説明

ウェットワイプスの製造方法及び製造装置

【課題】所定薬液の含浸量のばらつきを防止し、所定薬液の含浸率を増加させることによる取り出し容易性の低下を防止する。
【解決手段】プレス装置15は、複数のローラ201,202,203と、複数のローラ201,202,203に巻回されたプレスベルト204a,204bと、積層体800を搬送する搬送ベルト205,206とを有する。複数のローラ201,202,203のうち少なくとも1つのローラは、プレスベルト204a,204bを所定の搬送速度及び搬送方向に駆動する。プレスベルト204a,204bは、搬送方向MDに直交する交差方向CDに、プレスベルト204a,204bが積層体800の交差方向CDにおける両端部分800A,800Bに当接できる間隔をあけて配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェットワイプスの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所定薬液を含浸させたシートの積層体からなるウェットワイプスの製造方法としては、特許文献1や特許文献2に開示されている方法が知られている。
【0003】
特許文献1に開示されている方法は、積層前の搬送中の原反に所定薬液の一部を含浸させる工程や、搬送中の原反に含浸されている余分な所定薬液を搾り取る工程や、搬送中の複数の原反を積層する工程や、積層後の搬送中の原反に所定薬液の残りを含浸させる工程を有する。
【0004】
また、特許文献2に開示されている方法は、積層前の搬送中の原反に所定薬液を含浸させる工程や、搬送中の原反を折り畳みながら積層する工程や、積層後の原反を厚み方向に圧縮しつつ搬送した後に切断する工程等を有する。
【0005】
特許文献1や特許文献2に開示されている方法で製造されるウェットワイプスは、容器から1枚のシートが取り出される際に、次の1枚のシートが共に引っ張られて容器の取り出し口から突出する形態、所謂、ポップアップタイプの形態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-204118号公報
【特許文献2】特開2007-144053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、かかるポップアップタイプの形態のウェットワイプスでは、原反に対する所定薬液の含浸率を増加させると、原反同士が所定薬液の水膜によって連結し、容器から1枚ずつシートを取り出すことが困難になるため、原反に対する所定薬液の含浸率は、比較的低く抑えられてしまうという問題点があった。
【0008】
また、特許文献1に開示されている方法では、原反の積層前及び積層後の2段階の所定薬液の含浸工程が必要となり、装置が大型化し、積層後の原反に対して所定薬液を含浸するため、シートの積層体の表面部と中心部とで、所定薬液の含浸量にばらつきが生じるという問題点があった。
【0009】
さらに、特許文献2に開示されている方法では、原反に所定薬液を含浸させた後に、折り畳んだり圧縮したりするため、原反から所定薬液が搾り取られ、所望量の所定薬品を有する製品を製造することができなくなる可能性があるという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、所定薬液の含浸量のばらつきを防止し、所定薬液の含浸率を増加させることによる取り出し容易性の低下を防止できるウェットワイプスを製造することができるウェットワイプスの製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の特徴は、所定薬液を含浸させたシートの積層体からなるウェットワイプスの製造方法であって、前記所定薬液を含浸させたシートが折り重ねられた状態で複数枚積層されており、かつ、搬送装置によって連続搬送されている複数のシートの原反を搬送方向に直交する交差方向に沿って所定間隔で切断する工程と、前記搬送装置非当接面側から、切断された前記シートの積層体の搬送方向に沿った端部の両方をプレスしつつ搬送する工程とを有することを要旨とする。
【0012】
