説明

ウォータービークルの電装ボックス

【課題】 内部に収容された電装品のメンテナンス時等に、ボックス本体からのカバー部材の着脱が容易に行えるウォータービークルの電装ボックスを提供すること。
【解決手段】 ウォータービークル10のエンジンルーム15内における整備用開口26の下方に設置される電装ボックス30を、電装品33が取り付けられたボックス本体31と、カバー部材32とで構成した。そして、ボックス本体31を、電装品取付面が垂直になるようにしてバルクヘッド14に設置した。また、ボックス本体31の上面に係合枠部34a,34bを設け、カバー部材32の上面に係合枠部34a,34bに対してワンタッチ操作で係合させることのできる係合挟持部37,38を設けた。そして、ボックス本体31の下部に電装品33の下方を覆う被覆底部31cを設け、電装品33の上方、両側方および正面はカバー部材32で覆うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォータービークルのエンジンルーム内における整備用開口の下方に設置される電装ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ウォータービークル等の小型船舶においては、エンジン等の各装置を制御するための各種の電装品が用いられており、このような電装品は、防水性を備えた電装ボックス内に収容されてエンジンルーム内の所定の場所に設置されている(例えば、特許文献1参照)。この電装ボックスは、深底の四角箱状のボックス本体と、ボックス本体の開口部をシール材を介して水密的に閉じるカバーとを備えている。また、ボックス本体の周囲の外壁等には複数のねじ穴が形成されており、このねじ穴を利用して、カバーをねじでボックス本体に固定している。そして、このように構成された電装ボックスは、船内におけるエンジンルームとポンプルームとを仕切るバルクヘッドに取り付けられている。
【特許文献1】特開2003−040198号公報
【発明の開示】
【0003】
前述した従来の電装ボックスは、カバーをねじでボックス本体に取り付けるように構成されているため、内部に収容されている電装品をメンテナンスする場合等には、ドライバー等の工具を用いてねじを外して、カバーをボックス本体から取り外す必要が生じる。この結果、電装ボックスの正面側または側面側にドライバー等の工具を使用するためのスペースが必要になる。
【0004】
しかしながら、ウォータービークルのようなエンジンルームが狭い小型船舶では、電装ボックスの周囲に大きなスペースを設けることは難しく、このスペースを確保するためには船体が大型化する虞がある。また、電装品をメンテナンスする場合等には、作業者は、エンジンルームの上方に設けられた開口部からエンジンルーム内を覗き込むようにして作業をするため、エンジンルーム内が暗くて作業がし難かったり、ねじやボルトをエンジンルーム内に落としたりした場合にはその回収がし難かったりする。
【0005】
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、内部に収容された電装品のメンテナンス時等に、ボックス本体からのカバー部材の着脱が容易に行えるウォータービークルの電装ボックスを提供することである。
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明に係るウォータービークルの電装ボックスの構成上の特徴は、ウォータービークルのエンジンルーム内における整備用開口の下方に設置される電装ボックスであって、電装品が取り付けられた電装品取付面を略垂直にしてエンジンルーム内の被取付部に取り付けられ、所定部分に被係合部が設けられたボックス本体と、ボックス本体における電装品が取り付けられた電装品取付面を覆うことができ、所定部分に被係合部と係合できる係合部が設けられたカバー部材とを備え、カバー部材をボックス本体の上方から下降させて、ボックス本体の電装品取付面を覆った状態で、係合部を被係合部に係合させることにより、カバー部材をボックス本体に固定できるようにしたことにある。
【0007】
このように構成した本発明に係るウォータービークルの電装ボックスでは、エンジンルーム内の被取付部に、電装品が取り付けられた電装品取付面を略垂直方向に向けて取り付けられたボックス本体に対して、カバー部材をボックス本体の上方から下降させて、ボックス本体の電装品取付面側部分を覆うようにしている。そして、カバー部材をボックス本体の電装品取付面に位置合わせした状態で、係合部を被係合部に係合させることにより、ボックス本体に対してカバー部材を係合させることができる。
【0008】
