説明

インプラント受容体

【課題】交換しやすく、力の発生をうまく処理するような歯科インプラントのための受容体を提供する。
【解決手段】本発明は、中心軸(Z)に対して垂直に延び、安定位置に歯科インプラントを取り外し可能に固定するように設計された第1プレート(3)と第2プレート(6)を備え、前記プレート(3、6)は開口部(5)によって分離されている、歯科インプラント受容体(1)に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプラントのための受容体、特に、ネジ又は円筒形状のインプラントのための受容体に関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなインプラントは、例えば、歯科技術では既に公知で、ネジとほぼ同様な構成であり、ネジの先端領域は、骨、及び、義歯を保持するのに適した頭頂領域に挿入される。また、歯科手術では、インプラントに留められる受容体の他の実施形態が公知であり、あるものはインプラントを固定し、他のものは保持体から無菌状態で取り外すことが可能である。また、それらは共に、外科的介入まで、インプラントが手等の無菌でない手段に接触しないことを確かなものにする。本願の関連分野では、例えば、必要とされる無菌状態での取扱いという理由のために、インプラントが少なくとも直接手に触れることがなく、インプラントを確実に把持することが必要とされている。
【0003】
そのような受容体の機能は、インプラントを安全に搬送し、保管のための無菌装備を提供することである。無菌状態下で行われる外科的介入の最中にインプラントを移すために、インプラントを受容体から取り外す。一般に、受容体は、例えば、インプラントに使用される工具によってインプラントに留めた保持体を有する(次のように、インプラントと、そこに取り付けた保持体との連結は、簡素化のためのインプラント組立体と言われている。)。インプラントは、準備された患者のインプラント部位にほぼ配置され、保持体が取り外される。さらなる保護のため、インプラントのときまで、第2の保護体に受容体を保管するのは常識でもある。
【0004】
特許文献1により、カプセルに挿入するための円筒状のアンプルが公知であり、そのアンプルはインプラントを受容するのに適している。アンプルは、平行に開口する凹部を設けた表面領域を有する。この凹部は、インプラントと、このインプラントに連結された保持体とからなるインプラント組立体を挿入するために使用される。インプラント組立体は、開口を介して押圧することによりアンプルの首部に固定される。しっかりと固定するため、インプラントを硬質構造のアンプルと共に圧入する際、十分な圧力を作用させなければならない。その結果、発生する力が拡大溝と円筒面に沿って広がるので、構成材料が多大な圧力を受ける。圧力があまりに大きい場合、表面にクラックが形成される恐れがある。クラックは、首部内での把持効果を削減あるいは相殺すらする。さらに、硬質構造のため、相対的に狭くて円筒面がさらに拡大を阻止するような拡張溝の領域内でのみ拡張可能であるので、凹部が小さな開口のみを有するならば、大きな力を作用させることによってのみ挿入可能である。しかしながら、凹部の開口角度を拡大することにより、良好な把持行為で歯科インプラントの挿入を容易にする。このため、インプラントは容易に凹部からスライド移動し、無菌表面に接触することが可能である。悪いことに、インプラントは、例えば、作業テーブルから床に落下すれば、損傷する可能性もある。また、アンプルの表面は、相対的に小さな断面を有し、インプラントと首部の内部との間の全保持力がこの狭い領域に制限され、保持力又は引張力は、インプラントがホルダから取り外されると、それぞれ圧力又は圧縮によって結果的に増大する。これにより、インプラントの保持力が増大し、取り外し工程が制御困難となる。
【0005】
また、長時間に亘る保管により、把持領域での把持力が弱くなり、最悪の場合、インプラントに十分な保持力を維持できなくなる。そして、インプラントがアンプル内で揺動する結果、アンプルに接触することにより損傷する。
【0006】
さらに、円筒アンプルは、挿入されれば、ある範囲内で軸の周囲を移動し、把持を困難なものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開98/55039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
歯科インプラントを受容するための従来の装置の前述の欠点を考慮して、本発明の目的は、歯科インプラント組立品を適切な位置に確実に固定し、歯科インプラント組立品を受容体に配置する際、より交換しやすく、力の発生をうまく処理するような歯科インプラントのための受容体を提供することである。さらに、取扱いがより簡単で安全な上、既存の技術で経済的に製造することが可能である。
