エアコンベア
【課題】 搬送プレート上で搬送物の搬送方向を容易に変更することができるエアコンベアを提供する
【解決手段】 エアコンベア1の搬送プレート2は、固定プレート5と、その下面に沿って移動自在に設けられた可動プレート6とで構成される。搬送プレート2の複数のエア噴出孔3は、固定プレートの複数の固定孔8と、可動プレート6の複数の可動孔9とからなる。可動プレート6を固定プレート5の下面に沿って移動させることにより、各エア噴出孔3からの圧縮エアの噴出方向を変えることができる。
【解決手段】 エアコンベア1の搬送プレート2は、固定プレート5と、その下面に沿って移動自在に設けられた可動プレート6とで構成される。搬送プレート2の複数のエア噴出孔3は、固定プレートの複数の固定孔8と、可動プレート6の複数の可動孔9とからなる。可動プレート6を固定プレート5の下面に沿って移動させることにより、各エア噴出孔3からの圧縮エアの噴出方向を変えることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送プレートのエア噴出孔から圧縮エアを噴出させることによって搬送プレート上の搬送物を搬送するエアコンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送プレートに設けられた多数の孔から斜め上方に加圧エアを噴出させ、この加圧エアの作用により搬送プレート上の搬送物を搬送するようにしたエアコンベアが知られている。このようなエアコンベアは、例えば、ガラス基板や、PETボトル、空缶の搬送に用いられている。
【0003】
エアコンベアの一例として、特許文献1には、搬送プレートの表面に複数の缶体をその底部が接地した状態で搭載し、搬送プレートの複数の孔にエアを供給し、缶体をその底部が搬送プレートの表面に沿うようにして搬送する搬送装置が記載されている。
【0004】
この搬送装置の搬送プレートは、缶体の底部に缶体の搬送方向に向けてエアを噴射する第1の孔と、缶体の底部に搬送方向とは異なる方向に向けてエアを噴射する第2の孔とを備える。缶体の搬送に際しては、第1の孔から缶体の底部にエアを衝突させて缶体を移動させながら、第2の孔から缶体の底部にエアを衝突させて缶体をその軸線回りに回転させる。
【0005】
この搬送装置によれば、缶体を回転させながら搬送できるので、缶体の胴部同士の接触が緊密になることによって缶体の搬送が阻害されるブロッキング現象の発生を抑制し、缶体を良好に搬送することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−298101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の搬送装置では、搬送プレート上での搬送方向は一定であるため、搬送物である缶体の搬送状態によって搬送方向を変更したいときでも、搬送方向を変えることができない。
【0008】
これに対し、搬送方向を変更するためには、例えば、複数の搬送プレートを接続して搬送方向の異なる搬送経路を複数設定し、搬送経路を適宜切り換えるという構成が考えられるが、その場合には、複数の搬送経路を設置するために多くのスペースを必要とする。また、搬送装置全体のコストが増大することとなる。
【0009】
本発明の目的は、上記のようなエアコンベアを改良して、簡潔な構成で搬送物の搬送方向を容易に変更することができるエアコンベアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数のエア噴出孔を有する搬送プレートの下面に圧縮エアを供給して該エア噴出孔から噴出させることにより、該搬送プレート上の搬送物を搬送するエアコンベアであって、前記搬送プレートは、固定プレートと、該固定プレートの下面に沿って移動自在に設けられた可動プレートとで構成され、前記複数のエア噴出孔は、前記固定プレートに設けた複数の固定孔と、前記可動プレートに設けた複数の可動孔とからなり、前記可動プレートを前記固定プレートの下面に沿って移動させることにより、各エア噴出孔からの前記圧縮エアの噴出方向を変更する可動プレート移動手段を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明のエアコンベアにおいて、各エア噴出孔を構成する固定孔と可動孔の位置が一致しているときには、各エア噴出孔から直上方向に圧縮エアが噴出される。しかし、可動プレートが移動され、各固定孔に対する各可動孔の位置がずれると、そのずれの方向とは反対方向に各エア噴出孔から圧縮エアが噴出され、その噴出方向に対応した方向に搬送物が移動するようになる。したがって、本発明によれば、可動プレートを移動するだけで、搬送物の搬送方向を変更することができる。
【0012】
本発明において、前記可動プレート移動手段は、支点の周りに揺動自在に支持されたレバーと、軸線の周りに回転自在に支持されたシャフトと、前記シャフトに螺合し該シャフトの回転によって該シャフトの軸線方向に移動する移動部材とを備え、前記シャフトの回転により前記移動部材が移動したとき、該移動部材が前記レバーの一端に作用して該レバーを回動させ、これにより該レバーの他端が前記可動プレートに作用して該可動プレートを移動させるものであってもよい。これによれば、可動プレート移動手段は簡便に構成される。
【0013】
本発明において、前記可動プレート移動手段として、第1及び第2の可動プレート移動手段を備え、第1可動プレート移動手段は、前記レバーの他端が前記可動プレートに対して決められた第1方向に移動するのを許容し他の方向への移動を阻止するように該可動プレートに固定された第1案内部材を備え、該第1案内部材には、前記レバーの他端から前記第1方向とは異なる方向への力が付与され、第2可動プレート移動手段は、前記レバーの他端が前記可動プレートに対して決められた第2方向に移動するのを許容し他の方向への移動を阻止するように該可動プレートに固定された第2案内部材を備え、該第2案内部材には、前記レバーの他端から前記第2方向とは異なる方向への力を付与されるように構成してもよい。
【0014】
この構成によれば、第1可動プレート移動手段及び第2可動プレート移動手段を適切な位置に配置して、各可動プレート移動手段のレバーを動作させることにより可動プレートを任意の方向へ移動させ、搬送物の搬送方向を任意の方向に切り替えることができる。
【0015】
さらに、本発明においては、前記可動プレートを前記固定プレートの下面に沿って移動自在に取り付けるために、前記固定プレートの下面の複数箇所に突設され、該複数箇所に対応する前記可動プレートの複数箇所に設けられた貫通孔を通って該可動プレートの下面に突出した複数の突出部材と、各突出部材の突出端に固定され、前記可動プレートをそれぞれ下面側から支持する複数の支持部材とを備え、前記貫通孔は、前記各突出部材に対して前記可動プレートの移動方向に一定範囲の移動を許容する径を有することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、適切な数の突出部材と支持部材を適宜の位置に配置することにより、可動プレートを固定プレートの下面に沿って一定の範囲を移動可能に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るエアコンベアの断面図である。
