのが更に好ましく、5.2〜8.2mg/dlの範囲内に設定するのが最も好ましい。
【0031】
(1−C)患者から採取した血液中の低比重リポタンパク質中のコレステロール濃度を測定し、その濃度が基準値よりも高い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測する方法。
【0032】
コレステロール濃度を測定する低比重リポタンパク質は、特定の粒子サイズのものであってもよく、例えば、粒子サイズが20.7nm〜28.6nmの低比重リポタンパク質を測定対象としてもよい。
【0033】
基準値は、(1−A)の方法と同様、患者の状況に応じて決めればよい。基準値の具体的な値は、低比重リポタンパク質全体を測定対象にするのであれば、81.7〜99.1mg/dlの範囲内に設定するのが好ましく、82.7〜98.1mg/dlの範囲内に設定するのが更に好ましく、83.7〜97.1mg/dlの範囲内に設定するのが最も好ましく、粒子サイズが20.7nm〜28.6nmの低比重リポタンパク質を測定対象とするのであれば、45.9〜59.5mg/dlの範囲内に設定するのが好ましく、46.9〜58.5mg/dlの範囲内に設定するのが更に好ましく、47.9〜57.5mg/dlの範囲内に設定するのが最も好ましい。
【0034】
(1−D)患者から採取した血液中の高比重リポタンパク質中のリン脂質濃度を測定し、その濃度が基準値よりも低い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも高い場合は治療効果がないと予測する方法。
【0035】
リン脂質濃度を測定する高比重リポタンパク質は、特定の粒子サイズのものであってもよく、例えば、粒子サイズが10.9nm〜16.7nmの高比重リポタンパク質を測定対象としてもよい。
【0036】
基準値は、(1−A)の方法と同様、患者の状況に応じて決めればよい。基準値の具体的な値は、高比重リポタンパク質全体を測定対象にするのであれば、106.2〜146.1mg/dlの範囲内に設定するのが好ましく、111.2〜141.1mg/dlの範囲内に設定するのが更に好ましく、116.2〜136.1mg/dlの範囲内に設定するのが最も好ましく、粒子サイズが10.9nm〜16.7nmの高比重リポタンパク質を測定対象とするのであれば、29.6〜66.9mg/dlの範囲内に設定するのが好ましく、32.6〜63.9mg/dlの範囲内に設定するのが更に好ましく、35.6〜60.9mg/dlの範囲内に設定するのが最も好ましい。
【0037】
(1−E)患者から採取した血液中の高比重リポタンパク質中のフリーコレステロール濃度を測定し、その濃度が基準値よりも低い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも高い場合は治療効果がないと予測する方法。
【0038】
フリーコレステロール濃度を測定する高比重リポタンパク質は、特定の粒子サイズのものであってもよく、例えば、粒子サイズが10.9nm〜15nmの高比重リポタンパク質を測定対象としてもよい。
【0039】
基準値は、(1−A)の方法と同様、患者の状況に応じて決めればよい。基準値の具体的な値は、高比重リポタンパク質全体を測定対象にするのであれば、10.5〜15.1mg/dlの範囲内に設定するのが好ましく、11.0〜14.6mg/dlの範囲内に設定するのが更に好ましく、11.5〜14.1mg/dlの範囲内に設定するのが最も好ましく、粒子サイズが10.9nm〜15nmの高比重リポタンパク質を測定対象とするのであれば、2.7〜6.6mg/dlの範囲内に設定するのが好ましく、3.2〜6.1mg/dlの範囲内に設定するのが更に好ましく、3.7〜5.6mg/dlの範囲内に設定するのが最も好ましい。
【0040】
(2)脂質濃度の比による治療効果の予測方法
本発明のC型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果の予測方法は、患者から採取された血液におけるリポタンパク質中の脂質濃度又は血液中の脂質濃度を測定し、測定した脂質濃度の比を基準値と比較することにより、治療効果を予測するものである。
【0041】
脂質濃度の比は、治療効果予測の指標となるものであればどのようなものでもよく、以下の表1〜3に示す比を例示できる。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
上記表に示した比の中でも、超低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度と高比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度の比、低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度と高比重リポタンパク質中のコレステロール濃度の比、高比重リポタンパク質中のコレステロールとリン脂質濃度の比、超低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度と全リポタンパク質の中性脂肪濃度の比、超低比重リポタンパク質中のリン脂質濃度と高比重リポタンパク質中のリン脂質濃度の比、超低比重リポタンパク質中のフリーコレステロール濃度と高比重リポタンパク質中のフリーコレステロール濃度の比などを好ましい比として例示できる。
【0045】
