説明

ウォータサーバ

【課題】 エアパージが必要か否かを確実に判定し、必要時には自動エアパージを行った上でヒータ加熱を許可し、空焚き発生を確実に回避し得るウォータサーバを提供する。
【解決手段】 温度・水検知センサとして自己発熱型サーミスタを用い、温度検知に加え水の有・無も検知可能とする。まずは温水タンク内の検知温度を用いて、40℃以上ならば水(温水)があると判定しヒータ加熱を許可する(S2でYES,S3)。40℃未満ならば、水が有るか否かが不明なので、温度・水検知センサを水検知に切換えて、水が有るか否かを判定する(S5,S6)。水が有ればヒータ加熱を許可し(S6でYES)、水が無ければ温水取水弁を開制御して温水タンク内をエアパージする(S7)。注水により満水になるまでエアパージした上で(S8でYES)、ヒータ加熱を許可する(S3)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォータボトル等の容器に充填された水の補給を受けてヒータ加熱することにより、飲料水として少なくとも温水(湯)を供給し得るウォータサーバに関し、特に設置時や水抜き後の再使用時において加熱対象の水がないにも拘わらずヒータ加熱されてしまう事態の発生を回避する技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、ウォータサーバとしては「ディスペンサ」とも称され、交換可能に装着されたウォータボトルから水の供給を内蔵タンクに受け、これを冷却して冷水状態に維持し、ユーザのレバー操作やコック操作により冷水を飲用として供給するものが提供されている。又、冷水のみならず、温水をも供給し得るようにしたものも提供されている。すなわち、冷水タンクとは別に設けた温水タンクに上記水を貯留し、この水をヒータ加熱して所定温度に保温しておき、上記と同様にユーザのレバー操作やコック操作により温水(お湯)を飲用として供給するものが提供されている。
【0003】
特許文献1には、このようなウォータサーバにおいて、内部の配管や内蔵タンク内への空気混入を防止するための技術として、次の点が記載されている。すなわち、ウォータボトルの連結部内に球状のフロート栓と、このフロート栓が沈降して当接する弁座とを設け、ウォータボトル内から水が下方に落とし込まれる際にはフロート栓が浮力で弁座から離れて水の落とし込みを許容し、ウォータボトル内の水が消費されて無くなってしまった際には沈降して弁座に当接するようにして、配管内や内蔵タンクに空気が混入しないようにすることが記載されている。
【0004】
又、特許文献2には、所定レベル位置での水位検知の手段が記載されている。すなわち、ヒータ加熱し得る温水タンク内の所定レベル位置にフロートスイッチを設置し、温水タンク内の水位がこの所定レベル位置まで上昇し又は下降したことをフロートスイッチにより検知し得るようにすることが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−308297号公報
【特許文献2】特開平11−46981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、新規にウォータサーバを設置するときや、あるいは、レンタル期間の終了等の使用終了により内部から水抜きした状態で保管されていたウォータサーバを再使用するとき等、内部の温水タンクが実質的に空の状態になっているときには、内部をエアパージして加熱対象の水を引き込む必要がある。エアパージを行うことなくヒータ加熱すると、温水タンクは空焚き状態に陥ってしまうことになるため、これを回避する必要がある。ヒータ加熱は、通常、ウォータボトルを装着して電源スイッチ等をONにすれば、自動的に開始されるようになっているため、人為的ミスにより上記の空焚き発生のおそれが生じる。
【0007】
この対策として、温水タンクからエア抜き用パイプを上方に向けて設置することが考えられる。つまり、ウォータボトルからの水頭圧により温水タンク内のエアが上記エア抜き用パイプから押し出されるようにするのである。しかしながら、通常の温水供給運転時には温水タンクのみならず、上記エア抜き用パイプ内にも温水が充満することになるため、そのエア抜き用パイプの外周面から放熱されてしまうことになる。この結果、その放熱分だけ余分にヒータ加熱が必要になって、そのヒータ加熱のために無駄な電力消費を招くことになる。
【0008】
