説明

エアーによる吸着材循環型脱臭装置

【課題】排気の脱臭のための新規なエアーによる吸着材循環型脱臭装置を提供する。
【解決手段】立てて配置された円筒形の容器11u,11dと、この容器の下部に形成された有臭ガス取り入れ筒12と、上部に形成された無臭ガス排気筒13と、容器の中間部に形成されたガス流通可能な開口を有する支持部材22と、この支持部材に載せられた比較的多量の活性炭19を備えている。脱臭作業時には、送風機57で駆動された有臭ガスが活性炭を舞上げ、自重で落下し、これを繰り返す、動的な状態で挙動することにより、全ての活性炭の全表面が吸着作用に寄与する、エアーによる吸着材循環型脱臭装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアーによる吸着材循環型脱臭装置に関し、更に具体的には、空気の脱臭を目的とした、例えば活性炭を用いたエアーによる循環型脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、空調に要するコストの低減の観点から、ビルの空調設備に蓄熱システムを導入する例が増えている。例えば、図1は、ビル1の二重スラブによって形成された空きスペース2を水蓄熱槽4として利用した水蓄熱式空調システムの一例であり、図2は、最下階の床スラブ5と基礎スラブ6の間の空間を利用して形成された水蓄熱槽4の詳細図である。
【0003】
水蓄熱式空調システムでは、夜間の割安な電力を利用して、蓄熱槽4の水に熱エネルギを蓄える。即ち、夜間の電力で熱源機3を運転して、夏の冷房時は冷水を、冬の暖房時には温水を蓄熱槽4に蓄える。昼間は、冷房時には蓄熱槽4に蓄えられた冷水を利用して冷房を行い、暖房時には温水を利用して暖房を行う。
【0004】
蓄熱システムを採用していないビルでは、昼間(空調時間帯)の空調負荷に合わせて、熱源機を運転している。これに対して、蓄熱システムを採用すると、夜間(空調時間帯以外の時間帯)に蓄熱運転により熱エネルギを蓄え、このエネルギを昼間の空調に利用することが出来る(放熱)。空調負荷の多い日は、熱源機3により追いかけ運転を行う。蓄熱システムは、必要な設備容量を小さくすることができ、経済性に優れている。
【0005】
図2に示すように、コンクリート躯体5,6,7を利用する水槽は、止水性に乏しく、熱損失が大きい。このため、蓄熱槽4は、コンクリート躯体5,6,7の内面に、熱エネルギのロスを減少すると共にコンクリート躯体外面の結露を防止するための断熱材8と、漏水を防ぐための防水材9とを貼り付けている。
【0006】
なお、本発明者等は、以下に説明するような本発明に係るエアーによる吸着材循環型脱臭装置を開示する公開された特許文献及び非特許文献の存在について、知らない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような断熱材8及び防水材9は、例えば、揮発性の有機溶剤を含んだ樹脂をスプレー塗布して形成される場合がある。密閉された空間内(地下のピット内)で行われる樹脂の塗布作業では、かなりの臭気が発生する。それ以外にも、密閉された空間内で行われる、例えば、アスファルト防水作業でも、同様に臭気の問題が発生する。
【0008】
密閉された空間内で行われる作業の際には、作業員の健康への影響を考慮して、酸欠にならないように十分に換気をしながら作業することが必要となる。更に、臭気に関しては、揮発成分を一定量以下に抑えて、作業に適する環境を確保する必要がある。
【0009】
密閉空間の作業現場の換気及び臭気の除去のため、例えば、適当な送風機を用いて、密閉空間の一方の空気取り入れ口から新鮮な空気を送り、他方の空気排出口から排気する方法がある。この方法では、排気された空気に含まれる揮発性溶剤の臭気が排出領域に漂うため、近隣住民に迷惑を掛けるおそれがある。空気排気口にビニル製の排気ダクト(排気筒)を接続し、この排気ダクトを延長して人家の少ないところまでもっていき、そこで排気するような工夫も考えられる。しかし、送風機の静圧の点から排気ダクトの延長距離にも一定の制約がある。或いは、送風機の送風容量を大きくして、臭気を出来るだけ希釈することも考えられる。
【0010】
