説明

イントラ予測装置、符号化装置、及びプログラム

【課題】イントラ予測をする際に予測モードの予測値の確度を向上させ、予測モード情報の伝送量を低減させる。
【解決手段】イントラ予測装置1は、1以上の参照ブロックの画像を参照し、予め定められた複数の予測モードから予測対象ブロックの予測モードを決定するイントラ予測部10と、イントラ予測部10により決定済みの1以上の参照ブロックの予測モードを取得し、各参照ブロックと予測対象ブロックの位置関係から、各参照ブロックの予測モードの確度を判定し、確度が高いと判定した参照ブロックの予測モードを予測対象ブロックの予測モードの予測値とする予測値生成部12と、予測値生成部12により決定された予測値と前記予測対象ブロックの予測モードとが一致するか否かを判定し、両者が一致する場合には予測モード情報を出力せず、両者が一致しない場合又は予測値が決定されない場合にのみ、予測モード情報を出力するMPM判定部13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック単位でイントラ予測(画面内予測)を行い、予測対象ブロックについて予測方向を示す予測モードを決定するとともに、該予測対象ブロックの予測モードの予測値を決定するイントラ予測装置、符号化装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
MPEG−4 AVC/H.264方式(ISO/IEC 14496−10/ITU−T Rec.H.264)においては、予測対象ブロック(符号化対象ブロック)をイントラ予測により符号化する場合は、復号済みの周囲のブロックを用いてイントラ予測を行って予測画像を生成し、原画像と予測画像との差分を符号化することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。イントラ予測にあたっては、予め設定された予測方向のうち、最適なものを選択して予測を行うとともに、選択された予測方向を示す情報(予測モード情報)を符号化して伝送する。
【0003】
MPEG−4 AVC/H.264方式におけるイントラ予測は、4×4画素単位、8×8画素単位、又は16×16画素単位で行われ、予め設定された複数種類の予測モードの中から最適な予測モードを選択する。図5は、MPEG−4 AVC/H.264方式において、4×4画素単位で予測する場合の予測モードを示す図である。図中の斜線付きの丸は復号済みの画素を示し、白丸は予測対象の画素を示し、矢印は予測方向を示している。図5(a)の予測モード0では垂直方向予測、図5(b)の予測モード1では水平方向予測、図5(c)の予測モード2ではDC予測、図5(d)の予測モード3では対角左下方向予測、図5(e)の予測モード4では対角右下方向予測、図5(f)の予測モード5では垂直右方向予測、図5(g)の予測モード6では水平下方向予測、図5(h)の予測モード7では垂直左方向予測、図5(i)の予測モード8では水平上方向予測を行う。このように、予測モードは予測方向を示すものであり、各予測モードは各予測方向に対応付けられている。なお、予測モード0から8には、それぞれ予測モード番号0から8が割り当てられており、用いられる頻度が高い予測モードほど予測モード番号が小さくなっている。
【0004】
また、次世代の圧縮符号化方式として規格化が進められているHEVC(High-Efficiency Video Coding)方式でもイントラ予測を行うことが知られている(例えば、非特許文献2参照)。図6は、非特許文献2に開示されている、HEVC方式における予測モードを示す図である。図6に示すように、予測モードはMPEG−4 AVC/H.264方式に比べて34種類に増加している。予測モードの選択肢を増やすことで、予測画像の誤差が低減し、画質の向上が期待できる。しかし、予測モードの増加に伴い、予測モード情報が増加することとなる。なお、図面の便宜上、図5の矢印は予測方向を示しているが、図6の矢印は参照方向(予測方向と逆方向)を示している。
【0005】
