説明

エキシマランプ装置

【課題】 ランプの端部領域における処理ムラの発生を低減できて、ランプの有効発光長のほぼ全体において有効に基板を処理することが可能なエキシマランプ装置を提供すること。
【解決手段】 本発明に係るエキシマランプ装置は、エキシマ光を放射する棒状のエキシマランプと、このエキシマランプを収容する筐体と、この筐体の内部に前記エキシマランプに対して不活性ガスを供給するガス供給機構とを備えてなるエキシマランプ装置であり、前記エキシマランプは、前記不活性ガスの上流側に突出するようベースが取り付けられてこのベースより導出される給電用リードを有し、前記ベースは、外端から内端に向かって突出高さが徐々に小さくなる傾斜部を備えて構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネル基板、半導体ウエハ、磁気ディスク基板、光ディスク基板等のように、ガラス、半導体、樹脂、セラミックス、金属等や、それらの複合された基板表面に紫外光を照射して、洗浄、エッチング等を行う基板処理に使用されるエキシマランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1などで知られるエキシマランプを搭載したエキシマランプ装置は、エキシマランプから放射される200nm以下100nm以上の範囲の紫外光を、酸素が微量存在する雰囲気下において被処理物の表面に照射し、発生した活性酸素と透過した紫外光の相乗効果によって被処理物の表面の有機物等を分解飛散させて洗浄を行うものである。
すなわち、エキシマランプから例えば波長172nmの紫外光を基板表面に照射して、有機物を構成する化学結合を分解することにより低分子化させると共に、有機汚染物を活性化させる。同時に、基板表面に浮遊する酸素に紫外光を照射し、生成された活性酸素によって、有機汚染物を活性酸素との酸化反応によって揮発物質に変換し、空気中に放出して除去する。
【0003】
このようなエキシマランプを用いたドライ洗浄は、酸素を分解する際に紫外光が消費されるために、エキシマランプと基板との間に存在する酸素の量によって基板表面に到達する紫外光が変化するため、有機汚染物の酸化に必要とされる量以上に高濃度の酸素分子が存在する場合、紫外線が無駄に消費されて基板表面に到達できないことになる。このため、エキシマランプ装置においては改良が重ねられ、紫外光を有効利用する技術について開発されている。
例えば、複数の棒状のエキシマランプをほぼ密閉状態とされた矩形箱状の筐体内部に配置して、かかる筐体内部を紫外線透過性の雰囲気すなわち窒素ガスなどの不活性ガスを充填した雰囲気に変換し、筐体の一面に設けられた紫外線透過窓部材を介して紫外線を放射するエキシマランプ装置や、紫外線透過窓部材を通過した紫外線が無駄に消費されないように窓部材と基板との間に窒素ガスなどの不活性ガスを流して酸素分圧を低くすることにより、紫外線透過性を高めるようにしたエキシマランプ装置が知られている。
【0004】
一方、上記技術はランプと基板の間に紫外線透過窓部材を備えたものであるが、近時では被処理物である液晶パネル基板が大面積化しており、これに対応する紫外線透過窓部材の製造が困難となってきている。このため窓部材を用いず、エキシマランプからの紫外線を直接基板に照射するエキシマランプ装置が開発されている。
このようなものにおいて、特許文献1に開示されるようにエキシマランプから基板に向けて流す不活性ガスの流れを制御するものが知られている。
【0005】
この技術について、図10を参照して説明する。図10は、紫外線を放射するランプ82群全体を収容する筐体80に、四周から囲んで下面側を開放させた開放ハウジング86を設け、この開放ハウジング86の天井部に例えばステンレス板に1〜3mmの孔を多数形成した多孔のガス拡散板85を配置し、ここから窒素ガス(不活性ガス)を供給して、紫外線ランプ82の周囲からワーク(被処理物)Wの紫外線照射空間にかけて全体を窒素で満たし、エキシマランプ82からの紫外光の減衰を抑えて効率よく基板に紫外線を照射する、というものである。なお、この紫外線ランプを備えた処理装置においては、搬送機構84によってワークWが運ばれるものであり、例えば窒素ガスは装置の駆動中、常に供給された状態であり、搬送機構84の下部の排気孔83から不要なガスが排気されて、ガスの流過方向が一定状態で使用されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−197291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような技術分野において、ワークとなる液晶ディスプレイ用パネル基板では、その大きさがG8(2400mm×2100mm)という大きなガラス基板を処理する必要があり、近時では、生産コストを下げるため、基板の大きさはますます大面積化が要求されている。このような大型基板を処理するには、エキシマランプ装置においても処理面積を大型化する必要がある。しかしながら、ランプ光放射領域長さとほぼ同等の幅の基板を処理しようとした場合、ランプの端部近傍で処理ムラが生じることがある。この処理ムラをなくすには、簡単にはランプの有効発光長を長くすると共に、筐体すなわち装置全体を大型化することが考えられる。しかしながらこの対策では、ランプの端部近傍における処理ムラをなくすという根本的な解決策にはなっていない。このため、更に基板が大型になった場合には同様の問題が発生する。