この場合の係合部と被係合部との係合は、例えば、係合部または被係合部をワンタッチ操作することにより、係合部と被係合部を互いに係合させることのできる機構を用いて行ったり、弾性を備えた樹脂材料で構成した凹部を備えた部材と突部を備えた部材とを互いに押したり引っ張ったりすることにより着脱できる機構を用いて行ったりすることができる。このため、カバー部材の着脱にドライバー等の工具を用いる必要がなくなり、電装ボックスの周囲に工具を使用するためのスペースを設ける必要もなくなる。この結果、電装ボックスの近傍まで、エンジン等の各装置や部材等を設置することができ、エンジンルームの省スペース化やウォータービークルの小型化が図れる。
【0009】
また、本発明に係るウォータービークルの電装ボックスの他の構成上の特徴は、カバー部材は、ボックス本体の電装品取付面に取り付けられた前記電装品の上方、両側方および正面を覆うことができ、ボックス本体には、電装品取付面に取り付けられた電装品の下方を覆う被覆底部が備わっていることにある。
【0010】
このウォータービークルの電装ボックスでは、電装品が取り付けられた電装品取付面の下方をボックス本体の下部に設けた被覆底部で覆い、電装品が取り付けられた電装品取付面の上方と両側方と正面とをカバー部材で覆うようにしたため、カバー部材をボックス本体に取り付ける際の操作が容易になる。すなわち、カバー部材に底面部がなくなるため、カバー部材をボックス本体の上方から下降させるとカバー部材は、そのまま電装品取付面の上方と両側方と正面とを覆った状態になる。このため、カバー部材をボックス本体に取り付けた状態では、電装品の周囲はすべて覆われた状態になる。また、メンテナンスの際に、ボックス本体からカバー部材を取り外すと、電装品の上方と両側方には、電装品を覆うものがなくなるため、エンジンルームの上方の整備用開口から手を延ばして行なう作業が容易になる。
【0011】
また、本発明に係るウォータービークルの電装ボックスのさらに他の構成上の特徴は、カバー部材をボックス本体に取り付けたときに、カバー部材の下端縁部が、被覆底部の周縁部よりも下方に位置するようにしたことにある。これによると、エンジンルーム内に水が浸入して電装ボックスのカバー部材に垂れ落ちてきても、その水がカバー部材の内部に入ることがなくなるため、電装品が濡れることがなくなる。なお、仮に、カバー部材の内部に水が入った場合には、この水を素早く外部に放出することが好ましい。このため、カバー部材とボックス本体の被覆底部との間には僅かな隙間を設けておくことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るウォータービークルの電装ボックスのさらに他の構成上の特徴は、被係合部をボックス本体の上部に設けるとともに、係合部をカバー部材の上部に設けたことにある。これによると、被係合部と係合部とを、エンジンルームの上方の整備用開口から確認し易くなるため、カバー部材のボックス本体からの着脱操作が容易になる。なお、この場合の上部は上面であることがより好ましい。
【0013】
また、本発明に係るウォータービークルの電装ボックスのさらに他の構成上の特徴は、被係合部と係合部とを、フック部とフック部に対して弾性を利用して係合可能なフック係合部とからなるロック機構で構成したことにある。これによると、被係合部と係合部とを係合させる操作およびその係合を解除するための操作が容易になる。
【0014】
また、本発明に係るウォータービークルの電装ボックスのさらに他の構成上の特徴は、ボックス本体の側部に副被係合部を設けるとともに、カバー部材の側部に副被係合部と係合可能な副係合部を設け、ボックス本体またはカバー部材の少なくとも一方に、副被係合部に対して副係合部をガイドするガイド部を設けたことにある。
【0015】
これによると、カバー部材とボックス本体との係合がより確実になる。また、ガイド部を設けたことにより、カバー部材をボックス本体に近づけるだけで、カバー部材をボックス本体の適正位置に位置決めすることができる。このため、副被係合部と副被係合部とが整備用開口から見え難い場所にあっても副被係合部と副被係合部とを容易に係合させることができる。
【0016】
