説明

インビボ(INVIVO)マルチプルDNAワクチンと多価DNAワクチン

【課題】本発明は、家禽の卵中で胚胎免疫性のマルチプルDNAワクチン及び又は多価DNAワクチンを取得する方法及びその使用方法を提供するものである。
【解決手段】マルチプルDNAワクチンには二つ或は更に多くのDNA構成物を含み、各構成物には家禽ウィルス蛋白質又はその断片をコードしたDNA分子が含まれ、前記DNA分子は家禽体内の家禽ウィルス疾病に対抗する保護性免疫反応を誘導することが出来る。前記多価DNAワクチンには、各構成物の中に一つ或は更に多くのDNA分子を含むDNA構成物があり、前記各DNA分子は家禽ウィルス遺伝子又はその断片を発現することが出来る。前記多価DNAワクチンは二つ或は更に多くのウィルス抗原を発現し、且つ家禽体内の家禽ウィルス疾病に対抗する保護性免疫反応を誘導することが出来る。前記マルチプルDNAワクチン及び前記多価DNAワクチンは、両方とも家禽卵が受精してから約18日後に家禽卵の羊水の中に注射することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[産業上の利用分野]
本発明は、家禽の卵中で胚胎免疫性を取得するためのマルチプルDNAワクチン及び又は多価DNAワクチンに関するものである。前記マルチプルDNAワクチンには二つ或は更に多くのDNA構成物を含み、各構成物には家禽ウィルス蛋白質又はその断片をコードしたDNA分子が含まれ、前記DNA分子は家禽体内の家禽ウィルス疾病に対抗する保護性免疫反応を誘導することが出来る。前記多価DNAワクチンには、各構成物の中に一つ或は更に多くのDNA分子を含む構成物があり、前記各DNA分子はそれぞれ家禽ウィルス遺伝子又はその断片を発現することが出来る。前記多価DNAワクチンは二つ或は更に多くのウィルス抗原を発現し、且つ家禽体内の家禽ウィルス疾病に対抗する保護性免疫反応を誘導することが出来る。前記マルチプルDNAワクチン及び前記多価DNAワクチンは、両方とも家禽卵が受精してから約18日後に家禽卵の羊水の中に注射することが好ましい。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術及び解決しようとする課題]
ウィルス含有ワクチンのインオボ・ワクチン接種(in ovo vaccination)については、既にSharmaらによって全面的に説明されている。(アメリカ特許第4,458,630号)。特に、マレク病ウィルス(Marek"s disease virus)を卵の羊水内に注射すると、胚胎が感染してワクチンウィルスを高力価にまで複製し、処理中の胚胎内において保護性抗体の形成を誘導出来ることを述べている。(Sharma(1985), Avian Diseases 29, 1155, 1167-68を参照)。
【0003】
全世界の家禽事業界でよく知られているが、ある種のウィルス疾病、例えばマレク病ウィルス(MDV)、伝染性ファブリキュウス嚢病ウィルス(IBDV)、ニューキャッスル病ウィルス(Newcastle disease virus)(NDV)、伝染性気管支炎ウィルス(IBV)、伝染性喉気管炎(ILTV)、禽脳脊髄炎ウィルス(AEV)、鶏貧血ウィルス(CAV)、禽痘ウィルス(FPV)、禽流感ウィルス(AIV)、レオウィルス(reovirus)、禽白血病ウィルス(ALV)、網状内皮組織増殖ウィルス(REV)、禽腺ウィルスや出血性腸炎ウィルス(HEV)などは、重大な疫病を爆発させ、養禽事業に著しい損失をもたらす可能性がある。その中でも、MDV・IBDV・NDV及びIBVは、その毒性本質のために特に重要である。
【0004】
マレク病(MD)は、鶏グループの中で自然発生するリンパ増殖失調疾病で、疱疹ウィルスによって引き起こされるものである。MDは、全世界の家禽生産国に普遍的に存在する。集中生産システム下において飼育される鶏は、MDによる被害を避けることは難しい。MDの兆候は、感染した鶏の神経・生殖器官・内部器官・目や皮膚に広範に現れ、運動障害(神経が感染して麻痺したため)・内部器官の機能性障害(腫瘍による)及び慢性栄養不足(内部器官がウィルスに侵された場合)を引き起こす。MDは生まれて約6週間目から感染し、12週から24週の間で最も多発する。
【0005】
今日にいたるまで、MDを治療する方法はまだない。この疾病のコントロールは、主として例えば、成長中の鶏と感染源とを隔離したり、遺伝的抵抗系の利用やワクチン接種等の管理方法に頼っている。しかし、管理工程は通常コストメリットがなく、そして遺伝的抵抗性が増加中の禽系選択に取っては、その進展は失望的である。今日、MDのコントロールはほとんどがワクチン接種に基づいて行われている。
【0006】
伝染性ファブリキュウス嚢ウィルス(IBDV)は、幼鶏の接触感染性免疫に対する高度抑制疾病を招き、全世界の家禽事業に著しい損失をもたらしている。(Kibenge (1988), J. Gen. Virol.,69:1757-1775を参照)。毒性IBDV株は鶏の敏感性感染に対して、伝染性ファブリキュウス嚢病(IBD)と呼ばれている接触感染性免疫の高度抑制状況を招く可能性がある。ファブリキュウス嚢(the bursa of Fabricius)及び脾臓に対するリンパ濾胞による傷害はその他の病原体による感染を更に強め、且つ鶏のワクチンに対する反応能力を弱める(Cosgrove (1962), Avian Dis., 6:385-3894を参照)。
【0007】
