説明

ウインチ取付構造

【課題】ガイドシーブを取り付けるためのスペースを小さくできるとともに、ブームの補強を抑えることができ、且つ、ブーム背面からのウインチの突出量を抑えることが可能な、ウインチ取付構造を提供する。
【解決手段】ウインチ取付構造1は、ブーム4に設けられた主巻用ウインチ23及び補巻用ウインチ24と、ブーム4に対して回動自在に設けられた側板65と、側板65に対して回動自在に設けられた第1ガイドシーブ61及び第2ガイドシーブ62と、側板65のブーム4に対する回動を拘束するように、ブーム4と側板65との間に設けられた連結ロッド67とを備える。当該主巻ロープ23aに張力が生じたときに、第1ガイドシーブ61を介して、側板65を一の方向に回動する力が作用する。補巻ロープ24aに張力が生じたときに、第2ガイドシーブ62を介して、側板65を前記一の方向とは逆の方向に回動する力が作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブームにウインチを搭載したクレーンにおけるウインチ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブームにウインチを搭載したウインチ取付構造として、特許文献1に記載のものが知られている。
このウインチ取付構造は、旋回体に起伏可能に連結されるブームに、ブーム先端に設けられたジブを起伏させるためのジブ起伏用ウインチと、吊り荷用の主巻用ウインチと、補巻用ウインチとが取り付けられたものである。
このウインチ取付構造を備えるクレーンでは、主巻用ウインチ及び補巻用ウインチがそれぞれ吊り荷用の主巻ロープ及び補巻ロープの巻上げ及び巻下げを行う。また、ジブ起伏ウインチがジブ起伏ロープの巻取り及び繰出しを行うことにより、ブーム先端のジブが起伏する。
この構成によると、ジブ起伏用ウインチ、主巻用ウインチ、及び補巻用ウインチはともにブームに据付けられているため、このクレーンの分解作業(すなわちクレーン本体からブームを切り離す作業)が行われた場合、その作業後のクレーン本体に上記各ウインチは残らない。これにより、クレーン本体の輸送質量を効果的に低減させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−127150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたウインチ取付構造においては、ジブ起伏用ウインチと主巻用ウインチとの間に、ジブ起伏用ロープを案内するためのガイドシーブを介在させる必要がある。なぜなら、このガイドシーブによって、ジブ起伏用ウインチから引き出されるジブ起伏用ロープが主巻用ウインチ及び補巻用ウインチと干渉するのを阻止する必要があるからである。ここで、当該ウインチ取付構造においては、主巻用ウインチ及び補巻用ウインチは、ブーム背面から突出するように配置されており、これらの各ウインチから延びるロープを案内するガイドシーブは設けられていない。
一方で、ブームの輸送高さをより低くする観点から、これらのウインチを、ブーム背面からの突出量が小さくなるように当該ブームに対して配置したいという要望もある。この場合、各ウインチから延びるロープがブーム構成部材と干渉しないように、主巻用ウインチ及び補巻用ウインチのそれぞれに対して、ジブ起伏用ウインチから延びるロープを案内するガイドシーブに相当するガイドシーブを設ける必要が生じる。
しかしながら、この場合、2つのガイドシーブを取り付けるスペースがブーム背面に更に必要となり、ウインチ取付構造が大型化してしまうという問題がある。
また、主巻用ウインチから延びる主巻ロープを案内するガイドシーブの取付構造、及び、補巻用ウインチから延びる補巻ロープを案内するガイドシーブの取付構造は、それぞれ、主巻ロープ及び補巻ロープから作用する力に耐えうる強度が求められる。そのため、大幅にブームを補強する必要があり、ブームの質量を大幅に増加させてしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、ガイドシーブを取り付けるためのスペースを小さくできるとともに、ブームの補強を抑えることができ、且つ、ブーム背面からのウインチの突出量を抑えることが可能な、ウインチ取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るウインチ取付構造における第1の特徴は、ブームに設けられた2つのウインチと、当該ブームに対して回動自在に設けられた本体部材と、前記本体部材に対して