【図2】図1の一部を拡大した断面図である。
【図3】図1のエアコンベアにおける固定プレートの上面図である。
【図4】図1のエアコンベアにおける可動プレートの上面図である。
【図5】可動プレートが所定の基準位置に位置するときのエア噴出孔の様子を示す断面図及び平面図である。
【図6】可動プレートが所定の基準位置から移動したときのエア噴出孔の様子を示す図である。
【図7】可動プレートが所定の基準位置から別の方向へ移動したときのエア噴出孔の様子を示す図である。
【図8】図1のエアコンベアにおける取付手段の構成を示す断面図である。
【図9】図1におけるY方向移動手段部分の拡大図である。
【図10】図1におけるX方向移動手段部分の拡大図である。
【図11】可動プレートの移動を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るエアコンベアの断面図で、図1(a)は図1(b)のA−A線に沿った断面、図1(b)は図1(a)のB−B線に沿った断面を示している。図2は図1の一部を拡大した断面図である。以下、エアコンベアの長さ方向をX方向、幅方向をY方向とする。
【0019】
図1及び図2に示すように、エアコンベア1は、搬送プレート2の下面に供給される圧縮エアを、搬送プレート2の多数のエア噴出孔3から噴出させ、該エアの作用により、搬送プレート2上の搬送物を搬送する。
【0020】
搬送プレート2の下面への圧縮エアの供給は、搬送プレート2が上壁を構成しているエア室4を介して行われる。エア室4内に供給される圧縮エアは通常、大気圧より高圧であり、エア噴出孔3から、搬送プレート2の上方に向かって噴出する。噴出する圧縮エアは、搬送物に対し、噴出方向に対応する方向の推進力を提供する。噴出方向に対応する方向とは、噴出方向を搬送プレート2の上面である搬送面に投影した方向である。この推進力により、搬送物は、搬送プレート2の搬送面上を移動し、搬送される。
【0021】
搬送プレート2は、エアコンベア1のエア室4に固定された固定プレート5と、固定プレート5の下面に設けられた可動プレート6とを備える。可動プレート6は、固定プレート5に対し、図2に示すように複数個所に設けられた後述の取付手段7により、固定プレート5の下面に沿って移動自在に取り付けられる。
【0022】
多数のエア噴出孔3は、固定プレート5の多数の固定孔8と、これに対応する可動プレート6の多数の可動孔9とで構成される。エアコンベア1は、可動プレート6を固定プレート5の下面に沿って移動させることにより圧縮エアの噴出方向を変更するY方向移動手段10及びX方向移動手段11を備える。
【0023】
本実施例では、X方向の寸法が510mm、Y方向の寸法が988mmの可動プレート6に対し、中央に1つのX方向移動手段11と、そのX方向両側に2つのY方向移動手段10とが設けられる。
【0024】
エア室4の側面は側壁12で構成され、底面は底壁13により構成される。エア室4のX方向の端部は、開放されているが、これについては後述する。
【0025】
図3は、固定プレート5の上面図であり、図4は、可動プレート6の上面図である。これらの図に示すように、固定プレート5及び可動プレート6には、それぞれ同数の固定孔8及び対応する可動孔9が、行列状に配置される。固定プレート5に対して可動プレート6が所定の基準位置に位置するとき、対応する固定孔8及び可動孔9の中心が一致する。
【0026】
可動プレート6には、取付手段7を取り付けるための複数の貫通孔14が行列状に、所定の間隔で設けられる。
【0027】
可動プレート6のX方向及びY方向の寸法は、可動プレート6が固定プレート5に対して移動されたとき、エア室4の側壁12に接触しないように、固定プレート5の寸法よりも、例えば、X方向に12mm、Y方向に97mmだけ小さい。
【0028】
図5(a)及び(b)は、固定プレート5に対して可動プレート6が所定の基準位置に位置するときの1つのエア噴出孔3の様子を示す断面図及び平面図である。図5に示すように、可動プレート6が基準位置に位置するとき、固定孔8の中心と可動孔9の中心とが一致し、円筒状のエア噴出孔3が構成される。この状態では、エア室4内の圧縮エアは、固定プレート5の表面に対して概ね鉛直上方(矢印A方向)に噴出する。したがって、搬送プレート2上の搬送物に対し、搬送面に沿ったいずれの方向への推進力も提供しない。
【0029】
図6及び図7は、固定プレート5に対して可動プレート6が所定の基準位置から移動したときのエア噴出孔3の様子をそれぞれ示す。図6(a)及び図7(a)は断面図であり、図6(b)及び図7(a)は平面図である。この場合、可動プレート6は基準位置から移動しているので、固定孔8の中心に対して可動孔9の中心がずれている。したがって、固定プレート5の上方から見た場合、固定孔8の一部が、可動プレート6によって塞がれている。
【0030】
図6では、可動プレート6を、図に向かって右方向に移動させた場合の様子が示されている。この場合、エア室4内の圧縮エアは概ね矢印B方向に噴出する。したがって、噴出する圧縮エアは、搬送物に対し、矢印B方向が搬送プレート2の搬送面上に投影される方向、すなわち左方向へ推進力を提供する。
【0031】
図7では、可動プレート6を、図に向かって左方向に移動させた場合の様子が示されている。この場合、エア室4内の圧縮エアは概ね矢印C方向に噴出する。したがって、噴出する圧縮エアは、搬送物に対し、矢印C方向が搬送プレート2の搬送面上に投影される方向、すなわち右方向へ推進力を提供する。
【0032】
このようにして可動プレート6を移動させることにより、エア室4からの圧縮エアの噴出方向を、概ね搬送プレート2の搬送面上方のいずれの方向へも変化させ、搬送物に対し、搬送プレート2に沿ったいずれの方向への推進力をも提供することができる。
【0033】
固定孔8及び可動孔9は、例えば、搬送物が空缶である場合、直径2mmの円筒形のものとされ、X方向の配置間隔が12mm(ただし、端部では10mm)、Y方向の配置間隔が17mmとされる。
【0034】
なお、対応する固定孔8及び可動孔9の直径及び/又は形状は、異なっていてもよい。例えば、可動孔9は、切頭円錐形等の形状のものであってもよい。また、水平方向の断面形状が楕円形である固定孔8と、水平方向の断面形状が円形である可動孔9を採用することもできる。さらに、固定孔8の配置間隔と可動孔9の配置間隔とが異なっていてもよい。例えば、X方向に遠くなる位置にある固定孔8であるほど、その固定孔8に対する可動孔9のずれ量が大きくなるようにすると、搬送プレート2上の搬送物に提供される推進力の向きと大きさが、X方向の位置に応じて変化するようになる。
【0035】
図8は、前記取付手段7の構成を示す断面図である。図8に示すように、各取付手段7は、基端が固定プレート5の下面の対応箇所に突設された突出部材としてのスタッドボルト15と、可動プレート6を下面側から支持する支持部材としてのサポートプレート16とを備える。スタッドボルト15は、可動プレート6の対応箇所に設けられた貫通孔14を通って可動プレート6の下面から突出する。
【0036】
サポートプレート16は、幅広のU字形状を有し、U字形状の底部中央においてスタッドボルト15の下端部に固定され、U字形状の両上端により可動プレート6の下面を摺動自在に支持する。
【0037】
