説明

エアゾール原液、エアゾール組成物及びエアゾール剤

【課題】被塗面を良好に覆うことができる、氷結防止・解氷用エアゾール原液を提供する。
【解決手段】エアゾール原液を、液体と増粘剤とを含有するゲル状物とすると、エアゾールによる塗布に適した粘性を有し、塗布後は、被塗面において、成分が揮発することにより、被塗面を良好に覆うのに適した粘性を発現する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス、ドアミラー及び家屋の窓ガラス等の氷結防止や氷結した時の解氷に用いるエアゾール型氷結防止・解氷剤に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、氷結防止あるいは解氷剤は、水と溶剤から液剤として形成されている。このような氷結防止・解氷剤は、使用性を考慮して、ポンプ式や噴射剤を入れたエアゾール式が多く用いられている。しかしながら、水と溶剤からなる氷結防止・解氷剤は、粘度が低く、氷結防止剤として用いる場合、垂直なガラス面にスプレーすると、ガラス面から液剤が流れ落ちてしまっていた。このため、十分にガラス面を液剤で覆うことができず、氷結防止効果や解氷効果を得ることができなかった。また、自動車のフロントガラス等、自動車ワックス等の油膜が付着しているような箇所へ液剤をスプレーすると、油膜により粘度の低い液剤は、はじきを生じてガラス面を均一に覆うことができなかった。
【0003】一方、液剤の粘性を増加させるために増粘剤を添加したものもあるが、流れやはじきを抑制できるものの、噴射剤によってはスプレーできず、また、ポンプ式でもスプレー適性が劣り、解氷剤として用いる場合に、氷結した部分への浸透性が悪いという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、被塗面を良好に覆うことができる、エアゾール原液及び組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、被塗面を良好に覆うことができる、氷結防止または解氷用のエアゾール原液及び組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記した課題を解決するための手段として、本発明者らは、塗布前においては、エアゾールによる塗布に適した粘性を有し、塗布後は、被塗面において、成分が揮発することにより、被塗面を良好に覆うのに適した粘性を発現するようにしたエアゾール原液及び組成物を見出した。本発明は、液体と増粘剤とを含有するゲル状物である、エアゾール原液を提供する。さらに、本発明は、水と、凝固点降下可能な水溶性溶剤と、増粘剤、とを含有するゲル状物である、エアゾール原液を提供する。このようなエアゾール原液であれば、噴射剤と混合されることにより、容易にスプレー可能なエアゾール組成物が得られる。また、同時に、被塗面における、被覆性、浸透性等に優れるエアゾール組成物が得られる。
【0006】また、本発明は、液体と、増粘剤と、噴射剤、とを含有する、エアゾール組成物を提供する。また、本発明は、水と、凝固点降下可能な水溶性溶剤と、増粘剤と、噴射剤、とを含有する、エアゾール組成物を提供する。これらのエアゾール組成物によると、増粘剤を含有していても噴射剤により容易にスプレー塗布される一方、塗布後は、噴射剤が蒸発することにより、被塗面がゲル状物により良好に被覆される。
【0007】また、前記増粘剤が、ヒドロキシプロピルセルロース及び/又はカルボキシルビニルポリマーである、前記エアゾール原液を提供する。また、前記噴射剤が、ジメチルエーテル、ジメチルエーテルとLPGとの混合ガス、ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合ガス、及びジメチルエーテルとLPGと二酸化炭素との混合ガス、のいずれか1種類である、エアゾール組成物を提供する。
【0008】さらに、前記エアゾール組成物が、噴射ノズルとを備えた容器に充填されている、エアゾール剤を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明のエアゾール原液は、液体と増粘剤とを含有するゲル状物である。液体と増粘剤とを単に混合した状態においては、ゲル状物を形成しない場合もある。本発明においては、ゲル状物を形成していることが特徴である。