本発明の方法の具体例としては、以下の(2−A)及び(2−B)の方法を例示できる。
【0046】
(2−A)患者から採取された血液における超低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度と全リポタンパク質の中性脂肪濃度とを測定し、超低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度/全リポタンパク質の中性脂肪濃度の値を求め、この値が基準値よりも高い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測する方法。
【0047】
基準値は、(1−A)の方法と同様、患者の状況に応じて決めればよい。基準値の具体的な値は、0.71〜0.32の範囲内に設定するのが好ましく、0.61〜0.36の範囲内に設定するのが更に好ましく、0.56〜0.43の範囲内に設定するのが最も好ましい。
【0048】
(2−B)患者から採取された血液における超低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度と高比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度とを測定し、超低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度/高比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度の値を求め、この値が基準値よりも高い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測する方法。
【0049】
基準値は、(1−A)の方法と同様、患者の状況に応じて決めればよい。基準値の具体的な値は、6.72〜1.18の範囲内に設定するのが好ましく、5.78〜1.61の範囲内に設定するのが更に好ましく、3.76〜2.84の範囲内に設定するのが最も好ましい。
【0050】
(3)粒子サイズによる治療効果の予測方法
本発明のC型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果の予測方法は、患者から採取された血液中に含まれるリポタンパク質の平均粒子サイズを求め、その粒子サイズを基準値と比較することにより、治療効果を予測することを特徴とするものである。
【0051】
平均粒子サイズを求めるリポタンパク質は、カイロミクロン、超低比重リポタンパク質、低比重リポタンパク質、高比重リポタンパク質のいずれでもよく、これらを二つ以上組み合わせてもよい。好ましいリポタンパク質としては、低比重リポタンパク質、高比重リポタンパク質を挙げることができる。
【0052】
リポタンパク質の平均粒子サイズを求める方法は特に限定されず、HPLCなどにより血液中のリポタンパク質を粒子サイズによって分けた後、粒子サイズごとのリポタンパク質量を測定し、それから平均粒子サイズを求めればよい。
【0053】
本発明の方法の具体例としては、以下の(3−A)及び(3−B)の方法を例示できる。
【0054】
(3−A)患者から採取された血液中に含まれる低比重リポタンパク質の平均粒子サイズを求め、その平均粒子サイズが基準値よりも小さい場合は治療効果があると予測し、基準値よりも大きい場合は治療効果がないと予測する方法。
【0055】
基準値は(1−A)の方法と同様、患者の状況に応じて決めればよい。基準値の具体的な値は、25.5〜27.0nmの範囲内に設定するのが好ましく、25.6〜26.9nmの範囲内に設定するのが更に好ましく、25.7〜26.8nmの範囲内に設定するのが最も好ましい。
【0056】
(3−B)患者から採取された血液中に含まれる高比重リポタンパク質の平均粒子サイズを求め、その平均粒子サイズが基準値よりも小さい場合は治療効果があると予測し、基準値よりも大きい場合は治療効果がないと予測する方法。
【0057】
基準値は(1−A)の方法と同様、患者の状況に応じて決めればよい。基準値の具体的な値は、10.6〜11.6nmの範囲内に設定するのが好ましく、10.7〜11.5nmの範囲内に設定するのが更に好ましく、10.8〜11.4nmの範囲内に設定するのが最も好ましい。
【0058】
(4)治療効果の判定方法
本発明のC型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果の判定方法は、患者から採取された治療開始前と治療開始後の血液におけるリポタンパク質中の脂質濃度を測定し、治療開始前の脂質濃度と治療開始後の脂質濃度とを比較することにより、治療効果を判定することを特徴とするものである。
【0059】
リポタンパク質中の脂質濃度の測定は、上述した(1)の方法と同様に行うことができる。
【0060】
具体的な方法としては、患者から採取された治療開始前と治療開始後の血液における低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度を測定し、治療開始後の中性脂肪濃度の方が高ければ治療効果があると判定し、治療開始後の中性脂肪濃度の方が高くなければ治療効果がないと判定する方法、を例示できる。
【0061】
ここで、「治療開始後の中性脂肪濃度の方が高い」とは、治療開始後の中性脂肪濃度が治療開始前の中性脂肪濃度の通常1.1倍以上、好ましくは1.2倍以上、更に好ましくは1.3倍以上であることをいう。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