しかし、このような方法でも、臭気が大気中に排出されることには変わりなく、臭気の問題に対する根本的な解決策とはならない。従って、作業現場の密閉空間の換気に伴う臭気の問題を、根本的に解決することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明は、排気の脱臭のための新規なエアーによる吸着材循環型脱臭装置を提供することを目的とする。
【0012】
上記目的に鑑みて、本発明に係る脱臭装置は、駆動された有臭ガスを下方から取り込み、鉛直方向上方に流して、上方から無臭ガスとして排出する容器と、前記容器の中間部に形成された、ガスが流通可能な開口を有する支持部材と、前記支持部材に載せられた吸着材とを備え、前記吸着材は、前記駆動された有臭ガスにより舞上げられ、自重で落下し、これ繰り返す、動的な状態で挙動するようにしたことを特徴とする。
【0013】
更に、上記脱臭装置では、前記吸着材は、活性炭、合成ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ、活性ボーキサイト、活性フーラスアース、骨炭、及びこれらの任意の混合物から成る群から選択された1つ以上のものであってよい。
【0014】
更に、上記脱臭装置では、前記有臭ガスの原因物質は、有機溶剤を含んだ樹脂のミストであってよい。
【0015】
更に、上記脱臭装置では、前記容器の形状は、円筒形状又は多角形の柱状形状であってよい。
【0016】
更に、上記脱臭装置では、前記吸着材は、ガスが流通可能な開口を有するかご部材に収納され、前記支持部材に載せられていてもよい。
【0017】
更に、上記脱臭装置では、前記有臭ガスは、前記脱臭装置の上流側に配置された送風機により加圧駆動され、或いは、前記有臭ガスは、前記脱臭装置の下流側に配置された送風機により吸引駆動されていてもよい。
【0018】
更に、上記脱臭装置では、ガスの流通の上流から下流に、複数個の支持部材を備え、各支持部材に前記吸着材を載せていてもよい。
【0019】
更に、上記脱臭装置では、前記複数個の支持部材には、各々、1又は複数の種類の吸着材が載せられており、前記複数個の支持部材に載せられた吸着材は、1又は複数の種類の吸着材からなっていてもよい。
【0020】
更に、本発明に係る脱臭装置の使用法は、有臭ガスを下方から取り込み、鉛直方向上方に流して、上方から無臭ガスとして排出する容器、該容器の中間部に形成されたガスが流通可能な開口を有する支持部材、及び該支持部材に載せられた吸着材とを有する脱臭装置の使用法であって、前記有臭ガスを駆動して前記吸着材を舞上げ、該吸着材は自重で落下し、これを繰り返し、全ての前記吸着材の全表面を前記有臭ガスに曝すようにしている。
【0021】
更に、本発明に係る脱臭装置の利用方法は、複数台の上記脱臭装置を並列、直列又はこれらの組み合わせに接続して使用する方法である。
【0022】
更に、本発明に係る脱臭装置の利用方法は、上記脱臭装置の間に送風機を介在させ、ガスの流通過程の途中で圧力を再度高めている。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、排気の脱臭のための新規なエアーによる吸着材循環型脱臭装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係るエアーによる吸着材循環型脱臭装置の実施形態に関して、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同じ要素に対しては同じ符号を付して、重複した説明を省略する。
【0025】
[脱臭装置]
(開発までの経緯)
臭気対策としては、(1)多孔質の吸着材(例えば、活性炭)を用いて吸着して脱臭する方法と、(2) トイレの芳香剤等で利用されているように、特定の臭気に対して異なる臭気を混入して打ち消して、人間の嗅覚に感じさせないようにする方法とがある。本発明者等は、作業現場の排気から臭気を除去することにより、この問題を解決することを目指した。即ち、前者(1)の方法により、この問題の解決にアプローチすることとした。
【0026】
