説明

ウォーキングビーム式搬送装置

【課題】より多数の鋼板コイルを搬送するために簡単に且つ安価に可変に拡張することができるウォーキングビーム式搬送装置を提供する。
【解決手段】ウォーキングビーム12aは、ただ1つのサブフレーム15を有する1つの搬送要素14aに枢着連結されていて、連結要素としての継手13が、垂直方向の力及び水平方向の力並びにウォーキングビーム12aの水平方向の運動を搬送要素に伝達する。この搬送要素は、主ウォーキングビームと共に、搬送すべき鋼板コイル2をタクト送りで搬送する第2のウォーキングビームの機能を請け負う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の昇降機によって昇降可能であり且つ少なくとも1つの駆動部によって搬送方向に軌条走行的に進行可能であり且つ2つの一対の車輪つまりサブフレームを有するウォーキングビームを備えたウォーキングビーム式搬送装置であって、鋼帯コイルつまり鋼板コイル、鋼板パケットその他の搬送物をタクト送りで搬送し、このウォーキングビームは、後続する1つのウォーキングビーム式搬送装置に連結されている当該ウォーキングビーム式搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなウォーキングビーム式搬送装置は、ドイツ連邦共和国特許第60110678号明細書によって公知であるように、前後して配置され且つ互いに連結された同じコンベヤタイプの複数のウォーキングビームを有する。これらのウォーキングビームは、これらのウォーキングビームの駆動部を通じてタクト送りで協働して前進移動され且つ後進移動される。個々の搬送装置はそれぞれ、1つの連結ロッドによって互いに連結されている。この場合、当該ウォーキングビームは、その昇降機によって昇降可能である。その結果、側面の受け面に搭載している一般にはコイルとも呼ばれる鋼板コイル等が、搬送方向に沿ってタクト送りで移動され得るか又はステップごとに摺動され得る。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許1294281号明細書から公知のウォーキングビーム式搬送装置の場合、前後して配置された複数のウォーキングビームが設けられている。この場合、連続する複数のウォーキングビームが、進行方向の運動を伝達し、その他の互いに独立し且つ選択的な上昇又は降下を可能にする連結部だけを介して互いに連結されている。各ウォーキングビームに付設された複数の昇降機が、1つのサブフレーム上に配置されている。このサブフレームは、走行ローラを通じてレール設備上で搬送方向つまり長手方向に移動される。2つの車軸を有する少なくとも2つのサブフレームが、各ウォーキングビームに設けられている。
【0004】
個々の各ウォーキングビームは、特定の幾何構造を有する所定の数のコイルに対して、したがって一定の最大重量に対して仕様設計されているので、当該公知のウォーキングビーム式搬送装置では、コイルの数を増やす場合又は直径のより大きく且つより重いコイルを搬送する場合に、複数のこれらのウォーキングビームが互いに連結される。この場合、当該結合又は連結を通じて、これらのウォーキングビームはそれらの車台と共に、協働してレールキャリア上で搬送方向に移動されるものの、互いに独立して昇降可能である。この場合、個々のコイルの数量の増大又は重量の増加が、個々のウォーキングビームの完全な変更又は適合を招くように、1つのウォーキングビームの個々の構成要素が互いに調整されているので、完全に独立した複数のウォーキングビームの当該連結は、増大した全ての積載物をタクト送りで搬送するためには不可欠である。
【0005】
当該ウォーキングビームの重要な構造部品は、車台である。多くの場合、車輪付の軸を2つずつ有する2つの走行駆動部つまりサブフレームが、1つのウォーキングビームごとに取り付けられる。この場合、これらのサブフレームは、特定の最大軸荷重に対して仕様設計されている。この最大軸荷重は、理想的に利用されるものの、超過してならない。