また、本発明の特徴は、所定薬液を含浸させたシートの積層体からなるウェットワイプスを製造するように構成されている製造装置であって、前記所定薬液を含浸させたシートが折り重ねられた状態で複数枚積層されており、かつ、搬送装置によって連続搬送されている複数のシートを搬送方向に直交する交差方向に沿って所定間隔で切断するように構成されている切断部と、前記搬送装置非当接面側から、プレス部によって、切断された前記シートの積層体の搬送方向に沿った端部の両方をプレスしつつ搬送するように構成されている搬送装置とを具備することを要旨とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所定薬液の含浸量のばらつきを防止し、所定薬液の含浸率を増加させることによる取り出し容易性の低下を防止できるウェットワイプスを製造することができるウェットワイプスの製造方法及び製造装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る製造装置によって製造されたウェットワイプスの包装体の斜視図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態に係る製造装置によって製造されたウェットワイプスが包装体内部で収容されている様子を示す図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施形態に係る製造装置によって製造されたウェットワイプスが包装体内部で収容されている様子を示す図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施形態に係る製造装置の概略図である。
【図5】図5は、本発明の第1の実施形態に係る製造装置の積層工程と、プレス工程に使用される装置を説明するための図である。
【図6】図6は、本発明の第1の実施形態に係るプレス装置の構成を説明するための図である。
【図7】図7(a)は、プレス装置によるプレス工程を実行しなかった包装体の取り出し試験の結果を表し、図7(b)は、積層体の全面をプレスした包装体の取り出し試験の結果を表し、図7(c)は、実施形態に係るプレス装置によるプレス工程を実行した包装体の取り出し試験の結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(本発明の第1の実施形態)
図1乃至図3を参照して、本発明の第1の実施形態に係る製造装置10によって製造されるウェットワイプスについて説明する。かかるウェットワイプスは、所定薬液を含浸させたシート710、720の積層体からなるものである。
【0016】
図1に示すように、かかるウェットワイプスの包装体100は、開口部21を有する包装体本体20と、包装体本体20の外面に取り付けられ開口部21を覆うラベル部材22と、包装体本体20の内部に収容されるシート710、720の積層体とを有する。
【0017】
かかるシート710、720の各々は、図2及び図3に示すように折り重ねられた状態で、包装体本体20の内部に収容されている。
【0018】
図2及び図3に示すように、シート720は、領域31Aと領域32Aと領域33Aと領域34Aと領域35Aと有し、シート710は、領域31Bと領域32Bと領域33Bと領域34Bと領域35Bと有する。
【0019】
ここで、シート720では、折り線1Aにおいて領域31Aと領域32Aとが折り重ねられ、折り線2Aにおいて領域32Aと領域33Aとが折り重ねられ、折り線3Aにおいて領域33Aと領域34Aとが折り重ねられ、折り線4Aにおいて領域34Aと領域35Aとが折り重ねられている。
【0020】
同様に、シート710では、折り線1Bにおいて領域31Bと領域32Bとが折り重ねられ、折り線2Bにおいて領域32Aと領域33Aとが折り重ねられ、折り線3Bにおいて領域33Aと領域34Aとが折り重ねられ、折り線4Bにおいて領域34Aと領域35Aとが折り重ねられている。
【0021】
なお、シート720では、折り線1A及び折り線2Aは、幅方向Wにおける折り線3Aと折り線4Aとの間に設けられており、シート710では、折り線1B及び折り線2Bは、幅方向Wにおける折り線3Bと折り線4Bとの間に設けられている。
【0022】
すなわち、シート720において、幅方向Wにおける折り線1Aと折り線2Aと間の領域は、領域31Aと領域32Aと領域33Aと領域34Aとが折り重ねられている4層構造となっており、それ以外の領域は、領域33Aと領域34Aとが折り重ねられている2層構造となっている。
【0023】
したがって、領域31A及び領域32Aは、積層体の一方の方向Lに沿って積層体の積層方向Sに隆起している。
【0024】
すなわち、領域31A及び領域32Aは、折り線1A及び折り線2Aにおいて折り重ねられることによって、積層体において一方の方向Lに沿って積層方向Sに隆起するように形成されている隆起領域PAを構成する。