図3は、本発明者等が、当初試作した脱臭装置100の断面図である。この脱臭装置100は、作業現場の密閉空間の他方の空気排出口に接続された送風機及びダクト(図7及び図8の符号57,58)に接続して使用される。この排気装置100は、排気ダクトにつながる容器200,300の断面方向に、袋状メッシュ部材600の中に袋詰めされた活性炭700を配置する構成である。密閉空間の排気ダクトからの臭気を含んだ排気(有臭ガス)は、上流側から活性炭700の間を通過し、下流へ流れていく。このとき、有臭ガスの臭気は、活性炭700に吸着される。
【0027】
臭気を含む排気には、その原因物質となる噴霧、粒子等が浮遊している。例えば、本発明の契機となった蓄熱槽の断熱材及び防水材では、排気中に、採用する材料によって揮発性の有機溶剤を含んだ樹脂がミスト(噴霧)として浮遊する。作業現場からのこのようなミストを含んだ排気を、脱臭装置100で脱臭すると、活性炭700は極めて短時間(約30分以下)に脱臭作用が失われることが判明した。
【0028】
脱臭作業後の活性炭700を細かく観察すると、袋状メッシュ部材600の中にある活性炭700の中で上流側に位置する活性炭の上流側に曝された表面のみに樹脂が集中的に吸着して固着していることが分かった。そのため、排気ダクトからの排気の流れは、樹脂が固着した活性炭によって阻止され、下流側にほとんど流れていないことも分かった。これは、脱臭装置100の両端に柔軟性のあるビニル製排気ダクトを接続しているため、上流側の排気ダクトは一杯に膨満しているのに対して、下流側の排気ダクトは萎んでいることからも明かであった。このような状況では、脱臭装置100の換気作用及び脱臭作用のいずれも機能していない。
【0029】
この脱臭装置100では、活性炭700は袋状メッシュ部材600の中に詰め込まれているため、有臭ガスが通過中でも活性炭700は動くことなく、静止状態にある。本発明者等は、この脱臭装置100が極めて短時間に換気作用及び脱臭作用を喪失する原因が、活性炭700が静止状態にあり、一部の活性炭のほんの一部の面しか機能していない、換言すれば、全ての活性炭の全表面積を吸着作用のために有効に利用していない点にあることを突きとめた。そこで、本発明者等は、活性炭が静的な状態(スタティック)から、脱臭作業の際には動的な状態(ダイナミック)になるようにして、全ての活性炭の全表面積を吸着作用に有効に寄与せしめる脱臭装置を提案する。
【0030】
(脱臭装置)
図4は、本実施形態に係る脱臭装置10の一例であり、図で見て左半分は外形側面図であり、右半分は断面図である。この脱臭装置10は、軸線が垂直方向に成るように配置された、概して円筒形状の容器11u,11dから成り、下半分の位置に排気ダクト(図7及び図8の符号58)及び送風機(符号57)に接続される有臭ガス取り入れ筒12と、上半分の位置に脱臭された無臭ガスを排気する無臭ガス排気筒13とが形成されている。
【0031】
概して円筒形状の容器11u,11dは、高さ方向のほぼ中間で切断されている。上側容器11uの上端及び下端には、フランジ14−1,14−2が夫々形成されている。同様に、下側容器11dの上端及び下端には、フランジ14−5,14−6が夫々形成されている。更に、上側容器11uの上端フランジ14−1の上には蓋部材15があり、下側容器11dの下端フランジ14−6の下には底部材16がある。
【0032】
従って、上側容器及び下側容器11u,11dは、図のように組み合わされて、有臭ガス取り入れ筒12及び無臭ガス排気筒13の部分を除き、内部に密封された空間(チャンバ)17u,17dを形成している。
【0033】
上側容器11uの下端には、底板に相当する箇所に、活性炭19が下側容器17d内に落下するのを防ぐため、断面方向に配置した支持部材(梁部材)22がある。更に、好ましくは、活性炭19の交換作業の便宜のため、活性炭19は、図6に示すような所定の高さ及び下端の断面(支持部材22の上面)に沿うような形状の、例えば大きなメッシュから成る空気通過性の良い活性炭用かご部材24に入れて使用してもよい。活性炭用かご部材24を採用する場合には、支持部材(梁部材)22は、活性炭用かご部材24が、下側容器17d内に落下するのを防ぐために使用される。
【0034】
更に、所望により、活性炭19の粒子が飛散して外部に排出しないように、無臭ガス排気筒13の入口または出口を適当なメッシュ部材(図示せず。)で覆ってもよい。
