説明

ウェブロール巻芯の滑り検知方法及び検知装置

【課題】ウェブロール巻芯とチャックとの間に発生する滑りを迅速且つ確実に検知し、滑りに起因して発生する各種トラブルに対して事前に対処することを可能とするウェブロール巻芯の滑り検知方法及び検知装置を提供する。
【解決手段】モータ3の回転速度に基づき算出されるウェブWのライン速度V及びウェブロール回転速度Nwから第1ウェブロール径D1を演算し、また、ウェブロール巻芯13の初期径D0、モータ3の積算回転数mから算出されるウェブロール15の積算回転数n及びウェブWの所定厚さtに基づき第2ウェブロール径D2を演算し、第1ウェブロール径D1と第2ウェブロール径D2との径差の絶対値と所定の閾値とを比較するとともに、径差の絶対値が所定の閾値を越えている場合にウェブロール巻芯13と各チャック8との間で滑りが発生した判断するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブロール巻芯とその両端部を把持するチャックとの間に滑りが発生した際に、その滑りを迅速且つ確実に検知して早期にウェブ巻取装置の自動停止等の措置を講じることが可能なウェブロール巻芯の滑り検知方法及び検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種のウェブをウェブロール巻芯に巻き取るウェブ巻取装置においては、ウェブロール巻芯の両端部をチャックにより把持し、チャックが固定された回転軸をモータにより回転させることにより、ウェブロール巻芯にウェブを巻き取るように構成されているのが一般的である。
ここに、モータの回転力を回転軸からチャックを介してウェブロール巻芯に伝達するについて、チャックの構造に起因して各種の方法が採用されている。
【0003】
例えば、チャックにキーを設けるとともに、ウェブロール巻芯にキー溝を形成し、キーをキー溝に嵌合することによりキーの剪断応力を介してチャックの回転力をウェブロール巻芯に伝達するように構成したウェブ巻取装置が知られている。
【0004】
また、特開2007−131419号公報に記載されているように、チャック本体の外周に一対のテーパピストンを嵌装し、テーパピストンを互いに近接させることによりチャック本体の外周に設けられた係合部材の環状弾性部材の外径を拡大して、巻取管の内周面に密着させチャックするように構成した巻取管のチャック装置が提案されている。
【0005】
更に、実開昭62−65449号公報に記載されているように、両端部に中空部を有する巻芯の両端から、帯状シートロールの軸線方向に移動可能な一対の回転支持体を挿入し、回転支持体の支持部を中空部内周面と係合させることにより、シートロールの左右両端面を支持するように構成した巻芯支持具が提案されている。
【0006】
また、実公平7−24350号公報に記載されているように、支持軸の端部外周に取り付けられた軸受の外側に鍔を固定するとともに、円筒状のノーズを支持軸の端部外方から軸受の外側に抜き差し可能に嵌合し、鍔とノーズとの接合部には、ノーズを鍔に結合する突起部と切欠部を設け、ノーズと鍔の結合状態でノーズと鍔に渡って廻り止め部材を挿通可能に構成したコアチャックが提案されている。
更に、実開平1−88649号公報に記載されているように、支持装置本体に挿嵌されて回転可能な軸受内に円錐部付センターコーン軸を摺動可能に嵌装し、巻取紙自重に基づくスラストに対応したばねによる付勢力を介して、センターコーン軸により巻取紙を適度の嵌合力で支持するとともに、軸受端面に設けられた摩擦部材を巻取紙の端面に押し付けることにより軸受及びセンターコーン軸と巻取紙の端面とのスライドを効果的に防止するように構成された巻取紙支持装置が提案されている。
【特許文献1】特開2007−131419号公報
【特許文献2】実開昭62−65449号公報
【特許文献3】実公平7−24350号公報
【特許文献4】実開平1−88649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記したように、チャックにキーを設けるとともに、ウェブロール巻芯にキー溝を形成し、キーをキー溝に嵌合することによりキーの剪断応力を介してチャック
の回転力をウェブロール巻芯に伝達するように構成したウェブ巻取装置では、チャックに設けられたキーをウェブロールのキー溝に嵌合して取り付ける構造であることから、ウェブロール巻芯とチャックの間で滑りは発生し難いものであるが、ウェブロールの取り付け時にキーとキー溝の位置合わせを自動で行うことは困難であり、従って、ウェブロールを自動的に着脱する方式の装置に採用することが困難なものである。
【0008】
また、特許文献1に記載された巻取管のチャック装置においても、その構造的に巻取管とチャックの間で滑りは発生し難いものであるが、一対のテーパピストンを移動させるためのエアー配管及びその機構が必要となり、従って、その構造は極めて複雑なものであり、また、巻取管の自動着脱の点においても種々難点が存在する。
【0009】
これに対して、前記特許文献2乃至4に記載された装置では、ウェブロール巻芯等を一対のチャックに対して着脱するに際して、一般に汎用されているエアシリンダを使用して各チャックの移動を行えば良く、他の特別な構成を設ける必要はない。これより、各特許文献に記載された装置は、ウェブロール巻芯を各チャックに対して自動的に着脱する方式の装置に適している。
【0010】
しかしながら、前記各特許文献に記載された装置では、基本的に、ウェブロール巻芯の両端面と各チャックとの間に発生する摩擦力を介して、ウェブロール巻芯を支持する構成であることから、エアシリンダに生じた異常に起因して供給空気圧が低下したり、摩擦材の摩耗が進行した場合、ウェブ巻芯と各チャックとの間の摩擦力が低下してしまう。かかる場合、ウェブ巻芯と各チャックとの間で滑りが発生する虞がある。
【0011】
このようにウェブ巻芯と各チャックとの間で滑りが発生すると、ウェブロールの繰出や巻取を正常に行うことができなくなってしまう。また、ウェブロール巻芯の両端部がチャックにより削られていって、その両端部の肉厚が薄くなって強度低下してしまい、その結果、ウェブロール巻芯が破損して落下してしまう虞がある。
【0012】
更に、ウェブロール巻芯と各チャックとの間に滑りが発生した場合においても、これに起因して特に異音が発生することは少なく、従って、オペレータは、ウェブロールの巻取が正常に行われなくなる事態やウェブロール巻芯が落下してしまう虞がある状況を気付き難く、このような事態や状況が発生する前に対処することは困難なものとなる。
