説明

ウェブ状物巻き取り方法およびロール状物

【課題】
フィルムやシート等のウェブ状物の端部を接着して固定した部分の段差が原因となるウェブ状物の平面性不良欠陥を抑制することができるウェブ状物巻き取り用巻芯を開発し、これによるウェブ状物を巻き取ったロール状物を提供することにある。
【解決手段】
ウェブ状物を巻き取る巻芯が円筒状の芯材本体と該芯材本体の外周面に巻き付けられた緩衝材とからなり、該緩衝材には巻芯の長さ方向(軸線方向)にウェブ状物端部を落とし込むための凹状の溝が設けられており、該凹状の溝にはウェブ状物を固定するための粘着シートが固定され、該外周面緩衝材と該粘着性シートの段差が、巻き取るウェブ状物の厚みをDとした場合に0.5D〜1.5Dの範囲であることを特徴とするウェブ状物巻き取り用巻芯を用いて厚みDのウェブ状物を巻き取る巻き取り方法であり、これに厚さDのウェブ状物を巻き取ったことを特徴とするロール状物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムやシート等のウェブ状物を巻き取る方法およびロール状物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィルムやシートなどのウェブ状物(以下フィルムと省略することがある)をロール状に巻き取るには、円筒状の巻芯にフィルムの一端を粘着剤等で固定し、巻芯を回転させて巻き取る方法が一般的に用いられているが、フィルムの厚み偏差やポアソン比、表面のスベリ易さなどを考慮して巻き姿良く巻き取るには種々の工夫が必要である。特に巻芯にフィルムの一端を粘着剤等で固定する際には、粘着剤の厚みやフィルム自身の厚みにより巻芯表面と段差が生じ、その上に巻き取られるフィルムは段差の影響で平坦性が損なわれ、フィルムを用いて加工される製品によっては僅かな変形もその性能に影響するため、歩留まりを著しく悪化させてしまう。
【0003】
この段差痕を解決する手段として、巻芯に段差を設けてフィルム端部を沈みこませて段差を吸収する方法が考えられたり、巻芯自身の表面をフィルムよりも柔らかくしてフィルム端部が表面に沈み込み易いようにした構造が考案されている。
【0004】
例えば、巻芯の一部もしくは全面の硬度を柔らかくする手段としては、巻芯表面を弾性体で覆う方法(特許文献1および特許文献5参照)、巻芯に長さ方向に凹部を設け、該凹部内に粘着性を有する軟質樹脂を面一に埋設する方法(特許文献2)が提案されている。しかしながら、これらの方法では、フィルムの端部が巻芯表面に沈みこみきらずに段差跡が残る現象を完全には解消できない場合があり、特にフィルムの厚みが38μm以上のフィルムではその影響が顕著で改善に至らないことがある。また、フィルム端部を十分に沈みこませようとして巻芯全面の緩衝材を柔らかくしすぎると逆にフィルムが座屈してシワになってしまうこともある。
【0005】
また、フィルム端部を落とし込む場所を巻芯表面に確保する別の方法としては、巻芯表面に徐々に浅くなる切り込みを入れ段差を設ける方法(特許文献3および特許文献4参照。)が提案されている。しかしながら、この提案は一定の効果はあるが、斜めに加工しない端部の角(かど)の影響が大きく段差跡が残る場合があり、左記問題を解消するためは高度な加工精度が要求されるためにコストアップが大きく、これらの点で不十分である。
【0006】
また別に、型押しや緩衝材の寸法を調整して巻芯に溝を作る方法(特許文献5参照。)が提案されている。しかしながら、この方法では切り込みや溝自体の段差がフィルムに影響して、さらにはっきりとした巻芯跡が発生してしまうことがある。
【0007】
これまでの方法の欠点を補うために、巻芯に巻き付けられた緩衝材に傾斜を設けた凹部を設け、凹部底面の粘着剤でフィルム端部を固定し、凹部角にウェブが押しつけられることによる平面性悪化を凹部の傾斜の効果により抑える方法が特許文献6に開示されている。
【0008】
上記のいずれの方法もある程度の効果は得られるものの、フィルム端部の押し跡の影響緩和はなお十分ではなく、最近の精密加工や用途の発展に伴うフィルムへの平面性の要求の高度化から、これらの施策では対策が不十分な事例が発生している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−146495号公報
