説明

エアクリーナ

【課題】第1ケース内のダスティサイドに侵入した水をスムーズに外部に排出することができて、その水が第2ケース内のクリーンサイドに侵入するおそれを抑制することができるエアクリーナを提供する。
【解決手段】エア入口22aを備えた第1ケース22と、エア出口23aを備えた第2ケース23との間に縦置き状態のフィルタ24の外周の枠部24aを介在させて、第1ケース22及び第2ケース23と枠部24aとによりエアクリーナのハウジング21を構成する。第1ケース22及び枠部24aの下端部間に水抜き部29を設ける。水抜き部29は、第1ケース22のフィルタ24側の端縁部に形成された凹部30によって構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車用エンジンの吸気系に接続されるエアクリーナに係り、特にエアクリーナのハウジング内に侵入した水を外部に排出するための水抜き構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のエアクリーナとしては、例えば以下に示す第1従来構成(特許文献1)及び第2従来構成のような構成が提案されている。
前記特許文献1に開示された第1従来構成においては、図9に示すように、エアクリーナのハウジング41が、エア入口42aを備えた下側の第1ケース42と、エア出口43aを備えた上側の第2ケース43とにより構成されている。第1ケース42と第2ケース43との間には、フィルタ44が横置き状態で介在されている。第1ケース42の底壁には、第1ケース42内に侵入した水を外部に排出するための水抜き孔45が形成されている。
【0003】
第2従来構成においては、図10及び図11に示すように、エア入口42aを備えた一側の第1ケース42と、エア出口43aを備えた他側の第2ケース43との間に、縦置き状態のフィルタ44の外周の枠部44aが介在されている。そして、第1ケース42と第2ケース43と枠部44aとにより、エアクリーナのハウジング41が構成されている。第1ケース42の底壁には、第1ケース42内に侵入した水を外部に排出するための水抜き孔45が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−76599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の第1従来構成においては、エアクリーナが車両のエンジンルーム内に搭載された状態で、第1ケース42内のダスティサイドが下側に配置されるとともに、第2ケース43内のクリーンサイドが上側に配置される。このため、第1ケース42内のダスティサイドに水が侵入しても、その水が横置き状態のフィルタ44を通して、第2ケース43内のクリーンサイドに侵入するおそれは少ない。
【0006】
第2従来構成においては、第1ケース42の底壁に水抜き孔45が形成されている。すなわち、エアクリーナが車両のエンジンルーム内に搭載された状態で、第1ケース42内のダスティサイドと第2ケース43内のクリーンサイドとが水平面上のほぼ同一高さ位置に配置される。このため、水抜き孔45が存在しないと、第1ケース42内のダスティサイドに侵入した水が縦置き状態のフィルタ44の下部を通して、第2ケース43内のクリーンサイドに侵入するおそれがある。
【0007】
しかし、図11に示すように、第1ケース42の底壁内面に複数の補強リブ46が突出形成されて、その補強リブ46が水抜き孔45の周辺に配置されている場合には、水の流れが補強リブ46によって遮られるとともに、水抜き孔45よりもフィルタ44側の水はエア流に抗して水抜き孔45側に移動することはほとんどないため、水抜き孔45からの水抜きを有効に行い得ないことがある。このような場合は、第1ケース42内のダスティサイドから第2ケース43内のクリーンサイドに水が侵入するおそれが高くなる。
【0008】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、第1ケース内のダスティサイドに侵入した水を外部に有効に排出することができて、その水が第2ケース内のクリーンサイドに侵入するおそれを抑制することができるエアクリーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明は、エア入口を備えた第1ケースと、エア出口を備えた第2ケースとの間に縦置き状態のフィルタの外周の枠部を介在させて、前記第1ケース及び第2ケースと枠部とによりハウジングを構成したエアクリーナにおいて、前記第1ケース及び枠部の下端部間に水抜き部を設けたことを特徴とする。なお、ここで、縦置き状態のフィルタとは、横方向に流れるエアを濾過するようにしたフィルタを指す。