【0009】
本発明の他の目的は、改良された安定性及び力の転換を備え、前述の欠点を回避する歯科インプラントのための受容体を提供することである。
【0010】
この目的の範囲内において、本発明の他の目的は、表面で滑ることからより適切に防止する歯科インプラントのための受容体を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、受容体を、より簡単に、かつ、より安全に取り扱うことができることである。
【0012】
本発明の他の目的は、受容体を簡単かつ公知の方法で安価に製造できることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的は、後述する詳細な説明で理解され、請求項1に係る歯科インプラントのための受容体によって実現される。本発明の他の有利な実施形態は、従属項の対象である。
【0014】
本発明に係る略円筒形の受容体の構造的な特徴は、受容体を保持する頭部が本体の近傍で分離しているため、ホルダーから歯科インプラントを、この目的のために設けた開口を介して取り除く間、発生させる力は効果的に分散されるか、あるいは、完全に除去される点にある。略正方形の本体部は、歯科インプラントの挿入を容易とするために開口側面を設けるのが有効である。さらに、頭部は、歯科インプラントに圧着接続に適した第1表面と、歯科インプラントが本体部の内壁に接触することを防止する第2表面とを備える。
さらに、受容体の一方の側面には、作業テーブル等の平面に安定した位置を確保する平面が設けられている。好ましい実施形態では、受容体は、その本体部に多数の補強リブを備え、それらは一方では外壁を補強し、他方ではより適切な把持を保証する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る歯科インプラントのための受容体の側面図である。
【図2】図1の歯科インプラントのための受容体の正面図である。
【図3】図1の歯科インプラントのための受容体を、A−A線に沿って矢印方向から見た縦断面図である。
【図4】図1の歯科インプラントのための受容体を、B−B線に沿って矢印方向から見た縦断面図である。
【図5】図1の歯科インプラントのための受容体を、F−F線に沿って矢印方向から見た断面図である。
【図6】図1の歯科インプラントのための受容体を、D−D線に沿って矢印方向から見た断面図である。
【図7】図1の歯科インプラントのための受容体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0017】
図1から図7には、本発明の好ましい実施形態に係る歯科インプラントのための受容体が記載されている。この受容体は、略円筒形の基部、歯科インプラントを囲む本体部、及び、2つの板で形成された可撓性頭部からなる。頭部は、歯科インプラントを受容するための把持装置を備える。把持装置は、歯科インプラントを所定位置に取り外し可能に把持して固定するのに適している。
【0018】
図1は、歯科インプラントのための受容体1、すなわち、基本的に3つの部位を備えた受容体1を示す。頭部を形成する第1部位は、略C形状の前方平面2からなり、それは、前述のように、歯科インプラント(図示せず)を所定位置に固定するのに適した第1プレート3を備える。第1プレート3は、隣接する第1肩部4によって囲まれた開口部5を調整し、その下方の第2肩部4´は、第2プレート6に隣接する。開口部5は、顎形状で、プレート3、6の各端部の開口側から受容体1の中心軸Zに延び、中心軸Zでの開口幅は外側よりも小さいのが好ましい。顎状部(開口部)5は、プレート3、6を機械的に非連結状態とし、第1プレート3を本体7から分離する。
【0019】
顎状部5が設けられていない側には、前方平面2の外縁から平面状頭部16に向かう面取部17が設けられ、面状頭部16は面状頭部縁15に隣接し、頭部16と受容体1の本体7の双方に隣接する。第2プレート6の一部は顎状(開口)部5と、第2肩部4´の双方にそれぞれ隣接し、略平面状である。第2プレート6の一部は、顎状部5の下方に位置し、本体7によって形成される第2部位に隣接し、対称に配置した多数の補強リブ8を備える。これらは本体7の表面から突出し、互いに等距離に配置されるのが好ましい。好ましい実施形態では、これら補強リブ8は縦長形状である。底面9は、第2プレート6に対して反対側に位置する本体7の縁部に隣接し、ほぼ対称な円形であり、そこには本体7が直交している。第3部位は、底面8と底部11の間に固定された周縁部10を備え、底部11は、片側で、表面に配置するのに適した起立領域12へと変形されている。底縁14と起立領域12の間に形成した底部13は平面であるのが好ましい。底縁14も平面で、底部13に隣接する。頭縁15と底縁14の平面構造のため、受容体1を表面に安定して位置させ、転がることを阻止し、容易に把持することが可能である。
