説明

ウロダイナミクス分析のための方法及び装置

膀胱を有する動物の膀胱機能をモニターする方法であって、前記方法が動物の膀胱に近い動物の皮膚上に光エミッタ及び光検出器を配置し、エミッタによって光を膀胱に照射する一方検出器を使用して光を検出し、膀胱の活動中に検出した光によって表わされるデータを収集して膀胱機能の指標を提供することを含む。さらに、近赤外線分光法(NIRS)による膀胱モニターリングのためのライトシールド装置及びフィルター装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線分光法(NIRS)の分野、及びその泌尿器科分野での使用、より詳細には、膀胱のウロダイナミクス(urodynamics)及び排尿障害に関連した疾患の診断における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
人口の半数を超える人々が排尿障害に冒されている。膀胱がどのように機能するかを理解するための主要な手段は、膀胱のウロダイナミクスを検査することである。ウロダイナミクスでは、膀胱容量、注入時に膀胱に正常な感覚があるかどうか、及び患者/被検者が排尿するときに膀胱が適切な強度で収縮するかを測定することができる。さらに、患者に膀胱障害があるかどうか、又は尿漏れ(失禁−不随意な漏出)がある場合にはそれがどのようなタイプの漏出であるのかといった情報も、ウロダイナミクス検査から得ることができる。様々な潜在的膀胱疾患を診断するためにウロダイナミクスを行う。また、ウロダイナミクスは、治療戦略の実施後にその成功/不成功を明らかにするために用いられる。従来のウロダイナミクス検査は次の3つの構成要素、すなわち、非侵襲的尿流量測定(non invasive uroflow)(膀胱排出に関する情報を提供する)、膀胱内圧測定(Cystometrogram)(膀胱注入に関する情報を提供する)、及び内圧尿流検査(pressure flow study)(膀胱排出に関する追加情報を提供する)からなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
標準的ウロダイナミクスを行うために、患者は膀胱を充満させた状態で検査を受けるように求められる。患者はスケールに排尿するように求められ、患者の排尿速度、及び総排尿量の追跡を行う。次に、2本のカテーテルを、1本を膀胱内に、1本を直腸内に留置する。この時点以降、検査は事実上侵襲性となる。さらに、カテーテルそのものが、排尿を妨害する可能性がある、誤った収縮を引き起こす膀胱への刺激となり得る、及び/又は出血及び化膿などの副作用を起こす可能性がある、といった理由から、尿道中のカテーテルの存在は周知の交絡因子である。
【0004】
膀胱筋自身の収縮の強さを直接測定することも、泌尿器科医にとって有用である。測定のためカテーテルを直腸に挿入し、カテーテルを腹腔内圧を測定する圧力トランスデューサーに接続する。2本目のカテーテルを尿道を介して膀胱の中心に挿入し、同様に圧力トランスデューサーに接続する。膀胱の中心における圧力は、腹腔内圧と、膀胱筋そのものによって生じる圧力の合計であることは周知である。したがって、膀胱筋によって生じた圧力を間接的に計算することは可能である。しかし、従来のウロダイナミクス検査では、膀胱筋活動を直接測定することはない。この欠点は、カテーテルを使用しないで尿流を測定するときに明らかである。スケールに排尿された尿量で、その量の尿がどのくらいの速さで排尿されるかを追跡できる。これは「非侵襲的尿流量測定(non invasive uroflwo)」と呼ばれる。しかし、尿流量測定では、膀胱筋からの情報は何も記録されない。膀胱筋の弱さと、膀胱筋壁の高い圧力を伴う閉塞膀胱のいずれもが、流量の減少した、滴下タイプの尿流を作り出す可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、膀胱機能測定、即ちウロダイナミクスの非侵襲性手段を提供する。本明細書中で教示される非侵襲性の技術は、従来の侵襲性及び非侵襲性のウロダイナミクス検査と併用して実施することができる。
【0006】
本発明の一態様によると、膀胱を有する動物の膀胱機能をモニターする方法が提供され、該方法は、動物の膀胱に隣接して光エミッタ及び光検出器を配置し;光エミッタによって光を膀胱に照射する一方、光検出器を使用して光を検出し;膀胱の活動中に検出した光によって表わされるデータを収集して、膀胱機能の指標を提供すること、を含む。前記方法では、光をある期間にわたって照射及び検出することによって、データはその期間の膀胱機能を表わす。配置は、動物の膀胱に近い動物の皮膚上になされてよい。光は近赤外線(NIR)、エミッタは近赤外分光法(NIRS)エミッタ、検出器はNIRS検出器、及びデータはNIRSデータであってよい。光は、コヒレント光であってよい。
【0007】
本発明の別の態様によると、膀胱を有する動物における膀胱機能をモニターする方法が提供され、該方法は、動物の膀胱に隣接して近赤外分光法(NIRS)エミッタ及びNIRS検出器を配置し;NIRSエミッタによって近赤外線(NIR)を動物の膀胱に照射する一方、NIRS検出器を使用してNIR光を検出し;膀胱の活動中に検出したNIR光によって表わされるNIRSデータを収集して、膀胱機能の指標を提供すること、を含む。配置は、動物の膀胱に近い動物の皮膚上になされてよい。NIR光はコヒーレント光であってよい。
【0008】
前記方法は、超音波による配置、あるいは、NIRSエミッタ及びNIRS検出器を動物の(特に、動物が成人したヒトである場合に)恥骨結合部より約10mm頭部側に配置することを含んでよい。
【0009】
超音波による配置は、トランスデューサーから超音波エネルギーを伝送する工程、及び反射した超音波エネルギーを受けて動物の膀胱の位置を決定する工程、を含んでもよい。
【0010】
前記方法は、NIR光を約750〜950nmの範囲で照射することを含んでよい。NIR光は、さらに、760〜920nmの範囲に限定されてよい。あるいは、NIR光は、770〜910nm、780〜900nm、又は790〜890nmであってよい。
【0011】
収集したNIRSデータは、例えば、動物の、次のレベルの1若しくは2以上の変化を示す情報を提供するために処理されてもよい:酸化ヘモグロビン(HbO);脱酸素化ヘモグロビン(Hb);酸化型シトクロムa、a;還元型シトクロムa、a;シトクロムc酸化酵素(Cyt)又はその他の発色団の酸化型から還元型を減じたもの。
【0012】
前記方法は、周囲光がNIRSデータの収集を妨げるのを排除するため、NIRSエミッタ及びNIRS検出器をライトシールドで固定することを含む配置も含んでよい。
【0013】
前記方法は、NIR光を動物の膀胱に照射する前に、NIR照射光を減衰することも含んでもよく、これによって、減衰が動物の物理的パラメータの変化を補償するために使用される。減衰は、NIR照射光をフィルタリングすることでなされてよい。さらに、NIR光のフィルタリングはフィルターチャンバーを用いてなされてよく、フィルターチャンバーは可変密度フィルターを有し、NIR照射光を増分的(incrementally)にフィルターする働きをする。
【0014】
前記方法はさらに、NIRSデータの収集と同時又は個別に、動物の膀胱パラメータの超音波測定結果を取得することを含んでよい。
【0015】
前記方法はまた、NIRSエミッタとNIRS検出器の離間距離を15〜90mmとするように、NIRSエミッタとNIRS検出器を配置することを包含してよい。
【0016】
本発明の他の態様によると、ライトシールド装置が提供され、該装置は以下を備える;エミッタ用開口部、検出器用開口部、及び超音波プローブ用開口部を画定する不透明なシールドであって、エミッタ用開口部、検出器用開口部、及び超音波プローブ用開口部は、ライトシールド装置を装着する動物の皮膚上の画定領域へのアクセスを可能とする不透明なシールド;NIRSエミッタをエミッタ用開口部内に保持し、動物の皮膚上の照射表面にアクセス可能となるようにNIRSエミッタを配置可能とするエミッタ保持装置であって、周囲光がエミッタ用開口部を通り動物の皮膚表面に悪影響を及ぼすのを軽減する働きをするエミッタ保持装置;NIRS検出器を検出器用開口部内にNIRSエミッタと間隔をおいて保持し、動物の皮膚上の照射表面にアクセス可能となるようにNIRS検出器を配置可能とする検出器保持装置であって、周囲光が検出器用開口部を通って動物の皮膚表面に悪影響を及ぼすのを軽減する働きをする検出器保持装置。前記装置は、開放位置と閉鎖位置を有する超音波プローブクロージャを含んでもよく、超音波用開口部用クロージャが開放位置にあるとき、超音波プローブをライトシールド装置を介して動物の皮膚にアクセス可能とする働きをし、閉鎖位置にあるとき、超音波用開口部を通って周囲光が動物の皮膚表面に及ぼす悪影響を軽減する働きをする。ライトシールド装置はさらに、ライトシールドを動物の皮膚に接触させて保持する働きをするアタッチメントシステムも含んでもよい。アタッチメントシステムは、例えば次の中から選択してよい:泌尿器科用オムツ、調節可能なベルト、調節可能なストラップシステム、接着剤、粘着テープ、静電気、真空吸引、及び重りの付いたタブシステム(weighted tab system)。前記装置はまた、インターフェイスケーブル保持システムをさらに含んでよい。
【0017】
さらに、ライトシールド装置は、エミッタ開口部と検出器開口部が離間し、NIRSエミッタとNIRS検出器の離間距離が約15〜90mmとなる寸法でよい。あるいは、距離間隔は25〜80mm、35〜70mm、又は45〜60mmであってよい。
【0018】
本発明の他の態様によると、本明細書に記載された方法と共に使用するために、NIR照射光を減衰するためのフィルタリング装置が提供される。フィルタリング装置は、フィルターチャンバー及び選択システムを含んでよい。フィルターチャンバーは、フィルター処理されていない全出力光量(total unfiltered output illumination)からNIR照射光を増分的にフィルターする複数の可変密度フィルターを備える。選択システムは、前記複数の可変密度フィルターの1若しくは2以上をNIR照射光の進路に配置する。
【0019】
フィルタリング装置は、フィルター位置と非フィルター位置を有する一連のスライド可能なフィルターもさらに備えてよく、選択システムは、複数の可変密度フィルターの1若しくは2以上を、フィルター位置又は非フィルター位置へと交互にスライドさせることが可能なアクチュエータを備える。
【0020】
複数の可変密度フィルターは、フィルター処理されていない全出力光量の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%及び10%から選択される増分ステップを有してよい。あるいは、複数の可変密度フィルターは、フィルター処理されていない全出力光量の5%、6%又は7%の増分ステップを有してよい。
【0021】
本発明の別の態様と特徴は、本発明の具体的な実施例の以下の説明を添付した図面と共に参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
一般的方法及び装置
(1)ウロダイナミクス
Laborie社製ウロダイナミクス装置を用いてウロダイナミクスを実施した。ウロダイナミクスは3つのサブコンポーネントから構成される。以下に記載する患者全てに対してこの標準プロトコルが使用された。
【0023】
A.尿流量測定(uroflow)
患者は膀胱を充満させた状態で検査を受ける。男性患者は立位姿勢で、女性患者は座位で、非侵襲性尿流量測定を実施する。患者は、膀胱ができるだけ空になるまで自発的に排尿する。次にカテーテルが膀胱に挿入され、残尿をすっかり抜き取り、その量を測る。
【0024】
B.注入時膀胱内圧測定(CMG)
8Frダブル・ルーメン・ウロダイナミック・カテーテル、ウロダイナミック直腸バルーンカテーテル、及び外尿道括約筋筋電図(EMG)会陰リード線を通常の方法で取り付ける。患者は背臥位をとる。Laborieポンプを用いて、被検者の膀胱の状態に一致させた速度で室温の無菌水を注入する。患者は、国際排尿制御学会(International Continence Society)の定義にしたがって、「初発尿意(first sensation)」、「尿意切迫感(sensation of “urgency”)」、及び「最大容量(capacity)」を知らせるように求められる。