サポートプレート16の固定は、サポートプレート16の中央に設けられた貫通孔14にスタッドボルト15の下端部を通してスタッドボルト15にナット17を螺合させ、締結することにより行われる。スタッドボルト15の外側には、固定プレート5とサポートプレート16との間隔を規定するスペーサ18が設けられる。
【0038】
固定プレート5へのスタッドボルト15の固定は、固定プレート5に対し概ね垂直となるように、溶接等の一般的な結合手段を用いて行われる。このようにして固定された各スタッドボルト15に対してスペーサ18を嵌合し、可動プレート6の各貫通孔14を各スタッドボルト15に通して可動プレート6を固定プレート5に対向させ、そして各貫通孔14から突出した各スタッドボルト15にサポートプレート16をナット17で締結することにより、可動プレート6を固定プレート5に取り付けることができる。
【0039】
貫通孔14の直径S1は、スペーサ18の外径S2より大きく、その差S1−S2により許容される範囲内で、可動プレート6は固定プレート5に対して移動することができる。したがって、可動プレート6は、上述の固定孔8及び可動孔9の位置が一致する基準位置から任意の方向へ、(S1−S2)/2までの距離の範囲内で移動することができる。すなわち、可動プレート6の可動範囲は、基準位置を中心とする半径Rが(S1−S2)/2の円内の範囲である。
【0040】
例えば、貫通孔14の直径S1を11mmとし、スペーサ18の外径S2を6mmとすることができる。この場合、可動プレート6の可動範囲は、基準位置を中心とする半径2.5mmの円内の範囲である。固定孔8及び可動孔9が、直径2mmの円筒形であるとすれば、可動孔9が完全に固定孔8と重なって上方からエア噴出孔3が真円に見える基準位置から、固定孔8全体が可動プレート6で覆われる位置まで、移動させることができる。
【0041】
また、可動プレート6の厚さをH1、サポートプレート16のU字形状の底部までの深さをH2とすると、スペーサ18の長さLは、H1+H2より長く、その差L−(H1+H2)が、固定プレート5と可動プレート6との間の間隔S3となる。搬送プレート2は、全体にわたって間隔S3を概ね維持し、固定プレート5に対して可動プレート6が概ね平行となるように構成される。
【0042】
例えば、スペーサ18の長さを10.3mm、可動プレート6の厚さH1を5mm、サポートプレート16の深さH2を5mmとすることができる。この場合、固定プレート5と可動プレート6との間の間隔S3(=L−(H1+H2))は、0.3mmとなる。
【0043】
図9は、図1におけるY方向移動手段10部分の拡大図である。図9に示すように、Y方向移動手段10は、ピボットピン19により支点の周りで回動自在に支持され、X方向に延在する直線状レバー20と、軸線の周りに回転自在に支持された移動用シャフト21と、移動用シャフト21に螺合し、移動用シャフト21が回転されることにより、移動用シャフト21の軸線方向に移動する2つのドグ22とを備える。
【0044】
そして、Y方向移動手段10は、移動用シャフト21の回転によりドグ22が移動すると、ドグ22が直線状レバー20の一端に作用して直線状レバー20を揺動させ、これにより直線状レバー20の他端が可動プレート6に作用して可動プレート6を移動させるように構成される。
【0045】
移動用シャフト21には、ドグ22の内周に設けられたメネジと螺合するオネジが設けられている。移動用シャフト21は、エア室4の両側壁12(図1(b))間でY方向に延在するように、両側壁12上に設けられた取付板23を介し、両側壁12に対して回転自在に取り付けられる。
【0046】
直線状レバー20の一端には、カムフォロア24が設けられる。カムフォロア24は、移動用シャフト21に螺合する2つのドグ22の間に配置される。移動用シャフト21が回転されると、移動用シャフト21の軸方向にドグ22が移動し、それに従ってカムフォロア24が揺動し、直線状レバー20が回動するようになっている。
【0047】
直線状レバー20の支点を支持するピボットピン19は、エア室4の両側壁12間に固定された固定シャフト25により支持される。固定シャフト25は、移動用シャフト21に平行となるように、取付板23を介して両側壁12間に固定される。固定シャフト25には2つのプレート26が固定されており、その間にピボットピン19が配置される。
【0048】
直線状レバー20の他端には、カムフォロア27が設けられている。また、可動プレート6の下面には、一対の可動プレートベース28が固定されている。各可動プレートベース28は、それらの間でカムフォロア27を案内する。ここで、可動プレート6の長辺に沿った可動孔9の配列方向を第1方向とし、短辺に沿った可動孔9の配列方向を第2方向とすれば、カムフォロア27を案内する方向は、第1方向となる。
【0049】
なお、本実施形態においては、可動プレート6はX方向及びY方向に平行に移動し、可動孔9はX方向及びY方向に行列状に配置されていることを前提としているので、第1方向はX方向に一致し、第2方向はY方向に一致する。
【0050】
これにより、一対の可動プレートベース28は、直線状レバー20の他端が可動プレート6に対してX方向へ移動するのを許容し、他の方向へ移動するのを阻止する案内部材として機能する。これにより、後述のように、各Y方向移動手段10のカムフォロア27がピボットピン19を軸として揺動するとき、可動プレートベース28は、そのカムフォロア27の揺動を可動プレート6のY方向の移動となるように、可動プレート6に伝えることができる。
【0051】
図10は、図1におけるX方向移動手段11部分の拡大図である。X方向移動手段11は、Y方向移動手段10において、直線状レバー20に代えてL字状レバー29を採用し、可動プレートベース28に代えて、案内面がX方向に直交するように配置された可動プレートベース28を採用したものとなっている。他の構成については、Y方向移動手段10の場合と同様である。L字状レバー29は、カムフォロア24側の端部から支点まではX方向に沿って延在し、支点からカムフォロア27側の端部まではY方向に沿って延在する。
【0052】
なお、図4には、各Y方向移動手段10の可動プレートベース28の取付け位置30及びX方向移動手段11の可動プレートベース28の取付け位置31が示されている。
【0053】
図11は、可動プレート6の移動を説明するための説明図である。図11においては、可動プレート6を上方から見た場合における各Y方向移動手段10及びX方向移動手段11の主要な要素が示されている。
【0054】
各エア噴出孔3の固定孔8及び可動孔9の位置が一致している基準位置に可動プレート6が位置しているときに、各Y方向移動手段10の移動用シャフト21を回転させて、各Y方向移動手段10のドグ22を、矢印A1で示されるY方向のマイナス側に同じ量だけ移動させると、各Y方向移動手段10のカムフォロア24がドグ22に従って矢印A1方向に揺動する。
【0055】
これにより、各直線状レバー20がそのピボットピン19を軸として回動するので、カムフォロア27がカムフォロア24と反対のA2方向に揺動する。これにより、各Y方向移動手段10の可動プレートベース28がカムフォロア27によって、矢印A2で示されるY方向のプラス側に同じ量だけ押される。
【0056】