【0013】
本発明は前記従来の問題点を解消するためになされたものであり、ウェブロール巻芯とチャックとの間に発生する滑りを迅速且つ確実に検知し、滑りに起因して発生する各種トラブルに対して事前に対処することを可能とするウェブロール巻芯の滑り検知方法及び検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため、請求項1に係るウェブロール巻芯の滑り検知方法は、ウェブロール巻芯の両端部をチャックにより把持するとともに、チャックが固定された回転軸をモータにより回転してウェブロール巻芯に所定厚さを有するウェブを巻き取るウェブ巻取装置において、前記モータの回転速度に基づき算出されるウェブのライン速度及びウェブロール回転速度から第1ウェブロール径を演算し、前記ウェブロール巻芯の初期径、前記モータの積算回転数から算出されるウェブロールの積算回転数及び前記ウェブの所定厚さに基づき第2ウェブロール径を演算し、前記第1ウェブロール径と第2ウェブロール径との径差と所定の閾値とを比較するとともに、径差が所定の閾値を越えている場合にウェブロール巻芯と各チャックとの間で滑りが発生したと判断することを特徴とする。
【0015】
請求項2に係るウェブロール巻芯の滑り検知方法は、ウェブロール巻芯の両端部をチャ
ックにより把持するとともに、チャックが固定された回転軸をモータにより回転してウェブロール巻芯に所定厚さを有するウェブを巻き取るウェブ巻取装置において、前記モータの回転速度に基づき算出されるウェブのライン速度及びウェブロール回転速度から第1ウェブロール径を演算し、前記ウェブロール巻芯の初期径から算出される巻芯断面積と、ウェブロール巻芯に巻き取られたウェブの長さ及びウェブの所定の厚さから算出されるウェブ断面積とに基づき、第3ウェブロール径を演算し、前記第1ウェブロール径と第3ウェブロール径との径差と所定の閾値とを比較するとともに、径差が所定の閾値を越えている場合にウェブロール巻芯と各チャックとの間で滑りが発生したと判断することを特徴とする。
【0016】
請求項3に係るウェブロール巻芯の滑り検知方法は、ウェブロール巻芯の両端部をチャックにより把持するとともに、チャックが固定された回転軸をモータにより回転してウェブロール巻芯に所定厚さを有するウェブを巻き取るウェブ巻取装置において、前記モータの回転速度に基づき算出されるウェブのライン速度及びウェブロール回転速度から第1ウェブロール径を演算し、前記ウェブロール巻芯に巻き取られるウェブ表面との距離をセンサにより検出するとともに、その検出されたセンサとウェブ表面間の距離及びセンサとウェブロール巻芯の中心間の距離とに基づき第4ウェブロール径を演算し、前記第1ウェブロール径と第4ウェブロール径との径差と所定の閾値とを比較するとともに、径差が所定の閾値を越えている場合にウェブロール巻芯と各チャックとの間で滑りが発生したと判断することを特徴とする。
【0017】
請求項4に係るウェブロール巻芯の滑り検知装置は、ウェブロール巻芯の両端部をチャックにより把持するとともに、チャックが固定された回転軸をモータにより回転してウェブロール巻芯に所定厚さを有するウェブを巻き取るウェブ巻取装置において、前記モータの回転速度に基づき算出されるウェブのライン速度及びウェブロール回転速度から第1ウェブロール径を演算する第1演算手段と、前記ウェブロール巻芯の初期径、前記モータの積算回転数から算出されるウェブロールの積算回転数及び前記ウェブの所定厚さに基づき第2ウェブロール径を演算する第2演算手段と、前記第1ウェブロール径と第2ウェブロール径との径差と所定の閾値とを比較するとともに、径差が所定の閾値を越えている場合にウェブロール巻芯と各チャックとの間で滑りが発生したと判断する滑り判断手段とを備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項5に係るウェブロール巻芯の滑り検知装置は、ウェブロール巻芯の両端部をチャックにより把持するとともに、チャックが固定された回転軸をモータにより回転してウェブロール巻芯に所定厚さを有するウェブを巻き取るウェブ巻取装置において、前記モータの回転速度に基づき算出されるウェブのライン速度及びウェブロール回転速度から第1ウェブロール径を演算する第1演算手段と、前記ウェブロール巻芯の初期径から算出される巻芯断面積と、ウェブロール巻芯に巻き取られたウェブの長さ及びウェブの所定の厚さから算出されるウェブ断面積とに基づき、第3ウェブロール径を演算する第3演算手段と、前記第1ウェブロール径と第3ウェブロール径との径差と所定の閾値とを比較するとともに、径差が所定の閾値を越えている場合にウェブロール巻芯と各チャックとの間で滑りが発生したと判断する滑り判断手段とを備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項6に係るウェブロール巻芯の滑り検知装置は、ウェブロール巻芯の両端部をチャックにより把持するとともに、チャックが固定された回転軸をモータにより回転してウェブロール巻芯に所定厚さを有するウェブを巻き取るウェブ巻取装置において、前記モータの回転速度に基づき算出されるウェブのライン速度及びウェブロール回転速度から第1ウェブロール径を演算する第1演算手段と、前記ウェブロール巻芯に巻き取られるウェブ表面との距離をセンサにより検出するとともに、その検出されたセンサとウェブ表面間の距離及びセンサとウェブロール巻芯の中心間の距離とに基づき第4ウェブロール径を演算す
る第4演算手段と、前記第1ウェブロール径と第4ウェブロール径との径差と所定の閾値とを比較するとともに、径差が所定の閾値を越えている場合にウェブロール巻芯と各チャックとの間で滑りが発生したと判断する判断手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
前記構成を有する請求項1に係るウェブロール巻芯の滑り検知方法では、モータの回転速度に基づき算出されるウェブのライン速度及びウェブロール回転速度から第1ウェブロール径を演算し、また、ウェブロール巻芯の初期径、モータの積算回転数から算出されるウェブロールの積算回転数及びウェブの所定厚さに基づき第2ウェブロール径を演算し、第1ウェブロール径と第2ウェブロール径との径差と所定の閾値とを比較するとともに、径差が所定の閾値を越えている場合にウェブロール巻芯と各チャックとの間で滑りが発生した判断するように構成されているので、ウェブをウェブロール巻芯に巻き取っていく際に現実のウェブロール径に関して相互に異なる2つの演算手法を使用して、それぞれ第1ウェブロール径及び第2ウェブロール径を演算して、第1ウェブロール径と第2ウェブロール径との径差と所定閾値と比較することによりウェブロール巻芯の滑りの発生の有無を検知することとなり、これよりウェブロール巻芯とチャックとの間に発生する滑りを迅速且つ確実に検知し、滑りに起因して発生する各種トラブルに対して事前に対処することが可能となる。