【0063】
〔実施例1〕
(1)材料及び方法
(1−1)血清試料
C型慢性肝炎患者のうち、HCV群別により「1型」と分類され、かつHCV RNA定量(アンプリコアハイレンジ法)にて高ウイルス量タイプと判断された患者21名を対象として、採血し、血清分離を行った。採血は、早朝空腹時に行い、予め患者から文書による同意を得た後に行った。
【0064】
(1−2)インターフェロン療法の効果の判定
上記患者21名に対し、インターフェロンによる治療を行った。治療は、ペグインターフェロンα−2bとリバビリン併用療法により行い、投与量は厚生労働省治療ガイドラインに従い、治療期間は48週とした。
【0065】
治療終了後半年間HCV RNA定性(アンプリコア定性法)にて、HCV RNAが検出されなかった例を奏効、HCV RNAが検出された場合を無効と判定した。
【0066】
(1−3)中性脂肪等の測定
本実施例において、血清試料に含まれるリポタンパク質の分析は、国際公開第2006/057440号パンフレットの図1に記載されているHPLCを利用した分析装置を用いて行った。具体的に、本実施例では分析装置におけるHPLC装置として、Prominenceシリーズ(島津製作所社製)を使用した。分析カラムは、TSKgel LipopropakXL(東ソー株式会社製)を用いた。本実施例では、HPLC装置により分離されたカイロマイクロン(CM)、超低比重リポタンパク(VLDL)、低比重リポタンパク(LDL)、高比重リポタンパク(HDL)に含まれるコレステロール、中性脂肪、リン脂質及びフリーコレステロールを検出した。
【0067】
コレステロールの検出には、検出用試薬としてコレステロール測定試薬 TCHO試薬SK-A及びTCHO試薬SK-B(東洋紡績株式会社製)を使用した。コレステロールの検出に際しては、それぞれの酵素を2:1の比率で混合した反応試薬を、HPLC装置により分離されたサンプルとシステム内で1:1の比率で混合した。この混合液を37℃に保った恒温器内で3分間保持した後、550nmの波長で測定することでコレステロールを検出した。
【0068】
中性脂肪の検出には、検出用試薬として中性脂肪測定試薬 TG試薬SK-A及びTG試薬SK-B(東洋紡績株式会社製)を使用した。中性脂肪の検出に際しては、それぞれの酵素を3:1の比率で混合した反応試薬を、HPLC装置により分離されたサンプルとシステム内で1:1の比率で混合した。この混合液を37℃に保った恒温器内で3分間保持した後、550nmの波長で測定することで中性脂肪を検出した。
【0069】
リン脂質の検出には、検出用試薬としてリン脂質測定用試薬 リキッドPL (東洋紡績株式会社製)を使用した。リン脂質の検出に際しては、リキッドPL酵素試薬AとリキッドPL酵素試薬Bを2:1の比率で混合した反応試薬を、HPLC装置により分離されたサンプルとシステム内で1:1の比率で混合した。この混合液を37℃に保った恒温器内で約3分間保持した後、550nmの波長で測定することでリン脂質を検出した。
【0070】
フリーコレステロールの検出には、検出用試薬としてフリーコレステロール測定試薬コレスカラー・リキッドFC(東洋紡績株式会社)を使用した。フリーコレステロールの検出に際しては、コレスカラー・リキッドFC酵素試薬Aとコレスカラー・リキッドFC酵素試薬Bを2:1の比率で混合した反応試薬を、HPLC装置により分離されたサンプルとシステム内で1:1の比率で混合した。この混合液を37℃に保った恒温器内で3分間保持した後、550nmの波長で測定することでフリーコレステロールを検出した。
【0071】
分析装置を用いたリポタンパク質の分析は以下の条件で行った。先ず、血清試料を10μL注入し、溶離液としてTSK eluentLP-1又はLP-2を流速0.7ml/minで送液した。得られたクロマトグラムより、国際公開第2006/057440号パンフレットに示された分析プログラムにより、血清試料に含まれるリポタンパク質分画(CM、VLDL、LDL、HDL)中のコレステロール、中性脂肪、リン脂質、フリーコレステロールの濃度を求めた。すなわち、リポタンパク質を粒子サイズによってG01〜G20の20の分画(G01:>90nm、G02:64-90nm、G03:53.6-75nm、G04:44.5-64nm、G05:36.8-53.6nm、G06:31.3-44.5nm、G07:28.6-36.8nm、G08:25.5-31.3nm、G09:23-28.6nm、G10:20.7-25.5nm、G11:18.6-23nm、G12:16.7-20.7nm、G13:15-18.6nm、G14:13.5-16.7nm、G15:12.1-15nm、G16:10.9-13.5nm、G17:9.8-12.1nm、G18:8.8-10.9nm、G19:7.6-9.8nm、G20:<8.8nm)に分け、得られたクロマトグラムを、このG01〜G20の合計20個のピークに分割し、20個のピークに基づいて各成分の濃度を測定した。なお、本実施例では、対照となる標準血清として、デタミナー標準血清HDL-C測定用(協和メディックス株式会社)を用いた。
【0072】
(2)結果
(2−1)中性脂肪濃度
G01〜G20の分画における中性脂肪濃度の測定結果を図1に示す。また、CM、VLDL、LDL、HDL分画における中性脂肪濃度の測定結果を図2に示す。
【0073】