回動自在に設けられた2つのシーブと、前記本体部材の前記ブームに対する回動を拘束するように、当該ブームと当該本体部材との間に設けられた位置固定部材と、を備え、前記2つのシーブのうちの一方のシーブには、前記2つのウインチのうちの一方のウインチから前記ブームの先端に向かって延びるロープが掛けられ、当該ロープに張力が生じたときに、前記本体部材に対して、当該本体部材を一の方向に回動する力が作用し、前記2つのシーブのうちの他方のシーブには、前記2つのウインチのうちの他方のウインチから前記ブームの先端に向かって延びるロープが掛けられ、当該ロープに張力が生じたときに、前記本体部材に対して、当該本体部材を前記一の方向とは逆の方向に回動する力が作用することである。
【0007】
この構成によると、2つのウインチにそれぞれ対応した2つのシーブがブームに設けられているので、2つのウインチをブームの内側に設置した場合でも、当該ウインチから繰り出されるロープをブームの構成部材等に干渉させずにブーム先端側に張り出すことができる。即ち、ブーム背面からのウインチの突出量を抑えることが可能である。
また、2つのシーブが、一の本体部材に対して設けられているので、当該2つのシーブをブームに取り付けるためのスペースを小さくすることができる。
また、本体部材は、ブームに対して回動自在に設けられているので、当該本体部材とブームとの結合部を介して、本体部材からブームにモーメントが伝達されることがない。そのため、本体部材とブームとの結合部を過度に補強する必要はなく、当該結合部の重量が過度に増加してしまうことを抑制できる。
また、位置固定部材には、本体部材の回動を妨げるための力が作用するが、2つのウインチを同時に使用した場合であっても、当該位置固定部材に作用する力が過度に大きくなることはない。つまり、2つのウインチのうちの一方のウインチを使用したとき(当該一方のウインチから延びるロープに張力が発生したとき)に位置固定部材に作用する力を「第1作用力」とし、他方のウインチを使用したとき(当該他方のウインチから延びるロープに張力が発生したとき)に位置固定部材に作用する力を「第2作用力」とすると、2つのウインチを同時に使用した場合であっても、当該位置固定部材に作用する力は、前記第1作用力と前記第2作用力のいずれか大きいほうを上回ることはない。したがって、位置固定部材の強度は、前記第1作用力と前記第2作用力とに耐えうる強度であればよく、当該位置固定部材の重量が過度に増加してしまうことを抑制できる。
【0008】
また、本発明に係るウインチ取付構造における第2の特徴は、前記位置固定部材は、前記本体部材と、前記ウインチのドラムを支持するドラム支持部材とを連結することである。
【0009】
この構成によると、位置固定部材は、ドラムを支持可能な強度を有するドラム支持部材に連結されるので、ブーム側における位置固定部材が連結される部分の補強が少なくて済む。そのため、ブームの重量が過度に増加してしまうことを抑制できる。
【0010】
また、本発明に係るウインチ取付構造における第3の特徴は、前記2つのウインチは、当該ウインチの回動中心が前記ブームの内側に位置するように、当該ブームに設けられていることである。
尚、ブームの内側とは、ブームの背面(起立側の面)とブームの腹面(倒伏側の面)との間の領域を意味する。
【0011】
この構成によると、ブームの背面からのウインチの突出量を小さくすることができるため、ブーム及びウインチの双方で占めるスペースを小さくすることができる。これにより、ウインチが搭載されたブームの輸送が容易になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、2つのシーブにより2つのウインチからのロープを適切に案内できるため、ブーム背面からの突出量を抑えて2つのウインチを設置することができる。また、一の本体部材を介して2つのシーブがブームに取り付けられるため、当該2つのシーブをブームに取り付けるためのスペースを小さくすることができる。また、本体部材とブームとの結合部の強度及び位置固定部材の強度を過度に高くする必要はないので、ブームの重量が過度に増加することを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るウインチ取付構造を備えるクレーンの全体側面図。
【図2】図1に示すクレーンにおけるウインチ取付構造を示す側面図。
【図3】図2に示すウインチ取付構造の背面図。
【図4】図3に示す主巻ウインチ及びガイドシーブユニットの拡大図。
【図5】図4に示すガイドシーブユニットの背面図。