【0021】
請求項2に係るウェブロール巻芯の滑り検知方法では、モータの回転速度に基づき算出されるウェブのライン速度及びウェブロール回転速度から第1ウェブロール径を演算し、また、ウェブロール巻芯の初期径から算出される巻芯断面積と、ウェブロール巻芯に巻き取られたウェブの長さ及びウェブの所定の厚さから算出されるウェブ断面積とに基づき、第3ウェブロール径を演算し、第1ウェブロール径と第3ウェブロール径との径差と所定の閾値とを比較するとともに、径差が所定の閾値を越えている場合にウェブロール巻芯と各チャックとの間で滑りが発生した判断するように構成されているので、ウェブをウェブロール巻芯に巻き取っていく際に現実のウェブロール径に関して相互に異なる2つの演算手法を使用して、それぞれ第1ウェブロール径及び第3ウェブロール径を演算して、第1ウェブロール径と第3ウェブロール径との径差と所定閾値と比較することによりウェブロール巻芯の滑りの発生の有無を検知することとなり、これよりウェブロール巻芯とチャックとの間に発生する滑りを迅速且つ確実に検知し、滑りに起因して発生する各種トラブルに対して事前に対処することが可能となる。
【0022】
請求項3に係るウェブロール巻芯の滑り検知方法では、モータの回転速度に基づき算出されるウェブのライン速度及びウェブロール回転速度から第1ウェブロール径を演算し、また、ウェブロール巻芯に巻き取られるウェブ表面との距離をセンサにより検出するとともに、その検出されたセンサとウェブ表面間の距離及びセンサとウェブロール巻芯の中心間の距離とに基づき第4ウェブロール径を演算し、第1ウェブロール径と第4ウェブロール径との径差と所定の閾値とを比較するとともに、径差が所定の閾値を越えている場合にウェブロール巻芯と各チャックとの間で滑りが発生した判断するように構成されているので、ウェブをウェブロール巻芯に巻き取っていく際に現実のウェブロール径に関して相互に異なる2つの演算手法を使用して、それぞれ第1ウェブロール径及び第4ウェブロール径を演算して、第1ウェブロール径と第4ウェブロール径との径差と所定閾値と比較することによりウェブロール巻芯の滑りの発生の有無を検知することとなり、これよりウェブロール巻芯とチャックとの間に発生する滑りを迅速且つ確実に検知し、滑りに起因して発生する各種トラブルに対して事前に対処することが可能となる。
【0023】
請求項4に係るウェブロール巻芯の滑り検知装置では、第1演算手段を介してモータの回転速度に基づき算出されるウェブのライン速度及びウェブロール回転速度から第1ウェブロール径を演算し、また、第2演算手段を介してウェブロール巻芯の初期径、モータの
積算回転数から算出されるウェブロールの積算回転数及びウェブの所定厚さに基づき第2ウェブロール径を演算し、判断手段は、第1ウェブロール径と第2ウェブロール径との径差と所定の閾値とを比較するとともに、径差が所定の閾値を越えている場合にウェブロール巻芯と各チャックとの間で滑りが発生した判断するので、ウェブをウェブロール巻芯に巻き取っていく際に現実のウェブロール径に関して相互に異なる2つの演算手法を使用して、それぞれ第1ウェブロール径及び第2ウェブロール径を演算して、第1ウェブロール径と第2ウェブロール径との径差と所定閾値と比較することによりウェブロール巻芯の滑りの発生の有無を検知することとなり、これよりウェブロール巻芯とチャックとの間に発生する滑りを迅速且つ確実に検知し、滑りに起因して発生する各種トラブルに対して事前に対処することが可能となる。
【0024】
請求項5に係るウェブロール巻芯の滑り検知装置では、第1演算手段を介してモータの回転速度に基づき算出されるウェブのライン速度及びウェブロール回転速度から第1ウェブロール径を演算し、また、第3演算手段を介してウェブロール巻芯の初期径から算出される巻芯断面積と、ウェブロール巻芯に巻き取られたウェブの長さ及びウェブの所定の厚さから算出されるウェブ断面積とに基づき、第3ウェブロール径を演算し、判断手段は、第1ウェブロール径と第3ウェブロール径との径差と所定の閾値とを比較するとともに、径差が所定の閾値を越えている場合にウェブロール巻芯と各チャックとの間で滑りが発生した判断するように構成されているので、ウェブをウェブロール巻芯に巻き取っていく際に現実のウェブロール径に関して相互に異なる2つの演算手法を使用して、それぞれ第1ウェブロール径及び第3ウェブロール径を演算して、第1ウェブロール径と第3ウェブロール径との径差と所定閾値と比較することによりウェブロール巻芯の滑りの発生の有無を検知することとなり、これよりウェブロール巻芯とチャックとの間に発生する滑りを迅速且つ確実に検知し、滑りに起因して発生する各種トラブルに対して事前に対処することが可能となる。
【0025】
請求項6に係るウェブロール巻芯の滑り検知装置では、第1演算手段を介してモータの回転速度に基づき算出されるウェブのライン速度及びウェブロール回転速度から第1ウェブロール径を演算し、また、第4演算手段を介してウェブロール巻芯に巻き取られるウェブ表面との距離をセンサにより検出するとともに、その検出されたセンサとウェブ表面間の距離及びセンサとウェブロール巻芯の中心間の距離とに基づき第4ウェブロール径を演算し、判断手段は、第1ウェブロール径と第4ウェブロール径との径差と所定の閾値とを比較するとともに、径差が所定の閾値を越えている場合にウェブロール巻芯と各チャックとの間で滑りが発生した判断するように構成されているので、ウェブをウェブロール巻芯に巻き取っていく際に現実のウェブロール径に関して相互に異なる2つの演算手法を使用して、それぞれ第1ウェブロール径及び第4ウェブロール径を演算して、第1ウェブロール径と第4ウェブロール径との径差と所定閾値と比較することによりウェブロール巻芯の滑りの発生の有無を検知することとなり、これよりウェブロール巻芯とチャックとの間に発生する滑りを迅速且つ確実に検知し、滑りに起因して発生する各種トラブルに対して事前に対処することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係るウェブロール巻芯の滑り検知方法及び検知装置について、本発明を具体化した実施形態に基づき、図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係るウェブ巻取装置の概略構成について図1に基づき説明する。図1はウェブ巻取装置を模式的に示す説明図である。