IBVDは、ダブル株RNAウィルス科(Birnaviridae)ファミリーの一つで、その遺伝子はツーセグメントのダブル株RNAによって構成されている(Dobos et al. (1979), J. Virol., 32:593-605を参照)。小さい方のセグメントB(2800bp)は、VP1とコードされるdsRNA重合酵素で、大きい方の遺伝子セグメントA(約3000bp)は、単一オープン・リーディング・フレーム(ORF)内で110kDaとコードされる前駆物質ポリペプチドであり、処理後に成熟したVP2・VP3及びVP4となったものである。(Azad et al. (1985), Virology, 143:35-44を参照)。前記ポリペプチドORF部分と重なる小さいORFのセグメントAも、未知の機能を持った17-kDa蛋白質(Kibenge et al 1991), J. Gen. Virol. 71:569-577を参照)として、VP5とコードすることが出来る。
【0008】
VP2とVP3のいずれもウィルス粒子の主要構成蛋白ではあるが、VP2こそが主な宿主-保護的免疫原であり、且つ中和性抗体を誘発する。(Becht et al. (1988), J. Gen. Virol. 70:1473-1481を参照 )。VP3は、血清型1及び2のウィルス株から派生したVP3に対抗できるシングル株抗体(Mabs)によって識別されるので(Becht et al. (1988), J. Gen. Virol. 69:631-640を参照 )、グループ特異性抗原(group-specific antigen)として認められている。VP4は、Pロアテーゼとしてコードされたウィルスで、且つ前駆物質蛋白の処理に関与している。(Jagadish et al.(1988, J.Virol., 62:1084-1087 を参照)。
【0009】
今までは、幼鶏のIBDV感染に対するコントロールは、毒性株によって生菌ワクチン接種を行うか、又は主として生菌若しくは死菌IBDVワクチンを育種雌鶏に服用させて誘導した母体抗体から転移して行われた。不幸にして、最近数年間は、アメリカ国内でワクチン接種した鶏グループの中から分離した毒性IBDVの変異株(例えば、Snyder et al. (1988), Avian Dis., 32:535-539; Van der Marel et al. (1990), Dtsch. Tierarztl. Wschr., 97:81-83を参照)が発生しており、この事実はIBDVに生菌ワクチンを接種する効用性を著しく損なっている。
【0010】
IBDVに対する組換えワクチンの開発にも努力が払われ、且つ既にIBDVがゲノムをクローンされている(Azad et al (1985) "Virology", 143:35-44を参照)。IBDVのVP2遺伝子は既に酵母菌の中にクローンされ(Macreadie et al. (1990), Vaccine, 8:549-552を参照)、及び組換え禽痘ウィルスに発現されている(Bayliss et al (1991), Arch. Virol., 120:193-205を参照)。鶏に酵母菌から発現したVP2抗原を使用して免疫処理を行うと、抗血清は鶏のIBDV感染に対抗する受動的保護を提供できる。能動的免疫研究に使用した場合、禽痘ウィルスに媒介された(fowlpox virus-vectored)VP2抗原は死亡に対抗する保護を提供できるが、ファブリキュウス傷害に対抗する保護を提供することは出来ない。
【0011】
ニューキャッスル病ウィルス(NDV)は、エンベロープを持つウィルスで、リニア・一本鎖・ノンセグメント・ネガティブセンス(negative sense)のRNAゲノムを含む。典型的な、エンベロープを持つ一本鎖ネガティブセンス・ゲノムを含むRNAウィルス科は、ノンセグメント・ゲノム(例えば、パラミソウィルス科( Paramyxoviridae)やラブドウィルス科(Rhabdoviridae))又はセグメントゲノム(例えば、オルトミクソウィルス科(Orthomyxoviridae)・ブニアウィルス科(Bunyaviridae)とアレナウィルス科(Arenaviridae))を含む。NDVは、副流感ウィルス・仙台ウィルス(Sendai virus)・猿ウィルス5(simian virus 5)や耳下腺炎ウィルス(mumps virus)と共にパラミソウィルス科に属する。
【0012】
NDVの構成エレメントは細胞形質膜(cell plasma membrance)から派生した脂質二重層であるウィルス・エンベロープを含む。エンベロープから突出した糖蛋白・ヘマグルチニン ノイラミニダーゼ(HN)はウィルスに血球凝集とノイラミニダーゼ両方の活性を同時に持たせる。ウィルス膜と交互作用を行う融合糖蛋白(F)は、先ず不活性前駆物質の形式を呈し、その後でポスト・トランスレーション方式で二本のジスルフィド結合ポリペプチドに切り割かれる。活性F蛋白は、ウィルス・エンベロープ及び宿主細胞形質膜の融合を助けてNDVを宿主細胞内に浸透させる手順に関係がる。マトリックス・蛋白(M)は、ウィルス・アセンブリに関係があり、且つウィルス膜とヌクレオカプシド蛋白(nucleocapsid proteins)の両方と交互作用する。
【0013】
NDVヌクレオカプシドのメイン蛋白のサブユニットは、カプシドに螺旋対称性を付与するヌクレオカプシド蛋白(NP)である。ヌクレオカプシドと結合するのはP及びL蛋白である。リン酸化されたホスホ蛋白(P)は、転写中に調節作用があると認められ、且つメチル化・リン酸化やポリアデニレーション等に関与する可能性がある。RNA-依頼性RNAポリメラーゼとしてコードされるL遺伝子はP蛋白と共にウイルスRNA合成に必要なものである。ウィルス・ゲノムのコーティング・キャパシティのほとんど半分を占めるL蛋白はウィルス蛋白の中では最大で、転写と複製において重要な役割を占めている。
【0014】