【0025】
「初発尿意」又は「最初の尿意(first desire to void)」は正常尿意(normal desire to void)として定義づけられており、被検者は次に都合の良い時に排尿したいが、必要であれば排尿を遅らせることが出来る感覚と記載されている。強い尿意は、漏出の恐れのない持続性の尿意と定義されている。一方で「切迫(urgency)」は、漏出の恐れ又は痛みの恐れを伴う強い尿意と定義されている。「最大容量」という用語は条件付けされなければならない。通常の尿意感覚を有する患者の場合、膀胱内圧測定法における最大容量(maximum cystometric capacity)は、被検者がこれ以上排尿を遅らせることが出来ないと感じる容量である。尿意感覚がない場合、膀胱内圧測定法における最大容量は通常の尿意感覚を有する患者の場合と同様な定義とすることはできず、臨床医が注入を終了する量となる。尿道括約筋不全がある場合は、例えばフォーレイカテーテルによる尿道の閉塞により膀胱内圧測定における最大容量が著しく増加する可能性がある。「機能的膀胱最大容量(functional bladder capacity)」、即ち排尿量は、通常の尿意感覚を有する患者の場合の意味合いに近く、頻度/容量のグラフ(排尿日記)から判定される。「最大(麻酔下)膀胱容量」は、液体温度、注入圧力及び注入時間を特定して、全身深麻酔又は脊椎/硬膜外麻酔下で注入した後に測定された容量である。
【0026】
最大容量となった時点で、注射器によってカテーテルを介して膀胱を空にし、患者は、電子ウロダイナミクステーブル/椅子を使用して座位に変えられる。膀胱注入を同じ注入速度で繰り返し、再度尿意(膀胱感覚)の指標を記録するが、最大容量の時点で患者は自発的に排尿することを求められる。(これが内圧尿流(pressure flow)検査セグメントの始まりである。)全てのラボが2つの姿勢(背臥位及び直立状態)における膀胱注入内圧測定図(filling Cystometrogram)を作成するわけではないが、膀胱注入の間に患者の姿勢を変えることはある種の病理学的問題を明らかにすることが知られているという理由から、完全を期すためになされてよい。
【0027】
C.内圧尿流
尿道カテーテル、直腸バルーン及びEMGリード線を正しい位置に取り付け、患者は、尿流量計の中に自発的に排尿するように求められる。これにより内圧尿流曲線(pressure flow tracing)を作成する。内圧尿流検査をプロットして尿流閉塞(obstructed flow)及び非尿流閉塞ゾーンを示すために、アブラム・グリフィスのノモグラム(Abrams-Griffiths nomograms)を使用する。標準ウロダイナミクス曲線(standard urodynamic tracing)において、排尿筋圧値(pdet)は膀胱筋によって引き起こされる膀胱内の圧力を反映しており、膀胱内圧(pves)から腹腔内圧(pabd)を差し引くことで算出する。Pvesは、尿路内の圧力測定のために特別にデザインされたカテーテルを使用して測定された膀胱内の圧力である。得られた圧力情報は、腹腔内容物により膀胱に加わる圧力と、膀胱内の尿の重量又は圧力と、排尿筋の膀胱内の尿への力が組み合わされたものである。静止圧は通常、空の膀胱の内圧を言い、姿勢によって変わることがある。標準的な膀胱の静止圧は、個々の患者及び検査中の姿勢により、8〜40cmHOの間で変動してよい。Pabdは、専用のカテーテルを直腸又は膣のいずれかに挿入して測定する。膀胱が腹腔底に収容されており、膀胱自体に生じる圧力及び活動を分離することが重要であるという理由から、腹腔内圧情報は重要である。排尿筋圧は、pvesからpabdを差し引くことで算出される差分圧力(subtracted pressure)である。内圧尿流曲線は、CMGの間に膀胱に起きる実際の活動を表す波形を示す。腹部の緊張、ガス、及び腹腔内容物の重量がアーチファクト(artefact)を生む可能性があり、このアーチファクトは、膀胱中のカテーテルからの処理情報から排除してよい。
【0028】
(2)赤外線分光法(NIRS)
A.一般的なNIRSウロダイナミクス検査方法
NIRS装置は、浜松フォトニクス株式会社(浜松市砂山町325−6)から市販されている。本方法は、浜松フォトニクス社製NIRO−300(商標)近赤外線分光光度計を使用して実施される。NIRO−300(商標)はウロダイナミクス分析に適したデータ収集インターバルを有し、泌尿器科学の応用におけるNIRSの重要な構成要素であるシトクロムcオキシダーゼを測定することができる。NIRSで使用されるエミッタは、例えば、フィルターを通過した白色光、直接ギャップガリウムアルミニウム砒素(GaAlAs)半導体レーザ、及び/又は発光ダイオード(即ち、iRED)から選ぶことができる。白色光源はキセノン又はハロゲンのどちらでもよく、フィルターコンポーネントは、各セグメントに特有のフィルター波長で構成される、セグメントされたスピニングディスクから成る。白色光源の利点は、多くの波長が収容できることにある。GaAlAsレーザは赤外線放射分野(infrared emission region)に特化しており、ギャップ幅を調整して独自の波長に設定することができる、即ち、様々な波長を断続的に同期できるようにレーザーをパルス化する。レーザの利点は、組織の有意な深さに浸透するのに十分なだけの出力を有することである。iREDは、互いに直接接触したp型半導体材料とn型半導体材料から構成され、ある特定の波長を得るために選択された、材料とインターフェイスジャンクション(interface junction)を有する。iREDは、必要な入力電力が低く、高性能で発熱が極めて少なく、可動寿命が長いという利点を有する。様々な赤外線放射を発生するために一つの光源を使用し、異なる放射が必要な時には、様々な赤外線放射を発生するために一連の個別のレーザを使用する。本明細書で使用される「光」という用語は、電磁放射を意味する。「光」(即ち、コヒーレント光)に関連して使用されるコヒーレントは、レーザ光の特異的性質であり、増幅を起こす誘導放出の過程で起こる。通常の刺激が発光事象を誘発し、放射されたフォトンとなる増幅された光を形成し、フォトンは「調和(in step)」して互いに一定の相関係を有する。コヒーレントは時間的コヒーレント(temporal coherence)及び空間的コヒーレント(spatial coherence)の意味で記述されている。
【0029】
NIRO−300(商標)近赤外線分光光度計は、760〜920nmの範囲にある4つの波長の近赤外線フォトンの、シーケンシャルにゲートされたナノセコンドのパルスを放射する。放射されたフォトンは、酸化型シトクロムc酸化酵素から還元型シトクロムc酸化酵素を減じた値(Cyt)(ミトコンドリア型シトクロムa、a(Cyt)の銅部分としても知られている)のネット差の変化に加え、酸素化ヘモグロビン(HbO)及び脱酸素化ヘモグロビン(Hb)の濃度の変化により吸収され、分光光度計は、そのときの光強度の損失を検出する。さらに、NIRSは、酸素化ミオグロビン(MbO)及び脱酸素化ミオグロビン(Mb)を検出することができる。しかしながら、760〜920nmの範囲のMb及びMbOスペクトラを、Hb及びHbOと区別することはできない。ヘモグロビンのデータは、組織への酸素の供給に関する洞察を提供し、シトロクロムのデータは、組織が供給された酸素を利用したかどうかを示す。泌尿器科の装置においける主要なデザイン要件は、1秒間隔よりもさらに速い速度でデータを収集しレポートすることである。これは、膀胱の充填及び排尿の間に起こる可能性のある変化の速度が速いため、必須である。
【0030】
NIRSエミッタとNIRS検出器からなるNIRSオプトード(opdodes)は、外部から膀胱の上部に設置することができる。NIRSオプトードの配置は、前頭面、矢状面、横断面、又は対角面のいずれかに沿って、若しくは後部又は前部、左側又は右側、尾側又は頭側に沿って、又はいずれかの平面に対して任意に沿った形で、NIRSエミッタをNIRS検出器に隣接させることを含む。あるいは、NIRSオプトードの配置は、NIRSエミッタをNIRS検出器に向かい合わせることを含む。例えば、一方のオプトードを動物の前部に配置し、他方を後部に配置してよく、又は一方を左側、他方を右側に配置してもよい。通常、エミッタと検出器の配置方向は、横方向(左から右)、縦方向(尾側から頭側)、又は任意とすることができ、解剖学的構造や、モニターされる動物/被検者の年齢によって決まることになる。オプトードの場所設定は、通常、被検者の膀胱の近いことが要求される。本装置及び方法は、膀胱を有するどのような動物にも適用することができることは当業者には理解されよう。
【0031】
NIRSオプトード(NIRSエミッタ及びNIRS検出器)の配置と方向は、膀胱の物理的位置に対して定めることができ、通常は、例えば、成人したヒトの中線にある恥骨結合より約10mm頭側となる。あるいは、配置と方向は、膀胱の超音波検出、又は当該分野で周知の検出方法によって定めることができる。
【0032】
「隣接」して配置されるNIRSエミッタとNIRS検出器の中心と中心との離間距離は、通常は約15〜90mmである。あるいは、離間距離は、25〜80mm、35〜70mm、40〜60mm、又は35〜55mmの間でよい。しかし、使用されるレーザの出力に応じて離間距離を調整することが可能である。例えば、1mWのレーザ出力が使用される場合は、離間距離が約35〜55mmのときに信頼できるデータを収集することができる。一般的に、レーザ出力が強くなると透過の深度が深くなり、結果として屈折フォトンが戻るベースが広くなることから、広い離間距離が必要となる。しかし、強い出力は組織に有害となる可能性がある。同様に、レーザ出力が小さくなると離間距離は狭くなるが、透過の深さは浅くなる。しかし、レーザ出力が小さすぎると、光線は膀胱を調べるのに充分なほど皮膚厚みを透過しない。
【0033】
パルス幅及び周波数は技術的な制約であり、NIRSでは、数学的に複数の発色団の値を求めるために複数の波長を必要とする(即ち、X個の未知数のためのX個の方程式)。レーザは個別の波長を放射する構造とすることが可能だが、フォトン検出器は波長を問わず全ての光線を検出する。このため、検出器に到着するバーストを、様々なレーザのパルスのタイムシークエンスと関連付けてうまくタイミングを合わせることができるように、NIRSエンジニアリングはパルスレーザを使用する(発色団毎に一つのレーザのように、波長毎に一つのレーザ)。パルシングのレーザパルス幅と周波数は、組合わせとして、放射と放射の間にオーバーラップがないように十分な「OFF」フェーズを有さなければならず、また、フォトンが検出器へと通過できるだけの十分な「ON」フェーズを有さなければならない。レーザの数が増えるほどミスタイミングのリスクが大きくなる。幸い、光の速度が速ければ速いほど、パルス幅/周波数は概してマッチしやすく、NIRO−300(商標)で使用するたった4つのレーザどころか100のレーザーを使用したとしても、オーバーラップのリスクはほとんどない。一般的に、パルス幅や周波数を変更する必要性はわずかである。モニター分解能は通常、レーザの数に伴って増加する。3つの発色団(即ち、Hb,HbO、Cyt)に対して3つのレーザを有するのではなく、NIRO−300(商標)は4つのレーザを使用し、この一つの余剰がより良い分解能を提供する。
【0034】
NIRS照度検出器は、入力したNIRSエミッションと、太陽光や人工光のもとでは常に存在する周囲光とを区別することができないので、被検者の皮膚のエミッション面及び検出面を周囲光から遮ることが必要である。
【0035】
上述したライトシールド、NIRSエミッタ、及びNIRS検出器を超音波にによって配置することが可能であり、超音波プローブを使用して被検者の膀胱の位置を決定する。さらに、超音波を膀胱内の尿量を示すために使用することができる。超音波により排尿前後の容量が読み取られ、排尿できなかった膀胱中の残尿量を測定する。カテーテル挿入ではなく皮膚の表面で非侵襲的になされ得るという理由で、超音波は好ましい測定方法である。
【0036】