また、本発明に係るウォータービークルの電装ボックスのさらに他の構成上の特徴は、電装ボックスが取り付けられる被取付部が、エンジンルームの後壁であることにある。一般に、エンジンルーム内に設置されたエンジンと、エンジンルームの後壁との間には、インペラ軸にエンジンの駆動力を伝達するカップリングが配置されている。そして、エンジンルームの後壁の前方におけるカップリングの上方はデッドスペースになっている。したがって、電装ボックスをエンジンルームの後壁前面に取り付けることでデッドスペースの有効利用が図れる。また、エンジンと電装ボックスを近づけて配置できるため、省スペース性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1および図2は、本発明に係る電装ボックス30を備えたウォータービークル10を示している。このウォータービークル10では、船体11がデッキ11aとハル11bで構成されており、その船体11における上部の略中央に操舵ハンドル12が設けられ、その後方にシート13が設けられている。なお、図2は、船体11の上部に設けられた操舵ハンドル12やシート13等を取り除いた平面を示している。
【0018】
そして、船体11の内部は、船体の中央よりもやや後部側に設けられた本発明に係るエンジンルームの後壁としてのバルクヘッド14によって前部側と後部側とに区切られている。船体11の内部におけるバルクヘッド14の前部側はエンジンルーム15を構成し、バルクヘッド14よりも後部側の部分はポンプルーム16を構成している。そして、エンジンルーム15内には、燃料タンク17やエンジン18などが設置され、ポンプルーム16には、推進機21やウォーターロック22などが設置されている。
【0019】
また、エンジン18の後部からはクランク軸18aが後方に向かって延びており、このクランク軸18aの後端に設けられたカップリング18bを介して、クランク軸18aにインペラ軸23が連結されている。このインペラ軸23は、バルクヘッド14を貫通して後方のポンプルーム16内に延びており、船体11の船尾に設けられた推進機21の内部に設けられたインペラ(図示せず)に連結され、エンジン18の駆動によるクランク軸18aの回転力をインペラに伝達してインペラを回転させる。
【0020】
また、推進機21は、船体11の底部に開口する水導入口21aと船尾に開口する水噴射口(図示せず)とを備えており、水導入口21aから導入される海水をインペラの回転により水噴射口から噴射させることにより船体11に推進力を生じさせる。この推進機21は、ケーシング(図示せず)によって、船体11の本体側と隔離された状態で船体11の船尾における底部に取り付けられており、インペラ軸23は、バルクヘッド14およびケーシングを貫通することによって、エンジン18側から推進機21に延びている。
【0021】
また、エンジン18の後方には排気装置が設けられている。この排気装置は、屈曲した配管からなる排気マニホールド24やタンク状のウォーターロック22等で構成されている。排気マニホールド24は、エンジン18の側部から後方に向って延びてバルクヘッド14を貫通している。そして、排気マニホールド24の後端部は、ウォーターロック22の前部に連結されている。このウォーターロック22の後部上面からは、排気ガス管22aが後方に向って延びている。この排気ガス管22aは、ウォーターロック22の上面から一旦上方に延びたのちに下方後部に延びて、下流端部はケーシングを貫通して推進機21の水噴射口に合流している。
【0022】
また、バルクヘッド14におけるエンジンルーム15側の面には、図3および図4に示した状態で電装ボックス30が設けられている。電装ボックス30は、図5および図6に示したように、ボックス本体31と、カバー部材32とで構成されており内部に電装品33が収容されている。この電装品33は、CPU,ROM、RAM、タイマー等で構成される電気制御装置33aや各種の電気部品33bからなっており、これらによってウォータービークル10の運転に関する各処理が実行される。
【0023】
ボックス本体31は、板状の基部31aと、基部31aの周縁部における下部以外の部分に形成された周壁部31bと、基部31aの周縁部における下部に形成された被覆底部31cとを備えている。基部31aの表面(内面)は、本発明の電装品取付面を構成する面であり、電装品33を取り付け易くするために電装品33の裏面形状に合わせて形成された段状の複数の平面部で構成されている。また、周壁部31bは、幅(前後方向の長さ)が小さな壁部で構成され、被覆底部31cは幅の大きな壁部で構成されている。この被覆底部31cは、下方から見た状態で電装品33の下面を覆える形状に形成されている。
【0024】
そして、周壁部31bの上面には、左右に間隔を保って本発明の被係合部としての係合枠部34a,34bが形成されている。この係合枠部34a,34bは、それぞれ正面視が前後に貫通する門形に形成され、平面視が、四角形の後部(ボックス本体31の裏面側)における左右外部側の角部(図5の状態で係合枠部34aの左下側の角部と係合枠部34bの右上側の角部)を切り欠いて傾斜面にした形状に形成されている。また、周壁部31bの左右両側面における下部側部分には、それぞれ、本発明の副被係合部としての係合把持部35a,35bとガイド部36a,36bとが形成されている。
