説明

エジェクタ付きループ反応器内におけるDMC触媒を用いたアルコキシル化方法

【課題】エジェクタ付きループ反応器内におけるDMC触媒を用いたアルコキシル化方法を提供する。
【解決手段】本発明は、式(I)、
−(CHRCHR−O)−H (I)
(式中、
n=1〜12000、
=少なくとも1つの炭素原子を含むラジカル、
およびRはそれぞれ独立してHまたは炭化水素ラジカルであり、指数nで指定される単位は同一であるかまたは異なってもよい(したがって異なる単位n中のRおよびRラジカルは同一であるかまたは異なってもよい))
のポリエーテルを調製する方法であって、
ラジカルを含む出発化合物を、ループ反応器内において二重金属シアン化物触媒(DMC触媒)存在下でアルコキシル化するステップを含み、
アルコキシル化が、エジェクタ混合ノズルを有するループ反応器内で実施され、反応に関与する全物質または助剤を、循環する反応混合物に添加でき、アルキレンオキシドまたは複数の異なるアルキレンオキシドを、エジェクタ混合ノズルを通じて同時に(ランダム添加)または異なる時点で(ブロック添加)反応混合物中に量り入れることを特徴とする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エジェクタ(ジェットノズル)付きループ反応器内における二重金属シアン化物触媒(DMC触媒)存在下でのアルコキシル化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二重金属シアン化物触媒(DMC触媒)、およびポリエーテルポリオールを調製するためのそれらの使用については長い間公知である。特に文献欧州特許第0868468号明細書、欧州特許第0879259号明細書、欧州特許第0981407号明細書、欧州特許第0971970号明細書、欧州特許第1012203号明細書、欧州特許第1017738号明細書、欧州特許第1173498号明細書、欧州特許第1254714号明細書、欧州特許第1258291号明細書、欧州特許第1382629号明細書、欧州特許第1577334号明細書、および国際公開第05/042616号パンフレット、およびこれらの文献内で引用される文献もまた、特にアルコキシル化によってポリエーテルを調製するための、DMC触媒の調製およびそれらの使用について詳述する。言及される文献は、参照によってその内容全体を本発明の開示内容に援用する。
【0003】
DMC触媒は高反応性であるだけでなく、非常に狭いモル質量分布を達成でき副反応形成を大幅に低下させるその高い基質選択性により、アルコキシル化反応において利点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしDMC触媒はまた、特定用途でDMC触媒作用によって調製されたポリエーテルの使用を妨げる特定の不都合も有する。
【0005】
アルコキシル化過程におけるDMC触媒の不都合には、特に以下のことがある。
1.DMC触媒は、例えば低モル質量の出発原料(欧州特許第1017738号明細書)などの特定物質によって阻害される好ましくない特質を有する。したがって一般に、−従来の(例えばアルカリ性)触媒作用の場合のように−最初に(アルコキシル化のための出発化合物として)低分子量アルコール混合物、および触媒を導入することは不可能である。したがってDMCによって触媒されるアルコキシル化過程では、付加反応は、最初に反応器内に導入される物質によって開始され、触媒がその中に懸濁される。
懸濁媒体は、アルキレンオキシドが付加される、ポリエーテルまたは出発化合物(例えばアルコール)、または両者の混合物のいずれかであっても良い。懸濁媒体は、好ましくはポリエーテルである。特に好ましくは、懸濁媒体として、なおもDMCで触媒されるポリエーテルが使用される。次に所望のモル質量を達成するのに必要かもしれない出発化合物(例えばアルコール)の量を、後からアルキレンオキシドと並行して量り入れる。これは出発化合物(例えばアルコール)およびアルキレンオキシドの平行添加段階において、非常に広範で非常に不均質なモル質量分布をもたらす。しかしDMC触媒の特殊機能は、高選択性のために、アルキレンオキシドと出発原料化合物(例えばアルコール)の同時添加終了後に、引き続くアルキレンオキシドの排他的付加過程で、モル質量分布が再度非常に大きく狭まることである。しかしこれは特定用途においては、不利である場合がある。
【0006】
2.DMC触媒は、典型的に活性化または初期化されなくてはならない。活性化は、例えば必要に応じて減圧しながら、蒸留によって揮発性成分を触媒から除去してもたらすことができる。触媒の初期化は、既述のように前処理された触媒と、懸濁媒体との混合物に、非常に少量のアルキレンオキシドを添加して実施される。反応温度で気体のアルキレンオキシドの場合、反応の「開始」は圧力低下によって検知できる。