【0035】
好ましくは、上側容器11uと下側容器11dとは、脱臭作業中は、例えば、両者のフランジ14−2,14−5の間を固定する、ボルトとナット、締め付け部材等の適当な固定部材(図示せず。)により、夫々の軸線が一直線になる位置に固定されて使用される。
【0036】
この脱臭装置10は、活性炭19の交換のため、上側容器11uから蓋部材15を取り外すことが出来る構造となっている。同様に、下側容器内11dに落下して堆積した活性炭の粉を除去し、上側容器11uの下端部断面方向に形成された支持部材22に付着したミストを清掃除去するために、上側容器11uを下側容器11dからフランジ14−2,14−5間で取り外すことが出来る構造となっている。
【0037】
図4の脱臭装置を構成する各要素に関して説明する。
【0038】
活性炭19に関して、脱臭装置10は、図3の脱臭装置100に比較して、一層大量の活性炭を収納することが出来る。例えば、この脱臭装置10では、外形サイズが6mm径又は8mm径の活性炭を使用し、高さh=約50mm程度になる量を収納することが出来る。これ対して図3の脱臭装置100では、活性炭700の厚さは、袋状メッシュ部材600で包み込み、フランジ400,500の間に挟持する構造のため、最大部分でも厚さ15mm程度であった。しかし、図4の脱臭装置10では、活性炭19をほぼ任意の高さまで積載することが出来る。例えば、活性炭19を高さh=50mmまで載せると、図3の場合に比較して3.3倍以上の量を収納することが出来る。
【0039】
活性炭(activated carbon)は、特定の物質を選択的に分離、除去、精製する等の目的で吸着効率を高めるために、化学的又は物理的な処理(活性化、賦活)を施した多孔質の炭素を主な成分とする物質である。活性炭は、大部分の炭素の他、酸素、水素、カルシウム等から成る多孔質の物質であり、その微細な孔に多くの物質を吸着させる性質があり、その性質を利用して脱臭等に用いられる。代表的な原料としては、石炭、ヤシ殻、大鋸屑等がある。これらの原料を整形・粉砕して所望のサイズに整えて、温度700〜800度Cで炭化させて炭化物を作り、温度900〜1100度Cで水蒸気、二酸化炭素等と反応させて微細な孔を明けている(ガス賦活)。活性炭には、大きく分けて、破砕炭、成形炭(ペレット炭)、粉末炭、もみ殻から出来る薫炭等がある。一般に粒子形状が小さいものほど単位体積あたり表面積が大きくなり、吸着性能が高いとされている。この脱臭装置10では、大量の活性炭を収納することができ、更に、脱臭する有臭ガスに応じて、所望の種類の活性炭を選択することが出来る。
【0040】
ここで使用する活性炭19は、臭気の原因物質を吸着する吸着材として使用されている。従って、活性炭の代わりに、吸着材として知られる、合成ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ、活性ボーキサイト、活性フーラスアース、骨炭、及びこれらの任意の混合物を、脱臭する有臭ガスに応じて使用することも出来る。しかし、説明を分かり易くするため、以下、吸着材として活性炭を使用した実施形態に関して説明するが、本発明に使用される吸着材は、活性炭に限定されるものではなく、これらの吸着材も含まれることを承知されたい。
【0041】
容器11u,11dは、例えば、高さ1,200mmで直径600mmの200リットルのドラム缶を高さ方向中間で切断して製作することが出来る。
【0042】
下側容器11dに接続される有臭ガス取り入れ筒12及び上側容器11uに接続される無臭ガス排気筒13は、各々、例えば、円筒形状の部材であり、例えば直径300mm程度の形状である。
【0043】
フランジ14−1〜14−6は、各々、例えば、2.3mmの鉄板を利用して、外形700mm、内径600mmの輪形状にくり抜いて形成することが出来る。このフランジを、上側容器11uの上端及び下端、並びに下側容器11dの上端及び下端に、夫々点付け溶接により接続している。
【0044】
底部材16及び蓋部材15は、ドラム缶の底部材を夫々利用することができる。
【0045】