【図6】図4に示す主巻きウインチ及びガイドシーブユニットをブーム基端側から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0015】
<クレーンの全体構成>
図1に示すように、クレーン100は、本発明の実施形態に係るウインチ取付構造1を備えるクレーンであって、クレーン本体に相当する旋回体2と、この旋回体2を旋回可能に支持する走行体3と、旋回体2に設けられたブーム4と、ブーム4の先端側に設けられたジブ5と、ブーム起伏用部材であるマスト6とを備える。
【0016】
ブーム4は、パイプ状の構成部材を有して構成されるいわゆるラチス型であり、基端側部材4Aと、中間部材4Bと、先端側部材4Cとを有する。具体的には、基端側部材4Aは、旋回体2の前部に起伏方向に回動可能に連結される。中間部材4Bは基端側部材4Aの先端側に着脱可能に継ぎ足される。先端側部材4Cは中間部材4Bの先端側に着脱可能に継ぎ足され、この先端側部材4Cの先端部に、ジブ5を回動させるためのリヤストラット7及びフロントストラット8が回動可能に連結される。
【0017】
ジブ5もラチス型であり、その基端部が先端側部材4Cの先端部に起伏方向に回動可能に連結されている。
【0018】
マスト6は、基端及び回動端を有し、その基端が旋回体2に回動可能に連結される。この回動軸は、ブーム4の回動軸と平行でかつブーム4の回動軸のすぐ後方に位置している。一方、このマスト6の回動端は左右一対のブーム用ガイライン9を介してブーム4の先端に連結される。
【0019】
なお、ブーム4の基端側部材4Aには左右一対のバックストップ10が設けられる。これらのバックストップ10は、ブーム4が図1に示される起立姿勢まで到達した時点で旋回体2に当接し、この当接によってブーム4の過度の起立動作を規制する。
【0020】
リヤストラット7は、先端側部材4Cの先端からブーム起立側(図1では左側)に張り出す姿勢で保持される。リヤストラット7とブーム4との間には、左右一対のバックストップ11及び左右一対のガイライン12が介在する。バックストップ11は、先端側部材4Cとリヤストラット7の中間部位との間に介在し、リヤストラット7を下から支える。ガイライン12はリヤストラット7の先端部と基端側部材4Aとを結ぶように張った状態で設置され、その張力によってリヤストラット7の位置を規制する。
【0021】
フロントストラット8は、ジブ5と連動して回動するようにブーム4の先端側部材4Cと連結される。詳しくは、このフロントストラット8の先端部とジブ5の先端部とを結ぶように左右一対のジブ用ガイライン13が張った状態で設置される。従って、このフロントストラット8の回動駆動によってジブ5も回動駆動される。
【0022】
このクレーン100には、各種ウインチが搭載される。具体的には、ブーム4を起伏させるためのブーム起伏用ウインチ21と、ジブ5を起伏方向に回動させるためのジブ起伏用ウインチ22と、吊り荷の巻上げ及び巻下げを行うための主巻用ウインチ23及び補巻用ウインチ24とが搭載される。
ブーム起伏用ウインチ21は、旋回体2に据え付けられる。一方、ジブ起伏用ウインチ22、主巻用ウインチ23、及び補巻用ウインチ24は、いずれもブーム4における基端側部材4Aに据え付けられる。
【0023】
<ブーム起伏用ウインチ>
ブーム起伏用ウインチ21は、ブーム起伏用ロープ21aの巻取り及び繰出しを行い、この巻取り及び繰出しによりマスト6が回動するようにブーム起伏用ロープ21aが配置される。
具体的には、マスト6の回動端部及び旋回体2の後端部にはそれぞれ複数のシーブが幅方向に配列されたシーブブロック14,15が設けられ、ブーム起伏用ウインチ21から引き出されたブーム起伏用ロープ21aがシーブブロック14,15間に掛け渡される。従って、ブーム起伏用ウインチ21は、ブーム起伏用ロープ21aの巻取りや繰出しによって両シーブブロック14,15間の距離を変化させ、これによってマスト6、さらにはこれと連動するブーム4を起伏方向に回動させる。
【0024】
<ジブ起伏用ウインチ>
ジブ起伏用ウインチ22は、ジブ起伏用ロープ22aの巻取り及び繰出しを行い、この巻取り及び繰出しによりフロントストラット8が回動するようにジブ起伏用ロープ22aが配置される。