無効例では奏効例に比べて、VLDL中性脂肪濃度が低く、LDLとHDL中性脂肪濃度が高かった。特にVLDLのうち粒子サイズが31.3nm〜53.6nmの中性脂肪濃度が低く、HDLでは粒子サイズが10.9nm〜15nmの中性脂肪濃度が高かった。
【0074】
VLDL全体の中性脂肪濃度平均値は、無効例で48.0mg/dl、奏効例で70.9mg/dlであった。LDL全体の中性脂肪濃度平均値は、無効例で36.8mg/dl、奏効例で30.9mg/dlであった。HDL全体の中性脂肪濃度平均値は、無効例で21.5mg/dl、奏効例で16.1mg/dlであった。
【0075】
粒子サイズ31.3nm〜53.6nmのVLDLの中性脂肪濃度平均値は、無効例で28.2mg/dl、奏効例で44.7mg/dlであった。粒子サイズが10.9nm〜15nmのHDLの中性脂肪濃度平均値は、無効例で9.2mg/dl、奏効例で4.2mg/dlであった。
【0076】
(2−2)コレステロール濃度
G01〜G20の分画におけるコレステロール濃度の測定結果を図3に示す。また、CM、VLDL、LDL、HDL分画におけるコレステロール濃度の測定結果を図4に示す。
【0077】
無効例では奏効例に比べて、LDLコレステロール濃度が低く、HDLコレステロール濃度が高かった。特にLDLのうち粒子サイズが20.7nm〜28.6nmのコレステロール濃度が高かった。
【0078】
LDL全体のコレステロール濃度平均値は、無効例で81.7mg/dl、奏効例で99.1mg/dlであった。HDL全体のコレステロール濃度平均値は、無効例で57.8mg/dl、奏効例で46.7mg/dlであった。粒子サイズが20.7nm〜28.6nmのLDLのコレステロール濃度平均値は、無効例で45.9mg/dl、奏効例で59.5mg/dlであった。
【0079】
(2−3)リン脂質濃度
G01〜G20の分画におけるリン脂質濃度の測定結果を図5に示す。また、CM、VLDL、LDL、HDL分画におけるリン脂質濃度の測定結果を図6に示す。
【0080】
無効例では奏効例に比べて、HDLリン脂質濃度が高かった。特にHDLのうち粒子サイズが10.9nm〜16.7nmのリン脂質濃度が高かった。
【0081】
HDL全体のリン脂質濃度平均値は、無効例で146.1mg/dl、奏効例で106.2mg/dlであった。粒子サイズが10.9nm〜16.7nmのHDLのリン脂質濃度平均値は、無効例で66.9mg/dl、奏効例で29.6mg/dlであった。
【0082】
(2−4)フリーコレステロール濃度
G01〜G20の分画におけるフリーコレステロール濃度の測定結果を図7に示す。また、CM、VLDL、LDL、HDL分画におけるフリーコレステロール濃度の測定結果を図8に示す。
【0083】
無効例では奏効例に比べて、HDLフリーコレステロール濃度が高かった。特にHDLのうち粒子サイズが10.9nm〜15nmのフリーコレステロール濃度が高かった。
【0084】
HDL全体のフリーコレステロール濃度平均値は、無効例で15.1mg/dl、奏効例で10.5mg/dlであった。粒子サイズが10.9nm〜15nmのHDLのフリーコレステロール濃度平均値は、無効例で6.6mg/dl、奏効例で2.7mg/dlであった。
【0085】
(2−5)低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度とコレステロール濃度の比
低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度とコレステロール濃度の比を図9に示す。無効例では奏効例に比べて、コレステロール濃度/中性脂肪濃度の値が低かった。
【0086】
(2−6)脂質濃度についての考察
以上の結果から、インターフェロン治療無効例群では、VLDL分泌能が低下し、またHDL代謝が停滞していると考えられる。これらの原因として、肝臓における脂質合成系の異常や、VLDL生産に関わるMTP活性の低下、HDL代謝にかかわるHTGL生産の低下が考えられる。すなわち、VLDL中性脂肪、HDLのコレステロール、中性脂肪、フリーコレステロール、リン脂質の代謝異常を引き起こしているMTP活性やHTGL量・活性を測定することで治療効果予測が可能と考えられる。
【0087】
(2−7)低比重リポタンパ質及び高比重リポタンパク質の平均粒子サイズ
低比重リポタンパク質及び高比重リポタンパク質の平均粒子サイズの分布を図10及び図11にぞれぞれ示す。無効例では、奏効例に比べてLDL及びHDLの平均粒子サイズが大きい方に分布していることがわかった。
【0088】
〔実施例2〕
インターフェロンによる治療開始半年後に血液を採取し、血清分離を行った。奏効例及び無効例の患者をそれぞれ一名ずつ選び、G01〜G20分画における中性脂肪濃度を治療前と治療後(治療開始半年後)で比較した。奏効例の中性脂肪濃度を図12に、無効例の中性脂肪濃度を図13にそれぞれ示す。
【0089】
インターフェロン治療奏効患者では、インターフェロン治療により、VLDL中性脂肪濃度が増加することが確認された。一方、インターフェロン治療無効患者では、インターフェロンにより、VLDL中性脂肪含濃度は増加せず低下していた。すなわち、インターフェロン治療により脂質代謝が改善している場合には、治療効果が得られていると判断され、一方、改善がみられない場合には、治療効果が得られていないと考えられる。
【0090】
〔実施例3〕