MPEG−4 AVC/H.264方式では、予測モード情報の符号長を短くするために、予測対象ブロックに隣接するブロックにおいて用いられた予測モードを参照して予測対象ブロックの予測モードの符号化を行っている。図7は、MPEG−4 AVC/H.264方式の予測モードの予測について説明する図である。MPEG−4 AVC/H.264方式では、図7に示すように、予測対象ブロックXの左隣のブロックA、及び予測対象ブロックXの上隣のブロックBで用いられた予測モードのうち、予測モード番号の小さいほうの予測モードをMPM(Most Probable Mode)として設定する。MPMは、予測対象ブロックの予測モードの予測値である。隣接するブロック間では最適な予測モードも類似することが推定されるため、MPMを参照して予測対象ブロックの予測モードを符号化する。すなわち、予測対象ブロックXの予測モードがMPMと同一である場合は、予測モード情報を伝送せずに、MPMと同一であることを示すフラグのみを伝送し、予測対象ブロックXの予測モードがMPMと同一でない場合は、MPMと同一でないことを示すフラグ及び予測モード情報を伝送する。
【0006】
また、MPMを拡張し、ブロックA及びブロックBの2つの予測モードをMPMに設定し、予測対象ブロックXの予測モードがMPMと同一である場合は、MPMと同一であることを示すフラグ、並びにMPMがブロックA及びブロックBのいずれの予測モードであるかを示す情報を伝送し、予測対象ブロックXの予測モードがMPMと同一でない場合は、MPMと同一でないことを示すフラグ及び予測モード情報を伝送する方式が知られている(例えば、非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】大久保 榮、他3名、「改訂三版 H.264/AVC教科書」、インプレスR&D、2008年12月26日
【非特許文献2】T.Wiegand, W-J Han, B Bross, J-R.Ohm, G.J.Sullivan, “WD3:Working Draft 3 of High-Efficiency Video Coding”, JCTVC-E603
【非特許文献3】M.Guo, X.GUo, and S.Lei, “Improved Intra Mode Coding”, JCTVC-D166, 4th Meeting: Daegu, Korea, 19-25 January, 2011.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、MPMを参照して符号化することにより、予測モード情報の伝送量を低減させることが可能である。しかし、従来の技法では、予測対象ブロックの隣接ブロックにおいてどのような方向の予測が用いられたかを考慮することなく、ブロックA及びブロックBの予測モードの予測モード番号が小さいほう、又は両方をMPMに設定している。
【0009】
ある方向に隣接点を0次ホールドして予測する予測方式においては、エッジや傾斜に平行な方向を予測方向とすると予測効率がよい。例えば、図8(a)に示すようにブロックAに水平方向に走るエッジが存在する場合、ブロックAでは水平方向の予測が用いられる可能性が高い。また、このようなエッジはブロックAでとどまることなく、予測対象ブロックXまで連続する可能性が高い。この場合には、予測対象ブロックXもブロックAと同様に水平方向の予測が適切と考えられるため、ブロックAの予測モードをMPMに設定するのが妥当である。
【0010】
一方、図8(b)に示すように、ブロックAに垂直方向に走るエッジが存在する場合、ブロックAでは垂直方向の予測が用いられる可能性が高い。しかし、予測対象ブロックXの予測方向とエッジの方向とは直接の関連性はない。よって、この場合には、ブロックAの予測モードをMPMに設定するのは妥当ではない。MPMの予測確度が高いほど、予測モード情報の伝送量を低減させることが可能であるが、従来のイントラ予測方法では、予測対象ブロックに隣接するブロックの予測方向を考慮せずにMPMを設定していたため、MPMの設定が妥当ではないことがあった。
【0011】
本発明の目的は、上記問題を解決するため、予測対象ブロックに隣接するブロックの予測方向を考慮してMPMを設定することにより、MPMの予測確度を向上させ、予測モード情報の伝送量を低減させることが可能なイントラ予測装置、符号化装置、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係るイントラ予測装置は、予測対象ブロックに隣接するブロックの予測モードをMPMとして扱うことが妥当か否かを判定し、妥当と判定された予測モードをMPMとして設定する。
【0013】
