説明

インテグリン標的イメージング剤

【課題】イメージング剤を含むナノパーティクルにより形成される映像の質を向上すること。
【解決手段】ナノパーティクルのコーティングの成分とαβに特異的なリガンド(但し抗体又はそのフラグメントを除く)をスペーサーを介して共有結合した結合体。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2002年1月24日に出願した仮出願第60/351,390号に関する35 U.S.C.119(e)に基づく利益を主張する。この仮出願の内容は、引用を以って本書に繰り込み本書に記載されているものとみなす。
【技術分野】
【0002】
本発明は、αβ−特異的ターゲティング剤を用い、インテグリンを特異的に標的するナノパーティクル系エマルジョンに関する。より詳しくは、本発明は、そのようなターゲティングのための非抗体系組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
種々のタイプのイメージングのために所望の成分との結合を容易にする界面活性剤層によって被覆されたペルフルオロカーボン(perfluorocarbon)ナノパーティクルによって構成されたナノパーティクル組成物の価値は、十分に明らかとされている。例えば、米国特許第5,690,907号;同第5,780,010号;同第5,989,520号;同第5,958,371、及び国際特許出願国際公開WO 02/060524号を参照せよ。これら文献の内容は、引用を以って本書に繰り込み、ここに記載されているものとする。これらの文献は、種々のターゲティング剤及び所望の成分、例えばMRIイメージング剤、放射性核種、及び/又は生理活性物質と結合するペルフルオロカーボンナノパーティクルのエマルジョンについて記載している。標的化イメージングに使用されてきた他の組成物には、国際特許出願国際公開WO 99/58162号;同WO 00/35488号;同WO 00/35887号、及び同WO 00/35492号に開示されたものが含まれる。これら文献の内容も引用を以って本書に繰り込み、ここに記載されているものとする。
【0004】
インテグリンαβは、ビトロネクチンに結合するのであるが、新生血管系のマーカーとして認識されている。また、活性内皮細胞に対して比較的選択性があり、成熟した静止期の細胞には本来的には発現しない。このような性質に基づき、このインテグリンに対するアンタゴニストを抗癌剤として使用することが試みられた。Kerr, J.S., et al., Anticancer Res. (1999) 19: 959-968には、マウスモデル系において新生血管の形成を減少することができたペプチド模倣体(mimetics)について記載されている。米国特許第6,153,628号には、αβアンタゴニストでありかつ炎症、骨分解(bone degradation)、腫瘍、転移、血栓症、及び細胞集合性状態(cell aggregation related conditions)を含む、血管新生に関する障害の治療に有用であるといわれている1,3,4-チアジアゾール及び1,3,4-オキサジアゾール(oxadiazoles)について記載されている。米国特許第6,130,231号及び同第6,322,770号には、αβアンタゴニストでありかつ国際特許出願国際公開WO 01/97848号に記載されているのと同じ目的のために有用な融合複素環が開示されている。
【0005】
上記WO 01/97848号には、任意的にリンカー成分を介して、補助物質(ancillary substances)と結合可能な特異的化合物が開示されている。ここで、この補助物質には、放射性核種、核磁気共鳴映像法に有用な物質、及びX線造影剤が含まれ得る。この文献は、更に、典型的にはガス状気泡を含む、ある種の超音波造影剤と結合するこれら物質の使用についても開示している。
【0006】
活性内皮細胞内で発現するほかに、αβは、血管系の壁中のマクロファージを含む、血管平滑筋上でも発現する。この複合体(complex)は、周囲基質(マトリックス)の細胞に結合し、従って遊走の過程にある細胞によって利用される。従って、αβは、管腔への細胞の運動を補助することにより再狭窄において一定の役割を有する。再狭窄の鍵となる要素には、血管平滑筋細胞活性化、増殖及び遊走が含まれる。インテグリンへテロダイマー、とりわけαβインテグリンは、細胞外基質への細胞接着の提供、細胞外メタロプロテアーゼ発現の誘導、及び平滑筋細胞遊走の促進によって、このようなプロセスの重要な要素であると認識されている。αβインテグリンは、内皮細胞、刺激(stimulated)単球、Tリンパ球、線維芽細胞、血管平滑筋細胞及び血小板に広く分布し、オステオポンチン、ビトロネクチン、トロンボスポンジン及び変性コラーゲンを含む幾つかの細胞外基質タンパク質リガンドと結合する。
【0007】
バルーン状に伸展した血管壁内部におけるインテグリン媒介細胞−基質間相互作用の拮抗は、損傷部位への炎症細胞の動員(補充)を阻害し、平滑筋細胞の増殖・遊走を制限し、及び細胞外基質タンパク質合成を減少する。環状RGDペプチドアンタゴニストによるインテグリンの選択的及び非選択的妨害(遮断)は、再狭窄についての幾つかの動物モデルでは、新生内膜肥厚(neointimal hyperplasia)を制限した。
【0008】
再狭窄は、大抵、血管形成と関連し、バルーンカテーテルを用いて血管を拡張しようとするうちに、血管が破損し平滑筋細胞が露出される。結果として生じる裂け目ないし骨折(fracture)は、管腔への細胞の移動を必要とする;その際、αβは、それを達成するために、コラーゲン及びフィブリンの基質を介する遊走を補助するよう作用する。従って、αβを標的する組成物は、平滑筋細胞を標的すること及び再狭窄、とりわけバルーン血管形成と関連する再狭窄を映像化すること、及びパクリタキセル、ラパマイシン、及び放射性核種、小分子、ペプチド及び核酸のような他の治療成分のような抗増殖剤を送達することに使用することもできる。
【0009】
ステント系送達システムは、全身薬物投与の有害な副作用を引き起こすことなく動脈の中膜内での限局的治療薬物効果(focal therapeutic drug effects)の可能性を提供し、ステント−ストラット(strut)−動脈壁接点に近接する薬物の大きな局所的内膜濃度を生成するのに対し、内膜内部における大きな抗増殖剤濃度の持続は、動脈壁治癒及び内皮再生性を損ない、管腔内層(lining)の炎症及び再狭窄を促進し得る。
【0010】
大抵は、ペプチド模倣体及び中和抗体αβアンタゴニストは半減期が短く一過的にしかαβのためのレセプターを占有しないように思われる。本発明のインテグリン特異的ナノパーティクルは、動脈過伸展により平滑筋細胞上に露出するインテグリンを標的としその結合を阻止することができ、並びに炎症及び再狭窄プロセスを阻害し得る種々の治療剤を細胞に直接送達し、及び再狭窄に先行するバルーン傷害の範囲・重症度に関する新たな予後データの分子イメージングを提供することができる。本発明の組成物は、これらの問題を回避する。
【0011】
αβインテグリンに特異的な抗体は、米国特許第6,171,588号に記載されている。これらの抗体は、Sipkins, D.A., et al., Nature Med. (1998) 4: 623-626の報告では、標的核磁気共鳴映像法(MRI)で使用された。この場合、(抗体は)アビジンリンカータンパクを介してリポソームの表面に結合した。
【0012】
キレート化されたガドリニウムを運搬するペルフルオロカーボンを用いるMRIのためのターゲティング剤としてのαβに向けられる抗体の使用についても、Anderson, S.A., et al., Magn. Reson. Med. (2000) 44: 433-439、及び上記国際特許出願国際公開WO 02/060524号に既に記載されている。インテグリンを標的するペプチドリガンドも、Storgard, C.M., et al.,J. Clin. Invest. (1999) 103: 47-53によって、アンタゴニストとして既に使用され、間接リウマチに対する治療ストラテジーとして提案されているが、インテグリンと相互作用することが知られている“RGD”型配列を含む環状ペプチドが使用されている。
【0013】
Haubner, R., et al., J.Nucl. Mecl. (1999) 40: 1061-1071によって、類似の環状ペプチドが使用されたが、これは、当該環状ペプチドを放射性核種と直接結合することにより腫瘍を映像化するためであった。他の論文には、放射標識及びPETの両者のためのグリコシル化された環状ペプチドの使用が、Haubner, R., et al., J. Nucl. Med. (2001) 42: 326-336によって提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、本出願人の知る限り、抗体以外のαβ特異的成分は、炎症、腫瘍、アテローム硬化型プラーク、及び再狭窄の部位のような活性内皮細胞を含む領域への、イメージング(映像化)支援ナノパーティクルエマルジョンの送達又は生理活性剤を含むエマルジョンの送達に関するターゲティング剤としての使用について未だ提案されていない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、イメージング(映像化)及び薬物送達のための組成物及び方法であって、非抗体性αβ特異的成分が、腫瘍のような高レベルの血管形成を含む領域、炎症領域、アテローム硬化領域、及び再狭窄(の領域)へナノパーティクルエマルジョンを送達するためのターゲティング剤として使用される組成物及び方法に関する。イメージングナノパーティクルエマルジョンと関連するこれらの剤の使用により、映像の質は向上し、標的化された薬物送達の可能性も得られる。
より詳しくは、上記の課題を解決するための本発明の第1の視点のナノパーティクルのエマルジョンを含む組成物において、
前記ナノパーティクルは、脂質/界面活性剤でコーティングされた液体ペルフルオロカーボンのコアから構成されること、
前記ナノパーティクルは、以下の式:


からなるαβ特異的リガンドに結合されること、
前記ナノパーティクルと前記リガンドとの結合は、前記脂質/界面活性剤コーティングの成分とのスペーサーを介した共有結合であること、及び
前記ナノパーティクルは、少なくとも1つの生理活性剤及び/又は少なくとも1つのイメージング剤を含むことを特徴とする(形態1・第1基本構成)。
更に、上記の組成物において、前記残基(リガンド)は、ホスファチジルリピドである脂質/界面活性剤コーティングの成分とスペーサーを介して結合することが好ましい(形態2)。
更に、上記の組成物において、前記脂質/界面活性剤コーティングの成分に結合するリガンドは、以下の式


からなることが好ましい(形態3)。
更に、上記の組成物において、前記生理活性剤は、ホルモン又は医薬であることが好ましい(形態4)。
更に、上記の組成物において、前記医薬は、抗腫瘍薬、ホルモン、鎮痛薬、麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌剤、駆虫薬、抗ウイルス薬、インターフェロン、抗糖尿病薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、抗凝血薬又は抗増殖薬であることが好ましい(形態5)。
更に、上記の組成物において、前記医薬は、抗増殖薬であることが好ましい(形態6)。
更に、上記の組成物において、前記医薬は、パクリタキセル又はラパマイシンであることが好ましい(形態7)。
更に、上記の組成物において、前記イメージング剤は、少なくとも1つの核磁気共鳴造影法(MRI)用造影剤であることが好ましい(形態8)。
更に、上記の組成物において、前記MRI用造影剤は、キレート化された常磁性イオンであることが好ましい(形態9)。
更に、上記の組成物において、前記常磁性イオンは、ガドリニウムイオンであることが好ましい(形態10)。
【0016】
従って、1つの側面では、本発明は、標的組織へナノパーティクルエマルジョンを送達すると共に、該標的組織が高レベルのαβによって特徴付けられる方法であって、当該組織を含む被検体に、αβに特異的なリガンド(但し抗体又はそのフラグメントを除く)と結合するナノパーティクルのエマルジョンを投与することを含む方法に関する。
【0017】
他の側面では、本発明は、本発明の方法に有用な組成物、本発明の方法を実施可能なように構成可能な本発明の組成物の成分を含むキットに関する。本発明のキットは、典型的には、別々に(分離されて)提供されるターゲティング剤と結合可能な、又はイメージング又は薬物送達に有用な補助剤と結合可能な反応基を含むエマルジョンを提供する。
より詳しくは、上記の課題を解決するための本発明の第2の視点のαβを発現する組織を標的とするナノパーティクルのエマルジョンの調製用キットにおいて、
該キットは、以下の式


からなるαβ特異的リガンドと共有結合するための結合成分を含むナノパーティクルを含む少なくとも1つのコンテナを含むこと、
少なくとも1つのコンテナは、前記リガンドを含むこと、及び
前記ナノパーティクルは、脂質/界面活性剤でコーティングされた液体ペルフルオロカーボンのコアから構成されることを特徴とする(形態11・第2基本構成)。
更に、以下の式