追加のコイル又はより重いコイルによる軸荷重の増大が、車台の新規の構造に加えて弾み車用のレール設備の変更も必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許第60110678号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許1294281号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、より多数の鋼板コイルを搬送するために簡単に且つ安価に可変に拡張することができる冒頭で説明した種類のウォーキングビーム式搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のこの課題は、ウォーキングビームが、ただ1つのサブフレームを有する1つの搬送要素に枢着連結されていて、連結要素としての継手が、垂直方向の力及び水平方向の力並びにこのウォーキングビームの水平方向の運動をこの搬送要素に伝達することによって解決される。この場合、この搬送要素は、この主ウォーキングビームと共に、搬送すべき鋼板コイルつまりコイルをタクト送りで搬送する第2のウォーキングビームの機能を請け負う。この搬送要素は、独立した第2のウォーキングビームとは違って独立した運動の経時変化を起こすのではなくて、この主ウォーキングビームの運動の経時変化に同期する。
【0009】
この場合、コイルを搬送するため、当該コイルの寸法及び載貨重量に対して異なって且つモジュール式に且つ可変にその搬送の目的に適合して構成された搬送要素が使用され得る。その結果、特に貨物及びコストの観点の下では、コイルの数量及び対応するコイルの重量に応じた主ウォーキングビームと設置されている搬送要素との最適な組み合わせが常に可能である。現存する又は存在するウォーキングビーム式搬送装置が、変更又は改造される必要が全くなく、特に2つのサブフレームを有するもう1つの完全なウォーキングビームが不要になる。1つの継手又は継手軸受を介した当該搬送要素の連結によって、当該システムは、全部で3つのサブフレームつまり3対の車軸にもかかわらず力学的に安定する。
【0010】
本発明の好適な構成は、当該搬送要素が1つの昇降機を有する従ウォーキングビームとして構成されていることを提唱する。このことは、この従ウォーキングビームが、水平方向に搬送運動させる固有の駆動部を有さず、主ウォーキングビームに協働して運動されることを意味する。例えば1つの水平シリンダが、この主ウォーキングビームに連結する。この主ウォーキングビームとは違って、従ウォーキングビームである搬送要素は、単独では力学的に安定しない。特に水平方向の力と垂直方向の力との双方を伝達する継手軸受を用いて、従ウォーキングビームつまり搬送要素を主ウォーキングビームに枢着連結することによって、この従ウォーキングビームは、ただ1つのサブフレームにもかかわらず力学的な安定性を達成する。これに対して、例えば3つのサブフレームを有する延長した1つの主ウォーキングビームは力学的に安定しない。従ウォーキングビームの昇降機は、例えばピストンユニット/又はシリンダユニットとして又は偏心昇降ギヤとして構成され且つ主ウォーキングビームの昇降運動に同期され得る。例えば、サブフレーム内に構成されている偏心昇降ギヤの場合、つまり弾み車の軸受として含まれる偏心車の場合、これらの偏心車が、1つの連結ロッドによって互いに連結されている。この場合、垂直方向の昇降に対して、昇降シリンダが、一方では偏心車の偏心位置に枢着連結されていて、他方では主ウォーキングビーム又は従ウォーキングビームのビームに枢着連結されている。
【0011】
ウォーキングビーム式搬送装置とただ1つの一対の車輪つまりサブフレームを有する搬送要素との組み合わせ、及び、枢着連結によって力学的に同様に安定な従ウォーキングビームのこの枢着連結は、−完全なウォーキングビームの場合のような−コストのかかる第2の車台、及び搬送装置に対するその他の改造措置を必要としない。
【0012】
本発明のその他の特徴及び詳細は、特許請求の範囲及び搬送物としての鋼板コイルと共に図中に図式で示された本発明の実施の形態の以下の説明に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】5つの鋼板コイルを搬送している従来のウォーキングビーム式搬送装置の側面を示す。
【図2】1つのウォーキングビーム式搬送装置に枢着連結された1つの増補搬送要素又は従ウォーキングビームを伴うこのウォーキングビーム式搬送装置の側面を示す。この場合、ウォーキングビーム式搬送装置は3つの鋼板コイルを搬送し、従ウォーキングビームは2つの鋼板コイルを搬送する。
【図3】1つのウォーキングビーム式搬送装置に枢着連結された1つの増補搬送要素又は従ウォーキングビームを伴うこのウォーキングビーム式搬送装置の側面を示す。この場合、ウォーキングビーム式搬送装置は4つの鋼板コイルを搬送し、従ウォーキングビームは2つの鋼板コイルを搬送する。
