説明

エアー搬送ダクト付き乾燥機、および、洗濯物の搬送方法

【課題】 連続洗濯機の下流に配置されて流れ作業する乾燥機を改良し、「検査合格品の主流」に対して「検査不合格・再製品の復帰流」を合流せしめ得るようにする。
【解決手段】 乾燥機3に吸込ダクト7を付設し、熱風吸引用ファン24を利用して、再洗濯物10を吸入口8から吸入する。当該乾燥機3の連続運転を中断させることなく、ダクト取付部シャッタ13を開き、ヒータ入口開閉ドア27を閉めることで再洗濯物を乾燥機内へ吸入する。検査合格品の主流は投入口6から挿入され、排出口22から矢印iのように排出される。検査不合格・再製品である再洗濯物10は復帰流としてダクト取付部シャッタ13から吸入され、前記の主流に合流して排出口22から排出(矢印i)される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続洗濯機と協働して稼働する乾燥機における洗濯物の搬送技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は、連続洗濯機を設けた洗濯工場の概要的な工程図である。
矢印aのように連続洗濯機1へ供給された洗濯物は、予洗・本洗・すすぎ・脱水されて、ケーキと呼ばれる状態になり、検査工程2を経て乾燥機に送給される。
何基の乾燥機を設けるかは、連続洗濯機と乾燥機との能力バランスによって決まり、工程設計上の問題であるが、一般には複数基の乾燥機が配設される。
本例では3基の乾燥機3a,3b,3cが設けられていて、検査に合格した洗濯物は矢印cのように乾燥機へ送られる。
【0003】
仕上げの工程で発見された検査不合格品(汚れが残っている洗濯物)は、矢印eのように分別されて仮置場4に集積される。集積量が1回の洗濯量に達すると、矢印fのように再洗濯機5に投入される(再洗濯機という機種が有る訳ではなく、用途に基づく呼び名である)。
検査不合格品が再洗濯機5で洗濯されて良品に再生されると、矢印gのように乾燥機に搬送され、投入される。
このようにして、乾燥機3a,3b,3cからは良品が送出(矢印d)されてゆく。
【特許文献1】特開平10−151299号公報
【特許文献2】特開2004−105287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前掲の図4に例示した連続洗濯機設備は一貫連続で稼働しているが、再洗濯済みの洗濯物を矢印gのように搬送して乾燥機3aへ投入する際、該乾燥機3aと移送コンベアとを停止させなければならない。
連続洗濯設備全体が一貫連続で自動運転されているので、臨時に乾燥機3aと移送コンベアとを停止させると、連続洗濯設備が止まってしまう。乾燥機停止の影響がどの範囲まで及ぶかは種々の条件によって異なるので一概には言えないが、通常の場合、洗濯設備の生産性に影響を与える。
【0005】
本発明は以上に述べた事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、連続洗濯機と協働して連続運転されている乾燥機に対して、その運転を中断させることなく洗濯物を合流せしめ得る技術を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために創作した本発明の基本的な原理について、その1実施形態に対応する図1を参照して略述すると次の通りである。
乾燥機3は一般に、熱風吸引用ファン24を有している。
このファンの吸引力を利用して、吸込ダクト7の吸入口8から洗濯物10を吸入(矢印h)する。
この時外気を吸い込むヒータ入口開閉ドアを開き、シャッタを開けることにより、吸入口8からの吸引が発生する。
【0007】
従来例の連続洗濯設備を描いた図4を援用して本発明の概要を述べれば、再洗濯機5から出た洗濯物を矢印gのように搬送せず、吸込ダクト7の吸入口8に吸い込んで矢印j矢印kのようにダクト搬送して乾燥機3aに吸入させる。
これにより、乾燥機の運転を中断させないで洗濯物供給・合流が可能になる。
矢印a→矢印b→矢印c→矢印dのように流れている主流の洗濯物と、矢印eのように分流した後、再度合流させようとする洗濯物とは、元来同じ品物であるから、合流させて区別できなくなっても一向に差し支え無い。
【0008】
請求項1の発明に係るエアー搬送ダクト付き乾燥機の構成は、
(図1参照)洗濯物の投入口ドアがが設けられるとともに、排出口(22)にドア(11,12)が設けられているパッスルー式乾燥機(3)において、
乾燥機用の熱風吸引用ファン(24)の吸入力を利用して洗濯物を乾燥機内へ吸入する吸込ダクト(7)を具備していることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明に係るエアー搬送ダクト付き乾燥機の構成は、前記請求項1の発明装置の構成要件に加えて、
(図1参照)前記乾燥機(3)の排出側に、乾燥済み洗濯物を排出する排出口(22)が設けられ、かつ、前記吸込ダクト(7)が上記の排出側に接続されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明に係るエアー搬送ダクト付き乾燥機の構成は、前記請求項1または請求項2の発明装置の構成要件に加えて、