具体的には、基端側部材4Aの先端部背面側にガイドシーブ16が設けられ、先端側部材4Cの先端部背面側にガイドシーブ17が設けられる。そして、リヤストラット7の回動端部及びフロントストラット8の回動端部にそれぞれ複数のシーブが幅方向に配列されたシーブブロック18,19が設けられ、ジブ起伏用ウインチ22から引き出されたジブ起伏用ロープ22aがガイドシーブ16,17に掛けられ、かつ、シーブブロック18,19間に掛け渡される。従って、ジブ起伏用ウインチ22は、ジブ起伏用ロープ22aの巻取りや繰出しによって、両シーブブロック18,19間の距離を変化させ、これによってフロントストラット8、さらにはこれと連動するジブ5を起伏方向に回動させる。
【0025】
<主巻用ウインチ>
主巻用ウインチ23は、主巻ロープ23aの巻取り及び繰出しを行い、これにより、主巻ロープ23aによる吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う。
具体的には、リヤストラット7の基端近傍部位、フロントストラット8の基端近傍部位、及びジブ5の先端部にはそれぞれ主巻用ガイドシーブ31M,32M,33Mが回転可能に設けられ、さらに主巻用ガイドシーブ33Mに隣接する位置に複数のシーブが幅方向に配列された主巻用シーブブロック34が設けられており、主巻用ウインチ23から引き出された主巻ロープ23aが主巻用ガイドシーブ31M,32M,33Mに順に掛けられ、かつ、主巻用シーブブロック34と、吊荷用の主フック35に設けられたシーブブロック36との間に掛け渡される。従って、主巻用ウインチ23は、主巻ロープ23aの巻取りや繰出しによって、両シーブブロック34,36間の距離を変化させ、これによって、主フック35の巻上げ及び巻下げを行う。
【0026】
<補巻用ウインチ>
補巻用ウインチ24は、補巻ロープ24aの巻取り及び繰出しを行い、これにより、補巻ロープ24aによる吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う。
具体的には、主巻用ガイドシーブ31M,32M,33Mとそれぞれ同軸に補巻用ガイドシーブ31S,32S,33Sが回転可能に設けられ、さらに補巻用ガイドシーブ33Sに隣接する位置にポイントシーブ37が回転可能に設けられており、補巻用ウインチ24から引き出された補巻ロープ24aが補巻用ガイドシーブ31S,32S,33Sに順に掛けられ、かつ、ポイントシーブ37から垂下される。従って、補巻用ウインチ24は、補巻ロープ24aの巻取りや繰出しによって、補巻ロープ24aの末端に連結された吊荷用の補フック38の巻上げ及び巻下げを行う。
【0027】
<ウインチ取付構造>
ジブ起伏用ウインチ22、主巻用ウインチ23、及び補巻用ウインチ24並びにその取付構造を図2〜図6に示す。尚、図2において、ジブ起伏用ウインチ22及びジブ起伏用ロープ22aのガイドシーブ16は二点差線で示し、図3において、これらは省略している。また、図6において、第2ガイドシーブ62の近傍を図4におけるA−A断面として示している。
【0028】
図2及び図3に示すように、これらのウインチ22,23,24が据付けられるブーム4の基端側部材4Aは、左右一対の腹面側主材40Fと、左右一対の背面側主材40Bと、左右一対の腹面側主材40Fをそれぞれブーム幅方向に連結する複数本の桟材41Fと、左右一対の背面側主材40Bをそれぞれブーム幅方向に連結する複数本の桟材41Bと、腹面側主材40Fと背面側主材40Bとをブーム厚み方向に連結する複数本の副材42とを有する。腹面側主材40F及び桟材41Fはブーム4の腹面上すなわち倒伏側の面上に配され、背面側主材40B及び桟材41Bはブーム4の背面上すなわち起立側の面上に配される。
【0029】
腹面側主材40Fと背面側主材40Bはその間隔(ブーム厚み方向の間隔)が基端側に向かうにつれて小さくなるように配される。そして、左側の腹面側主材40Fの基端と背面側主材40Bの基端とが共通の連結部43に連結されるとともに、右側の腹面側主材40Fの基端と背面側主材40Bの基端とが共通の連結部43に連結される。これらの連結部43は、旋回体2に回動可能に連結され得る形状(ピン結合可能な形状)を有している。
【0030】
基端側部材4Aの腹面側の桟材41Fには、ジブ起伏用ウインチ22を取り付けるためのブラケット44、主巻用ウインチ23を取り付けるためのブラケット45、及び補巻用ウインチ24を取り付けるためのブラケット46が固定されている。
これらのブラケット44,45,46は、それぞれ、隣り合う桟材41F間に、左右一対で掛け渡されている。また、これらのブラケット44,45,46は、この順で、基端側部材4Aの先端側(中間部材4Bとの接続部側)から基端側(連結部43側)に向かって並んで配置されている。