すなわち、本発明に係るイントラ予測装置は、ブロック単位でイントラ予測を行い、予測対象ブロックについて予測方向を示す予測モードを決定するとともに、該予測対象ブロックの予測モードの予測値(MPM)を決定するイントラ予測装置であって、予測対象ブロックの周囲のブロックであって予測モードを決定済みの1以上の参照ブロックの画像を参照し、予め定められた複数の予測モードから予測対象ブロックの予測モードを決定するイントラ予測部と、前記イントラ予測部により決定済みの1以上の参照ブロックの予測モードを取得して、各参照ブロックと予測対象ブロックの位置関係から各参照ブロックの予測モードの確度を判定し、確度が高いと判定した参照ブロックの予測モードを、予測対象ブロックの予測モードの予測値と決定する予測値生成部(MPM生成部)と、前記予測値生成部により決定された予測値と前記予測対象ブロックの予測モードとが一致するか否かを判定し、両者が一致する場合には前記予測対象ブロックの予測モードの情報を出力せず、両者が一致しない場合又は前記予測値生成部により予測値が決定されない場合にのみ、前記予測対象ブロックの予測モードの情報を出力するMPM判定部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明に係るイントラ予測装置において、前記予測値生成部は、前記各参照ブロックの予測モードが、各参照ブロックから予測対象ブロックに向かう方向を示す所定の予測モードであるか否かを判定し、該所定の予測モードである場合にオン、該所定の予測モードでない場合にオフとする判定フラグを生成する予測モード判定部と、前記判定フラグに基づいて前記予測対象ブロックの予測モードの予測値を決定する予測値決定部(MPM決定部)と、を備えることを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明に係るイントラ予測装置において、前記1以上の参照ブロックは、予測対象ブロックの左に隣接する参照ブロック、予測対象ブロックの上に隣接する参照ブロック、及び予測対象ブロックの左斜め上に隣接する参照ブロックの3つの参照ブロックからなり、前記予測値決定部は、前記3つの参照ブロックのうち1つの参照ブロックに対する前記判定フラグのみオンである場合には、該1つの参照ブロックの予測モードを前記予測対象ブロックの予測モードの予測値と決定し、前記3つの参照ブロックのうち2つの参照ブロックに対する前記判定フラグのみオンである場合には、該2つの参照ブロックの予測モードを前記予測対象ブロックの予測モードの予測値と決定し、前記3つの参照ブロックの全てに対する前記判定フラグがオン又はオフである場合には、前記予測対象ブロックの予測モードの予測値を定義しないことを特徴とする。
【0016】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る符号化装置は、上述したイントラ予測装置を備えることを特徴とする。
【0017】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るプログラムは、コンピュータを、上述したイントラ予測装置、又は符号化装置として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、予測対象ブロックに隣接するブロックの予測方向を考慮してMPMを設定することにより、MPMの予測確度を向上させ、予測モード情報の伝送量を低減させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例に係るイントラ予測装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施例に係るイントラ予測装置の参照ブロックを説明する図である。
【図3】本発明の一実施例に係るイントラ予測装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施例に係るイントラ予測装置を備える符号化装置の構成を示すブロック図である。
【図5】MPEG4 AVC/H.264方式における4画素×4ライン単位でイントラ予測する場合の予測モードを示す図である。
【図6】HEVC方式におけるイントラ予測の予測モードを示す図である。
【図7】MPEG−4 AVC/H.264方式の予測モードの予測について説明する図である。
【図8】従来の予測モードの予測の課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
[イントラ予測装置]
