説明

ウインチ装置

【課題】簡単な構造で且つメンテナンス性が良く、しかも、ブレーキ用ディスクの回転時におけるブレを抑制し得、安定した制動性能を得ることができるウインチ装置を提供する。
【解決手段】遊星歯車減速機13のケーシング12外周部にブレーキ用ディスク10を予め一体化されるよう着脱自在に設け、ウインチドラム9のフランジ部14に対しブレーキ用ディスク10を、その周縁部がフランジ部14より外周側へ張り出すよう取り付けることにより、ウインチドラム9に対する遊星歯車減速機13の組付けを行うと共に、ブレーキ用ディスク10の周縁部を把持・開放することによりウインチドラム9の回転を制動・制動解除可能なブレーキ装置11を設置するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、各種クレーン等には、ワイヤロープを巻上げ・巻下げするためのウインチ装置が搭載されている。
【0003】
従来のウインチ装置としては、例えば、図3に示される如く、油圧モータ又は電動モータ等の回転駆動装置1の出力軸2に対し、カップリング3を介して減速機4の入力軸5を連結すると共に、該減速機4の出力軸6に、ワイヤロープ7が巻き付けられ且つ一端側が軸受8にて支持されるウインチドラム9を連結し、該ウインチドラム9の外周面所要箇所にブレーキ用ディスク10を取り付け、該ブレーキ用ディスク10の周縁部を把持・開放することにより前記ウインチドラム9の回転を制動・制動解除可能なブレーキ装置11を設置するよう構成したものがある。
【0004】
尚、ウインチドラムの内部に遊星歯車減速機を組み込むと共に、該遊星歯車減速機の内部にブレーキ装置を設けたウインチ装置を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【特許文献1】特開2003−2587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図3に示されるような従来のウインチ装置においては、前記ブレーキ用ディスク10を取り付けるためのスペースを前記ウインチドラム9に形成する必要があるため、その分だけウインチドラム9が大きくなると共に、前記減速機4及び軸受8間に掛け渡すように設けられるウインチドラム9の組付け誤差の影響に加え更に該ウインチドラム9自体の製作誤差の影響が前記ブレーキ用ディスク10の回転時におけるブレを引き起こす形となり、安定した制動性能が得にくくなるという欠点を有していた。
【0006】
又、特許文献1に開示されたウインチ装置の場合、遊星歯車減速機の内部にブレーキ装置が設けられているため、部品点数が多く構造が複雑化し、メンテナンスもしにくくなるという不具合があった。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、簡単な構造で且つメンテナンス性が良く、しかも、ブレーキ用ディスクの回転時におけるブレを抑制し得、安定した制動性能を得ることができるウインチ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回転駆動装置と、該回転駆動装置の出力軸に連結され且つケーシングを回転させるよう構成した遊星歯車減速機と、該遊星歯車減速機が内部に組み込まれ且つ前記ケーシングと一体に回転自在となるよう配設されるウインチドラムとを備えたウインチ装置において、
前記遊星歯車減速機のケーシング外周部にブレーキ用ディスクを予め一体化されるよう着脱自在に設け、前記ウインチドラムのフランジ部に対し前記ブレーキ用ディスクを、その周縁部が前記フランジ部より外周側へ張り出すよう取り付けることにより、前記ウインチドラムに対する遊星歯車減速機の組付けを行うと共に、前記ブレーキ用ディスクの周縁部を把持・開放することによりウインチドラムの回転を制動・制動解除可能なブレーキ装置を設置するよう構成したことを特徴とするウインチ装置にかかるものである。
【0009】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0010】