一方、温水タンク内が空の状態もしくは水はあるものの空焚き状態と同様の状態を引き起こすような空に近い状態であることを検知するためには、そのためのセンサ等を新たに追加する必要が生じる上に、エアパージが必要であるとユーザ又は作業員が認識したとしても、そのエアパージ作業は手動操作により勘に頼った作業が必要になる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、エアパージが必要か否かを確実に判定することができ、必要な場合には確実にエアパージを行った上でヒータ加熱を許可することにより、空焚き発生を確実に回避し得るウォータサーバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1の発明では、密閉容器により構成され上位に設置された水源容器から水頭差により水の供給を受ける温水タンクと、この温水タンク内の水を加熱して温水を生成するヒータと、上記温水タンクから温水を開閉切換可能に取水して外部に供給する開閉制御弁と、上記温水タンク内に水又は温水が有るか否かを検知する水検知センサと、この水検知センサからの出力に基づき作動制御する制御手段とを備えるものとする。そして、上記制御手段として、温水を生成するための作動スイッチからのON出力を受けたとき、上記水検知センサからの検知信号に基づき温水タンク内に水又は温水が有るか否かを判定し、水又は温水が無いと判定された場合には上記ヒータによる加熱作動を禁止すると共に、上記開閉制御弁を開切換えして温水タンク内をエアパージさせ、エアパージに伴い温水タンク内に上記水源容器から注水させた上で、上記ヒータによる加熱作動を許可する構成とすることとした(請求項1)。
【0011】
第1の発明の場合、水が有るか否かの検知に基づいて温水タンク内の状態がエアパージの必要な状態にあるか否かについて確実に判定することが可能となり、水が無くてエアパージが必要な場合にはユーザの手動操作によらずして制御手段による開閉制御弁の開切換制御によりエアパージを自動処理で確実にしかも適時に行うことが可能となる。そして、この自動エアパージ処理により温水タンク内に注水させて満水状態あるいは所定水位状態にした上でヒータ加熱を許可するようにしているため、空焚き状態の発生を確実に回避して安全性の向上を図り得るようになる。
【0012】
本発明における水検知センサとして、自己発熱型サーミスタを用い、温度検知に加えて自己発熱時の温度変化により水が有るか否かを検知可能に構成されたものを用いることができる(請求項2)。このようにすることにより、温水タンク内の通常の温度検知と、エアパージが必要か否かを判定するための水の有・無についての検知との双方を1つのセンサにより行うことが可能となり、水検知のために特別な機器の設置を不要にし得ることになる。
【0013】
第2の発明では、密閉容器により構成され上位に設置された水源容器から水頭差により水の供給を受ける温水タンクと、この温水タンク内の水を加熱して温水を生成するヒータと、上記温水タンクから温水を開閉切換可能に取水して外部に供給する開閉制御弁と、上記温水タンク内の水温検知に加え自己発熱時の温度変化により水が有るか否かを検知する温度・水検知センサと、この温度・水検知センサからの出力に基づき作動制御する制御手段とを備えるものとする。そして、上記制御手段として、温水を生成するための作動スイッチからのON出力を受けたとき、上記温度・水検知センサからの検知温度と判定温度との比較に基づき温水タンク内に少なくとも温水が有るか否かの判定を行い、温水が有るとの判定以外の判定のときには上記ヒータによる加熱作動を禁止して、さらに上記温度・水検知センサにより温水タンク内に水が有るか否かを判定し、水が無いと判定された場合には上記ヒータによる加熱作動を禁止しつつ上記開閉制御弁を開切換えして温水タンク内をエアパージさせ、エアパージに伴い温水タンク内に上記水源容器から注水させた上で、上記ヒータによる加熱作動を許可する構成とすることとした(請求項3)。
【0014】
第3の発明では、密閉容器により構成され上位に設置された水源容器から水頭差により水の供給を受ける温水タンクと、この温水タンク内の水を加熱して温水を生成するヒータと、上記温水タンクから温水を開閉切換可能に取水して外部に供給する開閉制御弁と、上記温水タンク内の水温検知に加え自己発熱時の温度変化により水が有るか否かを検知する温度・水検知センサと、この温度・水検知センサからの出力に基づき作動制御する制御手段とを備えるものとする。そして、上記制御手段として、上記ヒータによる加熱作動の要求指令であるヒータ加熱要求の出力条件が成立したとき、上記温度・水検知センサからの検知温度と判定温度との比較に基づき温水タンク内に少なくとも温水が有るか否かの判定を行い、温水が有るとの判定以外の判定のときには上記上記ヒータ加熱要求が出力されたとしても上記ヒータによる加熱作動を禁止して、さらに上記温度・水検知センサにより温水タンク内に水が有るか否かを判定し、水が無いと判定された場合には上記ヒータによる加熱作動を禁止しつつ上記開閉制御弁を開切換えして温水タンク内をエアパージさせ、エアパージに伴い温水タンク内に上記水源容器から注水させた上で、上記ヒータによる加熱作動を許可する構成とすることとした(請求項4)。