【特許文献2】特開2005−75521号公報
【特許文献3】特開平11−263537号公報
【特許文献4】特開2007−119230号公報
【特許文献5】特開2000−318930号公報
【特許文献6】特開2009−242059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、フィルムやシート等のウェブ状物の端部を接着して固定した部分の段差が原因となるウェブ状物の平面性不良欠陥を抑制することができるウェブ状物巻き取り用巻芯を開発し、これによるウェブ状物を巻き取ったロール状物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、これらの課題を解決するために以下の手段を用いるものである。
【0012】
すなわち、ウェブ状物を巻き取るための巻芯が円筒状の芯材本体と該芯材本体の外周面に巻き付けられた緩衝材とからなり、該緩衝材には巻芯の長さ方向(軸線方向)に凹状の溝が設けられており、該凹状の溝には粘着シートが固定され、該外周面緩衝材と該粘着シートの段差が、巻き取るウェブ状物の厚みをDとした場合に0.5D〜1.5Dの範囲であるウェブ状物巻き取り用巻芯を用いて厚みDのウェブ状物を巻き取る巻き取り方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のウェブ状物の巻取り方法によれば、フィルム等のウェブ状物の端部の段差を原因として転写される凹凸や像歪み等の変形のないロール状ウェブ状物を得ることができる。このように、本発明により、ウェブ状物の端部の段差を原因とする変形によるウェブ状物のロスを抑制することができ、変形が少ないウェブ状物を適正なコストで得ることができる。また、このような変形のないウェブ状物を用いることにより、フラットパネルディスプレイ、調光ガラスおよび薄膜回路材などの外観不良や加工上の欠点を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明におけるウェブ状物巻取り用巻芯の全体図である。
【図2】図2は、本発明におけるウェブ状物巻取り用巻芯の全体断面図である。
【図3】図3は本発明におけるウェブ状物巻取り用巻芯の溝部分の断面を拡大したものである。
【図4】図4は本発明におけるウェブ状物巻取り用巻芯の溝部分の断面を拡大したものである。
【図5】図5は本発明における巻芯にウェブ状物を巻き付けた状態を示すものである。
【図6】図6は溝の段差よりもはるかに厚みのあるウェブ状物を巻き付けた状態を示すものである。
【図7】図7は溝の段差よりもはるかに薄いウェブ状物を巻き付けた状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明にかかるウェブ状物の巻き取り方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
本発明に用いるウェブ状物巻取り用巻芯は、円筒状の芯材本体と該芯材本体の外周面に巻き付けられた緩衝材とからなり、該緩衝材には巻芯の長さ方向(軸線方向)にウェブ状物端部を落とし込むための凹状の溝が設けられており、該凹状の溝にはウェブ状物を固定するための粘着シートが固定され、該外周面緩衝材と該粘着シートの段差が、巻き取るウェブ状物の厚みをDとした場合に0.5D〜1.5Dの範囲であることを特徴とする。
ここで、ウェブ状物とは帯状の長尺物であり、具体的には、プラスチックフィルムなどのフィルム状物、箔、紙および布帛等のシート状物が挙げられる。本発明で用いられるウェブ状物の厚さは、好ましくは10μm〜1mmの範囲であり、厚さ38〜500μmがより好ましい。
【0017】
図1は、本発明に用いるウェブ状物巻取り用巻芯の実施の形態を示す全体図である。また、図2は、本発明のウェブ状物巻取り用巻芯の全体の断面図であり、心材本体1の外周面に緩衝材2が巻き付けられており、巻芯の長さ方向(軸線方向)に凹状の溝3が設けられている。
【0018】
