説明

エアロゾル形態の薬剤製品を投与するための装置

【課題】エアロゾルの形態の薬剤製品を投与するための装置(10)を説明する。
【解決手段】この装置(10)は、一定の空気の流れを発生させるための手段(11)と、所定の空気の流れを発生させるための手段(14)と、空気の流れを患者の気道へ搬送するための手段(15)と、霧化されるべき薬剤製品を収容するための手段(12)とを備えている。装置(10)は呼吸サイクルのあらゆる呼息段階中に所定の空気の流れを発生させるための手段を想定しており、所定の空気の流れを発生させるための前記手段は空気の流れを搬送するための手段(15)と空気圧的に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアロゾル形態の或は霧化された薬剤製品を投与するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公知のように、肺および胸部を備えている呼吸系統は空気および酸素の吸息および呼息作用を一定の秩序に整える隔膜と呼ばれる筋肉に位置するポンプとして作用する。自然の呼吸法では、隔膜の収縮が肺に真空を発生させ、それにより外側からの空気の吸息を引き起こす。
公知のように、患者の呼吸容量を減少させる呼吸系統の多くの疾患がある。
【0003】
例えば、気道支および肺胞への適当な治癒製品の投与を必要とする喘息または多くの他の肺の疾患のうちの1つを病んでいる患者の場合、前記投与を行い際に、患者の呼吸容量の明らかな減少があることは念頭におくべきである。現在のところ、これらの患者にエアロゾルの投与または薬剤治療のための3つの主な方法、すなわち、(1)薬剤溶液からエアロゾルを生じるベンチュリジェット型または超音波圧電型のアトマイザーによる、(2)フルオロカーバイドまたは他のガスを有する加圧シリンダよりなる測定投与量の吸入器による、および(3)乾燥粉末吸入器による方法がある。
(1)の種類の装置または湿分アトマイザーはベンチュリ原理を利用しているジェット霧化器であり、エネルギー源はエアロゾルを患者の自発的呼吸に差し向けるのにも役立つ圧縮空気である。ジェット霧化器では、酸素および/または空気の流れが、溶液中の薬剤から始まって装置を通してエアロゾルを生じ、そしてこのエアロゾルを患者に向けて移送し、次いで、患者はエアロゾルをマスクまたはマウスピースから吸い込むことができる。
【0004】
薬剤の投与のための呼吸管の使用はますますより重要になってきている。この種類の解決法では、肺の疾患の治療において局部的な効果を生じる薬剤製品の適用が開発されてきただけではなく、薬剤が身体に入るときに通る器官として肺を使用し、系統的な効果を生じる新しい方策もまた想定されてきた。
薬剤の投与のためのこの系統、すなわち、吸入の使用では、市場に現在存在する装置では十分でない吸入の質の改良の要求が絶えず高まってきた。
現在、実際、ジェット霧化器型の装置は、エアロゾルの形態に製品のたった20%が肺の陥凹部に達するので絶対に不十分である。
これは、既存の装置の効率が患者の状態および呼吸容量に依存していることに起因している。実際、ベンチュリ溜め部内の液体から始まってポンプにより霧化された製品を呼吸容量によって気道に向けて移送するのは患者である。減少された呼吸容量を有する患者が霧化薬剤の十分な伝達を行うことができないことは明らかである。
【0005】
前述のように、霧化製品の進入は制限され、薬剤の80%が初めの呼吸管に留まる。
治療されるべき病変が初めの呼吸管の病変であれば、効率が良好であり、そうでなければ、エアロゾル治療は事実上効果がない。
更に、蒸気の残部が喉から胃まで進み、特定の有効成分の使用の場合に関連した副作用が伴うことは念頭におくべきである。
霧化器の非能率性を補償するために投与量の増大することは患者の健康に有害であることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の全般的な目的は前述の欠点を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、一定の空気の流れを発生させるための手段と、所定の空気の流れを発生させるための手段と、空気の流れを患者の気道へ搬送するための手段と、霧化されるべき薬剤製品を収容するための手段とを備えている、エアロゾルの形態の薬剤製品を投与するための装置において、呼吸サイクルのあらゆる呼息段階中に所定の空気の流れを発生させるための手段を有しており、所定の空気の流れを発生させるための前記手段は空気の流れを搬送するための手段と空気圧的に連結されていることを特徴とする薬剤製品の投与のための装置である。
【0008】
一定の空気の流れを発生させるための手段はポンプよりなり、また、あらゆる呼息段階中に所定の空気の流れを発生させるための手段は、好ましくは、所定の空気の流れの投与を呼息段階と同期化する抵抗ポンプよりなる。