図1は、本発明の一実施例に係るイントラ予測装置の構成を示すブロック図である。イントラ予測装置1は、イントラ予測部10と、予測モード保持部11と、MPM生成部(予測値生成部)12と、MPM判定部13とを備える。イントラ予測装置1は、ブロック単位でイントラ予測を行い、予測対象ブロックについて、予測方向を示す予測モード(予測方向に対応する予測モード)を決定するとともに、予測対象ブロックの周囲のブロックの予測方向を考慮してMPMを決定する。
【0022】
イントラ予測部10は、予測対象ブロックの周囲のブロックであって予測モードを決定済みのブロック(以下、「参照ブロック」という)の画像を参照し、予め定められた複数の予測モードから最適な予測モードを決定し、決定した予測モードを予測モード保持部11、MPM生成部12、及び外部に出力する。また、イントラ予測部10は、決定した予測モードに基づく予測画像を生成し、生成した予測画像を外部に出力する。最適な予測モードは既知の手法により決定することができる。例えば、各予測モードに基づいて予測画像を求め、符号化コストを最小とする予測モードをR−D最適化(Rate-Distortion Optimization)により決定する。MPEG4 AVC/H.264方式により4×4画素単位でイントラ予測する場合には、図5に示した予測モードの中から予測対象ブロックの予測モードを決定し、HEVC方式によりイントラ予測する場合は図6に示した予測モードの中から予測対象ブロックの予測モードを決定する。
【0023】
予測モード保持部11は、イントラ予測部10から入力される予測モードを保持する。
【0024】
MPM生成部12は、イントラ予測部10により決定済みの1以上の参照ブロックの予測モードを取得して、各参照ブロックと予測対象ブロックの位置関係から各参照ブロックの予測モードの確度を判定し、確度が高いと判定した参照ブロックの予測モードをMPM(予測対象ブロックの予測モードの予測値)とする。かかるMPM生成部12は、例えば、予測モード判定部121と、MPM決定部(予測値決定部)122とにより構成される。
【0025】
予測モード判定部121は、1以上の参照ブロックの予測モードを予測モード保持部11から取得し、各参照ブロックの予測モードが、各参照ブロックと予測対象ブロックの位置関係から定まる所定の予測モード(各参照ブロックから予測対象ブロックに向かう方向を示す所定の予測モード)であるか否かを判定する。
【0026】
図2に示すように、本実施例では、1以上の参照ブロックを、予測対象ブロックXの左に隣接するブロックA、予測対象ブロックXの上に隣接するブロックB、及び予測対象ブロックXの左斜め上に隣接するブロックDとする。この場合、予測モード判定部121は、参照ブロックAの予測モードが、参照ブロックAから予測対象ブロックXに向かう方向(右方向)を示す所定の予測モードであるか否かを判定し、参照ブロックBの予測モードが、参照ブロックBから予測対象ブロックXに向かう方向(下方向)を示す所定の予測モードであるか否かを判定し、参照ブロックDの予測モードが、参照ブロックDから予測対象ブロックXに向かう方向(右斜め下方向)を示す所定の予測モードであるか否かを判定する。
【0027】
予測モード判定部121は、各参照ブロックA,B,Dの予測モードの判定結果を示す判定フラグflag_a,flag_b,flag_dをMPM決定部122に出力する。予測モード判定部121は、各参照ブロックA,B,Dの予測モードが、各参照ブロックA,B,Dと予測対象ブロックXの位置関係から定まる所定の予測モードであると判定した場合には判定フラグをオンとし、そうでない場合には判定フラグをオフとする。
【0028】
MPM決定部122は、予測モード判定部121から入力される判定フラグflag_a,flag_b,flag_dに基づいてMPM(予測対象ブロックの予測モードの予測値)を決定し、MPMをMPM判定部13に出力する。MPMの決定方法の具体例については後述する。
【0029】
MPM判定部13は、MPM生成部12から入力されるMPMと、イントラ予測部10から入力される予測対象ブロックXの予測モードとが一致するか否かを判定し、両者が一致する場合にオンとし、両者が一致しない場合、又はMPM生成部12によりMPMが決定されなかった場合にオフとするMPMフラグを生成し、外部に出力する。MPM判定部13は、MPMフラグがオンの場合には予測対象ブロックの予測モード情報を外部に出力せず、MPMフラグがオフの場合にのみ予測対象ブロックの予測モード情報を外部に出力する。