図3、図4は図2の凹状の溝3の拡大図であり、円周に沿った曲率は省略してある。
【0019】
図5は本発明の方法で厚みDのウェブ状物を巻き取った状態を示し、図6は段差がウェブ状物の厚みDに対し0.5Dよりも小さい場合を示し、図7は段差がウェブ状物の厚みDに対して1.5Dよりも大きい場合を示す。
【0020】
円筒状の芯材本体1は、ウェブ状物を巻く上で必要な強度を有していることが望まれる。芯材本体1を構成する材料には、紙の他に、ABS樹脂、塩化ビニル系樹脂、エステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂およびスチレン系樹脂などの樹脂や、それらをガラス繊維、カーボン繊維およびアラミド繊維などの強化繊維で強化した各種強化プラスチック材料、さらには鉄、アルミニウムおよびステンレス類などの金属類や合金類、またそれらの複合体が好ましく用いられる。
【0021】
芯材本体1は、防塵性や寸法安定性から、樹脂や金属類を主成分とする円筒体が好ましいが、製造、回収および廃棄の際にかかる費用等の観点から、用途によっては紙に樹脂を含浸させた複合材料からなる円筒体(紙管)であってもよい。上記を満たすような市販品としては、例えば、複合樹脂製としては天龍工業株式会社製“FWPコア”(登録商標)や、樹脂を含浸させた紙管としては株式会社昭和丸筒製「Mコア」などが具体的な例として挙げられる。
【0022】
芯材本体1の寸法は、ウェブ状物の長さや厚さ、巻き上げ時の張力などにより適宜選択され、長さは0.3〜3m、内径は5〜30cm、肉厚は5〜30mmが好ましく用いられるが、具体的には長さ1m、内径15cm、肉厚12mmのものがより好ましく用いられる。
【0023】
弾性に富んだシート状物が緩衝材2として芯材本体1の外周面に巻き付け貼り付けられる。緩衝材2となるシート状物を構成する材料としては、ポリウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴムなどの各種ゴム類、不織布、フェルトおよび合成皮革などの易成型材、ポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂などからなる発泡樹脂、およびそれらの複合体が挙げられる。好ましくは、ポリオレフィン系樹脂からなる発泡樹脂が用いられ、中でもポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂からなる発泡樹脂がより好ましい。
【0024】
また、緩衝材2の巻き付け方については、円筒状の芯材本体1の外周と同じ長さのシート状の緩衝材2で芯材本体1を覆うように包む方法や、幅の狭いシート状の緩衝材2を芯材本体1に螺旋状に巻き付ける方法などがあるが、シート状の緩衝材2の面取りを施すなどの対策により継ぎ目による凹凸を生じないようにしてあれば限定されるものではない。
【0025】
緩衝材の厚さは巻き取るウェブ状物よりも厚いことが必要であるが、厚すぎるとコストが上昇し、巻き締まりによるシワが生じることから、0.5〜5mm程度のものが好ましく、より好ましくは0.7〜2mm程度であり、1mm前後のものが特に好ましく用いられる。
【0026】
緩衝材2は、SRIS規格によるC型ゴム硬度計によるゴム硬度Hが60〜90であることが好ましい。ゴム硬度が60以上であると、ウェブ状物を巻き上げてゆく際の張力も影響するが、巻き芯部で巻き締まりが発生することなく、挫屈が発生して平面性が悪化する懸念がなく好ましい。ゴム硬度が90以下であれば緩衝材としての効果により、段差の解消効果が大きい。
緩衝材2は、アクリル系やウレタン系などの公知の粘着剤あるいは接着剤を用いて巻芯の表面に貼り付けられる。
【0027】
緩衝材2の材質が発泡樹脂からなる場合、歪み25%における圧縮応力(JIS K6767に準じて測定)が30〜250kPaであることが好ましい反発性として挙げられる。上記を満たすような市販品としては、例えば、発泡ポリオレフィン樹脂としては東レ株式会社製“トーレペフ”(登録商標)や、発泡ポリエチレン樹脂としては酒井化学工業株式会社製“ミナフォーム”(登録商標)や積水ポリマテック株式会社製「ライトロン」などが挙げられる。