【0031】
これらのブラケット44,45,46の各ブラケットは、ブーム幅方向に向かい合う一対の板状部材を備えて構成される。当該一対の板状部材は、桟材41Fからブーム4の内側に延出するように配置され、ブーム幅方向に貫通するピン孔が形成されている。当該ピン孔は、当該板状部材の前後に一対形成されている。
【0032】
各ウインチ22,23,24は、それぞれ、ウインチドラム50と、このウインチドラム50を回転可能に支持する本体フレーム51(ドラム支持部材)とを備え、各ウインチドラム50にはジブ起伏用ロープ22a、主巻ロープ23a及び補巻ロープ24aが巻付けられるとともに当該ウインチドラム50を回転させるウインチモータ52が連結される。尚、当該ウインチモータ52の本体部は、本体フレーム51にボルト等で固定されている。
【0033】
本体フレーム51は、ウインチドラム50の回転軸方向両端に配置される概略くの字の板状のフランジ部を有している。そして、当該フランジ部の前後端が、ブラケット44〜46の板状部材間に配置され、ピン孔及び当該フランジ部に形成された取付孔を貫通するように固定ピンが挿入される。これにより、ウインチ22〜24が、それぞれ、ブラケット44〜46を介して各桟材41Fに連結される。尚、ウインチ22〜24の回転軸は、互いに平行であって、ブーム幅方向に延びている。
【0034】
本実施形態においては、図2に示すように、ウインチの回転軸と平行な方向から見て、ジブ起伏用ウインチ22及び主巻用ウインチ23の全体がブーム4の背面と腹面との間に位置している。また、補巻用ウインチ24の本体フレーム51の全体がブーム4の背面と腹面との間に位置している。尚、補巻用ウインチ24の全体がブーム4の背面と腹面との間に位置するように構成してもよい。
【0035】
図2に示すように、ブーム長手方向におけるジブ起伏用ウインチ22の前方に位置する桟材41Bには、ジブ起伏用ロープ22aを案内するためのガイドシーブ16が固定されている。
さらに、ブーム長手方向におけるジブ起伏用ウインチ22と主巻用ウインチ23との間に位置する桟材41Bには、主巻ロープ23a及び補巻ロープ24aの双方を案内するためのガイドシーブユニット60が固定されている。
【0036】
<ガイドシーブユニット>
図4〜図6に示すように、このガイドシーブユニット60は、以下のように構成される。
即ち、当該ガイドシーブユニット60は、主巻ロープ23aを案内するための第1ガイドシーブ61と、補巻ロープ24aを案内するための第2ガイドシーブ62とを備えている。そして、これらの第1ガイドシーブ61及び第2ガイドシーブ62は、それぞれ回動自在且つ回動軸方向にスライド自在に、第1回動軸63及び第2回動軸64に支持されている。当該第1回動軸63及び第2回動軸64の両端は、一対の側板65(本体部材)に回動自在に支持されている。当該一対の側板65は、棒状の連結部材68,69で連結されている。また、ブーム4には、一対の連結部材66が固定されており、当該一対の連結部材66に対して、一対の側板65が回動自在に連結されている。また、第2回動軸64の端部と本体フレーム51とが一対の連結ロッド67(位置固定部材)によって連結されている。
【0037】
側板65は、概ね、頂角が鈍角となる二等辺三角形状に形成され、その頂角を形成する頂点近傍に、連結部材66に対する回動中心が設けられている。また、底角を形成する2つの頂点近傍にそれぞれ第1回動軸63及び第2回動軸64が設けられている。
尚、本実施形態においては、第1回動軸63の回動中心と側板65の連結部材66に対する回動中心との距離が、第2回動軸64の回動中心と側板65の連結部材66に対する回動中心との距離に比べて、やや長くなるように形成されている。
【0038】
また、当該一対の側板65における第1回動軸63及び第2回動軸64の近傍部から一対の第1ブラケット71及び一対の第2ブラケット72が延設されている。そして、第1ガイドシーブ61を径方向外側から覆うようにブーム幅方向に延びる軸部材73の両端が、一対の第1ブラケット71によって回動自在に支持されている。また、第2ガイドシーブ62を径方向外側から覆うようにブーム幅方向に延びる軸部材74の両端が、一対の第2ブラケット72によって回動自在に支持されている。
【0039】
連結部材66は、先端部がブーム背面よりもブーム外側に突出するように、桟材41B及び副材42に溶接されている。連結部材66の先端部にはブーム幅方向と平行に貫通する貫通孔が形成されている。そして、連結部材66の貫通孔と側板65に形成された取付孔とを貫通するようにピン66aが挿入されることで、当該側板65が連結部材66に対して、ブーム幅方向と平行に延びる回動軸回りに回動自在に連結される。