【0025】
同様に、シート710において、幅方向Wにおける折り線1Bと折り線Bと間の領域は、領域31Bと領域32Bと領域33Bと領域34Bとが折り重ねられている4層構造となっており、それ以外の領域は、領域33Bと領域34Bとが折り重ねられている2層構造となっている。
【0026】
したがって、領域31B及び領域32Bは、積層体の一方の方向Lに沿って積層体の積層方向Sに隆起している。
【0027】
すなわち、領域31B及び領域32Bは、折り線1B及び折り線2Bにおいて折り重ねられることによって、積層体において長手方向Lに沿って積層方向Sに隆起するように形成されている隆起領域PBを構成する。
【0028】
また、積層方向Sにおいて、幅方向Wにおける折り線1Bと折り線Bと間の領域(すなわち、隆起領域PA)は、他方の方向Wにおける折り線1Bと折り線Bと間の領域(すなわち、隆起領域PB)と重複しないように配置されている。
【0029】
さらに、隆起領域PA、PBにおいて、積層方向Sに隣接するシート710、720同士は、所定薬液を介して密着して積層されている。
【0030】
ここで、隆起領域PA、PBに隣接する領域RA、RB、RCでは、積層方向Sに隣接するシート710、720の間に空隙が形成されており、所定薬液を介して密着して積層されていない。
【0031】
なお、本発明の第1の実施形態に係る製造装置10によって製造されるウェットワイプスは、上述したポップアップタイプの形態ではないため、包装体本体20の開口部21からシート720が取り出された場合であっても、シート710が共に引っ張られて開口部21から突出することはない。
【0032】
すなわち、使用者は、包装体本体20の開口部21から、領域31A及び領域32A(すなわち、シート720の隆起領域PA)を摘んで引っ張ることによってシート720を取り出した後、領域31B及び領域32B(すなわち、シート70の隆起領域PB)を摘んで引っ張ることによってシート710を取り出すことができる。
【0033】
以下、図4を参照して、本実施形態に係るウェットワイプスの製造方法について簡単に説明する。
【0034】
図4に示すように、ステップS101において、折り部5は、ロール状に巻かれた状態から繰り出されたシート71、72の各々を、搬送装置非当接面側に、所定形状(具体的には、図2及び図3に示す形状)に折り重ねる。
【0035】
例えば、シート71、72は、坪量25〜100g/mであり、レーヨンやコットンやパルプ等の親水性繊維とPETやPPやPEやアクリル等の単体とからなる繊維若しくは芯鞘構造やサイドバイサイドの構造の疎水性複合繊維からなる。
【0036】
また、シート71、72は、スパンレース法やエアレイド法や直接紡糸法によりシート化された不織布であり、所定薬液の含浸時における所定薬液の浸透性の観点から親水繊維を含む必要がある。
【0037】
ステップS102において、含浸部1は、搬送装置当接面側(搬送ロール2側)から、折り重ねられたシート71、72の各々に対して、所定量の所定薬液を含浸させる。
【0038】
ステップS103において、所定薬液を含浸させたシート71、72の各々は、搬送ロール2の表面に接しながら搬送される。
【0039】
ステップS104において、搬送コンベア3は、所定薬液を含浸させたシート71、72の各々を積層する。
【0040】
具体的には、搬送コンベア3では、所定薬液が含浸された面を搬送装置当接面側に向けた状態のシート71の上に、搬送装置非当接面側から、所定薬液が含浸された面を搬送装置当接面側に向けた状態のシート72が積層される。
【0041】
ステップS105において、切断部4は、搬送コンベア3を介して搬送されたシート71、72を、所定寸法のシート710、720に切断する。
【0042】
その後、積層工程S106において、切断されたシート710、720を所定枚数だけ積層した積層体800を得た後、プレス工程S107において、搬送ベルト14の非当接面側から、切断されたシート710,720の積層体800の幅方向外側の両端部分をプレスしつつ搬送する。包装工程S108において、積層体800を包装体本体20によって包装する。
【0043】
以下、図4乃至図6を参照して、本実施形態に係る製造装置10の各機能について説明する。
【0044】