(図1(B)および図2参照)吸込ダクト(7)の、乾燥機(3)に対する接続部付近がスイベルジョイント(14)の周りに傾動し得る可動部になっており、上記可動部の先端が「シャッタ(13)を介して乾燥機に接続される前進位置」と、「ドアの開閉を妨げない退避位置」との間を往復移動し得る構造であることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明に係るエアー搬送ダクト付き乾燥機の構成は、前記請求項1または請求項2の発明の構成要件に加えて、
(図3参照)乾燥機の排出口(18)に設けられた排出口ドア(19)にダクト挿通孔(20)が穿たれていて、吸込ダクト(7)が該ダクト挿通孔(20)と緩やかに嵌合するとともに、
上記ダクト挿通孔の内周と吸込ダクトの外周との間に、フレキシブルなシール部材(21)が装着されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明に係る洗濯物搬送方法の構成は、
(図4参照)連続洗濯機(1)で洗濯・脱水された洗濯物を、乾燥機(3a〜3c)へ送給し、仕上げで検査される。検査不合格品を選り分けて再洗濯(5)した後、前記乾燥機へ投入して検査合格品に合流させる方法において、
再洗濯済みの洗濯物を、吸込ダクト(7)によって乾燥機(3a)へ搬送(矢印j,矢印k)することを特徴とする、。
【0013】
請求項6の発明に係る洗濯物搬送方法の構成は、前記請求項5の発明の構成要件に加えて、
(図4参照)吸込ダクト(7)による洗濯物搬送を、乾燥機に設けられている熱風吸引用ファンの吸引力によって行ない、
かつ、乾燥機(3a〜3c)の運転を中断することなく継続しつつ、該乾燥機へ搬送された洗濯物を乾燥機内へ吸入させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係るエアー搬送ダクト付き乾燥機を適用すると、乾燥機をして本来の一貫自動運転させることもでき、かつ、その運転を中断させることなく、洗濯物を該乾燥機に合流させることもできる。
この作用により、連続洗濯設備の運転に悪影響を及ぼすことなく、分流していた洗濯物を合流させることができる。
【0015】
請求項2に係る発明を請求項1のエアー搬送ダクト付き乾燥機に併せて適用すると、乾燥機の設計的自由度が大きく、吸込ダクトの設置が容易である。
【0016】
請求項3に係る発明を請求項1又は請求項2のエアー搬送ダクト付き乾燥機に併せて適用すると、
吸込ダクト7の取付部が可動であり、通常の作業時は退避できるので邪魔にならない。とりわけ投入時、本来的に乾燥機の前に設置されている移送コンベアの妨げにならない。
【0017】
請求項4において、シャッタの代りに吸込み口を塞ぐ蓋25(図3参照)を設けても同様な効果が得られ、製造コストを低減することができる。
【0018】
請求項5に係る洗濯物搬送方法を適用すると、連続洗濯機によって多数の洗濯物を連続的に一貫作業で流すことを妨げず、しかも、検査不合格品を再洗濯した再生品を合流させることができる。
【0019】
請求項6の発明方法を請求項5の洗濯物搬送方法に併せて適用すると、専用の搬送用動力源を設置する必要が無く、乾燥機の熱風吸引用ファンを利用して搬送することができ、しかも、乾燥機の運転を中断させずに洗濯物を合流せしめることができるので、連続洗濯設備全体の生産性に悪影響を及ぼさない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明の1実施形態を示し、(A)は洗濯物の投入側から見た正面図、(B)は側面図である。図2は上記の実施形態を洗濯物排出側から見た背面図である。
(図1参照)(B)図において乾燥機3の左方は洗濯物の投入側であり、右方は同じく排出側である。
(A)図に表されているように、投入側には投入ドア6が設けられ、上下にスライドし、通常移送コンベアからの品物を受け入れることができる。
【0021】
(図1(B)参照)乾燥機3の排出側には排出ダクトが設けられている。符号22を付して示したのは、その排出口である。上記排出ダクトの中で、排出側のドアが開閉する。符号11を付して示したのは閉止位置のドアであり、符号12を付して示したのはは開放位置のドアである。矢印iは洗濯物の排出経路を表している。
前記のドアには、吸込ダクト7を接続するための開口が設けられていて、シャッタ13で開閉可能に覆われている。
【0022】
乾燥機3の排出側には、以下に説明するように吸込ダクト7が取り付けられている。
(図1(B)参照)吸込ダクト7の中間部、乾燥機寄りにスイベルジョイント14が設けられている。該スイベルジョイントよりも左側は固定構造物である。右側は可動部であって、スイベルジョイントを中心として傾動し得るようになっている。
符号15を付して示したのは、ダクト可動部が右回り(時計方向)に傾動して乾燥機3本体に接続する前進位置である。符号16を付して示したのはダクト可動部が左回り(反時計方向)に傾動して乾燥機本体から離間した退避位置である。
スイベルジョイント14と、吸込ダクト7と、ダクト取付部シャッタ13との位置関係については、背面図(図2)を参照されたい。
【0023】
吸込ダクト可動部が前進位置15になると、ダクト取付部シャッタ13が開かれ、該ダクトは乾燥機3本体内に連通する。吸込ダクト可動部が退避位置16になると、ドアの開閉を妨げない。