このとき、X方向移動手段11のカムフォロア27及び可動プレートベース28によって、可動プレート6のX方向への移動は阻止されている。したがって、可動プレート6は、プラスY方向に、移動用シャフト21の回転量に対応する距離だけ、平行移動する。
【0057】
同様にして、移動用シャフト21を逆方向に回転させることにより、その回転量に対応する距離だけ、可動プレート6を、Y方向のマイナス側に平行移動させることができる。
【0058】
一方、基準位置に可動プレート6が位置しているときに、X方向移動手段11の移動用シャフト21を回転させて、X方向移動手段11のドグ22を、矢印A3で示されるY方向のマイナス側に移動させると、X方向移動手段11のカムフォロア24がドグ22に従って矢印A3方向に揺動する。
【0059】
これにより、L字状レバー29がそのピボットピン19を軸として回動するので、カムフォロア27が、A3方向とほぼ直行するA4方向に揺動する。これにより、X方向移動手段11の可動プレートベース28がカムフォロア27により、矢印A4で示されるX方向のプラス側に押される。
【0060】
このとき、可動プレート6は、各Y方向移動手段10のカムフォロア27及び可動プレートベース28によって、Y方向への移動は阻止され、かつX方向にのみ移動し得るように案内されている。したがって、可動プレート6は、X方向のプラス側に、移動用シャフト21の回転量に対応する距離だけ、平行移動する。
【0061】
同様にして、X方向移動手段11の移動用シャフト21を逆方向に回転させることにより、その回転量に対応する距離だけ、可動プレート6を、X方向のマイナス側に平行移動させることができる。
【0062】
このように、Y方向移動手段10及びX方向移動手段11を適宜組み合わせて配置し、各移動用シャフト21を回転させることにより、取付手段7の貫通孔14及びスペーサ18の寸法によって決定される上述の可動範囲内において、可動プレート6を、自在に移動させることができる。
【0063】
なお、エアコンベア1は、エア室4のY方向両端が開放されているが、これは、他のエアコンベア1、又は一般のエアコンベアと連結させて使用できるようにするためである。エアコンベア1を、連結された複数のエアコンベアのうちの端部のものとして使用する場合には、そのエアコンベア1については、他のエアコンベアに隣接していない方の端部が適切な部材によって気密に閉塞される。これにより、各エアコンベアに共通の密封されたエア室が形成される。
【0064】
また、連結されたエアコンベア1のエア室4内を外部より高い気圧に維持するために、いずれかのエアコンベア1の側壁12又は底壁13(図1)に、圧縮空気を供給するための供給口が設けられる。この供給口に、圧縮機等からの配管が連結され、該供給口を介して圧縮機等から圧縮空気が供給される。なお、エアコンベア1により空缶を搬送する場合には、エア室内の気圧が、0.2〜0.6kPaGとされる。
【0065】
以上のように、本実施形態によれば、搬送プレート2を、固定プレート5と可動プレート6で構成し、エア噴出孔3を、固定孔8と可動孔9とで構成し、可動プレート6を固定プレート5の下面に沿って移動させることにより、各エア噴出孔3からの圧縮エアの噴出方向を変更できるようにしたため、可動プレート6を移動するだけで、搬送物の搬送方向を容易に変更することができる。
【0066】
また、可動プレート6の移動手段として、2つのY方向移動手段10及び1つのX方向移動手段11を設けたので、可動プレート6を任意の方向へ移動させ、搬送物の搬送方向を任意の方向に切り替えることができる。
【0067】
また、可動プレート6を取り付けるために、複数の取付手段7を適切な位置に配置することにより、可動プレート6を固定プレート5の下面に沿って移動可能に支持することができる。
【0068】
上記実施形態においては、1つのX軸方向移動手段11を中央に配置し、その両側に2つのY軸方向移動手段10を配置したが、本発明はこれに限定されない。X軸方向移動手段11及びY方向移動手段10の数及び配置は、エアコンベアのサイズ等に応じて適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0069】
1…エアコンベア、2…搬送プレート、3…エア噴出孔、5…固定プレート、6…可動プレート、7…取付手段、8…固定孔、9…可動孔、10…Y方向移動手段(第1可動プレート移動手段)、11…X方向移動手段(第2可動プレート移動手段)、14…貫通孔、15…スタッドボルト(突出部材)、16…サポートプレート(支持部材)、20…直線状レバー、21…移動用シャフト、22…ドグ(移動部材)、28…可動プレートベース(案内部材)、29…L字状レバー。
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送プレートのエア噴出孔から圧縮エアを噴出させることによって搬送プレート上の搬送物を搬送するエアコンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送プレートに設けられた多数の孔から斜め上方に加圧エアを噴出させ、この加圧エアの作用により搬送プレート上の搬送物を搬送するようにしたエアコンベアが知られている。このようなエアコンベアは、例えば、ガラス基板や、PETボトル、空缶の搬送に用いられている。
【0003】
エアコンベアの一例として、特許文献1には、搬送プレートの表面に複数の缶体をその底部が接地した状態で搭載し、搬送プレートの複数の孔にエアを供給し、缶体をその底部が搬送プレートの表面に沿うようにして搬送する搬送装置が記載されている。
【0004】
この搬送装置の搬送プレートは、缶体の底部に缶体の搬送方向に向けてエアを噴射する第1の孔と、缶体の底部に搬送方向とは異なる方向に向けてエアを噴射する第2の孔とを備える。缶体の搬送に際しては、第1の孔から缶体の底部にエアを衝突させて缶体を移動させながら、第2の孔から缶体の底部にエアを衝突させて缶体をその軸線回りに回転させる。
【0005】
この搬送装置によれば、缶体を回転させながら搬送できるので、缶体の胴部同士の接触が緊密になることによって缶体の搬送が阻害されるブロッキング現象の発生を抑制し、缶体を良好に搬送することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−298101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の搬送装置では、搬送プレート上での搬送方向は一定であるため、搬送物である缶体の搬送状態によって搬送方向を変更したいときでも、搬送方向を変えることができない。
【0008】
これに対し、搬送方向を変更するためには、例えば、複数の搬送プレートを接続して搬送方向の異なる搬送経路を複数設定し、搬送経路を適宜切り換えるという構成が考えられるが、その場合には、複数の搬送経路を設置するために多くのスペースを必要とする。また、搬送装置全体のコストが増大することとなる。
【0009】