本発明のウインチ装置では、ケーシング外周部にブレーキ用ディスクを予め一体化されるよう着脱自在に設け、前記ウインチドラムのフランジ部に対し前記ブレーキ用ディスクを、その周縁部が前記フランジ部より外周側へ張り出すよう取り付けるようにしているため、従来のウインチ装置に比べ、前記ブレーキ用ディスクを取り付けるためのスペースを前記ウインチドラムに形成する必要がなくなり、ウインチドラムを大きくしなくて済むと共に、前記遊星歯車減速機のケーシングは、ウインチドラムの内部に組み込まれることから、もともと高精度に製作されているため、前記ウインチドラムの組付け誤差の影響や該ウインチドラム自体の製作誤差の影響をほとんど受けず、前記ブレーキ用ディスクの回転時におけるブレが発生しにくくなり、安定した制動性能が得やすくなる。
【0011】
又、本発明のウインチ装置は、特許文献1に開示されたウインチ装置のように、遊星歯車減速機の内部にブレーキ装置が設けられるような構造ではないため、部品点数が少なく構造が複雑化せず、前記ブレーキ用ディスクが摩耗した場合の交換等も容易で、メンテナンスもしやすくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のウインチ装置によれば、簡単な構造で且つメンテナンス性が良く、しかも、ブレーキ用ディスクの回転時におけるブレを抑制し得、安定した制動性能を得ることができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1及び図2は本発明を実施する形態の一例であって、図中、図3と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、油圧モータ又は電動モータ等の回転駆動装置1と、該回転駆動装置1の出力軸2にカップリング3を介して連結され且つケーシング12を回転させるよう構成した遊星歯車減速機13と、該遊星歯車減速機13が内部に組み込まれ且つ前記ケーシング12と一体に回転自在となるよう配設されるウインチドラム9とを備えたウインチ装置において、
前記遊星歯車減速機13のケーシング12外周部にブレーキ用ディスク10を予め一体化されるよう着脱自在に設け、前記ウインチドラム9のフランジ部14に対し前記ブレーキ用ディスク10を、その周縁部が前記フランジ部14より外周側へ張り出すよう取り付けることにより、前記ウインチドラム9に対する遊星歯車減速機13の組付けを行うと共に、前記ブレーキ用ディスク10の周縁部を把持・開放することによりウインチドラム9の回転を制動・制動解除可能なブレーキ装置11を設置するよう構成したものである。
【0015】
本図示例の場合、前記遊星歯車減速機13は、図1に示す如く、固定設置されるベースブラケット15に、円筒状で且つ両端にフランジ部16a,16bが形成された固定キャリア16を取り付け、該固定キャリア16に対し軸受17を介して前記ケーシング12を回転自在に設け、前記固定キャリア16及びケーシング12の中心部に、前記回転駆動装置1の出力軸2に対しカップリング3を介して連結される入力軸18を軸受19,20,21にて回転自在に配設し、該入力軸18に、円筒状で且つ一端にフランジ部22aが形成された中間キャリア22を回転自在に嵌装し、該中間キャリア22のフランジ部22aに嵌着した第一ピン23に、前記入力軸18の先端部に一体に形成されたサンギア24と、前記ケーシング12の内周面に設けられた第一リングギア25とに噛合する第一プラネタリギア26を軸受27を介して回転自在に嵌装し、前記固定キャリア16のフランジ部16bに嵌着した第二ピン28に、前記中間キャリア22の外周に刻設された中間サンギア29と、前記ケーシング12の内周面に設けられた第二リングギア30とに噛合する第二プラネタリギア31を軸受32を介して回転自在に嵌装してなる構成を有している。尚、前記中間キャリア22は、前記入力軸18に対して回転自在に嵌装してあるが、前記固定キャリア16に対しても軸受33を介して回転自在に配設してある。
【0016】
又、前記遊星歯車減速機13のケーシング12外周部に対するブレーキ用ディスク10の取り付けには、ボルト・ナット等の締結部材34を用いると共に、前記ウインチドラム9のフランジ部14に対するブレーキ用ディスク10の取り付けには、ボルト・ナット等の締結部材35を用いるようにしてある。
【0017】
次に、上記図示例の作用を説明する。
【0018】
