説明

ウインチの制動装置

【課題】動油圧式のブレーキ装置において、ブレーキ力をオペレータに伝達する。
【解決手段】油圧源22から制御弁17を介して導かれる動油圧により駆動し、ウインチドラム1に制動力を付与するシリンダ部材12と、制御弁17を操作する操作部材19と、操作部材19の操作量の増加に伴い操作反力を増加させる反力付与手段20と、シリンダ部材12の駆動を操作部材19に伝達し、シリンダ部材12の駆動に伴い操作部材19を操作させる伝達機構18,23とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン等に装備されるウインチの制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンなどの作業機に搭載されるウインチの制動装置は、吊荷を正確かつ確実に停止させるために大きな制動力が必要とされ、ブレーキペダルなどの操作部材を用い、比較的小さい操作力、操作量で大きな制動力を得ることが望ましい。これを実現する手段としていわゆる動油圧式の制動装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1記載の装置は、操作部材の操作により制御弁を駆動し、この制御弁を介して供給される油圧ポンプからの圧油(動油圧)により制動力を発生させるものである。この方式の制動装置は、現在自動車等に多く採用されているマスタシリンダを用いた単純な油圧倍力機構を有する静油圧式の制動装置に比べ、発生させるブレーキ力に対する操作力、操作量を小さくすることができる。
【0003】
【特許文献1】特開平9−216793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の制動装置では、制御弁の操作反力がブレーキペダルに作用するだけであり、制御弁の駆動によるブレーキ力は操作反力として作用しない。そのため、オペレータはブレーキの効き具合を把握することが難しく、目標とするブレーキ力の調整が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるウインチの制動装置は、油圧源から制御弁を介して導かれる動油圧により駆動し、ウインチドラムに制動力を付与するシリンダ部材と、制御弁を操作する操作部材と、操作部材の操作量の増加に伴い操作反力を増加させる反力付与手段と、シリンダ部材の駆動を操作部材に伝達し、該シリンダ部材の駆動に伴い操作部材を操作させる伝達機構とを備えることを特徴とする。
伝達機構は、操作部材に連結され、制御弁に作用するパイロット圧を発生する油圧シリンダと、シリンダ部材の駆動を油圧シリンダに伝達する伝達経路とを有することが好ましい。
制御弁からの動油圧に対抗してシリンダ部材を付勢し、この付勢力によってウインチドラムを制動する付勢部材を設ることもできる。
また、本発明によるウインチの制動装置は、ブレーキペダルで操作されるマスタシリンダと、ブレーキペダルに対し操作量の増加に伴い増加するような操作反力を付与する反力付与手段と、マスタシリンダから出力される静油圧によって操作され、その静油圧に応じた動油圧を出力するブレーキ制御弁と、ブレーキ制御弁から出力される動油圧により駆動され、ウインチドラムのブレーキ力を制御するブレーキシリンダ装置と、ブレーキシリンダ装置の駆動をブレーキペダルの操作反力にフィードバックするフィードバック手段とを備えることを特徴とする。
ウインチドラムにブレーキ力を付与し始めるまでは、ブレーキペダルの操作反力が操作量に比例し、ウインチドラムにブレーキ力が付与されると、ブレーキペダルの操作反力が無限大となるようにブレーキシリンダ装置の駆動に応じてマスタシリンダの圧力室の容積を変化させることもできる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、シリンダ部材の駆動によりウインチドラムに制動力を付与するとともに、シリンダ部材の駆動量に応じて操作部材を操作させるようにしたので、オペレータにブレーキ力を体感させることができ、ブレーキ力の調整が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
−第1の実施の形態−