【0028】
緩衝材2には、ウェブ状物端部を落とし込み、これを巻芯に固定する粘着シート4を固定するための凹状の溝3が設けられている。この凹状の溝は、前記のように巻芯の長さ方向(軸線方向)に設けられている。凹状の溝は、一つの巻芯に複数存在してもかまわないが、実用上は一本あれば十分である。凹状の溝の底部は円筒状芯材の外周に沿った円弧状の断面形状であっても良く、まっすぐな断面形状であって円筒状芯材の半径方向に垂直であってもよく、半径垂直方向に10度以内の傾きを有していてもよい。溝の幅は巻芯の直径や巻き取りウェブ状物の材質や厚さにより適宜選定すればよいが、通常5〜30mmの範囲で選択される。溝の形状で端部壁面は半径方向に沿ったものであってもよく、半径方向から45度以内傾いていてもよく、壁面の底部に接する部分は直角であってもよく、角が丸まっていてもよい。
【0029】
凹状の溝3の作成方法には、型押しをしたり、溝の断面と同じ形状を有する切削ジグを用いて図3に示すように外周面の緩衝材2の一部を凹ませて溝を設ける方法がある。設けた凹状の溝の中にはウェブ状物の端部を固定するための粘着シート4が固定される。
【0030】
また図4に示すように、外周面の緩衝材2を溝の幅分だけ除去し、除去した部分に外周面の緩衝材2と同種あるいは異なる材質の緩衝材シート5を固定する方法がある。この方法では、ウェブ状物の端部を固定するための粘着シート4が緩衝材シート5を介して前記凹状の溝に固定される。すなわち、緩衝材シート5の片面には粘着シート4が設けられ、緩衝材シート5の他面は粘着シート6により凹状の溝の底部に固定される。緩衝材シート5を設ける本方法によれば、外周面の緩衝材を溝の幅で除去し、緩衝材シートを貼り付けることで、外周面の加工により溝の段差を調整するよりも容易に段差の調整を行うことができるメリットがある。緩衝材シート5の材質は、外周面緩衝材と同様の材質で良く、ポリウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴムなどの各種ゴム類や、不織布、フェルトおよび合成皮革などの易成型材、ポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂などからなる発泡樹脂、中でもポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂からなる発泡樹脂が好ましい。粘着シート6は特に限定されるものではないが、不織布に粘着剤が含浸されたタイプやフィルム両面に粘着剤が塗布されたタイプの両面粘着テープが好ましく、粘着剤の種類はゴム系、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系などが巻き取るウェブ状物の厚みやコシなどにより適宜選択される。粘着シート6の厚みは20〜200μmの範囲で選択される。
【0031】
粘着シート4の幅は、ウェブ状物を巻き上げるときの張力に十分耐えられる粘着力を得るのに必要十分な幅であることが望まれ、粘着シートと巻芯を構成する材料との組み合わせによって適宜決定され、通常5〜30mmの範囲で選択される。粘着シート4の幅は、前記凹状の溝の幅に対して1〜2mm狭くすることが好ましい。例えば溝の幅が20mmの場合は18〜19mmが好ましい。粘着シートの幅が狭すぎると十分な粘着力が得られず、広すぎるとウェブ状物を固定する際にシワになったり、泡がかみこんだりしやすくなる。粘着シートの厚さは20〜200μmの範囲で適宜選ばれる。粘着シート4の種類としては、ゴム系ポリマー、アクリル系ポリマー、シリコン系ポリマー、ビニルエーテル系ポリマーおよびウレタン系ポリマーなどの粘弾性ポリマーに、必要に応じてロジン系樹脂や石油樹脂系樹脂などの粘着付与樹脂、軟化剤および架橋剤などが配合された粘着材が挙げられる。粘着シートは、固体や液体の状態のものを、巻芯または/およびウェブ状物端部に塗布しても良いが、扱いやすいという点で、両面に粘着剤層が設けられた両面接着テープの形態で供されることが好ましい。両面接着テープとしては、ポリエチレンフォームベースの両面接着テープ、アクリルフォームベースの両面接着テープなどがある。また、離型性を持ったテープ上に粘着材層を形成して転写する方法も、薄い粘着材層を作成するために好適である。