全ての(−)鎖RNAウィルスには、NDVを含めて、RNA複製に必要な細胞機器を含有していないのでその複製が複雑になっている。この他、(−)鎖・ゲノムは直接蛋白質に転訳できず、先ず(+)鎖(mRNA)の副本に転写しなければならない。従って、宿主細胞内に進入した後、ウィルスはRNA-依頼性RNAポリメラーゼに直ぐ合成することは出来ない。L・P及びNP等の蛋白は感染したときゲノムと共に細胞の中に進入しなければならない。NDV(−)鎖ゲノム(vRNAs)とアンチゲノム(antigenome)の両者はヌクレオカプシド蛋白によって包まれている。ただ一つ包まれていないRNA種はmRNAsウィルスである。細胞形質膜は、NDVウィルスがRNAを転写する場所であると同様に複製する場所でもある。各種ウィルス成分の組換えは宿主細胞形質膜において発生し、且つ成熟ウィルスは発芽中に放出される。
【0015】
Ahmadらのアメリカ特許第5,427,791号に述べられたNDVに対する胚胎ワクチン接種では、エチルメタンスルホネート(EMS)を使用してウィルスを改質しなければならない。しかしながら、EMSはEMSを使用して作られたワクチンにまで突然異変剤の作用があることを疑われるほどの突然異変剤であるので、ワクチンの正常な供給にとっては好ましいことではない。しかし、EMSを使用して改質しないと、NDVワクチンは卵中ワクチン接種に使用できない、なぜなら、未改質のウィルスを卵中に注射すると、ほとんど全ての胚胎が死んでしまうからである。
【0016】
冠状ウィルス科(Coronaviridae)の原型である伝染性気管支炎ウィルス(IBV)は、伝染性気管支炎(IB)の病因剤である。前記ウィルスには正極性の一本鎖RNAゲノムがあり、長さ約20kb、且つその寸法は通常80-100ナノメーター(nm)で、円形の20ナノメーター突出スパイク(Spike)がある。IBVは全ての年齢の鶏の急性高度接触伝染性疾病を引き起こす起因剤で、呼吸・生殖及び腎臓系統などに感染する。
【0017】
IBVには、三つの構造蛋白がある:スパイク糖蛋白(S)・膜糖蛋白及びヌクレオカプシド蛋白である。前記スパイク糖蛋白は、ウィルス脂質膜から突出したスパイクの滴涙状表面突起の中に存在するため、このように呼ばれる。スパイク糖蛋白も又同様に、ウィルスの免疫原性を促進すると認められ、一部はその他の冠状ウィルスのスパイク蛋白に似ており、且つ一部はインビトロ及び実験(例えば、D. Cavanagh et al. (1984), Avian Pathology, 13,573-583)から由来している。二種類のスパイク糖蛋白があり、それらは、S1 (90,000ドルトン(daltons)とS2(84,000ドルトン)である。グリコポリペプチドS1及びS2のポリペプチド成分は、オリゴ糖を酵素的に移除した後は約125,000ドルトンの合併分子量があると見られ、スパイク蛋白は明らかにS2ポリペプチドによってウィルス膜に付着したものである。
【0018】
IBVは、養鶏工業の密集的に発達した国に既に広く分布している。4週齢に成長した幼鶏は最もIBVに感染し易く、感染は高度の罹病率及び二次細菌感染による死亡率をもたらす。感染は又、卵の生産量を低下させ、若しくは完全に卵を産めないようにし、加えて薄くて畸形の粗雑でやわらかい殻の卵を産み、重大な経済的影響をもたらす可能性がある。
【0019】
生菌ワクチンを卵中(in-ovo)で発育中の鶏に与えることは、鶏の出生前にワクチンを接種してある種の病気に対抗する快速で(毎時40,000個の卵)有効(100%の卵にワクチン接種)且つ省力的(一孵化場当たり年間$100,000)な方法であることが証明されている。
【0020】
鶏の孵化卵に使う最初の卵中ワクチン接種機器は、Raleigh, N.C.のEmbrex, Inc.によって1980年代の後期に開発されたものである(アメリカ特許第5,056,464号及び5,699,751号を参照)。この種の卵中ワクチン接種機器は、現在約80%のアメリカ食用鶏孵化場で、主としてMDワクチンの投与に使われている。MDに対抗する鶏のワクチン接種において安全で有効であることの証明されたこの種の機器は、次第にIBDやNDワクチン用としても普及してきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
以下本発明について、DNA媒介の免疫化(以下”DNAワクチン”と総称する)を紹介する。DNAワクチンには二種類ある、即ち、マルチプルDNAワクチンと多価DNAワクチンである。本発明に係るマルチプルDNAワクチンには、二種類或は更に多くのDNA構成物の組み合わせがあり、各構成物にはウィルス遺伝子又はその断片である単一のDNA分子が含くまれる。本発明に係る多価DNAワクチンには、DNA構成物中に結合した二種類又は更に多くのウィルス遺伝子若しくはその断片が含まれる。前記マルチプルDNAワクチン及び多価DNAワクチン作成のいずれかに使用するウィルス遺伝子若しくはその断片は、宿主体液と細胞免疫系統の抗原であると共に前記体液及び細胞免疫系統を誘導できるウィルス・ペプチドとしてコードされたものである。これらのDNAワクチンは卵中に注射するのが好ましい。卵中DNAワクチン注射は、驚くべき強烈な免疫反応をもたらす、その反応には、抗体誘導や細胞質を分泌するT-細胞の活性化のみならず、更に細胞毒性Tリンパ細胞(CTL)の産生まで含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
[課題を解決するための手段]
本発明は、卵中に注射するためのマルチプルDNAワクチンを提供する。前記マルチプルDNAワクチンには二種類又は更に多くのDNA構成物が含まれ、各DNA構成物は、家禽の中で禽ウィルス疾病を引き起こす禽ウィルスの抗原蛋白を発現でき、禽ウィルス疾病に対抗する保護的免疫反応を誘導することが出来る。前記マルチプルDNAワクチンは、卵中、特に卵中の羊水内に注射するのが好ましい。前記卵は、受精してから約18日後のものが好ましい。好ましい家禽としては、鶏・七面鳥・鴨及びガチョウがある。