からなるリガンドがスペーサーを介して脂質/界面活性剤に共有結合してなる複合体も好ましい(形態12)。
更に、上記の複合体において、前記脂質/界面活性剤は、リン脂質であることが好ましい(形態13)。
更に、上記の複合体において、前記スペーサーは、ポリアルキレングリコール及び/又はペプチドを含むことが好ましい(形態14)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、活性内皮細胞集中部位の優れた画像を取得できるアプローチを提供する。イメージングに有用な種々のエマルジョンを使用することができる。単独で使用する場合、ナノパーティクル含有エマルジョンは、超音波イメージングのための造影剤として有用である。核磁気共鳴映像法又はX線映像法(イメージング)で使用するために、造影剤としての遷移金属を使用する必要があるかもしれない。しかしながら、ナノパーティクルがフルオロカーボンを含む場合、フルオロカーボン自体は映像の取得ないし生成に有用である。放射性核種は、診断剤及び治療剤としても有用である。更に、フルオロフォアのような光学的イメージングのための試薬も、ナノパーティクルと関連させることができる。更に、又は選択的に、エマルジョン中のナノパーティクルは、1又は2以上の生理活性物質を含むことができる。
【0019】
ナノパーティクルエマルジョンであれば、任意のものが使用することができる。例えば、国際特許出願国際公開W0 95/03829号には、薬物が油滴内部に分散又は溶解され、該油滴がリガンドによって特定の部位を標的するオイルエマルジョンが記載されている。米国特許第5,542,935号には、ガス充填ペルフルオロカーボンミクロスフェアを用いた部位特異的薬物送達について記載されている。薬物送達は、ミクロスフェアが標的を目指して進行することを可能とし、そしてミクロスフェアの破壊を引き起こすことによって達成される。ガス気泡(gas bubbles)を生成可能にするために、低沸点フルオロ化合物を用いてパーティクルを形成することもできる。
【0020】
しかしながら、上掲米国特許第5,958,371号に記載されたもののような高沸点ペルフルオロカーボン液を基礎としたナノパーティクルを含むエマルジョンを使用するのが好ましい。液体エマルジョンは、脂質及び/又は界面活性剤から構成された被膜(コーティング)によって囲まれた比較的高沸点のペルフルオロカーボンから構成されるナノパーティクルを含む。包囲コーティングは、ターゲティング成分に直接結合することができ、又はターゲティング成分と、任意的にリンカーを介して、共有結合する中間成分を含むことができ、又はビオチンのような非特異的カップリング剤を含んでもよい。或いは、コーティングは、一般的に核酸のような、とりわけアプタマーのような負荷電ターゲティング剤をその表面に吸着可能とするよう、カチオンであってもよい。
【0021】
ナノパーティクルは、ターゲティングαβリガンドに加えて、更に、その表面に結合しイメージング及び/又は治療に有用な「補助剤」、例えば放射性核種、核磁気共鳴映像法(MRI)又はX線映像法のための造影剤、フルオロフォア及び/又は生理活性化合物(物質)を含んでもよい。ナノパーティクル自体が、超音波映像法(イメージング)のための造影剤として機能することも可能である。
【0022】
好ましいエマルジョンは、コアとしての高沸点ペルフルオロカーボンと、1又は2以上の所望の成分の多数のコピーをナノパーティクルに結合するための媒体を提供する脂質/界面活性剤混合物である外被を含むナノパーティクルシステムである。基礎パーティクルの構築及び該パーティクルを含むエマルジョンの形成は、外表面に結合する成分に関わらず、上掲米国特許ないし特許出願第5,690,907号及び同第5,780,010号;及び娘出願に発行された米国特許第5,989,520号及び同第5,958,371号に記載されている。これら文献は、引用を以って本書に繰り込み、ここに記載されているものとする。
【0023】
高沸点フルオロケミカル液とは、沸点が体温、即ち37℃より高いようなものである。従って、フルオロケミカル液の沸点は、好ましく少なくとも30℃、より好ましくは37℃、一層好ましくは50℃以上、最も好ましくは凡そ90℃以上である。本発明に有用な「フルオロケミカル液」には、他の官能基を有するペルフルオロ化化合物(perfluorinated compounds)を含む直鎖状及び分枝状及び環状ペルフルオロカーボンが含まれる。「ペルフルオロ化化合物」には、純粋なペルフルオロカーボン(だけ)ではなく、寧ろ他のハロ基(halo groups)も存在し得る化合物が含まれる。このような化合物には、例えばペルフルオロオクチルブロマイド、ペルフルオロジクロロオクタンが含まれる。
【0024】
このように定義されたペルフルオロ化化合物が好ましい。
【0025】
有用なペルフルオロカーボンエマルジョンは、米国特許第4,927,623号、同第5,077,036号、同第5,114,703号、同第5,171,755号、同第5,304,325号、同第5,350,571号、同第5,393,524号、及び同第5,403,575号に開示されている。これら文献の内容は引用を以って本書に繰り込み、ここに記載されているものとする。このようエマルジョンには、含有するペルフルオロカーボン化合物が、ペルフルオロデカリン、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロジクロロオクタン、ペルフルオロ−n−オクチルブロマイド、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロデカン、ペルフルオロシクロヘキサン、ペルフルオロモルフォリン、ペルフルオロトリプロピルアミン、ペルフルオロトリブチルアミン、ペルフルオロジメチルシクロヘキサン、ペルフルオロトリメチルシクロヘキサン、ペルフルオロジシクロヘキシルエーテル、ペルフルオロ−n−ブチルテトラヒドロフラン、及びこれら化合物に構造的に類似する化合物、及びペルフルオロアルキル化エーテル、ポリエーテル又はクラウンエーテルを含む部分的又は完全にハロゲン化された(少なくともフッ素置換基を幾つか含む)又は部分的又は完全にフッ化された化合物、であるエマルジョンが含まれる。
【0026】
(結合リガンドを含むか、所望の成分をその表面に結合するための試薬を含む)ナノパーティクル上の外側コーティング(外被)の形成に使用される脂質/界面活性剤には、天然又は合成型のリン脂質、脂肪酸、コレステロール、リソ脂質(lysolipids)、スフィンゴミエリン等が含まれ、更に脂質複合(conjugated)ポリエチレングリコールが含まれる。市販されている各種のアニオン性、カチオン性、及び非イオン性界面活性剤、例えばトゥイーン(Tweens)、スパン(Spans)、及びトリオン(Tritons)等も使用することができる。界面活性剤の中には、ペルフルオロヘキサン酸及びペルフルオロオクタン酸のようなペルフルオロ化アルカン酸(alkanoic acids)、ペルフルオロ化アルキルスルホンアミド、アルキレン4級アンモニウム塩(alkylene quaternary ammonium salts)等のようなそれ自体がフッ化されているものもある。更に、ペルフルオロ化アルコールリン酸エステルも使用することができる。外層に含まれるカチオン性脂質は、核酸、とりわけアプタマーのようなリガンドを保持するのに有利であり得る。典型的なカチオン性脂質には、DOTMA, N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロライド;DOTAP, 1,2-ジオレオイルオキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン;DOTB, 1,2-ジオレオイル-3-(4'-トリメチル-アンモニオ)ブタノイル-sn-グリセロール,1,2-ジアシル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン;1,2-ジアシル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン;1,2-ジアシル-sn-グリセロール-3-エチルホスホコリン;及び3β-[N',N'-ジメチルアミノエタン]-カルバモール]コレステロール-HClが含まれる。
【0027】
好ましい実施形態では、脂質/界面活性剤コーティングに含まれる成分は、αβリガンド及び/又はイメージング又は治療に有用な補助物質の結合に使用可能な活性基を有する。後述する通り、脂質/界面活性剤成分は、当該脂質/界面活性剤成分に含まれる官能性(基)を介してこのような活性基と結合することができる。例えば、ホスファチジルエタノールアミンは、そのアミノ基を介して所望の成分と直接的に結合することができるし、後述するカルボキシル基、アミノ基又はスルフヒドリル基を提供し得る短いペプチドのようなリンカーと結合することもできる。或いは、マレイミドのような標準的な結合(linking)剤を使用することもできる。ターゲティングリガンド及び補助物質をナノパーティクルに結合するために使用可能な方法は多々あり得る。そのようなストラテジーには、例えばポリエチレングリコール又はペプチドのようなスペーサー(spacer)基の使用が含まれ得る。
【0028】
脂質/界面活性剤被覆ナノパーティクルは、典型的には、コアを形成するフルオロカーボン脂質と、エマルジョンを形成するための水性媒体中の浮遊物(分散質)の外層を形成する脂質/界面活性剤混合物との混合物のマイクロ流動化(microfluidizing)によって形成される。この方法では、脂質/界面活性剤は、ナノパーティクルを被覆する前に付加的リガンドと結合していてもよく、又は単に後のカップリングのための活性基を含んでいてもよい。或いは、脂質/界面活性剤層に含有されるべき成分は、補助材料(物質)の溶解特性によって、当該層に単に溶解するだけでもよい。水性媒体中の脂質/界面活性剤の浮遊物を得るために、超音波処理及び他の技術が必要となることもある。典型的には、脂質/界面活性剤外層中の複数の材料の少なくとも1つは、所望の付加的成分と結合するのに有用なリンカー又は官能基を含み、又は当該成分は、エマルジョンが調製されるときには既に当該材料と結合していてもよい。
【0029】
ターゲティングリガンド又は(常磁性金属のためのキレート化剤のような)他の有機成分と、(脂質/界面活性剤)外層の成分との共有結合によるカップリングのために、種々のタイプの結合及びリンク剤を使用することができる。そのようなカップリングを形成するための典型的な方法には、カルボジアミドの使用によるアミドの形成、又はマレイミドのような不飽和成分の使用によるスルフィド結合(linkage)の形成が含まれる。他のカップリング剤には、例えば、グルタルアルデヒド、プロパンジアール(propanedial)又はブタンジアール(butanedial)、2-イミノチオラン(iminothiolane)ヒドロクロライド、ジサクシンイミジルスベレート(suberate)、ジサクシンイミジルタートレート(tartrate)、ビス[2-(サクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホンのような二官能性N-ヒドロキシサクシンイミドエステル、N-(5-アジド-2-ニトロベンゾイルオキシ)サクシンイミド、サクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート及びサクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)ブチレートのようなヘテロ二官能性試薬、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン、4,4'-ジフルオロ-3,3'-ジニトロジフェニルスルホン、4,4'-ジイソチオシアノ-2,2'-ジスルホン酸スチルベン、p-フェニレンジイソチオシアネート、カルボニルビス(L-メチオニンp-ニトロフェニルエステル)、4,4'-ジチオビスフェニルアジド、エリトリトールビスカルボネートのようなホモ二官能性試薬、及びジメチルアジピミデート(adipimidate)ヒドロクロライド、ジメチルスベリミデート(suberimidate)、ジメチル3,3'-ジチオビスプロピオンイミデートヒドロクロライドのような二官能性イミドエステル等が含まれる。結合(linkage)は、アシル化、スルホン化、還元性アミノ化等によって達成することも可能である。所望のリガンドを外層の1又は2以上の成分と、共有結合的に、結合する多くの方法は、当業者には既知である。リガンド自体は、その特性が適合的であるならば、界面活性剤層に含まれていてもよい。例えば、リガンドが高親油性部分を有する場合、リガンド自体を脂質/界面活性剤コーティング中に埋め込んでもよい。更に、リガンドが該コーティングに直接吸着することができる場合、この吸着もまたカップリングを形成するであろう。例えば、核酸は、その負電荷のため、カチオン性界面活性剤に直接吸着する。
【0030】
リガンドは、ナノパーティクルに直接結合することもできる。即ち、リガンドは、ナノパーティクル自体と関連(結合)する。或いは、ビオチン/アビジンによって引き起こされるもののような間接的結合も、通常は、αβ特異的リガンドのために利用することができる。例えば、ビオチン/アビジン媒介ターゲティングにおいて、αβリガンドは、エマルジョンに結合するのではなく、寧ろ、ビオチン化状態で、標的組織に結合する。
【0031】
コーティング層に取り込まれることによりナノパーティクルと結合可能な補助剤には、放射性核種が含まれる。放射性核種は、治療的であっても診断的であってもよい。そのような放射性核種を使用する診断イメージングは既知であり、不所望の組織に放射性核種を標的することにより、治療上の利点が同様に達成され得る。典型的な診断用放射性核種には、99mTc、95Tc、lllIn、62Cu、64Cu、67Ga、及び68Gaが含まれ、治療用放射性核種には、186Re、188Re、153Sm、166Ho、177Lu、149Pm、90Y、212Bi、103Pd、109Pd、159Gd、140La、198Au、199Au、169Yb、175Yb、165Dy、166Dy、67Cu、105Rh、111Ag及び192Irが含まれる。放射性核種は、形成されたエマルジョンに種々の方法で供与することができる。例えば、99Tc-ペルテクネート(pertechnate)は、過剰の塩化スズ(II)と混合し、ナノパーティクルの形成されたエマルジョンに組み込むことができる。塩化スズ(II)の代わりに、スズ(II)オキシネート(Stannous oxinate)を使用することもできる。更に、市販のキット、例えばニコメド・アマシャム(Nycomed Amersham)によりCeretek(登録商標)として販売されているHM−PAO(exametazine)キットも使用することができる。本発明のナノパーティクルに種々の放射性核種を付する手段は、当業者には既知である。
【0032】
核磁気共鳴映像法で使用するための常磁性金属を含むキレート化剤も、補助剤として使用することができる。通常は、(1つの)常磁性金属を含む(1つの)キレート化剤は、ナノパーティクル上のコーティングの脂質/界面活性剤と結合(関連)し、超音波処理される開始混合物に取り込まれる。キレート化剤は、コーティング層の複数の成分の1又は2以上と直接結合することができる。好適なキレート化剤には、EDTA、DPTA、DOTA等を含む種々の多座化合物が含まれる。これらキレート化剤は、例えばホスファチジルエタノールアミン、ビスオレアート等に含まれる官能基に直接的に、又は結合基(linking groups)を介して結合することができる。
【0033】
本発明のMRI造影剤に有用な常磁性金属には、希土類金属、典型的にはマンガン、イッテルビウム、ガドリニウム、ユーロピウム等が含まれる。
【0034】
その他の補助剤には、フルオレセイン、ダンシル、量子ドット(quantum dots)のようなフルオロフォアが含まれる。
【0035】
本発明のある実施形態では、ナノパーティクルの表面に含まれるものとして、生理活性物質がある。このような生理活性物質は、例えばタンパク質、核酸、医薬等、多種多様なものであり得る。例えば、好適な医薬に含まれるものとして、抗腫瘍薬、ホルモン、鎮痛薬、麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌剤若しくは駆虫薬、抗ウイルス薬、インターフェロン、抗糖尿病薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、抗凝血薬等がある。
【0036】
上記何れの場合でも、結合成分がαβのためのターゲティングリガンドであろうと補助剤であろうと、所定の成分は、脂質/界面活性剤層と非共有結合的に結合してもよく、脂質/界面活性剤層の成分(複数)と直接結合してもよく、スペーサー成分を介して当該成分と結合してもよい。
【0037】
ターゲティングリガンド
【0038】
本発明のエマルジョンは、抗体又はそのフラグメント以外の(リガンドであって)αβインテグリンに特異的なリガンドであるターゲティング剤を使用する。一実施形態では、リガンドは、上掲米国特許第6,130,231号;同第6,153,628号;同第6,322,770号;及び国際特許出願国際公開WO 01/97848号に記載されたもののような非ペプチド有機分子である。それらについては引用を以って本書に繰り込み、ここに記載されているものとする。とりわけリガンドは、米国特許第6,153,628号の請求項1に規定されたリガンド、米国特許第6,322,770号の請求項1に規定されたリガンド、又は米国特許第6,130,231号に記載された式1の化合物である。「非ペプチド」成分とは、一般に、遺伝子にコードされているかいないかに関わらずアミノ酸の単なるポリマーからなる化合物以外の化合物をいう。従って、「非ペプチド」リガンドとは、ポリマーの特性を欠如しかつアミノ酸ポリマー以外の中心構造の必要性によって特徴付けられる「小分子」と一般に指称される成分をいう。本発明に有用な非ペプチドリガンドは、ペプチドと結合してもよく、当該リガンドのαβ成分への親和性の原因部分と結合するペプチドを含んでもよい。しかしながら、その結合能の原因となるのは、当該リガンドの非ペプチド領域である。
【0039】
本発明の方法及び組成物にとりわけ有用なαβ特異的リガンドの1つの群は、式(I)で表される:


但し、そのステレオアイソマー、又はそのステレオアイソマーの混合物、又はその医薬的に許容可能な塩若しくはプロドラッグも含まれ、
Hcは、グアニジルを含むか、又はNを含む複素環を含み、
は、リンカーであり、
Gは、N又はCRであり、
は、H以外の非妨害性置換基であり、
は、それぞれ、H又は非妨害性置換基であり、
Mは、任意的に置換されたカルボキシル基、スルホニル(sulfonylic)基又はリン酸基又はエステル又はそれらのアミドを含むか、又は4又は5員環であり、
環A及び環Bは、それぞれ、任意的に、非妨害性置換基で更に置換されてもよい。
【0040】
適切であれば、上記の化合物は、塩の形態をとりうる。
【0041】
式(I)の化合物が1又は2以上のキラル中心を有する場合、本発明には、任意的に、純粋な状態、並びにステレオアイソマーないしエナンチオマーの混合物が含まれる。
【0042】
式(I)の化合物において、Mに含まれるカルボキシル基、スルホニル基又はリン酸基又はエステル又はそれらのアミドは、この分子に対する何れの配向で位置してもよい。即ち、例えばスルホンアミドは、SON−でも−NSO−でもよい。更に、複数のカルボキシル基、スルホニル基又はリン酸基又はエステル又はそれらのアミドは、タンデム状態で含有されていてもよい。これらの残基は、更に、置換を受けていてもよく、またPEGを含有するものやペプチド結合(基)を含有するものを含む、種々の結合基(linking groups)を介してナノパーティクルの成分と結合してもよい。
【0043】
好ましい実施形態では、Mは、−COR、−SOH、−POH、−CONHNHSOCF、−CONHSO、−CONHSONHR、−NHCOCF、−NHCONHSO、−NHSO、−OPO、−OSOH、−PO、−SONHCOR、−SONHCO