【0008】
そこで本発明が解決しようとする課題は、ランプの端部領域における処理ムラの発生を低減できて、ランプの有効発光長のほぼ全体において有効に基板を処理することが可能なエキシマランプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エキシマ光を放射する棒状のエキシマランプと、
このエキシマランプを収容する筐体と、
この筐体の内部に前記エキシマランプに対して不活性ガスを供給するガス供給機構とを備えてなるエキシマランプ装置において、
前記エキシマランプは、前記不活性ガスの上流側に突出するようベースが取り付けられてこのベースより導出される給電用リードを有し、
前記ベースは、外端から内端に向かって突出高さが徐々に小さくなる傾斜部を備えて構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエキシマランプ装置によれば、ランプの端部において不活性ガスの流れが整えられるので、不活性ガスの濃度をランプの有効発光長全体において均一にできる。この結果、ランプ端部の直下において、紫外光が吸収されることを抑えることができ、ランプの有効発光長のほぼ全長に亘って基板の処理が可能になり、装置全体を小さく構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るエキシマランプ装置全体の構成を説明する説明用平面図である。
【図2】図1のエキシマランプ装置の説明用断面図である。
【図3】図1中のエキシマランプの図であり、(a)上から見た図、(b)断面図である。
【図4】図1の装置要部(ベース近傍)を拡大して示す説明図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るベースの図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係るベースの図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係るベースの図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係るエキシマランプ装置全体の構成を説明する説明用平面図である。
【図9】図8のエキシマランプ装置の説明用断面図である。
【図10】従来技術に係る紫外線照射装置を説明する説明用図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
図1は本発明の実施形態に係るエキシマランプ装置全体の構成を説明する説明用平面図、図2は図1のエキシマランプ装置を横方向から見た説明用断面図である。図3は図1のエキシマランプの図であり(a)上から見た図、(b)断面図である。また、図4は、図1の装置要部(ベース近傍)を拡大して示す説明図である。
【0013】
図1において、エキシマランプ装置10は、ワークを搬送する搬送機構41の周囲を取り囲む枠体40の上部に筐体11が載置されることにより設置されている。ワークWである液晶パネル基板などが搬送機構41によって搬送され、エキシマランプ装置10の直下を通過すると、エキシマランプ20から放射された紫外光、例えば波長172nmの真空紫外の光がこのワークWに照射され、表面のドライ洗浄が行われる。
【0014】
エキシマランプ装置10は、筐体11の内部に不活性ガス(例えば、窒素(N)ガス)を一時的にパージする予備室12を備えており、更に、この予備室12とエキシマランプ20の間に、多数の小孔よりなる通気孔14を備えた整流板13を備えている。ガス供給源(不図示)などから筐体11内部に不活性ガスが供給されると、ガスは予備室12から整流板13の通気孔14を通過することによって流れが均一化され、エキシマランプ20に向かって噴出するようになる。
すなわち、このエキシマランプ装置10においては、ガス供給源(不図示)、筐体11内部に設けられた予備室12および整流板13によって、エキシマランプ20に対してガスを噴出するガス供給機構が構成されている。
【0015】
エキシマランプ装置10には、筐体11内部に複数のエキシマランプ20が、図2に示すように光取り出し部21Aが同一面上に配置されるよう並んで配置されている。