【0032】
本発明では、外周面に設けた緩衝材表面と、凹状の溝の中に固定した粘着シートとの段差7が重要である。段差7は、巻き取るウェブ状物の厚みをDとした場合に0.5D〜1.5Dの範囲であることが必要である。段差がこの範囲にあることで、厚みDのウェブ状物を巻き上げた場合に、図5で示すように、ウェブ状物端部が緩衝材の効果で凹状の溝部に沈み込み、端部の影響が解消される。
【0033】
段差が0.5Dよりも小さい場合、すなわち段差に対して2倍以上の厚みのウェブ状物を巻き上げる場合は図6に示すように、ウェブ状物を凹状の溝部に完全に沈み込ませることができず、ウェブ状物端部の影響を受けて上に巻き上がるウェブ状物が変形を受ける。
【0034】
段差が1.5Dよりも大きい場合、すなわちウェブ状物が段差よりも極端に薄いものを巻き上げる図7に示すような場合は、ウェブ状物の端部の影響は小さくなるが、凹状の溝のエッジ部分で段差が発生し、やはり上に巻き上がるウェブ状物が変形を受ける。
【0035】
また、凹状の溝部に設けた粘着シート表面のゴム硬度は(H+5)よりも小さいことが好ましい。(H+5)以上であれば、ウェブ状物の端部が完全に凹状の溝に沈み込まず、ウェブの平面性に影響を及ぼす場合がある。
【0036】
本発明において、ウェブ状物の巻き取りは、上述した巻芯を用いて行われる。本発明における巻き取り条件としては、ウェブ状物に掛かる張力を0.1〜1.0N/mmの範囲にコントロールすることが好ましい。ウェブ状物がポリエリレンテレフタラートフィルムで厚みが38μm〜500μmの場合は0.2〜0.4N/mmの範囲が特に好ましい。また、巻き取り速度は生産性の観点から1m/分以上であることが好ましい。
【0037】
本発明の巻き取り方法は、例えば、プラスチックフィルムの製造において、流延用支持体である例えば、無端のステンレスベルトにキャスティングして製膜した後、乾燥して、巻き取る際に適用できる。また、前述の方法によって製造されたフィルムロールからプラスチックフィルムを巻き出し、スリッター等により適当な幅にスリットした後、製品ロールとして再び巻き取る際にも適用できる。
【0038】
本発明の巻き取り方法によってウェブ状物の端部の段差を原因として転写される凹凸や像歪み等の変形のないウェブ状物を巻き取ったロール状物を得ることができる。
【0039】
本発明の巻き取り方法は、特に、フラットパネルディスプレイ、液晶調光ガラスおよび薄膜回路材などの精密な平面性が要求される用途や、表面反射防止処理フィルムや写真用光沢印画紙などの外観欠点が目立ちやすい用途に用いられるフィルム状物の巻き取りに好適である。
【実施例】
【0040】
以下に本発明の実施様態を実施例をもって説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。本発明における評価方法は、次のとおりである。各評価方法においては、それぞれ任意の1箇所から、1回ずつ測定を行った。
【0041】
(ウェブ状物の厚みD)
ウェブ状物の厚みDは、ニコン製電子マイクロメータMH−15M(読みとり部TC−100、スタンドMS−5C)を用いて、1μm単位で測定した。
【0042】
(段差)
東レ(株)製ポリエステルフィルム“ルミラー”25μm厚みのものを準備し、溝の幅より1〜2mm狭く切った長さ50mmの短冊状のフィルムを溝部分に1枚ずつ挿入し、段差の有無を触指で判断し、段差がなくなった時のフィルムの枚数で25μm単位で測定した。
【0043】
(緩衝材または粘着シート表面のゴム硬度)
巻芯外周面上の緩衝材のゴム硬度Hは、日本ゴム協会規格SRIS0101に準拠し、高分子計器(株)製ASKERゴム硬度計C型を用いて測定した。測定の際に硬度計は測定面と垂直になるように載せ、5秒後の数値を読んだ。凹状の溝に設けられた粘着シート表面のゴム硬度を測る際は、東レ(株)製“ルミラー”の厚さ4μm、幅40mm、長さが巻芯の長さと同じにしたものを粘着シートの粘着面に乗せ、その上から測定を行った。