【0015】
第2の発明又は第3の発明の場合、エアパージの必要な状態にあるか否かについて、まず、検知温度に基づいて温水の有・無を判定し、温水が確実に有ると判定される場合を除き、水の有・無を判定した上で、上記のエアパージが必要か否かの判定を行うようにしているため、温水が温水タンク内に存在する場合には、その存在を簡易に検知し得ることになる。そして、温度検知だけでは水が有るか否か不明な場合にのみ、水の有・無についての検知を行うようにしているため、制御上の省エネルギー化・省力化が図られることになる。その上で、水が無くてエアパージが必要な場合にはユーザの手動操作によらずして制御手段による開閉制御弁の開切換制御によりエアパージを自動処理で確実にしかも適時に行うことが可能となる。そして、この自動エアパージ処理により温水タンク内に注水させて満水状態あるいは所定水位状態にした上でヒータ加熱を許可するようにしているため、空焚き状態の発生を確実に回避して安全性の向上を図り得るようになる。特に第3の発明の場合には、例えば作動スイッチがON出力状態で温水タンクからの温水の水抜きを検知したとき、温水タンク内の温水の保温運転制御中にヒータを加熱作動すべき条件が成立したとき、温水タンク内の水又は温水を強制的に沸き上げるためのヒータの加熱作動が行われるとき等のヒータ加熱要求の出力条件が成立したときに、水の有・無に基づく自動エアパージ処理が必要な状態にあるか否かについて判定して、必要な場合には自動エアパージ処理により温水タンク内に注水させた上でヒータ加熱を許可するという空焚き状態の発生を回避する監視制御を実行させることができる。これにより、作動スイッチのON出力を受けてその監視制御を実行させる場合以外であっても、エアパージによる注水の必要が生じるおそれのある場合に、それを確実に検知して自動エアパージ処理により注水し、空焚き状態の発生のおそれを確実に回避することが可能になる。
【0016】
第2の発明又は第3の発明における温度・水検知センサとして、自己発熱型サーミスタを用い、通常電源の通電による温度検知に加えて、水検知用電源への通電切換えにより自己発熱させて自己発熱時の温度変化により水が有るか否かを検知可能に構成することができる(請求項5)。このようにすることにより、温水タンク内の通常の温度検知と、エアパージが必要か否かを判定するための水の有・無についての検知との双方を1つのセンサにより行うことが可能となり、水検知のために特別な機器の設置を不要にし得ることになる。しかも、水が有るか否かについて、まず温度検知により温水の有・無を判定し、ついで必要な場合にのみ水検知用電源へ通電切換えして水の有・無を判定するようにしているため、通電切換の頻度を限られた場合に制限して、耐久性の観点から長期に亘り機器の性能を維持させることが可能となる。加えて、まず温度検知により温水の有・無を判定した上で、少なくとも温水は無いと判定されたときに水検知用電源への通電切換により水の有・無を判定するようにしているため、自己発熱による水検知があまり明確には表れないような高温領域、つまり自己発熱させても温度変化が小さいような場合については自己発熱による水検知ではなくて温度検知により判定し、それよりも低温領域、つまり自己発熱後の温度変化が大きく表れるような場合には自己発熱による水検知を行うことが可能になる。これにより、高温領域での誤判定の発生を確実に回避し得ることになる。
【発明の効果】
【0017】
以上、説明したように、請求項1又は請求項2のウォータサーバによれば、水が有るか否かの検知に基づいて温水タンク内の状態がエアパージの必要な状態にあるか否かについて確実に判定することができ、水が無くてエアパージが必要な場合にはユーザの手動操作によらずして制御手段による開閉制御弁の開切換制御によりエアパージを自動処理で確実にしかも適時に行うことができるようになる。加えて、この自動エアパージ処理により温水タンク内に注水させて満水状態あるいは所定水位状態にした上でヒータ加熱を許可するようにしているため、空焚き状態の発生を確実に回避して安全性の向上を図ることができるようになる。
【0018】
特に請求項2によれば、温水タンク内の通常の温度検知と、エアパージが必要か否かを判定するための水の有・無についての検知との双方を1つのセンサにより行うことができ、水検知のために特別な機器の設置を不要にすることができる。
【0019】
