説明

ウエブの切断巻き付け方法

【課題】連続的に送られるウエブをウエブ幅方向にカッターを走行させて切断し、その切断端を新巻芯に巻き付ける場合に巻き始め部から巻終わり部にスパイラルに巻き付けられ巻き始め部が2重,3重に重なり、厚みの誤差が生じるのを解消する。
【解決手段】連続して流れているウエブを停止することなくカッター2をウエブ1の幅方向に走行させて自動的に切断し、切断端を新巻芯3に巻き付ける多軸ターレット式巻取機において、切断するウエブの幅Wとウエブの速度V1とウエブ速度に対するウエブ幅方向の切断角度θ及びカッター走行速度V2を算出し、新巻芯外周の巻始め側に対し巻終わり側の巻付ウエブが巻芯円周方向360°に達しないようカッターを走行させて切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多軸ターレット式巻取機において、連続して送られてくる広幅のウエブを停止することなく、カッターをウエブの幅方向に走行させて切断し、新巻芯に巻き付けるウエブの切断巻き付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多軸ターレット式巻取機によるウエブの巻き取りでは、通常、前工程より連続的に送られてくるウエブを一定の長さ毎にタッチローラを介して巻芯に巻き付け、押えローラで押さえて巻き替えることが行われているが、従来からこの巻き替え動作においてはウエブの走行中、ウエブの幅方向にカッターを走行させてウエブを切断し、その切断先端を新巻芯に巻き付けている。
【0003】
ところで、この巻き替え時における切断において現状ではウエブを走行速度とカッター速度を自動的に組み合わせることによりウエブは通常、ウエブの流れ方向に45°の角度で切断されており、カッターの角度が45°にセットされている一方、ウエブの幅が500mm以上の広幅で10m/min以上の速度で送られてくるウエブを直径140〜350mmの巻芯に巻き付けるにあたり、引つけしわの発生なく確実に巻き付ける方法としてウエブ側縁とウエブ切断線との交差角度が45°〜80°になるようにウエブを切断する方法が提案されている。(例えば特許文献1参照)
【特許文献1】特開2001−146498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ウエブの幅が広く、巻芯の外径が小さい場合、ウエブの幅方向において切断始めに巻き付けられたウエブはウエブが幅方向に切断されることから図2(a)に示す如く巻芯3外周にスパイラル状に巻き付けられる。その結果、巻き始め部は巻き終り部に対しウエブが2重,3重(1a)になることがあり(図2(b)参照)、全幅のウエブが巻き付いた時にはウエブの厚みによる誤差が生じ、巻き始めにしわ,ウエブテンションの幅方向の誤差、巻姿においてテレスコープになることが起こる。
【0005】
本発明は上述の如き巻き始め部の重なりの発生を排除すべく、特にウエブの巻芯への巻き付けを巻き始めから巻き終わりまで1周以内、即ち360°以内におさえることに着目し、ウエブの幅と巻芯外径からウエブの速度に対しカッターのウエブ幅方向の交差角度ならびに走行速度を算出し、これに基づいてカッターをウエブに対し上記の如く360°以内で走行せしめることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、上記目的を達成する本発明は、連続して流れてくるウエブを停止することなくカッターをウエブの幅方向に走行させて自動的に切断し、この切断端を新巻芯に巻き付ける多軸ターレットも巻取機において切断するウエブの幅と巻芯外径に基づきウエブ速さに対するウエブ幅方向の切断速度及びカッター走行速度を算出し、新巻芯の巻き始め側に対し巻き終わり側の巻付ウエブが巻芯円周方向に360°に達しない範囲内で切断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明にもとづいてウエブの幅と巻芯外径ならびにウエブ速度に対するウエブ幅方向に走行するカッター速度を算出し、ウエブの巻芯への巻き付けを巻き始めから巻き終わりまで1周以内に押さえることにより、巻き始め部は巻き終わり部に対し重なることがなくなり、ウエブの厚みによる誤差が解消され、巻き始め部にしわ,ウエブテンションの幅方向の誤差が発生することなく全幅にわたり良好な巻姿を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、更に添付図面を参照し、本発明の具体的態様を説明する。
【0009】
本発明は図1に示すように連続して送られてくるウエブ1を停止することなく一定長さ毎にカッター2によりウエブ幅W方向に切断し、その切断端を新巻芯3に巻き付けるにあたり、カッター2をウエブの幅Wと、巻芯の外径Dを勘案し、ウエブ速度V1に対するウエブ幅方向の切断角度θ及びカッター走行速度V2を自動的に計算して新巻芯外周の巻き始めの側に対し巻き終わり側の巻き付けウエブが巻芯円周方向に360°以内、即ち図1に示すように1周以内で切断する方法である。