【0027】
図1において、ウェブ巻取装置1には、ウェブ巻取駆動機構2が付設されている。ウェブ巻取駆動機構2は、駆動源としてモータ3を備えている。かかるモータ3の駆動軸4には第1タイミングプーリ5が固着されている。
また、ウェブ巻取機構2は、モータ3を介して回転駆動される中空状の回転駆動軸部材6を有し、この回転駆動軸部材6の一端(図1中左端)にはエアシリンダ7が付設されており、また、回転駆動軸部材6の他端(図1中右端)にはチャック8が設けられている。チャック8の一面には挿嵌部9が形成されており、挿嵌部9の周囲には摩擦部材10が配置されている。
ここに、チャック8は、回転駆動軸部材6に対してボルト等で固定されており、エアシリンダ7を介して圧縮空気を送出した際に、図1中右方向へ移動可能に構成されている。
【0028】
回転駆動軸部材6の中央部には、図1に示すように、第2タイミングプーリ11が固着されている。かかる第2タイミングプーリ11と前記した駆動軸4に固着されている第1タイミングプーリ5との間には、タイミングベルト12が罫装されている。ここに、第1タイミングプーリ5と第2タイミングプーリ11とは、モータ3の駆動軸4による回転が所定の減速比で回転駆動軸部材6に伝達されるように、それぞれの直径が決定されている。
【0029】
尚、図1に示すように、回転駆動軸部材6及びチャック8に対向して、同一の構成を有する回転駆動軸部材6及びチャック8が、配設されている。
【0030】
前記した一対の各チャック8の間には、ウェブロール巻芯13が把持される。かかるウェブロール巻芯13は、中空孔14を形成した中空状に構成されており、ウェブの巻取時には、前記各チャック8の挿嵌部9が中空孔14に嵌合される。このとき、ウェブロール巻芯13の各端面は、チャック8にて挿嵌部9に周囲に配置された摩擦部材10と密着される。
尚、ウェブロール巻芯13にウェブが巻き取られていくと、ウェブロール15となる。
【0031】
続いて、前記ウェブ巻取装置1を使用するウェブ巻取システムの概略構成について図2に基づき説明する。図2はウェブ巻取システムを模式的に示す説明図である。
図2に示すウェブ巻取システムにおいて、ウェブ巻取装置1の上流側(図2中左側)には、ウェブWのライン送り機構30が配設されている。このライン送り機構30において、ウェブWのライン送りを行うライン送りモータ20が設けられており、このライン送りモータ20の駆動軸21にはタイミングプーリ22が固着されている。
また、タイミングプーリ22の上方には、ライン送りロール23が固着されたライン送り駆動軸(図示せず)が配置されており、かかるライン送り駆動軸には、タイミングプーリ24が固着されている。タイミングプーリ22とタイミングプーリ24との間には、タイミングベルト25が罫装されている。ここに、タイミングプーリ22とタイミングプーリ24とは、ライン送りモータ20の駆動軸21の回転が所定の減速比でライン送り駆動軸部材に伝達されるように、それぞれの直径が決定されている。
更に、ライン送りロール23には、間にウェブWを介在させた状態でライン送りロール23に当接する当接ロール26が配置されている。
ここに、ライン送りロール23の径は、固定的に決定されており、これに基づきウェブWのライン速度を決定する基準ロールとなる。
また、ライン送り機構30の下流側には、ダンサ機構16が配設されている。ダンサ機構16は、一対の送りローラ17、17を備え、各送りローラ17の間にはダンサローラ18が配置されている。また、ダンサローラ18には、その上下方向の移動量を検出するダンサ位置検出器19が付設されている。かかるダンサ位置検出器19は、ウェブWの張力の変化に基づくダンサローラ18の位置の変化を検出するものであり、その検出結果は、ダンサ機構16を通過するウェブWのライン速度が一定となるように、ダンサローラ18の上下移動の制御を行う際に利用される。
【0032】
前記ウェブ巻取装置1及びこれを使用したウェブ巻取システムを介してウェブWを巻き
取る動作につき説明する。
先ず、図2示すように、ウェブWをライン送り機構30のライン送りロール23と当接ロール26の間を挿通させるとともに、ダンサ機構16に通過させ、ウェブWの先端をウェブロール巻芯13に固定する。この後、図1に示すウェブ巻取装置1において、一対のチャック8の間にウェブロール巻芯13が配置され、この後エアシリンダ7が駆動される。これにより各チャック8の挿嵌部9が、ウェブロール巻芯13の中空孔14に挿嵌され、各チャック8の摩擦部材10はウェブロール巻芯13の両端面に密着される。この結果、ウェブロール巻芯13は、一対のチャック8介して把持される。
【0033】
次に、ライン送りモータ20が駆動されるとともにモータ3が駆動される。
ライン送りモータ20の駆動軸21が回転されることに基づき、タイミングプーリ22、タイミングベルト25、タイミングプーリ24からライン送り駆動軸、ライン送りロール23にライン送りモータ20の回転が伝達される。これにより、ウェブWは、ライン送りロール23と当接ロール26を介して、所定のライン速度で下流側にライン送りされる。同時に、モータ3の駆動軸4が回転されることに基づき、第1タイミングプーリ5、タイミングベルト12、第2タイミングプーリ11から回転駆動軸部材6にモータ3の回転が伝達される。これにより、ライン送り機構30から送られたウェブWは、ダンサ機構16を経てウェブロール巻芯13の周面に巻き取られていく。
【0034】
続いて、ウェブロール巻芯13にウェブWが巻き取られることに基づき形成されていくウェブロール15のウェブロール径を求める各種の方法について説明する。
【0035】
[第1方法]
先ず、ウェブロール径を求める第1方法について説明する。かかる第1方法は、モータ3の回転速度に基づき算出されるウェブWのライン速度及びウェブロール15の回転速度からウェブロール径を求める方法である。このように求められるウェブロール径を、以下便宜的に第1ウェブロール径と呼称する。
【0036】
ここに、実際のウェブロール径をD(mm)、ウェブWのライン速度をV(m/min)、ウェブロール15の回転速度をNw(rev/min)とすると、次の数式1が成立する。
【数1】