【0007】
3.DMC触媒は、それらの高選択性のために同族列を形成する傾向があり、すなわち異なるアルキレンオキシドタイプを同時に添加した場合、同一タイプの鎖が優先的に形成する。例えばエチレンオキシドとプロピレンオキシドを同時に添加した場合、エチレンオキシドは、反応性末端基がエチレンオキシドの付加によって形成された分子上に優先的に付加する。プロピレンオキシドは、プロピレンオキシドの付加によって形成された末端基上に優先的に付加する。したがって選択可能な分子量分布を伴うアルキレンオキシド配列の観点から、必要に応じて選択可能な分子構造の蓄積を異なるアルキレンオキシドタイプのランダムまたはバッチ式供給によって確立することは、不可能である。この現象は、特に低分子量アルキレンオキシドの場合に際立っている。
【0008】
したがって本発明の目的は、上述の不都合の1つ以上を回避する代案のアルコキシル化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
DMC触媒を用いたアルコキシル化の場合、出発化合物(例えばアルコール)とアルキレンオキシドの同時添加によって、反応ミキサーとして使用されるループ反応器エジェクタ内における典型的に非常に狭いモル質量分布が制御でき、および/または異なるアルキレンオキシドタイプのブロック様式またはランダム添加の場合は、反応混合物への異なるアルキレンオキシドの交互の添加によって、添加されたアルキレンオキシドの迅速なおよび/または良好な混合が、異なるアルキレンオキシドの制御された付加の達成をもたらし、それはDMC触媒を使用した場合でさえも所望の分子構造蓄積を可能にすることが、意外にも発見された。
【0010】
したがって本発明は、式(I)、
−(CHRCHR−O)−H (I)
(式中、
n=1〜12000、
=少なくとも1つの炭素原子を含むラジカル、
およびRはそれぞれ独立してHまたは炭化水素ラジカルであり、指数nで指定される単位は同一であるかまたは異なってもよい(したがって異なる単位n中のRおよびRラジカルは同一であるかまたは異なってもよい))
のポリエーテルを調製する方法であって、
ラジカルを含む出発化合物を、ループ反応器内において二重金属シアン化物触媒(DMC触媒)存在下でアルコキシル化するステップを含み、
アルコキシル化が、エジェクタ混合ノズルを有するループ反応器内で実施され、ここで、反応に関与する全物質または例えば溶剤などの反応に関与しない助剤を、循環する反応混合物に添加でき、アルキレンオキシドまたは複数の異なるアルキレンオキシドを、エジェクタ混合ノズルを通じて同時に(ランダム添加)または異なる時点で(ブロック添加)反応混合物中に量り入れることを特徴とする方法を提供する。
【0011】
先行技術では、例えば欧州特許第0419419号明細書においてエジェクタ付きループ反応器が開示されている。これらのループ反応器内では、液体反応器内容物が、ベンチュリ原理(概略図が図1にある)によって働くエジェクタ混合ノズルにより循環する。反応器内容物(1)は、循環ポンプ(2)によって送達され、場合により熱交換器(3)を経由して、エジェクタ混合ノズル(4)を通じて反応器内に戻される。エジェクタ混合ノズルのガス空間(7)内は、ベンチュリ効果により減圧され、それによって気体または液体反応物質(5)または反応器それ自体の気相(6)のどちらかが吸い込まれて、循環する液体と激しく混合される。液体の噴霧および液体状または気体状成分の吸引は、非常に大きな相交換領域が発生できるようにする。したがってこのような反応器は、特に、非常に高い反応速度で注目に値する気体−液体反応性能のためにも使用される。
【0012】
先行技術では、このような反応器タイプはアルコキシル化のため、例えばエトキシル化のために使用される。好ましくは、例えばアルコール上に少量の気体エチレンオキシドのみが付加されるこのような反応器タイプが使用される。より多量のアルキレンオキシドの付加を通じてより高いモル質が達成され、またはその他のより低反応性のアルキレンオキシド(例えばとりわけプロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド)が使用される、その他のアルコキシル化過程の場合、付加速度は、質量移動よりも反応動態によってより強力に制限される。これらの場合、使い切れていない反応物質の一定量が液相内に依然としてある。このような場合、従来の技術(例えば気相内に液体がスプレーされる撹拌反応器またはループ反応器)と比較して、エジェクタ混合ノズルの利点は完全に顕在化しない。