【0010】本発明における増粘剤としては、ゲル状物を形成できれば限定しない。具体的には、カルボキシビニルポリマー等のポリアクリル酸及びその塩類、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース類及びその塩類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンのようなポリビニル類、キタンサンガム等の高分子多糖類、シリカ粉のような金属酸化物類、アルミニウムの有機酸塩、有機ベントナイト、樹脂微粒子等を挙げることができる。好ましくは、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロースである。エアゾール原液を氷結防止用あるいは解氷用として使用する場合には、増粘剤は、−5℃以下の温度で氷結しない皮膜を形成できるようなものが好ましい。より好ましくは、−25℃以下の温度で氷結しない皮膜を形成できるものが好ましい。好ましくは、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0011】増粘剤の配合割合は、特に限定しないが、ゲル状物の粘度範囲が、500〜50000mPa・Sになるように配合されていることが好ましい。粘度が500mPa・s未満になると、垂直な被塗面へスプレーした場合や、油膜の付着した被塗面にスプレーした場合に、流れやはじきを生じ、氷結防止効果を十分に発揮できない。また、50000mPa・sを越えると、エアゾール容器等への充填が困難になり、また、スプレー適性が得られるまで噴射剤を添加する際に、噴射剤の配合量が多くなり、被塗物に残存する氷結防止・解氷剤の量が少なくなるからである。より好ましくは、粘度が2000mPa・s以上10000mPa・s以下である。なお、粘度は、JISK5400回転粘度計法により測定できる。
【0012】本発明のエアゾール原液には、液体として、各種含むことができる。増粘剤とゲル状物を形成できれば限定しないが、好ましくは、水、あるいは、水を含む溶媒である。
【0013】本発明のエアゾール原液には、その用途に応じて必要な原料が添加される。氷結防止あるいは解氷剤用として用いられる場合には、液体として、水と溶剤が添加される。ここで溶剤は、水の凝固点降下作用を有する水溶性溶剤が好ましい。例えば、かかる水溶性溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール類、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類、ブチルセロソルブ等を挙げることができる。好ましくは、エチレングリコール、イソプロピルアルコール等である。水溶性溶剤は、1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。氷結防止又は解氷用の場合、原液における配合割合は、水が10〜70重量%、水溶性溶剤が30〜90重量%、の範囲であることが好ましい。
【0014】洗浄用に用いられる場合には、界面活性剤等が添加される。また、油膜取り用に用いられる場合には、研磨材等が添加される。さらに、必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、香料等がエアゾール原液に添加される。
【0015】本発明のゲル状物であるエアゾール原液に、噴射剤を配合することにより、エアゾール組成物となる。噴射剤としては、ジメチルエーテルが好ましい。ジメチルエーテルのみを用いることも好ましいが、ジメチルエーテルに炭酸ガス及びLPGのうち、いずれか1種類あるいは2種類以上を組み合わせて使用するのも好ましい。また、低温時の噴射圧力低下を防止するために、上記噴射剤と炭酸ガスを併用することが好ましい。
【0016】噴射剤の配合割合は、エアゾール原液に対して10容量%以上90容量%以下であることが好ましい。より好ましくは、20容量%以上60容量%以下である。
【0017】なお、エアゾール組成物には、ほかに公知の防錆剤、香料等の従来公知の各種添加剤を、スプレー適性及びエアゾールの用途をさまたげない範囲で添加することができる。