図4に示すように、製造装置10は、折り部5と、含浸部1と、搬送ロール2と、搬送コンベア3、9、11、12と、切断部4と、プッシャー13と、プレス装置15と、を具備している。ここで、製造装置10では、搬送ロール2及び搬送コンベア3、9は、複数のシート71、72を連続搬送する搬送装置を構成する。また、搬送コンベア11、12、14は、積層体800を連続搬送する搬送装置を構成する。
【0045】
折り部5は、搬送装置非当接面側に、シート71、72の各々を折り重ねるように構成されている。具体的には、折り部5は、シート71、72が図2及び図3に示す形状となるように、シート71、72の各々を折り重ねるように構成されている。
【0046】
具体的には、折り部5は、搬送方向MDの折り線3A(又は、3B)に沿って、シート72(又は、71)の一方の側縁を含む領域31A/32A/33A(又は、31B/32B/33B)を搬送装置非当接面側に折り重ね、その後、搬送方向MDの折り線2A(又は、2B)に沿って、シート72(又は、71)の一方の側縁を含む領域31A/32A(又は、31B/32B)を搬送装置非当接面側に折り重ね、その後、搬送方向MDの折り線1A(又は、1B)に沿って、シート72(又は、71)の一方の側縁を含む領域31A(又は、31B)を搬送装置非当接面側に折り重ねるように構成されている。
【0047】
また、折り部5は、搬送方向MDの折り線4A(又は、4B)に沿って、シート72(又は、71)の他方の側縁を含む領域35A(又は、35B)を搬送装置当接面側に折り重ねるように構成されている。
【0048】
含浸部1は、搬送装置当接面側から、折り重ねられたシート71、72の各々に対して所定薬液を含浸させるように構成されている。
【0049】
例えば、含浸部1は、薬液タンクから定量ポンプを用いて、所定量の所定薬液を押し出すように構成されていてもよい。その結果、所定量の所定薬液が、含浸部1に設けられている細孔より吐出され、シート71、72の各々に接触することで、シート71、72の各々に所定量の所定薬液が含浸されるように構成されている。
【0050】
また、含浸部1は、シート71、72の重量に対して、例えば、3.5(3〜4)倍の重量の所定薬液を含浸させるように構成されていてもよい。
【0051】
なお、含浸部1は、含浸させる所定薬液の重量のシート71、72の重量に対する比率(すなわち、含浸率)を、適宜、調整可能である。
【0052】
ここで、シート71、72が搬送ロール2の表面に貼りつき、かつ、シート72がシート71の上に貼りつくために必要な含浸率は、例えば、シート71、72として、レーヨン繊維主体の38g/mのスパンレース不織布が用いられる場合には、1.5倍以上である。
【0053】
また、含浸部1は、所定薬液の塗工方法として、液滴又は霧状の所定薬液をシート71、72に付着させる方法を用いてもよい。ただし、シート71、72に対する所定薬液の含浸面を搬送ロール2の表面に接触させる際の薬液含浸効率及び工程汚染を考慮すると、上述の方法が好ましい。
【0054】
搬送ロール2は、駆動源に接続されており、独自で回転している表面が平滑な駆動ロールである。
【0055】
搬送コンベア3は、搬送ロール2と実質同等の搬送速度で、シート71、72の各々を搬送するように構成されている。
【0056】
切断部4は、所定薬液を含浸させたシート71、72が折り重ねられた状態で、複数枚積層されたの積層体を切断するように構成されている。例えば、切断部4は、表面に切り刃を有するカッターロール及び表面が平滑なアンビルロールによって、連続搬送されている複数のシートを搬送方向に直交する方向に沿って所定間隔で切断するように構成されている。
【0057】
また、搬送コンベア9は、搬送コンベア3と同様に、上方と下方に設けられていてもよい。かかる場合、シート710、720の積層体は、上方に配置された上方搬送コンベアと下方に配置された下方搬送コンベアとに挟み込まれた状態で搬送される。かかる上方搬送コンベアには、凹部及び凸部が形成されていてもよい。
【0058】
この結果、切断部4によって切断された後のシート710、720の積層体の搬送コンベア9への転写性及び搬送安定性を向上することができる。
【0059】
ここで、搬送コンベア9における搬送速度は、搬送コンベア3及び切断部4における搬送速度よりも3%程度速い。
【0060】
搬送コンベア11は、搬送方向MDに交差する交差方向CDに所定の間隔をもって配置された搬送コンベア11aと搬送コンベア11bとを有する。搬送コンベア11a,11bには、サクション機構(不図示)が設けられており、搬送コンベア9によって搬送された、切断されたシート710,720の幅方向外側の端部を搬送面に吸着した状態で搬送することができる。搬送コンベア11aと搬送コンベア11bとの間には、プッシャー13が配置されている。
