説明

エアフロー搬送装置

【課題】種々の大きさのワークの搬送を可能にすることによって、汎用性の向上を図ることにある。
【解決手段】搬送面21aに形成された複数のエア噴出口3から搬送方向Aの下流側に向けて斜め上方に噴出するエアにより、キャップ(ワーク)Wを搬送面21aから浮上させながら下流側に搬送するエアフロー搬送装置1であり、エア噴出口3は、搬送方向Aに1列をなすラインL上に配置される主噴出口3aと、各主噴出口3aの間におけるラインLの左右に配置される副噴出口3bとによって構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークをエアで浮上させながら下流側に搬送するエアフロー搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のエアフロー搬送装置としては、本出願人が特願2003−55578号において示したものがある。このエアフロー搬送装置は、搬送面に1列状に配置した各エア噴出口から搬送方向の下流側に向けて斜め上方にエアを噴出させることにより、ワークを上記搬送面から浮上させながら下流側に搬送するようになっている。
【0003】
上記エアフロー搬送装置においては、エア噴出口が配置された1列状のラインに沿ってワークを円滑に搬送することができる。しかも、エア噴出口から噴出するエアは、ワークが上記ラインから外れるのを防止する効果がある。
【0004】
ところが、上記エアフロー搬送装置においては、ワークが互いに接するように詰まった状態で搬送されると、各ワークが上記ラインから左右に千鳥状にずれ、エアによる搬送力の及ばない範囲に移動するおそれがある。このため、搬送面の左右にガイド部材を設けることによって、ワークをエアによる搬送力の及ぶ範囲内に維持することが必要になる。
【0005】
しかし、ガイド部材を設けた場合には、搬送面の左右の幅が特定の大きさのワークを搬送することが可能な幅に固定されることになるので、種々の大きさのワークを搬送する上で弊害になり、汎用性に乏しものになるという新たな問題が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、種々の大きさのワークを安定的に搬送し得る汎用性に優れたエアフロー搬送装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、搬送面に形成された複数のエア噴出口から搬送方向の下流側に向けて斜め上方に噴出するエアにより、ワークを上記搬送面から浮上させながら上記下流側に搬送するエアフロー搬送装置であって、上記エア噴出口は、上記搬送方向に列をなすように配置される主噴出口と、これらの各主噴出口の間における上記列をなすラインの左右に配置される副噴出口とによって構成さていることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記副噴出口から噴出するエアの上記搬送面に対する噴出角度は、上記主噴出口から噴出するエアの上記搬送面に対する噴出角度より大きく設定されていることを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記主噴出口及びこの主噴出口に隣接する上記左右の副噴出口の3点は、上記ラインに沿って搬送される上記ワークの下方に位置するように配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1〜3に記載の発明によれば、主噴出口から噴出するエアも、副噴出口から噴出するエアも、ワークと搬送面との間の空間を搬送方向の下流側に高速で流れることになるので、上記空間内の圧力がワークの周囲の圧力より低くなる。このため、ワークは、搬送面から浮上すると共に、当該搬送面に吸引された安定した状態で、下流側に搬送されることになる。
【0011】
また、主噴出口が搬送方向に列をなすように配置され、副噴出口が上記列をなすラインの左右に配置されているので、各ワークが充分な間隔をおいて搬送面に供給される場合には、主噴出口及び副噴出口から噴出するエアの合流した流れにおける最も流速の高い位置に沿って、当該ワークがほぼ1列状に整列された状態で安定的に搬送されることになる。この場合、例えば、各副噴出口が上記ラインに対して左右対称の位置に配置され、かつ各副噴出口から噴出するエアの流れも左右対称の流れとなっていれば、各ワークが上記ラインを中心にして搬送されることになる。
【0012】
一方、大量のワークが互いに接するように詰まった状態で搬送面に供給されると、当該ワークが上記ラインに対して例えば左右に千鳥状にずれた状態になる。この場合、ワークが主噴出口から噴出するエアの搬送力の及ぶ範囲外に出た場合でも、副噴出口から噴出するエアの搬送力の及ぶ範囲内であれば、当該ワークを安定的に搬送することができる。そして、ワークが再び所定の間隔をおいて搬送面に供給されるようになった場合には、当該ワークを再びほぼ1列状に整列させることができる。
【0013】
また、例えば、ワークが搬送面から幅方向に脱落するのを防止するガイド部材を設けるとすれば、当該ガイド部材は、各副噴出口から噴出するエアの搬送力の及ぶ範囲内にワークを維持すべく設置することになる。従って、ガイド部材を設ける場合でも、上記ラインの左右方向に幅の広い搬送面を確保することができるので、種々の大きさのワークに対しても安定的な搬送が可能になる。即ち、汎用性の向上を図ることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、副噴出口から噴出するエアの搬送面に対する噴出角度が主噴出口から噴出するエアの搬送面に対する噴出角度より大きく設定されているので、上記ラインから左右にずれたワークについても副噴出口から噴出するエアによって安定的に浮上させながら搬送することができる。