【0037】
前記数式1中、ライン速度Vは、ウェブ巻取システムにおいてコントローラに予め設定されるライン速度指令値やライン速度基準となるライン送りロール23を駆動するライン送りモータ20の回転速度等から求めることができる。
【0038】
前記数式1を変形すると、第1ウェブロール径D1を求める下記数式2が得られる。
【数2】

【0039】
第1ウェブロール径D1を求めるには、ウェブロール15の回転数を求める必要があるが、かかるウェブロール15の回転数は、モータ3の回転速度と減速比とに基づき算出することができる。
ここに、モータ3の回転速度をNm(rev/min)、減速比(第1タイミングプー
リ5と第2タイミングプーリ11との直径比で定義される)をGとすると、ウェブロール15の回転数は、下記数式3で表される。
【0040】
【数3】

【0041】
そして、数式2を数式3に代入すると、第1ウェブロール径D1を算出するための数式4が得られる。
【数4】

【0042】
[第2方法]
次に、ウェブロール径を求める第2方法について説明する。かかる第2方法は、ウェブロール巻芯13の初期径、モータ3の積算回転数から算出されるウェブロール15の積算回転数及びウェブWの厚さに基づいてウェブロール径を求める方法である。このように求められるウェブロール径を、以下便宜的に第2ウェブロール径と呼称する。
【0043】
具体的には、ウェブロール15が1回転する毎にウェブWの厚さの2倍を加算してウェブロール径を求める方法であり、ウェブロール巻芯13につき初期設定される初期径をD0(mm)、ウェブWの厚さをt(mm)、及び、初期径設定後からのウェブロール15の積算回転数をn(回)とすると、下記数式5が成立する。
【0044】
【数5】

ここに、ウェブロール15が1回転すると、その半径はt増加し、また、その直径は
2t増加する。
【0045】
また、初期径設定後からのモータ3の積算回転数をmとし、減速比をGとすると、ウェブロール15の積算回転数nは、下記数式6で表される。
【数6】

【0046】
そして、数式5と数式6とから、第2ウェブロール径D2は、下記数式7で求めることができる。
【数7】

【0047】
[第3方法]
次に、ウェブロール径を求める第3方法について説明する。かかる第3方法は、ウェブロール巻芯13の初期径から算出される巻芯断面積と、ウェブロール巻芯13に巻き取られたウェブWの長さ及びウェブWの厚さから算出されるウェブ断面積とに基づき、ウェブロール径を求める方法である。このように求められるウェブロール径を、以下便宜的に第3ウェブロール径と呼称する。
【0048】
具体的には、ウェブロール15の総断面積を演算し、かかる総断面積からウェブロール径を求めるものであり、ウェブロールの総断面積S(mm2)は、下記数式8で表される。
【数8】

【0049】
前記数式8を変形すると、下記数式9が得られる。
【数9】

【0050】
ここで、ウェブロールの総断面積Sは、ウェブロール巻芯13の断面積S1(mm2)と巻き取ったウェブWの断面積S2(mm2)と加算して得られるので、ウェブロールの総断面積Sは下記数式10で表される。
【数10】

【0051】
前記ウェブロール巻芯13の断面積S1は、ウェブロール巻芯13の初期径D0から下記数式11に基づき算出できる。
【数11】

【0052】
また、巻き取ったウェブWの断面積S2は、ライン運転中に流れてウェブロール巻芯13に巻き取られたウェブWの断面積に等しいことから、ライン運転を開始してからの経過時点をT(sec)とすると、S2は下記数式12で算出することができる。
【数12】

【0053】
そして、数式9に数式10、数式11、数式12を代入すると、第3ウェブロール径D3は、下記数式13で表される。
【数13】

【0054】
[第4方法]
次に、ウェブロール径を求める第4方法について説明する。かかる第4方法は、ウェブロール巻芯13に巻き取られるウェブWの表面との距離をセンサにより検出するとともに、その検出されたセンサとウェブWの表面間の距離及びセンサとウェブロール巻芯13の中心間の距離とに基づき、ウェブロール径を求める方法である。このように求められるウェブロール径を、以下便宜的に第4ウェブロール径と呼称する。
【0055】
第4方法について、図3に基づき説明する。図3はウェブロール径を求める第4方法を説明するための説明図である。
図3において、ウェブロール15の中心からL1(mm)だけ離間した位置にセンサ40が配設されている。かかるセンサ40は、ウェブWが巻き取られるに従って、刻々と変化するウェブロール15の表面との距離L2(mm)を測定する。
【0056】
ここに、ウェブロール15の第4ウェブロール径D4は、その半径rを2倍して得られ、また、半径rは、図3から明かなように、r=L1−L2であるから、第4ウェブロール径D4は、下記数式14で表される。
【数14】