【0025】
図7および図8に示したように、係合把持部35bとガイド部36bとは一体に形成されており、係合把持部35bは、周壁部31bの表面から水平方向に延びる水平片と、水平片の先端から周壁部31bの表面に平行して上方に延びる垂直片とからなるL形の突起で構成されている。そして、ガイド部36bは、係合把持部35bの垂直片の上部から垂直片と直交して周壁部31bの前部側に突出する突起で構成されており、その先端面は下方に向かい周壁部31b側に突出した幅広の傾斜面に形成されている。すなわち、ガイド部36bの先端部の内面には周壁部31b側に向かって突出した突起が形成されている。
【0026】
同様に、係合把持部35aとガイド部36aとは一体に形成されており、係合把持部35aとガイド部36aとは、係合把持部35bとガイド部36bと、それぞれ左右対称に形成されている。すなわち、係合把持部35aとガイド部36aとは一体に形成されており、係合把持部35aは、周壁部31bの表面から水平方向に延びる水平片と、水平片の先端から周壁部31bの表面に平行して上方に延びる垂直片とからなるL形の突起で構成されている。そして、ガイド部36aは、係合把持部35aの垂直片の上部から垂直片と直交して周壁部31bの前部側に突出する突起で構成されており、その先端面は下方に向かい周壁部31b側に突出した幅広の傾斜面に形成されている。このガイド部36aの先端部の内面にも周壁部31b側に向かって突出した突起が形成されている。
【0027】
カバー部材32は、曲面板状に形成された被覆部32aと、被覆部32aの周縁部における下部以外の部分に形成された周壁部32bとを備えている。被覆部32aは、電装品33の上面および両側面を被覆するもので、電装品33の表面形状に沿った曲面状に形成されている。この被覆部32aは、ボックス本体31の基部31aよりも縦長に形成されており、カバー部材32をボックス本体31に取り付けたときに、被覆部32aの下端縁部が被覆底部31cよりも下方に位置する。また、その際、被覆部32aの内面は、被覆底部31cの外周縁部に対して僅かな隙間を設けた状態で沿うように形成されている。
【0028】
周壁部32bは、ボックス本体31の周壁部31bよりも全体にやや大きく形成されており、カバー部材32をボックス本体31に取り付けたときに、周壁部32bは、内周面を周壁部31bの外周面に沿わせた状態で、周壁部31bの前部側部分を覆うことができる。そして、周壁部32bの上面には、左右に間隔を保って、係合枠部34a,34bとそれぞれ係合可能な本発明の係合部としての係合挟持部37,38が形成されている。係合挟持部37は、係合枠部34a内に挿入可能な挿入突部37aと、挿入突部37aの基端部の外側面(図5の状態で左下方の面)から挿入突部37aの先端側に向って湾曲して延びて、先端部が係合枠部34aの傾斜面側の後部に係合可能な弾性フック部37bとで構成されている。
【0029】
そして、係合挟持部38は、係合枠部34b内に挿入可能な挿入突部38aと、挿入突部38aの基端部の外側面(図5の状態で右上方の面)から挿入突部38aの先端側に向って湾曲して延びて、先端部が係合枠部34bの傾斜面側の後部に係合可能な弾性フック部38bとで構成されている。弾性フック部37bは、先端部を係合枠部34aの傾斜面側の部分に押し付けることにより係合枠部34aの外部側から係合枠部34aの後部に係合して、挿入突部37aとで係合枠部34aにおける傾斜面が形成された側の部分を挟持する。
【0030】
同様に、弾性フック部38bは、先端部を係合枠部34bの傾斜面側の部分に押し付けることにより係合枠部34bの外部側から係合枠部34bの後部に係合して、挿入突部38aとで係合枠部34bにおける傾斜面が形成された側の部分を挟持する。また、周壁部32bの左右両側面における下部側部分には、それぞれ、本発明の副係合部としての係合突起39a,39bが形成されている。係合突起39aは、係合把持部35a内に係合可能なL形の小さな突起で構成されており、周壁部32bの表面から突出した略四角形の基部と基部の下面の外部側における周壁部32bの縁部側部分から下方に突出した突部とで構成されている。
【0031】
そして、係合突起39bは係合把持部35b内に係合可能なL形の小さな突起で構成されており、係合突起39aと左右対称になって、周壁部32bの表面から突出した略四角形の基部と基部の下面の外部側における周壁部32bの縁部側部分から下方に突出した突部とで構成されている。また、係合突起39a,39bの上面はそれぞれ先端側が下方になる傾斜面に形成されている。
【0032】