【0013】
DMC触媒使用の結果として、従来の触媒では低すぎる反応速度によって制限されていたこれらのアルコキシル化反応が、高反応速度の結果として、本質的に質量移動のみによって決まる反応をもたらすことが意外にも発見された。このようにして、エジェクタ付きループ反応器の特定の利点はまた、DMC触媒の使用前のその添加速度が、遅い反応速度によってのみ判定されたアルコキシル化においても利用できる。
【0014】
したがってエジェクタ混合ノズル付きループ反応器内において、DMCが触媒するアルコキシル化の性能は、高速の付加により、特定のアルキレンオキシドおよび出発原料アルコールが使用され、および/または高モル質量が達成される、全種類のアルコキシル化を実施できる利点を提供する。特に、使用されるアルキレンオキシドがプロピレンオキシド、ブチレンオキシドおよび/またはスチレンオキシドであるアルコキシル化を実施できることは、特に有利である。
【0015】
エジェクタ混合ノズル付きループ反応器内におけるDMC触媒存在下での本発明のアルコキシル化性能は、触媒活性化、および微量存在して触媒を阻害するかもしれない成分の蒸留除去が、特に有利にエジェクタ混合ノズル付きループ反応器内で「窒素ストリッピング」によって実施できる利点を有する。この場合、不活性ガスの流れをエジェクタ混合ノズル(8)に添加して、同時に揮発性成分を真空システム(9)によって蒸発させる。
【0016】
本発明の方法はまた、従来の反応器内におけるよりも少量のアルキレンオキシド触媒によって初期化を実施できる利点も有し、それは第一に、反応器内の使い切れていない反応物質量が最小化されることから安全性増大の利点を意味し、第二に、分子構造の蓄積がアルキレンオキシドの初期化量によって、あらかじめ影響されないことを意味する。
【0017】
本発明の方法のさらなる利点は、エジェクタのガス空間内の減圧に対して、常に実質的に一定であるアルキレンオキシドと出発原料化合物との圧力比により、アルキレンオキシド流と出発原料化合物流との比率が、非常に正確に、かつ特に非常に再現性よく制御できることである。このようにして、過度に迅速に出発化合物(例えばアルコール)が添加された場合に、DMC触媒阻害の結果として反応が停止することを防止でき、または過度に迅速にアルキレンオキシドが添加された場合に、規定の定量的なバランスに対して、狭いモル質量分布をなおも達成するために、引き続く単独アルキレンオキシド付加相が短すぎることを防止できる。
【0018】
典型的に、同時添加相をできるだけ短時間に保つためには、アルキレンオキシドとの関連で出発化合物(例えばアルコール)の一定量を非常に迅速に量り入れるべきであり、または非常に狭いモル質量分布を達成するためには、アルキレンオキシドのみをできるだけ長時間量り入れるべきである。しかしポリエーテルの特定用途(例えば有機的に変性されたシロキサン化合物を調製するため)では、低分子量および高分子量化合物の特定比率がある、特定のモル質量分布を達成することが有利でありえる。
【0019】
したがって出発化合物(例えばアルコール)とアルキレンオキシドの同時添加のために、エジェクタ混合ノズルが反応ミキサーとして使用される本発明の特定の利点は、出発化合物とアルキレンオキシドの同時添加期間全体にわたり、モル質量分布幅、および低分子量および高分子量リエーテル比率が制御された再現可能な様式で確立できるように、高再現性をもって定量的比率調節を確立できることである。
【0020】
より詳しくは、本発明は、出発化合物とアルキレンオキシドの同時添加期間全体にわたり、モル質量分布を、再現性をもって確立できる利点を有する。添加出発化合物とアルキレンオキシドの総量が等しい場合、合わせた添加後に実施される比較的短時間のアルキレンオキシドの単独添加は、広いモル質量分布をもたらす。対照的に、出発化合物とアルキレンオキシドの短時間の同時添加、ひいてはより長時間のアルキレンオキシドの添加は、狭いモル質量分布をもたらす。
【0021】
所望のモル質量分布次第で、本発明の方法は、最初に出発化合物と少なくとも1種のアルキレンオキシドが同時に添加される第1の相と、次に1種以上のアルキレンオキシドが添加されて出発化合物が添加されず、単独添加の持続時間が様々である第1の相に続く相とを有し、あるいは出発原料化合物と少なくとも1種のアルキレンオキシドが、反応全体にわたって同時にのみ添加される。
【0022】
