説明

エコールの検出のための試験細片

本発明の主題は、色変化によるエコールの検出のための試験細片である。この試験細片を製造するための方法、この試験細片を使用するための方法、およびこの試験細片の使用も本発明の主題である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色変化による水溶液中のエコールの検出のための試験細片、およびそれに関連する方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
イソフラボンは、イソフラボノイドとも呼ばれ、ほとんど黄色の着色を有する化合物であり、それらはイソフラボンの誘導体、従ってフラボノイドである。イソフラボンは、植物由来の二次化合物であり、それは、とりわけ病原体からの植物の防御においてある役割を果たす。主要なイソフラボンはツメクサ(クローバー)種で見出される。いくつかの周知のイソフラボンは、大豆粉の中のダイジンのグルコシドとして見出されるダイゼイン、大豆およびアカツメクサ(レッド・クローバー)由来のゲニステイン、プラムの木の樹皮由来のプルネチン、ヒヨコマメおよびツメクサ由来のビオカニンA、オロボール(orobol)、ビャクダン(sandle wood)、レッドウッドおよび他の木材由来のサンタル(santal)、ならびに新鮮なアカツメクサ由来のプラテンセインである。イソフラボンのダイゼイン[4’,7−ジヒドロキシイソフラボン;7−ヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン]は、大豆の中に見出され、多くの食品および栄養補助食品の一部分である。
【0003】
イソフラバンのエコール[4’,7−ジヒドロキシイソフラバン;3−(4−ヒドロキシフェニル)−7−クロマノール]は、ダイゼインの摂取のあとに腸内細菌叢において産生される。この変換は、連鎖球菌、乳酸菌およびビフィズス菌によって行われると考えられる。エコールは、大豆にも、またはあらゆる他の植物にも見出されない。従って、エコールは植物の二次代謝産物の群の一部である。
【0004】
エコールは、穏やかなエストロゲン活性(ステロイド−エストロゲンの活性の0.1%)を有し、エストロゲン受容体ERαおよびERβに結合することができる。例えばコレステロール低下効果、抗炎症性効果、乳癌に対するおよび閉経後の生理的変化に対する好ましい効果などの多くの有益な効果は、エコールに起因する。またエコールは、5αレダクターゼとの相互作用に起因して、男性においてDHT産生を阻害する。DHTは、男性における前立腺癌の形成の原因であると想定されている。他の利益としては、男性型脱毛症、ざ瘡およびDHTに関連する他の問題の処置でありうる。
【0005】
ダイゼインに富む食品の摂取後、エコールを産生することができる人であれば、エコールは、血液中および尿中で検出可能である。しかしながら、わずか約1/3(コーカサス人集団)〜半分まで(日本人集団)のヒトしかダイゼインからエコールを産生することができない。エコールを産生することができるヒト(「エコール産生体」)では、大豆に富む食事の好ましい効果は、エコールを産生することができないヒトと比べて、より明白である。
【0006】
あるイソフラボンに富む食事が人に有益であるかどうかを予測するために、その人がエコール産生体であるかどうかを判定することが必要である。これを判定する簡便な方法は、尿中のエコールの検出であると思われる。当該技術分野で、エコールの検出のための種々の方法が記載された。
【0007】
特許文献1は、エコールの種々の有益な効果に関する。この文献によれば、エコールは、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)による精製のあとに、質量分析による後続の分析によって検出される。このように、この方法は、複雑かつ高価な機器を必要とする。
【0008】
エコールの検出のための別の方法が特許文献2に開示されている。この文献の主題は、HPLCも質量分析も必要とはしない簡素化された方法を提供することである。この課題を解決するために、その発明者らは2つの方法を提供する。第1の方法は、薄層クロマトグラフィーを用いた、試料の分離に基づく。この方法は、糖類を取り除くための酵素を用いた、試料の前処理を必要とする。イソフラボンのクロマトグラフィーによる分離の後、プレートは溶媒を用いて展開される。その後、プレートをヨウ素の蒸気に曝すなどの、このイソフラボンを可視化するための工程が実施される。HPLCカラムおよび質量分析計などの複雑な機器を回避するが、この方法は比較的複雑であり、容易に取り扱うことができない化学物質を必要とする。第2の方法は微生物の培養を必要とし、これも複雑である。