【0030】
また、MPM判定部13は、MPMフラグがオンである場合(すなわち、イントラ予測部10により決定された予測対象ブロックXの予測モードと、MPMとが一致する場合)に、イントラ予測部10により決定された予測対象ブロックXの予測モードが参照ブロックA,B,Dのいずれの参照ブロックの予測モードであるかを示すMPM情報を生成し、外部に出力する。
【0031】
なお、復号側も符号化側と同様に参照ブロックの予測モードからMPMを生成するMPM生成部を有する場合には、MPMが1つであれば、復号側は予測対象ブロックの予測モードを把握することができる。つまり、符号化側から伝送されるMPMフラグがオンであるときは、復号側のMPM生成部で生成した1つのMPMが予測対象ブロックの予測モードであり、符号化側から伝送されるMPMフラグがオフのときは、符号化側から伝送される予測モード情報から予測対象ブロックの予測モードが解る。そのため、復号側がMPM生成部を有する場合には、MPM判定部13は、MPMが1つのときは、予測対象ブロックの予測モードが参照ブロックのいずれの参照ブロックの予測モードであるかを示すMPM情報を外部に出力する必要は無く、MPMが2つ以上あるときのみ、MPM情報を外部に出力する。このようにして、MPM判定部13は、MPMフラグを外部に出力するとともに、状況に応じて予測モード情報又はMPM情報を外部に出力する。
【0032】
次に、イントラ予測装置1の動作を、図3を参照して説明する。図3は、本発明の一実施例に係るイントラ予測装置1の動作を示すフローチャートである。
【0033】
まず、イントラ予測装置1は、イントラ予測部10により、予測対象ブロックの予測モードを決定する(ステップS101)。
【0034】
続いて、イントラ予測装置1は、予測モード判定部121により、参照ブロックの予測モードを検査し、各参照ブロックと予測対象ブロックの位置関係に基づき判定フラグを生成する(ステップS102)。MPEG4 AVC/H.264方式において図5に示した予測モードが予め設定されている場合、予測モード判定部121は、次のように判定フラグを設定する。参照ブロックAについては、参照ブロックAの予測モードが、右方向を示す予測モード(予測モード1)である場合に判定フラグflag_aをオンにし、それ以外の場合には判定フラグflag_aをオフにする。参照ブロックBについては、参照ブロックBの予測モードが、下方向を示す予測モード(予測モード0)である場合に判定フラグflag_bをオンにし、それ以外の場合には判定フラグflag_bをオフにする。参照ブロックDについては、参照ブロックDの予測モードが、右斜め下方向を示す予測モード(予測モード4)である場合に判定フラグflag_dをオンにし、それ以外の場合には判定フラグflag_dをオフにする。
【0035】
HEVC方式において図6に示した予測モードが予め設定されている場合、予測モード判定部121は、次のように判定フラグを設定する。参照ブロックAについては、参照ブロックAの予測モードが、右方向を示す予測モード(例えば、予測モード1,16,15,29,30)のいずれかである場合に判定フラグflag_aをオンにし、それ以外の場合には判定フラグflag_aをオフにする。参照ブロックBについては、参照ブロックBの予測モードが、下方向を示す予測モード(例えば、予測モード0,11,12,21,22)のいずれかである場合に判定フラグflag_bをオンにし、それ以外の場合には判定フラグflag_bをオフにする。参照ブロックDについては、参照ブロックDの予測モードが、右斜め下方向を示す予測モード(例えば、予測モード3,18,26,10,14)のいずれかである場合に判定フラグflag_dをオンにし、それ以外の場合には判定フラグflag_dをオフにする。
【0036】
判定フラグflag_a,flag_b,flag_dのうち、1つの判定フラグのみオンである場合には(ステップS103−Yes)、MPM決定部122により、オンの判定フラグに対応する1つの参照ブロックの予測モードをMPMと決定する(ステップS104)。例えば、判定フラグflag_aのみがオンである場合には、参照ブロックAの予測モードを、予測確度が高いものと判定してMPMに決定する。次に、イントラ予測装置1は、MPM判定部13により、決定したMPMと予測対象ブロックの予測モードとが一致するか否かを判定する(ステップS105)。そして、ステップS105にて両者が一致すると判定した場合には、MPMフラグをオンにして出力し(ステップS106)、ステップS105にて両者が一致しないと判定した場合には、MPMフラグをオフにして出力するとともに、予測モード情報を出力する(ステップS107)。なお、復号側がMPM生成部を有していない場合には、ステップS106にて、MPM情報を出力する必要がある。