上側容器11uの下端部に断面方向に形成された支持部材(梁部材)22は、空気の流通性がよく、且つ活性炭を載せたかご部材を載せて支持できれば、任意の部材を利用することが出来る。支持部材(梁部材)22は、例えば、開口率が非常に高い1.2mm厚のパンチングンメタルを利用することが出来る。支持部材(梁部材)22は、例えば、上側容器11uの下端にあるフランジ14−2に溶接して接続される。
【0046】
図6に示す活性炭用かご部材24は、空気の通過性が良好で、活性炭を載せておくことが出来れば、任意の部材を利用することが出来る。底面積が容器11uの内側断面にほぼ同じで、高さ50〜100mm程度に仕上げた、例えば、植木用の鉢底ネットのような部材を利用してもよい。活性炭用かご部材24の上端部に取手を付けて、上側容器11uから容易に引き出せるようにしてもよい。なお、活性炭用かご部材24の採用は、活性炭19の交換作業の便宜で採用されたものであり、支持部材(梁部材)22を活性炭が落下しないような開口をもつ部材にすれば、活性炭用かご部材24は不要となる。
【0047】
このような材料を採用した結果、この脱臭装置10は、重量20kg未満で製作することが出来た。
【0048】
なお、容器11u,11dは、金属製の円筒の缶に限定されない。容器11u,11dは、下方に有臭ガスを取り入れる手段を備え、この有臭ガスを鉛直方向上方に導き、上方で無臭ガスを排出する手段を備えれば、任意のものを使用することができる。容器の形状は、円筒形でなく、例えば、多角形(三角形、四角形、八角形等)の柱状形状に形成してもよい。容器の材質も、金属に限定されず、例えば、ダンボール、樹脂管等(塩ビ管、FRP(繊維強化プラスチック)等)により形成することが出来る。
【0049】
また、容器11u,11dに形成された有臭ガス取り入れ筒12及び無臭ガス排気筒13の位置は、図4に示されたような容器11d、11uの側壁に限定されない。脱臭装置10に適当な脚を設けたり、適当な設置台に載せたりして使用する場合、有臭ガス取り入れ筒12を底部材16に形成することも出来る。また、無臭ガス排気筒13を蓋部材15に形成することも出来る。
【0050】
即ち、脱臭装置10の容器11u、11d、有臭ガス取り入れ筒12及び無臭ガス排気筒13に必要な事項は、容器11u、11dにより一定の空間を形成し、この空間内に収容された活性炭19に対して下方から上向きに駆動された有臭ガスを送って活性炭を動的に挙動せしめ、活性炭19を通過した無臭ガスを大気中に放出できればよい。
【0051】
図5は、現場への搬入性を考慮して更に改良した、脱臭装置20であり、図で見て左半分は外形側面図であり、右半分は断面図である。3つに切断された容器11u、11m,11dを採用している。上側容器11uの上端には蓋部材15があり、下端にはフランジ14−2が取り付けられている。中間容器11mの上端にはフランジ14−3があり、下端にはフランジ14−4があり、フランジ14−4に支持部材(梁部材)22が取り付けられている、下側容器11dの上端にはフランジ14−5があり、下端には底部材16がある。脱臭装置20は、上側容器11uから蓋部材15を取り外すことが出来る。同様に、フランジ14−2と14−3の間、及びフランジ14−4と14−5の間で、脱臭装置20を3つに分割して搬送することが出来る。脱臭装置20の動作及び利点・効果に関しては、搬送性が良い点を除いて図4の脱臭装置10のそれと同じであるため、以下、図4の脱臭装置10を参照しながら説明する。
【0052】
(脱臭装置の動作)
送風機(図7及び6の符号57)は、市場で商業的に入手できる任意の物を利用することが出来る。例えば、単相100V用、単相200V用、三相200V用のいずれであってもよい。図4の脱臭装置10では、単相200V用又は三相200V用送風機が好ましい。
【0053】
脱臭作業中、有臭ガスは送風機57に駆動されて有臭ガス取り入れ筒12に送られる。有臭ガス取り入れ筒12より流入する有臭ガスにより、活性炭19は、或る範囲の高さまで舞い上がり、動的な状態(ダイナミック)で挙動する。即ち、活性炭19は、下方から上方向に向かう有臭ガスにより所定の高さの範囲(例えば、高さ約100mm程度)に舞い上がり、自重で落下し、これを繰り返す。このように活性炭19が常時移動しながら空中に浮遊しているため、全ての活性炭の全表面が有臭ガスに曝され、全ての活性炭の全表面が有効に吸着作用を行う。