本発明の方法の別の非常に特定の利点は、強力な質量移動と、反応ミキサーとして機能するエジェクタ混合ノズル内における反応物質の極めて短い接触時間とにより、DMC触媒が相同的なポリエーテル鎖を形成する傾向を低減できることである。さらに記載される反応器タイプ内では、従来の反応器タイプ(例えば撹拌反応器)と比較して、反応ミキサー(エジェクタ混合ノズル)内における特に良好なアルキレンオキシド流の調節性と、量り入れたアルキレンオキシドの急激な減少とによって、異なるアルキレンオキシドの制御された添加順序により、DMC触媒によって形成されがちな同族列を中断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明で使用できるループ反応器の実施態様の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の方法について、例示として以下に記載するが、本発明をこれらの例示的な実施態様に限定することは意図されない。範囲、一般式または化合物クラスが以下で規定される場合、これらは明示的に言及される対応する範囲または化合物群だけでなく、個々の値(範囲)または化合物を選択することで得られる、全ての部分的範囲および部分的化合物群もまた含むことを意図する。本説明の文脈で文献が引用される場合、参照によってそれらの内容全体を本発明の開示内容に援用する。異なる単位を1回超有してもよい化合物について本発明の文脈で述べられる場合、それらはこれらの化合物中でランダム分布(ランダムオリゴマー)で、または秩序形態(ブロックオリゴマー)で出現してもよい。このような化合物中の単位数に関する記述は、問題の全化合物を平均した平均値であるものと理解される。
【0025】
式(I)
−(CHRCHR−O)−H (I)
(式中、
n=1〜12000、好ましくは4〜800、優先的に20〜400、およびより好ましくは80〜200であり、
=少なくとも1つの炭素原子を含むラジカル、好ましくは有機ラジカル、優先的に炭素原子を通じて、または好ましくは酸素または窒素であるヘテロ原子を通じて付着する有機ラジカル、特にこのようにして付着する炭化水素ラジカル、より好ましくはこのようにして付着するアルキルまたはアルケニルラジカルであり、非置換であってもまたは置換されていてもよく、特に(さらなる)OH基によって置換されており、Rラジカルは好ましくは1〜30個の炭素原子、優先的に2〜20個の炭素原子、より好ましくは3〜10個の炭素原子を有し、
およびRはそれぞれ独立してHまたは炭化水素ラジカルであり、指数nで指定される単位は同一であるかまたは異なってもよい(したがって異なる単位n中のRおよびRラジカルは同一であるかまたは異なってもよい))
のポリエーテルを調製するための本発明の方法であって、
ラジカルを含む出発化合物を、ループ反応器内において二重金属シアン化物触媒(DMC触媒)存在下でアルコキシル化するステップを含み、
アルコキシル化が、エジェクタ混合ノズルを有するループ反応器内において実施され、ここで、反応に関与する全物質または助剤を、循環する反応混合物に添加でき、アルキレンオキシドまたは複数の異なるアルキレンオキシドを、エジェクタ混合ノズルを通じて同時に(ランダム添加)または異なる時点で(ブロック添加)反応混合物中に量り入れることを特徴とする方法。
【0026】
有機Rラジカルを有する出発化合物(例えばアルコール)をアルコキシル化することによって調製される式(I)のポリエーテルは、好ましくは式(II)
【化1】


(式中、
aは0〜300、好ましくは1〜200、優先的に5〜100、より好ましくは10〜70および最も好ましくは20〜50であり、
bは0〜300、好ましくは1〜200、優先的に5〜100、より好ましくは10〜70および最も好ましくは20〜50であり、
cは0〜300、好ましくは1〜200、優先的に5〜100、より好ましくは10〜70および最も好ましくは20〜50であり、
dは0〜300、好ましくは1〜200、優先的に5〜100、より好ましくは10〜70および最も好ましくは20〜50であり、
は上記定義したとおりであり、特に有機ラジカル、好ましくは炭化水素ラジカル、優先的にアルキルまたはアルケニルラジカルであり、置換されていてもよく、特に(さらなる)OH基によって置換され、2〜30、より好ましくは2〜20および最も好ましくは3〜10個の炭素原子を有するが、ただし指数a〜dの少なくとも1つ、好ましくは2つは0に等しくない)のポリエーテルである。
【0027】