【0016】
エキシマランプ20は、図2、図3に示すように、略矩形箱状の放電空間Sを備えてなるものであり、合成石英ガラスなどの紫外線透過性を有する誘電体よりなる放電容器21の上面と下面に一対の外部電極22,23を備えて構成されたものである。放電容器21内には、エキシマ放電用のガスが所定の封入量で封入され、例えば放電ガスとしてキセノンガスを使用する場合は10〜70kPa封入される。
【0017】
エキシマランプ20における下面側の電極22は金、銀、銅、ニッケル、クロム等の耐食性を有する金属のペースト等を印刷または蒸着で形成したものであり、放電空間S内で生成された紫外光が透過できるよう、例えば網目状に構成されている。一方、ワークWとは反対側に位置される上面側の電極23は光透過性については不要であるが、下面側の電極22と同様の形態で構成してもよい。
エキシマランプの上側面の電極23もまた上記と同様、金、銀、銅、ニッケル、クロム等、耐食性を有する金属のペースト等を、放電容器21の外表面上に直接塗布することによって形成される。
【0018】
図3において、エキシマランプ20のベース30側の端部20Aには、放電容器21上に導電性ペースト等で形成された配線パターンよりなるリード部22a,23aが設けられている。これらリード部22a,23aは各々、電極22,23と連絡して形成されており、放電容器21における、光取り出し面21Aと反対側、すなわち、この図において上側に導出され、それぞれ給電用リード線24,25と接続されている。これにより、電極22,23と給電用リード線24,25との電気的接続が達成されている。
【0019】
このようなエキシマランプ20の給電構造においては、高電圧が印加されるため、絶縁性の確保と、給電部構造の保護のために、ベース30が装着される。上述したように、放電容器21の上側面(換言すると光取り出し面21Aとは異なる面)にそって給電用リード線24,25を導出することで、同図のようにベース30を下側に向かって突出させることなく装着することができる。この結果、光取り出し面21AとワークWとをより接近させて配置することができるようになる。
【0020】
仮に、ベースが光取り出し面に向かって突出させた場合には、ワークにそりや位置ずれが生じた場合、ベースとの衝突を回避することができずに重大な事故につながる可能性がある。これを回避するには、ワークのサイズに対して、エキシマランプの全長を伸ばす、或いは、エキシマランプとワークとを間隔をあけて配置するなどの対策を講じなければならない。
【0021】
しかしながら、本実施形態にかかるエキシマランプ装置では、ベース30を放電容器21の上側面にのみ突出させているため、仮にワークWの位置が幅方向にずれることがあったとしても、ワークWがベース30に衝突することがなく、信頼性が高い装置とすることができる。この結果、エキシマランプ20の光取り出し面21AとワークWとの間隔を5mm以下というような非常に接近させた状態に配置することが可能となる。
【0022】
本発明において、ベース30は、耐熱性と絶縁性に優れた材質より構成され、好ましくはステアタイト、アルミナなどの無機絶縁性材料よりなる。本実施形態においてベース30は、放電容器21の形状に従って概略矩形箱状に形成されており、図4に示すように、ランプの上側方向に突出する厚みがエキシマランプ20の発光部側に向かって徐々に小さくなるような傾斜部31を備えて構成されている。
【0023】
このように、ベース30の厚みをエキシマランプ20の発光部に向かって徐々に小さく構成することで、図5に示すように、ランプ上方から流過する不活性ガス(ここではNガス)の流れが乱れることなく、発光部側に誘導され、ワークWの近傍においてエキシマランプ端部20A近傍における不活性ガスの濃度を均一化することができるようになる。
【0024】
従って、エキシマランプ20の端部20Aにおける不活性ガスの濃度を、エキシマランプ20の中央部のそれとほぼ同等にすることができ、酸素等の紫外光吸収分子の存在によって紫外光が吸収されることを防止でき、エキシマランプ20の端部20A近傍においても紫外光の照度を十分に高くすることができるようになる。
この結果、ランプの有効発光長のほぼ全長に亘って基板の処理が可能になり、装置全体を小さく構成することができる。
【0025】
このようなベース構造に関して具体的数値を説明すると、エキシマランプは放電容器21の全長が例えば900〜1700mmであり、幅は40〜50mm、高さは10〜17mmである。ベース30は、全長が例えば70mmであり、幅41〜51mmである。図4(b)において、傾斜部31の面の傾斜角度αは例えば5〜30°であり、より好ましくは10〜20°である。
【0026】
図6(a),(b)は、本発明の他の実施形態にかかるベース構造を説明する拡大図である。