【0015】
また、エアの搬送方向の下流側への流速は、主噴出口が配置されたラインに沿う部分が最も高くなる。このため、ワークが上記ラインに沿って1列状に集まる傾向を強めることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、主噴出口及びこの主噴出口に隣接する左右の副噴出口の3点が上記ラインに沿って搬送されるワークの下方に位置するように配置されているので、上記ラインに沿って搬送されるワークの安定性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態としての一実施の形態について図1及び図2を参照しながら説明する。
【0018】
この実施の形態で示すエアフロー搬送装置1は、図1及び図2に示すように、搬送面21aに形成された複数のエア噴出口3から搬送方向Aの下流側に向けて斜め上方に噴出するエアにより、キャップ(ワーク)Wを搬送面21aから浮上させながら下流側に搬送するようになっており、エア噴出口3は、搬送方向Aに1列をなすように一定の間隔をおいて直線状のラインL上に配置される主噴出口3aと、これらの各主噴出口3aの間における上記ラインLの左右に配置される副噴出口3bとによって構成されている。
【0019】
キャップWは、ボトルの口を閉塞するものであって、円筒部W1の一端部が平板状の端面部W2によって閉じられた形状になっている。このキャップWは、端面部W2を下方(搬送面21a側)に向けた状態で、搬送面21a上に供給され、搬送面21aにおける搬送方向Aの下流側に設置されたキャッピングマシンに搬送されることになる。
【0020】
搬送面21aは、搬送方向Aに帯状に延在する一枚の平板21の表面(上面)によって、一定の幅の平面状に形成されている。平板21は、軸方向を水平方向に向けて設置された四角筒体2の上壁部によって構成されている。また、四角筒体2内は、圧縮空気が供給されるプレナム室Pとなっている。
【0021】
ラインLは、搬送面21aの幅方向の中心線と一致する位置に配置されている。
主噴出口3aは、平板21におけるラインLに沿って一定の間隔をおいて形成された断面円形状の主噴出孔30aの上端側の開口によって形成されている。この主噴出孔30aは、平板21における下面と上面の搬送面21aとの間を直線状に貫通し、かつ搬送方向Aに向かって漸次上方に位置するように傾斜している。
【0022】
副噴出口3bは、各主噴出孔30aの間の搬送方向Aの中心位置であって、ラインLに対して左右対称となる位置に配置されている。そして、この副噴出口3bは、平板21におけるラインLに対して左右対称となる位置に沿って一定の間隔をおいて形成された断面円形状の副噴出孔30bの上端側の開口によって形成されている。この副噴出孔30bは、平板21における下面と搬送面21aとの間を直線状に貫通し、かつ搬送方向Aに向かって漸次上方に位置するように傾斜している。
【0023】
そして、副噴出孔30bが搬送面21aに対して斜め上方に延在する傾斜角度θbは、主噴出孔30aが搬送面21aに対して斜め上方に延在する傾斜角度θaより大きく設定されている。
【0024】
なお、主噴出口3aから噴出するエアの搬送面21aに対する噴出角度は、上記傾斜角度θaにほぼ一致することになり、副噴出口3bから噴出するエアの搬送面21aに対する噴出角度は、上記傾斜角度θbにほぼ一致することになる。従って、エアの噴出角度については、傾斜角度θa、θbで代用して示す。
【0025】
また、主噴出孔30aは、副噴出孔30bより大径に形成されており、主噴出口3aから噴出するエアの流量が副噴出口3bから噴出するエアの流量より多くなっている。但し、主噴出口3aから噴出するエアの流速と、副噴出口3bから噴出するエアの流速とは、ほぼ等しくなっている。
【0026】
更に、1つの主噴出口3aと、この主噴出口3aに隣接する下流側又は上流側の2つの副噴出口3bとは、それぞれの中心を結ぶ直線が正三角形状となるように配置されているとと共に、ラインLに端面部W2の中心を一致させるようにして、当該ラインLに沿って搬送されるキャップWの下方に位置するように配置されている。そして、この場合、主噴出口3a及び左右の副噴出口3bの3点を下方に配置させた状態とすることが可能な最小径の端面部W2を有するキャップWを、安定的に搬送が可能な最小のキャップWとすることができる。
【0027】
また、搬送面21aの幅方向の各端部には、キャップWが搬送面21aから幅方向に脱落するのを防止するガイド部材22が設けられている。各ガイド部材22は、平板状に形成され、搬送面21aから垂直に立設されている。更に、各ガイド部材22は、各副噴出口3bから噴出するエアの搬送力の及ぶ範囲内にキャップWを維持すべく、ラインLから左右方向に等しい位置に設けられている。そして、この場合、左右のガイド部材22の間を通過可能な最大径の端面部W2を有するキャップWを、安定的に搬送が可能な最大のキャップW(図1中に(max)を付記)とすることができる。
【0028】
上記のように構成されたエアフロー搬送装置1においては、主噴出口3aから噴出するエアも、副噴出口3bから噴出するエアも、キャップWの端面部W2と搬送面21aとの間の空間を搬送方向Aの下流側に高速で流れることになるので、上記空間内の圧力がキャップWの周囲の圧力より低くなる。このため、キャップWは、搬送面21aからわずかに浮上すると共に、当該搬送面21aに吸引された安定した状態で、下流側に搬送されることになる。
【0029】