本発明の文脈で出発原料化合物とは、アルキレンオキシドの添加によって得られる、調製されるポリエーテル分子の開始(出発)を形成する物質を意味するものと理解される。本発明の方法で使用される出発化合物は、好ましくはアミン、アルコール、カルボン酸、アルデヒド、およびケトンからなる群から選択され、好ましくはアルコール、カルボン酸、アルデヒド、およびケトンからなる群から選択される。特に好ましくは出発化合物として、一価または多価アルコールR−H(HはアルコールのOH基に属する)が使用される。本発明の方法で使用できる多価アルコールの例は、例えばエチレングリコール、グリセロール、1,2−、1,3−または1,4−ブタンジオール、例えばα−メチルグリコシドなどのアルキルグリコシド、ソルビトール、マンニトールなどである。使用される多価アルコールは、好ましくはエチレングリコールまたはグリセロールである。一価アルコールの例は、C30までの全てのアルカノール、および例えばアリルアルコールなどのその他の一価アルコールである。特に好ましくは例えば、メタノール、ブタノール、ヘキサノール、ノナノール、およびアリルアルコールが使用される。
【0028】
反応混合物は、好ましくは懸濁媒体中に細かく分布した、少なくとも1つのDMC触媒を含む。懸濁媒体は、ポリエーテルまたはアルキレンオキシドが付加される出発化合物(例えばアルコール)または両者の混合物のいずれかであってもよい。懸濁媒体は、好ましくはポリエーテルである。特に好ましくは懸濁媒体として、その出発化合物が出発化合物、好ましくはアルコールR−Hと同一であるポリエーテルが使用される。このポリエーテルはより好ましくはDMC触媒作用の下で同様に調製されており、好ましくはなおもDMC触媒を含んでもよい。
【0029】
使用されるDMC触媒は、全ての公知のDMC触媒であってもよく、好ましくは亜鉛およびコバルトを含むものであり、優先的にヘキサシアノコバルト酸亜鉛(III)を含むものである。好ましくは米国特許第5,158,922号明細書、米国特許出願公開第20030119663号明細書、国際公開第01/80994号パンフレットまたは上記引用した文献中で述べられるDMC触媒が使用される。
【0030】
反応混合物中では、触媒濃度は好ましくは>0〜1000ppmw(重量ppm)、好ましくは>0〜500ppmw、より好ましくは10〜250ppmw、より好ましくは30〜150ppmwである。本発明の方法を連続的に実施する場合、エジェクタ混合ノズルによって反応混合物中に新しい触媒を混合できる。
【0031】
本発明のアルコキシル化は、好ましくは60〜250℃、好ましくは100〜180℃の温度、より好ましくは120〜160℃の温度で実施される。アルコキシル化が実施される圧力は、好ましくは0.0002〜10MPa、優先的に0.0005〜1MPa、より好ましくは0.001〜0.2MPa絶対圧である。減圧下におけるアルコキシル化の性能は、安全性バルブの応答圧力から高い余裕を持って反応器を操作できるようにするので、反応が非常に安全に実施できるようにする。必要に応じて、アルコキシル化はまた、不活性ガス(例えば窒素)の添加によって高圧下でも実施できる。
【0032】
反応を開始するため、懸濁媒体中のDMC触媒からなる反応混合物をループ反応器内に最初に装入し、少なくとも1種のアルキレンオキシド、好ましくは1種のみのアルキレンオキシドをエジェクタ混合ノズルを通じて反応混合物中に量り入れれば、有利でありえる。出発混合物中のアルキレンオキシドと反応性基、特にOH基とのモル比は、好ましくは0.1〜5、優先的に0.2〜2、より好ましくは0.2〜1である。アルキレンオキシドの添加前に、あらゆる反応を阻害する、存在する物質を例えば蒸留によって反応混合物から除去すれば有利でありえる。
【0033】
本発明の方法は、好ましくは所望の出発化合物を用いて調製され、より好ましくはDMC触媒を用いて調製され、そしてなおもそれを懸濁形態で含んでなってもよいポリエーテルがまず最初に導入され、DMC触媒がこのポリエーテル中に懸濁されるような方法で好ましくは実施される。次にこの反応混合物をポンプでループ反応器内の循環に入れる。引き続いてDMC触媒を阻害できる揮発性成分を例えば窒素などの不活性ガスを添加し減圧して蒸発させる。その後、少なくとも1種のアルキレンオキシド、好ましくは1種のみのアルキレンオキシドを開始量としてエジェクタ混合ノズル内の反応混合物中に量り入れる。アルキレンオキシドと反応性基、特にOH基とのモル比は、好ましくは上記規定される範囲内である。
【0034】
反応の開始は、例えば圧力をモニタリングして検知できる。気体のアルキレンオキシドの場合、反応器内の突然の圧力低下は、アルキレンオキシドが組み込むまれ、したがって反応が開始して開始段階の終了が達成されたことを示唆する。
【0035】
開始段階の後、すなわち反応初期化後、所望のモル質量またはモル質量分布次第で、出発化合物とアルキレンオキシドを並行して量り入れ、あるいはアルキレンオキシドのみを量り入れる。使用される出発化合物を基準にして、量り入れるアルキレンオキシドのモル比は、特に使用される出発化合物のOH基の数に基づいて、好ましくは0.5〜10である。