同図において、エキシマランプ及びエキシマランプ装置の基本的構成については、先に図1〜図5で示したものと同等であり、図1〜図5で説明した構成と同等の構成については、同符号で示して詳細説明を省略する。
【0027】
図6(a)において、ベース30の傾斜部31は、ランプ20の発光部側に向かって、ランプの軸方向に徐々に小さくなるよう構成されると共に、ベース30の両端部に向かっても厚みが小さくなるよう傾斜部32a,32b,32cを備えている。このようにベースの中央上部から3方向に傾斜部32a,32b,32cを設けることで、放電容器21の軸方向に加えて幅方向においても不活性ガスの流れを整えることができ、エキシマランプ20の光取り出し面21A方向に向かう気流をいっそう整えることができるようになる。
【0028】
図6(b)に示す実施形態において、第1の実施形態と相違する点は、ベース30に、その側面に沿って気流の流れを軸方向に規制する規制板33を設けた点である。このような規制板33を設けることで、エキシマランプ20の軸方向の流れを更に整えることができる。
【0029】
続いて、図7、図8を参照して本発明の他の実施形態に係るエキシマランプ装置を示す。
図7は、本発明の他の実施形態に係るエキシマランプ装置全体の構成を説明する説明用平面図、図8は図7のエキシマランプ装置を横方向からみた説明用断面図である。同図のエキシマランプ装置において、図1〜図3のものと相違する点は、不活性ガス(窒素ガス)を供給するための機構に関する点のみであり、ベース構造を含めたエキシマランプの構成は同じである。なお図7,図8の説明において先に図1〜図6で説明した構成については同符号で示すこととし、詳細な説明を省略する。
図7,図8において、エキシマランプ装置10の筐体11内には、概略箱状の放電空間を形成するエキシマランプ20が複数配置されている。エキシマランプ20の光取り出し面21A側には、枠体40内に搬送機構41が設置されており、これによりワークWが搬送される。
筐体11内には、断面矩形の管状のガス供給管15が、エキシマランプ20の長さ方向と略平行に伸びるように取り付けられている。このガス供給管15は、不図示のガス供給源から供給された不活性ガス(例えば窒素(N)ガス)を、筐体11の全域に亘って送り込むものであり、当該ガス供給管15の側面部分に多数形成されたガス噴出口15Aから、エキシマランプ20の上部にある予備室12部分にガスを噴出する構成を有している。
【0030】
図8に示すように、ガス供給管15は隣接するエキシマランプ20とエキシマランプ20の間に位置するよう、紙面において上部斜め方向に配置されており、隣接するガス供給管15同士は各々ガス供給口15Aが向き合うように略対向位置に設けられている。
このようなガス供給機構によると、ガス噴出口15Aから噴出したガス流が、エキシマランプ20の上部(ワークと反対側)ガス供給管15の間において衝突し、ガス流を3次元的に発散させ、筐体内の雰囲気を滞留させることなく置換できるという利点を有している。
【0031】
図7に示すように、エキシマランプ20には、当該エキシマランプ20の発光部に向かうに従い、徐々に高さが小さくなるよう構成された傾斜部31を有するベース30が装着されている。このようなエキシマランプ装置10によれば、エキシマランプ20の光取り出し面21Aの反対側から流入する窒素ガスが、傾斜部31の面に沿ってエキシマランプ20の発光部に向かって整流されて流過する。この結果、ランプ端部20A近傍においても不活性ガスの流れが乱されることなくワークW側に流過し、不活性ガス濃度をランプの長さ方向全体で均一化することができる。この結果、ランプの端部領域における処理ムラの発生を低減でき、ランプの有効発光長のほぼ全体において有効に基板を処理することができるようになる。
【0032】
以上、本発明に係るエキシマランプ装置について説明したが、本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能であることは言うまでも無い。例えば、上記実施形態においては、筐体内に組み込まれるガス供給機構について、ガス拡散板やガス供給管の形態のもので説明したが、これらのものに限定されることなく、その他の構成を備えたものも可能である。
【0033】
[実験例]
図9の構成に従いエキシマランプ装置を構成し、下記仕様のエキシマランプを搭載して、実際に液晶基板の表面洗浄処理を行った。
下記にランプの構成を示す。
【0034】
〔ランプ1〕(実施例1)
エキシマランプは、放電容器の寸法が15×43×900mm、肉厚が2.5mmであり、放電容器内にキセノンガスを53kPa封入した。
このエキシマランプに、図3で示した形態のベースを装着した。ベースはステアタイト製で、全長が67.5mm、幅43mm、高さ(最高部)26.5mmであり、傾斜部の面の角度は15°である。