【0009】
特許文献2の発明者らは、その後、1つの論文(非特許文献1)を発表した。この方法は、尿試料の加水分解、逆相シリカゲルカラムおよび薄層クロマトグラフィーによる精製を必要とする。この方法は、エコール産生体を識別するために応用される。
【0010】
エコールの検出に関連する初期の研究は、1940年代および1950年代に発表された。雌ロバの尿の中のエコールの色検出のための方法がDirscherlによって開示された(非特許文献2)。硝酸および試料水溶液の接触部での赤色の環の形成が、エコールの形成を示す。エコール沈殿物が生成されて溶解されるか、または顕微鏡スライド上で固体が生成され顕微鏡のもとで観察される他の方法が開示されている。この文献に開示される方法は、化学実験室の設備または顕微鏡などの機器を必要とする。
【0011】
このように、エコールの検出について当該技術分野で公知の課題は、比較的複雑である。それらは、精巧で高価な機器、または少なくとも化学実験室の設備のいずれかを必要とする。さらには、硝酸またはヨウ素などの潜在的に危険な化学物質が、試験の間に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2004/009035(A2)号パンフレット
【特許文献2】特開2006−242602号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】「Rapid and Convenient Detection of Urinary Equol by Thin−layer Chromatography」、J Nutr.Sci.Vitaminol.(Tokyo)、2007年、第53巻、第1号、43−7頁
【非特許文献2】Dirscherl、Physiol.Chem.、1940年、第264巻、57−63頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の根底にある課題は、エコールの検出のための簡単で迅速な方法を提供することである。具体的に、その方法は、自分がエコール産生体であるか否かを人が判定することができるための自己診断に応用できるものであるべきである。従って、その方法は、精巧な機器、とりわけHPLC、質量分析計または顕微鏡などの複雑かつおよび高価な機器なしに、および硝酸、ヨウ素または有機溶媒などの潜在的に危険な化学物質なしに、実施されるべきである。好ましくは、この方法は、化学実験室設備および訓練されたスタッフを必要としないものであるべきである。この方法は、少ない数のプロセス工程で応用できるべきである。さらに、この方法は、とりわけ、他のイソフラボンを含む溶液の中で、または尿もしくは血液分画などの複雑な溶液の中でエコールの特異的検出を可能にするものであるべきである。この方法は、エコール産生体と非産生体との明確な区別を可能にするために、感度が高いものであるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の根底にある課題は、驚くべきことに、特許請求の範囲によって定められる試験細片、方法および使用によって解決される。
【0016】
本発明の主題は、色変化によるエコールの検出のための試験細片である。本発明によれば、色変化は試験細片の表面上で検出可能である。この色変化は、細片がエコールを含む水溶液と接触するときに、起こる。
【0017】
本発明によれば、「試験細片」は、水溶液を当該細片と接触させることにより水溶液を分析するための少なくとも1つの反応性薬剤を含浸した単純な細片である。好ましくは、水溶液との接触をもつ前は、当該細片は無色であるか、または薄い着色しか有しない。これに関して、「無色の」は、細片が白色であるか、または細片の担体材料に応じて、薄い色を有するということを意味する。本発明の好ましい実施形態では、エコールの存在は黄色、橙色または赤色によって示される。これは、その色は、たいていは黄色がかったかまたは赤色がかった色であろうが、その色は他の色成分を含んでもよいし、または黒ずんでいてもよいということを意味する。
【0018】