実施例1で測定したVLDL中性脂肪濃度と全リポタンパク質中性脂肪濃度から両者の比(VLDL中性脂肪濃度/全リポタンパク質中性脂肪濃度、以下「VLDL tg/Total tg」という。)を算出した。奏効例及び無効例それぞれについてのVLDL tg/Total tgを図14に示す。
【0091】
また、カットオフ値(基準値)を0.54とし、VLDL tg/Total tgがそれより高い値を示した者を奏効と予測し、それより低い値を示した者を無効と予測した。この予測方法の感度、特異度、陽性反応適中度、陰性反応適中度を下表に示す。なお、感度等の意味は、以下のとおりである。
【0092】
感度:実際にインターフェロン療法が有効であった者のうち、上記予測方法により有効であると予測された者の割合
特異度:実際にインターフェロン療法が無効であった者のうち、上記予測方法により無効であると予測された者の割合
陽性反応適中度:上記予測方法によりインターフェロン療法が有効であると予測された者のうち、実際に有効であった者の割合
陰性反応適中度:上記予測方法によりインターフェロン療法が無効であると予測された者のうち、実際に無効であった者の割合
【0093】
【表4】
表4に示すように、感度、特異度、陽性反応適中度、陰性反応適中度はいずれも高い値を示した。このことから、VLDL tg/Total tgを指標とした予測方法が高い精度でインターフェロン療法の効果を予測できることがわかった。
【0094】
さらに、VLDL tg/Total tgを指標として奏効例を予測した場合のROC曲線を作成した。これを図15に示す。ROC曲線下の面積は0.889と1に近い値を示し、この方法が高い精度でインターフェロン療法の効果を予測できることがわかった。
【0095】
〔実施例4〕
実施例1で測定したVLDL中性脂肪濃度とHDL中性脂肪濃度から両者の比(VLDL中性脂肪濃度/HDL中性脂肪濃度、以下「VLDL tg/HDL tg」という。)を算出した。奏効例及び無効例それぞれについてのVLDL tg/HDL tgを図16に示す。
【0096】
また、カットオフ値(基準値)を2.85とし、VLDL tg/HDL tgがそれより高い値を示した者を奏効と予測し、それより低い値を示した者を無効と予測した。この予測方法の感度、特異度、陽性反応適中度、陰性反応適中度を下表に示す。なお、感度等の意味は、実施例3と同じである。
【0097】
【表5】
表5に示すように、感度、特異度、陽性反応適中度、陰性反応適中度はいずれも高い値を示した。このことから、VLDL tg/HDL tgを指標とした予測方法が高い精度でインターフェロン療法の効果を予測できることがわかった。
【0098】
さらに、VLDL tg/HDL tgを指標として奏効例を予測した場合のROC曲線を作成した。これを図17に示す。ROC曲線下の面積は0.907と1に近い値を示し、この方法が高い精度でインターフェロン療法の効果を予測できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】G01〜G20分画における中性脂肪濃度を示す図である。図中の※は統計学的に有意であったことを示す(p<0.05)。
【図2】CM、VLDL、LDL、HDL分画における中性脂肪濃度を示す図である。図中の※は統計学的に有意であったことを示す(p<0.05)。
【図3】G01〜G20分画におけるコレステロール濃度を示す図である。図中の※は統計学的に有意であったことを示す(p<0.05)。
【図4】CM、VLDL、LDL、HDL分画におけるコレステロール濃度を示す図である。図中の※は統計学的に有意であったことを示す(p<0.05)。
【図5】G01〜G20分画におけるリン脂質濃度を示す図である。図中の※は統計学的に有意であったことを示す(p<0.05)。
【図6】CM、VLDL、LDL、HDL分画におけるリン脂質濃度を示す図である。図中の※は統計学的に有意であったことを示す(p<0.05)。
【図7】G01〜G20分画におけるフリーコレステロール濃度を示す図である。図中の※は統計学的に有意であったことを示す(p<0.05)。
【図8】CM、VLDL、LDL、HDL分画におけるフリーコレステロール濃度を示す図である。図中の※は統計学的に有意であったことを示す(p<0.05)。
【図9】奏効例及び無効例の(コレステロール濃度/中性脂肪濃度)の値を示す図。
【図10】LDLの平均粒子サイズの分布を示した図。図中の●は中央値を示す。
【図11】HDLの平均粒子サイズの分布を示した図。図中の●は中央値を示す。
【図12】G01〜G20分画における奏効例患者の中性脂肪濃度を示す図である。
【図13】G01〜G20分画における無効例患者の中性脂肪濃度を示す図である。
【図14】奏効例及び無効例の(VLDL中性脂肪濃度/全リポタンパク質中性脂肪濃度)の値を示す図。図中の●は中央値を示し、※は統計学的に有意であったことを示す(p<0.01)。
【図15】VLDL中性脂肪濃度/全リポタンパク質中性脂肪濃度を指標として奏効例を予測した場合のROC曲線を示す図。
【図16】奏効例及び無効例の(VLDL中性脂肪濃度/HDL中性脂肪濃度)の値を示す図。図中の●は中央値を示し、※は統計学的に有意であったことを示す(p<0.01)。
【図17】VLDL中性脂肪濃度/HDL中性脂肪濃度を指標として奏効例を予測した場合のROC曲線を示す図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