〔ランプ2〕(実施例2)
上記ランプ1のエキシマランプと仕様が同じランプを用い、図6(b)で示した規制板を備えたベースを装着してランプ2を構成した。ベースは、ベースはステアタイト製で、全長が67.5mm、幅43mm、高さ(最高部)26.5mmであり、傾斜部の面の角度は15°であり、側面部分に67.5×26.5mm、厚さ2mmの、同じくステアタイトからなる規制板を装着した。
〔ランプ3〕(参照例1)
上記ランプ1のエキシマランプと仕様が同じランプを用い、図9(b)で示すような傾斜部を備えていないベースを装着してランプ3を構成した。ベースは、ステアタイト製で、全長が67.5mm、幅43mm、高さ26.5mm(一定)の矩形箱型である。
【0035】
〔実験例1〕
図9(a)の構成に従って上記ランプ1を設置し、ランプの直下に液晶ガラス基板を配置してエキシマランプ装置を構成した。エキシマランプから波長172nmの光を照射し、VUV/O洗浄を行って洗浄前後の基板の接触角を測定した。ランプとガラス基板との間隔は4mmであった。窒素ガスの流量は300リットル/minであり、エキシマランプの上部から噴出した。洗浄処理後、基板表面に純水を滴下し、ランプ中央部と、ワーク端部より10mm位置(ベース内端部から20mm位置)の接触角を測定、比較することによって、洗浄処理の均一度を求めた。
〔実験例2〕
エキシマランプ装置について、エキシマランプを上記ランプ2に替えて、上記実験例1と同様に液晶基板のVUV/O洗浄を行って洗浄前後の基板の接触角を測定した。洗浄処理後、基板表面に純水を滴下し、ランプ中央部と、ワーク端部より10mm位置(ベース内端部から20mm位置)の接触角を測定、比較することによって、洗浄処理の均一度を求めた。
〔実験例3〕
エキシマランプ装置について、エキシマランプを上記ランプ3に替えて、上記実験例1と同様に液晶基板のVUV/O洗浄を行って洗浄前後の基板の接触角を測定した。洗浄処理後、基板表面に純水を滴下し、ランプ中央部と、ワーク端部より10mm位置(ベース内端部から20mm位置)の接触角を測定、比較することによって、洗浄処理の均一度を求めた。
この結果を下記表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
上記実験例の結果、ベースに傾斜を備えていないランプ3(参照例1)においては、上方から流過する不活性ガス(Nガス)が、ベースの内側端面に沿って流れて放電容器上面に衝突することで、図9(b)に示すように渦流が発生し、その周囲にある酸素等のガスを巻き込み、不活性ガスの濃度が不均一となった。このため、酸素によってランプから放射された紫外光が吸収され、ワーク表面における真空紫外光の照度が低下したものとみられ、処理が不完全に終わってしまった。
一方、本発明に係るランプ1(実施例1)、ランプ2(実施例2)においては、いずれも気流に乱れが生じることなく、ランプ中央部に対し処理均一度を±4%以下に抑えることができた。
【0038】
以上の結果から明らかなように、本発明に係るエキシマランプ装置によれば、ランプのベースから20mmという位置においてもVUV/O洗浄処理を確実に行うことができ、ワークである基板のサイズに対し装置の大きさを小さくでき、省スペースで効率のよいエキシマランプ装置とすることができる。
【符号の説明】
【0039】
10 エキシマランプ装置
11 筐体
12 予備室
13 整流板
14 通気孔
15 ガス供給管
15A ガス供給口
20 エキシマランプ
21 放電容器
21A 光取り出し面
22,23 電極
22a,23a リード部
24,25 給電用リード線
30 ベース
31 傾斜部
32a,32b,32c 傾斜部
33 規制板
40 枠体
41 搬送機構
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エキシマ光を放射する棒状のエキシマランプと、
このエキシマランプを収容する筐体と、
この筐体の内部に前記エキシマランプに対して不活性ガスを供給するガス供給機構とを備えてなるエキシマランプ装置において、
前記エキシマランプは、前記不活性ガスの上流側に突出するようベースが取り付けられてこのベースより導出される給電用リードを有し、
前記ベースは、外端から内端に向かって突出高さが徐々に小さくなる傾斜部を備えて構成されている
ことを特徴とするエキシマランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−238475(P2010−238475A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84175(P2009−84175)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】