【0061】
プッシャー13は、搬送コンベア11によって搬送されたシート710,720を下方に、すなわち、搬送コンベア11a,11bの搬送面から引き離す方向に移動可能に配置されている。
【0062】
搬送コンベア11a,11bから引き離されたシート710,720が所定枚数積層されることによって、積層体800が形成された後、ストッパーSが解放されて、積層体800が搬送コンベア12によってプレス装置15に向けて搬送される。
【0063】
プレス装置15は、切断されたシート710,720が積層されてなる積層体800の搬送方向に沿った端部の両方を搬送コンベア14の非当接面側からプレス部によってプレスしつつ搬送するように構成されている。
【0064】
プレス装置15は、複数のローラ201,202,203と、複数のローラ201,202,203に巻回されたプレスベルト204a,204bと、積層体800を搬送する搬送ベルト205,206とを有する。
【0065】
複数のローラ201,202,203のいずれかのローラは、駆動源に接続されて、プレスベルト204a,204bを所定の搬送速度及び搬送方向に駆動するように制御されている。搬送ベルト205は、搬送ベルト14に相当する。
【0066】
プレスベルト204a,204bは、ローラ201,202,203に巻回されており、積層体800の搬送速度及び搬送方向に併せて駆動するように構成されている。プレスベルト204a,204bは、搬送方向MDに直交する交差方向CDに所定間隔を開けて配置されている。ここで、所定間隔とは、プレスベルト204a,204bが積層体800の交差方向CDにおける両端部分800A,800Bに当接できる間隔である。
【0067】
本実施形態にかかるプレスベルト204a,204bは、丸チューブ状に形成されている。すなわち、プレスベルト204a,204bの断面は、略円形である。
【0068】
ローラ201,202,203に巻回されたプレスベルト204a,204bのローラの回転軸から最も離れた最外周部分と、搬送ベルト205の搬送面との間隔D2は、積層体800の積層高さD1よりも短く形成されている。間隔D2は、薬液が必要以上に絞り出されることを防止する高さに調整されている。
【0069】
また、プレスベルト204a,204bは、プレスベルト204a,204bの最外周部分と搬送ベルト205との間隔がD1からD2に漸減するように傾斜されている。これにより、搬送される積層体800の幅方向外側の両端部分800A,800Bに徐々に力が加わるようになっている。
【0070】
本実施形態に係る製造方法及び製造装置10によれば、上述のように構成されたプレス装置15によって、積層体800の中央領域800Cを除く両端部分800A,800Bをプレスしつつ搬送することができる。
【0071】
本実施形態に係る製造方法では、シート71,72が重ねられた状態で搬送され、切断された後、所定枚数積層されるようになっている。搬送中に重ねられるシート71,72同士は、搬送コンベア3によって、互いに十分に押さえつけられるが、切断後の積層工程S106においては、搬送中に搬送コンベア3によって押さえつける力に比べて、押さえ力が弱い。
【0072】
一因は、積層工程S106の後、積層体800の全面をプレスすることもできるが、薬液が積層体800の下層側へ移動してしまい、上層側のシートの液量が不足するため、押圧力を高められないことにある。
【0073】
このように、搬送中に重ねられたシート間の接着力と、積層工程S106において重ねられた際のシート間の接着力とに差があると、強く押さえつけられたシートが複数枚纏めて取り出されることが起こりうる。
【0074】
これに対して、本実施形態に係る製造方法では、積層工程S107の後、所定枚数積層された積層体800の全面を均一にプレスするのではなく、プレス装置15によって、両端部分800A,800Bをプレスする。
【0075】
このため、複数枚積層後の積層体800のシート710,720間の接着性が必要以上に高くならず、シート720の次のシート710との接着性も確保できるため、複数枚のシートが纏めて取り出されてしまうことを防止できる。
【0076】
また、積層体800の全面をプレスしないため、薬液が積層体800の上層のシートから下方のシートへ移動することによる含液量のばらつきを防止できる。
【0077】