【図4】1つのウォーキングビーム式搬送装置に枢着連結された1つの増補搬送要素又は従ウォーキングビームを伴うこのウォーキングビーム式搬送装置の側面を示す。この場合、ウォーキングビーム式搬送装置は3つの鋼板コイルを搬送し、従ウォーキングビームも3つの鋼板コイルを搬送する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1中には、−ここでは−5つの鋼板コイルつまりコイル2をタクト送りで搬送するための搬送経路の通常のウォーキングビーム1が示されている。
【0015】
当該ウォーキングビーム1は、連続コンベアである。この連続コンベアは、垂直運動と水平運動とを重ねることによって複数のコイル2を一定の間隔で1つの位置ずつ連続に移動させる。
【0016】
ウォーキングビーム1の車台は、2つのサブフレーム3,4から構成される。これらのサブフレーム3,4はそれぞれ、1つの軸5及びこの軸5に連結されている弾み車6に装着されている。これらの弾み車6は、ウォーキングビーム1の水平運動つまり搬送運動時に搬送装置内のここでは図示しなかった軌条設備の搬送レール上を走行する。
【0017】
コイル2を運んでいるウォーキングビーム8を昇降させる昇降機7が、両サブフレーム3,4上に1つずつ配置されている。又はこの代わりに、すなわちオプションで、垂直運動は、サブフレーム3,4内に構成された偏心昇降ギヤによって引き起こされてもよい。当該実施の形態では、これらの両バリエーションは、同時に並べて配置されている。このため、サブフレーム4は、昇降シリンダ9を有する。この昇降シリンダ9は、一方では偏心車に偏心して枢着連結されていて、他方ではビーム8の受け面10に対して枢着連結されている。当該偏心車は、それぞれの弾み車6の軸受を有する。両偏心車は、ロッド11を介して互いに連動するように連結されている。偏心車の回転運動が、昇降シリンダ9の往復運動によって起動される。この回転運動は、弾み車の偏心軸受によって垂直運動を同時に引き起こす。ウォーキングビーム1のここでは図示しなかった水平方向の搬送推進力が、例えば公知のシリンダ式駆動又はモーター式駆動によって実施される。ウォーキングビーム1をタクト送りで前進させ後進させ、これに応じて上昇させて降下させることによって、ビーム8上に搭載されているコイル2を希望する搬送方向にタクト送りで搬送することができる。
【0018】
図2中には、ウォーキングビーム1に対して説明したものと同様な構造のウォーキングビーム12aが示されている。後続する搬送要素つまり搬送要素14aが、継手軸受として構成された継手13を用いてウォーキングビーム12aに連結されている。従ウォーキングビーム14aは、継手軸受13から離れたこの従ウォーキングビーム14aの端部にサブフレームつまり一対の車輪15、すなわち軸16に連結されている弾み車17を有するこの軸16を1つだけ有する。コイル2を搬送するビーム19を昇降させる昇降機18が、サブフレーム15の上側に配置され得る。ここでも、図1に対して既に上述したように、偏心昇降ギヤがオプションで設けられ得ることが同様に示されている。このため、昇降シリンダ20が、サブフレーム15に対して配置されている。この昇降シリンダ20は、受け面21を介してビーム19の昇降運動を引き起こす。
【0019】
従ウォーキングビーム14aの昇降ギヤの偏心車が、スライドロッド22を介してウォーキングビーム12aのロッド11に対して連動するように連結されている。このことは、従ウォーキングビーム14aが、ウォーキングビーム12aに依存しない昇降運動を実施するのではなくてウォーキングビーム12aと同じに同期する運動の経時変化を起こすことを意味する。
【0020】
継手軸受13を介してウォーキングビーム12aに枢着連結された従ウォーキングビーム14aの利点は、−当該従ウォーキングビーム14aが第2のウォーキングビームとして積載状況に起因して必要になる場合に−完全に自立したウォーキングビーム1又は12aとは違って、この従ウォーキングビーム14aは1つのサブフレーム15つまり軸16だけで済む点である。2つのサブフレーム3,4上に敷設されたウォーキングビーム12aが、力学的な安定性を有しているのと同様に、従ウォーキングビーム14aは、このウォーキングビーム12aとの当該枢着連結によって力学的な安定性を達成する。
【0021】
図2から分かるように、図1に比べてより重い複数のコイル2のより良好な重量配分のため、従ウォーキングビーム14aを伴うウォーキングビーム12aの場合は、図1においてウォーキングビーム1から搬送すべき5つのコイル2が、3(ウォーキングビーム12a):2(従ウォーキングビーム14a)の比で分割されている。