【0023】
前記DNA構成物は、DNA分子とベクター(vector)を含む。前記ベクターはプラスミド(plasmid)若しくはウィル・スキャリヤーであって良い。プラスミドの例としては、pcDNA3・pVAX1・pSectag・pTracer・pDisplay・Puc系統のプラスミド(例えばpUC7・Puc8・pUC18)及びpGEM系統を含み、但しこれに限らない。或は、プロモーター(promoter)、例えば、CMVプロモーター・SVプロモーター・RSVプロモーター及びβ-アクチンプロモーター等を含有する任意のプラスミドによってDNA構成物を準備してもよい。最も有利なプラスミドはpcDNA3である。好ましいウィルス・キャリヤーは、バクロウィルス・疱疹ウィルス・痘ウィルスによって構成されたグループの中から選ばれたものである。
【0024】
家禽ウィルスの例としては、マレク病ウィルス(MDV)・伝染性ファブリキュウス嚢ウィルス(IBDV)・ニューキャッスル病ウィルス(NDV)・伝染性気管支炎ウィルス(IBV)・伝染性喉気管炎ウィルス(ILTV)・禽脳脊髄炎ウィルス(AEV)・禽白血病ウィルス(ALV)・禽痘ウィルス(FPV)・禽パラミソウィルス(APV)・アヒル肝炎ウィルス(DHV)・及び出血性腸炎ウィルス(HEV)がある、但しこれらに限らない。
【0025】
上記禽ウィルス疾病に対抗する保護性免疫反応の誘導に特に適したDNA分子は、SEQ ID NO:1のDNAシーケンスを持つ完全なマレク病ウィルス(MDV)遺伝子若しくはその断片;SEQ ID NO:2のDNAシーケンスを持つ完全な伝染性ファブリgBキュウス嚢ウィルス(IBDV)VP2遺伝子若しくはその断片;SEQ ID NO:3のDNAシーケンス(塩基6321から8319まで)を持つ完全なニューキャッスル病ウィルス(NDV)HN遺伝子若しくはその断片(即ち、SEQ ID NO:3はNDVの完全なゲノムである);SEQ ID NO:4のDNAシーケンスを持つ完全な伝染性気管支炎ウィルス(IBV)S1遺伝子若しくはその断片;SEQ ID NO:5のDNAシーケンスを持つ完全な伝染性喉気管炎ウィルス(ILTV)糖蛋白G遺伝子若しくはその断片;完全な禽脳脊髄炎ウィルス(AEV)VP1・VP0又はVP3遺伝子若しくはその断片(VP1遺伝子にはSEQ ID NO:6のDNAシーケンスがあり、VP0にはSEQ ID NO:7のDNAシーケンスがある、且つVP3遺伝子にはSEQ ID NO:8のDNAシーケンスがある);SEQ ID NO:9のDNAシーケンスを持つ完全な禽パラミソウィルス(APV)副糖蛋白G遺伝子若しくはその断片;SEQ ID NO:10のDNAシーケンスを持つ完全な出血性腸炎ウィルス(HEV)A型ペントンベース(penton base) 遺伝子若しくはその断片;及びSEQ ID NO:11のDNAシーケンスを持つ完全な禽痘ウィルス(FPV)エンベロープ抗原遺伝子若しくはその断片がある、但しこれらに限らない。
【0026】
好ましいDNAワクチンの一例としては、それぞれマレク病ウィルス(MDV)・伝染性ファブリキュウス嚢ウィルス(IBDV)・ニューキャッスル病ウィルス(NDV)・伝染性気管支炎ウィルス(IBV)由来の遺伝子若しくはその断片を発現できるDNA分子を含む二つのDNA構成物がある。
【0027】
マルチプルDNAワクチンのもう一つの好ましい例としては、それぞれマレク病ウィルス(MDV)・伝染性ファブリキュウス嚢ウィルス(IBDV)・ニューキャッスル病ウィルス(NDV)・伝染性気管支炎ウィルス(IBV)由来の遺伝子若しくはその断片を発現できるDNA分子を含む三つ又は更に多くのDNA構成物がある。
【0028】
本発明は、禽卵にワクチンを接種する方法及び前記マルチプルDNAワクチンを作る方法をも提供する。前記禽卵にワクチンを接種する方法は禽卵中に上記マルチプルDNAワクチンを注射することを含む。前記マルチプルDNAワクチンを作る方法には、DNA分子をプラスミド若しくはウィルス・キャリヤーへ結合(ligating)させてDNA構成物を形成する方法と、及び次に前記二つ若しくは更に多くのDNA構成物を混合してマルチプルDNAワクチンを形成する方法と、を含む。DNA分子をベクター内に取り込む手順は従来の方法で達成できる、即ち、遺伝子及び所要ベクターの両方を同じ制限酵素でカットして相補するDNA末端を産生させる場合、例えばT4 DNAリガーゼ( ligase )のような酵素を利用してDNA分子に連結する。PcDNA3に対する制限酵素としては、BamH1とEcoR1が好ましい。
【0029】
もう一つの具体的実例においては、卵中注射用の多価DNAワクチンを提供する。前記多価DNAワクチンは、それぞれベクターによって連結した二つ又は更に多くのDNA分子を含有するDNA構成物を含む。各DNA分子は禽ウィルス遺伝子若しくはその断片を発現できる。前記多価DNAワクチンは、禽体内の禽ウィルス疾病に対する保護性免疫反応を誘導する抗原性蛋白を発現できる。前記多価DNAワクチンは、禽卵中に注射するのが好ましい。前記多価DNAワクチンのDNA分子はそれぞれマレク病ウィルス(MDV)・伝染性ファブリキュウス嚢ウィルス(IBDV)・ニューキャッスル病ウィルス(NDV)・伝染性気管支炎ウィルス(IBV)・伝染性喉気管炎ウィルス(ILTV)・禽脳脊髄炎ウィルス(AEV)・禽白血病ウィルス(ALV)・禽痘ウィルス(FPV)・禽パラミソウィルス(APV)・アヒル肝炎ウィルス(DHV)・及び出血性腸炎ウィルス(HEV)の遺伝子若しくはその断片から由来している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[実施の形態]