からなる群から選択される。
【0044】
「非妨害性置換基」とは、式(I)の化合物のαβへの結合能を破壊しない置換基をいう。置換基は結合力を変化してもよいが、その結合は、αβに結合する固体担体に結合する標識の検出のような標準的な方法によってなお検出可能でなければならない。式(I)の化合物の本質的特徴は、当該式に規定されているが、当該化合物の結合能を実質的に変化しない種々の置換基が更に含まれてもよいことは明らかである。当業者であれば、Rの任意の例に対し、αβへの結合特性がRの試験例の組み込みを保証するために十分満足できるものであるか否かを容易に評価することができる。従って、任意に選択した例に対し、置換基が妨害を行うか行わないかを決定することは容易な事項である。
【0045】
従って、上記分子の本質的特徴は、厳格に規定されている。「非妨害性置換基」によって占有される位置は、当業者に既知のような通常の無機又は有機成分によって置換することができる。そのような置換基の外延(outer limits)を調べることは、本発明には重要でない。上記化合物の本質的特徴は、とりわけ本書に規定されたものである。
【0046】
更に、Lは、本書においては、リンカーとして記載されている。(1つの)分子の複数の部分間に距離与えるというそのようなリンカーの性質は殆ど重要ではない。典型的なリンカーには、アルキレン、即ち(CH;アルケニレン、即ち一末端における1つの二重結合を含む、1つの二重結合を含むアルキレン成分が含まれる。他の好適なリンカーには、例えば、置換アルキレン又はアルケニレン、カルボニル成分等が含まれる。
【0047】
「ヒドロカルビル(Hydrocarbyl)残基」は、炭素及び水素のみを含有する残基をいう。この残基は、脂肪族又は芳香族、直鎖状、環状、有枝型、飽和又は不飽和でもよい。ヒドロカルビル残基は、このように定義される場合であっても、置換残基の炭素及び水素原子の上(方)に(over and above)、又はその代わりに、ヘテロ原子を含んでもよい。従って、そのようなヘテロ原子を含む(含有する)と特に記載した場合は、ヒドロカルビル残基は、カルボニル基、アミノ基、ヒドロキシル基等を含むこと、又は当該ヒドロカルビル残基の「バックボーン(主鎖)」内にヘテロ原子を含むことができる。
【0048】
「アルキル」、「アルケニル」及び「アルキニル」には、一価の直鎖状、分枝鎖状及び環状置換基が含まれる。例えば、メチル、エチル、イソブチル、シクロヘキシル、シクロペンチルエチル、2-プロペニル、3-ブチニル等が含まれる。典型的には、アルキル、アルケニル及びアルキニル置換基には、1−10C(アルキル)又は2−10C(アルケニル又はアルキニル)が含まれる。1−6C(アルキル)又は2−6C(アルケニル又はアルキニル)が好ましい。ヘテロ原子を含むそのような成分は同様に定義されるが、バックボーン残基中に1−2O、S、P、Si又はNへテロ原子又はそれらの組み合わせを含むことができる。
【0049】
「アシル」は、アルキル、アルケニル、アルキニルの上記定義、及びカルボニル基を介して付加残基と結合する関連するヘテロ形態が含まれる。
【0050】
「芳香族」又は「アリール」成分は、フェニル又はナフチルのような単環式又は融合二環式成分をいう。「複素環式芳香族」も、O、S及びNから選択される1又は2以上のへテロ原子を含む単環式又は融合二環式環系をいう。ヘテロ原子の含有は、5員環及び6員環の包含を可能とする。例えば、典型的な芳香族系には、ピリジル、ピリミジル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、イソキノリル、キノリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、チエニル、フリル、ピロリル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル等が含まれる。環系全体に亘る電子分布の観点から芳香族の特性を有する単環式又は融合二環式環系は、何れもこの定義に含まれる。典型的には、このような環系は、5−12環員原子を含む。
【0051】
「非妨害的置換基」は、典型的には、ハロ(halo)、OH、SH、NH、NO又はその他の無機置換基であり、又はO、S、P、Si及びNから選択される0−6へテロ原子を含むヒドロカルビル残基(1−20C)である。好ましくは、ヘテロ原子は、O、S及び/又はNである。例えば、ヒドロカルビル残基は、その置換基が上記へテロ原子を含み及び/又は当該置換基自体が1−6置換基によって置換されてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキルであってもよい。アリール残基上の又は適切なヘテロ原子上の置換基には、アルキル、アルケニル、アルキニル、更なるアリール、又はアリールアルキル、アリールアルケニル、及びアリールアルキニルが含まれる。適切なヘテロ原子を含み、非環状炭素鎖上に現れ得る置換基には、これら成分の置換形態及び/又はそのヘテロ原子含有形態、並びにハロ(halo)、OR、NR、SR、SOR、SOR、OCOR、NRCOR、NRCONR、NRCOOR、OCONR、RCO、COOR、SOR、CONR、SONR、NRSONR、CN、CF、RSi及びNO(ここにRは、互いに独立に、アルキル、アルケニル、アリール等又はそれらのヘテロ(原子含有)形態である。)が含まれる。2つの置換基は、環又は=Oを形成してもよい。
【0052】
隣接する位置上の又は同一のC又はN上の2つのRは、任意的に置換された芳香族又は非芳香族、飽和又は不飽和の、融合3−8員環を形成するために結合することができ、又は2つのRは、=O又はオキシム、オキシムエーテル、オキシムエステル、又はそれらのケタールであってもよい。
【0053】
複数の実施形態の1つの組み合わせでは、式(I)の化合物において、Hcは、任意的に置換された、1又は2つの窒素を含む5又は6員環である。好ましい置換基には、アミンが含まれる。
【0054】
複数の実施形態の1つの組み合わせでは、Lには、1−4員のアルキレン鎖であって、その(鎖をなす)原子のうち1又は隣り合わない2つの原子がN、S又はO、好ましくはNであるヘテロ原子であり得るアルキレン鎖が含まれる。好ましい実施形態では、Gにが、N及びCHが含まれる。
【0055】
好ましい実施形態では、Rには、H、アルキル(1−10C)、アルケニル(2−10C)、アシル(1−10C)、アリールアルキル又はアリールアシルが含まれる。ここに、アルキル及びアシルは上記と同様に定義され、アリールには、N、O及びSから選択されるヘテロ原子が任意的に含まれる5−12員環が含まれる。Rが1つの炭素において置換される場合、Rは、COOR(RはH又はアルキル(1−10C))、又はCONR(Rは既に定義されたものと同様)、OOCR若しくはNROCR(Rは既に定義されたものと同様)、ハロ(halo)、CF等であってもよい。
【0056】
本発明で有用な式(I)の化合物の実施形態であるαβ特異的リガンドの1つの群として、式(II)の化合物がある:


但し、該化合物には、そのステレオアイソマー、又はそのステレオアイソマーの混合物、又はその医薬的に許容可能な塩若しくはプロドラッグも含まれ、
1eは、

から選択され、
は、−CH−又は−N(R10e)−;

1e及びBは、互いに独立に、−CH−又は−N(R10e)−;

は、−N(R10e)−又は−S−;

−Fは、−C(R2e)=C(R3e)−又は−C(R2eC(R3e−;

は、−C(R2e)−又は−N−;

、L及びMは、互いに独立に、−C(R2e)−又は−C(R3e)−;

2e及びR3eは、互いに独立に、H、C−Cアルコキシ、NR11e12e、ハロゲン、NO、CN、CF、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cシクロアルキル、C−Cシクロアルキル(C−Cアルキル)、アリール(C−Cアルキル)−、(C−Cアルキル)カルボニル、(C−Cアルコキシ)カルボニル、アリールカルボニル、及び0−4R7eで置換されたアリール、
或いは、R2e及びR3eが隣接する(隣り合う)原子上の置換基である場合、R2e及びR3eは、5−7炭素環式又は5−7複素環式芳香族又は非芳香族環系を生成するためにR2e及びR3eが結合する炭素原子と共に除去可能であり(該炭素環又は複素環は、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、ハロ(halo)、シアノ、アミノ、CF及びNOから選択される0−2基によって置換される。)、
から選択され、

2aeは、
H、C−C10アルキル、C−Cアルケニル、C−C11シクロアルキル、C3−シクロアルキル(C−Cアルキル)、アリール、アリール(C−Cアルキル)−、(C−Cアルキル)カルボニル、アリールカルボニル、(C−C10アルコキシ)カルボニル、C−Cシクロアルコキシカルボニル、C−C11ビシクロアルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリール(C−C10アルコキシ)カルボニル、C−Cアルキルカルボニルオキシ(C−Cアルコキシ)カルボニル、アリールカルボニルオキシ(C−Cアルコキシ)カルボニル、及びC−Cシクロアルキルカルボニルオキシ(C−Cアルコキシ)カルボニル
から選択され、

7eは、H、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、アリール、アリール(C−Cアルキル)−、(C−Cアルキル)カルボニル、CO18ae、SO11e、SONR10e11e、OR10e、及びN(R11e)R12e
から選択され、

は、
−(CH−、−(CHO(CH−、−(CHN(R12)(CH−、−NH(CH−、−(CHC(=O)(CH−、−(CHS(O)(CH−、(CHNHNH(CH−、−N(R10e)C(=O)−、−NHC(=O)(CH−、−C(=O)N(R10e)−、及び−N(R10e)S(O)
から選択され、

Geは、N又はCR19e

は、−C(=O)−N(R10e)−(C−Cアルキレン)−であって、該アルキレン基がR8eによって及びR9eによって置換されたもの:
8e及びR9eは、互いに独立に、
H、COl8be、C(=O)Rl8be、CONR1718be、0−1R6eで置換されたC−C10アルキル、0−1R6eで置換されたC−C10アルケニル、0−1R6eで置換されたC−C10アルキニル、0−1R6eで置換されたC−Cシクロアルキル、0−1R6eで置換されたC−Cシクロアルケニル、(C−C10アルキル)カルボニル、C−C10シクロアルキル(C−Cアルキル)−、0−3R6eで置換されたフェニル、0−3R6eで置換されたナフチル、
飽和、部分的に飽和、又は完全に不飽和であってよく、0−2R7eで置換された、1−3N、O又はSへテロ原子を含む5−10員複素環、
0−2R7e、ヒドロキシ、ニトロ、−N(R10e)R11e、−N(R16e)R17e、アリール(C−Cアルキル)カルボニル、アリール(C−Cアルキル)、ヘテロアリール(C−Cアルキル)、CONR18ae20e、SO18ae、及びSONR18ae20eで置換されたC1−C10アルコキシ、
但し、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基は、互いに独立に1−2R7eで置換されていてもいなくてもよい、
から選択され、

6eは、
H、C−C10アルキル、ヒドロキシ、C−C10アルコキシ、ニトロ、C−C10アルキルカルボニル、−N(R11e)R12e、シアノ、ハロ、CF、CHO、CO18be、C(=O)Rl8be、CONR17el8be、OC(=O)R10e、OR10e、OC(=O)NR10e11e、NR10eC(=O)R10e、NR10eC(=O)OR21e、NR10eC(=O)NR10e11e、NR10eSONR10e11e、NR10eSO21e、S(O)11e、SONR10e11e
ハロゲン、C−Cアルコキシ、C−C10アルキル、CF、S(O)Me、及び−NMeから選択される0−3基で置換されたアリール、
アリール(C−Cアルキル)−であって、該アリールがハロゲン、C−Cアルコキシ、C−C10アルキル、CF、S(O)Me、及び−NMeから選択される0−3基で置換されたもの、
飽和、部分的に飽和、又は完全に不飽和であってよく、0−2R7eで置換された、1−3N、O又はSへテロ原子を含む5−10員複素環、
から選択され、

10eは、
H、CF、C−Cアルケニル、C−C11シクロアルキル、アリール、(C−C11シクロアルキル)メチル、アリール(C−Cアルキル)、及び0−2R6eで置換されたC−C10アルキル
から選択され、

11eは、
H、ヒドロキシ、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−C11シクロアルキル、(C−C11シクロアルキル)メチル、C−Cアルコキシ、ベンジルオキシ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリール(C−Cアルキル)−、アリール(C−Cアルキル)、アダマンチルメチル(adamantylmethyl)、及び0−2R4eで置換されたC−C10アルキル
から選択され、

4eは、
H、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cシクロアルキル(C−Cアルキル)−、(C−C10アルキル)カルボニル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C−Cアルキル)−、及びヘテロアリール(C−Cアルキル)−(但し、該アリール又はヘテロアリール基は、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、F、Cl、Br、CF、及びNOからなる群から互いに独立に選択される0−2置換基によって置換されている)
或いは、R10e及びR11eの両者が同一の窒素原子上の置換基である場合(−NR10e11e)、R10e及びR11eは、3-アザビシクロノニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-1-キノリニル、1,2,3,4-テトラヒドロ-2-イソキノリニル、1-ピペリジニル、1-モルフォリニル、1-ピロリジニル、チアモルフォリニル、チアゾリジニル、及び1-ピペラジニルから選択される複素環を生成するためにR10e及びR11eが結合する窒素原子と共に除去されてもよい、
から選択され、

前記複素環は、C−Cアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C−Cアルキル)−、(C−Cアルキル)カルボニル、アリール(C−Cアルコキシ)カルボニル、C−Cアルキルスルホニル、及びアリールスルホニルから選択される0−3基で置換されている、

12eは、
H、C−Cアルキル、トリフェニルメチル、メトキシメチル、メトキシフェニルジフェニルメチル、トリメチルシリルエトキシメチル、(C−Cアルキル)カルボニル、(C−Cアルコキシ)カルボニル、(C−Cアルキル)アミノカルボニル、C−Cアルケニル、C−Cシクロアルキル、C−Cシクロアルキル(C−Cアルキル)−、アリール、ヘテロアリール(C−Cアルキル)カルボニル、ヘテロアリールカルボニル、アリール(C−Cアルキル)−、(C−Cアルキル)カルボニル、アリールカルボニル、C−Cアルキルスルホニル、アリールスルホニル、アリール(C−Cアルキル)スルホニル、ヘテロアリールスルホニル、ヘテロアリール(C−Cアルキル)スルホニル、アリールオキシカルボニル、及びアリール(C−Cアルコキシ)カルボニル、(該アリール基は、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、ハロ、CF、及びニトロからなる群から選択される0−2置換基によって置換されている。) から選択され、

