説明

ウレタンフォームの製造方法

【課題】樹脂の成形性及び強度を高め、かつ作業効率の高いウレタンフォームの製造方法を提供すること。
【解決手段】成形型1内にウレタンフォーム原料を注入し、加熱することによって反応を進行させて発泡成形体を形成し、脱型するウレタンフォームの製造方法において、原料注入時の成形型の温度が60±5℃であり、該温度から昇温し、昇温開始から反応終了までの時間の40〜60%の時点で降温することを特徴とするウレタンフォームの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタンフォームの製造方法に関し、特に作業効率の高いウレタンフォームの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の製品形状を有するウレタンフォームの製造方法として、成形型内にウレタンフォーム原料を注入し、発泡させることによって、ウレタンフォームとするモールド成形法が多用されている。
一般に、加熱温度が高いほど反応は促進され、例えば特許文献1には、成形型を、断熱材を介して複数の部位に区画し、区画された部位ごとに温度調節手段を配設し、個別に温度を調節する成形型が提案されている(特許文献1、請求項4参照)。この金型を用いることで、各部の硬度が異なる発泡体を容易に製造することができるとされている(特許文献1、段落0014参照)。
【0003】
一方、加熱温度は高いほど反応は促進されるが、脱型の作業性を考慮すると、無制限に高くすることはできない。そのため、従来は反応性と作業性を両立するような温度に設定されていたが、従来の設定温度では、反応性の点からは熱のかけ方が効率的でなく、エネルギー的にロスがあるとともに、ウレタンフォームの初期樹脂強度が低い場合があった。また、成形表面にべとつきが発生して、脱型時に手跡がついたり、破れが発生する場合があり、クラッシュ時にローラーによって樹脂が変形する場合があった。さらに、ウレタンの樹脂化反応が遅いため、生産性が低いなどの短所があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−216441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題点に鑑み、本発明の課題は、樹脂の成形性及び強度を高め、かつ作業効率の高いウレタンフォームの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、ウレタンフォームの製造方法において、特定の昇温及び降温を行うことで、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
[1]成形型内にウレタンフォーム原料を注入し、加熱することによって反応を進行させて発泡成形体を形成し、脱型するウレタンフォームの製造方法において、原料注入時の成形型の温度が60±5℃であり、該温度から昇温し、昇温開始から反応終了までの時間の40〜60%の時点で降温することを特徴とするウレタンフォームの製造方法、
[2]脱型時の成形型の温度が60±5℃である上記[1]に記載のウレタンフォームの製造方法、
[3]成形型の最高温度が、原料注入時の温度よりも10〜20℃高い上記[1]又は[2]に記載のウレタンフォームの製造方法、及び
[4]成形型の温度が最高温度に達するまでの時間が、昇温開始から反応終了までの時間の30%の時点以降である上記[3]に記載のウレタンフォームの製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作業効率、エネルギー効率の高いウレタンフォームの製造方法を提供することができる。また、本発明の製造方法によれば、初期の樹脂強度が向上し、手跡がつかず、やぶれが生じない。また、クラッシュ後の変形が減少する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】加熱方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のウレタンフォームの製造方法は、成形型内にウレタンフォーム原料を注入し、加熱することによって反応を進行させて発泡成形体を形成し、脱型するものである。ここで、原料注入時の成形型の温度が60±5℃であり、該温度から昇温し、昇温開始から反応終了までの時間の40〜60%の時点で降温することを特徴とする。
また、脱型温度は60±5℃であることが好ましい。この温度であると、脱型作業者の作業効率が高い。
【0010】
本発明において、成形型の最高温度は、用いるウレタンフォームの原料に応じて適宜決定されるが、原料注入時の温度よりも10〜20℃高いことが好ましい。より具体的には、70〜85℃の範囲で設定されることが好ましい。成形型の最高温度がこの範囲であると、独立気泡性が上がりにくく、離型剤の溶融による樹脂表面のセル荒れが避けられる。
また、成形型の温度が最高温度に達するまでの時間が、昇温開始から反応終了までの時間の30%の時点以降であることが好ましい。すなわち、例えば、昇温開始から反応終了までの時間が240秒の場合は、昇温開始から72秒以降に、最高温度に達することが好ましい。最高温度に達するまでの時間をこのように制御することによって、離型剤の溶融による樹脂表面のセル荒れが避けられる。
【0011】
本発明における加熱方法については、特に制限はなく、水や油などの熱媒体を用いる方法や電気炉を用いる方法などがある。したがって、昇温及び降温の方法としては、加熱方法に応じて種々の方法がある。
以下、例えば、水を熱媒体とする場合を例として、図1を用いて説明する。
図1は高温水と低温水を切り替える手法で、成形型1の昇温及び降温を行う例を示す模式図である。高温水と低温水は、それぞれ高温側温調機4と低温側温調機5によって制御され、図1に示す例では、高温水が110℃に、低温水が60℃に制御されている。
【0012】
成形型内には熱媒体の流路が設けられており、ウレタンフォーム原料の注入時は、低温水(60℃)が流され、型の温度は60±5℃に制御されている。より詳細には、低温側温調機5から出る低温水が切り替えバルブ6を通過して、成形型1に流され、加温される。成形型から出た低温水は、切り替えバルブ7を通過して、低温側温調機5に戻る。
次に、原料が注入されると、切り替えバルブ6及び7が切り替えられ、高温水(110℃)が、低温水と混合され、もしくは高温水に完全に切り替えられ、高温水が流される。このように高温水を流通させることで、成形型の温度を昇温させる。なお、高温水と低温水の混合比率を調整することで、熱媒体の温度が制御され、成形型の温度を制御することができる。具体的には、成形型の最高温度及び最高温度に達するまでの時間が、上述の好ましい範囲となるように制御されることが好ましい。