従来の禽ワクチンは、化学的に不活化したウィルス・ワクチン若しくは改質した生菌ウィルス・ワクチンを含む。不活化ワクチンは別途免疫化処理を必要とするので、製造コストが高くつくのみならず執行面でも煩雑である。更に、ある種の伝染性ウィルス粒子は不活化処理後にも生き残って動物に投与した後疾病を誘発する可能性がある。
【0031】
全体的に、減衰された生菌ウィルスの方が不活化されたワクチンより好ましい、なぜなら、彼らはいつも同時に体液及び細胞の二種類の反応をベースとした免疫反応を誘発できるからである。これらのワクチンは、通常毒性ウィルス株を系列的に組織培養物中に通過させることを基礎としている。しかし、減衰プロセスはウィルスゲノムの突然異変を誘発し、毒性や免疫性質がお互いに異質な族群のウィルス粒子を招く。一方、従来の減衰された生菌ウィルスは毒性を回復して接種された動物の疾病を爆発させ、及びその他の動物に対して病原を拡散させる可能性があることが知られている。
【0032】
従って、業界にとって有利なことは、DNA組換え技術をベースにしたワクチンを採用することである。得られたDNAワクチンには所要且つ関連の免疫原生物質のみを含み且つ発現する、これらの物質は病原に対抗できる保護性免疫反応を誘導すると共に上述生菌ワクチン若しくは不活化されたワクチンの欠点を表すことがない。
【0033】
マルチプルDNAワクチン及び・又は多価DNA組換えワクチンを作る目的では、遺伝子のDNAシーケンス(”DNA分子”と互換的に使用しても良い)には前記ポリペプチドDNAコードの全長を含む必要はない。大部分の状況においては、抗原決定部位領域の遺伝子断片をコードするだけで十分免疫化に役立つ。抗原決定部位領域のDNAシーケンスは、その他のウィルス株の対応部分を序列化(sequencing)し且つかれらを比較することによって見つけ出すことができる。主な抗原決定因子(antigenic determinant)は最大異質性(heterology)を示すものである可能性がある。又、これらの領域は、蛋白質の構造的組織の中にある可能性もある。これらコードされた抗原決定因子の一つまたは更に多くの遺伝子断片は、化学的合成或はDNA組換え技術によって用意することができる。必要に応じて、これらの遺伝子断片を相互リンクさせ又はその他のDNA分子へリンクすることができる。
【0034】
この他、ウィルス遺伝子はDNAの中にある必要はない。事実上、ある種の良く見掛ける禽ウィルス疾病は、二本鎖或は一本鎖RNAウィルスによって引き起こされたものである。例えば、マレク病ウィルス(MDV)は二本鎖RNAウィルスで、伝染性ファブリキュウス嚢ウィルス(IBDV)・ニューキャッスル病ウィルス(NDV)及び伝染性気管支炎ウィルス(IBV)は全て一本鎖RNAウィルスである。しかし、RNAウィルス・シーケンスはRT-重合酵素連鎖反応(RT-PCR)技術を使ってDNAの中へ逆転写し、続いて従来のDNA組換え技術によってベクター内に取り込むことができる。
【0035】
この他、遺伝コードの縮重性のため、多くのRNA及びDNAシーケンスが指定のアミノ酸シーケンスとしてコードされている可能性がある。従って、抗体結合特性を持つポリペプチドの発現をもたらす全てのRNA及びDNAシーケンスは本発明に包括される。
【0036】
DNA組換えワクチンを構成する場合、単価或は多価に係わらず、ウィルス遺伝子のDNAシーケンスを自然界の締合や連結をしない他のDNA分子に連結することができる。必要に応じて、ウィルス遺伝子のDNAシーケンスを別のDNA分子、つまり、β-ガラクトーゼのようなフュージョン蛋白質シーケンスとしてコードされているDNAベクターに連結し、いわゆる組換え核酸分子或はDNA構成物をもたらし、適当な宿主として使用することができる。このようなベクターは、例えば、プラスミド或はバクテリオファージ・コスミド又はウィルス中に存在する核酸シーケンスから派生したものが好ましい。
【0037】
本発明の核酸シーケンスとしてクローンすることのできる特定のベクターは、いずれも従来から知られており、プラスミドやウィルス・キャリヤーをも含む。プラスミドの例としては、pBR322, pcDNA3, pVAX1, pSectag, pTracer, pDisplay, pUC系統のプラスミド(例えば、pUC7, pUC8, pUC18)、pGEM系統のプラスミド、Bluescriptプラスミド又はCMVプロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、及びβ-アクチンプロモーターを含有するその他任意のプラスミドを包括する、但しこれに限らない。好ましいプラスミドはpcDNA3である。ウィルス・キャリヤーの例としては、バクテリオファージ(例えば、λ及びM13-から派生したバクテリオファージ)、SV40、腺ウィルス(HVT)、又はポックス・ウィルス(例えば、禽痘ウィルス)を含み、但しこれに限らない。
【0038】
核酸分子組換え構成に使用する方法はいずれもこの方面の技術者が知っているものである。例えば、核酸シーケンスをクローニング・ベクターに挿入することは、遺伝子及び所要のクローニング・ベクターに同じ制限酵素を使ってカットし、これによって相補するDNA末端が産生した時、T4DNAのようなリガーゼを連結することによって容易に達成することができる。
【0039】
或は、限定部位を改質して一本鎖DNAを消化し、又は適当なDNAポリメラーゼを使用することによって任意の潜性末端に注入してブラントエンド(blunt end)を作る必要があるかもしれない。然る後、T4DNAのようなリガーゼを使ってブラントエンド連結を行えばよい。必要な場合、リンカーをDNA末端に連結して任意の限定部位を作ることもできる。これらのリンカーには、特定のオリゴヌクレオチド・シーケンスをコードした限定部位シーケンスを含むこともできる。制限酵素によってカットされたベクター及び核酸シーケンスもホモポリメリック・テイリング(homopolymeric tailing)によって改質することができる。