請求項3〜請求項5のいずれかのウォータサーバによれば、温水の存在をまず温度検知により判定し、温度検知だけでは水が有るか否か不明な場合にのみ、水の有・無についての検知を行うようにしているため、エアパージが必要か否かを把握するための検知制御における制御上の省エネルギー化・省力化を図ることができる。その上に、水が無くてエアパージが必要な場合にはユーザの手動操作によらずして制御手段による開閉制御弁の開切換制御によりエアパージを自動処理で確実にしかも適時に行うことができるようになる。加えて、この自動エアパージ処理により温水タンク内に注水させて満水状態あるいは所定水位状態にした上でヒータ加熱を許可するようにしているため、空焚き状態の発生を確実に回避して安全性の向上を図ることができるようになる。
【0020】
特に、請求項4によれば、作動スイッチのON出力を受けてエアパージが必要か否かを把握するための検知制御を実行し水が無くてエアパージが必要な場合には自動エアパージ処理を実行させるという監視制御を実行させる場合以外であっても、エアパージによる注水の必要が生じるおそれのある場合に、それを確実に検知して自動エアパージ処理により注水し、空焚き状態の発生のおそれを確実に回避することができるようになる。
【0021】
又、請求項5によれば、温水タンク内の通常の温度検知と、エアパージが必要か否かを判定するための水の有・無についての検知との双方を1つのセンサにより行うことができ、水検知のために特別な機器の設置を不要にすることができる。しかも、水が有るか否かを、まず温度検知により温水の有・無を判定し、ついで必要な場合にのみ水検知用電源へ通電切換えして水の有・無を判定するようにしているため、通電切換の頻度を限られた場合に制限して、耐久性の観点から長期に亘り機器の性能を維持させることができるようになる。加えて、自己発熱による水検知があまり明確には表れないような高温領域での誤判定発生のおそれを確実に回避することができるようになり、水の有・無についての検知をより確実に実現させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は本発明の実施形態に係るウォータサーバの装置構成を、図2はこのウォータサーバの外観構成例を示す。両図において、符号1は外装となるハウジング、2(図1にのみ表れる)は冷水タンク、3は上記冷水タンク2の上側に着脱可能に装着されて冷水タンク2への水の供給源となる水源容器としてのウォータボトル、4(図1にのみ表れる)は冷水タンク2内の水を冷却する冷凍回路、5(図1にのみ表れる)はこの冷水タンク2を介して水の供給を受ける温水タンク、6(図1にのみ表れる)は温水タンク3内の水を加熱するヒータ、7(図1にのみ表れる)はウォータサーバの作動制御を行う制御手段としてのコントローラである。
【0024】
ハウジング1の上面中央部位にはウォータボトル3を装着させるための連結凹部11が形成されている。この連結凹部11は、ウォータボトル3の首部31を天地逆転した状態で内嵌させ得る内面形状を有すると共に、その中心軸に沿って上向きに突出する連通筒部12を備えている。この連結凹部11に対し、ウォータボトル3の天地を逆にした状態で首部31を上から下に内嵌させることにより、連通筒部12がウォータボトル3の首部31内に上向きに挿入されてウォータボトル3内と冷水タンク2内とを互いに連通した状態にして、ウォータボトル3と冷水タンク2とが互いに連結されるようになっている。又、ハウジング1(図2参照)の前面の中段位置には冷水及び温水の2種類の飲料水を受けるコップ置き場13が形成され、このコップ置き場13の各コップ81,82の上側位置に上記冷水及び温水の各吐出口271,521(図1参照)が配置されている。又、このコップ置き場13の上側位置の前面には冷水取り出しのための冷水スイッチ14と、温水取り出しのための温水スイッチ15とが配設されている。
【0025】
冷水タンク2は上方に開放された容器であり、その上端開口に対し遮光板を兼ねる蓋21がパッキン等を介して嵌め込まれて、密閉されている。蓋21の略中央部位は上記連結凹部11に対し下側から外嵌し得る凹部22とされ、この凹部22の中心位置には上記の連通筒部12に連通する貫通孔が形成されている。又、冷水タンク2内の所定レベル位置には水平方向に拡がるバッフルプレート23が配設され、このバッフルプレート23の中央位置に対し上流端が開口するように接続管24が接続されている。この接続管24の下流端が温水タンク5の底部に連通されている。そして、冷水タンク2の底部の溜まり部25から冷水取水管26がハウジング1のコップ置き場13の上方位置まで延ばされ、その冷水取水管26の下流端側に設置された冷水取水弁27が開作動されることによりその吐出口271から冷水タンク2内の冷水が吐出されるようになっている。この冷水取水弁27は電磁式開閉制御弁により構成されており、通常は閉状態に維持されて、コントローラ7からの制御信号により開閉切換作動されるようになっている。さらに、冷水タンク2内には殺菌灯28,29が設置され、これら殺菌灯28,29によって内部に貯留されている間に冷水を殺菌し得るようにされている。一方の殺菌灯28の下端部は上記溜まり部25内まで延ばされて冷水取水管26の内方まで照らし得るようにされている。
