説明

エアフィルタ取付機構

【課題】ボルトに固定具を取り付けるときに、ボルトが傾くのを防止するとともに、固定具が不意に落下するのを防止する。
【解決手段】ケーシング11の内周面11Aに、ボルト受け部30を固定する。ボルト受け部30は、ボルト40が固定される固定片31と、固定片31の前面側に対向して設けられ、ボルト40の軸部41が通される貫通穴33Hを有する規制片33を有する。ボルト40の軸部41に、さらに固定具20を取り付ける。固定具20は、軸部41が通され、フィルタ枠13を押さえつける押さえ片21と、軸部が通され、押さえ片21の背面側に対向して設けられる対向片23と、対向片23と押さえ片21を接続する接続片22とを備える。対向片23は、規制片33と固定片31の間に配置されるとともに、押さえ片21は規制片33の前面側に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアフィルタユニットを天井等に設けられたケーシング内部に取り付けるためのエアフィルタ取付機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井面等に設けられたケーシング内部にエアフィルタユニットを取り付けるために、ケーシング側に設けられたボルト受け部と、ボルト受け部に固定されたボルトと、ボルトに取り付けられる固定金具とから構成される取付機構が使用される。この種の取付機構における固定金具は、フィルタ枠の前面を押さえつけて、フィルタユニットをケーシングに固定させる。
【0003】
固定金具は例えば、一端側でエアフィルタ枠の前面を押さえつけるとともに、他端側がフィルタ枠外周面よりも外側に配置される押さえ片と、押さえ片の他端側に対向して設けられる対向片と、対向片と押さえ片を接続する接続片とが一体となって構成される(特許文献1参照)。この固定金具では、押さえ片の他端側及び対向片の互いに一致する位置にボルト穴が形成される。そして、ボルト受け部に固定されたボルトに、押さえ片及び対向片のボルト穴が通された後、さらにボルトにナットが螺合されて、ナットの締め付け力によって、押さえ片がフィルタ枠を押さえつけることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−95811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、フィルタ固定のためにナットの締め付けが行われると、その締め付けが進むにつれて、押さえ片の他端側が上方(背面側)に浮き上がり、それと共にボルトの下端側が外側に向けて傾くことがある。ボルトが傾くと、固定金具による押さえ力を十分に大きくすることができず、また、ボルトの下端部が例えばケーシング内周面に近づき、ナットの締付が十分に行えない場合がある。特許文献1の構成では、固定金具に接続片が設けられるため、ボルトの傾きはある程度軽減されるが、十分に抑制されるわけではない。
【0006】
また、フィルタを取り付け又は取り外す際、固定金具の下方にナットが螺合されていないと、固定金具を支持する部材がなくなるため、固定金具が不意に落下してしまうおそれもある。
【0007】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、フィルタ取り付け時のボルト傾きを抑制し、さらにはフィルタ取り付け・取外し時に、固定金具が、不意に落下することを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエアフィルタ取付機構は、エアフィルタユニットを、前方側が開口するケーシング内部に取り付けるためのエアフィルタ取付機構であって、前後方向に延在する棒状部材と、ケーシングの内周面に固定されるとともに、棒状部材が取り付けられるための保持部材と、棒状部材に装着され、エアフィルタユニットをケーシング内部に取り付けるための固定具とを備える。
【0009】
本発明においては、保持部材が、貫通穴を有する固定片と、固定片の前方側に対向して設けられるとともに、固定片の貫通穴に対応するように位置する貫通穴を有する規制片と、固定片と規制片とを接続する第1の接続片を備え、棒状部材が、固定片及び規制片の貫通穴を通されて固定片に固定されており、かつ固定具が、規制片の前方側に配置されてエアフィルタユニットを前方側から押さえ付ける押さえ片を備えることを特徴とする。