このため、係合突起39aの下端部と係合把持部35aの後部および係合突起39bの下端部と係合把持部35bの後部とを接触させた状態で、カバー部材32をボックス本体31に対して下降させていくと、係合突起39aの下端部は係合把持部35aの後部下方に、係合突起39bの下端部は係合把持部35bの後部下方に、それぞれくい込んでいく。その際、ガイド部36aの先端内面の周壁部31b側に向かって突出した突起は、係合突起39aの後部(L形の部分)に接触して係合突起39aの下端部と係合把持部35aの後部が適正な状態で係合するようにガイドする。
【0033】
また、ガイド部36bの先端内面の周壁部31b側に向かって突出した突起は、係合突起39bの後部(L形の部分)に接触して係合突起39bの下端部と係合把持部35bの後部が適正な状態で係合するようにガイドする。これによって、図9に示したように、係合突起39bと係合把持部35bおよび係合突起39aと係合把持部35aが係合して、カバー部材32はボックス本体31の適正位置に位置決めされる。
【0034】
このようにして構成された電装ボックス30は、図3および図4に示したようにして、バルクヘッド14におけるカップリング18bの上方に取り付けられている。そして、図10に、電装ボックス30をバルクヘッド14側から見た状態を示したように、電装ボックス30は、エンジン18の後部に設けられたブリーザケース25に接近した状態で配置されている。また、船体11におけるシート13の下方には、図2、図11、図12および図13に示したように、前後方向に長い長円状の整備用開口26が形成されている。
【0035】
この整備用開口26の中央よりもやや後部側の部分にはビームデッキ27が左右に掛け渡されており、電装ボックス30は、このビームデッキ27の下方に位置している。なお、図13は、整備用開口26からビームデッキ27を取り外した状態を示している。また、シート13は、取り外し可能になっており、前端部を支点として回転させることにより整備用開口26を開口させることができる。また、電装ボックス30の上面とビームデッキ27との間には、作業者の手が入る程度の隙間が設けられている。
【0036】
この構成において、バルクヘッド14に取り付けられたボックス本体31にカバー部材32を取り付ける場合には、まず、シート13を上げて整備用開口26を開口させた状態にする。ついで、表面を上方に向けて横向けにした状態で、カバー部材32を整備用開口26の後部側からボックス本体31とビームデッキ27との隙間に入れる。そして、カバー部材32の姿勢を徐々に縦向きにしながら、図14に示したように、カバー部材32をボックス本体31の表面上部側に位置させる。つぎに、その状態のカバー部材32を下降させる。これによって、図15に示したように、係合突起39aの下端部と係合把持部35aおよび係合突起39bの下端部と係合把持部35bとが接触する。
【0037】
その状態で、図16に示したように、カバー部材32をボックス本体31の表面側に押し付けていくと、係合突起39aが係合把持部35aの真上に位置し、係合突起39bが係合把持部35bの真上に位置するようになる。つぎに、図17に示したように、カバー部材32を下降させていくと、ガイド部36a,36bの先端内面の突起は、係合突起39a,39bの後部(L形の部分)に接触して、係合突起39aと係合把持部35aおよび係合突起39bと係合把持部35bとがそれぞれ適正な状態で係合するようにガイドする。
【0038】
そして、カバー部材32を最下部まで下降させたときに、係合突起39aと係合把持部35aおよび係合突起39bと係合把持部35bとがそれぞれ適正状態で係合して、図18の状態になる。この状態では、カバー部材32の下端部は、ボックス本体31の被覆底部31cよりも下方に位置している。また、電装ボックス30の上面は、図19に示した状態になっている。すなわち、この状態では、係合枠部34a内に挿入突部37aが入っているとともに、係合枠部34b内に挿入突部38aが入っているが、係合枠部34aと弾性フック部37bおよび係合枠部34bと弾性フック部38b(図20参照)はともに係合していない。
【0039】
このため、図19に示した状態の弾性フック部37bを右側に押すとともに、弾性フック部38bを左側に押して、係合枠部34aと弾性フック部37bおよび係合枠部34bと弾性フック部38bをそれぞれ係合させて、図21および図22に示した状態にする。これによって、ボックス本体31へのカバー部材32の取り付けが終了する。また、電装品33の修理や保守点検のために、ボックス本体31からカバー部材32を取り外す際には、前述した取り付け操作を逆に操作していく。そして、カバー部材32を外したのちに、整備用開口26からエンジンルーム15内に手を入れて電装品33の手入れを行う。