以下、図1〜6を参照して本発明によるウインチの制動装置の第1の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る制動装置の構成を示す油圧回路図である。油圧モータ2には図示しない油圧ポンプから駆動圧油が供給され、油圧モータ2の回転はサンギア4、プラネタリギア5、リングギア6からなる遊星減速機構を介してウインチドラム1に伝達される。プラネタリギア5はキャリア7によって支持され、キャリア軸8はブレーキケース11の側壁を貫通してケース11内に達している。油圧モータ2には、モータ出力軸の回転を制動するモータ多板ブレーキ3が装備されている。油圧モータ2の回転が停止した状態で、キャリア軸8の回転を停止すると、ウインチドラム1が制動される。
【0008】
制動装置は、湿式多板ブレーキ100と、湿式多板ブレーキ100にブレーキ制御圧を供給するブレーキ回路101と、作業員が制動指令を入力するブレーキペダル19とを有する。
【0009】
湿式多板ブレーキ100は、ブレーキケース11内に収容された複数枚のインナディスク9、複数枚のアウタディスク10、ブレーキディスク12、およびばね15等により概略構成される。インナディスク9は、スプライン結合によりキャリア軸8に軸方向に移動可能に係合され、インナディスク9とキャリア軸8は一体に回転可能となっている。アウタディスク10は、スプライン結合によりブレーキケース11の内周面に軸方向に移動可能に係合されている。
【0010】
アウタディスク10とインナディスク9は軸方向に交互に配置され、最外部のアウタディスク10の側方にブレーキディスク12が配置されている。ブレーキディスク12とブレーキケース11の間にはばね15が配置されている。ブレーキディスク12にはディスク9,10の反対側端部にストローク検出部12aが設けられ、ストローク検出部12aとブレーキケース11の間に油室16が形成されている。
【0011】
ブレーキディスク12には常にディスク9,10同士を圧接するようなばね15の付勢力が作用し、ブレーキケース11内ではブレーキディスク12と油室14とばね15とにより、ブレーキディスク12をピストンとするブレーキシリンダが形成されている。油室14に油圧力が作用していない状態では、ブレーキディスク12はばね15の付勢力により図示A方向に押動される。これによりインナディスク9の表面に摩擦力が作用し、インナディスク9の回転が阻止される。
【0012】
一方、ブレーキ回路101から油室14に圧油が供給されると、ブレーキディスク12にはばね15の付勢力に対抗した油圧力(ブレーキ解除圧)が作用し、ブレーキディスク12はストッパ13に当接するまで図示B方向に押動される。これによりディスク9,10同士の圧接力が除去され、インナディスク9が回転可能となる。このときブレーキディスク12の押動に伴いストローク検出部12aがストロークし、油室16の容積が変化する。なお、ブレーキケース内11には図示しない給油孔および排油孔を介して冷却油が循環され、ディスク9,10が冷却される。
【0013】
ブレーキ回路101は、パイロットポンプ22とブレーキ制御弁(パイロット式減圧弁)17と電磁切換弁21を互いに直列に接続して構成される。ブレーキ制御弁17にはブレーキペダル19の操作量に応じたパイロット圧が供給され、パイロット圧の増加に伴いブレーキ制御弁通過後の二次圧(ブレーキ解除圧)が小さくなる。電磁切換弁21は図示しないフリーフォールスイッチの操作により切り換えられ、フリーフォールスイッチがオンすると位置aに、オフすると位置bに切り換わる。電磁切換弁21が位置aに切り換わった状態では、パイロットポンプ22から油室14に圧油(動油圧)が供給可能となり、位置bに切り換わった状態では、油室14に常にタンク圧が作用する。
【0014】
ブレーキペダル19は回動軸19aを支点に回動可能に設けられ、ブレーキペダル19には復帰ばね20が接続されている。復帰ばね20からはブレーキペダル19の踏み込み操作に対抗したばね力(操作反力)が作用し、ブレーキペダル19の非操作時にブレーキペダル19を初期位置に復帰させる。
【0015】
ブレーキペダル19にはリンク19bを介してマスタシリンダ18のピストンが接続されている。このピストンはブレーキペダル19と一体にストロークし、マスタシリンダ18のボトム室18a内の油圧力がブレーキ制御弁17のパイロットポートに作用する。ボトム室18aは管路23を介してブレーキケース11内の油室16に連通している。このため油室16の容積が増加すると、その分だけボトム室18aの容積が減少し、ブレーキペダル19が踏み込み方向にストロークする。
【0016】
第1の実施の形態の主要な動作を説明する。