一旦配置されると、ライトシールドを粘着テープで固定してよい。代替の接着手段は、泌尿器科用オムツ、調節可能なベルト、調節可能なストラップシステム、接着剤、静電気、真空吸引及び重りの付いたタブシステム、又は当該技術分野で周知のその他のシステムから選択できる。接着手段は、データを収集する時間及びデータ収集の種類(即ち、医療設備又は家庭用モニター)によって選択されることが多い。
【0037】
家庭でのモニター或いはケア施設での長期モニターのため、NIRS装置をポータブルにし、被検者が長時間装置を装着又は持ち運べるようにして膀胱の充填と排尿をモニターすることができる。オプトードとライトシールドをベルトで定位置に保持し、レーザ(1つ又は複数)、電源、コントロールユニット、及びデータ記録装置をバックパックに入れて装着してよい。
【0038】
NIRSデータの収集は排尿量率測定に先立って始められ、全検査を通じて各患者に対して続けられる。排尿量率測定の開始に先立ってNIRSを開始することは重要である。現在のウロダイナミクスの方法では、一般的に、データ収集が始められるのは尿がスケールに当たった時点からのみである。NIRSでは、排尿の前に始まる膀胱の収縮についてのデータを記録することができる。イベントマーカがNIRSに同時にセットされたので、CMGの間Laborieデータが次々と流れ出て、注入の開始、膀胱知覚(bladder sensation)、膀胱容量(bladder capacity)、及び患者の位置変化を示す。
【0039】
ウロダイナミクス・クリニック(urodynamic clinic)でNIRSモニターを受ける患者は、適切に膀胱を充満させてくるように求められる。次に、モニターしながら膀胱を空にする。替わって、カテーテルを尿道を介して膀胱に挿入し、無菌食塩水を注入することができる。その間、NIRSで膀胱への注入をモニターする。通常は、患者がベッドに横になり、膀胱の位置を特定するためにポータブル超音波液量計(fluid volume meter)を患者の腹部上にわたすように載せられた時から、NIRSモニターの手順が始まる。照明プローブと検出プローブを組み込んだNIRSの粘着性ライトシールドを、超音波装置で特定された部位の皮膚表面に貼る。背景視野強度、皮膚の色、及び組織密度を把握するために、繰り返しプロセスを通してNIRS装置のキャリブレーションをおこない、患者独自の物理的パラメータ(例えば、体重、皮膚色素沈着、皮膚の厚み、膀胱の大きさ、排尿筋の厚み、事前の骨盤手術、肥満、恥骨上部脂肪体、組織の含水量)を把握するために、プロセスがオプティカル減光フィルターの追加を必要とする場合がある。キャリブレーションに続き、患者は、排尿前の安定したベースラインモニター値が得られたことが確認されるまでの数分間、ベットに横になる。安定したベースラインが得られたら、NIRSモニターを1〜10Hz間隔で続け、患者は、コレクションチェンバ(泌尿器科医には尿流量計として知られる)に排尿する過程へと進む。尿流量計は検査用ベットと一体になっていても独立型尿流量計でもよい。
【0040】
コレクションチェンバは、排出流速と瞬間排出量を測定するNIRS以外のシステムにデジタル結合される。通常、男性は直立又は座位、女性は座位で計測してこれらのパラメータを尿流量計から得る。また、NIRS酸素モニターリング及びNIRS以外の排尿/容量モニターリングは患者がポータブルトイレに座った状態で行うことができる。排尿のスタート時点で、患者は排尿を始めることを声に出して告げ、この事象は、NIRS装置のモメンタリスイッチをトグルすることによりNIRSデータストリームにマークされる。膀胱が空であると知覚した時点で、患者はその旨を声に出して告げ、この事象も同様に、NIRSデータストリームにマークされる。この2つ目の事象の後、排尿後の安定したベースライン値が得られたことが確認されるまでの数分間、NIRSのモニターリングが続けられる。あるいは、NIRS装置のイベントマーカのリモートトグルにより、患者自ら反応の記録が必要だと思う場所でイベントマーカをトグルすることが可能となる。患者の自覚が失禁の鍵となる要素なので、患者がイベントマーカを自分でトグルすることが泌尿器科の検査において重要である。
【0041】
診断に、注入中のモニターリングが必要である場合には、NIRSモニターリングを顧慮せずに標準的なウロダイナミクス用注入カテーテル/プレッシャーカテーテルを通常の方法で取り付ける。膀胱充満時に実施された上記のNIRSの工程を、カテーテルで注入される空の膀胱にも同様に実施する。一部の泌尿器科検査では、カテーテルによる注入と排出を順次行うことを必要とする場合があり、これらはすでに説明したNIRSと同様の方法で実施することができる。モニターリングが終了すると、NIRSライトシールドを患者から取り外し、収集したデータをソフトウェアパッケージに移行して事後分析、ディスプレイフォーマッテング、及び主観的解釈を行う。
【0042】
(3)ライトシールド装置
現在のNIRSの周辺光シールドは、患者の前額部に設置するためのもので、本明細書に記載された泌尿器科の検査に都合よくできてはいない。泌尿器科医は、膀胱の壁厚、断面積、及び保持容量を測定するのに超音波診断法を用いる。しかし、従来のNIRSに適用される現在入手可能なライトシールドは、超音波が皮膚表面に接近するのを妨げるので、超音波診断法をNIRSと併用するのは難しい。もし超音波診断をNIRSシールドの装着より先に行うと、超音波バリヤジェルの残留物がNIRSシールドの粘着力を弱める可能性がある。粘着力の弱まったシールドはNIRSケーブルの重みで患者から剥がれる可能性があり、結果として周囲光が漏れ、それによりNIRSのキャリブレーションが乱れ、データ収集が正常に行われなくなる。また、NIRSを操作し、エミッタと検出器を両面テープでアップリケのように患者の皮膚に設置するのは手間がかかり、泌尿器科クリニックでの患者の流れを悪くする。本発明は、NIRSと超音波診断法を同時に行うことができ、周囲光の漏れの可能性を軽減するNIRSライトシールドを提供する。しかしながら、超音波プローブの使用を必要としない場合には、超音波検査のための形状を有さないライトシールドもまた使用可能である。超音波を使用しない場合には、残尿を測定するために尿道カテーテルを使用することができる。
【0043】
通常、NIRSの周辺光シールドは、シールドが頭蓋骨のカーブ、硬さ、及び表面になじむのに十分な程軟らかくなければいけないという原則に基づいてデザインされている。したがって、NIRSの周辺光シールドは、滑りを防止することに加えて装着性を確保するための粘着性を必要とする。また、シールドは、じっとしていられない乳幼児や意識不明の患者の長期にわたる脳の観察に使用されることも意図されており、こうした患者はもがくように動く傾向があり、ライトシールドの装着がしにくく、データストリームの動きアーチファクトの原因となり得る。しかしながら、NIRSを泌尿器科で使用する場合には、サンプリングの時間は短いことが多く(家庭でのモニターを除く)、腹部の柔軟な構造を考えると装着性や滑り易さは問題ではなく、腹部を取り巻く特大のシールドを考案することができ、端部のシーリングは懸念事項ではない。患者は、手で押さえること、シールドを組み込んだ泌尿器科用オムツを装着すること、重み付けされたベルト、又は「ウール・アンド・フック(wool and hook)」調節可能ベルトでシールドを押さえることによって、シールドを所定の位置に保持することができる。このような代替物によって、接着材の必要性や、接着材の塗布が原因の遅れを解消することができる。
【0044】
好ましいNIRSライトシールド装置は、使い捨てフォームシート(foam sheet)のドレープで作られた不透明なシールド本体を含んでよく、不透明なシールド本体は超音波検査用開口部及び固定器具(エミッタ及び検出器)、又はNIRSエミッタ及びNIRS検出器ターミナルを搭載するための固定用ポッド(retaining pod)を有する。
【0045】
また、不透明なライトシールドは、特定の用途、及び乳幼児、小児、ティーンエイジャー、又は成人になど被検者のサイズに合わせて寸法を決めてもよい。しかし、乳幼児用のライトシールドは、前部側と後部側の両方が周囲光にさらされる時にはウエスト全体をドレープするようにデザインされてよく、被検者がベットに横たわっている時は腹部全体をドレープするようにデザインされてよい。成人の場合には、160mm×160mmのライトシールドを最小限として使用してよく、さらに大きなシールドが好ましい場合がある。周囲光の強度が、シールドのサイズを決める最大の要因となる。NIRSが望ましいであろう手術設備では、頭上の照明器具が強力であるので、ライトシールドだけに頼るよりも、むしろモニターする範囲全体をトレープしてよい。明るい太陽光やその他の周辺光が存在する泌尿器科でNIRSモニターをする場合には、同様の対策が必要かもしれない。ライトシールドの代替案は、暗い部屋でモニターを行うことである。
【0046】
ライトシールドは、伝送光ファイバ束、即ちNIRSエミッタからNIR照射光が発生して組織に入射するようにエミッタ開口部を画定する。ライトシールドは、同様に、反射したフォトンが、組織から現れて従来のフォトダイオードコレクションアレイ又はNIRS検出器の表面に衝突するように検出器開口部を画定する。さらに、ライトシールドは、超音波プローブ用開口部を画定し、開口部を介して超音波プローブが配置され、検出された膀胱を中心としてその上部の皮膚上にシールドを位置付けする。ライトシールド装置は、検出器保持用クリップ又は検出器固定器具(retainer)を備えてもよく、フォトダイオードアレイターミナル又はNIRS検出器をライトシールド上に拘束又は保持する。ライトシールドは、エミッタ保持用クリップ又はエミッタ固定器具を備えてもよく、光ファイバ束エミッションプリズム、即ちNIRSエミッタを拘束又は保持する。ライトシールドはまた、超音波プローブが配置されていない時に、超音波用開口部を塞いで周囲光の及ぼす悪影響を減じるため、フレキシブルな、ヒンジで連結された、フラップタイプの、又はそれらに替わる超音波プローブクロージャーを有してよい。さらにライトシールドは、向かい合うサドル形状の隆起の形をとり、フォトダイオード(NIRS検出器)及びエミッション(NIRSエミッタ)ターミナルから延びるインターフェイスケーブルを拘束するインターフェイスケーブル保持手段を有してよい。ライトシールド及び関連部品は、木、ゴム、金属、箔(foil)、発泡体、又はゴム含浸布などのいかなる光遮蔽又は不透明材料で作られてよいことを当業者は理解するであろう。また、流体若しくは機械的手段、静電気、超音波バリアジェル、真空吸引、接着剤若しくはテープ、ストラップベルト、又は重み付けされたベルトから選択されるが、これらに制限されない接着手段によってシールドを適切に保持することができることを当業者は理解するであろう。
【0047】
操作中、ライトシールド装置を密封されたパッケージから取り出してよく、超音波プローブのネックを、シールドの超音波プローブ用開口部を通して取り付けてよい。次に、超音波プローブを下腹部上に移動し、疾患のない膀胱の位置を特定し、測定する。次に、超音波プローブを測定部位に固定し、ライトシールドを被検者の膀胱上に配置して皮膚表面の正しい位置に保持する。これら手順の終了後、超音波プローブを取り外して脇に置いてよい。次に、ライトシールドを様々な取り付け手段で皮膚表面に取付けてよい。ライトシールドが適切に取り付けられた後、NIRS検出器及びNIRSエミッタターミナルを、ライトシールド上のれぞれの固定器具又は固定ポッドに取り付けてよい。次に、超音波用開口部カバーを閉じてよく、NIRS分析を開始し、キャリブレーション/減衰及びそれに続くデータ収集を行う。NIRS分析中いつでも光検出を中止することができ、ライトシールドの超音波プローブ用開口部を開いてよく、シールドの取付けを邪魔することなく超音波プローブ測定を行える。データ収集が完了したら、NIRSエミッタ及び検出器(及び、背臥位の場合は重み付けされたベルト)を周囲光シールドから取り外してよく、シールドを患者から取り外して廃棄してよい。
【0048】
光ダイオード又はNIRS検出器、及びNIRS装置で通常使用される照度検出器のフォトン計数管は、NIRSエミッションと、太陽光や人工光のもとで常に存在する周囲光とを区別することができないので、被検者の皮膚のエミッション面や検出面、及びライトシールド装置を装着する被検者の皮膚上の領域を周囲光から遮ることが重要である。
【0049】