【0036】
特定のアルキレンオキシド添加の持続時間は、標的分子中におけるアルキレンオキシド単位の所望の配列に左右される。
【0037】
使用されるアルキレンオキシドは、一般式(III)、
【化2】


(式中、RおよびRはそれぞれ独立してHまたは炭化水素ラジカルである)を有する化合物であってもよい。炭化水素ラジカルは脂環族であってもよいが、特に直鎖または分枝炭化水素ラジカル、特に1〜20個および好ましくは1〜6個の炭素原子を有する炭化水素ラジカル、より好ましくはメチル、エチルまたはフェニルラジカルである。RおよびRラジカルはまた、環式基の一部であってもよく、その場合RおよびRは二価のラジカルを形成する。そしてまた炭化水素ラジカルRおよびRは、ハロゲン、水酸基、およびグリシジルオキシプロピル基などの官能基を有してもよい。このようなアルキレンオキシドとしては、エピクロロヒドリンと、2,3−エポキシ−1−プロパノールと、また1,2−エチル、1,4−ブチル、および1,6−ヘキシルジグリシジルエーテルなどの多官能性エポキシド化合物と、が挙げられる。好ましくは2つのRおよびRラジカルの少なくとも1つは水素である。特に好ましくはアルキレンオキシドとして、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−または2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1,2−ドデセンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、ビニルシクロヘキセンオキシドおよび/またはスチレンオキシドが使用される。
【0038】
使用されるアルキレンオキシドはまた、その少なくとも1つのグリシジルオキシプロピル基がエーテルまたはエステル官能基を通じて、直鎖または分枝アルキルラジカル(炭素原子1〜24個)、芳香族ラジカルまたはシクロ脂肪族ラジカルに結合するグリシジルエーテルまたはグリシジルエステルなどのグリシジル化合物であってもよい。このクラスの化合物としては、例えばアリル、ブチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、ベンジル、C12/C14−脂肪アルコール、フェニル、p−tert−ブチルフェニル、およびo−クレシルグリシジルエーテルが挙げられる。好ましくは使用されるグリシジルエステルとしては、例えばメタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、およびネオデカン酸グリシジルが挙げられる。
【0039】
式(II)の好ましい化合物を得るために、出発化合物モルあたりまたは出発化合物1モル中に存在する特にOH基である反応性基モルあたり、平均で好ましくは0〜300モル、好ましくは1〜200モル、優先的に5〜100モル、より好ましくは10〜70モル、最も好ましくは20〜50モルの式(III)の化合物(式中、RおよびR=Hである)、および/または0〜300モル、好ましくは1〜200モル、好ましくは5〜100モル、より好ましくは10〜70モル、最も好ましくは20〜50モルの式(III)の化合物(式中、R=メチルおよびR=Hである)、および/または0〜300モル、好ましくは1〜200モル、好ましくは5〜100モル、より好ましくは10〜70モル、最も好ましくは20〜50モルの式(III)の化合物(式中、R=エチルおよびR=Hである)、および/または0〜300モル、好ましくは1〜200モル、優先的に5〜100モル、より好ましくは10〜70モル、最も好ましくは20〜50モルの式(III)の化合物(式中、R=フェニルおよびR=Hである)が本発明の方法で変換される。
【0040】
本発明の方法において、エジェクタ混合ノズルを通じて不活性ガスを反応混合物に助剤として添加し、減圧することで、ループ反応器内に組み込まれた真空システム内において、ポリエーテルよりも揮発性が高い成分を反応混合物から除去すれば有利でありえる。この単純な様式で、例えば低級アルコールまたは水などの触媒を阻害できる物質を反応混合物から除去できる。反応開始に際して、反応物質の添加または副反応は、阻害化合物を反応混合物中に侵入させることができるので、不活性ガスの添加と、より揮発性の成分の同時の除去は、特に反応開始時に有利であることができる。
【0041】
本発明の方法は、バッチ式でまたは連続的に実施できる。
【0042】