16eは、
−C(=O)OR18ae、−C(=O)R18be、−C(=O)N(R18be、−C(=O)NHSO18ae、-C(=O)NHC(=O)R18be、−C(=O)NHC(=O)OR18ae、−C(=O)NHSONHR18be、-SO18ae、−SON(R18be、及び−SONHC(=O)OR18be
から選択され、

17eは、
H、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cシクロアルキル(C−Cアルキル)−、アリール、アリール(C−Cアルキル)−、及びヘテロアリール(C−Cアルキル)
から選択され、

18aeは、
への結合で任意的に置換されたC−Cアルキル、Lへの結合で任意的に置換されたC−C11シクロアルキル、Lへの結合で任意的に置換されたアリール(C−Cアルキル)−、Lへの結合で任意的に置換されたヘテロアリール(C−Cアルキル)−、Lへの結合で任意的に置換された(C−Cアルキル)ヘテロアリール、Lへの結合で任意的に置換されたビアリール(C−Cアルキル)、Lへの結合で任意的に置換されたヘテロアリール、3−4R19eで置換されかつLへの結合で任意的に置換されたフェニル、0−4R19eで置換されかつLへの結合で任意的に置換されたナフチル、及びLへの結合(該アリール基又はヘテロアリール基は、任意的に0−4R19eで置換されている。)
から選択され、

18beは、H又はR18ae

19eは、H、ハロゲン、CF、COH、CN、NO、−NR11e12e、OCF、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C11シクロアルキル、C−Cシクロアルキル(C−Cアルキル)−、アリール(C−Cアルキル)−、C−Cアルコキシ、C−Cアルコキシカルボニル、アリール、アリール−O−、アリール−SO−、ヘテロアリール、及びヘテロアリール−SO−、(該アリール基及びヘテロアリール基は水素、ハロゲン、CF、C−Cアルキル、及びC−Cアルコキシから選択される0−4基で置換されている。)
から選択され、

20eは、
水素、C−C10アルキルオキシ、C−C11シクロアルキルオキシ、アリールオキシ、アリール(C−Cアルキル)オキシ、C−C10アルキルカルボニルオキシ(C−Cアルキル)オキシ−、C−C10アルコキシカルボニルオキシ(C−Cアルキル)オキシ−、C−C10アルコキシカルボニル(C−Cアルキル)オキシ−、C−C10シクロアルキルカルボニルオキシ(C−Cアルキル)オキシ−、C−C10シクロアルコキシカルボニルオキシ(C−Cアルキル)オキシ−、C−C10シクロアルコキシカルボニル(C−Cアルキル)オキシ−、アリールオキシカルボニル(C−Cアルキル)オキシ−、アリールオキシカルボニルオキシ(C−Cアルキル)オキシ−、アリールカルボニルオキシ(C−Cアルキル)オキシ−、C−Cアルコキシ(C−Cアルキル)カルボニルオキシ(C−Cアルキル)オキシ、(5-(C−Cアルキル)-1,3-ジオキサ-シクロペンテン-2-オン-イル)メチルオキシ、(5-アリール-1,3-ジオキサ-シクロペンテン-2-オン-イル)メチルオキシ、及び(R10e)(R11e)N−(C−C10アルコキシ)−
から選択され、

20eは、
−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−C11シクロアルキル、(C−C11シクロアルキル)メチル、アリール、アリール(C−Cアルキル)−、及び0−2R7eで置換されたC−C10アルキル
から選択され、

20eは、
−C(=O)−R18be、−C(=O)N(R18be、−C(=O)NHSO18ae、-C(=O)NHC(=O)R18be、−C(=O)NHC(=O)OR18ae、及び−C(=O)NHSONHR18be
から選択され、

は、
−COR20e、−SOH、−POH、−CONHNHSOCF、−CONHSO18ae、−CONHSONHR18be、−NHCOCF、−NHCONHSO18ae、−NHSO18ae、−OPO、−OSOH、−PO、−SONHCOR18ae、−SONHCO18ae

から選択される。
【0057】
上述したリガンドは、リンカーを介して(ナノ)パーティクルの脂質/界面活性剤コーティングに含まれる材料に結合することも可能である。一実施形態では、リンカーは、以下の式のように構成される:

((W)-(CR))-(Z)-((CR6a7a)g'-(W)h')x'

ここに、Wは、それぞれ存在する場合、互いに独立に、以下の群:O、S、NH、NHC(=O)、C(=O)NH、NRC(=O)、C(=O)NR、C(=O)、C(=O)O、OC(=O)、NHC(=S)NH、NHC(=O)NH、SO、SONH、(OCHCH20−200、(CHCHO)20−200、(OCHCHCH20−200、(CHCHCHO)20−200、及び(aa)t’
から選択され、

aaは、それぞれ存在する場合、互いに独立に、アミノ酸;

Zは、以下の基:0−3R10で置換されたアリール、0−3R10で置換されたC3−10シクロアルキル、及びN、S及びOから互いに独立に選択される1−4ヘテロ原子を含みかつ0−3R10で置換された5−10員複素環系
から選択され、

、R6a、R、R7a、及びRは、それぞれ存在する場合、互いに独立に、以下の群:H、=O、COOH、SOH、POH、0−3R10で置換されたC−Cアルキル、0−3R10で置換されたアリール、0−3R10で置換されたベンジル、及び0−3R10で置換されたC−Cアルコキシ、NHC(=O)R11、C(=O)NHR11、NHC(=O)NHR11、NHR11、R11、及び付加成分への結合
から選択され、

10は、それぞれ存在する場合、互いに独立に、以下の群:
への結合、COOR11、C(=O)NHR11、NHC(=O)R11、OH、NHR11、SOH、POH、−OPO、−OSOH、0−3R11で置換されたアリール、0−1R12で置換されたC1−5アルキル、0−1R12で置換されたC1−5アルコキシ、及びN、S及びOから互いに独立に選択される1−4へテロ原子を含みかつ0−3R11で置換された5−10員へテロ環系
から選択され、

11は、それぞれ存在する場合、互いに独立に、以下の群:
H、0−1R12で置換されたアルキル、0−1R12で置換されたアリール、N、S及びOから互いに独立に選択される1−4へテロ原子を含みかつ0−3R12で置換された5−10員へテロ環系、0−1R12で置換されたC3−10シクロアルキル、0−1R12で置換されたポリアルキレングリコール、0−1R12で置換された炭水化物、0−1R12で置換されたシクロデキストリン、0−1R12で置換されたアミノ酸、0−1R12で置換されたポリカルボキシアルキル、0−1R12で置換されたポリアザアルキル、0−1R12で置換されたペプチド、(該ペプチドは、2−10アミノ酸、3,6-O-ジスルホ-B-D-ガラクトピラノシル、ビス(ホスホノメチル)グリシン、及び付加成分への結合を含む)
から選択され、

12は、付加成分への結合;

kは、0、1、及び2から選択され、
hは、0、1、及び2から選択され、
h’は、0、1、及び2から選択され、
gは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10から選択され、
g’は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10から選択され、
t’は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10から選択され、
xは、0、1、2、3、4、及び5から選択され、
x’は、0、1、2、3、4、及び5から選択される。
【0058】
幾つかの実施形態では、ナノパーティクルに含有される付加的置換基には、放射性核種のためのキレート剤又はX線映像法若しくは核磁気共鳴映像法のための金属が含まれる。そのようなキレート剤には、以下の式で表されるキレート剤が含まれる:

Al、A2、A3、A4、A5、A6、A7、及びA8は、互いに独立に、
NR13、NR1314、S、SH、S(Pg)、O、OH、PR13、PR1314、P(O)R1516、及び錯体の残部への結合
から選択され、

Eは、結合、CH、又は、それぞれ存在する場合、互いに独立に、以下の群:
0−3R17で置換されたC−C10アルキレン、0−3R17で置換されたアリーレン(arylene)、0−3R17で置換されたC3−10シクロアルキレン、0−3R17で置換されたヘテロシクロ-C1−10アルキレン(但し、該ヘテロシクロ基は、N、S及びOから互いに独立に選択される1−4へテロ原子を含む5−10員へテロ環系)、0−3R17で置換されたC6−10アリール-C1−10アルキル、0−3R17で置換されたC1−10アルキル-C6−10アリール-、及びN、S及びOから互いに独立に選択される1−4へテロ原子を含みかつ0−3R17で置換された5−10員へテロ環系
から選択されるスペーサー基、

13及びR14は、それぞれ、互いに独立に、以下の群:
n’への結合、水素、0−3R17で置換されたC−C10アルキル、0−3R17で置換されたアリール、0−3R17で置換されたC1−10シクロアルキル、0−3R17で置換されたヘテロシクロ-C1−10アルキル(但し、該ヘテロシクロ基は、N、S及びOから互いに独立に選択される1−4へテロ原子を含む5−10員へテロ環系)、0−3R17で置換されたC6−10アリール-C1−10アルキル、0−3R17で置換されたC1−10アルキル-C6−10アリール、N、S及びOから互いに独立に選択される1−4へテロ原子を含みかつ0−3R17で置換された5−10員へテロ環系、及び電子(R13又はR14の一方が電子であるとした場合、他方も電子であると仮定した場合)
から選択され、

或いは、R13及びR14は、=C(R20)(R21)を形成するために結合し、

15及びR16は、それぞれ、互いに独立に、以下の群:
n’への結合、−OH、0−3R17で置換されたC−C10アルキル、0−3R17で置換されたC−C10アルキル、0−3R17で置換されたアリール、0−3R17で置換されたC3−10シクロアルキル、0−3R17で置換されたヘテロシクロ-C1−10アルキル(但し、該ヘテロシクロ基は、N、S及びOから互いに独立に選択される1−4へテロ原子を含む5−10員へテロ環系)、0−3R17で置換されたC6−10アリール-C1−10アルキル、0−3R17で置換されたC1−10アルキル-C6−10アリール、及びN、S及びOから互いに独立に選択される1−4へテロ原子を含みかつ0−3R17で置換された5−10員へテロ環系
から選択され、

17は、それぞれ存在する場合、互いに独立に、以下の群:
n’への結合、=O、F、Cl、Br、I、−CF、−CN、−CO18、−C(=O)R18、−C(=O)N(R18、−CHO、−CHOR18、−OC(=O)R18、−OC(=O)OR18a、−OR18、−OC(=O)N(R18、−NR19C(=O)R18、−NR19C(=O)OR18a、−NR19C(=O)N(R18、−NR19SON(R18、−NR19SO18a、−SOH、−SO18a、−SR18、−S(=O)R18a、−SON(R18、−N(R18、−NHC(=S)NHR18、=NOR18、NO、−C(=O)NHOR18、−C(=O)NHNR1818a、−OCHCOH、2-(1-モルフォリノ)エトキシ、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cシクロアルキル、C−Cシクロアルキルメチル、C−Cアルコキシアルキル、0−2R18で置換されたアリール、及びN、S及びOから互いに独立に選択される1−4へテロ原子を含む5−10員へテロ環系
から選択され、

18、R18a、及びR19は、それぞれ存在する場合、互いに独立に、以下の群:
n’への結合、H、C−Cアルキル、フェニル、ベンジル、C−Cアルコキシ、ハライド、ニトロ、シアノ、及びトリフルオロメチル
から選択され、

Pgは、チオール保護基;

20及びR21は、互いに独立に、以下の群:
H、C−C10アルキル、−CN、−CO25、−C(=O)R25、−C(=O)N(R25、0−3R23で置換されたC−C101-アルケン、0−3R23で置換されたC−C101-アルキン、0−3R23で置換されたアリール、N、S及びOから互いに独立に選択される1−4へテロ原子を含みかつ0−3R23で置換された不飽和5−10員へテロ環系、及び0−3R23で置換された不飽和C3−10炭素環(carbocycle)
から選択され、

或いは、R20及びR21は、


を生成するためにR20及びR21が結合する二価の炭素ラジカルと共に除去され、

21及びR23は、互いに独立に、以下の群:
H、R24、0−3R24で置換されたC−C10アルキル、0−3R24で置換されたC−C10アルケニル、0−3R24で置換されたC−C10アルキニル、0−3R24で置換されたアリール、N、S及びOから互いに独立に選択される1−4へテロ原子を含みかつ0−3R24で置換された5−10員へテロ環系、及び0−3R24で置換されたC3−10炭素環(carbocycle)
から選択され、

或いは、R21、R23は、N、S及びOから互いに独立に選択される1−4へテロ原子を含む融合芳香族複素環系又は5−10員複素環系を生成するために、共に除去され、

a及びbは、任意の二重結合の位置を示し、nは0又は1であり、

24は、それぞれ存在する場合、互いに独立に、以下の群:
=O、F、Cl、Br、I、−CF、−CN、−CO25、−C(=O)R25、−C(=O)N(R25、−N(R25、−CHOR25、−OC(=O)R25、−OC(=O)OR25a、−OR25、−OC(=O)N(R25、−NR26C(=O)R25、−NR26C(=O)OR25a、−NR26C(=O)N(R25、−NR26SON(R25、−NR26SO25a、−SOH、−SO25a、−SR25、−S(=O)R25a、−SON(R25、−N(R25、=NOR25、−C(=O)NHOR25、−OCHCOH、及び2-(1-モルフォリノ)エトキシ
から選択され、