【0026】
ウォータボトル3は「ガロンボトル」とも言われ、内部に飲料水が充填・収容された状態で提供されるものである。そして、このウォータボトル3がウォータサーバに対し上記の如く装着され、装着されたウォータボトル3内の飲料水が消費されて空になるたびに、新しいウォータボトル3に交換されるようになっている。
【0027】
冷凍回路4は、内部に冷媒を封入した循環経路41上に蒸発器を構成する冷却管42を備えている。そして、この冷却管42を上記冷水タンク2の周囲に巻き付け、コンプレッサ43により圧縮した冷媒を放熱器44で放熱させて液化させ、これを膨張させて冷却管42に供給することにより冷水タンク2内の水から熱を奪って冷却するようになっている。
【0028】
温水タンク5は冷水タンク2よりも下位に、従ってウォータボトル3よりも下位に配置された密閉容器であり、内部にヒータ6が配設されている。この温水タンク5には、上記接続管24を通して冷水タンク2内(あるいはウォータボトル3内)から水頭差に基づき水が注水され、かつ、取水により減った分だけ補給されるようになっている。従って、温水タンク5から見ると、上記ウォータボトル3のみならず冷水タンク2も水源容器を構成することになる。又、温水タンク5の頂部から温水取水管51がハウジング1のコップ置き場13の上方位置まで延ばされ、その前面の温水吐出口まで延ばされ、その温水取水管51の下流端側に介装された温水取水弁52が開作動されることによりその吐出口521から温水タンク5内の温水が吐出されるようになっている。この温水取水弁52も冷水取水弁27と同様に電磁式開閉制御弁により構成されており、通常は閉状態に維持されて、コントローラ7からの制御信号により開閉切換作動されるようになっている。なお、図1中の符号241は水抜き用配管であり、この水抜き用配管241は接続管24から分岐してハウジング1まで延ばされており、その下流端の接続口から冷水タンク2内の冷水や温水タンク5内の温水を排出させてウォータサーバ内から水抜きし得るようになっている。
【0029】
又、温水タンク5には過熱防止装置53と、温度・水検知センサ54とが設けられている。過熱防止装置53はバイメタルを用いて沸騰直前の温度(例えば95℃)の検知によりヒータ6に対する通電を遮断するように構成されている。温度・水検知センサ54は自己発熱型サーミスタにより構成され、温水タンク5内の温水温度の検知に加えて、水が有るか否かの検知(有水検知)をも行えるようになっている。すなわち、通電により自己発熱させた場合に、水が無ければその自己発熱は空中に放熱されるだけである一方、水があれば自己発熱しても早期に熱を奪われてしまうことになる。このため、自己発熱させたときの温度の低下状況の如何に基づいて水の有・無の検知が可能となる。この自己発熱時の温度の低下状況を自己発熱型サーミスタの抵抗体の抵抗値の変化により検知して有水検知を行うようになっている。このような有水検知と、温度検知との機能の切換えは、通電電源の切換により行われるようになっている。すなわち、温度検知のときには例えばDC5Vを、有水検知のときには例えばDC15Vをというように、通電する電源を切換えることで行われるようになっている。なお、常時はDC5Vの温度検知用の通常電源が設定され、有水検知を行うときに有水検知用のDC15Vに切換えられるようになっている。そして、この温度・水検知センサ54による有水検知により水が有ると検知されたときには、その温度・水検知センサ54が設置されているレベル位置以上の水位があることになる。
【0030】
コントローラ7は、ヒータ6等の電気駆動式の要素に対する電源供給と、冷凍回路4による冷却運転及びヒータ6による加熱運転に係る制御と、冷水スイッチ14又は温水スイッチ15からの出力に基づく冷水又は温水の供給運転に係る制御との実行に加え、次の監視制御を実行するようになっている。すなわち、この監視制御は、温水タンク5内に水が無いにも拘わらずヒータ6による加熱が実行されてしまうという空焚きの発生を回避することを主目的にしたものであり、上記の温度・水検知センサ54を用いた温水タンク5内の温水の温度検知及び有水検知に基づき、上記のヒータ6による加熱運転を許可するか否かの監視・判定と、水が無いことの検知に基づく自動エアパージ処理と、この自動エアパージ処理による温水タンク5への注水処理とを実行するようになっている。
【0031】