【0010】
固定具がさらに、押さえ片の後方側に対向して設けられる対向片と、対向片と押さえ片を接続する第2の接続片とを備え、これら押さえ片及び対向片それぞれは、互いに対応する位置に棒状部材が通される貫通穴を有していることが好ましい。この場合、対向片は、規制片と固定片の間に配置される。
【0011】
押さえ片は例えば、第1の方向における一端側がフィルタユニットの前面を押さえつけるとともに、他端側がフィルタユニットの外周面よりも外側に配置されている。第2の接続片は例えば、外周面よりも外側に配置されるとともに、第1の方向に直交する第2の方向において、棒状部材を間に挟みつつ、第1の接続片に対向する。
【0012】
保持部材の第1の接続片は、例えばケーシングの内周面に略垂直に配置される。また、保持部材は、ケーシングの内周面に沿うように配置されて、内周面に固定される取付片を備えていても良い。取付片は、第1の接続片に略垂直に連設されている。固定片及び規制片それぞれは、ケーシングの内周面に対向する端面をそれぞれ備える場合、固定片における端面と貫通穴の距離は、規制片における端面と貫通穴の距離より長くなっていることが好ましい。固定片及び規制片の貫通穴は例えば、丸孔又は切り欠きである。
【0013】
例えば棒状部材がボルトの軸部である場合、ボルトは、固定片の後方側に配置される頭部を有するとともに、固定片の前方側に螺合された第1のナットによって固定片に固定される。また、軸部が押さえ片に設けられた貫通穴に通されるとともに、ボルトの押さえ片の前方側に第2のナットが螺合されており、押さえ片が、第2のナットによる押圧力によって、エアフィルタユニットを前方側から押さえ付けていても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、固定具が装着されるボルト等の棒状部材が、規制片及び固定片の貫通穴に通されて配置されるため、固定具取り付け時の棒状部材の傾きが抑制される。また、固定具に設けられた対向片が、規制片と固定片の間に配置されることにより、フィルタ取り付け時や取り外し時に、固定具が不意に落下することも防止される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】エアフィルタ装置の斜視図である。
【図2】エアフィルタ取付機構の概略を示す側面図である。
【図3】固定具を示す斜視図である。
【図4】第1の実施形態において、ケーシングに取り付けられたボルト受け部を示す斜視図である。
【図5】第1の実施形態に係るボルト受け部を示す上面図である。
【図6】第1の実施形態に係るエアフィルタ取付機構を示す斜視図である。
【図7】第1の実施形態に係るエアフィルタ取付機構を示す正面図である。
【図8】第2の実施形態に係るボルト受け部と、ボルト受け部に取り付けられる前のボルト及び固定具を示す斜視図である。
【図9】第2の実施形態に係るボルト受け部を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係るエアフィルタの取付構造を説明する。図1は、エアフィルタ装置を示す斜視図である。エアフィルタ装置10は、ケーシング11と、エアフィルタユニット27を備える。エアフィルタユニット27は、その前後方向(上下方向)に開口されたフィルタ枠13と、フィルタ枠13の内部に収納される濾材14と、濾材14を保護するためのフェイスガード15、15とを備える。ケーシング11は、下面側(前方側)が開口された四角形の箱状に形成される。
【0017】
フィルタ枠13は、対向して設けられる第1及び第2の枠板13A、13Bと、対向して設けられかつ第1及び第2の枠板13A、13Bの端部を接続する第3及び第4の枠板13C、13Dによって四角枠状に形成される。濾材14は、平面状の濾材シートがジグザグ状に折り畳まれて略直方体に形成され、その外周面がフィルタ枠13の内周面に接着されて、フィルタ枠13の内部に装着されている。フェイスガード15、15は、金属板に多数のパンチング穴が穿設されて形成される。フェイスガード15、15は、フィルタ枠13の内部において、濾材14の下面及び上面に配置されて、濾材14を保護する。
【0018】