(1)フリーフォールスイッチオフ
フリーフォールスイッチがオフのときは、電磁切換弁21は位置bに切り換えられ、ブレーキケース11内の油室14はタンクに連通する。この状態では油室14にパイロットポンプ22からのブレーキ解除圧が作用しないため、ブレーキディスク12はばね15の付勢力によりディスク9,10側に押動される。これによりアウタディスク10とインナディスク9が互いに圧接され、インナディスク9の回転が阻止されて、ブレーキ作動状態となる。
【0017】
このようにして制動装置が作動すると、キャリア軸8の回転が阻止され、油圧モータ2の回転はサンギア4、プラネタリギア5、リングギア6を介してウインチドラム1に伝達可能となる。ここで、図示しない操作レバーを操作して図示しない油圧ポンプから油圧モータ2へ圧油を供給すると、油圧モータ2が回転してウインチドラム1が巻上または巻下駆動され、吊り荷を昇降することができる。この場合、油圧モータ2の回転は、モータ多板ブレーキ3により停止することができる。
【0018】
(2)フリーフォールスイッチオン
油圧モータ2の回転を停止し、吊り荷を空中で保持した状態でフリーフォールスイッチをオン操作すると、電磁切換弁21が位置aに切り換えられる。これにより図2に示すようにパイロットポンプ22からの圧油がブレーキ制御弁17、電磁切換弁21を介して油室14に作用する。このため、パイロットポンプ22からの油圧力(ブレーキ解除圧)によりブレーキディスク12はストッパ13に当接するまで押動され、ばね15が縮退する。その結果、ディスク9,10に作用する圧接力が除去され、インナディスク9は回転可能となって、ブレーキ解除状態となる。このように制動装置が解除された状態では、キャリア軸8の回転が許容され、ウインチドラム1は吊り荷の負荷によって自由回転状態となり、吊り荷をフリーフォールすることができる。
【0019】
フリーフォール時に、復帰ばね20のばね力に抗してブレーキペダル19を踏み込み操作すると、その操作力(ペダル踏力)に応じたパイロット圧(静油圧)がマスタシリンダ18を介しブレーキ制御弁17のパイロットポートに作用する。これによりパイロットポンプ22からの圧油がブレーキ制御弁17で減圧され、油室14に作用する油圧力が減少する。油圧力によるブレーキディスク12を押し付ける力がばね15の付勢力よりも小さくなると、図3に示すようにブレーキディスク12がディスク9,10側に押動される。
【0020】
このときストローク検出部12aがブレーキディスク12と一体に移動し、油室16内の容積が増加する。このため、マスタシリンダ18のボトム室18a内の圧油が油室16に導かれ、ブレーキペダル19が踏み込み方向にストロークする。ブレーキペダル19は、図4に示すようにディスク9,10が密着してブレーキディスク12の移動が停止するまでストロークし、この間はブレーキ力は発生しない。
【0021】
ディスク9,10が密着した状態からさらにブレーキペダル19を踏み込むと、ペダル踏力が増加し、ブレーキ制御弁17に作用するパイロット圧も増加する。このため、ペダル踏力に応じて油室14に作用する油圧力が減少し、ブレーキディスク12からディスク9,10に押し付け力が作用し、ブレーキ力が発生する。ブレーキ力が発生している状態では、理論的にはブレーキディスク12はストロークせず、その押し付け力の強弱のみによってブレーキ力が決定される。したがって、油室16の容積が変化しないため、ブレーキペダル19もストロークせず、ペダル踏力の強弱のみで操作を行う。
【0022】
上述した制動装置の動作を、実際の現象を加味してより具体的に説明する。
図5は、ブレーキディスク12のストローク(ピストンストローク)と油室14に作用するブレーキ制御弁17の二次圧(ブレーキ解除圧)との関係を示す動作特性図であり、図6は、ブレーキペダル19のストローク(ペダルストローク)とペダル踏力との関係を示す動作特性図である。図中、ペダルストロークはペダル踏み込み方向を+で、ピストンストロークはブレーキディスク12がディスク9,10を押し付ける方向を+で示している。また、実線は理論的な特性を、破線は実際の特性を示している。なお、ブレーキケース11内には冷却油が供給されるが、この冷却油によるひきずり抵抗を軽減するために、ブレーキディスク12とディスク9,10との間には初期状態(ブレーキ完全解除状態)で隙間が設けられており、図5のS1がこの隙間に相当する。
【0023】