上記の冷凍回路4による冷却運転及びヒータ6による加熱運転に係る制御は、電源が投入されてウォータサーバが使用される際に開始され、所定温度まで冷却又は加熱した後に、一定の冷水温度又は温水温度を維持するように保温運転を行うようになっている。温水温度の保温運転制御としては、温度検知に切換えた温度・水検知センサ54からの温度検知出力に基づいて、例えば90℃まで昇温すればヒータ6への通電を遮断してヒータ加熱を停止する一方、加熱停止により例えば80℃まで降温すればヒータ6への通電を再開してヒータ加熱を再開させるというように、ヒータ加熱を断続させることにより温水温度を一定範囲に保温するようにする。
【0032】
又、冷水又は温水の供給運転制御は、ウォータサーバの使用継続中に行われる制御であり、ユーザが冷水スイッチ14をON操作すれば冷水取水弁27を開切換して冷水タンク2から冷水を吐出させ、あるいは、ユーザが温水スイッチ15をON操作すれば温水取水弁52を開切換して温水タンク5から温水を吐出させる、という制御を行うようになっている。
【0033】
上記監視制御は、図3に示すように、ヒータ加熱を開始するための前提である作動スイッチのON(電源スイッチのON又は電源スイッチのONの後の運転スイッチのON;電源スイッチ及び運転スイッチは共に図示省略)により開始され、まず、温度・水検知センサ54に対する通電電源を通常電源(DC5V)に回路切換するか、通常電源であることを確認するかした上で(ステップS1)、その温度・水検知センサ54からの温度検知出力に基づき現在の検知温度は所定の判定温度(例えば40℃)以上であるか否かを判定する(ステップS2)。この判定温度としては、この判定温度以上であれば温水タンク5内に冷めてはいるものの温水が確実に存在する一方、判定温度未満であれば温水は存在しないがもしかしたら水は存在するかもしれないしあるいは空気かもしれない、というように不明な状況にあると判定し得る温度値を設定する。そして、検知温度が判定温度以上であれば(ステップS2でYES)、温水タンク5内に温水が確実にあると判定し得るため、上記の加熱運転制御に係る制御部に対しヒータ6に対する通電を許可し(ステップS3)、以後、通常の制御に移行する。
【0034】
ステップS2で、検知温度が判定温度よりも低い場合(ステップS2でNO)には、水が有るか否かが不明であるため、有水検知に切換えて水が有るのか空気(水がない)なのかを確認する。まず、上記の検知温度を記憶した上で(ステップS4)、温度・水検知センサ54に対する通電電源を有水検知用のもの(DC15V)に回路切換して(ステップS5)、有水検知を行う(ステップS6)。温度・水検知センサ54からの有水検知出力に基づき水が有ると判定されれば(ステップS6でYES)、上記のステップS3に移行してヒータ6に対する通電を許可する一方、温度・水検知センサ54からの有水検知出力に基づき水が無いと判定されれば(ステップS6でNO)、エアパージ処理及びこれに伴う注水処理を行う(ステップS7〜S9)。
【0035】
ここで、温度・水検知センサ54からの有水検知出力に基づく水が有るか否かの判定は次のようにして行う。ステップS5で切換えた通電電源からDC15Vを例えば10秒間印加させて自己発熱させる。DC15Vの印加を停止して、通電電源をDC5V(温度検知用)に切換えて自己発熱後の温度を検知する。そして、この自己発熱後の検知温度(DC15Vの印加停止時点の検知温度)と、自己発熱前の温度(ステップS4で記憶した検知温度)とを比較して、自己発熱による温度上昇分が例えば4℃未満であれば、水が有ると判定することはできないため、ヒータ6への通電を許可せずに禁止した状態を維持し、上記の温度上昇分が4℃以上あれば、さらに次の判定処理を継続する。すなわち、DC15Vの印加停止後、複数回の所定時間経過時点(例えば0.3秒経過、0.4秒経過及び0.5秒経過時点)の検知温度の平均値(0.3,0.4,0.5秒経過時点の3回分の検知温度の平均値)が有水判定温度以下であれば、水が有ると判定(検知)する。上記の有水判定温度としては、上記の自己発熱後の検知温度から所定温度値αを減じた温度値(自己発熱後の検知温度−α)を用いる。逆に有水判定温度よりも高ければ、水は無いと判定して上記のエアパージ処理及びこれに伴う注水処理を行う。要するに、DC15Vの印加による自己発熱で4℃分の温度上昇が発生したこと、及び、DC15Vの印加停止から微小時間経過範囲での温度変化が所定温度値(α)以下であること、の双方の成立をもって、水が有ると判定(検知)するようになっている。
【0036】