エアフィルタユニット27は、ケーシング11の前方側の開口11Cからケーシング11の内部に収納される。エアフィルタユニット27は、固定具20によってフィルタ枠13の前面16側が押さえ付けられることにより、ケーシング11の内部に取り付けられる。本実施形態では、固定具20は、フィルタ枠13の第1〜第4の枠板13A〜13Dの前面(下面)それぞれに当接するように4つ設けられているが、第1〜第4の枠板13A〜13Dのうち、少なくとも対向する2つの枠板の前面に当接するように設けられれば良い。また、4つ以上の固定具20が設けられていても良い。
【0019】
図2に示すように、ケーシング11の底面11Dには、フィルタ枠13の背面(上面)17上に配置される四角形枠状のフィルタ取付枠19が設けられる。フィルタ枠13の背面17とフィルタ枠取付枠19の間には、フィルタ枠13の全周にわたって設けられたガスケット18が配置され、フィルタ枠13はガスケット18を介してフィルタ取付枠19に接続される。
【0020】
固定具20は、フィルタ枠13を前面16側から押さえ付けることにより、フィルタ取付枠(取付部)19と共にフィルタ枠13を挟み込んで、フィルタ枠13をケーシング11に取り付ける。ガスケット18はフィルタ取付枠19とフィルタ枠13によって上下から挟圧され、これによりフィルタ枠13の背面17はフィルタ取付枠19(すなわち、ケーシング11の底面11A)に気密性をもって接続される。
【0021】
本実施形態に係るフィルタ取付機構は、固定具20に加えて、固定具20が取り付けられるためのボルト40と、ボルト40をケーシング11側に固定するためのボルト受け部(保持部材)30とをさらに備える。
【0022】
ボルト受け部30は、ケーシング11内部であって、ケーシング11の内周面11Aと、フィルタ枠13の外周面13Aの間の隙間に配置される。なお、内周面11Aと外周面13Aは互いに略平行である。ボルト受け部30は、各固定具20に対応して複数設けられ、それぞれケーシング11の内周面11Aに固定される。ボルト40の軸部41は、外周にネジ溝が切られるとともに、ケーシング11の前後方向(すなわち、上下方向)に平行に延在する。軸部41は、ボルト受け部30に形成された2つのボルト穴(貫通穴)31H、33Hに通されるとともに、ナット43によってボルト受け部30に固定される。
【0023】
固定具20は、2つのボルト穴(貫通穴)21H、23Hを有しており、それらボルト穴21H、23H内部にボルト40の軸部41が通されて、ボルト40に装着される。軸部41において、固定具20の前面側には、ばね座金46が挿入され、そのさらに前面側にナット44が螺合される。固定具20は、ボルト40に螺合されて締め付けられるナット44によって、ばね座金46を介して後方(上方)に向けて押圧される。固定具20はナット44の押圧力によって、フィルタ枠13を背面側に押さえつける。
【0024】
次に図3を用いて本実施形態に係る固定具についてさらに詳細に説明する。固定具20は、押さえ片21と、押さえ片21に対向して設けられる対向片23と、これらを接続する接続片22を備える。押さえ片21は、細長の略矩形の板状に形成され、その長手方向における一端21Aは上方から見ると円弧状に形成され、他端21Bは両側が面取りされた形状を呈している。押さえ片21は、その長手方向における中央位置Cより他端部21Bにボルト穴21Hが穿設される。
【0025】
押さえ片21の幅方向における両端部、すなわち両側端部21C、21Dそれぞれには、押さえ片21の一方の面21Xに垂直に第1及び第2のリブ24、25が連設される。第1及び第2のリブ24、25は、押さえ片21の両側端部21C、21Dが折り曲げられた形状を呈する。押さえ片21は、これらリブ24、25を介してフィルタ枠を押さえつける。
【0026】
接続片22は、第1のリブ24の先端面(すなわち、側端部21C)から、上方に向って細長の略矩形状に延出するものであって、第1のリブ24と同一平面上に配置された板状の部材である。すなわち、接続片22は、第1のリブ24と共に、押さえ片21から折り曲げられた形状を呈する。押さえ片21の長手方向において、接続片22の長さは、押さえ片21よりも短く、接続片22は、中心位置Cより他端部21B側に配置される。そのため、押さえ片21の長手方向において、接続片22は、貫通穴21Hと一致する位置に配置される。
【0027】
