説明

ウォータジェット発生方法及び装置

【目的】 本発明はウォータジェット発生方法及び装置に関し、特に、電熱化学反応により水を吐出してウォータジェットを発生することを特徴とする。
【構成】 本発明によるウォータジェット発生方法及び装置は、水(9)と反応物粉体(33)とによる電熱化学反応を介して前記水(9)を吐出する構成である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ウォータジェット発生方法及び装置に関し、特に、電熱化学反応により水を吐出してウォータジェットを発生するための新規な改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、用いられていたこの種のウォータジェット発生方法としては、一般に、IEEE誌Trans.on Magnetics1989年vol25.NO1.251頁、K.IKUTA著による方法を図5に挙げることができる。すなわち、図5において符号1で示されるものは円筒電極であり、この円筒電極1の下部1aにはノズル2aを有する曲管2が一体に設けられていると共に、その上部1bには断面形状がほぼT字型をなす絶縁体3が設けられている。
【0003】前記絶縁体3の中心には接地棒4aを有する内部電極4が設けられており、この絶縁体3の上部には、前記内部電極4と対向するスイッチ電極5を有する絶縁板6が取りつけられ、このスイッチ電極5と前記内部電極4間には、電源としてのコンデンサ7が接続されている。
【0004】次に、前述の構成において、高圧電源H.Vからコンデンサに充電し、その高電圧がスイッチ電極5と内部電極4間の絶縁破壊電圧に達すると、各電極4,5間にアーク8が発生し、接地棒4aを経て円筒電極1へ電流が流れるが、同時に、円筒電極1内の水9上の空間10内にアークプラズマ11が発生する。
【0005】このアークプラズマ11の発生により、この空間10内が高圧力状態となり、水9はノズル2aを介して矢印の方向に吐出される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来のウォータジェット発生方法及び装置は以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。すなわち、アークプラズマにより水の上面の空間に発生する圧力は小さく、実用化できるほどの高効率のウォータジェットを発生することは不可能であった。
【0007】本発明は以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、電熱化学反応により水を吐出してウォータジェットを発生するようにしたウォータジェット発生方法及び装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明によるウォータジェット発生方法は、水と反応物粉体とによる電熱化学反応を介して前記水を吐出する方法である。
【0009】さらに詳細には、前記反応物粉体としてアルミニウム粉体を用いる方法である。
【0010】また、本発明によるウォータジェット発生装置は、水に浸漬した状態の筒電極と、前記筒電極の上部に設けられ電源に接続された内部電極と、前記筒電極に接続され反応物粉体を前記筒電極内に供給するための反応物粉体供給手段と、前記反応物粉体供給手段から前記水への前記反応物粉体の供給を制御するためのシャッタ手段とを備えた構成である。
【0011】さらに詳細には、前記反応物粉体供給手段には、前記反応物粉体の注入を行うための注入用ピストン及び前記反応物粉体の前記筒電極への供給を停止するための閉鎖器が設けられている構成である。
【0012】さらに詳細には、前記反応物粉体は、アルミニウム粉体よりなる構成である。
【0013】
【作用】本発明によるウォータジェット発生方法及び装置においては、反応物粉体供給手段から供給された反応物粉体は筒電極内の水の水面上に供給され、シャッタ手段を解除すると、この反応物粉体と内部電極が電気的に接触して導通状態となる。前述の状態で、スイッチをオンとすると、電源であるコンデンサに蓄えられた電気エネルギーが反応物粉体に供給され、反応物粉体が高温のプラズマとなると同時に強い電磁力で水中に沈められる。この時、水と反応物粉体とは激しい化学反応を起こし、水面上の空間が高圧状態となり、水は高速で筒電極のノズルから吐出し、ウォータジェットを発生することができる。
【0014】
【実施例】以下、図面と共に本発明によるウォータジェット発生方法及び装置の好適な実施例について詳細に説明する。なお、従来例と同一又は同等部分については同一符号を用いて説明する。図1から図4迄は本発明によるウォータジェット発生装置を示すためのもので、図1は構成図、図2から図4迄は動作状態を示す構成図である。図1において符号1で示されるものはノズル2aを有する曲管2を備えると共に水9中に一部が浸漬した状態の筒電極であり、この筒電極1の上部に形成された径大状の空間30には、筒形の可動絶縁筒からなるシャッタ手段31が図示しない駆動手段を介して矢印Aの方向に上下動自在に設けられている。