不透明ライトシールド本体のエミッタ用開口部と検出器用開口部に基づいて、NIRSエミッタとNIRS検出器の間の距離を望ましくとって配置するためにも、ライトシールド装置は有用であろう。NIRSエミッタとNIRS検出器の中心と中心の間の離間距離は、通常15〜90mmである。あるいは、離間距離は25〜80mm、35〜70mm、40〜60mm、又は35〜55mmでよい。しかし、使用されるレーザー出力によって距離を調節してよい。例えば、1mWのレーザ出力が使用される場合は、離間距離が35〜55mmの場合に信頼できるデータを収集することができる。一般的に、レーザ出力が強くなると透過の深度が深くなり、結果として屈折フォトンが戻るベースが広くなることから、広い離間距離が必要となる。同様に、レーザ出力が小さくなると離間距離は狭くなるが、透過の深さは浅くなる。しかし、レーザ出力が小さすぎると、光線は膀胱を調べるのに充分なほど皮膚厚みを透過せず、またレーザ出力が大きすぎると被検者の組織に有害となる可能性がある。
【0050】
(5)フィルタリング装置
臨床近赤外線分光法(NIRS)は、通常、脳組織酸素化モニターに最適化されており、NIRS出力光量は、屈折近赤外(NIR)光フォトンが、疾患のないヒトの皮膚、頭蓋骨、及び大脳皮質の厚みを通過し、皮膚表面に再度現れて検出するのに十分な出力である。フォトンが、反射面に対して予測不可能な入射角で予期せぬ衝突をすることによって、NIR光が屈折する。したがって、組織に入射した初期点を囲む、皮膚表面の広い拡散領域にフォトンは再度現れる。入射した初期点付近や初期点から非常に離れた場所に再度現れるフォトンは少なく、ほとんどはこれら両極端の中間の最適強度の領域に現れる。フォトンが再度現れる最適強度領域にNIRSフォトン検出器を取り付ける必要がある。これは、光ファイバー束エミッションターミナル(NIRSエミッタ)とフォトダイオード検出器アレイターミナル(NIRS検出器)の機械的離間距離(mechanical separation)を変化させるか、又は両ターミナルの固定された離間距離まで照射光を減衰することで成し得る。NIRSキャリブレーションの段階で、出力光量と入力光量の間の信号比を求め、検出器の取り付けが最適であるかを決める。
【0051】
脳のNIRSモニターに利用できる広い表面領域があると考えると、固定又は可変ターミナル離間距離を使用し、臨床要件に適合させることは可能である。しかし、ウロダイナミクスNIRSモニターリングの場合は、通常、膀胱サイズの光力に対する割合のせいで最適な再出現ゾーンが膀胱の境界の外側となってしまい、より狭いNIRSターミナルの離間距離を可能にするために光力を減衰しなければならない。減衰は通常、NIRSエミッションが組織に入射する前にオプティカル減光フィルターを通過させる方法によって行われる。必要な減衰の程度は、体重、皮膚色素沈着、皮膚厚み、膀胱の大きさ、及び排尿筋の厚みにより患者間で異なる。患者によるばらつきに対応するため、NIRSレーザー光出力そのものを調節するのが難しいという理由から(レーザー一式全体を取り替える場合を除く)、減光フィルターにおけるダイバーシティが必要となる。
【0052】
従来法では、複数のフィルターをNIRS光ファイバー束上の接続金具(fitting)に装着する(threading)ことで光を減衰する。正しいフィルター密度に達するまで消去プロセスを繰り返すことが必要で、これは面倒な作業である。フィルターの組合せは無数にあり、装着、取り外し(unthreading)、及び再装着に時間がかかる。そのことによる遅れをなくすため、NIRSレーザー又はNIRSレーザー一式からNIRSエミッタへと延びる光ファイバーケーブルに取り付けられ、フィルターチャンバーに収容される、スライドフィルター一式を本発明に組み入れる。
【0053】
フィルターチャンバーは4つのフィルタープレートを有してよく、各フィルタープレートは不透明なキャリアプレートから成る。キャリアプレートは2つのペリミターノッチ(perimeter notch)を有してよく、これらは、バネ仕掛けで先端が丸いセンタリングロッドの突起をはめ込むとき、位置合わせ止め具の役割をすることができる。キャリアプレートは、オプティカル減光フィルター及び透明開口部も有してよい。エンゲイジャープッシュロッド(engager push rod)、即ちアクチュエーターを、開口部に最も近いキャリアプレートの丸い先端部に接続してよい。バネ仕掛けのリターンロッドを、フィルターに最も近くのキャリアプレートの丸い先端部に接続してよい。使用中、リターンロッドのバネ張力に逆らってエンゲイジャーロッドを押し、フィルターか透明開口部のいずれかを選択してよい。フィルターか透明開口部は、触感やセンタリングロッドが位置合わせノッチに滑り込む音によって特定される。チャンバーの中で、フィルターキャリアプレートは光ガイド用チャネルと位置合わせされてよい。チャネルは、検査期間中にフォトンが漏れるのを最小限にする事を可能にする。フォトンの漏れは、患者が一本の指で一つのキャリアプレートを作動させることができるように、キャリアプレートを十分離間させる必要があることから起こる。チャンバーの一端をレーザー光インターフェースと直結してよく、他端を伝送光ファイバ束(NIRSエミッタ)とネジで接続してよい。
【0054】
フィルタープレートはをれぞれステップフィルターと透明開口部を有してよい。例えば、4プレートシステムのステップフィルターを、フィルター処理されていない全出力光量の6%相当の増分に設定してよい。第1プレートは6%フィルターを有し、第2プレートは12%フィルター、第3プレートは18%フィルター、第4プレートは24%フィルターを有する。フィルターと透明開口部を組み合わせて選択することで、全出力光量の0%〜72%の範囲で、12の連続的な減衰段階を得ることが可能である。或いは、4プレートシステムを、5%ステップフィルターで構成し、0%〜60%の12段階の減衰を可能にするすることができ、同様に4%ステップは0%〜48%の12段階の減衰を可能にする。あるいは、3プレートシステムは、6%ステップで0%〜48%、7%ステップで0%〜56%、8%ステップで0%〜72%、又は9%ステップで0%〜72%の、8段階の減衰を可能にする。
【0055】
キャリアプレートエンゲイジャー及びリターンプッシュロッドを、ソフトウェアアルゴリズム・サイクリングにインターフェイス接続された小型のネジ式ウォーム駆動電気モーターに替えるこのにより、自動的な減衰も可能である。あるいは、減衰装置を回転ダイアル上に任意に配置して所望のフィルター配列を選択してよい。
【0056】
減衰に替えて、動物の物理的パラメータの範囲に適した単一装置に、複数のレーザーを組み込むことが可能であろう。
[図の説明]
【0057】
図1Aを参照すると、本発明の第1の態様による装置の概略が10で示されている。図1Aは、被検者の皮膚上に取り付けられる装置の皮膚接触面側のライトシールド装置を示す図である。不透明なボディーシールド(opaque body shield)は12で示され、不透明なボディーシールド12はエミッタ用開口部14、検出器用開口部16及び超音波プローブ用開口部18の3つの開口部を画定している。これら開口部は、ライトシールド装置を装着してよい被検者の皮膚上の特定の部位へのアクセスを可能にする。図1Bは、図1Aで示した皮膚接触面の反対側の面の本態様を示す図である。ライトシールド装置はやはり10で概略が示されており、不透明なボディーシールドは12、エミッタ用開口部は14及びエミッタ保持装置(emitter retainer)は24で示されている。検出器用開口部は16、検出器保持装置(detector retainer)は26で示されている。図1Aと異なり、図1Bは超音波プローブ用開口部18(図示せず)の中に位置する超音波プローブクロージャ20を図示している。図1Bは、インターフェイスケーブル用チャネル(interface cable channel)22も図示している。
【0058】
図1Cは、図1Bに示された装置を、図1B中の線cに沿って切断した断面図である。12は不透明なシールドボディーの断面、14は不透明なシールドボディーで画定されたエミッタ用開口部、24はエミッタ保持装置を示す。同様に、16は不透明なシールドボディーにより画定された検出器用開口部、26は検出器保持装置を示す。断面図には、不透明なシールドボディー12によって画定された超音波プローブ開口部に取り付けられたクロージャ20も図示されている。
【0059】
動作
超音波プローブ(図示せず)は、不透明なシールドボディー12によって画定された超音波プローブ用開口部18を通って挿入されてよく、ライトシールド装置を被検者の膀胱の真上に配置するのに用いることができる。配置された時点で、超音波プローブはライトシールド装置から取り外されてよく、ライトシールドを正しい位置に保持することができる。正しく配置されると、周囲光がNIRS測定を妨害するのを軽減するため、超音波プローブクロージャ20が超音波プローブ用開口部18に挿入されてよい。しかし、超音波プロービングができるように、超音波プローブクロージャ20を定期的に取り外してもよい。例えば、NIRSモニターリングの間に膀胱の容量を測定する場合がこれにあたる。エミッタ(図示せず)は、不透明なシールドボディー12によって画定されたエミッタ用開口部14に挿入され、エミッタをライトシールド装置に対して正しい位置に保持するためエミッタ保持装置24で保持されてよい。同様に、検出器(図示せず)を、不透明なシールドボディー12によって画定された検出器用開口部16の中に配置し、検出器保持装置26で正しい位置に保持してよい。エミッタと検出器がライトシールド装置の中に配置されると、エミッタは、膀胱に向けてNIRS光の放射を始めてよく、続いて検出器による検出が行われてよい。
【0060】
図2Aを参照すると、本発明の更なる態様による装置の概略が100で図示されている。図2Aは、フィルターチャンバー102及び選択手段104、106、108及び110の側面図である。フィルターチャンバー102に入る入力光ガイド112、及びフィルターチャンバー102から出る出力光ガイド114が図示されている。
【0061】
図2Bは、図2Aのフィルタリング装置の上面図である。フィルターチャンバー102及び入力光ガイド112も図示されている。図2Cは、図2Bに示された線cに沿って切断されたフィルタリング装置の断面図を示す。入力光ガイド112及び出力光ガイド114は、フィルターチャンバー102の両端に位置する。光ガイドは、フィルターチャンバーを横切り、各々がそれぞれ選択手段104、106、108及び110に対してバイアスしているフィルタークチュエータロッド128、130、132及び134と交差している。各アクチュエータロッドは、フィルター位置と非フィルター位置を有し、非フィルター位置に120、122、124及び126で示されるフィルターが存在する。
【0062】
動作
112から114まで光ガイドを下方へと移動した光は、概略が100で示されるフィルター装置、具体的にはフィルターチャンバー102を通り抜ける。アクチュエータロッド(128、130、132及び134)は、対応する選択手段(104、106、108及び110)によって駆動されてよく、光ガイドを112から114まで移動する光の光路に複数のフィルター(120、122、124及び126)を選択的に配置する。あるいは、1又は複数のフィルターは、同選択手段によって解放され、通過する光の光路からはずすこともできる。
【0063】
膀胱障害及び排尿障害
膀胱機能をモニターする本方法(膀胱ウロダイナミクスモニター(bladder urodynamic monitoring))は、膀胱障害及び排尿障害に関連する疾患の診断において特に使用される。膀胱障害及び排尿障害に関連する疾患には様々な原因が考えられ、現行のウロダイナミクス検査には限界があるため診断に迷うことがある。膀胱障害及び排尿障害は、膀胱自体の1又は複数の構造的又は生理学的な異常の結果であることがあり、又は尿路のどこか別の場所(上部と下部の両方)の障害の徴候であることがある。
【0064】