接続片22の先端(接続片22の長手方向における一端)には、板状の対向片23が垂直に連設される。対向片23は、接続片22の先端が折り曲げられた形状を呈し、押さえ片21の中央位置Cよりも他端21B側の部分に対向する。これにより、押さえ片21、接続片22、及び対向片23は一体となって、断面コの字を呈する。対向片23には、ボルト穴23Hが穿設されており、ボルト穴21H、23Hは互いに一致した位置に配置される。
【0028】
次に、図4、5を用いてボルト受け部の構造について詳細に説明する。なお、以下の説明においては、ケーシング11の内周面11A、及び上下方向に垂直な方向をX方向、上下方向(例えば、鉛直方向)をY方向、これらX、Y方向に垂直であって、内周面11Aに平行である方向をZ方向として便宜的に説明する。
【0029】
ボルト受け部30は、互いに対向する固定片31及び規制片33と、これら固定片31と規制片33とを接続する接続片32によって一体的にコの字に形成され、さらに接続片32に一体的に連設された取付片34によってケーシング11に取り付けられる。
【0030】
接続片32は、略矩形の板状に形成され、その長手方向における両端それぞれにおいて、板状の固定片31及び規制片33それぞれが、接続片32の一方の面32X側に垂直に連設される。また、接続片32の幅方向における両端32A、32Bのうち一端32Aには、板状の取付片34が、接続片32の反対面32Y側に垂直に連設される。すなわち、接続片32は、長手方向における両端が、一方の面32X側に折り曲げられた形状を呈して、固定片31及び規制片33が設けられる。また、幅方向における一端32Aが、反対面32Y側に折り曲げられた形状を呈して、取付片34が設けられる。
【0031】
固定片31及び規制片33は、互いに略平行であるとともに、それぞれ一致した位置にボルト穴31H、33Hが穿設される。固定片31及び規制片33は、略方形又は矩形を呈するとともに、それぞれの一方の側端面31B、33B(X方向における端面)がケーシング11の内周面11Aに対向するとともに、他方の側端面31C、33Cがフィルタ枠13の外周面13A(図2参照)に対向する。
【0032】
取付片34は、その長手方向における長さが、接続片32と略同一である略矩形の板状部材であって、2つの孔34H、34Hが穿設される。取付片34は、ケーシング11の内周面11Aに沿って配置され、孔34H、34Hに通されたリベット(不図示)等によって、ケーシング11に固定される。これにより接続片32は、Z方向、すなわち内周面11Aに略垂直に配置され、その幅方向がX方向に、長手方向がY方向に沿って配置される。また、固定片31及び規制片33は、Y方向に略垂直に配置される。
【0033】
図3〜5から明らかなように、ボルト穴21H、23H、31H、33Hは、孔周縁全体が閉じた丸孔であって、その直径はボルト40の軸部41外径よりわずかに大きい。また、固定具20及びボルト受け部30は、1枚の金属板が折り曲げ加工されて成形された金具であるが、折り曲げ加工以外の方法で作製されても良い。
【0034】
なお、固定片31及び規制片33において、先端面31A(33A)と、両側端面31B、31C(33B、33C)との接続部分は、面取りされている。ここで、規制片33において、先端面33Aと、一方の側端面33B(一端32A側の側端面)の接続部分は、ボルト穴33Hに同心的な円弧面33Eで面取りされるが、その他の接続部分は平面31D、33Dで面取りされる。
【0035】
次に、ボルト受け部30にボルト40及び固定具20が取り付けられる構成について図6、7を用いて詳細に説明する。本実施形態では、ケーシング11に取り付けられたボルト受け部30にボルト40が取り付けられ、それとともにボルト40に固定具20が取り付けられ、フィルタ枠がケーシング11に固定される。
【0036】
具体的には、対向片23が、固定片31及び規制片33の間に置かれるように、固定具20が配置される。すなわち前方側(下側)から、押さえ片21、規制片33、対向片23、及び固定片31がこの順で並べられる。そして、略一致した位置に配置されたボルト穴21H、33H、23H、31Hにボルト40の軸部41が通されつつ、ボルト40の軸部41に固定片31の前面側からナット43が螺合される。ボルト40の頭部42は固定片31の背面上に配置させられ、頭部42とナット43によって固定片31が挟み込まれ、ボルト40が固定片31、すなわちボルト受け部30に固定される。
【0037】