【0013】
次に、昇温開始から反応終了までの時間の40〜60%の時点で、降温される。例えば、昇温開始から反応終了までの時間が240秒の場合は、昇温開始から96秒の時点〜昇温開始から144秒の時点の間で、降温が開始される。降温の方法は、再び切り替えバルブ6及び7が切り替えられ、低温水が流されることによる。
このようにして、成形型内の温度を制御することで、原料注入時及び脱型の作業時では、温度がある程度低いため、作業がやりやすく、一方、反応時では反応温度を上げることができるために、成形品の良好な性状を得ることができ、エネルギー効率を高めることができ、さらには製造効率を向上させることができる。
【実施例】
【0014】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例において、それぞれサンプル数50の実験を行い、評価した。
【0015】
実施例1
(1)発泡原液の調製
以下に示す材料を用いて、発泡原液を調製した。
(A)ポリオール成分
(A−1)ポリエーテルポリオール(旭硝子ウレタン(株)製汎用高弾性用ポリオール「エクセノールEL828」、官能基数3、数平均分子量5,000、水酸基価34mgKOH/g)50質量部
(A−2)ポリマーポリオール(三洋化成工業(株)製ポリスチレン/ポリアクリメニトリル共重合体34質量%「サンニックスKC855」)
(A−3)架橋剤(旭硝子ウレタン(株)製「EL555」、官能基数6、水酸基価550mgKOH/g)5質量部
(B)ポリイソシアネート成分
(B−1)トリレンジイソシアネート(TDI、三井化学ポリウレタン(株)製「T−80」);28.2質量部
(B−2)ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI、日本ポリウレタン(株)製「MR−200HR」);7.0質量部
(C)発泡剤として水2.5質量部
(D)触媒として、(D−1)トリエチレンジアミン(東ソー(株)製「L−33」)0.3質量部、(D−2)ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル(東ソー(株)製「TOYOCAT−ET」)0.3質量部
その他、整泡剤として、シリコーン系整泡剤(東レ・ダウコーニング(株)製「SZ1325B」0.5質量部
調製に際しては、(B)ポリイソシアネート成分以外の各成分からなるポリオール混合物を調製し、その後(B)ポリイソシアネート成分を配合することで行った。ポリオール組成物は、まず、(A)ポリオール成分と、(D)触媒を混合し、次いで整泡剤、架橋剤を配合して、最後に(C)水を混合して調製した。その時、ポリウレタン発泡原液の液温は30℃とした。
【0016】
(2)ウレタンフォーム(車両用シートパッド)の製造
図1に示すような装置を用い、低温水(58℃)を流通させ、成形金型を60±5℃に制御しておき、該成形型内に、上記(1)で調製した原液を調製直後に、大気圧下にて注入した。注入後、切り替えバルブ6及び7を切り替えて、高温水(110℃)を一部流通させ、直ちに昇温を開始した。高温水の流量は、成形型の最高温度が65℃、及び65℃に達するまでの時間が120秒となるように調節した。
次に、昇温開始から反応終了までの時間が240秒であったので、昇温開始から120秒経過した時点で、再度切り替えバルブ6及び7を切り替えて、低温水のみを流通させた。昇温開始から240秒経過した時点(反応終了時点)での成形型の温度は58℃であった。
このようにして製造したウレタンフォーム(車両用シートパッド)について、バリのべとつきの程度(相対比較)、製品表面の手跡の有無及び製品の破れの有無を評価した。また、ローラー間隔が10mmのクラッシュローラを通過させ、クラッシュ後の厚さを測定した。なお、クラッシュ前の厚さは66mmであった。結果を第1表に示す。
【0017】
実施例2
実施例1において、高温水の流量を、成形型の最高温度が70℃、70℃に達するまでの時間が120秒となるように調節したこと以外は、実施例1と同様にしてウレタンフォームを得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。なお、クラッシュ前の厚さは66mmであった。
【0018】
比較例1
実施例1において、成形金型の温度を58℃の一定で反応を行ったこと以外は実施例1と同様にして、ウレタンフォームを得た。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。なお、クラッシュ前の厚さは66mmであった。
【0019】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明によれば、作業効率、エネルギー効率の高いウレタンフォームの製造方法を提供することができる。本発明の製造方法によれば、初期の樹脂強度が向上し、手跡がつかず、やぶれが生じない。また、クラッシュ後の変形が減少する。この製造方法により得られるウレタンフォームは、種々の用途に用いられるが、特に車両用シートパッドに最適である。
【符号の説明】
【0021】
1.成形型
2.上金型
3.下金型
4.高温側温調機
5.低温側温調機
6及び7.切り替えバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型内にウレタンフォーム原料を注入し、加熱することによって反応を進行させて発泡成形体を形成し、脱型するウレタンフォームの製造方法において、原料注入時の成形型の温度が60±5℃であり、該温度から昇温し、昇温開始から反応終了までの時間の40〜60%の時点で降温することを特徴とするウレタンフォームの製造方法。
【請求項2】
脱型時の成形型の温度が60±5℃である請求項1に記載のウレタンフォームの製造方法。
【請求項3】
成形型の最高温度が、原料注入時の温度よりも10〜20℃高い請求項1又は2に記載のウレタンフォームの製造方法。
【請求項4】
成形型の温度が最高温度に達するまでの時間が、昇温開始から反応終了までの時間の30%の時点以降である請求項3に記載のウレタンフォームの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−235900(P2010−235900A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88368(P2009−88368)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】