本発明の方法は、式(I)のポリエーテルを調製できるようにする。特に本発明の方法を使用して式(I)のポリエーテルを調製でき、それはアルキレンオキシド単位の構造的蓄積およびモル質量分布に関して、制御された様式で再現性よく調製できることを特徴とする。これらのポリエーテルは、特に有機的に変性されたシロキサン化合物を調製するのに好適である。
【0043】
図1によって本発明を詳細に図示するが、そこで示される実施態様に本発明を限定することは意図されない。
【0044】
図1は、本発明で使用できるループ反応器の実施態様の概略図を示す。この実施態様では、循環ポンプ(2)によって反応混合物(1)が送達され、必要に応じて熱交換器(3)を経由して、エジェクタ混合ノズル(4)を通じて反応器内に戻される。エジェクタ混合ノズル(4)のガス空間(7)内は、ベンチュリ効果により減圧され、それによって気体または液体反応物質(5aおよび5b)または反応器それ自体の気相(6)のどちらかが吸い込まれて、循環する反応混合物と激しく混合される。反応を制御するため、またはストリッピングのために、例えば窒素などの不活性ガス(8)もまたガス空間(7)に添加できる。真空システム(9)を使用して、調製された、および/または最初に反応混合物から装入されたポリエーテルよりも揮発性が高い成分を除去できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
−(CHRCHR−O)−H (I)
(式中、
n=1〜12000、
=少なくとも1つの炭素原子を含むラジカル、および
およびRはそれぞれ独立してHまたは炭化水素ラジカルであり、指数nで指定される単位は同一であるかまたは異なってもよい)
のポリエーテルを調製する方法であって、
ラジカルを含む出発化合物を、ループ反応器内において二重金属シアン化物触媒(DMC触媒)存在下でアルコキシル化するステップを含み、
前記アルコキシル化が、エジェクタ混合ノズルを有するループ反応器内において実施され、反応に関与する全物質または助剤を、循環する反応混合物に添加でき、
アルキレンオキシドまたは複数の異なるアルキレンオキシドを、前記エジェクタ混合ノズルを通じて同時に(ランダム添加)または異なる時点で(ブロック添加)前記反応混合物中に量り入れることを特徴とする方法。
【請求項2】
調製される式(I)のポリエーテルが、式(II)
【化1】


(式中、
aは0〜300であり、
bは0〜300であり、
cは0〜300であり、
dは0〜300であり、
は、少なくとも1つの炭素原子を含むラジカルであるが、
ただしa〜dの少なくとも1つは0でない)
のポリエーテルであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
バッチ式で実施されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
連続的に実施されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
不活性ガスが、前記エジェクタ混合ノズルを通じて前記反応混合物に供給され、前記ループ反応器内に組み込まれた真空システム内において、前記ポリエーテルよりも揮発性が高い成分が、減圧することで前記反応混合物から除去されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ポリエーテルおよびDMC触媒が開始段階において最初に前記反応混合物として導入され、次に同時に、前記出発化合物および少なくとも1種のアルキレンオキシドが前記反応混合物中に量り入れられることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記出発化合物が、アルコール、カルボン酸、アルデヒド、およびケトンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
使用される前記出発化合物が一価または多価アルコールであることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
出発化合物および少なくとも1種のアルキレンオキシドが第1段階において同時に添加され、この段階に、出発化合物が添加されていない1種以上のアルキレンオキシドを添加する段階が続くことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
出発化合物および少なくとも1種のアルキレンオキシドが同時にのみ添加されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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