【0037】
判定フラグflag_a,flag_b,flag_dのうち、2つのみがオンである場合には(ステップS108−Yes)、MPM決定部122により、オンの判定フラグに対応する2つの参照ブロックの予測モードをMPMと決定する(ステップS109)。例えば、判定フラグflag_a,flag_bがオンである場合には、参照ブロックA,Bの予測モードを、予測確度が高いものと判定してMPMに決定する。次に、MPM判定部13により、決定したMPMと予測対象ブロックの予測モードとが一致するか否かを判定する(ステップS110)。そして、ステップS110にて両者が一致すると判定した場合には、MPMフラグをオンにして出力するとともに、MPM情報を出力する(ステップS111)、ステップS110にて両者が一致しないと判定した場合には、MPMフラグをオフにして出力するとともに、予測モード情報を出力する(ステップS112)。
【0038】
判定フラグflag_a,flag_b,flag_dの全てがオン又は全てがオフである場合には(ステップS108−No)、MPM決定部122により、各参照ブロックの予測モードはいずれも予測確度が高くないと判定し、MPMを定義しない(MPMを決定しない)(ステップS113)。次に、MPM判定部13により、MPMフラグをオフにして出力するとともに、予測モード情報を出力する(ステップS114)。
【0039】
なお、MPM決定部122は、判定フラグflag_a,flag_b,flag_dのうち、2つ以上がオンである場合には、予め定められた優先順位に基づいて、オンの判定フラグのうち最も優先順位の高い判定フラグに対応する参照ブロックの予測モードをMPMと決定するようにしてもよい。例えば、優先順位が判定フラグflag_b、flag_a、flag_dの順である場合に、判定フラグflag_a,flag_bがオンのときは、参照ブロックBの予測モードをMPMと決定する。
【0040】
このように、イントラ予測装置1は、MPM生成部12により、各参照ブロックと予測対象ブロックの位置関係から、各参照ブロックの予測モードの確度を判定し、確度が高いと判定した参照ブロックの予測モードをMPMと決定する。そして、MPM判定部13により、MPM生成部12により決定されたMPMと予測対象ブロックの予測モードとが一致するか否かを判定し、両者が一致する場合には、予測対象ブロックの予測モード情報を出力せず、両者が一致しない場合又はMPM生成部13によりMPMが決定されない場合にのみ、予測対象ブロックの予測モード情報を出力する。このため、イントラ予測装置1によれば、MPMの予測確度を向上させ、予測モード情報の伝送量を低減させることができるようになる。特に、HEVC方式のように予測モードの種類が多い場合に、より予測モード情報の伝送量の低減率が高くなる。
【0041】
なお、上述したイントラ予測装置1として機能させるためにコンピュータを好適に用いることができ、そのようなコンピュータは、イントラ予測装置1の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、当該コンピュータの記憶部に格納しておき、当該コンピュータのCPUによってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。
【0042】
[符号化装置]
次に、上述したイントラ予測装置1を備える符号化装置について説明する。図4は、本発明による一実施例の符号化装置の構成を示すブロック図であり、ここではMPEG−4 AVC/H.264方式の符号化装置に本発明に係るイントラ予測装置1を適用した例を示している。図4に示すように、符号化装置20は、減算部21と、直交変換部22と、量子化部23と、逆量子化部24と、逆直交変換部25と、加算部26と、メモリ27と、イントラ予測装置1と、動き補償部28と、切替えスイッチ29と、可変長符号化部30とを備える。
【0043】