好ましくは、この呈色反応は非常に特異的である。エコールが有意な濃度で試料中に存在するとき、明確かつ示差的な色変化が観察されることが好ましい。エコールが存在しないとき、細片の色は変化しないかもしくは実質的に変化しないか、または少なくとも、エコールの存在を示す色へは変化しないべきである。特に、他のイソフラボンが存在するときは、とりわけ、大豆の中に含有される他のイソフラボン、または大豆の摂取後に代謝的に産生される誘導体が存在するときは、エコールを示す色変化は、観察されるべきではない。好ましくは、水溶液がダイゼイン、ダイジン、プルネチン、ビオカニンA、オロボール、サンタルおよび/もしくはプラテンセインまたはそれらの代謝産物を含む場合、この色変化は観察されるべきではない。さらに、当該細片の色は、尿の中に通常存在する他の化合物、例えばビタミン、フェノール類およびエストロゲンホルモンによって影響を受けるべきではない。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では、上記水溶液は尿、血液または尿もしくは血液の分画である。尿中のエコールの検出は好ましい。なぜなら、血糖などの検出のための類似の試験細片の場合のように、尿の分析は、血液試料を採取し分画することは必要ではないため、消費者または実験室にとって便利だからである。エコールが血液中で検出される場合、血漿または血清などの無色の血液試料を使用することが好ましい。本発明によれば、尿を分画に分けることも、尿を、例えば酵素を用いた前処理にかけることも必要ではない。従って、尿は、前もっての精製、分画または化学処理なしに、当該試験細片に付されることが好ましい。しかしながら、本発明によれば、その任意の体液画分または人工の溶液を、エコールの存在について調べることができる。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、当該試験細片は、1〜20cmの長さおよび0.2〜2cmの幅を有する。しかしながら、試験細片の寸法は、応用例に応じて変わる。例えば、試験細片がもっぱらエコールの検出のために提供される場合、試験細片は、比較的細い棒の寸法を有することができよう。他方、このエコール試験は、1つの細片上で他の試験と組み合わせることができよう。この場合、細片は幅がより広くてもよい。例えば、当該細片は、他の尿成分、例えばダイゼインまたはホルモンの検出のための別の部分を含んでもよい。
【0021】
本発明の別の主題は、先行する請求項のうちの少なくとも1つに係る試験細片を製造するための方法であって、担体を、硝酸を含む水性含浸溶液と接触させることを含む方法である。好ましくは、この硝酸は濃硝酸である。濃硝酸はおよそ64〜70重量%の水分含量を有する。好ましい実施形態では、硝酸の濃度は、15%〜70%重量%、好ましくは40〜70重量%、または少なくとも15重量%または少なくとも45重量%である。硝酸は常に水を含むので、この含浸溶液は水溶液である。しかしながら、この水溶液は有機溶媒を含んでもよい。本願明細書で使用する場合、用語「含浸溶液」は、水および任意にさらなる有機溶媒を含む含浸溶液を指す。原理上は、シグナル強度は、硝酸濃度とともに上昇する。しかしながら、試験細片が、エコールを含む水溶液との接触後に展開される場合、感度は高められるであろうから、硝酸の濃度はより低くできるであろう。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、この含浸溶液は、有機溶媒、好ましくは脂肪族アルコール、および/またはアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を含む。所望のシグナル強度を得るように、これらの成分の量は調整される。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、当該有機溶媒は、トルエン、ベンゼンまたはアミルアルコールである。好ましい実施形態では、当該脂肪族アルコールはアミルアルコールであり、かつ/または当該金属水酸化物は水酸化ナトリウムである。アミルアルコールを加えるときは、この水溶液はむしろ懸濁液またはエマルションである。本願明細書で使用する場合、用語「含浸溶液」は、このようなエマルションまたは懸濁液にも関する。
【0024】
別の好ましい実施形態では、当該含浸溶液は硝酸、硝酸塩および有機溶媒を含む。例えば、この溶液は、40〜80重量%の硝酸(少なくとも45重量%のHNO濃度で)、5〜30重量%の硝酸塩および5〜40重量%の有機溶媒を含む。硝酸塩は、好ましくはアルカリ硝酸塩またはアルカリ土類硝酸塩、好ましくは硝酸ナトリウムである。当業者は知っているとおり、水酸化ナトリウムなどの塩基を用いた上記硝酸の一部の中和反応から、溶液中の硝酸塩のうちの少なくとも一部を生成するとき、同じ溶液を得ることができる。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、当該溶液のpHは4未満、好ましくは2未満である。好ましい実施形態では、担体は、紙、セルロース、ニトロセルロースまたは有機ポリマーから作製される。この担体は、多孔性であり、例えば不織布膜または多孔質膜である。酸の存在下で安定である担体は当該技術分野で公知である。