【0040】
連結ロッド67の一端は、第2回動軸64の端部に回転自在に固定されている。尚、第2回動軸64の端部には、複数のボルトにより、キーパプレートが固定されている。これにより、連結ロッド67が、当該第2回動軸64の軸方向に移動することを規制している。
また、当該連結ロッド67の他端は、本体フレーム51の背面側の端部に回動自在に連結されている。この連結ロッド67により、側板65の連結部材66に対する回動が拘束される。尚、連結ロッド67と本体フレーム51との連結は、ピン51aを連結ロッド67の端部に設けられた取付孔と本体フレーム51に設けられた取付孔とに差し込むことにより行われている。
【0041】
第1ガイドシーブ61は、主巻用ウインチ23から引き出される主巻ロープ23aがブーム4を構成する部材やガイドシーブ16等と干渉しないように所定の位置に配置されている。
具体的には、第1ガイドシーブ61は、主巻用ウインチ23よりもブーム先端側に配置されている。そして、当該第1ガイドシーブ61は、その回動中心が、ブーム4の背面からブーム4の外側(起立側)に所定量離れて位置するように配置されている。また、主巻用ウインチ23から引き出される主巻ロープ23aに張力が生じたときに、連結部材66に対して矢印R1方向に回動する力が当該側板65に作用するように構成されている。
【0042】
また、第2ガイドシーブ62は、補巻用ウインチ24から引き出される補巻ロープ24aがブーム4を構成する部材、第1ガイドシーブ61、ガイドシーブ16等と干渉しないように所定の位置に配置されている。
具体的には、第2ガイドシーブ62は、第1ガイドシーブ61と略同じ形状のシーブであって、その回動中心が、第1ガイドシーブ61の回動中心よりもブーム基端側に位置し、且つ、第1ガイドシーブ61の回動中心よりも、ブーム4の背面からブーム4の外側(起立側)に離れるように配置されている。また、補巻用ウインチ24から引き出される補巻ロープ24aに張力が生じたときに、連結部材66に対して矢印R2方向に回動する力が当該側板65作用するように構成されている。
【0043】
つまり、連結ロッド67により、側板65の連結部材66に対する回動は拘束されるが、当該連結ロッド67が側板65の回動を拘束することで、第1ガイドシーブ61及び第2ガイドシーブ62が、上記所定の位置に保持される。
【0044】
<ガイドシーブユニットに作用する負荷について>
クレーン100では、主巻用ウインチ23及び補巻用ウインチ24がそれぞれ主巻ロープ23a及び補巻ロープ24aの巻取り及び繰出しを行うことにより、吊り荷の巻上げ及び巻下げが行われる。
【0045】
(1)主巻用ウインチ23のみ使用する場合
主巻用ウインチ23のみ使用して吊り荷の巻上げ及び巻下げが行われる場合は、ガイドシーブユニット60には、以下のように力が作用する。
主巻用ウインチ23から引き出される主巻ロープ23aに張力が生じるため、第1ガイドシーブ61を介して、側板65に、ピン66aを中心とした矢印R1方向への回動力が作用する。そのため、連結ロッド67には、その軸方向に、当該回動力に対応した引張の力が作用する。
【0046】
(2)補巻用ウインチ24のみ使用する場合
補巻用ウインチ24のみ使用して吊り荷の巻上げ及び巻下げが行われる場合は、ガイドシーブユニット60には、以下のように力が作用する。
補巻用ウインチ24から引き出される補巻ロープ24aに張力が生じるため、第2ガイドシーブ62を介して、側板65に、ピン66aを中心とした矢印R2方向への回動力が作用する。そのため、連結ロッド67には、その軸方向に、当該回動力に対応した圧縮の力が作用する。
【0047】
(3)主巻用ウインチ23及び補巻用ウインチ24の双方を同時に使用する場合
主巻用ウインチ23及び補巻用ウインチ24の双方を同時に使用して吊り荷の巻上げ及び巻下げが行われる場合は、ガイドシーブユニット60には、以下のように力が作用する。
主巻ロープ23a及び補巻ロープ24aに張力が生じるため、第1ガイドシーブ61を介して側板65に作用する矢印R1方向への回動力(以下、「第1回動力」という)と、第2ガイドシーブ62を介して側板65に作用する矢印R2方向への回動力(以下、「第2回動力」という)とが側板65に対して作用する。
【0048】