【0054】
活性炭19が動的な状態で浮遊挙動するようにするには、容器の形状、有臭ガス取り入れ筒及び無臭ガス排気筒の形状、有臭ガスの種類、活性炭(吸着材)の種類等のパラメータがいかなるものであれ、上側容器11uの蓋15を少しずらし又は上側容器11uの側面の一部に透明部材で塞いだ観察用開口(図示せず。)を設け、活性炭19の挙動を観察しながら送風機57の風量、活性炭の量等を調整することで、容易に再現することができる。送風機57の風量が極端に大きく活性炭19の量が極端に少ないと、活性炭は飛散してしまう。反対に、送風機57の風量が極端に小さく活性炭19の量が極端に多いと、活性炭は静止して動かなくなる。しかし、実際問題として、活性炭19の挙動を観察しながら、送風機の風量、活性炭の量等を調節して、活性炭19が動的に挙動する状態を再現することは極めて容易であった。
【0055】
図3の脱臭装置100の活性炭700は、脱臭作業約30分経過後に取り出してみると、上流側に位置する活性炭の上流側に曝された一面のみ真っ白く樹脂が付着していた。これに対して、図4の脱臭装置20の活性炭は、脱臭作業1日経過後に取り出しても、全ての活性炭が一様にグレー気味に僅かに変色しているだけであった。即ち、全ての活性炭の全ての表面(孔の内周面を含む。)が、吸着作用に寄与していることが分かった。更に、大量の活性炭を収納できるため、脱臭作用の寿命が大幅に延びることが分かる。
【0056】
[脱臭装置の利用方法]
図7及び図8を参照しながら、この脱臭装置の利用方法、即ち、図1Bに示した地下ピットからの排気・脱臭の様子を説明する。図7は、コンクリート躯体51,52,53−1,53−2,53−3で形成された蓄熱水槽55,56を示している。水槽55は、コンクリート躯体に対して断熱材層、防水材層等の吹付け作業が実施されている作業実施水槽(現場)であり、水槽56は隣接の水槽である。作業実施水槽55及び隣接水槽56は、開口63を介してつながっており、全体として密室空間を形成している。送風機57の一方に接続された排気ダクト58を開口64から隣接水槽56の内部に挿入し、汚染空気(有臭ガス)60を吸引して脱臭装置10,20に送り込む。この結果、作業実施水槽55には開口62を通して新鮮な空気59が流入して酸欠は防止される。更に、汚染空気(有臭ガス)60は、脱臭装置10,20によって脱臭されて大気中に拡散される。
【0057】
同様に、図8は、コンクリート躯体51,52,53−1,53−2,53−3,53−4で形成された蓄熱水槽55,56−1,56−2を示している。水槽55は、作業実施水槽(現場)であり、水槽56−1,56−2は隣接水槽である。送風機57の一方に接続された排気ダクト58を開口64から隣接水槽56−2の内部に挿入し、汚染空気(有臭ガス)60を吸引して脱臭装置10,20に送り込む。この結果、作業実施水槽55には開口62を通して新鮮な空気59が流入することにより酸欠は防止される。更に、汚染空気(有臭ガス)60は、脱臭装置10,20によって脱臭されて大気中に拡散される。
【0058】
図4に示す脱臭装置10を、図7及び図8に示す方法でまる1日使用しても、脱臭作用が劣化することがないことを確認した。更に、その間、排気の流れが止まるような問題も生じなかった。即ち、図3の試作脱臭装置100で摘出された種々の問題点、例えば、(1) 活性炭フィルタが極めて短時間に脱臭作用を喪失する問題、(2) 排気ダクトからの排気の流れが活性炭フィルタで阻害されて下流側にほとんど流れない問題等は、いずれも解決されたことを確認した。
【0059】
特に、図3の脱臭装置100では、装置からの排気ガスを吸っていると、数分で臭気の除去が不十分で臭いが感じられる状況にあった。しかし、図4及び5の脱臭装置10,20では、脱臭作業一日経過後でも脱臭機能は衰えず、何の臭気も感じられなかった。
【0060】
[代替例その他]
以上、本発明に係るエアーによる吸着材循環型脱臭装置の実施形態を説明したが、これらは例示であって、本発明を限定するものではない。当業者が、本実施形態に対して容易になしえる追加・変更・削除・改良等は、本発明に含まれる。例えば、次のようなものである。
【0061】