【0057】
続いて、前記したウェブ巻取装置1において、ウェブロール巻芯13とチャック8との間に滑りが発生した場合に、その滑りを検知する方法について説明する。
ウェブロール巻芯13と各チャック8との間で滑りが発生すると、ウェブロール15の回転速度は各チャック8の回転速度よりも遅くなる。これに基づき、ダンサ機構16のダンサローラ18は、ウェブWの張力を一定に保つべく、図2中下方側に移動する。
【0058】
これに対して、ウェブ巻取装置1側では、ダンサローラ18を中立位置に戻そうとして、モータ3の回転速度を大きくしてウェブロール15の周速をライン速度に等しくするように制御する。この結果、モータ3の回転速度は滑りが発生していない場合と比して速くなる。
【0059】
このようにウェブロール巻芯13と各チャック8との間に滑りが存在する場合、第1方法により演算される第1ウェブロール径D1は、数式4に示されている通り、モータ3の回転速度を式中で直接使用していることから、数式4から演算される第1ウェブロール径D1の値と実際のウェブロール径の値とは乖離してしまう。
【0060】
これに対して、第2方法及び第3方法では、数式7、数式13に示される通り、モータ3の回転速度を式中で直接使用していないことから、数式7や数式13から演算された第2ウェブロール径D2、第3ウェブロール径D3の値は、実際のウェブロール径の値とは大きく乖離しない。また、第4方法では、数式14に示されている通り、基本的にセンサ40を介して直接測定された距離L2を使用して第4ウェブロール径D4の演算を行うこ
とから、その演算される第4ウェブロール径D4の値と実際のウェブロール径の値とは大きく乖離しない。
【0061】
従って、第1方法により演算された第1ウェブロール径D1の値と、第2方法乃至第4方法により演算された第2ウェブロール径D2、第3ウェブロール径D3、第4ウェブロール径D4の値のいずれか1つとを比較することによって、ウェブロール巻芯13と各チャック8との間に発生する滑りを検知することが可能となる。
【0062】
ここで、下記の条件で、ウェブロール巻芯13と各チャック8との間で滑りが発生したものと仮定し、滑りが発生していない場合と比較して、ウェブロール径の値がどのように変化するかにつき説明する。
[条件]
(1)ライン速度V=100(m/min)
(2)減速比G=4
(3)ウェブロール径が300mmに到達した時点でウェブロール巻芯13と各チャック8との間で滑りが発生
(4)上記より演算された滑り発生前におけるモータ3の回転速度は、424.4(rev/min)
(5)ウェブWの厚さ=0.030mm
(6)滑りに起因してモータ3の回転速度は滑りが発生していない場合に比して10%速くなった
【0063】
前記条件に基づき、滑り発生時のモータ3の回転速度は、424.4×1.1=466.5(rev/min)となり、かかるモータ3の回転速度を数式4に代入することにより、第1ウェブロール径D1は、272.9mmが求められる。
【0064】
これに対して、第2方法により求められる第2ウェブロール径D2については、滑りの発生時にモータ3の回転速度が速くすることから、ウェブ厚さtが加算されていく周期が短くなる。
ここに、ウェブロール巻芯13と各チャック8との間で滑りが発生していない場合には、ウェブ厚さt×2が加算されていく周期は、60/424.4/4(60secを424.4/4で除する)で計算され、その値は0.565secに1回となる。一方、ウェブロール巻芯13と各チャック8との間で滑りが発生している場合には、ウェブ厚さt×2が加算されていく周期は、60/466.5/4(60secを466.5/4で除する)で計算され、その値は0.514secに1回となる。
【0065】
また、第3方法により求められる第3ウェブロール径D3については、その計算にモータ3の回転速度を使用していないことから、ウェブロール巻芯13と各チャック8との間に滑りが発生した場合と発生しない場合とで、計算結果に差が生じることはない。
【0066】
更に、第4方法により求められる第4ウェブロール径D4については、センサ40により直接測定された距離の値を使用してウェブロール径を求めていることから、ウェブロール巻芯13と各チャック8との間における滑りの発生の有無に影響されることはない。
【0067】
ここで、前記した条件下で、ウェブロール巻芯13と各チャック8との間で滑りが発生してから10sec後にモータ3の回転速度が、滑りが発生していない場合に比して10%速くなり、この状態で安定したものと仮定した場合における前記第1方法乃至第4方法で求められる各ウェブロール径の変化を図4に示す。
【0068】
図4から理解されるように、ウェブロール巻芯13と各チャック8との間で滑りが発生
すると、第1方法で演算される第1ウェブロール径D1は、滑りの発生後10sec経過するまでは、滑り時にダンサローラ18の下方への移動に起因してウェブWがダンサローラ18側に引張されることから、小さくなっていき、10sec後に安定すると、第1ウェブロール径D1は徐々に大きくなっていく。
【0069】
一方、第2方法乃至第4方法で演算される第2ウェブロール径D2、第3ウェブロール径D3は、前記したように、その演算にモータ3の回転速度を使用しておらず、また、第4ウェブロール径D4は、前記したように、その演算にモータ3の回転速度を使用せず、且つ、センサ40を介して直接測定された距離の値を使用して演算されることから、ウェブロール巻芯13と各チャック8との間に滑りが発生したとしても、殆ど影響を受けることなく、経過時間に従って一定率で大きくなっていく傾向がある。
【0070】
このように、図4から理解されるように、ウェブロール巻芯13と各チャック8との間で滑りが発生した場合、第1方法で演算される第1ウェブロール径D1と、第2方法乃至第4方法で演算される第2ウェブロール径D2、第3ウェブロール径D3、第4ウェブロール径D4との間には、明確な相違が生じることとなり、従って、第1方法により演算される第1ウェブロール径D1と、第2方法乃至第4方法のいずれか1つの方法により演算される第2ウェブロール径D2、第3ウェブロール径D3又は第4ウェブロール径D4とを比較することにより、ウェブロール巻芯13と各チャック8との間に滑りが発生したかどうかを検知することが可能となる。
【0071】