25、R25a、及びR26は、それぞれ存在する場合、それぞれ、互いに独立に、以下の群:
水素、及びC−Cアルキル
から選択され、

また、キレート剤には、上記各物質の医薬的に許容可能な塩も含まれる。
【0059】
本発明の一実施形態では、αβターゲティング成分は、
(1) 3-[7-[(イミダゾリン-2-イルアミノ)メチル]-l-メチル-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(3,5-ジメチルイソキサゾール-4-イルスルホニルアミノ)プロピオン酸、
(2) 3-[7-[(イミダゾリン-2-イルアミノ)メチル]-l-メチル-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)プロピオン酸、
(3) 3-[7-[(イミダゾリン-2-イルアミノ)メチル]-l-メチル-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(n-ブチルオキシカルボニルアミノ)プロピオン酸、
(4) 3-[7-[(イミダゾリン-2-イルアミノ)メチル]-l-メチル-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(n-ブチルスルホニルアミノ)プロピオン酸、
(5) 3-[7-[(テトラヒドロピリミド-2-イルアミノ)メチル]-1-メチル-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)プロピオン酸、
(6) 3-[7-[(テトラヒドロピリミド-2-イルアミノ)メチル]-1-メチル-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(n-ブチルオキシカルボニルアミノ)プロピオン酸、
(7) 3-[7-[(テトラヒドロピリミド-2-イルアミノ)メチル]-1-メチル-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(フェニルスルホニルアミノ)プロピオン酸、
(8) 3-[7-[(テトラヒドロピリミド-2-イルアミノ)メチル]-1-メチル-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(n-ブチルスルホニル)アミノプロピオン酸、
(9) 3-[7-[(2-アミノチアゾール-4-イル)メチル]-1-メチル-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)プロピオン酸、
(10) 3-[7-[(イミダゾリン-2-イルアミノ)メチル]-1-メチル-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-((2,4,6-トリメチルフェニル)スルホニルアミノ)プロピオン酸、
(11) 3-[7-[(テトラヒドロピリミド-2-イルアミノ)メチル]-1-メチル-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-((2,4,6-トリメチルフェニル)スルホニルアミノ)プロピオン酸、
(12) 3-[7-[(イミダゾール-2-イルアミノ)メチル]-1-メチル-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(3,5-ジメチルイソキサゾール-4-イルスルホニルアミノ)プロピオン酸、
(13) 3-[7-[(イミダゾール-2-イルアミノ)メチル]-l-メチル-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)プロピオン酸、
(14)3-[7-[(イミダゾール-2-イルアミノ)メチル]-l-メチル-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-((2,4,6-トリメチルフェニル)スルホニルアミノ)プロピオン酸、
(15)3-[7-[(イミダゾール-2-イルアミノ)メチル]-l-メチル-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-((4-ビフェニル)スルホニルアミノ)プロピオン酸、
(16)3-[7-[(イミダゾール-2-イルアミノ)メチル]-l-メチル-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(1-ナフチルスルホニルアミノ)プロピオン酸、
(17)3-[7-[(ベンズイミダゾール-2-イルアミノ)メチル]-l-メチル-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-((2,4,6-トリメチルフェニル)スルホニルアミノ)プロピオン酸、
(18)3-[7-[(4-メチルイミダゾール-2-イルアミノ)メチル]-l-メチル-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-((2,4,6-トリメチルフェニル)スルホニルアミノ)プロピオン酸、
(19)3-[7-[(4,5-ジメチルイミダゾール-2-イルアミノ)メチル]-l-メチル-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-((2,4,6-トリメチルフェニル)スルホニルアミノ)プロピオン酸、
(20)3-[7-[(4,5,6,7-テトラヒドロベンズイミダゾール-2-イルアミノ)メチル]-l-メチル-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-((2,4,6-トリメチルフェニル)スルホニルアミノ)プロピオン酸、
(21)3-[7-[(ピリジン-2-イルアミノ)メチル]-l-メチル-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-((2,4,6-トリメチルフェニル)スルホニルアミノ)プロピオン酸、
(22)3-[7-(2-アミノピリジン-6-イル)-l-メチル-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-((2,4,6-トリメチルフェニル)スルホニルアミノ)プロピオン酸、
(23)3-[7-[(7-アザベンズイミダゾール-2-イル)メチル]-l-メチル-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-((2,4,6-トリメチルフェニル)スルホニルアミノ)プロピオン酸、
(24)3-[7-[(ベンズイミダゾール-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]プロピオン酸、
(25)3-[7-[(ピリジン-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]プロピオン酸、
(26)3-[7-[(イミダゾリン-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]プロピオン酸、
(27)3-[7-[(イミダゾール-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]プロピオン酸、
(28)3-[7-[(イミダゾリン-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)プロピオン酸、
(29)3-[7-[(イミダゾリン-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(n-ブチルオキシカルボニルアミノ)プロピオン酸、
(30)3-[7-[(イミダゾリン-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(フェニルスルホニルアミノ)プロピオン酸、
(31)3-[7-[(イミダゾリン-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(n-ブチルスルホニルアミノ)プロピオン酸、
(32)3-[7-[(テトラヒドロピリミド-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)プロピオン酸、
(33)3-[7-[(テトラヒドロピリミド-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(n-ブチルオキシカルボニルアミノ)プロピオン酸、
(34)3-[7-[(テトラヒドロピリミド-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(フェニルスルホニルアミノ)プロピオン酸、
(35)3-[7-[(テトラヒドロピリミド-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(n-ブチルスルホニル)アミノプロピオン酸、
(36)3-[7-[(2-アミノチアゾール-4-イル)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(フェニルスルホニルアミノ)プロピオン酸、
(37)3-[7-[(2-アミノチアゾール-4-イル)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)プロピオン酸、
(38)3-[7-[(イミダゾリン-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-((2,4,6-トリメチルフェニル)スルホニルアミノ)プロピオン酸、
(39)3-[7-[(テトラヒドロピリミド-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-((2,4,6-トリメチルフェニル)スルホニルアミノ)プロピオン酸、
(40)3-[7-[(イミダゾール-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(ベンジルオキシカルボニルアミノ)プロピオン酸、
(41)3-[7-[(イミダゾール-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-(フェニルスルホニルアミノ)プロピオン酸、
(42)3-[7-[(イミダゾール-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-((2,6-ジクロロフェニル)スルホニルアミノ)プロピオン酸、
(43)3-[7-[(イミダゾール-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-((2,4,6-トリメチルフェニル)スルホニルアミノ)プロピオン酸、
(44)3-[7-[(イミダゾール-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-((4-ビフェニル)スルホニルアミノ)プロピオン酸、
(45)3-[7-[(ベンズイミダゾール-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-((2,4,6-トリメチルフェニル)スルホニルアミノ)プロピオン酸、
(46)3-[7-[(4-メチルイミダゾール-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-((2,4,6-トリメチルフェニル)スルホニルアミノ)プロピオン酸、
(47)3-[7-[(4,5-ジメチルイミダゾール-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-((2,4,6-トリメチルフェニル)スルホニルアミノ)プロピオン酸、
(48)3-[7-[(4,5,6,7-テトラヒドロベンズイミダゾール-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-((2,4,6-トリメチルフェニル)スルホニルアミノ)プロピオン酸、
(49)3-[7-[(ピリジン-2-イルアミノ)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-((2,4,6-トリメチルフェニル)スルホニルアミノ)プロピオン酸、
(50)3-[7-(2-アミノピリジン-6-イル)-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-((2,4,6-トリメチルフェニル)スルホニルアミノ)プロピオン酸、又は
(51)3-[7-[(7-アザベンズイミダゾール-2-イル)メチル]-1-(2-フェニルエチル)-6,8-ジフルオロキノリン-4-オン-3-イルカルボニルアミノ]-2-((2,4,6-トリメチルフェニル)スルホニルアミノ)プロピオン酸、
であってもよい。
【0060】
調製方法
【0061】
本発明のエマルジョンを調製するための典型的な方法では、フルオロケミカル液と、脂質/界面活性剤コーティングの成分とを、水性媒体中で流動化して、エマルジョンを生成する。表面層の官能要素は、初期エマルジョンに含まれてもよいし、後に、ナノパーティクルエマルジョンの生成後、表面層に共有結合されてもよい。例えば核酸ターゲティング剤ないし薬が含有されるべき特別な一例では、コーティングは、カチオン性界面活性剤を使用してもよく、核酸は、パーティクルが形成された後表面に吸着する。
【0062】
適切に調製される場合、補助剤を含むナノパーティクルは、その外表面に、多数の官能性補助剤を有し、該ナノパーティクルは、典型的には、数百ないし数千分子の生理活性物質、ターゲティング剤、放射性核種及び/又はMRI造影剤を有する。MRI造影剤に対しては、ナノパーティクルに結合すべき成分のコピーの数は、典型的にはパーティクル当り5,000コピー以上、好ましくはパーティクル当り10,000コピー以上、より好ましくは30,000コピー以上、一層好ましくはパーティクル当り50,000〜1000,000又はそれ以上である。パーティクル当りのターゲティング剤の数は、通常はより少なく、数百のオーダーであり、フルオロフォア、放射性核種、及び生理活性物質も可変である。
【0063】
ナノパーティクルは、補助剤を含むことが必須というわけではない。通常、標的化パーティクルは、αβ特異的リガンドと直接結合するのであるが、それ自体で超音波造影剤として有用である。更に、パーティクルはフルオロカーボンコアを有するので、19F核磁気共鳴映像法は、上述の付加的官能基と同時にパーティクルの位置を追跡するために使用することができる。尤も、多数の他の成分を含んでいれば、当該他の成分は他の観点から有用である。例えば、常磁性イオンを伴うキレート化剤が含まれていれば、エマルジョンは、核磁気共鳴映像法の造影剤として役立つ。生理活性物質が含まれていれば、生理活性物質は薬物送達システムとして役立つ。放射性核種が含まれていれば、放射性核種は、治療上は放射線療法に役立ち、診断上はイメージングに役立つ。他のイメージング剤には、フルオレセイン又はダンシルのようなフルオロフォアが含まれる。生理活性物質も含有されてよい。多数のそのような活性も含まれ得る。従って、活性物質が標的組織へ送達されると同時に標的組織から画像を得ることができる。
【0064】
エマルジョンは、コーティングに含有されるべき成分の性質に応じて種々の方法で調製することができる。典型的な方法の一例では−これは単に説明のためのものに過ぎないことに注意すべきであるが−以下のように行われる:ペルフルオロオクチルブロマイド(40%w/v、PFOB、3M)、及び界面活性剤共混合物(co-mixture)(2.0%w/v)及びグリセリン(1.7%w/v)が調製される。該界面活性剤共混合物は、クロロホルムに溶解された64モル%レクチン(ファルマシア・インク社)、35モル%コレステロール(シグマ・ケミカル・コー社)及び1モル%ジパルミトイル-L-α-ホスファチジルエタノールアミン(ピアス・インク社)を含む。薬物は、メタノール(〜25μg/μl)に懸濁され、2%界面活性剤層の0.01〜5.0モル%、好ましくは0.2〜2.0モル%の滴定量で添加される。クロロホルム−脂質混合物を減圧下で蒸発し、50℃の真空オーブンで終夜乾燥し、超音波処理によって水に分散する。懸濁液を、蒸留水ないし脱イオン水中のペルフルオロオクチルブロマイドを含むブレンダーカップ(ダイナミックス・コーポレーション・オブ・アメリカ社)へ移し、30〜60秒間乳化する。乳化混合物を、マイクロフルイディクス乳化機(マイクロフルイディクス・コー社)へ移し、3分間20,000PSIで連続処理する。完成したエマルジョンは、ガラス瓶に入れ、窒素を封入し、使用するまでストッパークリンプシールして保存する。対照エマルジョンも、界面活性剤混合物が薬物を含んでいないという点を除いて、同様に調製することができる。粒径の決定は、レーザ光散乱サブミクロン粒径分析機(モルヴァン・ゼータサイザー4、モルヴァン・インスツルメンツ・エルティーディー社、サウスバロー、マサチューセッツ州)を用いて37℃で3通りの試料に対して行う。その結果、平均径400nm未満の緊密かつ再現性の大きい径分布が示される。含有されない薬物は、透析又は限外濾過によって除去することができる。ターゲティングリガンドを提供するために、αβリガンドは、上述の手順中に、二官能性リンカーを介して、ホスファチジルエタノールアミンと共有結合される。
【0065】
キット
【0066】
本発明のエマルジョンは本発明の方法により直接(現場で)調製・使用することもできるし、エマルジョンの各成分をキットとして提供することもできる。キットは、バッファ中の又は凍結乾燥した所望の補助剤をすべて含む予調製された標的化組成物を含んでもよい。或いは、キットは、別々に提供されるαβリガンドを欠いた形態のエマルジョンを含んでもよい。この状態では、通常、エマルジョンは、エマルジョンがターゲティング剤と混合されるとき、ターゲティング剤とエマルジョン自体との結合を引き起こす、マレイミド基のような活性基を含む。別個のコンテナ(容器)が、カップリングを引き起こすのに有用な付加的試薬を提供してもよい。或いは、エマルジョンが、それ自体活性基を含み別々に提供されるべき所望の成分と結合するリンカーと結合する活性基を含んでもよい。適切なキットを構築するための方法は多種多様ものもが考えられる。以上より、最終(完成)エマルジョンを構成する個々の成分は、別々のコンテナで提供されてもよく、また、単に、キット自体とは別に提供される他の材料との結合(組み合わせ)のための試薬をキットが含んでもよい。
【0067】
網羅的に列挙できないが、組合せの例には以下のものが含まれる:脂質−界面活性剤層中に、フルオロフォア又はキレート化剤及びαβターゲティング剤とのカップリングのための活性成分のような補助成分を含むエマルジョン調製物;逆にエマルジョンがターゲティング剤と結合し、補助剤とのカップリングのための活性基を含むもの;エマルジョンはターゲティング剤とキレート化剤の両方を含むが、キレートされるべき金属はキットに含まれるか利用者によって別に用意されるもの;界面活性剤/脂質層を含むナノパーティクルの調製物であって、脂質層中の材料は(複数の)異なる活性基、即ちαβリガンドのための活性基の1セットと補助剤のための活性基の他のセットを含むもの;上記の組み合わせの任意のものを含むエマルジョンの調製物であって、活性基がリンク剤(linking agent)によって提供されるもの。
【0068】
適用
【0069】
エマルジョン及びエマルジョン調製用キットは、αβインテグリンを高レベルで発現する組織をイメージングすることを含み、及びそのような発現レベルを有する組織が不所望であれば治療を行う本発明の方法に有用である。αβの高レベルの発現は、典型的には、活性内皮細胞でみられ、血管新生が起こっていると診断される。
【0070】
診断用放射性医薬品は、静脈内注入によって、通常生理食塩水に入れられて、体重70kg当り1〜100mCiの用量、好ましくは5〜50mCiの用量で投与される。イメージングは、既知の方法によって実行される。
【0071】
治療用放射性医薬品は、静脈内注入によって、通常生理食塩水に入れられて、体重kg当り0.01〜5mCiの用量、好ましくは体重kg当り0.1〜4mCiの用量で投与される。比較可能な治療用放射性医薬品に関し、現在の医療実務では、ゼバリンTMに対する0.3〜0.4mCi/kg〜オクトレオセル(OctreoTher)TM、即ち標識されたソマトスタチンペプチドに対する1〜2mCi/kgの範囲の用量が規定されている。そのような治療用放射性医薬品に対しては、腫瘍細胞破壊と正常器官毒性、とりわけ放射線被爆腎炎との間のバランスが図られている。この(用量の)レベルでは、このバランスは、通常、腫瘍細胞効果に有利である。この用量は、相応のイメージングアイソトープ(の量)よりも多い。
【0072】
本発明の核磁気共鳴映像法用造影剤は、米国特許第5,155,215号;同第5,087,440号;Margerstadt, et al., Magn. Reson. Med. (1986) 3: 808; Runge, et al., Radiology (1988) 166: 835; 及び Bousquet, et al., Radiology (1988) 166: 693に記載されているような他のMRI剤と同様に使用することができる。使用可能な他の剤には、米国特許公開第2002/0127182号に記載されているpH感受性でかつパルスに依存してコントラスト特性を変化する剤もある。一般的に、造影剤の滅菌水溶液は、体重kg当り0.01〜1.0mモルの範囲の用量で患者に静脈内投与される。
【0073】
MRIキレート化剤のとりわけ好ましい例には、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸(DOTA)及びその誘導体、とりわけホスファチジルエタノールアミンのアミノ基又はそのペプチド誘導構造に結合可能なイソチオシアネート官能基を含むメトキシベンジル誘導体(DOTA−NCS)が含まれる。このタイプの誘導体は、米国特許第5,573,752号に記載されている。これについては引用を以って本書に繰り込み、ここに記載されているものとする。他の好適なキレート化剤は、米国特許第6,056,939号に開示されており、これについても引用を以って本書に繰り込み、ここに記載されているものとする。
【0074】
DOTAイソシアネート誘導体は、脂質/界面活性剤に直接又はペプチドスペーサーを介して結合することも可能である。スペーサーとしてのgly−gly−glyの使用は、以下の反応スキームで説明する。直接的カップリングに対し、DOTA−NCSは、単にPEと反応し、結合産物が得られる。ペプチド、例えばトリグリシルリンクが使用される場合、ホスホエタノールアミン(PE)は、まず、t−boc保護トリグリシンと結合する。N−ヒドロキシサクシンイミド(NHS)又はヒドロキシベンゾトリアゾール(HBT)を有するジイソプロピルカルボジイミド(又はその等価物)を用いt−boc−トリグリシンの遊離酸の活性エステルの生成のような標準的なカップリング技術を使用し、そしてt−boc−トリグリシン−PEを精製する。
【0075】
トリフルオロ酢酸によりt−boc−トリグリシン−PEを処理することにより、トリグリシン−PEが生成し、次いで、これをDMF/CHCl中の過剰のDOTA−NCSと50℃で反応させる。溶媒を除去することにより、最終産物を分離し、次いで固形残滓を過剰の水でリンスし、過剰の溶媒と未反応又は加水分解されたDOTA−NCSを除去する。