前記回転駆動装置1を駆動すると、該回転駆動装置1の出力軸2の回転は、カップリング3を介して前記遊星歯車減速機13の入力軸18へ伝えられ、該入力軸18と一体のサンギア24の駆動により、第一プラネタリギア26が自転しつつサンギア24の周りを第一リングギア25の内周に沿って公転し、該第一プラネタリギア26の公転に伴って中間キャリア22が入力軸18より遅い速度で回転し、該中間キャリア22と一体の中間サンギア29の回転が第二プラネタリギア31へ伝えられるが、該第二プラネタリギア31は固定キャリア16に支持されていることから自転するのみで中間サンギア29の周りを公転しないため、前記第二プラネタリギア31によって第二リングギア30が回転駆動される形となり、該第二リングギア30が内周面に設けられたケーシング12が所望の速度で回転し、該ケーシング12の回転がブレーキ用ディスク10を介してウインチドラム9へ伝達され、該ウインチドラム9が回転する。
【0019】
一方、前記ウインチドラム9が回転している状態で、ブレーキ装置11によりブレーキ用ディスク10の周縁部を把持すると、ウインチドラム9の回転が制動され、又、前記ブレーキ装置11によりブレーキ用ディスク10の周縁部を把持した状態から開放すると、ウインチドラム9の制動が解除される。
【0020】
そして、図1及び図2に示すウインチ装置では、ケーシング12外周部にブレーキ用ディスク10を予め一体化されるよう着脱自在に設け、前記ウインチドラム9のフランジ部14に対し前記ブレーキ用ディスク10を、その周縁部が前記フランジ部14より外周側へ張り出すよう取り付けるようにしているため、図3に示されるような従来のウインチ装置に比べ、前記ブレーキ用ディスク10を取り付けるためのスペースを前記ウインチドラム9に形成する必要がなくなり、ウインチドラム9を大きくしなくて済むと共に、前記遊星歯車減速機13のケーシング12は、ウインチドラム9の内部に組み込まれることから、もともと高精度に製作されているため、前記ウインチドラム9の組付け誤差の影響や該ウインチドラム9自体の製作誤差の影響をほとんど受けず、前記ブレーキ用ディスク10の回転時におけるブレが発生しにくくなり、安定した制動性能が得やすくなる。
【0021】
又、図1及び図2に示すウインチ装置は、特許文献1に開示されたウインチ装置のように、遊星歯車減速機の内部にブレーキ装置が設けられるような構造ではないため、部品点数が少なく構造が複雑化せず、前記ブレーキ用ディスク10が摩耗した場合の交換等も容易で、メンテナンスもしやすくなる。
【0022】
こうして、簡単な構造で且つメンテナンス性が良く、しかも、ブレーキ用ディスク10の回転時におけるブレを抑制し得、安定した制動性能を得ることができる。
【0023】
尚、本発明のウインチ装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す側断面図である。
【図2】本発明を実施する形態の一例を示す平面図である。
【図3】従来におけるウインチ装置の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 回転駆動装置
2 出力軸
3 カップリング
7 ワイヤロープ
8 軸受
9 ウインチドラム
10 ブレーキ用ディスク
11 ブレーキ装置
12 ケーシング
13 遊星歯車減速機
14 フランジ部
16 固定キャリア
17 軸受
18 入力軸
22 中間キャリア
24 サンギア
25 第一リングギア
26 第一プラネタリギア
29 中間サンギア
30 第二リングギア
31 第二プラネタリギア
34 締結部材
35 締結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動装置と、該回転駆動装置の出力軸に連結され且つケーシングを回転させるよう構成した遊星歯車減速機と、該遊星歯車減速機が内部に組み込まれ且つ前記ケーシングと一体に回転自在となるよう配設されるウインチドラムとを備えたウインチ装置において、
前記遊星歯車減速機のケーシング外周部にブレーキ用ディスクを予め一体化されるよう着脱自在に設け、前記ウインチドラムのフランジ部に対し前記ブレーキ用ディスクを、その周縁部が前記フランジ部より外周側へ張り出すよう取り付けることにより、前記ウインチドラムに対する遊星歯車減速機の組付けを行うと共に、前記ブレーキ用ディスクの周縁部を把持・開放することによりウインチドラムの回転を制動・制動解除可能なブレーキ装置を設置するよう構成したことを特徴とするウインチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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