C型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果を予測する方法であって、患者から採取された血液におけるリポタンパク質中の脂質濃度又は血液中の脂質濃度を測定し、その濃度を基準値と比較することにより、治療効果を予測することを特徴とするインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項2】
リポタンパク質が超低比重リポタンパク質であり、脂質が中性脂肪であり、中性脂肪濃度が基準値よりも高い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする請求項1に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項3】
超低比重リポタンパク質が、粒子サイズが31.3nm〜53.6nmの超低比重リポタンパク質であることを特徴とする請求項2に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項4】
リポタンパク質が高比重リポタンパク質であり、脂質が中性脂肪であり、中性脂肪濃度が基準値よりも低い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも高い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする請求項1に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項5】
高比重リポタンパク質が、粒子サイズが10.9nm〜15nmの高比重リポタンパク質であることを特徴とする請求項4に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項6】
リポタンパク質が低比重リポタンパク質であり、脂質がコレステロールであり、コレステロール濃度が基準値よりも高い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする請求項1に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項7】
低比重リポタンパク質が、粒子サイズが20.7nm〜28.6nmの低比重リポタンパク質であることを特徴とする請求項6に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項8】
リポタンパク質が高比重リポタンパク質であり、脂質がリン脂質であり、リン脂質濃度が基準値よりも低い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも高い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする請求項1に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項9】
高比重リポタンパク質が、粒子サイズが10.9nm〜16.7nmの高比重リポタンパク質であることを特徴とする請求項8に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項10】
リポタンパク質が高比重リポタンパク質であり、脂質がフリーコレステロールであり、フリーコレステロール濃度が基準値よりも低い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも高い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする請求項1に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項11】
高比重リポタンパク質が、粒子サイズが10.9nm〜15nmの高比重リポタンパク質であることを特徴とする請求項10に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項12】
C型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果を予測する方法であって、患者から採取された血液におけるリポタンパク質中の脂質濃度又は血液中の脂質濃度を測定し、測定した脂質濃度の比を基準値と比較することにより、治療効果を予測することを特徴とするインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項13】
脂質濃度の比が、超低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度/全リポタンパク質中の中性脂肪濃度であり、前記比の値が基準値よりも高い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする請求項12に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項14】
脂質濃度の比が、超低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度/高比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度であり、前記比の値が基準値よりも高い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする請求項12に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項15】