本実施形態に係る製造方法及び製造装置10によれば、シートに染み込む所定薬液の量を上層側にあるシートから下層側にあるシートまで均一にすることができる。また、シートに染み込む所定薬液の量を増加させることによる取り出し容易性の低下を防止できる。
【0078】
本実施形態に係る製造装置10では、プレスベルト204a,204bは、丸チューブ状に形成されている。これにより、積層体800を構成する上面側のシートと、プレス装置15を構成するローラ202,203とを離すことができ、上面側のシートのローラ202,203へ巻き込みを防止できる。
【0079】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【実施例】
【0080】
72枚のシートからなる積層体を包装体本体によって包装し、シートを1枚ずつ取り出す取り出し試験を行った。結果を図7(a)〜(c)に示す。具体的には、シートが4枚重ねられて1セットとされる製造ラインを構成した。すなわち、18セットからなる積層体を作成し、包装体に封入した。
【0081】
図7(a)は、プレス工程を実行しなかった積層体の取り出し試験の結果を表し、図7(b)は、全面をプレスした積層体の取り出し試験の結果を表し、図7(c)は、実施形態に係るプレス装置によるプレス工程を実行した積層体の取り出し試験の結果を表す。図7(a)〜(c)の縦軸は、ポップアップ(1枚のシートに連なって次のシートが取り出される現象)が起きたときの、次のシートが引き出された量を表す。単位は、長さ(mm)である。
【0082】
結果によれば、プレス工程を実行しなかった積層体では、1度に4枚のシートが取り出される傾向が強いことが判った。すなわち、製造ラインにおいて重ねられた1セットのシートが纏めて取り出され易いことが判った。また、全面をプレスした積層体であっても、製造ラインにおいて重ねられた1セットのシートが纏めて取り出され易いことが判った。
【0083】
これに対して、実施形態に係るプレス装置によるプレス工程を実行した積層体は、ポップアップが起こりにくく、全シートを1枚ずつ取り出せる傾向が強いことが判った。
【符号の説明】
【0084】
1…含浸部、 2…搬送ロール、 3…搬送コンベア、 4…切断部、 5…折り部、 9…搬送コンベア、 10…製造装置、 11…搬送コンベア、 11a,11b…搬送コンベア、 12…搬送コンベア、 13…プッシャー、 14…搬送ベルト、 15…プレス装置、 20…包装体本体、 21…開口部、 22…ラベル部材、 70…シート、 71,72…シート、 100…包装体、 201,202,203…ローラ、 204a,204b…プレスベルト、 205,206…搬送ベルト、 710,720…シート、 800…積層体、 800A,800B…両端部分、 800C…中央領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定薬液を含浸させたシートの積層体からなるウェットワイプスの製造方法であって、
前記所定薬液を含浸させたシートが折り重ねられた状態で複数枚積層されており、かつ、搬送装置によって連続搬送されている複数のシートの原反を搬送方向に直交する交差方向に沿って所定間隔で切断する工程と、
前記搬送装置非当接面側から、切断された前記シートの積層体の搬送方向に沿った端部の両方をプレスしつつ搬送する工程とを有することを特徴とするウェットワイプスの製造方法。
【請求項2】
所定薬液を含浸させたシートの積層体からなるウェットワイプスを製造するように構成されている製造装置であって、
前記所定薬液を含浸させたシートが折り重ねられた状態で複数枚積層されており、かつ、搬送装置によって連続搬送されている複数のシートを搬送方向に直交する交差方向に沿って所定間隔で切断するように構成されている切断部と、
前記搬送装置非当接面側から、プレス部によって、切断された前記シートの積層体の搬送方向に沿った端部の両方をプレスしつつ搬送するように構成されている搬送装置とを具備することを特徴とする製造装置。
【請求項3】
前記プレス部は、丸チューブ状に形成されており、前記シートの搬送速度及び搬送方向に併せて駆動するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−75591(P2012−75591A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222541(P2010−222541)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)