本発明の目的は、上記のようなエアコンベアを改良して、簡潔な構成で搬送物の搬送方向を容易に変更することができるエアコンベアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数のエア噴出孔を有する搬送プレートの下面に圧縮エアを供給して該エア噴出孔から噴出させることにより、該搬送プレート上の搬送物を搬送するエアコンベアであって、前記搬送プレートは、固定プレートと、該固定プレートの下面に沿って移動自在に設けられた可動プレートとで構成され、前記複数のエア噴出孔は、前記固定プレートに設けた複数の固定孔と、前記可動プレートに設けた複数の可動孔とからなり、前記可動プレートを前記固定プレートの下面に沿って移動させることにより、各エア噴出孔からの前記圧縮エアの噴出方向を変更する可動プレート移動手段を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明のエアコンベアにおいて、各エア噴出孔を構成する固定孔と可動孔の位置が一致しているときには、各エア噴出孔から直上方向に圧縮エアが噴出される。しかし、可動プレートが移動され、各固定孔に対する各可動孔の位置がずれると、そのずれの方向とは反対方向に各エア噴出孔から圧縮エアが噴出され、その噴出方向に対応した方向に搬送物が移動するようになる。したがって、本発明によれば、可動プレートを移動するだけで、搬送物の搬送方向を変更することができる。
【0012】
本発明において、前記可動プレート移動手段は、支点の周りに揺動自在に支持されたレバーと、軸線の周りに回転自在に支持されたシャフトと、前記シャフトに螺合し該シャフトの回転によって該シャフトの軸線方向に移動する移動部材とを備え、前記シャフトの回転により前記移動部材が移動したとき、該移動部材が前記レバーの一端に作用して該レバーを回動させ、これにより該レバーの他端が前記可動プレートに作用して該可動プレートを移動させるものであってもよい。これによれば、可動プレート移動手段は簡便に構成される。
【0013】
本発明において、前記可動プレート移動手段として、第1及び第2の可動プレート移動手段を備え、第1可動プレート移動手段は、前記レバーの他端が前記可動プレートに対して決められた第1方向に移動するのを許容し他の方向への移動を阻止するように該可動プレートに固定された第1案内部材を備え、該第1案内部材には、前記レバーの他端から前記第1方向とは異なる方向への力が付与され、第2可動プレート移動手段は、前記レバーの他端が前記可動プレートに対して決められた第2方向に移動するのを許容し他の方向への移動を阻止するように該可動プレートに固定された第2案内部材を備え、該第2案内部材には、前記レバーの他端から前記第2方向とは異なる方向への力を付与されるように構成してもよい。
【0014】
この構成によれば、第1可動プレート移動手段及び第2可動プレート移動手段を適切な位置に配置して、各可動プレート移動手段のレバーを動作させることにより可動プレートを任意の方向へ移動させ、搬送物の搬送方向を任意の方向に切り替えることができる。
【0015】
さらに、本発明においては、前記可動プレートを前記固定プレートの下面に沿って移動自在に取り付けるために、前記固定プレートの下面の複数箇所に突設され、該複数箇所に対応する前記可動プレートの複数箇所に設けられた貫通孔を通って該可動プレートの下面に突出した複数の突出部材と、各突出部材の突出端に固定され、前記可動プレートをそれぞれ下面側から支持する複数の支持部材とを備え、前記貫通孔は、前記各突出部材に対して前記可動プレートの移動方向に一定範囲の移動を許容する径を有することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、適切な数の突出部材と支持部材を適宜の位置に配置することにより、可動プレートを固定プレートの下面に沿って一定の範囲を移動可能に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るエアコンベアの断面図である。
【図2】図1の一部を拡大した断面図である。
【図3】図1のエアコンベアにおける固定プレートの上面図である。
【図4】図1のエアコンベアにおける可動プレートの上面図である。
【図5】可動プレートが所定の基準位置に位置するときのエア噴出孔の様子を示す断面図及び平面図である。
【図6】可動プレートが所定の基準位置から移動したときのエア噴出孔の様子を示す図である。
【図7】可動プレートが所定の基準位置から別の方向へ移動したときのエア噴出孔の様子を示す図である。
【図8】図1のエアコンベアにおける取付手段の構成を示す断面図である。
【図9】図1におけるY方向移動手段部分の拡大図である。
【図10】図1におけるX方向移動手段部分の拡大図である。
【図11】可動プレートの移動を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るエアコンベアの断面図で、図1(a)は図1(b)のA−A線に沿った断面、図1(b)は図1(a)のB−B線に沿った断面を示している。図2は図1の一部を拡大した断面図である。以下、エアコンベアの長さ方向をX方向、幅方向をY方向とする。
【0019】
図1及び図2に示すように、エアコンベア1は、搬送プレート2の下面に供給される圧縮エアを、搬送プレート2の多数のエア噴出孔3から噴出させ、該エアの作用により、搬送プレート2上の搬送物を搬送する。
【0020】
搬送プレート2の下面への圧縮エアの供給は、搬送プレート2が上壁を構成しているエア室4を介して行われる。エア室4内に供給される圧縮エアは通常、大気圧より高圧であり、エア噴出孔3から、搬送プレート2の上方に向かって噴出する。噴出する圧縮エアは、搬送物に対し、噴出方向に対応する方向の推進力を提供する。噴出方向に対応する方向とは、噴出方向を搬送プレート2の上面である搬送面に投影した方向である。この推進力により、搬送物は、搬送プレート2の搬送面上を移動し、搬送される。
【0021】
搬送プレート2は、エアコンベア1のエア室4に固定された固定プレート5と、固定プレート5の下面に設けられた可動プレート6とを備える。可動プレート6は、固定プレート5に対し、図2に示すように複数個所に設けられた後述の取付手段7により、固定プレート5の下面に沿って移動自在に取り付けられる。
【0022】
多数のエア噴出孔3は、固定プレート5の多数の固定孔8と、これに対応する可動プレート6の多数の可動孔9とで構成される。エアコンベア1は、可動プレート6を固定プレート5の下面に沿って移動させることにより圧縮エアの噴出方向を変更するY方向移動手段10及びX方向移動手段11を備える。
【0023】
本実施例では、X方向の寸法が510mm、Y方向の寸法が988mmの可動プレート6に対し、中央に1つのX方向移動手段11と、そのX方向両側に2つのY方向移動手段10とが設けられる。
【0024】
エア室4の側面は側壁12で構成され、底面は底壁13により構成される。エア室4のX方向の端部は、開放されているが、これについては後述する。
【0025】
図3は、固定プレート5の上面図であり、図4は、可動プレート6の上面図である。これらの図に示すように、固定プレート5及び可動プレート6には、それぞれ同数の固定孔8及び対応する可動孔9が、行列状に配置される。固定プレート5に対して可動プレート6が所定の基準位置に位置するとき、対応する固定孔8及び可動孔9の中心が一致する。
【0026】
可動プレート6には、取付手段7を取り付けるための複数の貫通孔14が行列状に、所定の間隔で設けられる。
【0027】
可動プレート6のX方向及びY方向の寸法は、可動プレート6が固定プレート5に対して移動されたとき、エア室4の側壁12に接触しないように、固定プレート5の寸法よりも、例えば、X方向に12mm、Y方向に97mmだけ小さい。