続いて、ウェブ巻取装置1のコントローラで行われる滑り検知手順について図5に基づき説明する。図5は一例として第1方法と第2方法を使用してウェブロール巻芯13と各チャック8との間で発生する滑りを検知する処理手順を示すフローチャートである。
【0072】
ウェブ巻取装置1のコントローラでは、第1方法及び第2方法を使用して常時ウェブロール15のロール径を演算しており、滑り検知制御が開始されると、先ず、ステップ(以下Sと略記する)1において第1ウェブロール径D1と第2ウェブロール径D2との差の絶対値が、所定の閾値を越えているかどうか判断される。
【0073】
第1ウェブロール径D1と第2ウェブロール径D2との差の絶対値が、所定の閾値を越えていると判断された場合(S1:YES)には、S2に移行する。一方、第1ウェブロール径D1と第2ウェブロール径D2との差の絶対値が、所定の閾値を越えていないと判断された場合(S1:NO)には、S5にて誤判定防止用のタイマをリセットしてS1に戻る。
【0074】
S2においては、誤判定防止用のタイマにより計時積算し、続くS3では、タイマにより所定時間がカウントアップされたかどうか判断される。所定時間がタイマによりカウントアップされていない場合(S3:NO)には、再度S1に戻って、第1ウェブロール径D1と第2ウェブロール径D2との差の絶対値が、所定の閾値を越えているかどうかの判断が行われる。
【0075】
S3にて、タイマにより所定時間がカウントアップされたと判断された場合(S3:YES)には、S4にて、ブザー等を鳴動させオペーレータに対して報知して警告し、また、ウェブ巻取装置1の自動停止等の安全処置動作を実行する。
【0076】
以上説明した通り、本実施形態に係るウェブ巻取装置1では、モータ3の回転速度に基づき算出されるウェブWのライン速度V及びウェブロール回転速度Nwから第1ウェブロール径D1を演算し、また、ウェブロール巻芯13の初期径D0、モータ3の積算回転数mから算出されるウェブロール15の積算回転数n及びウェブWの所定厚さtに基づき第
2ウェブロール径D2を演算し、第1ウェブロール径D1と第2ウェブロール径D2との径差の絶対値と所定の閾値とを比較するとともに、径差の絶対値が所定の閾値を越えている場合にウェブロール巻芯13と各チャック8との間で滑りが発生した判断するように構成されているので、ウェブWをウェブロール巻芯13に巻き取っていく際に現実のウェブロール径に関して相互に異なる2つの演算手法を使用して、それぞれ第1ウェブロール径D1及び第2ウェブロール径D2を演算して、第1ウェブロール径D1と第2ウェブロール径D2との径差の絶対値と所定閾値と比較することによりウェブロール巻芯13の滑りの発生の有無を検知することとなり、これよりウェブロール巻芯13とチャック8との間に発生する滑りを迅速且つ確実に検知し、滑りに起因して発生する各種トラブルに対して事前に対処することが可能となる。
【0077】
また、モータ3の回転速度に基づき算出されるウェブWのライン速度V及びウェブロール回転速度Nwから第1ウェブロール径D1を演算し、また、ウェブロール巻芯13の初期径D0から算出される巻芯断面積S1と、ウェブロール巻芯13に巻き取られたウェブWの長さ及びウェブWの所定の厚さtから算出されるウェブ断面積S2とに基づき、第3ウェブロール径D3を演算し、第1ウェブロール径D1と第3ウェブロール径D3との径差の絶対値と所定の閾値とを比較するとともに、径差の絶対値が所定の閾値を越えている場合にウェブロール巻芯13と各チャック8との間で滑りが発生した判断するように構成されているので、ウェブWをウェブロール巻芯13に巻き取っていく際に現実のウェブロール径に関して相互に異なる2つの演算手法を使用して、それぞれ第1ウェブロール径D1及び第3ウェブロール径D3を演算して、第1ウェブロール径D1と第3ウェブロール径D3との径差の絶対値と所定閾値と比較することによりウェブロール巻芯13の滑りの発生の有無を検知することとなり、これよりウェブロール巻芯13とチャック8との間に発生する滑りを迅速且つ確実に検知し、滑りに起因して発生する各種トラブルに対して事前に対処することが可能となる。
【0078】
更に、モータ3の回転速度に基づき算出されるウェブWのライン速度V及びウェブロール回転速度Nwから第1ウェブロール径D1を演算し、また、ウェブロール巻芯13に巻き取られるウェブ表面との距離をセンサ40により検出するとともに、その検出されたセンサ40とウェブ表面間の距離L2及びセンサ40とウェブロール巻芯13の中心間の距離L3とに基づき第4ウェブロール径D4を演算し、第1ウェブロール径D1と第4ウェブロール径D4との径差の絶対値と所定の閾値とを比較するとともに、径差の絶対値が所定の閾値を越えている場合にウェブロール巻芯13と各チャック8との間で滑りが発生した判断するように構成されているので、ウェブWをウェブロール巻芯13に巻き取っていく際に現実のウェブロール径に関して相互に異なる2つの演算手法を使用して、それぞれ第1ウェブロール径D1及び第4ウェブロール径D4を演算して、第1ウェブロール径D1と第4ウェブロール径D4との径差の絶対値と所定閾値と比較することによりウェブロール巻芯13の滑りの発生の有無を検知することとなり、これよりウェブロール巻芯13とチャック8との間に発生する滑りを迅速且つ確実に検知し、滑りに起因して発生する各種トラブルに対して事前に対処することが可能となる。
【0079】
尚、本実施形態は、本発明の要旨を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々のの改良、変形が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係るウェブロール巻芯の滑り検知方法及び検知装置は、ウェブロール巻芯とチャックとの間に発生する滑りを迅速且つ確実に検知し、滑りに起因して発生する各種トラブルに対して事前に対処することを可能となり、産業上利用可能性は大である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】ウェブ巻取装置を模式的に示す説明図である。
【図2】ウェブ巻取システムを模式的に示す説明図である。
【図3】ウェブロール径を求める第4方法を説明するための説明図である。
【図4】ウェブロール巻芯と各チャックとの間で滑りが発生してから10sec後にモータの回転速度が滑りが発生していない場合の比して10%速くなり、この状態で安定したものと仮定した場合における第1方法乃至第4方法で求められる各ウェブロール径の変化を示すグラフである。