次いで、ボルト40の軸部41に、押さえ片21の前方側からばね座金46が挿入され、さらにナット44が螺合される。ナット44は締め付けられることにより、ばね座金46を介して、後方側に向けて固定具20、すなわち押さえ片21を押圧する。このように押圧された押さえ片21は、フィルタ枠16を押さえつけ、エアフィルタユニットをケーシング内に固定させる。
【0038】
このとき、対向片23及び押さえ片21は、Y方向に略垂直に配置されて、固定片31及び規制片33に対して略平行になるとともに、押さえ片21の長手方向は、X方向に沿って配置される。押さえ片21は、その長手方向における一端21A側がフィルタ枠13の前面16を押さえつけるとともに、他端21B側がフィルタ枠13の外周面よりも外側に配置される。
【0039】
接続片22は、フィルタ枠の外周面よりも外側において、Z方向に略垂直に配置され、Z方向において、ボルト40の軸部41を間に挟んで、ボルト受け部30の接続片32に対向する。そして、規制片33の先端面33Aは、接続片22の内周面に近接して対向する。
【0040】
本実施形態では、ボルト40の軸部41は、ボルト受け部30の固定片31のボルト穴31Hに加えて、規制片33のボルト穴33Hにも通されている。したがって、ボルト40がナット44締付時に固定片31を支点にフィルタ枠13の外周面13Aに対して外側に傾こうとすると、ボルト40の軸部41はボルト穴31H、33Hの内周縁部に係止され、これにより、ボルト40の傾きが抑制される。
【0041】
また、ボルト40はボルト受け部30にナット43により固定されるので、ボルト受け部30から容易に取り外し可能である。そのため、例えば、フィルタの種類に応じてボルト40を交換することが可能である。さらに、例えばボルト受け部塗装時等、ボルト40を取り外すことにより、ボルト溝への塗料の目詰まり等を防止するためにボルト40をマスキング等する必要もなくなる。また、ボルトを溶接等によってボルト受け部に固定させる必要もないので、ボルトのボルト受け部への取り付けが容易になる。
【0042】
さらに、軸部41には、規制片33の上方(後方)に、固定具20の対向片23が通されている。そのため、ナット44がボルト40の軸部41に螺合されていない状態において、固定具20が自由落下しても、固定具20の対向片23が規制片33に引っ掛かり、固定具20がボルト40から不意に離脱することが防止される。すなわち本実施形態では、フィルタの取り付け又は取り外し時等において、固定具20が不意にボルト40から外れて落下することはない。
【0043】
なお、ナット44が締められていない状態において固定具20は、軸部41を中心に回動可能である。このような回動は、接続片22が規制片33に係止されることにより所定角度範囲内においてのみ可能となる。
【0044】
具体的には、図6、7の状態(押さえ片21の長手方向がX方向に平行にされた状態)から、固定具20が反時計回りに回転されると、規制片33の先端面33Aが接続片22の内周面に係止し、固定具20の反時計回りの回転が規制される(図5の一点鎖線の状態)。また、固定具20が、図6、7の状態から時計回りに約90°回転した状態では、規制片33の側端面33Bが接続片22の内周面に係止し、時計回りの回転が規制される(図5の二点鎖線の状態)。
【0045】
なお、本実施形態では、固定具20が図6、7の状態から時計回り回転させられると、固定具20によって、エアフィルタユニットのケーシング11内への出し入れが邪魔されることはない。したがって、固定具20をボルト40から取り外さなくても、エアフィルタユニットの取り付け及び取り外しを実施することが可能である。
【0046】
また、X方向において、規制片33の側端面33Bと、ボルト穴33Hの距離は、固定片31の側端面31Bとボルト穴31Hの距離よりも短くなっている。そのため、ケーシング11の内周面11Aと規制片33との間には、相対的に大きな隙間が設けられる。また上記したように、内周面11Aに対向する側端面33Bと先端面33Aの接続部分は、固定具20の回転軌道に沿う円弧面33Eである。したがって、図6、7の状態から時計回りに固定具20を回転しやすくなる。
【0047】