【0076】
X線用造影剤として使用するために、本発明の組成物は、一般的に、1mM〜5M、好ましくは0.1M〜2Mの重元素濃度を有すべきであろう。用量は、静脈内注入によって投与されるのであるが、典型的には、0.5mモル/kg〜1.5mモル/kg、好ましくは0.8mモル/kg〜1.2mモル/kgの範囲である。イメージングは、既知の方法で実行されるが、X線コンピュータ断層撮影法が好ましい。
【0077】
本発明の超音波造影剤は、体重kg当りエコー発生ガス10〜30μLの量での静脈内注入によって、又は凡そ3μL/kg/分の速度での点滴(infusion)で投与される。イメージングは、超音波検査法の既知の技術によって実行される。
【0078】
本発明のナノパーティクルエマルジョンの使用方法は、当業者には十分に既知である。典型的には、映像化又は治療されるべき目的組織には、関節リウマチを含む種々の疾患を特徴付け得る炎症部位、再狭窄、腫瘍に至る血管形成によって影響を及ぼされるもののような過敏(irritation)部位、及びアテローム硬化症によって影響を受ける部位が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】αβ標的化及び非標的化ナノパーティクルの粒径分布。
【図2】移植Vx−2腫瘍のT−重み付け(加重:weighted)核磁気共鳴映像の拡大図。
【図3】H&E染色した(低倍率)及びαβ染色した(挿入図、高倍率)Vx−2腫瘍の組織片。
【図4】標的化及び非標的化ナノパーティクルが投与された被検体における腫瘍(上図)及び筋肉(下図)からのROIの増強を示すグラフ。
【図5】A〜Cは、腫瘍切片における炎症の種々の倍率の組織断片。
【図6】αβ標的化ナノパーティクルで標的された腫瘍のT−重み付け及びT−重み付けMRI。
【図7】Aは、αβ標識パーティクルの投与前後の大動脈切片のスピンエコー画像。Bは、コレステロールで処置した被検体、コレステロールで未処置の被検体、及びコレステロールで処置した被検体(エマルジョンは非標的化)の大動脈の画像の増強度。
【図8】A及びBは、それぞれ、大動脈及び筋肉における、標的化及び非標的化パーティクルを用いたMRIシグナルのパーセント増強度。
【図9】バルーン過伸展損傷パターンを示す、血管形成後の家畜ブタ(domestic pigs)の頚動脈の、αβ標的化常磁性ナノパーティクルによる3D血管造影図。
【0080】
以下の実施例は、発明の説明のためのものであって、本発明を限定すること意図したものではない。
[実施例]
【0081】
調製物A
パートA DSPE−PEG(2000)マレイミド−メルカプト酢酸付加体

【0082】
1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[マレイミド(ポリエチレングリコール)2000]をDMFに溶解し、窒素又はアルゴンでのスパージングによって脱気する。この無酸素溶液をDIEAを用いてpH7−8に調節し、メルカプト酢酸で処理する。開始材料が完全になくなったことが示されるまで外界温度で撹拌を続ける。この溶液は、以下の反応で直接利用する。
【0083】
パートB DSPE−PEG(2000)マレイミド−メルカプト酢酸付加体と2-[({4-[3-(N-{2-[(2R)-2-((2R)-2-アミノ-3-スルホプロピル)-3-スルホプロピル]エチル}カルバモイル)プロポキシ]-2,6-ジメチルフェニル}スルホニル)アミノ](2S)-3-({7-[(イミダゾール-2-イルアミノ)メチル]-1-メチル-4-オキソ(3-ヒドロキノリル)}カルボニルアミノ)プロパン酸との結合

【0084】
上記パートAの生成物溶液を、HBTUと十分なDIEAを加えることによりpH8−9に維持しつつプレ活性する。この溶液に、2-[({4-[3-(N-{2-[(2R)-2-((2R)-2-アミノ-3-スルホプロピル)-3-スルホプロピル]エチル}カルバモイル)プロポキシ]-2,6-ジメチルフェニル}スルホニル)アミノ](2S)-3-({7-[(イミダゾール-2-イルアミノ)メチル]-l-メチル-4-オキソ(3-ヒドロキノリル)}カルボニルアミノ)プロパン酸を加え、そして、その溶液を窒素の存在下室温で18時間撹拌する。DMFを減圧下で除去し、粗製生成物を調製用HPLCで精製し、パートBの表題の化合物を得る。
【実施例1】
【0085】
腫瘍イメージング
【0086】
A.腫瘍モデル及びナノパーティクルの調製:
【0087】
オスのニュージーランドホワイトラビット(〜2.0kg)をケタミン及びキシラジン(それぞれ、65及び13mg/kg)による筋肉内注射によって麻酔した。各個体の左後肢を剃毛し、膝窩上に小切開部を形成する前にマルカイン(Marcaine)TMで局所的に浸潤し滅菌処置した。2×2×2mmのVx−2癌腫瘍塊をドナー動物から新たに取得し、凡そ0.5cmの深さで移植した。切開面を再び接合し、単一の吸収性縫糸で縫合した。最後に、皮膚の切開部をデルマボンド・スキン・グルー(Dermabond skin glue)で接着した。腫瘍移植処置の後、キシラジンの効果をヨヒンビンで覆滅し、ウサギを回復した。
【0088】
Vx−2移植の12日後、ウサギを1%〜2%イソフルランTMで麻酔し、実験のため挿管し、人工呼吸し、MRI装置の空洞部に配置した。静脈及び動脈カテーテルは、個々のウサギの両耳に(それぞれ1つ)セットすることにより、ナノパーティクルの全身投与及び後述する動脈血のサンプリングのために使用した。ウサギは、ワシントン大学メディカルスクールの動物実験委員会で承認された方法・手順に従って、実験の間中生理学的にモニターした。
【0089】
移植後12日目に、ウサギのVx−2腫瘍体積は、αβ標的化ナノパーティクルが投与されたもの(130±39mm)と、非標的化ナノパーティクルが投与されたもの(148±36mm)では異なっていた(P>0.05)。
【0090】
上述のように、Vx−2腫瘍が移植された12匹のニュージーランドラビットは、無作為に3つの処置群に分け、それぞれ以下の剤を投与した:
1)αβ−インテグリン−標的化常磁性ナノパーティクル(αβ−標的化、n=4)、
2)非標的化常磁性ナノパーティクル(即ち対照群、n=4)、
3)αβ−インテグリン−標的化非常磁性ナノパーティクル、次いでαβ−インテグリン−標的化常磁性ナノパーティクル(即ち、競合群、n=4)。
【0091】
処置群1及び2では、ウサギは、基準MR画像を得た後、0.5ml/kgのαβ−インテグリン−標的化常磁性ナノパーティクル又は対照常磁性ナノパーティクルを投与した。処置群3では、すべてのウサギに対し、MRイメージングの2時間前に0.5ml/kgのαβ−インテグリン−標的化非常磁性ナノパーティクルを投与し、次いで0.5ml/kgのαβ−インテグリン−標的化常磁性ナノパーティクルを投与した。動的MR画像は、腫瘍及び筋肉領域におけるシグナル増強の初期変化をモニターするために、各ウサギに対し2時間に亘り30分毎に注射を行って得た。MR分子イメージングの結果を確認するための組織学的検査のために、腫瘍をすべて摘出し、凍結保存した。
【0092】
常磁性ナノパーティクルは、Flacke, S. , et al., Circulation (2001) 104: 1280-1285に記載されたようにして作成した。簡単にいえば、ナノパーティクルエマルジョンは、40%(v/v)ペルフルオロオクチルブロマイド(PFOB)、2%(w/v)界面活性剤共混合物、1.7%(w/v)グリセリン及び平衡を表す水から構成される。
【0093】
対照、即ち非標的化常磁性エマルジョンの界面活性剤は、60モル%レシチン(アヴァンティ・ポーラー・リピズ・インク社、アラバスター、アラバマ州)、8モル%コレステロール(シグマ・ケミカル・コー社、セントルイス、ミズーリ州)、2モル%ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)アヴァンティ・ポーラー・リピズ・インク社、アラバスター、アラバマ州)及び30モル%ガドリニウムジエチレントリアミンペンタ酢酸-ビソレアート(bisoleate)(Gd−DTPA−BOA、ゲートウェイ・ケミカル・テクノロジーズ社、セントルイス、ミズーリ州)を含んでいた。Gd−DTPA−BOAの調製は、Cacheris, W. P., et al.、米国特許第5,571,498号及び同第5,614,170号に記載されている。これらは引用を以って本書に繰り込み、ここに記載されているものとする。
【0094】
αβ−標的化常磁性ナノパーティクルは、60モル%レシチン、αβ-インテグリンペプチド様アンタゴニスト(ブリストル-マイヤーズ・スクイブ・メディカル・イメージング・インク社、ノースビルリカ、マサチューセッツ州)と共有結合した0.05モル%N-[{w-[4-(p-マレイミドフェニル)ブタノイル]アミノ}ポリ(エチレングリコール)2000]1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(MPB−PEG−DSPE)、8モル%コレステロール、30モル%Gd−DTPA−BOA及び1.95モル%DPPEを含む界面活性剤共混合物によって上述のように調製した。
【0095】
αβ−標的化非常磁性ナノパーティクルは、親油性Gd3+キレート(これは増量されたレシチン(70モル%)及びコレステロール(28モル%)を含む界面活性剤共混合物において置換される。)を加えたことを除いて、標的化形態のものと同じ方法で調製した。
【0096】
ナノパーティクル処方物の各々の成分は、M110Sマイクロフルイディクス乳化機(マイクロフルイディクス社、ニュートン、マサチューセッツ州)により20,000PSIで4分間乳化を行った。完成したエマルジョンは、クリンプシールされる小ビンにいれて窒素を封入した。
【0097】
粒径は、レーザ光散乱サブミクロン粒径分析機(モルヴァン・インスツルメンツ社、モルヴァン、ウスターシア州、英国)を用いて37℃で求め、ナノパーティクルの濃度は、名目粒径(即ち球体の粒子体積)から計算した。粒径分布を図1に示した。パーティクルの殆どは、400nm未満の直径を有する。
【0098】
ペルフルオロカーボン濃度は、水素炎イオン化検出器を使用するガスクロマトグラフィ(モデル6890、アジレント(Agilent)・テクノロジーズ・インク社、ウィルミントン、デラウェア州)で求めた。10%水酸化カリウム・エタノール溶液と混合したペルフルオロカーボンエマルジョン1mLと、内部標準(0.1%オクタン・フレオン(登録商標)溶液)2.0mLとを、ボルテックスで激しく撹拌し、次いで振盪機で30分間連続的に振盪した。下側の抽出層をシリカゲルカラムで濾過し、分析するまで4−6℃で保存した。初期カラム温度は30℃であり、10℃/分の速度で145℃まで一定の割合で上昇させた。
【0099】
エマルジョンのガドリニウム含量は、300kW核リアクターでの中性子放射化分析によって求めた(Landsberger, S., Chemical Analysis by Nuclear Methods, pp. 122-140, Z.B. Alfassi (ed.), New York: Wiley (1994))。ナノパーティクル当りのGd3+錯体数は、エマルジョン中のGd3+の濃度とナノパーティクルの推定(概算)数との比から計算で求めた。更に、常磁性ナノパーティクル処方物の各々の緩和度を、ミニスペック・アナライザー(ブルックナー・インク社、ミルトン、オンタリオ州、カナダ)を用いて0.47テスラ、40℃で測定した。
【0100】
パーティクルの特性を表1に示した。
【0101】
濃度は、リットルを単位とした全エマルジョン体積を基準とした。緩和度(Relaxivity)の値(r及びr)は、0.47テスラで求め、表示した通り[Gd3+]又は[ナノパーティクル]を基準として計算した。