(1)脱臭の対象は任意
蓄熱槽の有機溶剤を含んだ樹脂の塗布作業現場からの排気を脱臭して排気する対象を例にとって説明したが、これに限定されない。この脱臭装置は、吸着物質(活性炭)を比較的大量に収納でき、吸着作業中に吸着物質(活性炭)を動的に挙動させて全ての吸着物質(活性炭)の全ての表面を臭気に曝すことが出来るので、あらゆる対象に適用できる。この脱臭装置は、臭気が比較的強い排気の脱臭に対して特に効果的である。
【0062】
(2)脱臭装置の並列接続
脱臭して排気する対象が、この脱臭装置の脱臭容量に比較して大きい場合、2台以上の脱臭装置を並列接続して対応することも出来る。
【0063】
(3) 脱臭装置の直列接続
作業現場が、非常に大きなビルの内部にあり、脱臭装置からの無臭ガスをビル内の人間の居住空間に排気しなければならないような場合、脱臭を一層完璧にする必要がある。このような場合には、2台以上の脱臭装置を直列に接続して対応することも出来る。
【0064】
この場合、第1段の脱臭装置では、比較的大きなサイズの活性炭(吸着材)を用い、第2段以降の脱臭装置では、比較的小さなサイズの活性炭(吸着材)を用いることもできる。また、必要に応じて、脱臭装置の間に送風機を介在させて、ガスの流通過程の途中で圧力を再度高めることも出来る。
【0065】
更に、複数台の脱臭装置を直列接続した脱臭装置群を複数群用意し、これらを並列接続してもよい。
【0066】
(4)1台の脱臭装置内に、活性炭(吸着材)を複数段に設けた多段脱臭装置
上記(2)の脱臭装置の直列接続では、複数台の脱臭装置を直列接続している。しかし、図9に示すように、1台の脱臭装置内に、活性炭(吸着材)を多段構造19−1,19−2に設けた装置であってもよい。この場合、脱臭装置は1台であり、専有面積を小さくすることが出来る。このような多段脱臭装置では、有臭ガス取り込み口に近い第1段の活性炭(吸着材)は、比較的大きなサイズの活性炭(吸着材)を用い、無臭ガス排出口に近い後段に近づくにつれ活性炭(吸着材)は、比較的小さなサイズの活性炭(吸着材)を用いることもできる。
【0067】
(5)複数の種類の活性炭を混ぜて使用
活性炭用かご部材24(図6参照)に1種類の活性炭を載せる実施形態に関して説明したが、かご部材24の中に複数の種類の活性炭を混ぜて使用してもよい。例えば、成形炭(ペレット炭)と薫炭とを混ぜて使用するような場合である。
【0068】
(6) 複数の種類の吸着材の使用
上記(2)の脱臭装置の直列接続や上記(3)の1台の脱臭装置内に吸着材を多段構造に設けた装置の場合、各段の吸着材として、別の種類の吸着材を使用してもよい。更に、各段の吸着材として、複数の種類の吸着材を混ぜて使用してもよい。これらは、有臭空気の種類によって、適宜選択される。勿論、吸着材として活性炭を使用する場合も同様に、複数の種類の活性炭の使用ができる。
【0069】
(7)送風機の一体化
脱臭装置と送風機とを別体なものとして説明したが、これに限定されない。送風機を、例えば、有臭ガス取り入れ筒12、無臭ガス排気筒13、又は容器11の一部に取り付け可能にしてもよく又は組み込んで一体化してもよい。送風機一体型脱臭装置では、排気ダクトを用意するだけで、現場で排気作業が出来る。
【0070】
従って、本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲の記載によって定められる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、ビルの二重スラブによって形成された空きスペースを水蓄熱槽として利用した水蓄熱式空調システムの一例を示す図である。
【図2】図2は、最下階の床スラブと基礎スラブの間の空間を利用して形成された水蓄熱槽の詳細図である。
【図3】図3は、本発明者等が、当初試作した脱臭装置の断面図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る脱臭装置の一例であり、図で見て左半分は外形側面図であり、右半分は断面図である。
【図5】図5は、現場への搬入性を考慮して更に改良した脱臭装置であり、図で見て左半分は外形側面図であり、右半分は断面図である。
【図6】図6は、図4及び5の脱臭装置で使用される活性炭用かご部材を示す図である。