下部尿路障害(LUTD)のある患者は、膀胱、膀胱頚、前立腺及び尿道の他に、いずれかの血管及びこの部位の神経分布に異常がある可能性がある。さらに、LUTDのある患者は、参照によって本明細書に含まれるABRAMS P. et al. (Neurourology and Urodynamics (2002) 21:167-178.)によって定義される下部尿路症状(lower urinary tract symptoms:LUTS)を示す可能性が高い。上部尿路障害のある患者は、腎臓及び尿道の他に、いずれかの血管及びこの部位の神経分布に異常がある可能性がある。上部尿路障害は、腎臓から膀胱への尿の生理学的運搬も含むことができる。上部尿路障害のある患者は、この部位に関連する症状を呈する可能性もある。患者の膀胱機能のモニタリングは、患者における上部及び下部尿路障害の潜在的な原因を特定するのに有用であり得る。
【0065】
診断が可能な、又は本明細書に記載されているNIRSモニターリング方法を用いて診断がなされ得る排尿機能障害の種類は、任意の下部尿路障害又は上部尿路障害から、又は次の、国際排尿制御学会に認められた定義から選択することができる:
【0066】
失禁:尿の排出を制御する能力の低下―不随意な排尿。
妊娠による失禁:妊娠後の膀胱制御の不具合。
小児失禁:小児における排尿を制御する能力の低下又は不能。
【0067】
痙性膀胱又は反射性膀胱:尿意切迫又は抑制されない排尿筋の収縮を伴う失禁。通常の量の尿を保持することのできない膀胱、又は膀胱から適切に排出できず、したがって常にいくらかの残尿がある。他には刺激性膀胱又は不安定膀胱があり、膀胱が部分的に充填されただけで、脳に排出する必要があることを伝える。
【0068】
弛緩膀胱又は弛緩性膀胱(atonic bladder or blaccid bladder):この疾患は、膀胱が「ゆるく(lazy)」なり空にすることができない場合に起こる。もはや膀胱充満の情報を知覚できず膀胱に尿がたまり過ぎ、結果として膀胱筋の伸展及び衰弱をもたらす。かなりの頻尿、尿意切迫と共に尿滴下又は排尿困難を伴う溢流性(overfill and overflow)尿失禁を引き起こす傾向がある。尿が溢流又は腎臓へ逆流する可能性があるので感染のリスクが高く、長期的なダメージの原因となり得る。
【0069】
筋失調性膀胱(括約筋協調不全):過活動膀胱(conflicting bladder)としても知られており、膀胱と括約筋がもはや互いに連動して動かないので、それらの活動は非強調的である。膀胱は空にするために収縮してよいが、括約筋も尿を保持するために収縮する、又は膀胱と括約筋の両方が弛緩する。症状には尿意切迫とそれに続く排尿困難、尿滴下及び失禁が含まれる。筋失調に伴う重大な疾患の一つは、膀胱は収縮するが括約筋が膀胱を空にするために開くことができない場合に、尿が腎臓に向かって逆流する場合があることである。
【0070】
括約筋不全:皮質脊髄路中断(corticospinal tract interruption)は、尿流の随意の中断を妨げる(外括約筋を使って)。交感神経切除(sympathetic denervation)は内括約筋を妨げる。不完全な膀胱排出。
膀胱括約筋協調不全:通常、不随意排尿筋収縮による失禁がある。時々、膀胱が収縮すると同時に外括約筋が収縮し、下部尿路閉塞のようである(排尿量が少なく、排尿後の残尿量が多い)。
【0071】
排尿筋の(神経性)反射喪失/反射低下:排尿筋反射喪失は収縮しない膀胱である。不随意な括約筋収縮のがある場合は排尿筋の反射低下と定義される。これは尿意切迫及び急迫性尿失禁の症状を引き起こす。
尿閉:膀胱からの排出に関する疾患。急性尿閉は突然排尿できなくなり、痛みと不快感を引き起こす。原因には泌尿器系の閉塞、ストレス又は神経学的問題が含まれる。慢性尿閉は、不完全な排出の後、尿が膀胱に永続的に存在することを示す。慢性尿閉の原因でよくあるのは、膀胱筋機能不全、神経損傷又は尿路の障害である。
【0072】
膀胱乳頭腫:膀胱の良性腫瘍。
膀胱脱:女性の膀胱と膣の間の壁が弱くなり膀胱が膣内に垂下することで起こる。この疾患は、不快感や膀胱排尿障害の原因となり得る。一部の女性の中には、下がった膀胱が尿道への開口部を伸展させ、咳やくしゃみをした時、笑った時、又は膀胱に圧力をかける何らかの動作をした時の尿漏れの原因となる。したがって、正常位置から下がった膀胱は、厄介な尿漏れ及び不完全な膀胱の排出といった2つの疾患の原因となり得る。
【0073】
膀胱炎:膀胱感染症又は膀胱の炎症。
間質性膀胱炎:間質性膀胱炎は、有痛性膀胱症候群及び頻尿・尿意切迫排尿困難症候群としても知られている慢性膀胱疾患である。この疾患では、膀胱壁に炎症が生じひりひり痛むことがある。炎症は、膀胱の瘢痕化と硬化、膀胱容量の減少、点状出血、及びまれに、膀胱内膜の潰瘍の原因となることがある。
自己免疫性間質膀胱炎:自己免疫性の膀胱の炎症。
【0074】
神経因性膀胱:膀胱及び排尿を制御している神経の疾患。神経は、脳から膀胱筋にメッセージを運び、締める又は緩めるのいずれかの命令をする。神経因性膀胱では、これらのメッセージを運ばなければならない神経が正しく働かない。
神経性/有痛性膀胱:神経性膀胱の症状は基本的に間質性膀胱炎と同じである。間質性膀胱炎の膀胱に特有の五月雨様出血(glomerulations)(点状出血)を伴わない非特異的な炎症を、膀胱鏡検査及び生検の結果により明らかにすることができる。
【0075】
膀胱癌:膀胱の癌。
尿路結石:尿路又は膀胱の結石。
膀胱頸部閉鎖:排尿障害の原因となり、排尿時の膀胱頸部(排出口)の狭窄又は閉塞に起因する。
夜尿症:小児又は成人の夜間頻尿(就寝中の失禁、排尿の形をとる)。
膀胱尿管逆流症:尿は、通常、尿管と呼ばれる管を通って腎臓から膀胱へと流れる。膀胱尿管逆流症は、尿が膀胱から尿管へともどる異常な流れである。
尿路感染症:泌尿器系の、通常はバクテリアによる感染症。
尿路感染症(小児):小児における泌尿器系の感染症。
【0076】
以下の実施例で用いられる一般法
以下に示されるNIRSモニターは、NIRO−300(商標)を使用し次の条件で行われた。レーザ出力:1mW パルス幅:100nsec パルス周波数:2kHz 検出器/エミッタ離間距離(中心と中心の間):50mm
【0077】
NIRS/尿流量曲線(uroflow tracings)
NIRS曲線は、排尿前、排尿中及び排尿後の被検者の生理学的変化(即ち、排尿筋収縮)に関する。NIRS曲線の変化は、膀胱の排尿筋及び付随する血管や神経に関連し予測される生理学的変化とも一致する。さらに、膀胱機能不全のある被検者から得られる曲線は、正常な膀胱機能を有する被検者や、異なる機能不全を有するとわかっている被検者とは明確に異なる。例えば、神経因性膀胱の患者(図4B)の曲線は、前立腺肥大に起因する閉塞のある患者(図3A)のトレーシングと明確に異なる。従来のウロダイナミクス分析は、被検者の排尿(尿流量)の内圧尿流及び重量に基づく。従来の方法は、膀胱機能を直接測定せず、提供される情報が制限されることが多い。例えば、記録面への尿流がまっすぐである結果、排尿の重さを記録することが遅れ、そのことにより尿流量曲線が制限されることが知られている。
【0078】
閉塞膀胱
最大尿流量及び平均尿流量が標準の範囲を下回る場合、前立腺肥大などの閉塞、又は膀胱筋自体の収縮が弱いことが原因である可能性がある。内圧流曲線(pressure flow curve)(pdet)を示すカテーテルを使用しなければ、尿流量が弱い原因についてコメントすることは不可能である。標準の尿流量曲線に関する情報は、患者が排尿を始めるまでは得ることができず、pdet値の測定は侵襲性である。本明細書で記載されるように、持続的で全体に間欠的である尿流量曲線を有する患者のNIRS曲線に隣接させて、「尿流量(uroflow)」として知られる尿流率(ml/sec)を示す標準ウロダイナミクス曲線を示すと、侵襲的処置を必要とせずに有用な情報を得ることができる。
【0079】
NIRS曲線は、標準の尿流量曲線では分からない、尿が現れる(排尿)以前のデータと変化を提供する。排尿のおよそ15秒前にCytはさらに酸化し、排尿筋細胞のエネルギー需要が増大していること示しており、これは細胞内酸素が、基質が提供した電子の再補給を確保するよりも格段多くの獲得可能な電子を必要とするためである。エネルギー生産を増加させるべく、プロトンポンピング(proton pumping)が分子レベルで増大するこの段階で、酸素の不足に比例して基質の不足が起き、これは通常、ネット酸化還元状態における変化速度の減速をあらわすCytの放物曲線としてあらわれる。同時に、HbO、Hb及びHbSumが減少し、これは排尿を引き起こす排尿筋の収縮によってもたらされる軽微な躯血による血液量の喪失をあらわす。この期間中、血液の喪失は、Cytが使用できる酸素の量を通常減少させ、その結果ネット酸化還元状態の変化を制限して後に逆転させる。
【0080】
排尿が始まると、通常HbO、Hb及びHbSumが顕著に上昇し、このことは、内圧が減少して血管のうっ血を引き起こし、結果として血液量が増加することを示している。血液量増加により、Cytの変化を止めるのに十分な遊離酸素が提供され、基質電子の供給と、酸素とプロトンの結合(HO)とのバランスがとれる。徐々にNIRSのヘモグロビンパラメータが減速しており、これは小直径血管のうっ血のカスケードがあまり進行していないことを示している。これは、排尿筋の緊張が上昇していることに起因する可能性が高く、この排尿筋は次の排尿筋の収縮に備えて尿道括約筋を閉じる(それにより尿流を止める)。
【0081】
間欠的な尿流量に起因して尿の流れが一時的に止まり、次に物理的に尿を確認するまでの間、標準尿流量曲線の測定値がゼロとなり、その間に筋肉収縮が起こるので、NIRSのHbO、Hb及びHbSumパラメータが減少する。同時に、一時的に酸化状態が高くなるという変化がCytに起こり、この状態は最終的に還元する。
患者は引き続き排尿し、この間に膀胱の尿量が減少するので、膀胱壁中の組織の伸展の緩和に続いて血管のうっ血が起こり、NIRSのヘモグロビンパラメータが再度上昇する。同じ期間中、多くの酸素が移動可能であるにもかかわらず、Cytの酸化還元状態は、多くのCyt分子が電子を保有したままさらに緩やかに減少し、これにより、収縮期よりもエネルギー需要(ATP合成(ATP synthesis))が低下していることが示されている。
【0082】
尿流量データからの情報はもうないのにもかかわらずNIRSデータは膀胱壁内の生理学的測定値を引き続き示し、それによると、患者の膀胱からの排出が続くにつれて、膀胱壁中の血液量が増加し続ける。膀胱が収縮を終えさらに緩和した状態になった時、小血管は徐々に弛緩し続けてうっ血するため、膀胱壁中の血液量は増加し続けることができる。このカスケードは大血管と小血管の貢献度の違いを反映しており、血管径が異なると括約筋のコンプライアンスが異なり、したがって、血流を同時に回復するのに充分なほど血管は同時に開くことができない。このように、Cytレベルは低下したエネルギー需要を示し続ける。
【0083】
測定されたNIRSの変化のパターンは、生理学的にロジカルであり、典型的な膀胱の組織コンプライアンスを示している。これに対して、従来の尿流動分析では、持続的で間欠的な尿流のみを裏付ける。
【0084】
正常膀胱
標準ウロダイナミクス曲線の示す正常な尿流量は、残留量のない150〜1000ccの排尿である。NIRSは、排尿がすすむにつれ排尿筋が弛緩し、それに伴い血液量が増加することを示す。一旦ピークフローが起こると、ピークフローを維持するためにわずかな排尿筋の収縮が起こり、その後排尿が完了するまで排尿筋の収縮が遷延性で緩やかに増大する。後者の収縮は前者と同じ大きさだが、その大きさの変化に達するために倍の時間が必要であるという点で、ピークフローを維持するための収縮よりも穏やかである。
[実施例]
【実施例1】
【0085】
NIRS曲線/尿流量曲線/内圧曲線
図3A−尿流量検査 患者番号21(正常範囲下限内の排尿筋過活動及び排尿圧の例)
狭心症(angina)及びII型(TypeII)糖尿病の病歴のある82歳男性で、頻尿、夜間多尿症×3、及び前立腺肥大症(BPH)の症状を訴えている。患者は特に膀胱の治療のための薬物療法は受けていない。
【0086】
標準ウロダイナミクス曲線(standard urodynamic tracing)がグラフの一番下に示され「尿流量(UroFlo)」曲線としてあらわされている。患者は膀胱充満状態で検査を受ける。患者の尿流量曲線は持続的で、全体に間欠的である。最大尿流量と平均尿流量は正常範囲を下回っている。これは前立腺肥大などの排尿障害、又は膀胱筋自体の収縮が弱いことによる可能性がある。カテーテルを使用して内圧尿流曲線を示さなければ、弱い尿流に関して所見を述べるのは不可能であろう。しかし、NIRS曲線を用いた非侵襲性手段により弱い尿流の原因を決定することが可能である。総排尿量は121ccである。残尿はカテーテルで65ccと測定された。患者が排尿を始めるB点までは、標準尿流量曲線から何の情報も得られない。