【0040】
このように、本実施形態による電装ボックス30では、エンジンルーム15の後壁を構成するバルクヘッド14に、電装品33が取り付けられたボックス本体31を垂直方向に向けて取り付け、このボックス本体31に対して、カバー部材32を上方から下降させて、取り付けることができるようにしている。そして、カバー部材32をボックス本体31に位置合わせした状態で、弾性フック部37b,38bをそれぞれ押すだけのワンタッチ操作をすることにより、係合枠部34a,34bと係合挟持部37,38とをそれぞれ係合させてボックス本体31に対してカバー部材32を係合させることができる。
【0041】
このため、カバー部材32の着脱にドライバー等の工具を用いる必要がなくなり、操作が簡単になるとともに、電装ボックス30の周囲に工具を使用するためのスペースを設ける必要もなくなる。この結果、電装ボックス30の近傍に、エンジン18やブリーザケース25を設置することができ、エンジンルーム15の省スペース化やウォータービークル10の小型化が図れる。また、本実施形態に係る電装ボックス30では、電装品33が取り付けられたボックス本体31の下部に被覆底部31cを設けて、この被覆底部31cで電装品33の下面を覆い、電装品33の上方と両側方と正面とをカバー部材32で覆うようにしている。
【0042】
このため、カバー部材32に底面部がなくなり、カバー部材32をボックス本体31の上方から下降させるとカバー部材32は、そのまま電装品33の上方と両側方と正面とを覆った状態になる。これによって、カバー部材32の取り付け操作がさらに簡単になる。また、メンテナンスの際に、ボックス本体31からカバー部材32を取り外すと、電装品33の上方と両側方には、電装品33を覆うものがなくなるため、エンジンルーム15の上方の整備用開口26から手を延ばして行なう作業が容易になる。
【0043】
さらに、カバー部材32をボックス本体31に取り付けたときに、カバー部材32の下端縁部が、被覆底部31cよりも下方に位置するようにしているため、エンジンルーム15内に水が浸入して電装ボックス30のカバー部材32に垂れ落ちてきても、その水がカバー部材32の内部に入ることがなくなる。このため、電装品33が水に濡れることがなくなる。また、係合枠部34a,34bをボックス本体31の上面に設けるとともに、係合挟持部37,38をカバー部材32の上部に設けたため、係合枠部34a,34bと係合挟持部37,38とを、整備用開口26から確認し易くなり、カバー部材32のボックス本体31からの着脱操作が容易になる。
【0044】
さらに、ボックス本体31の周壁部31bに係合把持部35a,35bとガイド部36a,36bを設けるとともに、カバー部材32の周壁部32bに、それぞれ係合把持部35a,35bに係合可能な係合突起39a,39bを設けたため、カバー部材32とボックス本体31との係合がより確実になる。また、ガイド部36a,36bを設けたことにより、カバー部材32をボックス本体31の適正位置に容易に位置決めすることができる。このため、係合把持部35a,35bと係合突起39a,39bとが整備用開口26から見え難い場所に位置していても係合把持部35a,35bと係合突起39a,39bとを容易に係合させることができる。
【0045】
また、本発明は前述した実施形態に限定するものでなく、適宜変更して実施することができる。例えば、被係合部や係合部としては、係合枠部34a,34bや係合挟持部37,38に限るものでなく、工具等を用いる必要がなく簡単な操作で互いに着脱できるものであれば他の機構のものを用いてもよい。また、副被係合部や副係合部としても、係合把持部35a,35bや係合突起39a,39bのような形状のものに限らず他の形状のもので構成してもよい。同様に、ガイド部36a,36bの形状も他の形状に変更することができる。さらに、電装ボックスを構成するその他の部分の構成についても変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係る電装ボックスを備えたウォータービークルの側面図である。
【図2】図1のウォータービークルの船体を示した平面図である。
【図3】バルクヘッドに取り付けられた電装ボックスを前方から見た正面図である。
【図4】バルクヘッドに取り付けられた電装ボックスを側方から見た側面図である。
【図5】電装ボックスの正面図である。
【図6】電装ボックスを分解した状態を示した分解斜視図である。
【図7】係合把持部とガイド部とを示した斜視図である。
【図8】係合把持部と係合突起とが係合しようとしている状態を示した斜視図である。
【図9】係合把持部と係合突起とが係合した状態を示した斜視図である。