【0010】
これを更に説明すると連続して送られてくるウエブ1を一定長さ毎にカッター2により切断し、切断端を巻芯3に巻き付けるにあたり、切断端はウエブの速度V1とウエブの幅Wとウエブの切断角度θ及びカッターの走行速度V2により図1に示すように切断始めより切断終了に向かって斜行することになり、その切断線がウエブ1の側縁に対し所要の角度θを有し、ウエブ流れ方向において切断始めより切断終了に至る垂直長さLの距離が作られることになる。そして、その斜行する切断端縁が巻芯3に巻き付けられるとき、垂直長さLが長いと、例えば角度θを45°として切断し巻き付けるとき、巻芯の径によりこれが小径であれば巻芯が複数回、回転し、図2(a)に見られるようにスパイラル状の線が発生し、図2(b)に示される2重,3重の重なり部(1a)が発生する。この場合、勿論、ウエブの切断角度θは適宜、選択され、特段の法則によって決められることはない。
【0011】
そこで本発明は上記重なりの発生を阻止するための要件として前記ウエブの流れ方向の切断始めから切断終了に至る垂直長さLを巻芯外周の360°以内、即ち、1周以内に押さえるように決め、これに基づいた切断角度,走行速度で切断して巻芯へのスパイラルによる2重,3重の重なりを解消するものである。
【0012】
これを具体的に説明すると、前記ウエブの流れ方向の切断始めより切断終了に至る垂直長さLは巻芯外径Dに対しL≦πDである。そして、ウエブの幅Wと切断角度θとの関係は図1よりtanθ≦L/W、そしてウエブの速度V1とカッター走行速度V2の関係は
tanθ≦V1/V2 , V2≧V1/tanθ=V1/L/W=V1W/πD
となる。即ち、カッターの走行速度V2は、V2≧V1W/πDで与えられることになる。この式に基づいて巻芯外径D,ウエブの幅Wが決まっているとき、ウエブの速度V1からウエブの切断角度θ及びカッター走行速度V2が決まり、これに従ってカッターを走行させることにより前記切断始めから切断終了までの垂直長さLを巻芯外径Dの1周以内に押さえることができる。
【実施例】
【0013】
ウエブの幅Wを1000mmとし、ウエブの速度V1を100m/min,巻芯外径Dを100mmとし、切断条件を算出すると、巻芯の一周はL=100π=314mmである。これを前記した式にあてはめると、tanθ=L/W=314/1000=0.314、即ち、θ=17.43°となる。そこで、tan17.43°=0.314=V1/V2、即ち、V2=V1/0.314=318.47m/minとなる。
【0014】
よって以上の算出よりウエブ幅1000mmのウエブを巻芯外径100mmφ、巻芯円周100×π=314mmの巻芯に対しウエブ速度V1を100m/minで走行させるとき、ウエブの切断角度θが17.43で、カッター走行速度318.47m/min以上であれば、ウエブの巻芯への巻き始めから巻き終わりまで1周以内、即ち、360°以内に押さえることが可能である。
【0015】
かくして巻き付け始端部が巻き終わり部に対しスパイラル状になることなく、従って2重,3重に重なることがなく、ウエブの厚みによる誤差も生じないで巻き付けられる。なお、カッターの走行角度はウエブの材質により固定又は自動的に角度調整機能を有している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ウエブの切断端縁と巻芯との対応を示す説明図である。
【図2】既知のスパイラル巻の態様を示し、(a)は外観図、(b)は断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1:ウエブ
1a:重なり部
2:カッター
3:巻芯
W:ウエブの幅
1:ウエブの速度
2:カッターの走行速度
D:巻芯外径
θ:ウエブの切断角度
L:ウエブ流れ方向の切断始めより切断終了までの長さ(距離)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して流れているウエブを停止することなくカッターをウエブの幅方向に走行させて自動的に切断し、新巻芯に巻き付ける多軸ターレット式巻取機における巻き付けにおいて、切断するウエブの幅と巻芯外径に基づきウエブの速度とウエブ速度に対するウエブ幅方向の切断角度及びカッター走行速度を算出し、新巻芯の巻き始め側に対し巻き終わり側の巻付ウエブが巻芯円周方向360°に達しない範囲内でカッターを走行させ切断することを特徴とするウエブの切断巻き付け方法。

【図1】
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【図2】
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