【0020】
図2は、受容体1のさらなる特徴を示し、第1貫通孔23と第2貫通孔24が第1プレート3の中央部に配置されている。直近の好ましい実施形態では直径の違いは必須ではないが、第2貫通孔24は、第1貫通孔23よりも直径が小さいのが好ましい。第1貫通孔23及び第2貫通孔24は、図7にも示すように、1箇所で開口溝39によって互いに連通されている。第1貫通孔23は、図7に示すように、第1プレート3の開口40に隣接する。さらに、図2に示すように、第1長尺孔18及び第2長尺孔19が本体7に形成されている。
【0021】
図3及び図4は、受容体1のさらなる特徴を示し、第1プレート3の一部が、外縁から受容体1のほぼ中心軸Zまで延びる面取脚部22を備える。面取脚部22により、歯科インプラントを容易に挿入することができる。さらに、歯科インプラントが圧入されると、第1プレート3は、歯科インプラントが第1貫通孔23の所定位置に固定され、そこで保持されるまで、第2プレート6に対して、受容体1の中心軸Zに対して垂直方向に弾性変形可能であり、上述のように、顎状部5の第1間隙36と第2間隙37により、本体7と第2プレート6から機械的に非連結となる。また、反対側の面取部17は、弾性を有するのがよい。第1補強部20と第2補強部21は、歯科インプラントのための受容体が押圧されたときに生成される張力に抗する構造を強化するために使用される。第1切欠部34と第2切欠部35は、円錐形とすることができ、第1プレート3に対称に配置され、第1貫通孔23に隣接する。第2貫通孔24は歯科インプラントが第1プレート3の開口40を介して押圧されるときに力を分散させるのに適しており、第1プレート3は中心軸Zに垂直な方向に弾性的に伸長可能である。受容体が射出成形にて製造されるならば、切欠部の円錐形状は機械加工の理由として特に好ましい。前述のように、第2貫通孔24は、拡張貫通孔として使用され、歯科インプラントが圧入される際に拡張可能となるように第1貫通孔23よりも直径が小さく、溝39によって第1貫通孔23に連通されている。第1プレート3の弾性変形により、第1貫通孔23内に歯科インプラントを確実に固定する、保持及びスナップイン接続の両方が有効となる。
【0022】
図5及び図6は、受容体1の頭部を示し、図5は、開口40(図7参照)の一部に、歯科インプラントの挿入を容易にするために使用する第1面取部26及び第2面取部27を備えた領域41を示す。第1及び第2面取部のなす角度は、80度から120度の範囲内であるのが好ましい。領域41は、面取部26、27の全断面を含み、図6に示すU状部32を形成するために硬質である。U状部32の内面は、例えば、搬送中に本体7の内壁への接触を防止するため、歯科インプラントを安定位置に保持する停止部33を形成する。開口40の一部には、底面9(図1)がU状部32とほぼ同じ幅を有する環状部25を備え、その中心では、底面が第1及び第2貫通孔23、24よりも大きな直径を有する第3貫通孔42を備える。
【0023】
図7は、第1貫通孔23が第3貫通孔42と同一直線上に配置されたことを示す。開口40の領域内には、第1切欠部34と第2切欠部35がほぼ平行に延び、第1貫通孔23及び第2貫通孔24の近傍で、第2貫通孔24の中心方向に若干湾曲している。
受容体1は、従来の工程、例えば、一体成型で製造することができ、弾性樹脂材料で構成するのが好ましい。
【符号の説明】
【0024】
1…受容体
2…前方面
3…第1プレート
4…第1肩部
4´…第2肩部
5…顎状部
6…第2プレート
7…本体
8…補強リブ
9…底面
10…周縁
11…底部
12…起立領域
13…平面底部
14…底縁
15…頭縁
16…平面
17…面取部
18…第1長尺孔
19…第2長尺孔
20…第1突出部
21…第2突出部
22…面取脚部
23…第1貫通孔
24…第2貫通孔
25…環状部
26…第1面取部
27…第2面取部
28…第1挿入縁
29…第2挿入縁
30…第1ガイドレール
31…第2ガイドレール
32…停止部
33…U状部
34…第1切欠部
35…第2切欠部
36…第1間隙
37…第2間隙
38…円筒状内壁
39…溝
40…開口
41…領域
42…第3貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1プレート(3)と、中心軸(Z)に対して垂直に延びる第2プレート(6)とを備え、安定位置に取り外し可能に固定されるように形成され、前記プレート(3、6)は開口部(5)によって分離されている歯科インプラントのための受容体(1)であって、