また、主噴出口3aがラインL上に1列状に配置され、副噴出口3bがラインLの左右の対称位置に配置されていると共に、各副噴出口3bから噴出するエアの流れも左右対称の流れとなっているので、各キャップWが充分な間隔をおいて搬送面21aに供給される場合には、主噴出口3a及び副噴出口3bから噴出するエアの合流した流れの位置となるラインLに沿って、当該キャップWをほぼ1列状に整列させた状態で安定的に搬送することができる。
【0030】
そして、特に、主噴出孔30aの傾斜角度θaが副噴出孔30bの傾斜角度θbより小さく設定され、主噴出口3aから噴出するエアの下流側への流速が副噴出口3bから噴出するエアの下流側への流速より大きくなっているので、ラインLに沿って流れるエアの流速を顕著に高めることができる。このため、キャップWがラインLに沿って1列状に集まる傾向をより一層強めることができる。
【0031】
一方、大量のキャップWがその円筒部W1を互いに接するようにして詰まった状態で搬送面21aに供給されると、当該キャップWがラインLに対して例えば図1に示すように左右に千鳥状にずれた状態になる。この際、キャップWが主噴出口3aから噴出するエアの搬送力の及ぶ範囲外に出た場合でも、副噴出口3bから噴出するエアの搬送力の及ぶ範囲内であれば、当該キャップWを安定的に搬送することができる。
【0032】
また、副噴出孔30bの傾斜角度θbが主噴出孔30aの傾斜角度θaより大きく設定されているので、ラインLから左右にずれたキャップWについても副噴出口3bから噴出するエアによって安定的に浮上させながら搬送することができる。
【0033】
しかも、搬送面21aの左右にガイド部材22が設けられているので、キャップWが副噴出口3bから噴出するエアの搬送力の及ぶ範囲外に出るのを確実に防止することができる。
【0034】
そして、キャップWが再び所定の間隔をおいて搬送面21aに供給されるようになった場合には、当該キャップWを再びほぼ1列状に整列させることができる。
【0035】
また、主噴出口3a及びこの主噴出口3aに隣接する左右の副噴出口3bの3点の位置でキャップWを下方から支持することができるので、ラインLに沿って搬送されるキャップWの安定性の向上を図ることができる。
【0036】
しかも、上記3点の位置で支持が可能な最小サイズのキャップWからガイド部材22の間を通過可能な最大サイズのキャップWまで、種々の大きさのキャップWを安定的に搬送することが可能であるので、汎用性の向上を図ることができる。
【0037】
なお、上記実施の形態においては、ワークとして上述した形状のキャップWを用いた例を示したが、上記端面部W2に相当する平面部があれば、他の種々の形状のワークについても搬送することが可能である。この場合、端面部W2に相当する平面部としては、円形以外の例えば四角形等の種々の形状に形成されていてもよい。また、切符やカード等の平面的な形状のワークについても剛性の大小にかかわらず搬送することが可能である。
【0038】
また、ラインLとして直線状のものを示したが、このラインLは曲線状に湾曲するものであってもよい。しかも、ラインLは、複数のものが並列に配置されたものであってもよい。即ち、主噴出口3aが形成されたラインLを複数並列に設け、各ラインLの左右に副噴出口3bを形成するように構成してもよい。
【0039】
更に、上述した最小サイズのキャップWより小径の端面部W2を有するキャップWであっても、当該端面部W2が隣接するエア噴出口3から噴出されるエアによって順次下流側に搬送力を受け得る大きさであれば、搬送面21a上を下流側に搬送することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施の形態として示したエアフロー搬送装置の平面図である。
【図2】同エアフロー搬送装置の断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 エアフロー搬送装置
3 エア噴出口
3a 主噴出口
3b 副噴出口
21a 搬送面
A 搬送方向
L ライン
W キャップ(ワーク)
θa、θb 傾斜角度(噴出角度)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送面に形成された複数のエア噴出口から搬送方向の下流側に向けて斜め上方に噴出するエアにより、ワークを上記搬送面から浮上させながら上記下流側に搬送するエアフロー搬送装置であって、
上記エア噴出口は、上記搬送方向に列をなすように配置される主噴出口と、これらの各主噴出口の間における上記列をなすラインの左右に配置される副噴出口とによって構成さていることを特徴とするエアフロー搬送装置。
【請求項2】
上記副噴出口から噴出するエアの上記搬送面に対する噴出角度は、上記主噴出口から噴出するエアの上記搬送面に対する噴出角度より大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載のエアフロー搬送装置。
【請求項3】
上記主噴出口及びこの主噴出口に隣接する上記左右の副噴出口の3点は、上記ラインに沿って搬送される上記ワークの下方に位置するように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエアフロー搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−62858(P2006−62858A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−250024(P2004−250024)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(390004879)三菱マテリアルテクノ株式会社 (201)
【Fターム(参考)】