【0028】
図5(a)及び(b)は、固定プレート5に対して可動プレート6が所定の基準位置に位置するときの1つのエア噴出孔3の様子を示す断面図及び平面図である。図5に示すように、可動プレート6が基準位置に位置するとき、固定孔8の中心と可動孔9の中心とが一致し、円筒状のエア噴出孔3が構成される。この状態では、エア室4内の圧縮エアは、固定プレート5の表面に対して概ね鉛直上方(矢印A方向)に噴出する。したがって、搬送プレート2上の搬送物に対し、搬送面に沿ったいずれの方向への推進力も提供しない。
【0029】
図6及び図7は、固定プレート5に対して可動プレート6が所定の基準位置から移動したときのエア噴出孔3の様子をそれぞれ示す。図6(a)及び図7(a)は断面図であり、図6(b)及び図7(a)は平面図である。この場合、可動プレート6は基準位置から移動しているので、固定孔8の中心に対して可動孔9の中心がずれている。したがって、固定プレート5の上方から見た場合、固定孔8の一部が、可動プレート6によって塞がれている。
【0030】
図6では、可動プレート6を、図に向かって右方向に移動させた場合の様子が示されている。この場合、エア室4内の圧縮エアは概ね矢印B方向に噴出する。したがって、噴出する圧縮エアは、搬送物に対し、矢印B方向が搬送プレート2の搬送面上に投影される方向、すなわち左方向へ推進力を提供する。
【0031】
図7では、可動プレート6を、図に向かって左方向に移動させた場合の様子が示されている。この場合、エア室4内の圧縮エアは概ね矢印C方向に噴出する。したがって、噴出する圧縮エアは、搬送物に対し、矢印C方向が搬送プレート2の搬送面上に投影される方向、すなわち右方向へ推進力を提供する。
【0032】
このようにして可動プレート6を移動させることにより、エア室4からの圧縮エアの噴出方向を、概ね搬送プレート2の搬送面上方のいずれの方向へも変化させ、搬送物に対し、搬送プレート2に沿ったいずれの方向への推進力をも提供することができる。
【0033】
固定孔8及び可動孔9は、例えば、搬送物が空缶である場合、直径2mmの円筒形のものとされ、X方向の配置間隔が12mm(ただし、端部では10mm)、Y方向の配置間隔が17mmとされる。
【0034】
なお、対応する固定孔8及び可動孔9の直径及び/又は形状は、異なっていてもよい。例えば、可動孔9は、切頭円錐形等の形状のものであってもよい。また、水平方向の断面形状が楕円形である固定孔8と、水平方向の断面形状が円形である可動孔9を採用することもできる。さらに、固定孔8の配置間隔と可動孔9の配置間隔とが異なっていてもよい。例えば、X方向に遠くなる位置にある固定孔8であるほど、その固定孔8に対する可動孔9のずれ量が大きくなるようにすると、搬送プレート2上の搬送物に提供される推進力の向きと大きさが、X方向の位置に応じて変化するようになる。
【0035】
図8は、前記取付手段7の構成を示す断面図である。図8に示すように、各取付手段7は、基端が固定プレート5の下面の対応箇所に突設された突出部材としてのスタッドボルト15と、可動プレート6を下面側から支持する支持部材としてのサポートプレート16とを備える。スタッドボルト15は、可動プレート6の対応箇所に設けられた貫通孔14を通って可動プレート6の下面から突出する。
【0036】
サポートプレート16は、幅広のU字形状を有し、U字形状の底部中央においてスタッドボルト15の下端部に固定され、U字形状の両上端により可動プレート6の下面を摺動自在に支持する。
【0037】
サポートプレート16の固定は、サポートプレート16の中央に設けられた貫通孔14にスタッドボルト15の下端部を通してスタッドボルト15にナット17を螺合させ、締結することにより行われる。スタッドボルト15の外側には、固定プレート5とサポートプレート16との間隔を規定するスペーサ18が設けられる。
【0038】
固定プレート5へのスタッドボルト15の固定は、固定プレート5に対し概ね垂直となるように、溶接等の一般的な結合手段を用いて行われる。このようにして固定された各スタッドボルト15に対してスペーサ18を嵌合し、可動プレート6の各貫通孔14を各スタッドボルト15に通して可動プレート6を固定プレート5に対向させ、そして各貫通孔14から突出した各スタッドボルト15にサポートプレート16をナット17で締結することにより、可動プレート6を固定プレート5に取り付けることができる。
【0039】
貫通孔14の直径S1は、スペーサ18の外径S2より大きく、その差S1−S2により許容される範囲内で、可動プレート6は固定プレート5に対して移動することができる。したがって、可動プレート6は、上述の固定孔8及び可動孔9の位置が一致する基準位置から任意の方向へ、(S1−S2)/2までの距離の範囲内で移動することができる。すなわち、可動プレート6の可動範囲は、基準位置を中心とする半径Rが(S1−S2)/2の円内の範囲である。
【0040】
例えば、貫通孔14の直径S1を11mmとし、スペーサ18の外径S2を6mmとすることができる。この場合、可動プレート6の可動範囲は、基準位置を中心とする半径2.5mmの円内の範囲である。固定孔8及び可動孔9が、直径2mmの円筒形であるとすれば、可動孔9が完全に固定孔8と重なって上方からエア噴出孔3が真円に見える基準位置から、固定孔8全体が可動プレート6で覆われる位置まで、移動させることができる。
【0041】
また、可動プレート6の厚さをH1、サポートプレート16のU字形状の底部までの深さをH2とすると、スペーサ18の長さLは、H1+H2より長く、その差L−(H1+H2)が、固定プレート5と可動プレート6との間の間隔S3となる。搬送プレート2は、全体にわたって間隔S3を概ね維持し、固定プレート5に対して可動プレート6が概ね平行となるように構成される。
【0042】
例えば、スペーサ18の長さを10.3mm、可動プレート6の厚さH1を5mm、サポートプレート16の深さH2を5mmとすることができる。この場合、固定プレート5と可動プレート6との間の間隔S3(=L−(H1+H2))は、0.3mmとなる。
【0043】
図9は、図1におけるY方向移動手段10部分の拡大図である。図9に示すように、Y方向移動手段10は、ピボットピン19により支点の周りで回動自在に支持され、X方向に延在する直線状レバー20と、軸線の周りに回転自在に支持された移動用シャフト21と、移動用シャフト21に螺合し、移動用シャフト21が回転されることにより、移動用シャフト21の軸線方向に移動する2つのドグ22とを備える。
【0044】
そして、Y方向移動手段10は、移動用シャフト21の回転によりドグ22が移動すると、ドグ22が直線状レバー20の一端に作用して直線状レバー20を揺動させ、これにより直線状レバー20の他端が可動プレート6に作用して可動プレート6を移動させるように構成される。
【0045】
移動用シャフト21には、ドグ22の内周に設けられたメネジと螺合するオネジが設けられている。移動用シャフト21は、エア室4の両側壁12(図1(b))間でY方向に延在するように、両側壁12上に設けられた取付板23を介し、両側壁12に対して回転自在に取り付けられる。
【0046】