【図10】電装ボックスとエンジンとの配置を示した斜視図である。
【図11】整備用開口を示した平面図である。
【図12】整備用開口を示した斜視図である。
【図13】整備用開口からビームデッキを取り外した状態を示した平面図である。
【図14】ボックス本体の表面上部側にカバー部材を近づけた状態を示した側面図である。
【図15】ボックス本体の係合把持部にカバー部材の係合突起を接触させた状態を示した側面図である。
【図16】ボックス本体の係合把持部の真上にカバー部材の係合突起を位置させた状態を示した側面図である。
【図17】ボックス本体の係合把持部にカバー部材の係合突起を係合させようとしている状態を示した側面図である。
【図18】ボックス本体の係合把持部にカバー部材の係合突起を係合させた状態を示した側面図である。
【図19】図18に示した電装ボックスを上方から見た平面図である。
【図20】図19に示した電装ボックスの係合枠部と係合挟持部との関係を示した拡大図である。
【図21】電装ボックスの係合枠部と係合挟持部とを係合した状態を示した平面図である。
【図22】図21に示した電装ボックスの係合枠部と係合挟持部との係合状態を示した拡大図である。
【符号の説明】
【0047】
10…ウォータービークル、11…船体、14…バルクヘッド、15…エンジンルーム、18…エンジン、26…整備用開口、30…電装ボックス、31…ボックス本体、31a…基部、31c…被覆底部、32…カバー部材、33…電装品、34a,34b…係合枠部、35a,35b…係合把持部、36a,36b…ガイド部、37,38…係合挟持部、37b,38b…弾性フック部、39a,39b…係合突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォータービークルのエンジンルーム内における整備用開口の下方に設置される電装ボックスであって、
電装品が取り付けられた電装品取付面を略垂直にして前記エンジンルーム内の被取付部に取り付けられ、所定部分に被係合部が設けられたボックス本体と、
前記ボックス本体における前記電装品が取り付けられた電装品取付面を覆うことができ、所定部分に前記被係合部と係合できる係合部が設けられたカバー部材とを備え、
前記カバー部材を前記ボックス本体の上方から下降させて、前記ボックス本体の電装品取付面を覆った状態で、前記係合部を前記被係合部に係合させることにより、前記カバー部材を前記ボックス本体に固定できるようにしたことを特徴とするウォータービークルの電装ボックス。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記ボックス本体の電装品取付面に取り付けられた前記電装品の上方、両側方および正面を覆うことができ、前記ボックス本体には、前記電装品取付面に取り付けられた前記電装品の下方を覆う被覆底部が備わっている請求項1に記載のウォータービークルの電装ボックス。
【請求項3】
前記カバー部材を前記ボックス本体に取り付けたときに、前記カバー部材の下端縁部が、前記被覆底部の周縁部よりも下方に位置するようにした請求項2に記載のウォータービークルの電装ボックス。
【請求項4】
前記被係合部を前記ボックス本体の上部に設けるとともに、前記係合部を前記カバー部材の上部に設けた請求項1ないし3のうちのいずれか一つに記載のウォータービークルの電装ボックス。
【請求項5】
前記被係合部と前記係合部とを、フック部と前記フック部に対して弾性を利用して係合可能なフック係合部とからなるロック機構で構成した請求項1ないし4のうちのいずれか一つに記載のウォータービークルの電装ボックス。
【請求項6】
前記ボックス本体の側部に副被係合部を設けるとともに、前記カバー部材の側部に前記副被係合部と係合可能な副係合部を設け、前記ボックス本体または前記カバー部材の少なくとも一方に、前記副被係合部に対して前記副係合部をガイドするガイド部を設けた請求項1ないし5のうちのいずれか一つに記載のウォータービークルの電装ボックス。
【請求項7】
前記電装ボックスが取り付けられる被取付部が、エンジンルームの後壁である請求項1ないし6のうちのいずれか一つに記載のウォータービークルの電装ボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−137513(P2008−137513A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326125(P2006−326125)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000176213)ヤマハマリン株式会社 (256)