【0044】
(評価方法1)
東レ(株)製“ルミラー”188−U34(厚さ188μmPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム)を、張力150N/m(フィルム幅)で巻芯へ250m巻き付けてから24時間経過後に巻き戻した。巻芯から50m地点で直管型蛍光灯(三菱製OSRAM 40形ネオルミスーパーFLR40S−W/M/36 30W白色)を用いて照明を行い、フィルムの表面に投影された直管型蛍光灯の反射像の歪みを目視観察した。このとき、蛍光灯を点ける前の照度は250ルックスで直管形蛍光灯を点けたときは350ルックスであった。また、評価者の視力は0.6であった。観察した結果を、歪みが全くなければ◎、わずかに認められれば○、フィルムの幅方向全体に渡って歪みが認められれば×に区分し、○◎を合格とし、×を不合格とした。なお、フィルム端部の段差による影響以外に、巻き締まりによる挫屈の影響についても本評価により判断した。
【0045】
(評価方法2)
東レ(株)製“ルミラー”タイプU34で番手は125番または188番(厚さ125μmまたは188μmPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム)を、張力150N/m(フィルム幅)で巻芯に2周巻き付けてから、第二指から第四指の指腹でフィルムの巻回始点に当たるフィルム端部をロール最外層上から周方向にこすり、凹凸の感じ方を触診検査した。全く凹凸を感じなかったものを◎、僅かに凹凸を感じたもの○、凹凸を感じたものを×に区分し、○◎を合格とし、×を不合格とした。
【0046】
[実施例1]
幅1200mm、内径152mm、肉厚12mmの(株)昭和丸筒製樹脂含浸紙管「Mコア」に、厚さ1mmの東レ(株)製ポリエチレン発泡体“トーレペフ”をアクリル系粘着材を用いて貼り付け、さらに深さ1mm、20mmの幅で溝を1条作成した。紙管に巻かれた“トーレペフ”の上からC型硬度計で硬度を測定したところ68であった。溝に外周面と同質の“トーレペフ”の厚み0.7mmのもので19mm幅を50μm厚さのアクリル系両面テープで貼り付けた。“トーレペフ”の上にさらに両面テープを固定した。最表層の両面テープの上から測定したゴム硬度は70であった。この上に188μmのPETフィルムを巻き付けて評価を行った。
【0047】
[実施例2]
溝に貼り付けた“トーレペフ”の厚みを0.85mmとした以外は実施例1と同様に巻芯を加工した。段差は50μmであり、粘着テープの上から測定したゴム硬度は69であった。
【0048】
[実施例3]
溝に貼り付けた“トーレペフ”の厚みを0.65mmとした以外は実施例1と同様に巻芯を加工した。段差は250μmであり、粘着テープの上から測定したゴム硬度は72であった。
【0049】
[実施例4]
溝に3M製のポリエチレンフォームを基材とした粘着テープ“KK−19”(0.8mm厚さ)を貼り付けた。この粘着テープ表面のゴム硬度は66であり、外周面のゴム硬度68よりも小さいものであった。
【0050】
[実施例5]
実施例1において3M製アクリルフォーム粘着テープ“SPP−19”を貼り付けた。このとき、同様に硬度を測定したとき、67であり、外周面のゴム硬度よりも小さい値であった。
【0051】
[実施例6]
外周面に巻き付けた厚さ1mmの東レ(株)製ポリエチレン発泡体“トーレペフ”に発泡倍率を上げた、より柔らかいタイプを用い、溝に貼り付けた“トーレペフ”も外周面に貼り付けたものと同じものを用いた以外は実施例1と同様にしたものを実施例5とした。巻き芯部分で若干の巻き締まりが発生していたが実用上は問題がなかった。
【0052】
[実施例7、8]
実施例6とは反対に、発泡倍率を下げた硬い“トーレペフ”を用いたものを実施例7、8とした。
【0053】
[実施例9]
実施例1と同様に幅1200mm、内径152mm、肉厚12mmの(株)昭和丸筒製樹脂含浸紙管「Mコア」に、厚さ1mmの東レ(株)製ポリエチレン発泡体“トーレペフ”をアクリル系粘着材を用いて貼り付け、厚さ1mmのうち、0.25mmを20mmの幅で型押しにより凹ませ、凹ませた部分に50μmの両面粘着テープを固定した。