一方、固定片31では、ボルト穴31Hと、側端面31Bとの距離が相対的に長く取られるので、ボルトの頭部42やナット43が接触する固定片31の面積を大きくでき、ボルト40を固定片31に安定的に固定させやすくなる。なお、X方向において、固定片31のボルト穴31Hと、側端面31Cの距離は、規制片33のボルト穴33Hと側端面33Cの距離に略等しい。
【0048】
図8、9は、本発明の第2の実施形態に係るフィルタ取付機構を示す。第1の実施形態では、ボルト受け部30に設けられたボルト穴は丸孔であったが、本実施形態では切り欠きである。以下第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点について説明する。
【0049】
本実施形態では固定片31及び規制片33には、先端面31A、33A側から切り欠き61、63が形成される。すなわち、固定片31は、接続片32に垂直に連設されるベース61Xと、ベース61XからZ方向に延出する2つの舌部61Y、61Zとから構成され、これら舌部61Y、61Z間に切り欠き61が配置される。切り欠き61は、対称軸がZ方向に平行な半円を呈する底部61Aと、舌部61X、61Zそれぞれで構成され、底部61Aの両端それぞれから先端面31Aに向かって、Z方向に沿って延出する側部61B、61Cによって構成される。
【0050】
一方、規制片33の切り欠き63は、切り欠き61と同様に、対称軸がZ方向に平行な半円を呈する底部63Aと、その底部63Aの一端からZ方向に延出する側部63Cが設けられるが、底部63Aの他端から延出する側部は設けられない。すなわち、規制片33は、接続片32に垂直に連設されるベース63Xと、そのベース63XからZ方向に延出する舌部63Y、63Zが設けられるが、一方の舌部63Yは他方の舌部63Zより短くなる。なお、長さが短い一方の舌部63Yは、一端32A側に配置されて、内周面11Aに対向する側端面33Bを構成する。また、他方の舌部63Zは、他端32B側に配置されて、外周面13A(図2参照)に対向する側端面33Cを構成する。底部61A、63Aの直径は、ボルト40の外径よりわずかに大きく、ボルト40は底部61A、63Aの内周縁部に沿うように配置される。
【0051】
本実施形態においても第1の実施形態と同様に、固定片31(舌部61Z)、及び規制片33(舌部63Y)によって、ボルト40の傾きが抑制されるとともに、規制片33によって、固定具20が不意に下方に落下することが防止される。また、接続片22の内周面が、規制片33の側端面33B、又は舌部63Zの先端部(すなわち、規制片33の先端面33A)に係止されることにより、固定具20の軸部41周りの回動が、第1の実施形態と同様に規制される。
【0052】
なお第1の実施形態と同様に、X方向において、側端面33Bと、ボルト穴(切り欠き63)間の距離は、側端面31Bと切り欠き61の距離よりも短い。すなわち、規制片33において、舌部63Yの幅及び長さは共に、固定片31の舌部61Yの幅及び長さよりも短くされる。一方、舌部63Zの幅及び長さは、固定片31の舌部61Zと略同一である。
【0053】
このように、舌部63Yの長さや幅を短くすることにより、固定具20の時計回りの回転が、舌部63Yによって阻害されなくなるとともに、舌部63Yの長さを短くすることにより、舌部63Yが使用中等に破損することが防止される。一方、固定片31において、舌部61Yの幅及び長さは共に大きく、固定片31と、ボルトの頭部42及びナット43との接触面積が大きくなる。そのため、固定片31にボルト40は安定的に固定させることが可能である。
【0054】
さらに、第1の実施形態では、ボルト40は、固定片31の上面側から、ボルト穴に通す必要があったが、本実施形態では、ボルト穴が切り欠きであるため、ボルト40は先端面31A,33A側からボルト穴に挿入させることが可能である。したがって、図8に示すように、ボルト40にナット43を螺合させかつ固定具20を通した状態で、ボルト40をZ方向に移動させることにより、先端面31A、33A側からボルト40を、切り欠き(ボルト穴)に挿入させることが可能である。これにより、第1の実施形態に比べて、ボルト受け部にボルト及び固定具を取り付けやすくなる。
【符号の説明】
【0055】
10 エアフィルタ装置
11 ケーシング
13 フィルタ枠
14 濾材
20 固定具
21 押さえ片
22 接続片(第2の接続片)
23 対向片
27 エアフィルタユニット
30 ボルト受け部
31 固定片
32 接続片(第1の接続片)