【0026】
当該試験細片は、好ましくは水との接触の際に迅速に溶解する水溶性の有機ポリマーでできた外側バリア層を含んでもよい。このバリア層は、試験細片に保存安定性を与える可能性がある。例えば、この細片は、ポリビニルアルコール(PVOH、PVA)と層状になっていてもよい。水溶性のプラスチックからできたバリア層は、当該技術分野で公知である。例えば、PVOHは、水との接触後、数秒以内に分解、分散および溶解する。膜のグレードを選択することにより、素早い溶解が成し遂げられる。有用なバリア材料は、ペレット状のポリビニルアルコール(英国、アーラム(Irlam)のエンバイアロンメンタル・ポリマーズ(Environmental Polymers)から、商標「depart」で入手できる)であってもよい。この材料を用いた試験により、23℃および50%RHで、ポリビニルアルコールの30ミクロン(30μm)の膜は、配合に応じて、1日あたり0.24〜1.85ml/mの範囲の酸素透過速度を有する可能性があるということが示されている。膜材料についての窒素透過速度はあまりに低くて、実験室の試験では測定できなかったが、これは、アルミニウム箔の透過性に類似の透過性を示唆する。
【0027】
試験細片は、例えば数ヶ月または数年間の長時間の保存安定性を有することが好ましい。これは、安定な担体を使用し、バリア層を設け、かつ/または葉、バッグまたは容器などの密封された梱包材料の中に細片を包み込むことにより、成し遂げることができる。しかしながら、当該試験細片を、含浸溶液および担体を含むキットとして提供することも可能である。この細片を使用する前に、使用者は、担体に溶液を含浸させる。
【0028】
本発明の好ましい実施形態では、当該方法は、
(a)担体、および硝酸を含む水性含浸溶液を準備する工程と、
(b)この担体に当該溶液を含浸させる工程と、
(c)この担体を乾燥する工程と
を含む。
【0029】
本発明の別の主題は、水溶液がエコールを含むかどうかを判定するための方法であって、
(A)当該水溶液を本発明の試験細片と接触させる工程と、
(B)色変化の存在または不存在を検出する工程と、
(C)色変化の存在または不存在から、当該溶液がエコールを含むかどうかを推測する工程と
を含む方法である。
【0030】
本発明の別の主題は、人がエコール産生体であるかどうかを判定するための方法であって、
(i)当該人からの尿、血液またはその分画を、先行する請求項のいずれか1項に記載の試験細片と接触させる工程と、
(ii)色変化の存在または不存在を検出する工程と、
(iii)この色変化の存在または不存在から、当該人がエコール産生体であるかどうかを推測する工程と
を含む方法である。
【0031】
本発明の方法では、エコールの存在は黄色、橙色または赤色への色変化により判定されることが好ましい。さらには、この色変化が目によって観察されることが好ましい。従って、色検出のために機器を使用することは必要ではない。
【0032】
ある人がエコール産生体であるかどうかを判定するとき、尿または血液は、試験前に、ダイゼインまたはダイゼインを含む食品もしくは食事を摂取していた患者から、得られることが好ましい。当該人が、所定の量のダイゼイン、またはダイゼインを含む製品を摂取していたことが好ましい。例えば、ダイゼインを含む製品は、大豆または大豆分画または大豆製品(日本の伝統食である納豆など)、またはアカツメクサ(クローバー)アッセイもしくは分画である。摂取後、エコール産生体は、ダイゼインをエコールへと迅速に変換し、エコールを大量に排泄する。従って、ダイゼインがエコールへと変換されるか否かは直接モニターすることができる。尿などの試料は、ダイゼインがエコールへと変換されるように十分な時間の後に、採取および/または分析されるべきである。例えば、ダイゼインまたはダイゼインを含む食品の摂取後、20分〜10時間後に、尿試料が採取および/または分析されてもよい。
【0033】
個体に投与されるダイゼインの量は、エコール産生体について明確なシグナルが観察されるように選ばれる。ダイゼインの量は、特定の試験細片の選択性だけでなく、その個体の体重にも依存する。例えば、試験の前に、純粋な形態で、またはダイゼインを含む製品の一部として10〜2000mg、好ましくは20〜1000mg、50〜500mgまたは50〜250mgのダイゼインが当該個体に投与されてもよい。他の実施形態では、投与されるダイゼインの量は、1000mgまで、500mgまで、または250mgまでである。試験は、それぞれダイゼインの量を変えた投与の後に、数回、例えば2回または3回実施されてもよい。エコールへのダイゼインの変換は、個体間で様々であるので、当該アッセイは、個体が強力なエコール産生体であるかどうかまたは個体がダイゼインを部分的にしか変換しないかどうかを判定するためにも使用することができる。