C型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果を予測する方法であって、患者から採取された血液中に含まれるリポタンパク質の平均粒子サイズを求め、その粒子サイズを基準値と比較することにより、治療効果を予測することを特徴とするインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項16】
リポタンパク質が低比重リポタンパク質であり、低比重リポタンパク質の平均粒子サイズが基準値よりも小さい場合は治療効果があると予測し、基準値よりも大きい場合は治療効果がないと予測することを特徴とする請求項15に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項17】
リポタンパク質が高比重リポタンパク質であり、高比重リポタンパク質の平均粒子サイズが基準値よりも小さい場合は治療効果があると予測し、基準値よりも大きい場合は治療効果がないと予測することを特徴とする請求項15に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項18】
C型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果を判定する方法であって、患者から採取された治療開始前と治療開始後の血液におけるリポタンパク質中の脂質濃度を測定し、治療開始前の脂質濃度と治療開始後の脂質濃度とを比較することにより、治療効果を判定することを特徴とするインターフェロン療法の治療効果の判定方法。
【請求項19】
リポタンパク質が超低比重リポタンパク質であり、脂質が中性脂肪であり、治療開始後の中性脂肪濃度の方が高ければ治療効果があると判定し、治療開始後の中性脂肪濃度の方が高くなければ治療効果がないと判定することを特徴とする請求項18に記載のインターフェロン療法の治療効果の判定方法。
【請求項1】
C型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果を予測する方法であって、患者から採取された血液におけるリポタンパク質中の脂質濃度又は血液中の脂質濃度を測定し、その濃度を基準値と比較することにより、治療効果を予測することを特徴とするインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項2】
リポタンパク質が超低比重リポタンパク質であり、脂質が中性脂肪であり、中性脂肪濃度が基準値よりも高い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする請求項1に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項3】
超低比重リポタンパク質が、粒子サイズが31.3nm〜53.6nmの超低比重リポタンパク質であることを特徴とする請求項2に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項4】
リポタンパク質が高比重リポタンパク質であり、脂質が中性脂肪であり、中性脂肪濃度が基準値よりも低い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも高い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする請求項1に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項5】
高比重リポタンパク質が、粒子サイズが10.9nm〜15nmの高比重リポタンパク質であることを特徴とする請求項4に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項6】
リポタンパク質が低比重リポタンパク質であり、脂質がコレステロールであり、コレステロール濃度が基準値よりも高い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする請求項1に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項7】
低比重リポタンパク質が、粒子サイズが20.7nm〜28.6nmの低比重リポタンパク質であることを特徴とする請求項6に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項8】
リポタンパク質が高比重リポタンパク質であり、脂質がリン脂質であり、リン脂質濃度が基準値よりも低い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも高い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする請求項1に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項9】
高比重リポタンパク質が、粒子サイズが10.9nm〜16.7nmの高比重リポタンパク質であることを特徴とする請求項8に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項10】