表1
αβ標的化及び非標的化ナノパーティクルの物理及び化学特性

【0102】
B.核磁気共鳴映像法及び組織学的方法
【0103】
腫瘍移植後12日目に、ウサギに対し1.5テスラ・クリニカルスキャナー(NTインテラ・ウィズ・マスター・グラジエンツ、フィリップス・メディカル・システムズ社、ベスト、オランダ)でMRIスキャンを行った。ウサギは、それぞれ、腫瘍付近の後肢に対向してセットされる11cm径環状表面コイル(circular surface coil)を有するクアドラーチャ・ヘッド/ネック・バードケージ・コイル(quadrature head/neck birdcage coil)の内部に置いた。クアドラーチャー体コイルは、すべての高周波の放射のために使用した。バードケージコイルは、単純(scout)イメージング中の検出に使用した。表面コイルは、高分解能イメージング中の検出に使用した。ガドリニウムジエチレントリアミンペンタ酢酸(Gd−DTPA)ドープ水を充填した10mLシリンジは、高分解能視野(FOV)内にセットし、シグナル強度基準として使用した。
【0104】
腫瘍は、まず、T-重み付け(weighted)ターボスピン-エコースキャン(TR:2000ミリ秒、TE:100ミリ秒、FOV:150mm、断層(スライス)厚:3mm、マトリックス:128×256、シグナル平均:2、ターボファクター:3、スキャン時間:3分)によって移植部位でローカライズした。腫瘍の高分解能、T-重み付け、脂肪抑制(fat suppressed)、三次元、グラジエントエコースキャン(TR:40ミリ秒、TE:5.6ミリ秒、FOV:64mm、断層厚:0.5mm、連続断層:30、平面(in-plane)解像度:250マイクロメートル、シグナル平均:2、フリップ角度:65°、スキャン時間:15分)は、ベースラインで収集し、常磁性ナノパーティクルの注入直後、30分後、60分後、90分後、及び120分後に繰り返し行った。
【0105】
腫瘍体積は、オフラインイメージプロセッシングワークステーション(イージーヴィジョン v5.1、フィリップス・メディカル・システムズ社、ベスト、オランダ)で計算した。目的領域(ROI)は、T-重み付けベースラインスキャンの各断層において腫瘍の周りに手作業で設定し、三次元物体及び算出体積へ組み入れた。
【0106】
所要時間中の画像増強を定量するために、不偏(unbiased)画像分析を利用した。ナノパーティクルの静脈注入前、直後、及び30分後、60分後、90分後、120分後に収集したT-重み付け画像(各腫瘍の中心を通過する3つの連続断層)をMATLAB(ザ・マスワークス・インク社、ネーティック、マサチューセッツ州)で分析した。各時点における画像強度は、参照ガドリニウム基準によってベースライン画像に対して正規化した。連続画像は空間的に同時記録し(co-registered)、コントラスト増強は、注入後の各時点においてピクセル毎に求めた。ベースライン画像内の後肢筋肉の一部の周りにROIを手作業で描写し、ROIの内部にあるピクセル毎の平均シグナル増強を各時点において計算した。腫瘍の周りに第2のROIを手作業で描写し、各個体に対するベースライン画像において腫瘍シグナルの標準偏差を計算した。シグナル強度がベースラインにおける腫瘍シグナルの標準偏差の3倍以上に増加されたとき(即ちベースラインに99%以上のバリエーションの増強が見られたとき)、ピクセルは増強されたとみなした。孤立(Solitary)増強ピクセル、即ち平面内のその周囲のピクセルがすべて増強していないピクセルは、ノイズとして計算に入れなかった。残りの増強ピクセルクラスターをマッピングして、直後、30分後、60分後、及び90分後画像を生成し、各時間間隔毎に、平均シグナル増加を求めた。統計的な比較は、ANOVA(SAS、SAS研究所、ケアリー、ノースカロライナ州)を利用して、各時点毎に腫瘍及び筋肉に対して行った。処置手段(Treatment means)は、LSD法(p<0.05)を用いて分離した。
【0107】
イメージング後、腫瘍病理検証し、関連する血管分布(vascularity)及び血管形成を評価するための組織学的及び免疫組織化学的検査のために、腫瘍を摘出した。腫瘍は、最初の解剖学的体位及びMRI画像面に対する既知の配向でOCT培地中で凍結(−78℃)した。アセトン中で−20℃、15分間固定し、終夜空気乾燥した(4℃)4ミクロン凍結薄片(ライカ・ミクロシステムズ・インク社、バノックバーン、イリノイ州)を、ヘマトキシリン−エオシン、マウス抗ヒト/ウサギ内皮抗体(QBEND/40、1:10希釈、リサーチ・ダイアグノスティクス・インク社、フランダース、ニュージャージー州)、又はマウス抗ヒトαβ−インテグリン(LM−609、1:200希釈、ケミコン・インターナショナル社、テメクラ(Temecula)、カリフォルニア州)で染色した。免疫組織化学検査は、ベクタステイン(Vectastain)(登録商標)エリートABCキット(ベクター・ラボラトリーズ社、バーリンゲーム、カリフォルニア94010)を使用し、ベクター(登録商標)VIPキットで顕色(developed)し、ベクター(登録商標)メチルグリーン核後染色剤(nuclear counterstain)で後染色(counterstained)することによって行った。スライドは、ニコン製デジタルカメラ(モデルDXM1200)を備えニコンACT−1ソフトウェアでキャプチャーするニコン・エクリプス・E800検査顕微鏡(ニコンUSA社、メルヴィル、ニューヨーク州)観察した。
【0108】
C.イメージング及び組織学的検査の結果
【0109】
αβ−標的化常磁性ナノパーティクルが投与されたVx−2腫瘍ウサギのT−重み付けMR画像から、主として、尤もこれに限定されるわけではないが、腫瘍周辺部に沿って非対称的な位置において、MRにコントラストの著しい増加が起こることが明らかとなった。αβ−インテグリン増強は、典型的には、血管付近及び組織筋膜界面にそってまだら模様状の分布をなしていることが観察された(図2)。Vx−2腫瘍の組織学的及び免疫組織化学的評価により、血管形成は、腫瘍周辺部に沿った幾つかの別個の領域内に最も強く分布し、腫瘍細胞小葉間に散在する腫瘍内結合組織系(tracts)内では程度はより小さいことが分かった(図3)。
【0110】
時間的には、αβ−標的化常磁性ナノパーティクルによって引き起こされるMRIコントラスト増強は、注入直後に、比較的低いレベルで血管形成の領域において検出されたが、これは恐らく30分での有窓新生血管(fenestrated neovasculature)を介したナノパーティクルの局所的血管外遊走のためであろう(図4)。血管内血液プールコントラスト効果は、30分後では検出できなかった。2時間後には、αβ−標的化ナノパーティクルで処置されたウサギのシグナル増強の大きさは、αβ−非標的化ナノパーティクルの効果(p<0.05)と比べると(56%の)増加が見られた。αβ−標的化常磁性ナノパーティクルの注入2時間前に、予標的化非常磁性αβ−ナノパーティクルによってαβ−インテグリン部位を遮断することにより、標的化コントラストシグナル増強は、局所的新生血管漏出に起因するものより僅かに小さいシグナル効果と比べて、半分に(p<0.05)減じたが、これは標的化ナノパーティクルの特異性を裏付けた。
【0111】
腫瘍包膜(capsule)の他にも、コントラスト増強は、膝窩内の多数の血管間及びとりわけ、新生血管の包膜領域から数ミリメートルしか離れていない位置の比較的大きい静脈壁内においてまだら模様状に分布していることが分かった。1つの例では、腫瘍包膜シグナルに極めて近接する静脈血管新生シグナルに対して求められたコントラストシグナル増強の大きさは時間と共に増加したが、これはソース(source)及び標的(target)の存在を示唆している(データ不載)。多くの例では、腫瘍によって産生される因子によって近傍の血管構造において刺激される血管新生は、移植後12日目まででは、明らかに腫瘍へ架橋しなかった。対側の膝窩内の血管構造を検査した結果、αβ−標的化又は非標的化常磁性ナノパーティクルの注入後にMRシグナルの変化はないことが分かった。
【0112】
Vx−2ウサギすべてに対し、通常の如く、移植後12日目の腫瘍をローカライズするために、既知の手術部位においてベースラインT−重み付けMRIイメージングを行った。ウサギのなかには、腫瘍が検出されなかったものもいた。そのためそのようなウサギは実験から排除した。また、他のウサギのなかには、大きさ及びT−画像特性に関し適切であるように生じた塊が観察されたものの、後に組織学的検査により炎症細胞の重篤な浸潤による腫瘍残遺物であることが分かったものもいた(図5)。このようなウサギも同様に実験から排除した。T−重み付けMRIの過度に強い外観は、浮腫に起因する。
【0113】
ウサギの後者の部分集団の中には、無作為にαβ−標的化常磁性ナノパーティクルの投与を受けたものもあったが、MRコントラスト増強は、上記の塊の周辺部でも、その近傍の血管でも生じなかった(図6)。膝窩塊又は隣接血管と関連するシグナル増強のこのような欠如は、組織学的に確認された腫瘍を有するウサギにおいて通常得られる分子イメージング特性とは異なっていた。残遺組織の組織学的及び免疫組織化学的分析により、αβ−インテグリンのための染色が無視しうる程に腫瘍周辺部及びその隣接組織において血管分布が不足していることが確認された。これらの研究結果は、生存能力を有するVx−2塊と腫瘍残遺物とを区別するのに役立つ分子イメージングの特異性を示している。
【実施例2】
【0114】
アテローム硬化症のイメージング
【0115】
A.モデルシステム及びナノパーティクル
【0116】
標的化及び非標的化ナノパーティクルは、何れも、実施例1のパラグラフAに記載したのと同様に調製した。得られた特性は、同様であった。パーティクルは、6.17mMGd、又は凡そ94,200Gd原子/パーティクルを含有していた。弾性光散乱(elastic light scattering)(モルヴァン・インスツルメンツ社、ウスターシア州、英国)で測定した名目粒径は、273nmで、「多分散指標(polydispersity index)」(ないし分布帯域幅(distribution bandwidth))は0.15であった。
【0117】
パーティクル処方物の実際のT1及びT2緩和度(それぞれr1及びr2という。)は、クアドラーチャ・バードケージ・コイルにセットしクリニカル1.5Tシステム(フィリップスNTインテラCV、フィリップス・メディカル・システムズ社、ベスト、オランダ)でイメージングした純サンプル(ナノパーティクル59nM含有)に適用した標準的なインヴァージョン・リカバリー・パルス・シークエンス及びマルチエコー・シークエンスを使用して求めた。常磁性ナノパーティクルのmMGd3+当りで表した「イオンを基準とした(ionic-based)」r1及びr2の値は、それぞれ、17.7±0.2及び25.3±0.6(秒・mM)−1である。「パーティクルを基準とした(Particle-based)」緩和度は、r1及びR2に対し、それぞれ、1,670,000±100,000及び2,380,000±120,000(秒・mMパーティクル)−1である。これらの緩和度は、市販の常磁性造影剤の値よりも5桁以上大きい。
【0118】
結合(coupled)リン脂質を介してパーティクル脂質膜と結合する凡そ200〜300コピーのペプチド模倣体をそれぞれ含有する標的化ナノパーティクルは、調製物A、パートAに記載している。ナノパーティクルの物理的特性は、ターゲティングリガンドの含有によっては、薬物動態学的特性も含めて、影響を受けず、標的化パーティクルも対照パーティクルも、その常磁性的特性は殆ど区別はできなかった。
【0119】
アテローム硬化症を発症させるために、13匹のオスのニュージーランドホワイトラビットに対し、〜80日間に亘って、1%コレステロール(n=9)又は標準的なウサギ用固形飼料を与えた。造影剤は、0.5mL/kg体重の用量、即ち用量当り凡そ1014ナノパーティクルで耳の静脈を介して静脈注射した。以下の3つの群に対して実験を行った:
1)αβ−標的化常磁性ナノパーティクルを投与した対照食餌動物(n=4)
2)αβ−標的化ナノパーティクルを投与した高コレステロールウサギ(n=5)
3)非標的化対照ナノパーティクルを投与した高コレステロールウサギ(n=4)
【0120】
MRIを行った後、組織学的評価のために、すべての大動脈を摘出した。大動脈のホルマリン固定パラフィン包埋切片(4?m)に対し通常のヘマトキシリン/エオシン染色を行った。大動脈壁におけるαβインテグリンの発現は、特異的一次抗体(LM609:ケミコン・インターナショナル・インク社、テメクラ、カリフォルニア州)とVIP基質(substrate)キットで作成した二次抗体とを用いたホルマリン固定切片の免疫組織化学的検査によって検出した。PECAMも同様にCD31一次抗体(ケミコン・インターナショナル・インク社、テメクラ、カリフォルニア州)で染色した。新生血管の画像は、ニコンの顕微鏡とニコンのカメラDXM1200によって高倍率(600×)でデジタル化した。
【0121】
実験手順は、ワシントン大学メディカルスクールの動物実験委員会で承認されたものである。
【0122】
B.イメージング及び組織学的検査
【0123】
MR画像は、実施例1のパラグラフBに記載したものと同様にして得た。常磁性ナノパーティクルによる処置の前後におけるin vivoで大動脈をイメージングするために、1.5Tマグネット(NTインテラCV、フィリップス・メディカル・システムズ社、ベスト、オランダ)と、クアドラーチャ・バードケージ・RF・レシーブ・コイルを用いた。大動脈の多断層T1−重み付けスピンエコー、脂肪飽和、黒色血(black-blood)イメージングを腎動脈から横隔膜に至るまで行った(TR 380m秒、TE 11m秒、250×250μm平面(in-plane)解像度、5mm断層厚、NSA=8)。in vivoのイメージングに使用した実際のTRは最適なものではなかったが、我々のシグナルシミュレーションによれば、短時間でデータを得るための実用的な手段を提供した。シグナル強度に対する効果は、1.5TでCNR=5を達成するために、ナノパーティクル濃度を凡そ2倍に(凡そ100pMに)しなければならないものとして最もよく説明されている。血液シグナル(blood signal)をゼロにするために、「スライディング(sliding)rf」飽和バンドは、画像取得領域の近位及び遠位にセットし、選択したイメージング面と共に移動させた。
【0124】
C.イメージング及び組織化学的検査の結果
【0125】
ナノパーティクルの使用は、アテローム硬化症と関連するものと確認された部位においてコントラスト画像の増強を示した。
【0126】
図7Aは、選択したウサギに対する大動脈の長手方向断面における画像化位置(上図)及び標的化ナノパーティクルによる処置前及び処置後120分における横手方向断層(下図)、更に個々の大動脈断層のシグナル定量分析のための特別設計された画像セグメンテーションアルゴリズムからの出力の一例を示している。大動脈壁におけるシグナルは、造影剤注入後増加している(下図の中央のパネル)が、これは、αβインテグリンエピトープに結合した標的化ナノパーティクルの存在を示している。更に、大動脈血プールのバックグラウンドは、低用量の使用ナノパーティクルと「黒色血」シグナルゼロ化処置のため、混乱(ノイズ)を引き起こさない(注:管腔内では血液シグナルは低い)ので、血液プールからの造影剤のクリアランスのための待ち時間を必要とすることなく、大動脈壁におけるコントラスト増強の即時的検出が可能となる。
【0127】
図7Bは、選択した3匹のウサギについての大動脈に沿った長手方向のコントラスト増強の変化を示している。全体的にみれば、高コレステロール標的化ウサギの事実上すべての大動脈セグメントにおいて、より大きなシグナル増強が観察された。図示のように、高コレステロール食を与えられたウサギにおける標的化パーティクルによるパーセント増強は、高コレステロール食が与えられたウサギにおける非標的化ナノパーティクルを用いた画像の増強(白抜きの四角印)よりも著しく大きく、正常食を与えられたウサギにおける標的化パーティクルを用いた増強(黒塗りの三角印)よりも大きかった。
【0128】
大動脈壁内におけるコントラスト増強の変動性は、処置後120分後の3匹のウサギに対して求めたが、個々の大動脈レベルにおいてシグナルの著しい不均一性(heterogeneity)を示した。標的化ナノパーティクルが投与された高コレステロールウサギは、とりわけ、全体としてより大きい増強を示すが、「ホットスポット(ピーク部位)」は、これら3匹のウサギの何れにも存在する。
【0129】
組織学的検査により、αβインテグリンエピトープと血管内皮細胞との共存が確認された。H&E染色により、コレステロール給餌ウサギのみに、80日後のマイルドな内膜肥厚が生じたことが示された。免疫細胞化学分析により、コレステロール給餌ウサギにおける外膜−媒体(膜)界面(media interface)でのαβのための顕著な(prominent)染色、及び外膜−媒体(膜)界面におけるαβインテグリンエピトープと共存する血管内皮細胞を示すPECAM染色が明らかとなった。これは、コレステロール給餌ウサギにおいて一層顕著に観察され、炎症マーカーと関係する拡張した脈管の脈管の存在を裏付けた。
【0130】
画像化された個々の大動脈に対する大動脈壁画像(複数)内のシグナル強度の半自動分析のための「領域成長(region-growing)」セグメンテーションアルゴリズムを開発した。大動脈の管腔は、周囲のピクセルを予めセグメント化されたピクセルとの類似性に対して評価することによりセグメント化された領域を繰り返し増加する播種された(seeded)「領域成長」アルゴリズムを使用することにより個々の2次元画像において分離された。類似性のために予設定された閾値に到達すると、成長は停止する。大動脈壁を含むようこのセグメンテーションの幅を増加し、予めセグメント化された管腔を減ずることにより、大動脈壁のバイナリーマスク(binary mask)と幾つかの付加的バックグラウンドピクセルのみが残った。更なる閾値処理を行うことにより、バックグラウンドピクセルを除去し、大動脈壁のみをセグメント化した。セグメンテーション後、各断層及び各時点における大動脈壁の平均強度を、ベースラインにおける同じ断層の平均強度から減じた。アルゴリズム・カーネルは、香港科学技術大学(Hong Kong University of Science and Technology)のマイケル・ブラウン博士によって開発されたプロシージャから採用した。これはアドレスcs.ust.hk/-brown/.のウェブサイトから入手することができる。
【0131】
上記のプロシージャは、大動脈のすべてのデータセットに一律に適用したが、これは図7Aに示したような大動脈壁全体のための目的の周囲領域を生成する。ナノパーティクル注入前後のMRIシグナル強度は、各レベルにおけるセグメント化された大動脈領域全体内において、及び無作為に選択した目的の隣接骨格筋領域において定量した。シグナル強度は、視野内におかれた基準マーカー(試験管模型内のGd3+−DTPA/生理食塩水:Gd3+-DTPA/saline solution in a test tube phantom)からの信号に対し正規化した。ナノパーティクル注入後のシグナル強度のパーセント変化は、注入後15分、60分及び120分の画像に対して計算した。
群差のダンカン・マルチプルレンジ試験による汎用線形モデリング(SASインク社、ケアリー、ノースカロライナ州)を利用して、MRIシグナルにおける差異の有意性(significance)を求めた(p<0.05)。
【0132】
大動脈シグナル増強の定量は、単一のウサギに対しイメージングされたすべての大動脈レベルに亘る平均大動脈増強を計算し、次いで1つの実験群全体に対し単一ウサギの当該値を平均することにより保存的に(conservatively)行った。図8Aは、標的化ナノパーティクルの注入直後(凡そ15分以内)に、全大動脈壁におけるシグナルが、すべてのウサギについて26±3.8%増強されたことを示している。(注入後)120分までに、全大動脈壁からのシグナルは、ベースラインに対し、更に47±5.4%増加された。非標的化ナノパーティクルを投与されたコレステロール給餌ウサギすべての全大動脈壁も、15分以内に19±0.8%増強されたが、60〜120分においては一定に維持された(26±1%)。これは、特異的に標的化されたものの増強に対し凡そ半分のシグナル増強にしか相当しないことを示している。
【0133】
対照食(給餌)ウサギでは、標的化ナノパーティクルの注入直後には、同時点におけるコレステロール給餌ウサギのものと同等のレベルで有意な大動脈壁増強が観察された(14.5±2.2%)。しかしながら、2時間後では、シグナルは殆ど増加されなかった(23.7±3.7%)。従って、コレステロール給餌ウサギの全大動脈壁におけるシグナル増強は、(注入後)120分には、対照食(給餌)ウサギのシグナル増強の凡そ2倍であった。
【0134】
任意の時点における任意の群の隣接骨格筋で観察されたシグナル増強(図8B)は、何れも大動脈壁に関するシグナル増強よりも遥かに小さく、統計上の有意性の限界に近かった(p<0.051)。この傾向は、ナノパーティクルの種類又はANOVAによる給餌態様には統計的には関係はなかった。
【0135】
これらのデータは、血管性炎症におけるαβエピトープの特異的同定はin vivoでの高解像度MRIによって可能であることを示している。
【0136】
上述の薬物動態学的分析は、パーティクルのクリアランスは、1−1.5時間のβ−排出速度のビエキスポーネンシャル(biexponential:expの項を2つ含むこと)であることを示している。この性質は、リガンド又はガドリニウムキレートの添加によっては影響を受けない。従って、大動脈又は筋肉における分子標的化ナノパーティクルの濃度駆動型非特異的蓄積は、(注入後)120分までには減少しているはずである(これは、大動脈における非特異的シグナル増強のプラトー(一定状態)を示す本発明のデータと一致している:図8参照)。これに対し、αβエピトープへの特異的結合のプロセスは、多くの半減期に関して増加するはずであるが、その理由は、凡そ100兆のナノパーティクルが平均的な静注用量(average i. v. dose)で注入されたとした場合、新生血管の分子エピトープの発現数・範囲(prevalence)が小さいのに比べて、循環(系)中に大過剰のリガンドの形態で存在することが予期されるからである。筋肉における増強に対する大動脈壁におけるより大きい非特異的増強は、より大きい分布容積(distribution volume)と、同時に我々の特殊な「黒色血(black blood)」イメージング法によりシグナルゼロ化を殆ど受けない常磁性ナノパーティクルのより大きな局所的濃度を提供するシヌソイド状の脈管の脈管の膨張に恐らく関係するであろう。脈管の脈管における流入/流出は大動脈管腔における流入/流出よりも遥かに遅い可能性があるので、大動脈管腔血液プールについてのシグナルゼロ化(signal nulling)は、脈管の脈管ついてのシグナルゼロ化に対してより有効である(効果が大きい)はずである。
【0137】
従って、標的化常磁性ナノパーティクルは、MRIに使用する静注用量が少なくても、臨床上の通常のイメージング方法により、初期段階のアテローム硬化症における血管炎症及び/又は血管新生の画像を生成することができる。
【実施例3】
【0138】
再狭窄モデル
【0139】
家畜ないし国産(domestic)ブタで、健康なもの、糖尿病に罹患しているもの、高脂血症のものに、鎮静剤と共にテラゾール(telazol)カクテル(1mL/23kgIM)を飲ませ、次いで挿管し、酸素中1−2%イソフルラン麻酔をする。ECG、血中ガス及び動脈血圧をモニターする。血管痙攣を処置するために、リドカイン、ジルチアゼム、及び/又はニトログリセリンを使用する。
【0140】
末梢(周辺)動脈へのアクセス(peripheral arterial access)及び鞘の設置(sheath placement)の後、適切な大きさの血管形成バルーン、例えば8mm×2cmバルーンカテーテル(プロフレックス、モーリンクロット(Mallinckrodt)・インク社、セントルイス)を頚椎レベル(C−3〜C−5)に設置し、それぞれ30秒間6気圧の圧力で数回(通常3回)膨張させる。各膨張処置間のインターバルは60秒である。凡そ1.5のバルーン対動脈比が通常採用される。この方法により、内部弾性層(internal elastic lamina)が一様に破壊され、媒体(膜)に損傷が生じる。
【0141】
上記頚動脈過剰膨張バルーン傷害の後、実施例1に記載したようなナノパーティクルを含むエマルジョンを局所的送達カテーテルシステムによって投与する。送達システムは、対式(paired)バルーンカテーテル又は機械式灌流送達/減圧抽出システム(mechanical perfusion delivery/vacuum extraction system)である。標的化又は対照ナノパーティクル、又は生理食塩水のみを局所的に送達し、1〜15分間インキュベートさせる。頚動脈血管壁イメージング試験を行う前に、MR血管造影図を行う。
【0142】
MRIスキャンは、1.5テスラ・クリニカルスキャナー(NTインテラCV、フィリップス・メディカル・システムズ社、ベスト、オランダ)又は1.0T〜7.0Tの類似のシステムで行う。適切なコイルには、クアドラーチャ・ヘッド/ネック・バードケージ・コイル、環状表面コイル(circular surface coils)、フェーズドアレイ(シナジー社)コイルが含まれる。試験分析のために、ガドリニウムジエチレントリアミンペンタ酢酸(Gd−DTPA)ドープ水基準(standards)を高解像度視野(FOV)内に置いて、画像シグナル強度基準として使用する。これは、臨床上(治療上)の適用には不要である。MR画像分析は、イージーヴィジョンv5.1ワークステーション(フィリップス・メディカル・システムズ社、ベスト、オランダ)又は類似の画像処理システムにおいてオフラインで行う。
【0143】
図9は、αβ−標的化常磁性ナノパーティクルを用いたコントラスト増強バルーン損傷パターンの三次元再構築画像である。これは、中膜内に引き起こされる微小フラクチャーの空間分布を示している。これらのデータは、通常のX線血管造影法で検出するのは不可能であるが、後の血管再生合併症(再狭窄等)に対する予後の重要性を有する壁損傷の定量的評価を提供することができる。
【0144】
αβターゲティング成分を含有すること以外にも、ナノパーティクルは、放射性核種、パクリタキセル又はラパマイシンのような抗増殖剤を含むこともできる。
【0145】
最後に、本発明の好ましい実施の態様を示す:
(態様1) ナノパーティクルの液体ペルフルオロカーボンのコアを被覆するための脂質/界面活性剤コーティングの成分に
以下の式