図5において、理論的には二次圧が最大値から所定値Pに至るまでは、実線(実線)で示すように二次圧の減少に伴いブレーキディスク12がディスク9,10側に一定の割合でストロークする。二次圧が所定値Pになると、ブレーキディスク12のストローク量はS1になり、ディスク9,10が密着する。二次圧が所定値P以下の領域ではブレーキディスク12はストロークせず、この領域における二次圧とばね15の付勢力との差分がディスク9,10を押し付ける力、つまりブレーキ力として出力される。
【0024】
しかし、実際にはブレーキディスク12はS1まで直線に沿ってストロークする訳でなく、破線に示すようにストローク量がS1に近づくと、二次圧の減少に対しストローク量が小さくなる。これは、ディスク9,10間に介在した冷却油がディスク9,10の表面に油膜を形成し、この油膜による抵抗力がディスク9,10が密着する際に増加するために起こる現象である。この抵抗力はウインチドラム1の回転制動力としても働くので、実際にブレーキ力が発生する地点はストロークがS1’の変極点である。ストロークがS1’に達した後も、二次圧の減少に伴い二次曲線的にストローク量が増加し、最終的にストローク量はS2(>S1)になる。これは、大きな押し付け力によりディスク9,10,12等が厚さ方向に弾性変形し、その変形によって発生するストロークである。
【0025】
本実施の形態では、ブレーキディスク12のストロークとブレーキペダル19のストロークは正比例の関係にあり、ブレーキ制御弁17の二次圧とペダル踏力は逆比例の関係にあるので、図5の関係からペダルストロークに対するペダル踏力の関係は図6に示すようになる。すなわち図6の特性は、理論的には実線に示すようにディスク9,10が密着状態に至るまでペダルストロークとペダル踏力が比例的に増加するストロークがS3までの領域と、密着状態においてペダル踏力のみが増加する領域とによって表される。しかし、冷却油の抵抗力とディスクの弾性変形を考慮した実際の特性は、破線で示すようにペダルストロークがS3に近づくと、ペダルストロークの増加に伴いペダル踏力が二次曲線的に増加する。つまりペダル踏力は無限大となるように増加する。なお、実際の特性は、リンク19bのたわみや油の圧縮性、油圧配管の膨張などによる若干のストロークがさらに付加される。実際にブレーキ力が発生する地点はペダルストロークがS3’の変極点であり、ペダルストロークがS3’からS4(>S3)の領域でブレーキ力を調整することができる。
【0026】
図6は、リンクロッド機械式ブレーキや、自転車、自動二輪車における操作力と操作量の関係と同様であり、ブレーキの操作感として理想的な特性である。すなわち、図6の特性(破線)では、ペダルストロークがS3’に至るまでは復帰ばね20のばね力に抗して小さなペダル踏力により大きなペダルストロークが得られ、S3’を変極点としてペダルストロークがS3’からS4の範囲では、ペダルストロークの変化に対しペダル踏力が大きく増加する。このため作業員はブレーキの効き始めを容易に体感することができるとともに、ペダル踏力を介してブレーキ力を容易に調整することができる。この点、例えばペダルストロークが変極点に至るまでペダル踏力を一定とした特性では、オペレータはペダル19の操作性に違和感を感じ、扱いにくい。
【0027】
第1の実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)復帰ばね20のばね力に抗して操作されるブレーキペダル19にマスタシリンダ18を連結し、マスタシリンダ18のボトム室18aからの圧油をブレーキ制御弁17のパイロットポートに導くとともに、ボトム室18aとブレーキケース11内の油室16を連通するようにした。これによりブレーキディスク12の駆動がブレーキペダル19に伝達(フィードバック)され、ブレーキペダル19の操作力とブレーキ力との良好な相関関係が得られる。このためブレーキの発生およびブレーキ力の大きさをオペレータに体感させることができ、ブレーキ力の調整が容易である。
(2)作業員が操作するのはブレーキ制御弁17であり、油室14にはパイロットポンプ22からの動油圧が導かれるため、小さな操作力でブレーキディスク12を容易に駆動することができる。
(3)ブレーキペダル19には復帰ばね20のばね力が作用し、ペダル操作量の増加に伴いペダル踏力(操作反力)が徐々に増加するため、機械式ブレーキと同様の操作感が得られ、操作フィーリングがよい。