【図7】図7は、本実施形態に係る脱臭装置の利用法を説明する図である。
【図8】図8は、本実施形態に係る脱臭装置の利用法を説明する図である。
【図9】図9は、1台の脱臭装置内に、活性炭(吸着材)を多段構造に設けた脱臭装置を説明する図である。
【符号の説明】
【0072】
1:ビル、 2:空きスペース,空間、 3:熱源機、 4:水蓄熱槽,蓄熱槽、 5:床スラブ、 6:基礎スラブ、 5,6,7:コンクリート躯体、 8:断熱材、 9:防水材、 11u:上側容器、 11d:下側容器、 12:有臭ガス取り入れ筒、 13:無臭ガス排気筒、 14−1,14−2,14−3,14−4,14−5,14−6:フランジ、 15:蓋部材、 16:底部材、 17u,17d:空間,チャンバ、 19:活性炭、 20:脱臭装置、 22:支持部材,梁部材、 24:活性炭用かご部材、 57:送風機、 58:排気ダクト、 100:脱臭装置、 200,300:容器、 600:袋状メッシュ部材、 700:活性炭、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動された有臭ガスを下方から取り込み、鉛直方向上方に流して、上方から無臭ガスとして排出する容器と、
前記容器の中間部に形成された、ガスが流通可能な開口を有する支持部材と、
前記支持部材に載せられた吸着材とを備え、
前記吸着材は、前記駆動された有臭ガスにより舞上げられ、自重で落下し、これ繰り返す、動的な状態で挙動するようにしたことを特徴とする、脱臭装置。
【請求項2】
請求項1に記載の脱臭装置において、
前記吸着材は、活性炭、合成ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ、活性ボーキサイト、活性フーラスアース、骨炭、及びこれらの任意の混合物から成る群から選択された1つ以上のものである、脱臭装置。
【請求項3】
請求項1に記載の脱臭装置において、
前記有臭ガスの原因物質は、有機溶剤を含んだ樹脂のミストである、脱臭装置。
【請求項4】
請求項1に記載の脱臭装置において、
前記容器の形状は、円筒形状又は多角形の柱状形状である、脱臭装置。
【請求項5】
請求項1に記載の脱臭装置において、
前記吸着材は、ガスが流通可能な開口を有するかご部材に収納され、前記支持部材に載せられている、脱臭装置。
【請求項6】
請求項1に記載の脱臭装置において、
前記有臭ガスは、前記脱臭装置の上流側に配置された送風機により加圧駆動され、或いは、前記有臭ガスは、前記脱臭装置の下流側に配置された送風機により吸引駆動されている、脱臭装置。
【請求項7】
請求項1に記載の脱臭装置において、
ガスの流通の上流から下流に、複数個の支持部材を備え、各支持部材に前記吸着材を載せている、脱臭装置。
【請求項8】
請求項7に記載の脱臭装置において、
前記複数個の支持部材には、各々、1又は複数の種類の吸着材が載せられており、
前記複数個の支持部材に載せられた吸着材は、1又は複数の種類の吸着材から成る、脱臭装置。
【請求項9】
有臭ガスを下方から取り込み、鉛直方向上方に流して、上方から無臭ガスとして排出する容器、該容器の中間部に形成されたガスが流通可能な開口を有する支持部材、及び該支持部材に載せられた吸着材とを有する脱臭装置の使用法において、
前記有臭ガスを駆動して前記吸着材を舞上げ、該吸着材は自重で落下し、これ繰り返し、
全ての前記吸着材の全表面を前記有臭ガスに曝すようにした、脱臭装置の使用法。
【請求項10】
複数台の請求項1に記載の脱臭装置を並列、直列又はこれらの組み合わせに接続して使用する、脱臭装置の利用方法。
【請求項11】
請求項1に記載の脱臭装置の間に送風機を介在させ、ガスの流通過程の途中で圧力を再度高めている、脱臭装置の利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−291549(P2009−291549A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150831(P2008−150831)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】