従って、前記第1回動力が、前記第2回動力よりも大きければ、連結ロッド67には、その軸方向に、前記第1回動力と前記第2回動力との差分に対応した引張の力が作用する。一方、前記第1回動力が、前記第2回動力よりも小さければ、連結ロッド67には、その軸方向に、前記第1回動力と前記第2回動力との差分に対応した圧縮の力が作用する。
【0049】
結果として、主巻用ウインチ23及び補巻用ウインチ24を同時に使用しても、主巻用ウインチ23のみ使用する場合よりも大きい引張の力が連結ロッド67に作用することはない。また、主巻用ウインチ23及び補巻用ウインチ24を同時に使用しても、補巻用ウインチ24のみ使用する場合よりも大きい圧縮の力が連結ロッド67に作用することはない。
【0050】
<本実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態に係るウインチ取付構造1は、ブーム4に設けられた主巻用ウインチ23及び補巻用ウインチ24と、当該ブーム4に対して回動自在に設けられた一対の側板65(本体部材)と、一対の側板65に対して回動自在に設けられた第1ガイドシーブ61及び第2ガイドシーブ62と、一対の側板65のブーム4に対する回動を拘束するように、ブーム4と一対の側板65との間に設けられた一対の連結ロッド67(位置固定部材)と、を備えている。
そして、第1ガイドシーブ61には、主巻用ウインチ23からブーム4の先端に向かって延びる主巻ロープ23aが掛けられ、当該主巻ロープ23aに張力が生じたときに、一対の側板65に対して、当該一対の側板65を一の方向(図4における矢印R1方向)に回動する力が作用する。
また、第2ガイドシーブ62には、補巻用ウインチ24からブーム4の先端に向かって延びる補巻ロープ24aが掛けられ、当該補巻ロープ24aに張力が生じたときに、一対の側板65に対して、当該一対の側板65を前記一の方向とは逆の方向(図4における矢印R2方向)に回動する力が作用する。
【0051】
この構成によると、主巻用ウインチ23及び補巻用ウインチ24にそれぞれ対応した第1ガイドシーブ61及び第2ガイドシーブがブーム4に設けられているので、2つのウインチ23,24をブーム4の内側に設置して、当該ウインチ23,24から繰り出されるロープ23a,23bを所定位置でシーブに沿って屈曲させ、ブーム4の構成部材等に干渉させずにブーム先端側に張り出すことができる。
【0052】
また、第1ガイドシーブ61と第2ガイドシーブ62との双方が、互いに連結された一対の側板65の間に取り付けられている。そのため、これらのガイドシーブ61,62を取り付けるためのスペースが過度に大きくなることを抑制できる。
【0053】
また、一対の側板65は、ブーム4に溶接された一対の連結部材66に回動自在に支持されているので、当該一対の側板65からブーム4にピン66a回りの回転に関するモーメントが伝達されることがない。そのため、一対の連結部材66及びその近傍部を過度に補強する必要はなく、ブーム4の重量が過度に増加してしまうことを抑制できる。
【0054】
また、連結ロッド67には、側板65の回動を妨げるための力が作用するが、2つのウインチ23,24を同時に使用した場合であっても、当該連結ロッド67に作用する力は過度に大きくなることはない。つまり、主巻用ウインチ23を使用したとき(主巻ロープ23aに張力が生じるとき)に連結ロッド67に作用する引張力を「第1作用力」とし、補巻用ウインチ24を使用したとき(補巻ロープ24aに張力が生じるとき)に連結ロッド67に作用する圧縮力を「第2作用力」とすると、2つのウインチ23、24を同時に使用した場合に当該連結ロッド67に作用する引張力は、前記第1作用力を上回ることはないし、当該連結ロッド67に作用する圧縮力は、前記第2作用力を上回ることはない。したがって、連結ロッド67の軸方向における引張強度は、前記第1作用力に耐えうる強度であればよい。また、連結ロッド67の軸方向における圧縮強度(座屈強度)は、前記第2作用力に耐えうる強度であればよい。そのため、当該連結ロッド67の重量が過度に増加してしまうことを抑制できる。
【0055】
また、連結ロッド67は、側板65と本体フレーム51(ドラム支持部材)とを連結する。本体フレーム51は、主巻用ウインチ23のウインチドラム50をブーム4から支持するドラム支持部材である。
【0056】
この構成によると、連結ロッド67は、屈強に形成された本体フレーム51に連結されるので、ブーム4側における連結ロッド67が連結される部分の補強が少なくて済む。特に、主巻用ウインチ23をブーム4に取り付けるためのブラケット45が設置されるブーム構成部材(桟材41B)は、ウインチの作動に耐えうるような高強度で形成される。そのため、連結ロッド67からの作用力が当該ブーム構成部材に対して新たに加わるとしても、当該作用力に耐えうるようにするための追加の補強は僅かなものでよい。従って、ブーム4の重量が過度に増加してしまうことを抑制できる。