本発明による装置は薬剤製品なしで使用されることもできる。
空気の流れを患者の気道に搬送するための手段はコネクタおよびマスクまたはマウスピースを備えており、所定の空気の流れを発生させるための前記手段は空気の流れを搬送するための手段により前記コネクタまたは前記マスクまたはマウスピースに作動的に連結されている。
【0009】
詳細には、第1ポンプは薬剤を共通のエアロゾルとして霧化する目的を有しており、反対に、第2ポンプは、小さい気道に向かう薬剤の大きい良好な進入を得、且つ喀痰を有利にするように大きい気道の運動を刺激する目的で流量および抵抗を変化させることによって、適切な時点に正常な通気に存在する空気の流れを供給する目的を有している。
本発明による装置の主な利点は、実際、すでに市場に存在するエアロゾル装置のものと同様な治療、すなわち、始めの気道にとって効果的に吸入治療を行うことにあるだけではなく、小さい気道に向かう効果的な吸息治療を行うことにもある。
患者の呼吸容量に部分的にのみ依存している装置の改良効率により、良好に分配される薬剤のより低い投与量を使用することができることもまた明らかである。
しかも、本発明による装置の更なる利点は、薬剤なしでもすでに効果的である肺の運動を行うと言う点である。
【0010】
呼息段階における抵抗圧力の使用により気道の弾性容量を利用することにより、本発明による装置は呼息の終わりまで気道を僅かに拡張させる。この段階に終了時に、抵抗圧力は中断され、かくして呼吸道の壁部をリラックスさせる(抵抗圧力は必要に応じて呼息段階の任意の時点で仲裁される)。
この運動は次の吸息段階における空気の流入を容易にする。これらの運動の継続により、空気の良好な空気交換、粘液および分泌物の分離ならびに薬剤の進入を許容する。
装置の機能が患者の呼吸の仕方および頻度により調整されるので、患者の呼吸の生理学的特性に従う「自然の」運動でもある。
【0011】
本発明による装置の更なる実施形態は、所定の空気の流れを発生させる手段が、所定の空気の流れの投与を呼息段階と同期化させる第1抵抗ポンプと、連続的に作用して一定の圧力で2つの吸息および呼息の呼吸段階中に所定の空気の流れを投与する第2抵抗ポンプとよりなることを想定している。抵抗ポンプは1cm水柱の圧力で連続的に作動する。
この第2抵抗ポンプの圧力は患者の良好な喀痰を許容する。
本発明の構造上および機能上の特性および公知技術に対するその利点は同封の図面を参照した下記の説明を検討することにより更に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
添付図面を参照して本発明の実施形態を以下に詳細に説明する。
図1は本発明による装置の実施形態を示しており、10は装置を示している。この装置は、12、すなわち、ベンチュリ溜め部よりなる容器に収容された薬剤製品の溶液の霧化を行う一定の空気の流れを発生させる霧化ポンプ11を有している。より詳細には、ポンプ11により発生された一定の空気の流れを霧化溜め部12に直接送る。
次いで、この溜め部を管状の連結部13を介して患者が身に着けたマスクまたはマウスピース(図に示されていない)に連結し、このマスクまたはマウスピースを通して、霧化された製品が患者の気道に入る。
【0013】
装置10は、図1に示される実施形態では、空気の流れを搬送するための適当な手段15を介して患者の気道に連結される14として示される第2ポンプを想定している。この第2ポンプ14は抵抗圧力を発生され、この抵抗圧力は呼息段階おいて反対の圧縮空気の流れによって供給される。空気の流れを患者の気道に搬送するための手段15を管状連結部13を介して患者が身に付けるマスクまたはマウスピース(図に示されていない)に連結し、このマスクまたはマウスピースを通して、霧化された製品が患者の気道に入る。
また、図1に示される装置は、図に示される実施形態ではポテンシオメータであるポンプの取扱い制御装置16を有している。
本発明に使用されるポンプにより発生される空気の流れは、好ましくは、10リットル/分の流れである。
【0014】
詳細には、空気の流れを患者に搬送する手段15は、或る量の空気を呼息の流に投与するように取付部品13、次いでマスクと空気圧的に連結される。患者により吐き出された空気は取付部品13を通ってダクト15に進む。
その結果、患者は、吸息段階中、霧化された薬剤製品とともにポンプ11の作用により装置により供給された正の空気圧と、ポンプ11および抵抗ポンプ14の組合せ作用により呼息段階中の正の空気圧とを受けて、呼吸サイクルのあらゆる段階で自然に呼吸する。
【0015】
図1に概略的に示される本発明による装置は交互の吸息および呼息段階を有する呼吸サイクルにおいて時間に対する圧力変化を示し、この変化は図2に概略的に示されている。
詳細には、本発明による装置1では、P1は呼息段階の初めにおける圧力を表しており、呼息段階の最終圧力P3は次の吸息段階の初めの圧力P2より低い。