吸込ダクト可動部を前進位置15ならしめた状態でヒータ入口開閉ドアを閉めシャッタ13を開け、乾燥機の熱風吸引用ファン24を利用して、吸込ダクト7から大気を吸入することができ、その吸入口8に再洗濯物10を近づけると矢印hのように吸い込まれる。
吸い込まれた洗濯物は吸込ダクト7内を通って乾燥機3内に吸入される。このようにして、乾燥機3の運転を継続しながら再洗濯物10を乾燥機3内へ供給することができる。
【0024】
図3は、前記と異なる実施形態を示す。符号17を付して示したのは乾燥機の背面側(排出側)の壁であり、排出口18が穿たれている。
排出口ドア19は、往復矢印mnのように開閉可能に蝶着されるとともに、ダクト挿通孔20が穿たれている。
上記ダクト挿通孔20よりも小径の吸込ダクト7が挿通固定されている。そして両者の間の隙間が、フレキシブルベローズ21でシールされている。
このように構成しても、ドアの開閉を妨げることなく、吸込ダクト7を乾燥機本体に接続することができる。この構造(図4)は前記の実施形態(図1,図2)に比してダクト取付部シャッタ13が無いので製作コストが低廉である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るエアー搬送ダクト付乾燥機の連続洗濯機1実施形態を示し、(A)は投入口側から見た正面図、(B)は側面図
【図2】前掲の図1に示した実施形態のエアー搬送ダクト付乾燥機の連続洗濯機を排出口側から見た背面図
【図3】前記と異なる実施形態のエアー搬送ダクト付乾燥機を示し、排出口付近の側面を描いた拡大詳細断面図
【図4】連続洗濯設備のレイアウトを示し、従来例を実線と鎖線とで描き、本発明の概要を破線で付記した平面図
【符号の説明】
【0026】
1…連続洗濯機
2…脱水機
3…乾燥機
4…仮置場
5…再洗濯機
6…投入口
7…吸込ダクト
8…吸入口
9…ワゴン
10…再洗濯物
11…閉止位置のドア
12…開放位置のドア
13…ダクト取付部シャッタ
14…スイベルジョイント
15…ダクト可動部前進位置
16…ダクト可動部退避位置
17…乾燥機壁
18…排出口
19…排出口ドア
20…ダクト挿通孔
21…フレキシブルベローズ
22…排出口
24…熱風吸引用ファン
25…蓋
26…ヒータ
27…ヒータ入口開閉ドア
a…連続洗濯機への送給を表す矢印
b…連続洗濯機からの送出を表す矢印
c…乾燥機への送給を表す矢印
d…乾燥機からの送出を表す矢印
e…検査不合格品の分別を表す矢印
f…再洗濯機への送給を表す矢印
g…再洗濯機からの送出を表す矢印
h…吸込ダクトへの吸入を表す矢印
i…乾燥機からの排出を表す矢印
j…吸込ダクトへの吸入を表す矢印
k…乾燥機への合流を表す矢印
m…排出口ドアの閉扉を表す矢印
n…排出口ドアの開扉を表す矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物の投入口にドアが設けられるとともに、排出口にドアが設けられているパッスルー式乾燥機において、
乾燥機用の熱風吸引用ファンの吸入力を利用して洗濯物を乾燥機内へ吸入する吸込ダクトを具備していることを特徴とする、エアー搬送ダクト付き乾燥機。
【請求項2】
前記乾燥機の排出側に、乾燥済み洗濯物を排出する排出口が設けられ、かつ、前記吸込ダクトが上記の排出側に接続されていることを特徴とする、請求項1に記載したエアー搬送ダクト付き乾燥機。
【請求項3】
吸込ダクトの、乾燥機に対する接続部付近が、スイベルジョイントの周りに傾動し得る可動部になっており、
上記可動部の先端が「シャッタを介して乾燥機に接続される前進位置」と、「ドアの開閉を妨げない退避位置」との間を往復移動し得る構造であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載したエアー搬送ダクト付き乾燥機。
【請求項4】
乾燥機の排出側に設けられた排出口ドアにダクト挿通孔が穿たれていて、吸込ダクトが該ダクト挿通孔と緩やかに嵌合するとともに、
上記ダクト挿通孔の内周と吸込ダクトの外周との間に、フレキシブルなシール部材が装着されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載したエアー搬送ダクト付き乾燥機。
【請求項5】
連続洗濯システムによって洗濯・脱水・乾燥された洗濯物から検査不合格品を選り分けて再洗濯した後、乾燥機へ投入して検査合格品に合流させる方法において、
前記の再洗濯を済ませた洗濯物を、吸込ダクトによって乾燥機へ搬送することを特徴とする、洗濯物の搬送方法。
【請求項6】
吸込ダクトによる洗濯物搬送を、乾燥機に設けられている熱風吸引用ファンの吸引力によって行ない、
かつ、乾燥機の運転を中断することなく継続しつつ、該乾燥機へ搬送された洗濯物を乾燥機内へ吸入させることを特徴とする、請求項5に記載した洗濯物の搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−117336(P2007−117336A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312464(P2005−312464)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(390027421)株式会社東京洗染機械製作所 (47)