【0087】
同患者のNIRS曲線が、尿が排出し始める(B点)15秒前から示されており、NIRSデータには、標準尿流量曲線(standard uroflow curve)には見られない変化が起きている(A点〜B点)。この15秒の間に、Cytはさらに酸化し、基質が提供した電子の再補給を確保するよりも格段多くの獲得可能な電子を細胞内酸素が必要とするので、膀胱壁の細胞によるエネルギー需要が増大していることを示す。エネルギー生産を増加させるべくプロトンポンピング(proton pumping)が分子レベルで増大するこの段階で、酸素の不足に比例して基質の不足が起き、これは通常、ネット酸化還元状態における変化速度の減速をあらわすCytの放物曲線としてあらわれる。同時に、HbO、Hb及びHbSumが減少し、これは排尿を引き起こす排尿筋の収縮によってもたらされる軽微な躯血による血液量の喪失をあらわす。この期間中、B点の直後に少し見られるように、血液の喪失は、Cytが使用できる酸素の量を通常減少させ、その結果ネット酸化還元状態の変化を制限して後に逆転させる。
【0088】
B点で排尿が始まると、通常HbO、Hb及びHbSumが顕著に上昇し、このことは、内圧が減少して血管のうっ血を引き起こし、結果として血液量が増加することを示している(B点〜C点)。血液量増加によりCytの変化を止めるのに十分な遊離酸素が提供され(B点の直後に表れている)、基質電子の供給と、酸素とプロトンの結合(HO)とのバランスがとれる。B点とC点の中ほどでは、徐々にNIRSのヘモグロビンパラメータの変化の速度が減速しており、これは小直径血管のうっ血のカスケードがあまり進行していないことを示している。これは、排尿筋の緊張が上昇していることに起因する可能性が高く、この排尿筋は次の排尿筋の収縮に備えて尿道括約筋を閉じる(それにより尿流を止める)。
【0089】
C点とD点の間の標準尿流量曲線の測定値はゼロで、これは尿流が一時的に止まったことによる。しかし、A点〜B点の間に関して上述したのと同様に筋肉の収縮が起きるので、D点において物理的に尿を確認する前の、C点〜D点の間のNIRSのHbO、Hb及びHbSumパラメータは減少している。同時に、一時的に酸化状態が高くなるという変化がCytに起こり、これはB点に関して上述したのと同様に還元する。
【0090】
患者はD点〜E点の間でさらに排尿し、この間に膀胱中の尿量が減少するので、膀胱壁中の組織の伸展の緩和に続いて血管のうっ血が起こり、NIRSのヘモグロビンパラメータが再度上昇する。同じ期間中、多くの酸素が移動可能であるにもかかわらず、Cytの酸化還元状態は、多くのCyt分子が電子を保有したままさらに緩やかに減少し、これにより、収縮期(C点〜D点)よりもエネルギー需要(ATP合成)が低下していることが示されている。
【0091】
尿流量データからの情報はもうないのにもかかわらずNIRSデータが膀胱壁内の生理学的測定値を引き続き示しているように、E点〜F点の間で患者の膀胱からの排出が続くにつれて、膀胱壁中の血液量が増加し続ける。膀胱が収縮を終えさらにリラックスした状態になった時、小血管は徐々に弛緩し続けてうっ血するため、膀胱壁中の血液量は増加し続けることができると発明者は仮説を立てる。このカスケードは大血管と小血管の貢献度の違いを反映しており、血管径が異なると括約筋のコンプライアンスが異なり、したがって、血流を同時に回復するのに十分なほど血管は同時に開くことはできない。この前の期間(D点〜E点)と同様に、Cytレベルは低下したエネルギー需要を示し続ける。
【0092】
測定されたNIRSの変化のパターンは、生理学的にロジカルであり、典型的な膀胱の組織コンプライアンスを示している。NIRSは、筋肉収縮エネルギーの需要は正常の約10%であり、排尿を開始するために正常の2倍の期間を要することを示している。NIRSは、排尿中に筋肉の緊張/弛緩を維持できず、それによって尿流が間欠的となることを示している。従来の尿流量分析が裏付けるのは持続的で間欠的な尿流のみである。
【0093】
図3B−尿流量検査 患者番号25(正常尿流量、排尿筋過活動、切迫尿失禁、及び正常内圧流量の例)
切迫頻尿(urgency frequency)及び切迫尿失禁の病歴のある62歳女性。
標準ウロダイナミクス曲線は、患者が持続的な尿流量曲線を有することを示している。総排尿量は360ccである。続いて、残尿55ccを除去するため、患者にカテーテルを挿入した。
【0094】
A点〜B点の間で、筋肉の収縮に伴いHb、HbO及びHbSumが減少し、血液が膀胱壁によって圧出されることをNIRSは示している。Cytはさらに酸化し、排尿を開始するための収縮エネルギーの需要を満たすため、筋肉がより多くの酸素を利用していることを示している。C点において排尿が始まり、それにつれて血液量(HbSum、HbO及びHb)が徐々に増加してCytは徐々に減少し、膀胱筋が弛緩するのを示している。D点〜E点の間で血液量が著しく増加し、このことは膀胱が完全に弛緩し、血流が戻っていることを反映していると思われる。また、CytはD点〜E点の間でさらに減少し、このことは膀胱筋が弛緩しているとの理解を裏付ける。E点〜F点の間では、標準ウロダイナミクスではいかなる追加情報も得ることができないにもかかわらず、NIRSは膀胱の状態に関するデータを収集し続ける。
【0095】
この患者のNIRSの変化のパターンは、生理学的にロジカルであり、典型的な膀胱の組織コンプライアンスを示している。排尿筋の緊張はピークフローを経てコンスタントに保たれ、そして排尿が終了する間少しずつ弱まり、排尿が終了すると急速に弛緩する。
【0096】
図4A−尿流量検査 患者番号26(正常尿流量及び排尿筋過活動の例)
頻尿、尿意切迫及び失禁(緊張性尿失禁ではない)の病歴のある67歳女性。
標準ウロダイナミクス曲線は、女性の中では良好な尿流量であることを示している。患者は、正常な尿流量曲線形を有している。最大尿流量は20cc/秒であり、平均尿流量は10cc/秒である。排尿量は411ccで、45ccの残尿があった。
【0097】
NIRSは、A点〜B点の間で排尿に備えて排尿筋が収縮するのに伴い、Hb、HbO及びHbSumが減少し、酸化したCytのネット酸化還元状態が上昇することを示している。B点で排尿が始まり、膀胱筋が弛緩するにつれて血液量が増加している。C点〜D点の間では残りの尿を空にする作用が始まり、筋肉の収縮に伴って血液量が減少しており、Cytはエネルギー需要に応じてさらに酸化する(緩やかではあるがA点〜B点の間で見られるのと同様のパターン)。D点において膀胱は空となり、標準尿流量データが終了する。NIRSデータは継続し、膀胱筋が弛緩するにつれて血液量が増加していることを示している。エネルギー需要の減少に伴いCytはわずかに減少する。
【0098】
この患者において測定されたNIRSの変化のパターンは、生理学的にロジカルであり、典型的な膀胱の組織コンプライアンスを示している。排尿が6秒間続いている間、排尿筋の緊張が強まり、ピークフローを経てコンスタントに保たれ、その後膀胱が空になるまで少しずつ強まっている。
【0099】
図4B−尿流量検査 患者番号27(神経因性膀胱の例)
脊髄損傷の病歴のある72歳男性。
標準ウロダイナミクス曲線は、最大尿流量が7cc/秒、平均尿流量は4cc/秒であることを示している。排尿量は74ccで、100ccの残尿があった。
【0100】
NIRSは、典型的なデータセットに比べるとデータ収集がスムースでないことを示している。膀胱が痙縮している可能性がある。それにもかかわらず、典型的なNIRS排尿パターンが見られる。A点〜B点の間で、患者は排尿を始めようと試みており、筋肉の収縮に伴い血液量(HbSum、HbO及びHb)が減少し、エネルギー需要の増加に応じてCytはさらに酸化する。B点において少量の排尿が始まっている。この時点で血液量が増加する他の患者と異なり、患者が膀胱筋を自発的に収縮し続けている間血液量は減少し続けている。B点〜C点の間に血液量がわずかに増加している期間があり、これは短期間の弛緩に関連していると思われる。排尿の終了したことを患者が示しているC点の直前で血液量は増加し、膀胱筋が弛緩するにつれてCytはさらに減少している。
【0101】
この患者において測定されたNIRSの変化のパターンは、生理学的にロジカルであり、良好な変化率に対応した良好な組織コンプライアンスを示している。排尿筋収縮のエネルギー需要は正常の25%であり、収縮の開始は正常より1.6倍遅い。排尿筋収縮のわずかな増加により排尿が始まり、排尿筋収縮は尿流量のピークでしっかりと維持され、その後、排尿が止まって弛緩する前に収縮のわずかな増加が見られる。次に、残留量の一部が放出されるまで収縮は再度持続的に増加し、その後、排尿筋は弛緩して排尿が終わる。
【0102】
図5A−尿流量検査 患者番号28(持続的尿流量(prolonged uroflow)の例(ただし、ほぼ正常))
頻尿の病歴のある34歳女性。失禁の病歴はない。間質性膀胱炎の病歴がある。
標準ウロダイナミクス曲線は、合理的な尿流量を示している。最大尿流量は14cc、平均尿流量は9cc/秒、排尿量は212cc、残尿量は5ccであった。
【0103】
NIRSは、A点〜B点の間で、膀胱筋の弛緩に伴い血液量(HbSum、Hb、HbO)が急角度で増加し、筋肉からのエネルギー需要の減少に伴いCytがさらに還元するのを示している。筋肉の収縮と弛緩のサイクルを示す数個の波状曲線がB点とD点の間に見られる。Hbは変化しているが、他の患者と比べるとその度合いは小さい。排尿が終わった時、血液量は徐々に増加し続け、Cytは初め酸化し、その後還元する。他の患者と比べると、Cytの変化のパターンには約10秒の遅れがあるように見える。Cytの変化はまた、全体的を通してさらに緩やかである。これは病態(pathology)の違いを反映していると思われる。
【0104】
この患者において認められたNIRSの変化のパターンは、生理学的にロジカルであり、典型的な膀胱の組織コンプライアンスを示している。一旦ピークフローが起こると、排尿筋収縮が盛んになり、排尿を続けるためにしっかりと維持される。膀胱が空に近づくと更なる収縮が起こり、収縮は短時間持続し、そして膀胱が空になると弛緩する。
【0105】
図5B−尿流量検査 患者番号30(尿流量の発現が遅い例)
尿意切迫、頻尿及びいくらかの失禁の病歴のある30歳女性。
標準ウロダイナミクス曲線は、患者の尿流量曲線が持続的であることを示している。最大尿流量は17cc、平均尿流量は9cc/秒である。総排尿量は469ccで、50ccの残尿があった。
【0106】
NIRSは、他とは大幅に異なる変化のパターンを示している。排尿を始める前に、A点〜B点の間でHbOがわすかに増加しているのが見られる。B点〜C点の間で尿流が増加すると、HbOが加速度的に増加する。Hbの量は全体を通して基本的に変化はない。同時にCytの酸化レベルのわずかな増加が起こり、これも切迫尿意のない患者とは異なる。C点〜D点の間で膀胱筋は弛緩しているように見え、HbSumが増加し、Hbの増加は極めて小さい。D点で排尿が終了した後、HbSumは減少し、これは、残尿を放出しようとして最後に自発的収縮が起こることを反映している可能性がある。しかしながら、Cytはさらに還元する。これは、酸素の需要と供給のバランスが崩れているという点から病的状態(pathologic condition)を反映していると思われ、過去に静脈血管にダメージが与えられた結果である可能性がある。
【0107】
この患者において測定されたNIRSの変化のパターンは、生理学的にロジカルであり、変化の度合いに関する典型的な膀胱の組織コンプライアンスを示している。NIRSは、ピークフローの直前にいくらかの収縮があるものの、排尿筋収縮を利用しない受動的排尿を示し、そして一旦排尿が終わると、残尿の滴下による漏れを削減するためにさらに特筆すべき収縮が起きてることを、示している。
【0108】
仰臥注入膀胱内圧測定図(Supine Filling Cystometrogram)(CMG)
図6A−仰臥 患者番号21(閉塞に起因する低い流量を有する低収縮の例)