2とP3との間の圧力降下により生じられた僅かな降下は患者の気道に渦を生じるのに十分であり、それにより次の吸息段階の空気の流れがほとんどの気道、すなわち、小さい気道に達することができる。この圧力降下は抵抗ポンプ14の作動停止により発生される。
このように、本発明による装置1は、呼息段階中の抵抗圧力の使用で気道の弾性特性を利用することにより、気道に僅かな拡張を強制し、それにより呼息の終わりに達する。この段階の終わりに、抵抗圧力は中断され、かくして呼吸道をリラックスさせる。
【0016】
この運動は次の吸息段階中の空気の流入を容易にする。これらの運動の継続により、良好な空気交換、粘液および分泌物の分離および薬剤の進入を許容する。小さい気道に向かう薬剤製品の良好な進入が、事実上、大きい気道における運動の刺激とともに達成され、かくして喀痰を有利にする。
この運動により、本発明による装置は、また、薬剤なしですでに効能がある肺の運動を行う。
【0017】
図3は単一の抵抗ポンプを有する本発明による装置による治療を受ける患者の呼吸サイクルにおける時間に対する圧力変化を示している。詳細には、図3は空気の量あたりの圧力変化(0cm水柱から10cm水柱まで)を示しており、呼吸圧力および逆圧降下が明白である。
図4は第2抵抗ポンプを有する本発明による装置による治療を受ける患者の呼吸サイクルにおける時間に対する圧力変化を示している。詳細には、圧力変化は空気の量あたりに示されており(1cm水柱から10cm水柱まで)、呼吸圧力および逆圧降下が明白である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による装置の実施形態の概略図である。
【図2】図1に示される装置のような装置における時間の変化に伴った圧力の変化の概略図である。
【図3】第1抵抗ポンプのみを想定している本発明による装置による治療を受ける患者の呼吸サイクルにおける時間に対する圧力の変化の概略図である。
【図4】連続して作動する第2抵抗ポンプをも想定している本発明の実施形態による装置による治療を受ける患者の呼吸サイクルにおける時間に対する圧力の変化の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の空気の流れを発生させるための手段と、所定の空気の流れを発生させるための手段と、空気の流れを患者の気道へ搬送するための手段と、霧化されるべき薬剤製品を収容するための手段とを備えている、エアロゾルの形態の薬剤製品を投与するための装置において、呼吸サイクルのあらゆる呼息段階中に所定の空気の流れを発生させるための手段を想定しており、所定の空気の流れを発生させるための前記手段は空気の流れを搬送するための手段と空気圧的に連結されていることを特徴とする薬剤製品の投与のための装置。
【請求項2】
一定の空気の流れを発生させるための手段はポンプよりなることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
所定の空気の流れを発生させるための手段は所定の空気の流れの投与を呼息段階と同期化する抵抗ポンプよりなることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
薬剤製品なしで使用されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
空気の流れを患者の気道に搬送するための手段はコネクタおよびマスクまたはマウスピースを備えており、所定の空気の流れを発生させるための前記手段は空気の流れを搬送するための手段を介して前記コネクタまたは前記マスクまたはマウスピースに作動的に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
所定の空気の流れを発生させるための手段は、所定の空気の流れの投与を呼息段階と同期化する第1抵抗ポンプと、2つの吸息および呼息呼吸段階中に一定の圧力で連続的に作用する第2抵抗ポンプとよりなることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
第2抵抗ポンプは1cm水柱の一定圧力で作動することを特徴とする請求項6に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−534036(P2008−534036A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502342(P2008−502342)
【出願日】平成18年3月21日(2006.3.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/002746
【国際公開番号】WO2006/100102
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(507314534)