直線状レバー20の一端には、カムフォロア24が設けられる。カムフォロア24は、移動用シャフト21に螺合する2つのドグ22の間に配置される。移動用シャフト21が回転されると、移動用シャフト21の軸方向にドグ22が移動し、それに従ってカムフォロア24が揺動し、直線状レバー20が回動するようになっている。
【0047】
直線状レバー20の支点を支持するピボットピン19は、エア室4の両側壁12間に固定された固定シャフト25により支持される。固定シャフト25は、移動用シャフト21に平行となるように、取付板23を介して両側壁12間に固定される。固定シャフト25には2つのプレート26が固定されており、その間にピボットピン19が配置される。
【0048】
直線状レバー20の他端には、カムフォロア27が設けられている。また、可動プレート6の下面には、一対の可動プレートベース28が固定されている。各可動プレートベース28は、それらの間でカムフォロア27を案内する。ここで、可動プレート6の長辺に沿った可動孔9の配列方向を第1方向とし、短辺に沿った可動孔9の配列方向を第2方向とすれば、カムフォロア27を案内する方向は、第1方向となる。
【0049】
なお、本実施形態においては、可動プレート6はX方向及びY方向に平行に移動し、可動孔9はX方向及びY方向に行列状に配置されていることを前提としているので、第1方向はX方向に一致し、第2方向はY方向に一致する。
【0050】
これにより、一対の可動プレートベース28は、直線状レバー20の他端が可動プレート6に対してX方向へ移動するのを許容し、他の方向へ移動するのを阻止する案内部材として機能する。これにより、後述のように、各Y方向移動手段10のカムフォロア27がピボットピン19を軸として揺動するとき、可動プレートベース28は、そのカムフォロア27の揺動を可動プレート6のY方向の移動となるように、可動プレート6に伝えることができる。
【0051】
図10は、図1におけるX方向移動手段11部分の拡大図である。X方向移動手段11は、Y方向移動手段10において、直線状レバー20に代えてL字状レバー29を採用し、可動プレートベース28に代えて、案内面がX方向に直交するように配置された可動プレートベース28を採用したものとなっている。他の構成については、Y方向移動手段10の場合と同様である。L字状レバー29は、カムフォロア24側の端部から支点まではX方向に沿って延在し、支点からカムフォロア27側の端部まではY方向に沿って延在する。
【0052】
なお、図4には、各Y方向移動手段10の可動プレートベース28の取付け位置30及びX方向移動手段11の可動プレートベース28の取付け位置31が示されている。
【0053】
図11は、可動プレート6の移動を説明するための説明図である。図11においては、可動プレート6を上方から見た場合における各Y方向移動手段10及びX方向移動手段11の主要な要素が示されている。
【0054】
各エア噴出孔3の固定孔8及び可動孔9の位置が一致している基準位置に可動プレート6が位置しているときに、各Y方向移動手段10の移動用シャフト21を回転させて、各Y方向移動手段10のドグ22を、矢印A1で示されるY方向のマイナス側に同じ量だけ移動させると、各Y方向移動手段10のカムフォロア24がドグ22に従って矢印A1方向に揺動する。
【0055】
これにより、各直線状レバー20がそのピボットピン19を軸として回動するので、カムフォロア27がカムフォロア24と反対のA2方向に揺動する。これにより、各Y方向移動手段10の可動プレートベース28がカムフォロア27によって、矢印A2で示されるY方向のプラス側に同じ量だけ押される。
【0056】
このとき、X方向移動手段11のカムフォロア27及び可動プレートベース28によって、可動プレート6のX方向への移動は阻止されている。したがって、可動プレート6は、プラスY方向に、移動用シャフト21の回転量に対応する距離だけ、平行移動する。
【0057】
同様にして、移動用シャフト21を逆方向に回転させることにより、その回転量に対応する距離だけ、可動プレート6を、Y方向のマイナス側に平行移動させることができる。
【0058】
一方、基準位置に可動プレート6が位置しているときに、X方向移動手段11の移動用シャフト21を回転させて、X方向移動手段11のドグ22を、矢印A3で示されるY方向のマイナス側に移動させると、X方向移動手段11のカムフォロア24がドグ22に従って矢印A3方向に揺動する。
【0059】
これにより、L字状レバー29がそのピボットピン19を軸として回動するので、カムフォロア27が、A3方向とほぼ直行するA4方向に揺動する。これにより、X方向移動手段11の可動プレートベース28がカムフォロア27により、矢印A4で示されるX方向のプラス側に押される。
【0060】
このとき、可動プレート6は、各Y方向移動手段10のカムフォロア27及び可動プレートベース28によって、Y方向への移動は阻止され、かつX方向にのみ移動し得るように案内されている。したがって、可動プレート6は、X方向のプラス側に、移動用シャフト21の回転量に対応する距離だけ、平行移動する。
【0061】
同様にして、X方向移動手段11の移動用シャフト21を逆方向に回転させることにより、その回転量に対応する距離だけ、可動プレート6を、X方向のマイナス側に平行移動させることができる。
【0062】
このように、Y方向移動手段10及びX方向移動手段11を適宜組み合わせて配置し、各移動用シャフト21を回転させることにより、取付手段7の貫通孔14及びスペーサ18の寸法によって決定される上述の可動範囲内において、可動プレート6を、自在に移動させることができる。
【0063】
なお、エアコンベア1は、エア室4のY方向両端が開放されているが、これは、他のエアコンベア1、又は一般のエアコンベアと連結させて使用できるようにするためである。エアコンベア1を、連結された複数のエアコンベアのうちの端部のものとして使用する場合には、そのエアコンベア1については、他のエアコンベアに隣接していない方の端部が適切な部材によって気密に閉塞される。これにより、各エアコンベアに共通の密封されたエア室が形成される。
【0064】
また、連結されたエアコンベア1のエア室4内を外部より高い気圧に維持するために、いずれかのエアコンベア1の側壁12又は底壁13(図1)に、圧縮空気を供給するための供給口が設けられる。この供給口に、圧縮機等からの配管が連結され、該供給口を介して圧縮機等から圧縮空気が供給される。なお、エアコンベア1により空缶を搬送する場合には、エア室内の気圧が、0.2〜0.6kPaGとされる。
【0065】
以上のように、本実施形態によれば、搬送プレート2を、固定プレート5と可動プレート6で構成し、エア噴出孔3を、固定孔8と可動孔9とで構成し、可動プレート6を固定プレート5の下面に沿って移動させることにより、各エア噴出孔3からの圧縮エアの噴出方向を変更できるようにしたため、可動プレート6を移動するだけで、搬送物の搬送方向を容易に変更することができる。
【0066】
また、可動プレート6の移動手段として、2つのY方向移動手段10及び1つのX方向移動手段11を設けたので、可動プレート6を任意の方向へ移動させ、搬送物の搬送方向を任意の方向に切り替えることができる。
【0067】
また、可動プレート6を取り付けるために、複数の取付手段7を適切な位置に配置することにより、可動プレート6を固定プレート5の下面に沿って移動可能に支持することができる。
【0068】