【0034】
本発明によれば、そして当該技術分野で公知の方法、例えば薄層クロマトグラフィーとは対照的に、試験細片を展開することは必要ではない。水溶液とすでに接触した試験細片を、色変化を誘導するための化学物質に曝すことなく、色変化は起こる。対照的に、色変化は、当該試験細片をエコールと接触させた後に、試験細片とエコールとの化学反応に起因して始まる。試料を試験細片と接触させたあと迅速に、例えば1分以内または30秒未満で色変化が起こることが好ましい。
【0035】
好ましくは、色変化は、ダイゼインの摂取後のエコール産生体の尿の中のエコールの生理的濃度の範囲にあるエコール濃度で起こる。好ましくは、この水溶液は、少なくとも0.5%、または少なくとも0.1%または少なくとも0.05%または少なくとも0.01%のエコール(w/v)を含む。
【0036】
本発明の主題は、色変化によるエコールの検出のための本発明の試験細片の使用でもある。本発明の方法は、好ましくは、診断方法である。
【0037】
本発明の試験細片および方法は、本発明の根底にある課題を解決する。当該試験細片は、迅速、簡単かつ特異的な方法でのエコールの検出を可能にする。この試験細片は、自身がエコール産生体であるかどうかを判定したい人が使用することができる。この試験細片は、第1の人が、第2の人がエコール産生体であるかどうか、または第2の人からの試料がエコールを含むかどうかを判定するために、使用することもできる。例えば、この第1の人は、実験室スタッフ、医療スタッフ、または栄養アドバイザーもしくは食事アドバイザーなどの他の専門家であることができる。本発明の方法は、当該試験細片のほかに、複雑な機器または特定の化学物質は必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例5に係る、エコールを含まない尿と接触した試験細片を示す。
【図2】実施例8に係る、0.05%エコールを含む尿と接触した試験細片を示す。
【図3】実施例9に係る、0.1%エコールを含む尿と接触した試験細片を示す。
【実施例】
【0039】
実施例1〜4:試験細片の調製
以下の標品のラセミのエコールの溶液を調製した。
【表1】

【0040】
室温の水の中でのエコールの最高濃度はおよそ0.1%である。0.5%エコール溶液を沸騰水の中で調製し、まだ熱いうちに使用した。冷却後、エコールの結晶化が起こる。
【0041】
4つの区画へと線を引いた白い濾紙のシートに、異なる組成(表1)を有する溶液を含浸させた。より高濃度のイソアミルアルコールは十分に水と混和性ではなく、不均一なエマルションを与える。含浸した紙のシートを室温で1時間乾燥した後に、紙の各区画にエコール溶液を加えた(各区画に1滴)。数分以内に着色が現れ始め、着色を視覚的に評価した。結果を表1に示す。含浸溶液中のHNOの濃度が高いほど、着色は濃いようであった。
【0042】
【表2】

【0043】
実施例5〜9:試験細片アッセイの選択性
細片を、硝酸の濃厚溶液と層状にした(浸した)。硝酸溶液はアミルアルコールおよび水酸化ナトリウムを含有していた。この試験細片を、種々の試料の中のエコールの検出のために使用した。5つの異なる試料を、下記の表2に概略を示すように、調製した。
【0044】
【表3】

【0045】
本発明の試験細片を各試料の中に沈めた。色を観察した。結果を、上の表2に要約する。盲検対照である試料1は、呈色反応を示さなかった。試料2および3は、ビタミンまたは混合イソフラボンを含む、さらなる対照試料であった。それらも、呈色反応をまったく示さなかった。0.05%エコールを含んでいた試料4は、橙色の陰影を有する濃い黄色への明確な色変化を示した。0.1%エコールを含んでいた試料5は、濃い橙色/赤色を有していた。これらの色変化は、図1、2および3に示すように、目で容易に検出することができた。これらの実験は、本発明の試験細片は、尿中の生理的な量のエコール、例えば0.05%または0.1%(w/v)を検出するために利用できるということを示す。このようなエコール濃度は、ダイゼインまたはダイゼインを含む食品の摂取後のエコール産生体の尿の中で見出される。さらに、当該試験は、非常に特異的であり、ビタミン、他のイソフラボンまたは一般的な尿成分から偽陽性の結果を与えない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色変化によるエコールの検出のための試験細片。