(4)ブレーキの使用に伴いディスク9,10,12等が摩耗した場合、ペダル踏力とペダルストロークの関係の変極点S3’が従い移動するので、オペレータはブレーキペダル19の操作を通じて摩耗量を認識することができる。
(5)ブレーキ力を得るために必要なペダル踏力はブレーキ制御弁17のパイロット圧のに応じて任意に設定可能であり、ペダルストロークもストローク検出部12aとマスタシリンダ18のボア比に応じて任意に設定可能であるため、ブレーキ特性の仕様を容易に変更できる。
【0028】
−第2の実施の形態−
図7を参照して本発明によるウインチの制動装置の第2の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態では、ディスク式ブレーキの一種である湿式多板ブレーキ100を制動装置として用いたが、第2の実施の形態ではバンド式ブレーキを用いる。以下では第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0029】
図7は、第2の実施の形態に係る制動装置の構成を示す油圧回路図である。なお、図1と同一の箇所には同一の符号を付す。キャリア軸8には、フリーフォール時にウインチドラム1と一体に回転するブレーキドラム31が設けられている。ブレーキドラム31の周囲にはブレーキバンド32が設けられている。ブレーキバンド32は、一端が固定され、他端が回動軸33aを支点に回動可能なリンク33に連結されている。リンク33にはブレーキシリンダ34のピストンが連結されている。
【0030】
ブレーキシリンダ34には電磁切換弁21を介してブレーキ制御弁17からの動油圧が作用し、この動油圧によりブレーキシリンダ34が縮退し、ブレーキバンド32が拡張する。これによりブレーキバンド32がブレーキドラム31から離間し、ブレーキ力が解除される。一方、ブレーキシリンダ34にタンク圧が作用すると、ブレーキシリンダ34が伸長し、ブレーキバンド32が縮退する。これによりブレーキバンド32がブレーキドラム31に密着し、ブレーキ力が発生する。
【0031】
リンク33にはさらにストローク検出シリンダ35のピストンが連結され、シリンダ35のボトム室35aは管路23を介してマスタシリンダ18のボトム室18aに連通している。これによりストローク検出シリンダ35はブレーキシリンダ34と一体にストロークし、ブレーキペダル19がストローク可能となる。すなわちブレーキペダル19を踏み込み操作すると、ブレーキ制御弁17にパイロット圧が作用してパイロットポンプ22からの動油圧が減少し、ブレーキシリンダ34が伸長するとともにストローク検出シリンダ35が伸長し、ブレーキペダル19がストロークする。
【0032】
この場合、ブレーキバンド32がブレーキドラム31に密着するまでのストローク域ではブレーキ力は出力されず、ブレーキバンド密着後のブレーキドラム31への締め付け力の増加に伴いブレーキ力が発生する。ブレーキバンド密着後はブレーキシリンダ34のストロークはブレーキバンド32の弾性変形分のみとなり、図6に示したのと同様なブレーキ特性が得られる。
【0033】
なお、上記実施の形態では、ブレーキディスク12(図1)またはブレーキシリンダ34(図7)を駆動してウインチドラム1に制動力を付与するようにしたが、他のシリンダ部材により制動力を付与してもよい。ブレーキディスク12と油室14とばね15とによりブレーキシリンダ装置を構成したが、ブレーキ制御弁17からの動油圧により駆動され、ブレーキ力を制御するのであれば、ブレーキシリンダ装置の構成は上述したものに限らない。ブレーキペダル19によりブレーキ制御弁17を操作するようにしたが、他の操作部材により操作するようにしてもよい。復帰ばね20のばね力によりペダル操作量の増加に伴い操作反力を増加させるようにしたが、反力付与手段の構成はこれに限らない。
【0034】
ブレーキペダル19にマスタシリンダ18(油圧シリンダ)を連結し、マスタシリンダ18の油室18aとストローク検出部12aの側方に設けた油室16とを伝達経路としての管路23により連通し、ブレーキディスク12の駆動をマスタシリンダ18に伝達するようにしたが、ブレーキディスク12の駆動をブレーキペダル19に伝達し、ブレーキディスク12の駆動に伴いブレーキペダル19を操作させるのであれば、伝達機構の構成は上述したものに限らない。すなわち油室16,管路23,マスタシリンダ18以外により伝達機構を構成してもよい。ブレーキディスク12の駆動を油室16、管路23、およびマスタシリンダ18を介してブレーキペダル19の操作反力にフィードバックさせたが、フィードバック手段の構成もこれに限らない。