33 規制片
40 ボルト
41 軸部(棒状部材)
42 頭部
43、44 ナット(第1及び第2のナット)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアフィルタユニットを、前方側が開口するケーシング内部に取り付けるためのエアフィルタ取付機構であって、
前後方向に延在する棒状部材と、前記ケーシングの内周面に固定されるとともに、前記棒状部材が取り付けられるための保持部材と、前記棒状部材に装着され、前記エアフィルタユニットを前記ケーシング内部に取り付けるための固定具とを備え、
前記保持部材は、貫通穴を有する固定片と、前記固定片の前方側に対向して設けられるとともに、前記固定片の貫通穴に対応するように位置する貫通穴を有する規制片と、前記固定片と前記規制片とを接続する第1の接続片を備え、
前記棒状部材は、前記固定片及び規制片の貫通穴を通されて前記固定片に固定されており、
前記固定具は、前記規制片の前方側に配置されて前記エアフィルタユニットを前方側から押さえ付ける押さえ片を備えることを特徴とするエアフィルタ取付機構。
【請求項2】
前記固定具がさらに、前記押さえ片の後方側に対向して設けられる対向片と、前記対向片と前記押さえ片を接続する第2の接続片とを備え、
前記押さえ片及び対向片それぞれは、互いに対応する位置に前記棒状部材が通される貫通穴を有しており、
前記対向片が、前記規制片と前記固定片の間に配置されることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ取付機構。
【請求項3】
前記押さえ片は、第1の方向における一端側が前記フィルタユニットの前面を押さえつけるとともに、他端側が前記フィルタユニットの外周面よりも外側に配置され、
前記第2の接続片は、前記外周面よりも外側に配置されるとともに、前記第1の方向に直交する第2の方向において、前記棒状部材を間に挟みつつ、前記第1の接続片に対向することを特徴とする請求項2に記載のエアフィルタ取付機構。
【請求項4】
前記第1の接続片は、前記ケーシングの内周面に略垂直に配置されることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ取付機構。
【請求項5】
前記保持部材は、前記ケーシングの内周面に沿うように配置されて、前記内周面に固定される取付片を備え、前記取付片は、前記第1の接続片に略垂直に連設されることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ取付機構。
【請求項6】
前記固定片及び規制片それぞれは、前記ケーシングの内周面に対向する端面をそれぞれ備え、
前記固定片における前記端面と貫通穴の距離は、前記規制片における前記端面と貫通穴の距離より長くなっていることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ取付機構。
【請求項7】
前記固定片及び規制片の貫通穴は、丸孔又は切り欠きであることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ取付機構。
【請求項8】
前記棒状部材がボルトの軸部であって、
前記ボルトは、前記固定片の後方側に配置される頭部を有するとともに、前記固定片の前方側に螺合された第1のナットによって前記固定片に固定されることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ取付機構。
【請求項9】
前記棒状部材がボルトの軸部であるとともに、前記軸部が前記押さえ片に設けられた貫通穴に通されており、
前記ボルトの前記押さえ片の前方側に第2のナットが螺合されており、前記押さえ片は、前記第2のナットによる押圧力によって、前記エアフィルタユニットを前方側から押さえ付けることを特徴とする請求項1に記載のエアフィルタ取付機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−183281(P2011−183281A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49601(P2010−49601)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】