【図5】第1方法と第2方法を使用してウェブロール巻芯と各チャックとの間で発生する滑りを検知する処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0082】
1 ウェブ巻取装置
2 ウェブ巻取機構
3 モータ
4 駆動軸
5 第1タイミングプーリ
6 回転駆動軸部材
7 エアシリンダ
8 チャック
11 第2タイミングプーリ
12 タイミングベルト
15 ウェブロール
40 センサ
W ウェブ
D1 第1ウェブロール径
D2 第2ウェブロール径
D3 第3ウェブロール径
D4 第4ウェブロール径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブロール巻芯の両端部をチャックにより把持するとともに、チャックが固定された回転軸をモータにより回転してウェブロール巻芯に所定厚さを有するウェブを巻き取るウェブ巻取装置において、
前記モータの回転速度に基づき算出されるウェブのライン速度及びウェブロール回転速度から第1ウェブロール径を演算し、
前記ウェブロール巻芯の初期径、前記モータの積算回転数から算出されるウェブロールの積算回転数及び前記ウェブの所定厚さに基づき第2ウェブロール径を演算し、
前記第1ウェブロール径と第2ウェブロール径との径差と所定の閾値とを比較するとともに、径差が所定の閾値を越えている場合にウェブロール巻芯と各チャックとの間で滑りが発生したと判断することを特徴とするウェブロール巻芯の滑り検知方法。
【請求項2】
ウェブロール巻芯の両端部をチャックにより把持するとともに、チャックが固定された回転軸をモータにより回転してウェブロール巻芯に所定厚さを有するウェブを巻き取るウェブ巻取装置において、
前記モータの回転速度に基づき算出されるウェブのライン速度及びウェブロール回転速度から第1ウェブロール径を演算し、
前記ウェブロール巻芯の初期径から算出される巻芯断面積と、ウェブロール巻芯に巻き取られたウェブの長さ及びウェブの所定の厚さから算出されるウェブ断面積とに基づき、第3ウェブロール径を演算し、
前記第1ウェブロール径と第3ウェブロール径との径差と所定の閾値とを比較するとともに、径差が所定の閾値を越えている場合にウェブロール巻芯と各チャックとの間で滑りが発生したと判断することを特徴とするウェブロール巻芯の滑り検知方法。
【請求項3】
ウェブロール巻芯の両端部をチャックにより把持するとともに、チャックが固定された回転軸をモータにより回転してウェブロール巻芯に所定厚さを有するウェブを巻き取るウェブ巻取装置において、
前記モータの回転速度に基づき算出されるウェブのライン速度及びウェブロール回転速度から第1ウェブロール径を演算し、
前記ウェブロール巻芯に巻き取られるウェブ表面との距離をセンサにより検出するとともに、その検出されたセンサとウェブ表面間の距離及びセンサとウェブロール巻芯の中心間の距離とに基づき第4ウェブロール径を演算し、
前記第1ウェブロール径と第4ウェブロール径との径差と所定の閾値とを比較するとともに、径差が所定の閾値を越えている場合にウェブロール巻芯と各チャックとの間で滑りが発生したと判断することを特徴とするウェブロール巻芯の滑り検知方法。
【請求項4】
ウェブロール巻芯の両端部をチャックにより把持するとともに、チャックが固定された回転軸をモータにより回転してウェブロール巻芯に所定厚さを有するウェブを巻き取るウェブ巻取装置において、
前記モータの回転速度に基づき算出されるウェブのライン速度及びウェブロール回転速度から第1ウェブロール径を演算する第1演算手段と、
前記ウェブロール巻芯の初期径、前記モータの積算回転数から算出されるウェブロールの積算回転数及び前記ウェブの所定厚さに基づき第2ウェブロール径を演算する第2演算手段と、
前記第1ウェブロール径と第2ウェブロール径との径差と所定の閾値とを比較するとともに、径差が所定の閾値を越えている場合にウェブロール巻芯と各チャックとの間で滑りが発生したと判断する滑り判断手段とを備えたことを特徴とするウェブロール巻芯の滑り検知装置。
【請求項5】
ウェブロール巻芯の両端部をチャックにより把持するとともに、チャックが固定された回転軸をモータにより回転してウェブロール巻芯に所定厚さを有するウェブを巻き取るウェブ巻取装置において、
前記モータの回転速度に基づき算出されるウェブのライン速度及びウェブロール回転速度から第1ウェブロール径を演算する第1演算手段と、
前記ウェブロール巻芯の初期径から算出される巻芯断面積と、ウェブロール巻芯に巻き取られたウェブの長さ及びウェブの所定の厚さから算出されるウェブ断面積とに基づき、第3ウェブロール径を演算する第3演算手段と、
前記第1ウェブロール径と第3ウェブロール径との径差と所定の閾値とを比較するとともに、径差が所定の閾値を越えている場合にウェブロール巻芯と各チャックとの間で滑りが発生したと判断する滑り判断手段とを備えたことを特徴とするウェブロール巻芯の滑り検知装置。
【請求項6】
ウェブロール巻芯の両端部をチャックにより把持するとともに、チャックが固定された回転軸をモータにより回転してウェブロール巻芯に所定厚さを有するウェブを巻き取るウェブ巻取装置において、
前記モータの回転速度に基づき算出されるウェブのライン速度及びウェブロール回転速度から第1ウェブロール径を演算する第1演算手段と、
前記ウェブロール巻芯に巻き取られるウェブ表面との距離をセンサにより検出するとともに、その検出されたセンサとウェブ表面間の距離及びセンサとウェブロール巻芯の中心間の距離とに基づき第4ウェブロール径を演算する第4演算手段と、
前記第1ウェブロール径と第4ウェブロール径との径差と所定の閾値とを比較するとともに、径差が所定の閾値を越えている場合にウェブロール巻芯と各チャックとの間で滑りが発生したと判断する判断手段とを備えたことを特徴とするウェブロール巻芯の滑り検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−132410(P2010−132410A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309922(P2008−309922)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】