上記実施形態においては、1つのX軸方向移動手段11を中央に配置し、その両側に2つのY軸方向移動手段10を配置したが、本発明はこれに限定されない。X軸方向移動手段11及びY方向移動手段10の数及び配置は、エアコンベアのサイズ等に応じて適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0069】
1…エアコンベア、2…搬送プレート、3…エア噴出孔、5…固定プレート、6…可動プレート、7…取付手段、8…固定孔、9…可動孔、10…Y方向移動手段(第1可動プレート移動手段)、11…X方向移動手段(第2可動プレート移動手段)、14…貫通孔、15…スタッドボルト(突出部材)、16…サポートプレート(支持部材)、20…直線状レバー、21…移動用シャフト、22…ドグ(移動部材)、28…可動プレートベース(案内部材)、29…L字状レバー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエア噴出孔を有する搬送プレートの下面に圧縮エアを供給して該エア噴出孔から噴出させることにより、該搬送プレート上の搬送物を搬送するエアコンベアであって、
前記搬送プレートは、固定プレートと、該固定プレートの下面に沿って移動自在に設けられた可動プレートとで構成され、
前記複数のエア噴出孔は、前記固定プレートに設けた複数の固定孔と、前記可動プレートに設けた複数の可動孔とからなり、
前記可動プレートを前記固定プレートの下面に沿って移動させることにより、各エア噴出孔からの前記圧縮エアの噴出方向を変更する可動プレート移動手段を備えることを特徴とするエアコンベア。
【請求項2】
請求項1記載のエアコンベアにおいて、
前記可動プレート移動手段は、支点の周りに揺動自在に支持されたレバーと、軸線の周りに回転自在に支持されたシャフトと、前記シャフトに螺合し該シャフトの回転によって該シャフトの軸線方向に移動する移動部材とを備え、
前記シャフトの回転により前記移動部材が移動したとき、該移動部材が前記レバーの一端に作用して該レバーを回動させ、これにより該レバーの他端が前記可動プレートに作用して該可動プレートを移動させることを特徴とするエアコンベア。
【請求項3】
請求項2記載のエアコンベアにおいて、
前記可動プレート移動手段として、第1及び第2の可動プレート移動手段を備え、
第1可動プレート移動手段は、前記レバーの他端が前記可動プレートに対して決められた第1方向に移動するのを許容し他の方向への移動を阻止するように該可動プレートに固定された第1案内部材を備え、該第1案内部材には、前記レバーの他端から前記第1方向とは異なる方向への力が付与され、
第2可動プレート移動手段は、前記レバーの他端が前記可動プレートに対して決められた第2方向に移動するのを許容し他の方向への移動を阻止するように該可動プレートに固定された第2案内部材を備え、該第2案内部材には、前記レバーの他端から前記第2方向とは異なる方向への力を付与されることを特徴とするエアコンベア。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のエアコンベアにおいて、
前記可動プレートを前記固定プレートの下面に沿って移動自在に取り付けるために、前記固定プレートの下面の複数箇所に突設され、該複数箇所に対応する前記可動プレートの複数箇所に設けられた貫通孔を通って該可動プレートの下面に突出した複数の突出部材と、各突出部材の突出端に固定され、前記可動プレートをそれぞれ下面側から支持する複数の支持部材とを備え、
前記貫通孔は、前記各突出部材に対して前記可動プレートの移動方向に一定範囲の移動を許容する径を有することを特徴とするエアコンベア。
【請求項1】
複数のエア噴出孔を有する搬送プレートの下面に圧縮エアを供給して該エア噴出孔から噴出させることにより、該搬送プレート上の搬送物を搬送するエアコンベアであって、
前記搬送プレートは、固定プレートと、該固定プレートの下面に沿って移動自在に設けられた可動プレートとで構成され、
前記複数のエア噴出孔は、前記固定プレートに設けた複数の固定孔と、前記可動プレートに設けた複数の可動孔とからなり、
前記可動プレートを前記固定プレートの下面に沿って移動させることにより、各エア噴出孔からの前記圧縮エアの噴出方向を変更する可動プレート移動手段を備えることを特徴とするエアコンベア。
【請求項2】
請求項1記載のエアコンベアにおいて、
前記可動プレート移動手段は、支点の周りに揺動自在に支持されたレバーと、軸線の周りに回転自在に支持されたシャフトと、前記シャフトに螺合し該シャフトの回転によって該シャフトの軸線方向に移動する移動部材とを備え、
前記シャフトの回転により前記移動部材が移動したとき、該移動部材が前記レバーの一端に作用して該レバーを回動させ、これにより該レバーの他端が前記可動プレートに作用して該可動プレートを移動させることを特徴とするエアコンベア。
【請求項3】
請求項2記載のエアコンベアにおいて、
前記可動プレート移動手段として、第1及び第2の可動プレート移動手段を備え、
第1可動プレート移動手段は、前記レバーの他端が前記可動プレートに対して決められた第1方向に移動するのを許容し他の方向への移動を阻止するように該可動プレートに固定された第1案内部材を備え、該第1案内部材には、前記レバーの他端から前記第1方向とは異なる方向への力が付与され、
第2可動プレート移動手段は、前記レバーの他端が前記可動プレートに対して決められた第2方向に移動するのを許容し他の方向への移動を阻止するように該可動プレートに固定された第2案内部材を備え、該第2案内部材には、前記レバーの他端から前記第2方向とは異なる方向への力を付与されることを特徴とするエアコンベア。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のエアコンベアにおいて、
前記可動プレートを前記固定プレートの下面に沿って移動自在に取り付けるために、前記固定プレートの下面の複数箇所に突設され、該複数箇所に対応する前記可動プレートの複数箇所に設けられた貫通孔を通って該可動プレートの下面に突出した複数の突出部材と、各突出部材の突出端に固定され、前記可動プレートをそれぞれ下面側から支持する複数の支持部材とを備え、
前記貫通孔は、前記各突出部材に対して前記可動プレートの移動方向に一定範囲の移動を許容する径を有することを特徴とするエアコンベア。
【図1】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3】
【図4】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2013−28459(P2013−28459A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167405(P2011−167405)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(505252953)ディ・アイ・エンジニアリング株式会社 (4)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(505252953)ディ・アイ・エンジニアリング株式会社 (4)
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