【0054】
[実施例10]
実施例2と同じ厚み構成であるが、貼り付ける“トーレペフ”に若干硬めのものを用いた以外は実施例2と同じように作成したものを実施例10とした。溝の中のゴム硬度は外周面に比べて7大きい値となった。
【0055】
[実施例11]
実施例2で準備した巻芯に125μmのPETフィルムを巻き付けて評価を行った。
【0056】
[比較例1]
実施例1と同様に幅1200mm、内径152mm、肉厚12mmの(株)昭和丸筒製樹脂含浸紙管「Mコア」に、厚さ1mmの東レ(株)製ポリエチレン発泡体“トーレペフ”をアクリル系粘着材を用いて貼り付け、厚さ1mmのうち、0.05mmを20mmの幅で型押しにより凹ませ、50μmの両面粘着テープを固定して、外周面と面一とした。触診による評価および巻き出したフィルムでの不合格であった。
【0057】
[比較例2]
実施例1において、1mmの溝を設けた部分に直接50μmの両面粘着テープを固定したものを比較例2とした。段差は950μmあり、評価は不合格であった。
【0058】
[比較例3、4]
実施例1において、貼り付ける“トーレペフ”の厚みを0.5mm、0.85mmとした以外は実施例1と同様にしたものを比較例3、4とした。
【0059】
上記の実施例1〜10および比較例1〜4の評価結果を、まとめて次の表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1に示すように、比較例1〜4で得られたPETフィルムには、いずれも照明灯の反射像に歪みが発生し、触診では凹凸を感じた。一方、実施例1〜5および7、9、11で得られたPETフィルムには、目視観察では照明灯の反射像に歪みはなく、かつ触診で凹凸を感じることはなく、良好な平面性のPETフィルムを得ることができた。実施例6では、実用上問題のない範囲で巻き締まりが発生しており、実施例8では実用上問題のない歪みが発生しており、実施例10ではフィルムに歪みは発生していなかったが触診ではかすかに段差を確認した。
【符号の説明】
【0062】
1 円筒状の芯材本体
2 コア外周部分の緩衝材
3 凹状の溝
4 ウェブ状物を固定するための粘着シート
5 溝内に固定された緩衝材シート
6 溝内に緩衝材シートを固定するための粘着シート
7 外周緩衝材面と粘着シートとの段差
8 ウェブ状物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブ状物を巻き取る巻芯が円筒状の芯材本体と該芯材本体の外周面に巻き付けられた緩衝材とからなり、該緩衝材には巻芯の長さ方向(軸線方向)に凹状の溝が設けられており、該凹状の溝には粘着シートが固定され、該外周面緩衝材と該粘着シートの段差が、巻き取るウェブ状物の厚みをDとした場合に0.5D〜1.5Dの範囲であるウェブ状物巻き取り用巻芯を用いて厚みDのウェブ状物を巻き取る巻き取り方法。
【請求項2】
前記粘着シートが緩衝材シートを介して前記凹状の溝に固定されている請求項1に記載の巻き取り方法。
【請求項3】
前記外周面に巻き付けられた緩衝材のSRIS0101規格によるC型ゴム硬度計によるゴム硬度Hが60〜90であり、かつ前記凹状の溝に設けられた粘着シート表面のゴム硬度が(H+5)より小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の巻き取り方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の巻き取り方法で厚さDのウェブ状物を巻き取ったロール状物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−184152(P2011−184152A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52655(P2010−52655)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000222462)東レフィルム加工株式会社 (142)
【Fターム(参考)】