リポタンパク質が高比重リポタンパク質であり、脂質がフリーコレステロールであり、フリーコレステロール濃度が基準値よりも低い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも高い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする請求項1に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項11】
高比重リポタンパク質が、粒子サイズが10.9nm〜15nmの高比重リポタンパク質であることを特徴とする請求項10に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項12】
C型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果を予測する方法であって、患者から採取された血液におけるリポタンパク質中の脂質濃度又は血液中の脂質濃度を測定し、測定した脂質濃度の比を基準値と比較することにより、治療効果を予測することを特徴とするインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項13】
脂質濃度の比が、超低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度/全リポタンパク質中の中性脂肪濃度であり、前記比の値が基準値よりも高い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする請求項12に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項14】
脂質濃度の比が、超低比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度/高比重リポタンパク質中の中性脂肪濃度であり、前記比の値が基準値よりも高い場合は治療効果があると予測し、基準値よりも低い場合は治療効果がないと予測することを特徴とする請求項12に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項15】
C型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果を予測する方法であって、患者から採取された血液中に含まれるリポタンパク質の平均粒子サイズを求め、その粒子サイズを基準値と比較することにより、治療効果を予測することを特徴とするインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項16】
リポタンパク質が低比重リポタンパク質であり、低比重リポタンパク質の平均粒子サイズが基準値よりも小さい場合は治療効果があると予測し、基準値よりも大きい場合は治療効果がないと予測することを特徴とする請求項15に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項17】
リポタンパク質が高比重リポタンパク質であり、高比重リポタンパク質の平均粒子サイズが基準値よりも小さい場合は治療効果があると予測し、基準値よりも大きい場合は治療効果がないと予測することを特徴とする請求項15に記載のインターフェロン療法の治療効果の予測方法。
【請求項18】
C型肝炎患者に対するインターフェロン療法の治療効果を判定する方法であって、患者から採取された治療開始前と治療開始後の血液におけるリポタンパク質中の脂質濃度を測定し、治療開始前の脂質濃度と治療開始後の脂質濃度とを比較することにより、治療効果を判定することを特徴とするインターフェロン療法の治療効果の判定方法。
【請求項19】
リポタンパク質が超低比重リポタンパク質であり、脂質が中性脂肪であり、治療開始後の中性脂肪濃度の方が高ければ治療効果があると判定し、治療開始後の中性脂肪濃度の方が高くなければ治療効果がないと判定することを特徴とする請求項18に記載のインターフェロン療法の治療効果の判定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図17】
【図14】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図17】
【図14】
【図16】
【公開番号】特開2010−48793(P2010−48793A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302113(P2008−302113)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人医薬基盤研究所基礎研究推進事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(505155528)公立大学法人横浜市立大学 (101)
【出願人】(503201335)株式会社スカイライト・バイオテック (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人医薬基盤研究所基礎研究推進事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(505155528)公立大学法人横浜市立大学 (101)
【出願人】(503201335)株式会社スカイライト・バイオテック (4)
【Fターム(参考)】
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