【0015】前記筒電極1の上端には、接地棒4aを一体に有する内部電極4を螺装して有する絶縁体3が設けられ、この内部電極4と筒電極1間には、高電圧H.Vは接続された電源であるコンデンサ7とスイッチ32が直列に接続されている。
【0016】前記空間30に形成された取付孔30aには、アルミニウム粉体よりなる反応物粉体33を収容するホッパ34を有する反応物粉体供給手段40が設けられており、この供給手段40の外端40aには注入用ピストン41が作動自在に設けられていると共に、その基部40b側には反応物粉体33が筒電極1の隙間30側に供給されることを停止するための閉鎖器42が開閉自在に設けられている。
【0017】本発明によるウォータジェット発生装置は前述したように構成されており、以下に、その方法について説明する。まず、ホッパ34に反応物粉体33を装填後、注入用ピストン41を介して反応物粉体33を図2R>2で示すように隙間30内に注入する。その後、注入用ピストン41を元に戻して閉鎖器42を閉とすると共に、図示しない駆動手段を介してシャッタ手段31を、図3で示すように押下げると、反応物粉体33は重力によって水9の水面9a上に崩れて浮遊し、接地棒4a又は内部電極4と電気的に接触する。
【0018】ここで、図4のように、スイッチ32をオンとすることにより、コンデンサ7に蓄えられた電気エネルギーは、内部電極4を経て水面9a上の反応物粉体33へ注入される。
【0019】その後、この反応物粉体33は高温プラズマになると同時に、強い電磁力で水9の中に沈められる。この時、反応物粉体33と水9は激しく電気化学反応を起こし、水面9a上の空間30は高圧状態となり、水9は矢印Bの方向へ高速で駆動され、ノズル2aからウォータジェットとして吐出される。
【0020】また、次の放電のためには、シャッタ手段31を上方に押上げてスイッチ32をオフとし、再び、反応物粉体を前記隙間30に注入した後、前述と同様の工程を繰り返すことによりウォータジェットの発生を行うことができる。
【0021】なお、前述のウォータジェットの発生方法の工程は、シャッタ手段31、注入用ピストン41、閉鎖器42及びスイッチ32の各動作を図示しないアクチュエータによってリモコン動作とし、プログラムによって自動制御するように構成できることは述べるまでもないことである。また、反応物粉体33としては、アルミニウム粉体について述べたが、ボロン粉体とすることもできる。
【0022】
【発明の効果】本発明によるウォータジェット発生方法及び装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。すなわち、アルミニウム粉体等よりなる反応物粉体と水との電熱化学反応を利用してウォータジェットの発生を得ているため、従来方法よりも大きい圧力を繰返し得ることができ、例えば、超高速船(時速200km/h)の実現も可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるウォータジェット発生装置を示す構成図である。
【図2】図1の動作状態を示す構成図である。
【図3】図1の動作状態を示す構成図である。
【図4】図1の動作状態を示す構成図である。
【図5】従来のウォータジェット発生装置を示す構成図である。
【符号の説明】
1 筒電極
4 内部電極
7 電源
9 水
33 反応物粉体
40 反応物粉体供給手段
41 注入用ピストン
42 閉鎖器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 水(9)と反応物粉体(33)とによる電熱化学反応を介して前記水(9)を吐出することを特徴とするウォータジェット発生方法。
【請求項2】 前記反応物粉体(33)としてアルミニウム粉体を用いることを特徴とする請求項1記載のウォータジェット発生方法。
【請求項3】 水(9)に浸漬した状態の筒電極(1)と、前記筒電極(1)の上部に設けられ電源(7)に接続された内部電極(4)と、前記筒電極(1)に接続され反応物粉体(33)を前記筒電極(1)内に供給するための反応物粉体供給手段(40)と、前記反応物粉体供給手段(40)から前記水(9)への前記反応物粉体(33)の供給を制御するためのシャッタ手段(31)とを備え、前記水(9)と反応物粉体(33)との電熱化学反応を介して前記水(9)を前記筒電極(1)から吐出するように構成したことを特徴とするウォータジェット発生装置。
【請求項4】 前記反応物粉体供給手段(40)には、前記反応物粉体(33)の注入を行うための注入用ピストン(41)及び前記反応物粉体(33)の前記筒電極(1)への供給を停止するための閉鎖器(42)が設けられていることを特徴とする請求項3記載のウォータジェット発生装置。
【請求項5】 前記反応物粉体は、アルミニウム粉体であることを特徴とする請求項3又は4記載のウォータジェット発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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