減算部21は、入力画像と、切替えスイッチ29を介してイントラ予測装置1又は動き補償部28から入力される予測画像との差分画像を生成し、直交変換部22に出力する。
【0044】
直交変換部22は、減算部21から入力される差分画像に対して小領域の画像ブロック(以下、単に「ブロック」という)ごとに直交変換を施し、直交変換係数を量子化部23に出力する。
【0045】
量子化部23は、直交変換部22から入力される直交変換係数に対して量子化テーブルを選択して量子化処理を行い、逆量子化部24及び可変長符号化部30に出力する。
【0046】
逆量子化部24は、量子化部23から入力される量子化された直交変換係数に対して逆量子化処理を行い、逆直交変換部25に出力する。
【0047】
逆直交変換部25は、逆量子化部24から入力される直交変換係数に対して逆直交変換(例えば、IDCT;Inverse Discrete Cosine Transform)処理を施し、加算部26に出力する。
【0048】
加算部26は、逆直交変換部25から入力される逆直交変換した画像と、切替えスイッチ29を介してイントラ予測装置1又は動き補償部28から入力される予測画像とを加算して復号画像を生成し、メモリ27に出力する。
【0049】
イントラ予測装置1は、メモリ27に記憶された参照ブロックの復号画像を参照し、上述したように予測モードを決定してイントラ予測画像を生成し、イントラ予測画像を切替えスイッチ29を介して減算部21及び加算部26に出力する。また、イントラ予測装置1は、上述したようにMPMフラグ、予測モード情報、及びMPM情報を生成し、可変長符号化部30に出力する。
【0050】
動き補償部28は、入力画像に対して、メモリ27に記憶された過去及び/又は未来のピクチャ(フレーム)を参照し、SSD法やSAD法を用いたブロックマッチングにより動きベクトルを生成し、動きベクトルを可変長符号化部30に出力する。ブロックマッチングは、例えばパラボラフィッティング関数を用いた補間処理により、小数画素精度で行う。
【0051】
動き補償部28は、メモリ27に記憶された復号画像に対し、生成した動きベクトルを用いて動き補償を行ってインター予測画像を生成し、インター予測画像を切替えスイッチ29を介してインター予測画像を減算部21及び加算部26に出力する。
【0052】
切替えスイッチ29は、イントラ予測装置1から入力されるイントラ予測画像と、動き補償部28から入力されるインター予測画像とを切替えて、減算部21及び加算部26に出力する。
【0053】
可変長符号化部30は、量子化部23から入力される量子化された直交変換係数についてスキャンを行って可変長符号化処理を施しビットストリームを生成する。また、可変長符号化部30は、イントラ予測装置1から入力される予測モード情報、及び動き補償部28から入力される動きベクトルの情報も可変長符号化処理を施し、符号化データを外部に出力する。
【0054】
このように、符号化装置20は、イントラ予測装置1を備え、MPM生成部12により決定されたMPMを参照して、予測対象ブロックの予測モード情報を符号化する。このため、符号化装置20によれば、予測モード情報の伝送量を低減させ、符号化効率を向上させることができるようになる。
【0055】
なお、上述した符号化装置20として機能させるためにコンピュータを好適に用いることができ、そのようなコンピュータは、符号化装置20の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、当該コンピュータの記憶部に格納しておき、当該コンピュータのCPUによってこのプログラムを読み出して実行させることで実現することができる。
【0056】
上述の実施例は、代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0057】
例えば、上述の実施例では参照ブロックが3つの場合に付いて説明したが、参照ブロックを、予測対象ブロックの左に隣接するブロック、及び予測対象ブロックの上に隣接するブロックの2つとしてもよいし、予測対象ブロックの左に隣接するブロック、予測対象ブロックの上に隣接するブロック、予測対象ブロックの左斜め上に隣接するブロック、及び予測対象ブロックの右斜め上に隣接するブロックの4つとしてもよい。また、上述の実施例では、MPM決定部122は、判定フラグflag_a,flag_b,flag_dの全てがオンである場合にはMPMを未定義としたが、参照ブロックA,B,Dの3つの予測モードをMPMと決定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