【0040】
本発明は二種類のDNAワクチンを提供する。第一種マルチプルDNAワクチンは、二つ若しくは更に多くの単価DNAを含み、それぞれ商業的に取得可能なプラスミド内に挿入された少なくとも一種類のポリペプチドとしてコードされたDNAシーケンスを含み、これらは例えば、マレク病ウィルス(MDV)・伝染性ファブリキュウス嚢ウィルス(IBDV)・ニューキャッスル病ウィルス(NDV)・伝染性気管支炎ウィルス(IBV)・伝染性喉気管炎ウィルス(ILTV)・禽脳脊髄炎ウィルス(AEV)・禽痘ウィルス(FPV)・禽白血病ウィルス(ALV)・禽流感ウィルス(AIV)・アヒル肝炎ウィルスB遺伝子及び出血性腸炎ウィルス(HEV)のような禽ウィルス疾病に対抗することができる。
【0041】
第二種は多価DNA組換えワクチンであり、異なるウィルス由来の二つ若しくは更に多くの遺伝子又は遺伝子断片を含む。これらの遺伝子又は遺伝子断片は、有用なベクターによって搭載される、このベクターはプラスミド又はウィルス・キャリヤーであっても良い。前記DNA組換え多価ワクチンは、少なくとも二種類のウィルス疾病に対抗できる二つ若しくは更に多くの抗原性ポリペプチドとしてコードされたMD, IBD, ND又はIBを含み但しこれに限らない保護を提供する。前記ウィルス遺伝子又は遺伝子断片は、操作によってベクターの読み取り枠へ付着させてこれらを宿主体内において発現させることができる。前記ベクターによって運ばれる異なる構造のDNAシーケンスは、終止及び始動シーケンスで分割して前記蛋白質を別々に或は単一読み取り枠の一部分として発現させることができる、従って、従来技芸中の既知の方法によってフュージョン蛋白質の形式で産生することができる。
【0042】
好ましいDNAシーケンスとしては、SEQ ID NO:1のDNAシーケンスを持つ完全なマレク病ウィルス(MDV)gB遺伝子又はその断片;SEQ ID NO:2のDNAシーケンスを持つ完全な伝染性ファブリキュウス嚢ウィルス(IBDV)VP2遺伝子若しくはその断片;SEQ ID NO:3のDNAシーケンスを持つ完全なニューキャッスル病ウィルス(NDV)HN遺伝子若しくはその断片;SEQ ID NO:4のDNAシーケンスを持つ完全な伝染性気管支炎ウィルス(IBV)S1遺伝子若しくはその断片;を含み、但しこれにかぎらない。
【0043】
MDVとしてコードされたgBポリペプチドのDNAシーケンスは、SEQ ID NO:1の核酸シーケンスを持っている。前記DNAシーケンスは3650 bpリニアDNAを含んでいる。
【0044】
IBDVとしてコードされたVP2ポリペプチドのDNAシーケンスは、SEQ ID NO:1の核酸シーケンスを持っている。前記DNAシーケンスは、IBDV のRNAモデルから逆転写した3004 bpリニアDNA分子を含んでいる。
【0045】
完全なNDVゲノムのDNAシーケンスは、15186 bpsのDNAを含み、その内、(1)塩基No.56から1792まではNPポリペプチドとしてコードされ、これはヌクレオカプシド蛋白である。 (2) 塩基No.1804-3244はPポリペプチドとしてコードされ、これはリン蛋白である。 (3) 塩基No.3256-4487はMポリペプチドとしてコードされ、これはマトリックス蛋白である。(4) 塩基No.4489-6279はFポリペプチドとしてコードされ、これはフュージョン蛋白である。(5) 塩基No.6321-8319はHNポリペプチドとしてコードされ、これはヘマグルチニン ノイラミニダーゼである。(6) 塩基No.8370-15073はLポリペプチドとしてコードされ、これは大きい重合酵素蛋白質である。NDVゲノムはSEQ ID NO:3のDNAシーケンスを持っている。
【0046】
SiポリペプチドのDNAシーケンスにはSEQ ID NO:4に示すようなIBVのRNAモデルから逆転写した1611 bpリニアDNAシーケンスを含む。
【0047】
下記の実験設計は範例としての説明であり、本発明の請求範囲を制限するものではない。本発明の範囲を逸脱せず、理性的な技術者が行うような合理的変更をなすことができる。
【0048】
I料及び方法
【0049】
(A)ウィルスとワクチン
【0050】
伝染性気管支炎ウィルス(IBV)・伝染性ファブリキュウス嚢病(IBD)及びニューキャッスル病(ND)のワクチンはIntervet Inc.から購入した。
【0051】
(B)ウィルスRNA分離とRT-PCR
【0052】
回収された減衰ワクチン(Intervet Inc.)200マイクロリットルを氷で冷やしたGTC緩衝液(4Mグアニデューム・イソチオシアネート、25Mmクエン酸ナトリュウム、pH7.0、0.5% Sarkosyl 、0.1Mメルカプトエタノール)及びソデュームアセテート(pH 4)の中で溶解した。等体積のフェノール・クロロフォルム(1:1)を加え且つかき混ぜた後氷の上に15分間放置した。遠心処理した後、水相を収集し且つ等体積のイソプロパノルでDNAを沈殿させた。4℃下にて12000rpmで20分間遠心処理してDNAを沈着させ、ペレットを作った、然る後、脱イオン水処理したジエチルピロカーボネート(DEPC)の中に懸濁させ、且つ−70℃にて貯蔵した。
【0053】
(C)オリゴヌクレオチド
【0054】
RT-PCR拡張に使用するオリゴヌクレオチド・プライマー(primer)は、全てPromegaから購入し、且つそれぞれ禽伝染性気管支炎ウィルス(Beaudette CK株)・ニューキャッスル病ウィルス(Lasota株)及び伝染性ファブリキュウス嚢病ウィルスのゲノムに基づいて設計したものである。PCRに使用した諸プライマーのシーケンスは、