【0010】
従って、この発明のエアクリーナにおいては、エンジンルームへの搭載状態で、第1ケース内のダスティサイドと第2ケース内のクリーンサイドとが水平面上のほぼ同一高さ位置に配置されても、第1ケース内のダスティサイドに侵入した水を、第1ケースとフィルタの枠部との下端部間に設けられた水抜き部から外部に有効に排出することができる。よって、第1ケース内のダスティサイドに侵入した水が、縦置き状態のフィルタを通して、第2ケース内のクリーンサイドに侵入するおそれを抑制することができる。
【0011】
前記の構成において、前記第1ケースのフィルタ側の端縁部に前記水抜き部を設けるとよい。
前記の構成において、前記第1ケースの内底部に補強リブを設け、その補強リブをフィルタ側に突出させるとともに、その補強リブの突出端部間に前記水抜き部を形成するとよい。
【0012】
前記の構成において、前記枠部の下端部の上縁を第1ケースの底壁内面より高くするとよい。
前記の構成において、前記補強リブをフィルタの枠部に当接させるとよい。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、この発明によれば、第1ケース内のダスティサイドに侵入した水を外部にスムーズに排出することができて、その水が第2ケース内のクリーンサイドに侵入するおそれを抑制することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態のエアクリーナを示す断面図。
【図2】図1のエアクリーナの一部を拡大して示す部分断面図。
【図3】図2の3−3線における部分断面図。
【図4】同エアクリーナの第1ケースの端縁部を示す部分斜視図。
【図5】第2実施形態のエアクリーナを示す部分断面図。
【図6】同エアクリーナの第1ケースの端縁部を示す部分斜視図。
【図7】(a)及び(b)は第1ケースの端縁部の変更例を示す部分平面図。
【図8】(a)は変更例を示すエアクリーナの断面図、(b)はそのエアクリーナに用いられるフィルタの側面図。
【図9】従来のエアクリーナを示す断面図。
【図10】従来のエアクリーナの異なった構成を示す断面図。
【図11】図10の11−11線における部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化したエアクリーナの第1実施形態を、図1〜図4に従って説明する。
【0016】
図1に示すように、エアクリーナのハウジング21は、一側に配置される第1ケース22と、他側に配置される第2ケース23と、両ケース22,23の開口端部間に縦置き状態で介在されたフィルタ24の外周の枠部24aとから構成されている。第1ケース22の側壁には、大気に連通されるエア入口22aが形成されている。第2ケース23の側壁には、エンジンの吸気系に接続されるエア出口23aが形成されている。フィルタ24の枠部24aの内側には、エアを濾過するための濾材部24bが設けられている。
【0017】
前記第1ケース22の開口端部の下端縁を除く周縁とフィルタ24の枠部24aとの間には、第1ケース22内への水の侵入を抑止するためのメタルガスケット25が介装されている。第2ケース23の開口端部とフィルタ24の枠部24aとの間には、気密を保持するための環状のシール材26が介装されている。第1ケース22及び第2ケース23の開口端部間には、両ケース22,23を開閉可能に掛止するための掛止部27、及び両ケース22,23を閉鎖状態に締結するためのクランプ28が設けられている。そして、クランプ28を外すことにより、第1ケース22と第2ケース23との間を開放して、フィルタ24を交換することができる。
【0018】
図2及び図3に示すように、前記第1ケース22及びフィルタ24の枠部24aの下端部の全域においてその下端部間には、第1ケース22内に侵入した水を外部に排出するための水抜き部29が設けられている。この水抜き部29は、第1ケース22のフィルタ24側の端縁部に形成された複数の長方形状の凹部30によって構成されている。
【0019】