【0057】
また、本実施形態では、ジブ起伏用ウインチ22、主巻用ウインチ23、及び補巻用ウインチ24はいずれもブーム4に据付けられているため、ブーム4を旋回体2から切離す分解作業が行われると、その作業後の旋回体2に各ウインチ22,23,24は残らない。これにより、旋回体2の輸送質量は有効に削減される。
【0058】
また、ウインチ22,23,24は、側面視にて、当該ウインチの回動中心がブーム4の内側(ブーム背面とブーム腹面との間)に位置するように、当該ブーム4に設けられている。尚、ウインチ22,23は、ウインチ全体がブーム4の内側に位置するように配置されている。
【0059】
この構成によると、ブーム4の背面からのウインチ22,23,24の突出量が小さいので、ウインチ22,23,24が搭載された基端側部材4Aの輸送が容易になる。
尚、側板65を連結部材66に連結するためのピン66a及び連結ロッド67を本体フレーム51に連結するためのピン51aを取り外すことで、ガイドシーブユニット60をブーム4から容易に取り外すことができる。そのため、ブーム4の背面側に突出するように設けられるガイドシーブユニット60を取り外して輸送することも容易である。
【0060】
また、本実施形態においては、ガイドシーブユニット60が直接連結されるブーム構成部材は、連結部材66が溶接される1本の桟材41Bのみである。そのため、ウインチ22,23,24をブーム4の内側に挿入するための開口部をブーム背面に大きく開けることが可能になる。即ち、ブーム背面側のブーム構成部材が過度に密集することを抑制できる。これにより、ブーム4へのウインチ22,23,24の取り付け及び取り外しを速やかに行うことができる。また、ウインチ22,23,24をブーム4に内蔵した状態でも、当該ウインチ22,23,24のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のウインチ取付構造は、ブームにウインチを搭載したクレーンにおいて利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 ウインチ取付構造
4 ブーム
23 主巻用ウインチ
24 補巻用ウインチ
50 ウインチドラム
51 本体フレーム(ドラム支持部材)
60 ガイドシーブユニット
61 第1ガイドシーブ
62 第2ガイドシーブ
65 側板(本体部材)
67 連結ロッド(位置固定部材)
100 クレーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームに設けられた2つのウインチと、
当該ブームに対して回動自在に設けられた本体部材と、
前記本体部材に対して回動自在に設けられた2つのシーブと、
前記本体部材の前記ブームに対する回動を拘束するように、当該ブームと当該本体部材との間に設けられた位置固定部材と、
を備え、
前記2つのシーブのうちの一方のシーブには、前記2つのウインチのうちの一方のウインチから前記ブームの先端に向かって延びるロープが掛けられ、当該ロープに張力が生じたときに、前記本体部材に対して、当該本体部材を一の方向に回動する力が作用し、
前記2つのシーブのうちの他方のシーブには、前記2つのウインチのうちの他方のウインチから前記ブームの先端に向かって延びるロープが掛けられ、当該ロープに張力が生じたときに、前記本体部材に対して、当該本体部材を前記一の方向とは逆の方向に回動する力が作用する、
ウインチ取付構造。
【請求項2】
前記位置固定部材は、前記本体部材と、前記ウインチのドラムを支持するドラム支持部材とを連結する
請求項1に記載のウインチ取付構造。
【請求項3】
前記2つのウインチは、当該ウインチの回動中心が前記ブームの内側に位置するように、当該ブームに設けられている
請求項1又は2に記載のウインチ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−247954(P2010−247954A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99170(P2009−99170)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)