【0018】このようなエアゾール組成物を、各種噴射ノズルを備えた容器に充填することにより、エアゾール剤を得ることができる。すなわち、本発明は、ゲル状のエアゾール原液に、噴射剤を配合して得たエアゾール組成物を、噴射ノズルを備えた容器に充填する、エアゾール剤の製造方法でもある。このエアゾール剤によれば、充填物のスプレー適性も得ることができるとともに、被塗面における被覆性も良好となっている。スプレー適性は、ゲル状物であるエアゾール原液と噴射剤とが混合されることにより、低粘性となることにより得られる。また、被塗面の被覆性は、被塗面において噴射物中の噴射剤が蒸発して粘性を発揮することにより得られる。
【0019】特に、本エアゾール剤が、氷結防止用あるいは解氷用のエアゾール剤である場合には、被塗面において、噴射されたエアゾール組成物が噴射剤の蒸発により粘性を発揮することにより良好に被塗面を覆うことができて氷結防止および解氷効果を発揮できる。また、噴射剤の圧力により、エアゾール組成物が氷結物中によく付着し、凝固点降下作用のある溶剤が被塗面上の氷結物に浸透しやすく、浸透により徐々に凝固点降下作用のある溶剤が浸出され有効に解氷効果を発揮する。また、スプレー塗布されるため、広い面積を容易に処理することができ、噴射物は被塗面が垂直状であるか曲面状であるか等を問わずに良好に被塗面を被覆できるので、好ましい。
【0020】
【実施例】(実施例1)以下の配合で各原料をディスパーで分散させ、完全なゲル状物を調製してエアゾール原液を得た。エチレングリコール及びイソプロピルアルコールは、凝固点降下作用のある溶剤である。ゲル状物の粘度は、JISK5400回転粘度計法で測定したところ、2500mPa・sであった。
配合例1(単位重量%)
精製水 35.0エチレングリコール 14.5イソプロピルアルコール 50.0ヒドロキシプロピルセルロース 0.5
【0021】得られたエアゾール原液を、容量が100mlのエアゾール用容器に80ml充填し、ジメチルエーテルガスを20ml充填し封をしてエアゾール剤を得た。このエアゾール剤を、平坦で垂直なガラス面にスプレーしても流れを生じることなく、均一な氷結防止膜を形成することができた。また形成された氷結防止膜は、−25℃の恒温槽中に16時間放置したところ、氷結することはなかった。
【0022】(実施例2)以下の配合で各原料をディスパーで分散させ、完全なゲル状物を調製してエアゾール原液を得た。ゲル状物の粘度は、JISK5400回転粘度計法で測定したところ、3500mPa・sであった。
配合例2(単位重量%)
精製水 44.6エチレングリコール 4.9イソプロピルアルコール 49.6カルボキシビニルポリマー 0.2トリエチルアミン 0.6
【0023】得られたエアゾール原液を、容量が100mlのエアゾール用容器に70ml充填し、ジメチルエーテルガスを30ml充填し封をしてエアゾール剤を得た。このエアゾール剤を、平坦で垂直なガラス面にスプレーしても流れを生じることなく、均一な氷結防止膜を形成することができた。また形成された氷結防止膜は、−25℃の恒温槽中に16時間放置したところ、氷結することはなかった。
【0024】
【発明の効果】本発明のエアゾール原液、エアゾール組成物、エアゾール剤によれば、被塗面の良好な被覆性を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】液体と増粘剤とを含有するゲル状物である、エアゾール原液。
【請求項2】水と、凝固点降下可能な水溶性溶剤と、増粘剤、とを含有するゲル状物である、エアゾール原液。
【請求項3】液体と、増粘剤と、噴射剤、とを含有する、エアゾール組成物。
【請求項4】水と、凝固点降下可能な水溶性溶剤と、増粘剤と、噴射剤、とを含有する、エアゾール組成物。
【請求項5】前記増粘剤が、ヒドロキシプロピルセルロース及び/又はカルボキシルビニルポリマーである、請求項1又は2記載のエアゾール原液。
【請求項6】前記噴射剤が、ジメチルエーテル、ジメチルエーテルとLPGとの混合ガス、ジメチルエーテルと二酸化炭素との混合ガス、及びジメチルエーテルとLPGと二酸化炭素との混合ガス、のいずれか1種類である、請求項3または4記載のエアゾール組成物。
【請求項7】請求項3、4、及び6のいずれかに記載のエアゾール組成物が、噴射ノズルとを備えた容器に充填されている、エアゾール剤。