第1ケース22の内底部は水抜き部29に向かって下降傾斜するように形成されるとともに、その第1ケース22の底壁内面には複数の補強リブ31がフィルタ24側に向かって平行に延びるように形成されている。なお、この補強リブ31は、第1ケース22の上壁内面、側壁内面及び前記底壁内面の全体にわたって延長されて形成されてもよい。そして、これらの補強リブ31がフィルタ24側に突出されて、その突出端部31aがフィルタ24の枠部24aの当接することによって、図4に示すように、その補強リブ31の突出端部31a間に前記凹部30がそれぞれ形成されている。
【0020】
また、前記クランプ28による両ケース22,23の締結状態において、第1ケース22上の各補強リブ31の突出端部31aが枠部24aに前記クランプ28の反発力によって圧接されることにより、枠部24aの下端部が第2ケース23側に押し付けられて、シール材26によってフィルタ24と第2ケース23との間の気密性が確保される。さらに、図2に示すように、前記水抜き部29付近においては、枠部24aの下端部の上縁が第1ケース22の底壁内面より高くなるように構成されている。
【0021】
次に、前記のように構成されたエアクリーナの作用を説明する。
エンジンが運転されると、エアがエア入口22aから第1ケース22内に導入され、フィルタ24で濾過されて第2ケース23内に至り、エア出口23aからエンジンに送られる。
【0022】
このエアクリーナが車両のエンジンルームに搭載された状態においては、図1に示すように、第1ケース22内のダスティサイドと第2ケース23内のクリーンサイドとが水平面上のほぼ同一高さ位置に配置される。この状態で、エア入口22a等から第1ケース22内のダスティサイドに水が侵入した場合には、その水がエア流に従いながら第1ケース22の底壁の下降傾斜面に沿ってフィルタ24側に流れ、枠部24aの下端部の内周縁で止められるとともに、第1ケース22の端縁部に設けられた水抜き部29から外部に下方へ向かって排出される。よって、縦置き状態のフィルタ24を通して、ダスティサイドから第2ケース23内のクリーンサイドに水が侵入するおそれはない。
【0023】
また、このエアクリーナでは、第1ケース22の内底部に複数の補強リブ31が形成されているが、それらの補強リブ31をフィルタ24側に突出させて、その突出端部31a間に水抜き部29を構成する複数の凹部30が形成されている。このため、第1ケース22の内底部を流れる水は、補強リブ31によって阻害されるおそれはなく各凹部30に向かってスムーズに流れて、それらの凹部30から外部へ支障なく排出される。
【0024】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) このエアクリーナにおいては、エア入口22aを備えた第1ケース22と、エア出口23aを備えた第2ケース23との間に縦置き状態のフィルタ24の外周の枠部24aが介在されている。そして、前記第1ケース22及び枠部24aの下端部間には、水抜き部29が設けられている。
【0025】
このため、エンジンルームに対するエアクリーナの搭載状態で、第1ケース22内のダスティサイドと第2ケース23内のクリーンサイドとが水平面上のほぼ同一高さ位置に配置されていても、第1ケース22内のダスティサイドに侵入した水を、第1ケース22とフィルタ24の枠部24aとの下端部間に設けられた水抜き部29から外部にただちに排出することができる。よって、第1ケース22内のダスティサイドに侵入した水が、縦置き状態のフィルタ24を通して、第2ケース23内のクリーンサイドに侵入するおそれを抑制することができる。
【0026】
(2) このエアクリーナにおいては、前記水抜き部29が、第1ケース22のフィルタ24側の端縁部に形成した凹部30により構成されている。このため、水抜き部29の構造が簡単であるとともに、第1ケース22内のダスティサイドに侵入した水を外部へスムーズに排出することができる。
【0027】
(3) このエアクリーナにおいては、第1ケース22の内底部に補強リブ31を設け、その補強リブ31をフィルタ24側に突出させることによって、その補強リブ31の突出端部31a間に凹部30が形成されている。このため、第1ケース22の底壁内面に設けられた補強リブ31が邪魔になることはなく、ダスティサイド内の水を補強リブ31の突出端部31a間の凹部30から外部へスムーズに排出することができる。
【0028】
(4) このエアクリーナにおいては、前記枠部24aの下端部の上縁が第1ケース22の底壁内面より高くなるように構成されている。このため、ダスティサイド内の水が枠部24aの下端部の上縁を越えることは困難であって、水がクリーンサイドに侵入するおそれを一層効果的に抑制することができる。