【0022】
図3の実施の形態では、ウォーキングビーム12bが、4つのコイル2を積載し、従ウォーキングビーム14bが、2つのコイルを積載している。この場合、ウォーキングビーム12bは、従ウォーキングビーム14bに比べてより長い構造長さを有する。このウォーキングビーム12bの場合、4つのコイル2を有する積載量に起因して、このウォーキングビーム12bの最大収容容量が、コイル数とコイル重量の双方に対して達成されている。この場合、追加のコイル2をタクト送りで搬送するため、従ウォーキングビーム14bが枢着連結されている。この従ウォーキングビーム14bは、2つのコイル2を搬送するために仕様設計されている。
【0023】
図4中に示された従ウォーキングビーム14cを有するウォーキングビーム12cの場合、ウォーキングビーム12cは、従ウォーキングビーム14cに比べてより短い構造長さを有する。ウォーキングビーム12cの構造に起因した収容容量は、ここでは3つのコイルを有する積載量によって達成されている。その結果、さらに3つのコイル2を搬送するため、枢着連結された従ウォーキングビーム14cは、対応する構造長さを有し、車台側及び昇降技術の双方でより大きい貨物収容量に対して仕様設計されている。
【0024】
図2〜4の例示的な構成が示すように、任意の異なる長さの従ウォーキングビーム14a,14b,14c及び/又は様々な大きさの貨物収容量に対して構成された従ウォーキングビーム14a,14b,14cの当該枢着連結によって、非常に多様なウォーキングビームシステムが達成される。このウォーキングビームシステムは、簡単に、改造を施すことなしに存在する搬送経路内に組み込み可能であり、貨物及びコストの観点ではコイルの重量及びコイルの数量又は達成すべき搬送の目的に応じたウォーキングビームと従ウォーキングビームとの最適な組み合わせを常に可能にする。
【符号の説明】
【0025】
1 ウォーキングビーム式搬送装置/主ウォーキングビーム
2 鋼板コイル/コイル又は搬送物
3 サブフレーム
4 サブフレーム
5 軸
6 弾み車(フライホイール)
7 昇降機/垂直昇降機
8 ビーム
9 昇降シリンダ/垂直昇降機
10 受け面
11 ロッド/連結ロッド
12a ウォーキングビーム
12b ウォーキングビーム
12c ウォーキングビーム
13 継手軸受/継手
14a 搬送要素/従ウォーキングビーム
14b 搬送要素/従ウォーキングビーム
14c 搬送要素/従ウォーキングビーム
15 サブフレーム(一対の車輪)
16 軸
17 弾み車
18 昇降機/垂直昇降機
19 ビーム
20 昇降シリンダ/垂直昇降機
21 受け面
22 スライドロッド/連結ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の昇降機(7;9)によって昇降可能であり且つ少なくとも1つの駆動部によって搬送方向に軌条走行的に進行可能であり且つ2つの一対の車輪つまりサブフレーム(3,4)を有するウォーキングビーム(12a,12b,12c)を備えたウォーキングビーム式搬送装置(1)であって、鋼帯コイルつまり鋼板コイル、鋼板パケットその他の搬送物(2)をタクト送りで搬送し、前記ウォーキングビームは、後続する1つのウォーキングビーム式搬送装置に連結されている当該ウォーキングビーム式搬送装置(1)において、
前記ウォーキングビーム(1;12a,12b,12c)は、ただ1つのサブフレーム(15)を有する1つの搬送要素(14a,14b,14c)に枢着連結されていて、連結要素としての継手(13)が、垂直方向の力及び水平方向の力並びに前記ウォーキングビーム(1;12a,12b,12c)の水平方向の運動を前記搬送要素に伝達することを特徴とするウォーキングビーム。
【請求項2】
前記搬送要素は、少なくとも1つの昇降機(18,20)を有する従ウォーキングビーム(14a,14b,14c)として構成されていることを特徴とする請求項1に記載のウォーキングビーム。
【請求項3】
ウォーキングビーム(12a,12b,12c)と従ウォーキングビーム(14a,14b,14c)との間の前記継手(13)は、水平方向の力及び垂直方向の力を伝達する継手軸受として構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のウォーキングビーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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