このように、本発明によれば、予測モード情報の伝送量を低減させることが可能となるので、画像を符号化する任意の用途に有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 イントラ予測装置
10 イントラ予測部
11 予測モード保持部
12 MPM生成部
13 MPM判定部
121 予測モード判定部
122 MPM決定部
20 符号化装置
21 減算部
22 直交変換部
23 量子化部
24 逆量子化部
25 逆直交変換部
26 加算部
27 メモリ
28 動き補償部
29 切替えスイッチ
30 可変長符号化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック単位でイントラ予測を行い、予測対象ブロックについて予測方向を示す予測モードを決定するとともに、該予測対象ブロックの予測モードの予測値を決定するイントラ予測装置であって、
予測対象ブロックの周囲のブロックであって予測モードを決定済みの1以上の参照ブロックの画像を参照し、予め定められた複数の予測モードから予測対象ブロックの予測モードを決定するイントラ予測部と、
前記イントラ予測部により決定済みの1以上の参照ブロックの予測モードを取得して、各参照ブロックと予測対象ブロックの位置関係から各参照ブロックの予測モードの確度を判定し、確度が高いと判定した参照ブロックの予測モードを、予測対象ブロックの予測モードの予測値と決定する予測値生成部と、
前記予測値生成部により決定された予測値と前記予測対象ブロックの予測モードとが一致するか否かを判定し、両者が一致する場合には前記予測対象ブロックの予測モードの情報を出力せず、両者が一致しない場合又は前記予測値生成部により予測値が決定されない場合にのみ、前記予測対象ブロックの予測モードの情報を出力するMPM判定部と、
を備えることを特徴とするイントラ予測装置。
【請求項2】
前記予測値生成部は、前記各参照ブロックの予測モードが、各参照ブロックから予測対象ブロックに向かう方向を示す所定の予測モードであるか否かを判定し、参照ブロックの予測モードが該所定の予測モードである場合にオン、該所定の予測モードでない場合にオフとする判定フラグを生成する予測モード判定部と、
前記判定フラグに基づいて前記予測対象ブロックの予測モードの予測値を決定する予測値決定部と、
を備えることを特徴とする、請求項1に記載のイントラ予測装置。
【請求項3】
前記1以上の参照ブロックは、予測対象ブロックの左に隣接する参照ブロック、予測対象ブロックの上に隣接する参照ブロック、及び予測対象ブロックの左斜め上に隣接する参照ブロックの3つの参照ブロックからなり、
前記予測値決定部は、前記3つの参照ブロックのうち1つの参照ブロックに対する前記判定フラグのみオンである場合には、該1つの参照ブロックの予測モードを前記予測対象ブロックの予測モードの予測値と決定し、前記3つの参照ブロックのうち2つの参照ブロックに対する前記判定フラグのみオンである場合には、該2つの参照ブロックの予測モードを前記予測対象ブロックの予測モードの予測値と決定し、前記3つの参照ブロックの全てに対する前記判定フラグがオン又はオフである場合には、前記予測対象ブロックの予測モードの予測値を定義しないことを特徴とする、請求項2に記載のイントラ予測装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のイントラ予測装置を備えることを特徴とする符号化装置。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1から3のいずれか一項に記載のイントラ予測装置として機能させるためのイントラ予測プログラム。
【請求項6】
コンピュータを、請求項4に記載の符号化装置として機能させるための符号化プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−81100(P2013−81100A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220377(P2011−220377)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】