狭心症及びII型糖尿病の病歴のある82歳男性で、頻尿、夜間多尿症×3、及び前立腺肥大症(BPH)の症状を訴えている。特に膀胱治療のための薬物療法は受けていない。
【0109】
標準ウロダイナミクス曲線は、膀胱への注入を自覚したと患者が示す直前の、経過時間22分の時点に不安定な膀胱収縮(PDetのピーク)が見られ、続いてそれが自然に解消していることがPDetによって分かることを示している。PDetは、膀胱筋により引き起こされる膀胱内圧力を反映している。患者が尿意切迫を感じた直後に膀胱圧が上昇し始め、患者は、「フル(full)と告げる」時点で膀胱が最高容量であったことを示した。
【0110】
NIRSは、膀胱への注入が始まると、HbOは若干増加し、Hbは減少することを示している。不安定な膀胱収縮の後、患者が注入を自覚するまでの間に安定した期間がある。この時点で、HbOがわずかに急上昇する。この時点を過ぎるとHbOは減少し、患者が尿意切迫を感じた後、減少の速度は変化する。患者が注入を自覚した時点及び尿意切迫を感じた時点に短いプラトーがあることに注意されたい。患者がフルと告げた後にHbOは安定する。増加する注入量を収容するために膀胱壁が伸展及び薄層化するにつれ、Hbは一貫して減少する。
【0111】
図6B−仰臥 患者番号22(閉塞に起因する低い流量を有する高収縮圧の例)
閉塞及び切迫尿失禁のある65歳男性。
標準ウロダイナミクス曲線は、患者に尿意切迫があることを示し、PDetグラフは排尿筋の過活動があることを示している。
【0112】
NIRSは、膀胱への注入が始まるとHbO及びHbSumに若干の減少が見られることを示している。この期間を通して、Hbは依然として変らない。HbO及びHbSumが安定しCytが減少し始める時点で、患者は注入を自覚するようになる。患者は切迫尿意を感じ不随意な漏出が始まる(切迫尿失禁)。漏出のため膀胱圧が減少し、患者は不随意な漏出に逆らって尿を保持しようとする。HbOとHbSumはベースラインに戻る。数秒間漏出に逆らって保持した後、患者はカテーテルを介して積極的に排尿し、この試みが膀胱壁中の血液量を減少させ、Cytはさらに酸化しエネルギーを消費していること示している。HbOとHbSumは急速に減少し、Hbは減少する。患者が漏出に逆らって保持する時、排尿筋圧(PDet)は減少する。PDetプラトーになり、HbO及びHbSumがベースラインへと戻る時、Cytは徐々にベースラインに戻り始める。
【0113】
図7A−仰臥 患者番号23(排尿筋過活動、切迫失禁、高収縮圧及び閉塞の例)
流量の減少、頻尿、排尿後の滴下のある55歳男性。
標準ウロダイナミクス曲線は、排尿筋圧が注入に伴い非常に漸次的に増加していることを示していおり、これは正常の範囲である。患者が最大容量であることを示した後から、約90cmHOで漏出が見られるまでの間に、排尿筋圧は急激に上昇している。
【0114】
NIRSは、注入の開始から注入の自覚までの間にHb、HbO及びHbSumが徐々に減少し、Cytの酸化が徐々に増加していることを示している。患者が注入の自覚を示した直後、HbO及びHbSumが急速に減少し、患者が最大容量であることを示すまで急激に減少し続ける。興味深いことに、この患者には、尿意切迫を感じると示した時点になんら注目すべき点が見られない。患者が最大容量であることを示した直後、HbO及びHbSumが急上昇する一方でCytはさらに酸化し続けている。この間を通してHbは非常に緩やかに減少をした。最大容量に達した直後にHbは上昇し始め、このことはHbOの上昇と共に血液量の突然の増加を示している。漏出が始まる直前にCytはさらに減少し始め、筋肉で利用できるエネルギーが減少していることを示している。PDetがベースラインに戻るとHbSumとCytはベースラインに戻り、酸化はネットで減少する(HbOは減少してHbは増加する)。
【0115】
図7B−仰臥 患者番号24(自発的排尿筋収縮のない例)
自発的排尿筋収縮がなく、溢流性尿失禁のある65歳男性。患者は173ccで初発尿意と思われる感覚を覚えるが、膀胱に500cc(安全注入の最大限度)が蓄尿されても尿意切迫又は最大容量の感覚(sensation of urgency or capacity)には決して至らない。
標準ウロダイナミクス曲線は、排尿筋が断続的に収縮及び弛緩して血液を筋肉から押し出し、次に血液を筋肉に戻すので、PDetに見られる膀胱痙攣がNIRSのHbOの変化に反映されていることを示している。
【0116】
全体としてNIRSは、注入することによりPDet及び膀胱容量が増加するので、膀胱壁の薄層化及びその結果としての血管の狭窄が起こり、それと一致して膀胱筋中の血液量が減少することを示している。全体を通じて、Cytは徐々に酸化するが、一方でHbは変化しないままである。このことは、基質の不足により電子移動のカスケードが遅くなったことを示すと発明者は仮説を立てる(膀胱は基質を蓄えない)。
【0117】
図8A−仰臥 患者番号25(正常尿流量、排尿筋過活動、切迫尿失禁、及び正常内圧流量の例)
切迫頻尿及び切迫尿失禁の病歴のある62歳女性。
NIRSは、注入期間を通じてNIRSのパラメータに顕著な変化は見られないことを示している。患者が座位になる時に変化が起こるが、これは、患者が姿勢を変えた時に膀胱の形状も場所も変化するためで、アーチファクトである可能性がある。患者がカテーテルを介して不可避的に漏出(失禁)する時、Hbは安定した状態を保つ一方でHbO及びHbSumは減少する。Cytは初め減少し、その後安定する。排尿が終わりに近づくと膀胱は弛緩し、血液量は増加する。漏出に続いて排尿筋圧は再度上昇し始め、この上昇に伴って血液量は再度減少する。
【0118】
図8B−仰臥 患者番号26(正常尿流量及び排尿筋過活動の例)
頻尿、切迫尿意、及び失禁(緊張性尿失禁では無い)の病歴のある67歳女性。
標準ウロダイナミクス曲線は、最初の衝動の直後に排尿筋圧の軽微な上昇が1回ある以外は、注入の間排尿筋圧に動きがないことを示している。
NIRSは、酸化パラメータは全体を通じて安定していることを示している。これは殆ど正常な患者に近い。しかし、排尿筋圧が上昇した時に血液量がわずかに減少する。1回の収縮(排尿禁圧の上昇)の後、血液量はベースラインに戻る。この小さな変化は、膀胱壁の厚さ、又はこの患者の血管のコンプライアンスにわずかな変化が起きていることを示している可能性がある。この患者は「最大容量」に達しなかった。
【0119】
CMG座位及び内圧尿流
図9A−座位 患者番号21(不十分な筋コンプライアンスの例)
狭心症及びII型の糖尿病の病歴のある82歳男性で、頻尿、夜間多尿症×3、及び前立腺肥大症(BPH)の症状を訴えている。特に膀胱の治療のための薬物療法は受けていない。
標準ウロダイナミクス曲線は、内圧尿流検査が「排尿開始」時点から始まることを示している。この患者のPDetは、最初ほぼ110cmHOまで上昇し、その後ベースライン近くまで戻っている。
【0120】
NIRSは、膀胱筋の収縮時に、HbO、Hb及びHbSumが非常に急激に減少していることを示している。続いて、弛緩を示すHbOとHbの上昇が見られ、その後別の収縮が起こりHbOが減少する。しかし、Hbは徐々に上昇し始め、筋肉が弛緩し始めていることを示している。膀胱が空に近づくにつれ、膀胱のわずかな収縮/弛緩のサイクルが数回起きている。Cytは最初減少し、その後安定しており、収縮のための初期のエネルギー需要と一致していると思われる。
【0121】
図9B−座位 患者番号23(排尿筋過活動、切迫尿失禁、高収縮圧、及び閉塞の例)
流量の減少、頻尿、排尿後の滴下のある55歳男性。
標準ウロダイナミクス曲線は、患者が最初の衝動を感じた直後に排尿筋過活動及び圧力の著しい上昇が見られることを示している。患者は膀胱の収縮を抑えることができず、排尿が始まっている。この時、排尿と一致して膀胱圧が減少している。
NIRSは、患者が最初に切迫尿意を感じたレベル付近までPDetが戻るまで、検査全体にわたってHbOが徐々に減少し、その後血液量は一定になっていることを示している。注入が中止されると、Cytはさらに減少し、そして排尿が始まると安定する。排尿が始まるとすぐにHbは増加し始める。
【0122】
図10A−座位 患者番号24(自発的排尿筋収縮のない例)
自発的排尿筋収縮がなく、溢流性尿失禁のある65歳男性。
標準ウロダイナミクス曲線は、座位で繰り返されたCMGが、膀胱知覚の鈍さを再度表わしていることを示している。
NIRSは、患者が排尿しようと試みた時、有意な排尿筋の収縮が起こらず、患者は腹部の緊張で排尿しようと試みていることを示している。これは、比較的平坦なPdetのラインに反映されており、尿を強制的に外に出そうと(「押す(pushing)」)試みた時に腹部の緊張の著しい上昇が起きていることがNIRSから認められる。実際の尿流は見られない。緊張の間、NIRSに間欠的な増減が見られ(点線で囲まれた部分)、これは、腹部の緊張による圧力が排尿筋の中の血液量に作用していることを反映していると思われる。患者が実際に排尿した時に、排尿筋の中の血液量の劇的な減少とCytの酸化レベルの上昇が見られ、エネルギー需要が増加したことを示している。NIRSデータは排尿の衝動が過ぎた時にベースラインに戻る。
【0123】
図10B−座位 患者番号25(正常尿流量、排尿筋過活動、切迫尿失禁、及び正常内圧流量の例)
切迫頻尿及び切迫尿失禁の病歴のある62歳女性。
標準ウロダイナミクス曲線は、CMGの注入段階ではPdetに比較的動きがないことを示している。排尿に先行して20cmH2Oまで自発的排尿筋収縮が起きている。内圧流曲線は正常の範囲内である。
NIRSデータは、排尿筋の軽微な収縮の前に血液量がわずかに増加し、膀胱への注入がなされて膀胱壁が薄くなると血液量が徐々に減少する以外は、注入期間を通してNIRSデータにほとんど変化がないことを示している。注入が終了すると、自発的収縮によって排尿が始まるまで血液量は増加する。収縮が緩和されると再度血液量が増加し、膀胱が空になった後も上昇を続ける。
【0124】
正常なケース(Non-Pathologic Cases)
図11A−尿流量検査 第1ボランティア、トライアル第1回目(正常例)
泌尿器系愁訴のない健康な50歳女性。
標準ウロダイナミクス曲線は正常な尿流量を示し、排尿量は370ccで残尿はない。
A点とB点の間で、排尿中の排尿筋の弛緩にともなって血液量が増加していることを、NIRSは示している。A点とB点の中間地点でピークフローが一旦現れると、ピークフローをB点まで維持するためにわずかな排尿筋収縮が見られ、その後C点で排尿が完了するまで、排尿筋収縮が持続的に緩やかに増加する。この後者の収縮は、同じ大きさだが、その大きさの変化を達成するのに2倍の持続時間を要するという点で、ピークフローを持続させるための収縮より緩やかである。排尿が完了してから1分後に短い弛緩刺激(relaxation impulse)が見られる(D点)。
【0125】
図11B−尿流量検査 第1ボランティア、トライアル第2回目(正常例)
泌尿器系愁訴のない健康な50歳女性。
標準ウロダイナミクス曲線は正常な尿流量を示し、排尿量は342ccで残尿はない。
NIRSは、A点とB点の間で排尿筋内の血液量が増加していることを示しており、これは、括約筋収縮なしで受動的排尿をもたらすために排尿筋及び括約筋が弛緩していることを示している。B点の直前で排尿が始まり、この時点で血液量が減少し始め、排尿筋が多少収縮していることを示している。B点を過ぎると収縮は強くなり、排尿はピークフローに達する。ピークフローに続きわずかな収縮が数回あり、被検者が空になったと感じた時、空になったことを確認するため再度自発的に収縮した。続いて起こる収縮は、排尿後の正常な周期的収縮と思われる。
【0126】
本発明の具体的な実施例を説明したが、以上の実施例は本発明を例示するためだけのものであると解釈されるべきであり、添付した請求の範囲によって示される本発明の範囲を制約するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1A】本発明の実施例におけるライトシールド装置の底面図である。
【図1B】図1Aに示される実施例の上面図である。
【図1C】図1Bに示される実施例を線cに沿って切断した断面図である。
【図2A】本発明の実施例におけるフィルタリング装置の側面図である。
【図2B】図2Aに示される実施例の上面図である。