そして、ステップS6で水が無いと判定されれば(ステップS6でNO)、温水取水弁52を開切換してエアパージを行う(ステップS7)。温水取水弁52を開切換すると、温水タンク5内が大気に開放されるため、ウォータボトル3及び冷水タンク2の側から接続管24を通して水が重力作用により落とし込まれることになる。この落とし込まれる水により、温水タンク5内のエアが押し出されてエアパージされると共に、内部に注水されることになる。この注水により温水タンク5内が満水状態あるいは所定水位状態になるまでエアパージを続ける(ステップS8でNO)。この満水状態あるいは所定水位状態になったことの判定は、温度・水検知センサ54により水が有るという検知に変化し、かつ、温度・水検知センサ54の設置レベル位置から満水位まで水位上昇に要するであろう時間tgが経過するという条件が成立することにより行う。これらの条件が成立すれば(ステップS8でYES)、温水取水弁52を閉状態に戻してエアパージ処理及び注水処理を終了し(ステップS9)、温度・水検知センサ54を通常の温度検知用に切換えた上で(ステップS10)、ヒータ6に対する通電を許可する(ステップS3)。以後、ヒータ加熱により温水タンク5内の水が所定温度まで加熱され、所定温度範囲に保温され、この状態でユーザによる温水スイッチ15のON操作で温水が吐出・供給されることになる。
【0037】
以上の実施形態の場合、温水タンク5内に水が有るか否かを温度・水検知センサ54により確実に検知することができ、しかも、それを水位電極やフロートスイッチ等の特別な機器を設置することなく温度検知のためのサーミスタを用いて実現させることができる。又、温度検知とは異なり、水が有るか否かの検知(通電電源の切換)は常時監視もしくは断続監視ではなくて必要なときにのみ行うようにしているため、耐久性の観点から長期に亘り機器の性能を維持させることができる。この点については、温水が確実に有るとの判定は温度検知に基づいて行い(ステップS2でYES)、温度検知によっては温水はないものの水が有るか否かが不明な場合にのみ、続いて、通電電源の切換により水の有・無についての検知・判定を行うようにしているため、上記の耐久性の観点からはより一層の向上を図ることができる。そして、水が有るか否かの検知に基づいて温水タンク5内の状態がエアパージの必要な状態にあるか否かについて確実に判定することができ、必要な場合にはユーザの手動操作によらずして電磁式開閉制御弁により構成された温水取水弁52を用いて自動エアパージ処理により確実にかつ適時に行うことができる。この自動エアパージ処理により温水タンク5内に注水させて満水状態あるいは所定水位状態にした上でヒータ加熱を許可することができ、空焚き状態の発生を確実に回避して安全性の向上を図ることができる。
【0038】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、温水タンク5の他に冷水タンク2をも備えた例を示しているが、これに限らず、本発明は少なくとも温水タンク5を備えて構成されたウォータサーバであれば適用することができる。この場合には、温水タンクに対しウォータボトルから直接に注水させるようにすればよい。又、接続管24の配設状況として、上記実施形態以外にも、例えば冷水タンク2の外側を通して温水タンク5に接続させるような配設状況に変更してもよい。
【0039】
上記実施形態では、監視制御(図3参照)を、ヒータ加熱を開始するための前提である電源スイッチのON又は運転スイッチのON等の作動スイッチのONにより開始するようにしているが、これに限らず、ヒータ6による加熱作動の要求指令(ヒータ加熱要求)の出力条件が成立することにより上記監視制御を実行させるようにしてもよい。ヒータ加熱要求の出力条件が成立する場合としては、次のような場合がある。すなわち、作動スイッチ(電源スイッチや運転スイッチ)がONの状態で水抜き用配管241による水抜きを検知した場合、保温運転制御中にヒータ6をONにすべき条件が成立した場合、あるいは、強制的に沸き上げ作動を実行させる場合などがある。上記の水抜きの検知としては、温水タンク5内の温水温度について温度・水検知センサ54による温度検知を続けて、その検知温度に基づいて急激な温度低下(所定時間内に例えば80℃から20℃まで低下等)が検知されたとき、水抜きが発生したと判定するようにすればよい。
【0040】
上記実施形態では、温水生成のためのヒータとして、通電により加熱するヒータ6を示したが、これに限らず、燃焼により加熱するヒータを用いて、燃焼作動により加熱作動される一方、燃焼停止で加熱停止されるようにしてもよい。
【0041】
上記実施形態では、温度検知と水検知との双方が可能な温度・水検知センサ54を用いているが、これに限らず、通常の温度検知センサと別に水検知センサを設けるようにしてもよい。この場合には、水位電極やフロートスイッチを用い、これらからの検知信号に基づいて水の有・無を検知して、水が無ければヒータ加熱を禁止して自動エアパージ処理及びこれに伴う注水処理をした上で、ヒータ加熱を許可するようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態を示す模式図である。
【図2】実施形態を適用したウォータサーバの外観の例を示す斜視図である。