IBS1F' 5' CGggatccgccgccgccATGTTGGTAACACCTCTT 3'; (SEQ ID NO:12)
IBS1R' 5' CGGAATTCTTAACGTCTAAAACGACGTGT 3'; (SEQ ID NO:13)
NDF F' 5' CGGGATCCGCCGCCGCCATGGGCTCCAGACCTTCTACC 3'; (SEQ ID NO:14)
NDF R' 5' CCGCTCGAGTTACATTTTTGTAGTGGCTCTCATT 3'; (SEQ ID NO:15)
NDHN F' 5' CGGGATCCGCCGCCGCCATGGACCGCGCCGTTAGGCAAG 3'; (SEQ ID NO:16)
NDHN R' 5' GCTCTAGATTACTCAACTAGCCAGACCTG 3'; (SEQ ID NO:17)
IBDVP2F' 5' CGGGATCCGCCGCCGCCATGACAAACCTGCAAGAT 3'; (SEQ ID NO:18)
IBDVP2R' 5' CGGAATTCTTACCTTATGGCCCGGATTAT 3'; (SEQ ID NO:19)
【0055】
(D)逆転写重合酵素連鎖反応(RT-PCR)
【0056】
IBV、NDV及びIBDV等のRNA逆転写は、42℃の2.5xTaq緩衝液(200mM NaCl, 15mM Tris-HCl, pH7.4,, 15Mm MgCl2, 15mM β-メルカプトエタノール及びdATP, dCTP, dGTP, と dTTPをそれぞれ0.25 mM)の中で30分間行った。
Taq緩衝液のほかに、反応混合物(40マイクロリットル)にもウィルスRNA、2.4 Uの禽ミエロブラスト−ジス・ウィルス(AMV)逆転写酵素(Promega)・16 UのRnasin (Promega)及び0.01 ナノモル(nmol)のリバース・プライマー(IBDVP2R, NDF F, NDHN F 又は IBS1R)が含まれる。反応混合物最後の体積は40マイクロリットルであった。逆転写した後、逆転写混合物の中に下記の薬剤を加入した:各ヌクレオチド・トリホスフェート(dATP, dCTP, dGTP, dTTP)を0.02ナノモル、フォワード・プライマー(IBDVP2F, NDF R, NDHN R m又は IBS1F)を0.01ナノモル、及び1.5 UのTaq DNA重合酵素(Strategene)。次に水を加えて100マイクロリットルの最後の体積とした。反応は、Thermal Cycler (Perkin Elmer-Cetus)の中で32サイクル進行した。一つ一つのPCRサイクルでは、94℃下における変質(denaturation)を1分間、57℃下における焼きなましを1分間、及び72℃下におけるDNAチェーン延長を2分間行った。
【0057】
(E)DNA構成物の準備
【0058】
IBDワクチン・IBDワクチンとNDVワクチンのVP2, S1, NDF及びNDHN等からそれぞれ取得した遺伝子を使用してプラスミドpCMV-VP2, pCMV-S, pCMV-NDF及びpCMV-NDHNを構成し、市販のプラスミドpcDNA3(Invitrogen, U.S.A.)の下流に放置した。制限酵素BamH1, EcoR1, Xbal及びXholを使用して全ての遺伝子をpcDNA3ベクター内に挿入した(プライマー・シーケンス中のアンダーラインされたアルファベット)。pcDNA3ベクター内にある全ての遺伝子シーケンスは二方向シーケンシングによって検証した。
【0059】
(F)DNA及びDNAライブラリーの準備
【0060】
アフィニティークロマグラフィー(Qiagen. Inc.)によって純化されたプラスミドDNAの量は、260及び280ナノメーターの吸光光度分析計で測定した。各100マイクログラム分量のDNAを100マイクロリットルのPBS中(0.14 M NaCl, 10Mm燐酸ナトリュウム、Ph7.4)に懸濁した。DNAライブラリーに対しては、20号1及び1/2インチ針の1cc注射器を使用した。卵中組に対しては、一つ一つの卵の大きい端から針で気泡を貫通して0.1マイクロリットルのDNAワクチン(各100マイクログラム)を胚胎内(鶏小屋トレイから取った生後18日の受精且つ発育中の卵)に注射した。次にこれらの卵を孵化場へ移し、且つ彼らが約21日目に孵化するまでそこに置いた。IM(筋肉内)組に対しては、全てのワクチン(1/5分量の生ワクチン)は孵化後10日目に鶏の胸肉内に注射した。
【0061】
II.実験設計
【0062】
特定の無病原(SPF)受精卵(n=60)をランダムに12組に分けた。全ての組の全ての卵(一組5個)にそれぞれ100マイクロリットルの体積を与えた。A組の一つ一つの卵に100マイクログラムのpCMV-NDV+100マイクログラムのpCMV-NDHN混合物を注射し、B組の一つ一つの卵に100マイクログラムのpCMV-S1を注射し、C組の一つ一つの卵に100マイクログラムのpCMV-VP2を注射し、D組の一つ一つの卵に100マイクログラムのpCMV-NDF+100マイクログラムのpCMV-NDHN+100マイクログラムのpCMV-S1(ND+IB)を注射し、E組の一つ一つの卵に100マイクログラムのpCMV-NDF+100マイクログラムのpCMV-NDHN+100マイクログラムのpCMV-VP2(ND+IBD)を注射し、F組の一つ一つの卵に100マイクログラムのpCMV-VP2+100マイクログラムのpCMV-VP2混合物(ND+IBD)を注射し、G組の一つ一つの卵に100マイクログラムのpCMV-NDF+100マイクログラムのpCMV-NDHN+100マイクログラムのpCMV-S1+100マイクログラムのpCMV-VP2(ND+IB+IBD)を注射し、対照組としてのH組の一つ一つの卵に1分量の市販卵内ワクチン(Embrex, Inc.)