【請求項2】
前記色変化は、前記細片がエコールを含む水溶液と接触するときに起こる、請求項1に記載の試験細片。
【請求項3】
エコールの存在は黄色、橙色または赤色によって示される、請求項1または請求項2に記載の試験細片。
【請求項4】
前記水溶液は尿、血液またはその分画である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の試験細片。
【請求項5】
1〜20cmの長さおよび0.2〜2cmの幅を有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の試験細片。
【請求項6】
前記試験細片は硝酸を含浸したものであった、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の試験細片。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の試験細片を製造するための方法であって、担体を、硝酸を含む水性含浸溶液と接触させることを含む、方法。
【請求項8】
前記含浸溶液は、有機溶媒、好ましくは脂肪族アルコール、および/またはアルカリ金属水酸化物もしくはアルカリ土類金属水酸化物を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記有機脂肪族アルコールはアミルアルコールであり、かつ/または前記金属水酸化物は水酸化ナトリウムである、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶液のpHは2未満である、請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記担体は紙、セルロース、ニトロセルロースまたは有機ポリマーである、請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
(a)担体、および硝酸を含む水性含浸溶液を準備する工程と、
(b)前記担体に前記溶液を含浸させる工程と、
(c)前記担体を乾燥する工程と
を含む、請求項7から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項7から請求項12のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる、色変化によるエコールの検出のための試験細片。
【請求項14】
水溶液がエコールを含むかどうかを判定するための方法であって、
(A)前記水溶液を、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の試験細片と接触させる工程と、
(B)色変化の存在または不存在を検出する工程と、
(C)前記色変化の存在または不存在から、前記溶液がエコールを含むかどうかを推測する工程と
を含む、方法。
【請求項15】
人がエコール産生体であるかどうかを判定するための方法であって、
(i)前記人からの尿、血液またはその分画を、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の試験細片と接触させる工程と、
(ii)色変化の存在または不存在を検出する工程と、
(iii)前記色変化の存在または不存在から、前記人がエコール産生体であるかどうかを推測する工程と
を含む、方法。
【請求項16】
工程(i)の前に、前記人は、所定の量のダイゼイン、またはダイゼインを含む製品を摂取していた、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
色変化によるエコールの検出のための、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の試験細片の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−521479(P2013−521479A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555326(P2012−555326)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000919
【国際公開番号】WO2011/107238
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(512217374)システム バイオロジー アーゲー (1)
【Fターム(参考)】