からなるαβ特異的リガンドがスペーサーを介して共有結合してなる複合体。
(態様2)上記態様1の複合体において、前記成分は、リン脂質であることが好ましい。
(態様3)上記態様1又は2の複合体において、前記スペーサーは、ポリアルキレングリコール及び/又はペプチドを含むことが好ましい。
(態様4)上記態様1〜3の何れかの複合体において、前記リガンドは、以下の式


からなることが好ましい。
(態様5) 上記態様1〜4の何れかの複合体を含む脂質/界面活性剤コーティング、及び
該コーティングに被覆された、液体ペルフルオロカーボンからなるコア
から構成されるナノパーティクル。
(態様6) 上記態様5のナノパーティクルにおいて、少なくとも1つの生理活性剤及び/又は少なくとも1つのイメージング剤を含むことが好ましい。
(態様7) 上記態様6のナノパーティクルにおいて、前記生理活性剤は、ホルモン又は医薬であることが好ましい。
(態様8) 上記態様7のナノパーティクルにおいて、前記医薬は、抗腫瘍薬、ホルモン、鎮痛薬、麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌剤、駆虫薬、抗ウイルス薬、インターフェロン、抗糖尿病薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、抗凝血薬又は抗増殖薬であることが好ましい。
(態様9) 上記態様7のナノパーティクルにおいて、前記医薬は、抗増殖薬であることが好ましい。
(態様10) 上記態様7のナノパーティクルにおいて、前記医薬は、パクリタキセル又はラパマイシンであることが好ましい。
(態様11) 上記態様6のナノパーティクルにおいて、前記イメージング剤は、少なくとも1つの核磁気共鳴造影法(MRI)用造影剤であることが好ましい。
(態様12) 上記態様11のナノパーティクルにおいて、前記MRI用造影剤は、キレート化された常磁性イオンであることが好ましい。
(態様13) 上記態様12のナノパーティクルにおいて、前記常磁性イオンは、ガドリニウムイオンであることが好ましい。
(態様14) 上記態様5〜13の何れかのナノパーティクルのエマルジョンを含む組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノパーティクルの液体ペルフルオロカーボンのコアを被覆するための脂質/界面活性剤コーティングの成分に
以下の式


からなるαβ特異的リガンドがスペーサーを介して共有結合してなる複合体。
【請求項2】
前記成分は、リン脂質であること
を特徴とする請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記スペーサーは、ポリアルキレングリコール及び/又はペプチドを含むこと
を特徴とする請求項1又は2に記載の複合体。
【請求項4】
前記リガンドは、以下の式


からなること
を特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の複合体。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の複合体を含む脂質/界面活性剤コーティング、及び
該コーティングに被覆された、液体ペルフルオロカーボンからなるコア
から構成されるナノパーティクル。
【請求項6】
少なくとも1つの生理活性剤及び/又は少なくとも1つのイメージング剤を含むこと
を特徴とする請求項5に記載のナノパーティクル。
【請求項7】
前記生理活性剤は、ホルモン又は医薬であること
を特徴とする請求項6に記載のナノパーティクル。
【請求項8】
前記医薬は、抗腫瘍薬、ホルモン、鎮痛薬、麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌剤、駆虫薬、抗ウイルス薬、インターフェロン、抗糖尿病薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、抗凝血薬又は抗増殖薬であること
を特徴とする請求項7に記載のナノパーティクル。
【請求項9】
前記医薬は、抗増殖薬であること
を特徴とする請求項7に記載のナノパーティクル。
【請求項10】
前記医薬は、パクリタキセル又はラパマイシンであること
を特徴とする請求項7に記載のナノパーティクル。
【請求項11】
前記イメージング剤は、少なくとも1つの核磁気共鳴造影法(MRI)用造影剤であること
を特徴とする請求項6に記載のナノパーティクル。
【請求項12】
前記MRI用造影剤は、キレート化された常磁性イオンであること
を特徴とする請求項11に記載のナノパーティクル。
【請求項13】
前記常磁性イオンは、ガドリニウムイオンであること
を特徴とする請求項12に記載のナノパーティクル。
【請求項14】
請求項5〜13の何れか1項に記載のナノパーティクルのエマルジョンを含む組成物。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−248248(P2010−248248A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171706(P2010−171706)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【分割の表示】特願2003−562080(P2003−562080)の分割
【原出願日】平成15年1月24日(2003.1.24)
【出願人】(503271970)バーンズ−ジューイッシュ ホスピタル (4)
【出願人】(504284467)ブリストル−マイヤーズ スクイブ メディカル イメージング、インク. (1)
【Fターム(参考)】