【0029】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化したエアクリーナの第2実施形態を前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0030】
この第2実施形態においては、図5及び図6に示すように、第1ケース22の下端部のフィルタ24側の端縁に、水抜き部29を構成する1つの凹部30が切欠き形成されている。また、第1ケース22の内底部に設けられた複数の補強リブ31の端部が、第1ケース22の端縁まで延長されることなく、第1ケース22の端縁から所定間隔をおいた位置に配置されている。このため、第1ケース22の内底部を流れる水が、補強リブ31によって阻害されることなく1つの凹部30内にスムーズに流れ込んで排出される。
【0031】
従って、この第2実施形態においても、前記第1実施形態における(1)、(2)及び(4)に記載の効果とほぼ同様な効果を得ることができる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0032】
・ 図7(a)に示すように、第1ケース22の端縁に波形状の凹凸部を形成し、その凹凸部の各凹部30により水抜き部29を構成するとともに、凹凸部の各凸部に対応して補強リブ31を設けること。
【0033】
・ 図7(b)に示すように、第1ケース22の端縁に台形状の凹凸部を形成し、その凹凸部の各凹部30により水抜き部29を構成するとともに、凹凸部の各凸部に対応して補強リブ31を設けること。
【0034】
・ 第1ケース22とフィルタ24の枠部24aとの間のメタルガスケット25を省略すること。
・ 図8(a)(b)に示すように、フィルタ24として、円筒状のものを用いること。すなわち、平板濾紙24cを螺旋状に巻回するとともに、その螺旋空間内に波形濾紙24dを配置し、平板濾紙24cと波形濾紙24dとの間のひとつおきの一端開口の一方を充填剤24eで閉塞するとともに、他のひとつおきの他端開口を充填剤24eで閉塞し、閉塞されていない一端開口からのエアが両濾紙24c,24dを透過して閉塞されていない他端開口から抜け出るようにした形状の円筒状濾材部24bを構成する。そして、その濾材部24bの軸方向の中間部の外周に円筒状の枠部24aを設ける。このように構成したフィルタ24は、図8(a)に示すように、その軸線が横方向に延長されるようにハウジング21に組み付けられる。水抜き部29は第1ケース22の周壁下部に設けられている。
【符号の説明】
【0035】
21…エアクリーナのハウジング、22…第1ケース、22a…エア入口、23…第2ケース、23a…エア出口、24…フィルタ、24a…枠部、24b…濾材部、29…水抜き部、30…凹部、31…補強リブ、31a…突出端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エア入口を備えた第1ケースと、エア出口を備えた第2ケースとの間に縦置き状態のフィルタの外周の枠部を介在させて、前記第1ケース及び第2ケースと枠部とによりハウジングを構成したエアクリーナにおいて、
前記第1ケース及び枠部の下端部間に水抜き部を設けたことを特徴とするエアクリーナ。
【請求項2】
前記第1ケースのフィルタ側の端縁部に前記水抜き部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のエアクリーナ。
【請求項3】
前記第1ケースの内底部に補強リブを設け、その補強リブをフィルタ側に突出させるとともに、その補強リブの突出端部間に前記水抜き部を形成したことを特徴とする請求項2に記載のエアクリーナ。
【請求項4】
前記枠部の下端部の上縁を第1ケースの底壁内面より高くしたことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のエアクリーナ。
【請求項5】
前記補強リブをフィルタの枠部に当接させたことを特徴とする請求項3または4に記載のエアクリーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−96315(P2013−96315A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240337(P2011−240337)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)