を注射し、I, J, K及びL組の一つ一つの卵に100マイクロリットルのPBSを注射した。この実験の中の全ての鶏は、全て孵化後10日目に鶏の胸肉内に100マイクロリットルの体積(1/5分量の生ワクチン)を注射した。A及びI組中の鶏に対しては、NDVワクチン注射を使用、B及びJ組に対しては、IBVワクチン注射を使用、C及びK組に対しては、IBDVワクチン注射を使用、D組に対しては、NDV+IBワクチン混合物注射を使用、E組に対しては、NDV+IBDワクチン混合物注射を使用、F組に対しては、IB+IBDワクチン混合物注射を使用、且つG及びL組に対しては、NDV, IB 及びIBDワクチン混合物注射を使用した。
【0063】
III.血清型の検知
【0064】
孵化後10日目(同時に低分量の生ワクチン注射を使用)、17日目・24日目及び31日目に全ての血清サンプルを収集した。抗体力価は、IDEXX Laboratories, Inc.から購入したIB, IBD, 及びNDV抗体検査キットでELISA検査を行った。全てのサンプルは二重に検査された。検定する前に、サンプル希釈剤を使って検査サンプルを500倍(1:500)に希釈した。キットのマニュアルに基づいて検査手順を踏んだ。検定を正確にするため、測定と共に650ナノメーターにおける吸光度値A(650)を記録した。未知のサンプル中の相対的抗体の含有量はサンプルの陽性サンプル(S/P)比例を計算して測定したものである。終点の力価は、公式:Log10力価 = 1.09(Log10S/P)+ 3.36を使って算出した。
【0065】
結果
【0066】
表1に示すように、実験結果、アンチIBD抗体に対する検査は、IBDV組換え抗原VP2を示し、且つ原刺激の作用があることを証明した。低分量のワクチンを追加すると、力価は速やかに増加した。孵化後17日目で(つまり、IM注射後7日で)、C, E, F 及びG等の組では、力価が明らかにKやL組の力価より高かった。最も重要なことは、IBDV抗原の発現はその他の単価DNAワクチン(NDVとIBV)に干渉されることがないことである。IB及びNDV DNAワクチンについても同様の結果が出た。孵化後17日目で、B, D, F及びG等の組の力価はずべてJ及びL組の力価より高かった(表2)。且つ孵化後17日目で、A, D, E 及びG等の組の力価は全てI及びL組の力価より高かった(表3)。ただ一つ予想外な結果は、アンチNDV力価は三価DNAワクチンでは高度に誘導できないことである(表3、G組)、しかしながら、アンチIBD及びアンチIBでは、それができる(表1及び2、G組)。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNA構成物の各構成物に二つ若しくは更に多くのDNA分子を含み、前記各DNA分子は、それぞれ家禽の中で禽ウィルス疾病を引き起こす禽ウィルスの抗原蛋白を発現し、前記禽ウィルスの抗原蛋白は禽ウィルス疾病に対抗する保護的免疫反応を誘導することが出来ることを特徴とする前記卵中の注射に使用する多価DNAワクチン。
【請求項2】
前記DNA分子は、マレク病ウィルス(MDV)・伝染性ファブリキュウス嚢ウィルス(IBDV)・ニューキャッスル病ウィルス(NDV)・伝染性気管支炎ウィルス(IBV)・伝染性喉気管炎ウィルス(ILTV)・禽脳脊髄炎ウィルス(AEV)・禽白血病ウィルス(ALV)・禽痘ウィルス(FPV)・禽パラミソウィルス(APV)・アヒル肝炎ウィルス(DHV)・及び出血性腸炎ウィルス(HEV)によって構成されたグループの中から選ばれた遺伝子若しくはその断片であることを特徴とする請求項1に記載の多価DNAワクチン。
【請求項3】
前記DNA構成物には、更にプラスミド又はウィルス・キャリヤーが含まれることを特徴とする請求項1に記載の多価DNAワクチン。
【請求項4】
前記プラスミドは、pcDNA3、pVAX1、pSectag、pTracer、pDisplay、Puc系統のプラスミド(例えば、pUC7、pUC8、pUC18)、及びpGEM系統プラスミドによって構成されたグループの中から選ばれたことを特徴とする請求項3に記載の多価DNAワクチン。
【請求項5】
前記プラスミドには、CMVプロモーター・SV40プロモーター・RSVプロモーター及びβ-アクチンプロモーターによって構成されたグループの中から選ばれたプラスミドを含むことを特徴とする請求項3に記載の多価DNAワクチン。
【請求項6】
前記ウィルス・キャリヤーは、バクロウィルス・疱疹ウィルス及び痘ウィルスによって構成されたグループの中から選ばれたことを特徴とする請求項3に記載のマルチプルDNAワクチン。
【請求項7】
多価DNAワクチンを前記禽卵中に注射する方法を含む請求項1に記載の禽卵中にワクチンを接種する方法。

【公開番号】特開2009−203242(P2009−203242A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144188(P2009−144188)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【分割の表示】特願2003−574119(P2003−574119)の分割
【原出願日】平成15年3月6日(2003.3.6)
【出願人】(504337752)シュウエイツゥアー ケミカル コーポレーション ユーエスエー (1)
【氏名又は名称原語表記】SCHWEITZER CHEMICAL CORPORATION USA
【Fターム(参考)】