前記開口部(5)は、前記中心軸(Z)に対してほぼ前記プレート(3、6)の各端から延び、
前記第1プレート(3)は開口(40)に歯科インプラントを把持することを保証するために弾性的に形成され、
前記第2プレート(6)は、挿入された歯科インプラントの位置を安定させるように形成されたU字状の停止部(32)を備えたことを特徴とする歯科インプラント受容体。
【請求項2】
前記開口部(5)は、顎状に形成され、その幅が前記プレート(3、6)の各端から減少することを特徴とする請求項1に記載の歯科インプラント受容体(1)。
【請求項3】
前記第2プレート(6)は、非樹脂製で、歯科インプラントのためのガイドが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科インプラント受容体(1)。
【請求項4】
前記第1プレート(3)は、中心軸(Z)方向に弾性変形可能であることを特徴とする請求項3に記載の歯科インプラント受容体(1)。
【請求項5】
前記第1プレート(3)は、中心軸(Z)方向に垂直方向に弾性変形可能であることを特徴とする請求項3又は4に記載の歯科インプラント受容体(1)。
【請求項6】
前記第1プレート(3)は、第1貫通孔(23)と、開口(40)に隣接する第2貫通孔(24)とを備え、前記第2貫通孔(24)は、前記第1貫通孔(23)よりも小さな直径を有し、前記貫通孔(23、24)は、溝(39)によって連通していることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の歯科インプラント受容体(1)。
【請求項7】
前記第1プレート(3)は、開口(40)の周囲に対称に配置された切欠部(34、35)を有することを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の歯科インプラント受容体(1)。
【請求項8】
前記第2プレート(6)に隣接する本体(7)を有し、前記本体(7)は、多数の把持体/補強体(8)を備えたことを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の受容体(1)。
【請求項9】
前記本体(7)は、略正方形の断面を有することを特徴とする請求項11に記載の歯科インプラント受容体(1)。
【請求項10】
弾性変形可能な樹脂材料からなることを特徴とする前記請求項のいずれか1項に記載の歯科インプラント受容体(1)。
【請求項11】
第1プレート(3)と、中心軸(Z)に垂直に延びる第2プレート(6)とを有し、安定位置に取り外し可能に歯科インプラントを固定するように形成され、前記プレート(3、6)は開口部(5)によって分離されていることを特徴とする歯科インプラント受容体(1)。
【請求項12】
前記開口部(5)は、前記各プレート(3、6)の一端からほぼ中心軸(Z)まで延びていることを特徴とする請求項11に記載の歯科インプラント受容体(1)。
【請求項13】
前記開口部(5)は、顎状に形成され、その幅が前記プレート(3、6)の各端から徐々に減少していることを特徴とする請求項11又は12に記載の歯科インプラント受容体(1)。
【請求項14】
前記第1プレート(3)は、開口部(40)から挿入された歯科インプラントの間での把持を保証するために弾性的に形成され、前記第2プレート(6)は、非弾性に形成され、歯科インプラントのためのガイドを備えたことを特徴とする請求項11から13のいずれか1項に記載の歯科インプラント受容体(1)。
【請求項15】
前記第2プレート(6)は、挿入された歯科インプラントの位置を安定させるために形成した停止部(32)を備え、前記停止部(32)は略U状であることを特徴とする請求項11から14のいずれか1項に記載の歯科インプラント受容体(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−528742(P2010−528742A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510801(P2010−510801)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056997
【国際公開番号】WO2008/148843
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(505104836)シュトラウマン・ホールディング・アクチェンゲゼルシャフト (18)
【氏名又は名称原語表記】STRAUMANN HOLDING AG
【Fターム(参考)】