【図3】監視制御についてのフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
3 ウォータボトル(水源容器)
5 温水タンク
6 ヒータ
7 コントローラ(制御手段)
52 温水取水弁(開閉制御弁)
54 温度・水検知センサ(水検知センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器により構成され上位に設置された水源容器から水頭差により水の供給を受ける温水タンクと、この温水タンク内の水を加熱して温水を生成するヒータと、上記温水タンクから温水を開閉切換可能に取水して外部に供給する開閉制御弁と、上記温水タンク内に水又は温水が有るか否かを検知する水検知センサと、この水検知センサからの出力に基づき作動制御する制御手段とを備え、
上記制御手段は、温水を生成するための作動スイッチからのON出力を受けたとき、上記水検知センサからの検知信号に基づき温水タンク内に水又は温水が有るか否かを判定し、水又は温水が無いと判定された場合には上記ヒータによる加熱作動を禁止すると共に、上記開閉制御弁を開切換えして温水タンク内をエアパージさせ、エアパージに伴い温水タンク内に上記水源容器から注水させた上で、上記ヒータによる加熱作動を許可するように構成されている
ことを特徴とするウォータサーバ。
【請求項2】
請求項1に記載のウォータサーバであって、
上記水検知センサは、自己発熱型サーミスタであり、温度検知に加えて自己発熱時の温度変化により水が有るか否かを検知可能に構成されている、ウォータサーバ。
【請求項3】
密閉容器により構成され上位に設置された水源容器から水頭差により水の供給を受ける温水タンクと、この温水タンク内の水を加熱して温水を生成するヒータと、上記温水タンクから温水を開閉切換可能に取水して外部に供給する開閉制御弁と、上記温水タンク内の水温検知に加え自己発熱時の温度変化により水が有るか否かを検知する温度・水検知センサと、この温度・水検知センサからの出力に基づき作動制御する制御手段とを備え、
上記制御手段は、温水を生成するための作動スイッチからのON出力を受けたとき、上記温度・水検知センサからの検知温度と判定温度との比較に基づき温水タンク内に少なくとも温水が有るか否かの判定を行い、温水が有るとの判定以外の判定のときには上記ヒータによる加熱作動を禁止して、さらに上記温度・水検知センサにより温水タンク内に水が有るか否かを判定し、水が無いと判定された場合には上記ヒータによる加熱作動を禁止しつつ上記開閉制御弁を開切換えして温水タンク内をエアパージさせ、エアパージに伴い温水タンク内に上記水源容器から注水させた上で、上記ヒータによる加熱作動を許可するように構成されている
ことを特徴とするウォータサーバ。
【請求項4】
密閉容器により構成され上位に設置された水源容器から水頭差により水の供給を受ける温水タンクと、この温水タンク内の水を加熱して温水を生成するヒータと、上記温水タンクから温水を開閉切換可能に取水して外部に供給する開閉制御弁と、上記温水タンク内の水温検知に加え自己発熱時の温度変化により水が有るか否かを検知する温度・水検知センサと、この温度・水検知センサからの出力に基づき作動制御する制御手段とを備え、
上記制御手段は、上記ヒータによる加熱作動の要求指令であるヒータ加熱要求の出力条件が成立したとき、上記温度・水検知センサからの検知温度と判定温度との比較に基づき温水タンク内に少なくとも温水が有るか否かの判定を行い、温水が有るとの判定以外の判定のときには上記上記ヒータ加熱要求が出力されたとしても上記ヒータによる加熱作動を禁止して、さらに上記温度・水検知センサにより温水タンク内に水が有るか否かを判定し、水が無いと判定された場合には上記ヒータによる加熱作動を禁止しつつ上記開閉制御弁を開切換えして温水タンク内をエアパージさせ、エアパージに伴い温水タンク内に上記水源容器から注水させた上で、上記ヒータによる加熱作動を許可するように構成されている
ことを特徴とするウォータサーバ。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載のウォータサーバであって、
上記温度・水検知センサは、自己発熱型サーミスタであり、通常電源の通電による温度検知に加えて、水検知用電源への通電切換えにより自己発熱させて自己発熱時の温度変化により水が有るか否かを検知可能に構成されている、ウォータサーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−6463(P2010−6463A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171628(P2008−171628)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】