【0035】
付勢部材としてばね15の付勢力によりウインチドラム1を制動するようにしたが、制動装置はネガティブブレーキでなくてもよい。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態のウインチの制動装置に限定されない。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する際、上記実施形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係になんら限定も拘束もされない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るウインチの制動装置の構成を示す油圧回路図。
【図2】フリーフォールスイッチオン時の動作を示す図。
【図3】さらにブレーキペダルを操作した時の動作を示す図。
【図4】さらにブレーキ作動時の動作を示す図。
【図5】ブレーキディスクのストロークとブレーキ制御弁の二次圧との関係を示す図。
【図6】ブレーキペダルのストロークとペダル踏力との関係を示す図。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係るウインチの制動装置の構成を示す油圧回路図。
【符号の説明】
【0037】
12 ブレーキディスク
12a ストローク検出部
15 ばね
17 ブレーキ制御弁
18 マスタシリンダ
19 ブレーキペダル
20 復帰ばね
23 管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧源から制御弁を介して導かれる動油圧により駆動し、ウインチドラムに制動力を付与するシリンダ部材と、
前記制御弁を操作する操作部材と、
前記操作部材の操作量の増加に伴い操作反力を増加させる反力付与手段と、
前記シリンダ部材の駆動を前記操作部材に伝達し、該シリンダ部材の駆動に伴い操作部材を操作させる伝達機構とを備えることを特徴とするウインチの制動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のウインチの制動装置において、
前記伝達機構は、
前記操作部材に連結され、前記制御弁に作用するパイロット圧を発生する油圧シリンダと、
前記シリンダ部材の駆動を前記油圧シリンダに伝達する伝達経路とを有することを特徴とするウインチの制動装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のウインチの制動装置において、
前記制御弁からの動油圧に対抗して前記シリンダ部材を付勢し、この付勢力によって前記ウインチドラムを制動する付勢部材をさらに有することを特徴とするウインチの制動装置。
【請求項4】
ブレーキペダルで操作されるマスタシリンダと、
前記ブレーキペダルに対し操作量の増加に伴い増加するような操作反力を付与する反力付与手段と、
前記マスタシリンダから出力される静油圧によって操作され、その静油圧に応じた動油圧を出力するブレーキ制御弁と、
前記ブレーキ制御弁から出力される動油圧により駆動され、ウインチドラムのブレーキ力を制御するブレーキシリンダ装置と、
前記ブレーキシリンダ装置の駆動を前記ブレーキペダルの操作反力にフィードバックするフィードバック手段とを備えることを特徴とするウインチの制動装置。
【請求項5】
請求項4に記載のウインチの制動装置において、
前記フィードバック手段は、前記ウインチドラムにブレーキ力を付与し始めるまでは、前記ブレーキペダルの操作反力が操作量に比例し、前記ウインチドラムにブレーキ力が付与されると、前記ブレーキペダルの操作反力が無限大となるように前記ブレーキシリンダ装置の駆動に応じて前記マスタシリンダの圧力室の容積を変化させることを特徴とするウインチの制動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−223725(P2007−223725A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46533(P2006−46533)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(503032946)日立住友重機械建機クレーン株式会社 (104)