【図2C】図2Bに示される実施例を線cに沿って切断した断面図である。
【図3A】尿流量検査患者番号21のウロダイナミクス曲線であって頻尿、夜間多尿症×3、及び前立腺肥大症(BPH)の症状を訴えている狭心症及びII型糖尿病の病歴のある82歳男性の、正常範囲下限内の排尿筋過活動及び排尿圧を示す。
【図3B】尿流量検査患者番号25のウロダイナミクス曲線であって、切迫頻尿及び切迫尿失禁の病歴のある62歳女性の、正常尿流量、排尿筋過活動、切迫尿失禁、及び正常内圧流量を示す。
【図4A】尿流量検査患者番号26のウロダイナミクス曲線であって、頻尿、尿意切迫及び失禁の病歴のある67歳女性の、正常尿流量及び排尿筋過活動を示す。
【図4B】尿流量検査患者番号27のウロダイナミクス曲線であって、脊髄損傷の病歴のある72歳男性の神経因性膀胱を示す。
【図5A】尿流量検査患者番号28のウロダイナミクス曲線であって、頻尿、間質性膀胱炎の病歴があるが失禁の病歴はない34歳女性の持続的尿流量(ただし、ほとんど正常)を示す。
【図5B】尿流量検査患者番号30のウロダイナミクス曲線であって、尿意切迫、頻尿及びいくらかの失禁の病歴のある30歳女性の尿流量の発現が遅い例を示す。
【図6A】仰臥CMG患者番号21のウロダイナミクス曲線であって、頻尿、夜間多尿症×3、及び前立腺肥大症(BPH)の症状を訴えている狭心症及びII型糖尿病の病歴のある82歳男性の、閉塞に起因する少流量を有する低収縮を示す。
【図6B】仰臥CMG患者番号22のウロダイナミクス曲線であって、閉塞及び切迫尿失禁のある65歳男性の少流量を有する高収縮圧を示す。
【図7A】仰臥CMG患者番号23のウロダイナミクス曲線であって、流量の減少、頻尿、排尿後の滴下のある55歳男性の、排尿筋過活動、切迫失禁、高収縮圧及び閉塞を示す。
【図7B】仰臥CMG患者番号24のウロダイナミクス曲線であって、自発的排尿筋収縮がなく溢流性尿失禁のある65歳男性の、自発的排尿筋収縮のない例を示す。
【図8A】仰臥CMG患者番号25のウロダイナミクス曲線であって、切迫頻尿及び切迫尿失禁の病歴のある62歳女性の、正常尿流量、排尿筋過活動、切迫尿失禁、及び正常内圧流量を示す。
【図8B】仰臥CMG患者番号26のウロダイナミクス曲線であって、頻尿、切迫尿意、及び失禁(緊張性尿失禁では無い)の病歴のある67歳女性の、正常尿流量及び排尿筋過活動を示す。
【図9A】座位CMG患者番号21のウロダイナミクス曲線であって、頻尿、夜間多尿症×3、及び前立腺肥大症(BPH)の症状を訴えている狭心症及びII型の糖尿病の病歴のある82歳男性の、不十分な筋コンプライアンスを示す。
【図9B】座位CMG患者番号23のウロダイナミクス曲線であって、流量の減少、頻尿、排尿後の滴下のある55歳男性の、排尿筋過活動、切迫尿失禁、高収縮圧、及び閉塞を示す。
【図10A】座位CMG患者番号24のウロダイナミクス曲線であって、自発的排尿筋収縮がなく、溢流性尿失禁のある65歳男性の、自発的排尿筋収縮のない例を示す。
【図10B】座位CMG患者番号25のウロダイナミクス曲線であって、切迫頻尿及び切迫尿失禁の病歴のある62歳女性の、正常尿流量、排尿筋過活動、切迫尿失禁、及び正常内圧流量を示す。
【図11A】尿流量検査第1ボランティアのトライアル第1回目のウロダイナミクス曲線であって、泌尿器系愁訴のない健康な50歳女性の、正常膀胱機能を示す。
【図11B】尿流量検査第1ボランティアのトライアル第2回目のウロダイナミクス曲線であって、泌尿器系愁訴のない健康な50歳女性の、正常膀胱機能を示す。
【符号の説明】
【0128】
10 ライトシールド装置
12 ボディーシールド
14 エミッタ用開口部
16 検出器用開口部
18 超音波プローブ用開口部
20 超音波プローブクロージャ
22 インターフェイスケーブル用チャネル
24 エミッタ保持装置
26 検出器保持装置
100 フィルター装置
102 フィルターチャンバー
104、106、108、110 選択手段
112 入力光ガイド
114 出力光ガイド
120,122,124,126 フィルター
128,130,132,134 フィルタークチュエータロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膀胱を有する動物の膀胱機能をモニターする方法であって、
(a)動物の膀胱に隣接して光エミッタ及び光検出器を配置し、
(b)前記光エミッタによって光を膀胱に照射する一方、前記光検出器を使用して光を検出し、
(c)膀胱の活動中に検出した光によって表わされるデータを収集して膀胱機能の指標を提供する、
ことを含む方法。
【請求項2】
光が近赤外線(NIR)、エミッタが近赤外分光法(NIRS)エミッタ、検出器がNIRS検出器、及びデータがNIRSデータである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記検出器が動物の膀胱に近い動物の皮膚上に配置される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
光がコヒーレント光である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
超音波を用いて配置をおこなう、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
配置が動物の恥骨結合部より約10mm頭部側になされ、かつ前記動物が成人したヒトである、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
超音波による配置が、
(a)トランスデューサーから超音波エネルギーを伝送し、
(b)反射した超音波エネルギーを受けて動物の膀胱の位置を決定する、
ことを含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
NIR光を750〜950nmの範囲で照射する、請求項2記載の方法。
【請求項9】
収集したNIRSデータが、動物の、酸化ヘモグロビン(HbO)、脱酸素化ヘモグロビン(Hb)、酸化型シトクロムa、a、還元型シトクロムa、a、又は酸化型シトクロムc酸化酵素から還元型シトクロムc酸化酵素を減じた値(Cyt)の1若しくは2以上を示す、請求項2〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
配置が、周囲光がNIRSデータの収集を妨げるのを排除するため、NIRSエミッタ及びNIRS検出器をライトシールドで固定することを含む、請求項2記載の方法。
【請求項11】
膀胱に照射する前に照射光を減衰し、これによって減衰が動物の物理的パラメータの変化を補償するようになされることをさらに含む、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
減衰が照射光をフィルタリングすることでなされる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
光のフィルタリングがフィルターチャンバーを用いてなされ、フィルターチャンバーは照射光を増分的(incrementally)にフィルターする働きをする選択可能な可変密度フィルターを有する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
動物の膀胱パラメータの超音波計測結果を取得することをさらに含む、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
光エミッタと光検出器の離間距離が約15〜90mmとなるように、前記光エミッタと前記光検出器の配置をする、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
(a)エミッタ用開口部、検出器用開口部、及び超音波プローブ用開口部を画定する不透明なシールド体であって、前記エミッタ用開口部、前記検出器用開口部、及び前記超音波プローブ用開口部が、ライトシールド装置を装着する動物の皮膚上の画定領域へのアクセスを可能とする不透明なシールド、
(b)前記NIRSエミッタを前記エミッタ用開口部内に保持して、動物の皮膚上の照射表面にアクセス可能となるように前記NIRSエミッタを配置可能とするエミッタ保持装置であって、周囲光が前記照射表面に及ぼす悪影響を軽減する働きをするエミッタ保持装置、及び
(c)前記検出器用開口部内で前記NIRSエミッタと間隔をおいて前記NIRS検出器を保持し、動物の皮膚上の検出表面にアクセス可能となるようにNIRS検出器を配置可能とする検出器保持装置であって、周囲光が前記検出表面に及ぼす悪影響を軽減する働きをする検出器保持装置、
を備える、ライトシールド装置。
【請求項17】
開放位置と閉鎖位置を有し、開放位置にあるとき、超音波プローブを動物の皮膚上の超音波表面へアクセス可能とし、閉鎖位置にあるとき、周囲光が前記超音波表面に及ぼす悪影響を軽減する働きをする超音波プローブクロージャをさらに備える、請求項16記載の装置。
【請求項18】
前記ライトシールドを動物の皮膚に接触させて保持する働きをするアタッチメント手段を含む、請求項16又は17記載の装置。
【請求項19】
アタッチメント手段が、泌尿器科用オムツ、調節可能なベルト、調節可能なストラップシステム、接着剤、粘着テープ、静電気、真空吸引、及び重りの付いたタブシステム(weighted tab system)からなる群から選択される、請求項16〜18のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
さらにインターフェイスケーブル保持手段を含む、請求項16〜19のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
エミッタ開口部と検出器開口部が離間し、NIRSエミッタとNIRS検出器の離間距離が約15〜90mmとなる、請求項16〜20のいずれかに記載の装置。
【請求項22】
近赤外線分光法エミッタによってNIR照射光を減衰するフィルタリング装置であって、
(a)フィルター処理されていない全出力光量(total unfiltered output illumination)からNIR照射光を増分的にフィルターする複数の可変密度フィルターを備えるフィルターチャンバー、及び
(b)前記複数の可変密度フィルターの1若しくは2以上を、照射された前記NIR光の進路に配置し得る選択システム、
を備える装置。
【請求項23】
フィルターチャンバーが、フィルター位置と非フィルター位置を有する一連のスライド可能なフィルターを備え、選択システムは、複数の可変密度フィルターの1若しくは2以上を、前記フィルター位置又は前記非フィルター位置へと交互にスライドさせることが可能なアクチュエータを備える、請求項22記載の装置。
【請求項24】
複数の可変密度フィルターが、フィルター処理されていない全出力光量の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%及び10%からなる群から選択される増分ステップを有する、請求項22又は23記載の装置。
【請求項25】
複数の可変密度フィルターが、フィルター処理されていない前記全出力光量の6%の増分ステップを有する、請求項24記載の装置。
【請求項26】
前記複数の可変密度フィルターが、フィルター処理されていない前記全出力光量の7%の増分ステップを有する、請求項24記載の装置。
【請求項27】
前記複数の可変密度フィルターが、フィルター処理されていない前記全出力光量の5%の増分ステップを有する、請求項24記載の装置。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate


【公表番号】特表2007−508072(P2007−508072A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534553(P2006−534553)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【国際出願番号】PCT/CA2004/001825
【国際公開番号】WO2005/034754
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(506130171)ザ ユニバーシティー オヴ ブリティシュ コロンビア (1)
【Fターム(参考)】